説明

フォトクロミック組成物、画像表示媒体および画像形成装置並びに画像消去装置

【課題】光照射により形成した画像が光に対して十分な安定性を有するような実用性に優れる画像表示媒体を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表わされるフォトクロミック化合物および長鎖構造を有する化合物を含み、このフォトクロミック組成物を支持基体状に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フォトクロミック組成物、画像表示媒体及び画像形成装置に関し、詳しくは、光照射と熱処理により画像を繰り返し形成することが可能なフォトクロミック組成物、画像表示媒体及びこれを用いた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光照射により可逆的な色変化を示すフォトクロミック化合物を用いた組成物、およびそれを用いた表示媒体あるいは記録媒体に関する提案は以前からなされているが、光照射によりカラー画像が形成でき、かつ画像の書き換えが可能であり、さらに形成した画像が光に対して十分な安定性を有するような実用性に優れる提案はいまだ見当たらない。
【0003】
フォトクロミック化合物を用いてカラー画像を形成する方法としては、例えば特許文献1において、254nmの紫外光照射で黄橙色、313nmの紫外光照射で赤色、365nmの紫外光照射で青紫色に発色するフォトクロミック性ジアリールエテン化合物を3種類混合して、それぞれの波長の紫外光を照射する方法が提案されている。 フルカラー画像を形成するためには3原色(青、緑、赤またはイエロー、マゼンタ、シアン)を発色する3種類以上のフォトクロミック化合物の消・発色を光で制御しなければならないが、上記の方法では3種類の紫外光波長域によって各材料の発色の有無が選択できることが必要であり、つまり紫外域での吸収帯に重なりがない3種類以上のフォトクロミック化合物が必要であり、さらにそれらの化合物が発色状態において上記3原色を示さなければならないが、そのような化合物の系は実際には見あたらない。また、実用化には発色特性だけではなく、繰り返し耐久性、熱・湿安定性なども考慮しなければならず、これらの全てを満たす材料を開発するのは大変困難である。
【0004】
また、特許文献2においては、発色状態でイエロー、マゼンタ、シアンを示す3種類のフォトクロミック性フルギド化合物に対して、366nmの紫外光で全フォトクロミック化合物を発色させた後にカラーポジフィルム越しに白色光を照射することにより、各フォトクロミック性フルギド化合物を必要に応じて選択的に消色してカラー画像を得る方法が提案されている。この方法では、紫外光源が1種類だけで対応できるという利点があるものの、形成したい画像のカラーポジフィルムが必要であり、その都度これを準備するのは全く実際的でなく、近年のオフィスワークにおけるカラー画像出力に用いるには全く適切ではない。さらにこのようにして形成した画像は照明光によって徐々に消色して画像が失われてしまう。
【0005】
特許文献3においては、長鎖構造を有するスピロピラン化合物をポリマー中に溶解あるいは分散させ、35〜50℃に加熱しながら紫外光を照射するかあるいは紫外光照射後に加熱することで発色状態を光に対して安定化させるフォトクロミック組成物が提案されている。特許文献4においては、そのフォトクロミック組成物を用いた感熱記録材料が提案されている。これらはもともと表示への応用を狙ったものではない。表示に応用しようとした場合、色相的には単色表示に限られる。そして、より本質的なこととして、表示への応用においては表示媒体(の表示層)に含まれるフォトクロミック化合物の発消色状態を領域的にコントロールして画像形成を完了した後に安定化(画像定着)の処理を施す必要があるが、35℃程度の温度で安定化が起こるため、例えば暑い季節における生活環境下やあるいは装置内での熱こもりなどにより画像形成の途中で不意に安定化が起こってしまい、適切な画像形成ができず、表示媒体への応用はできない。
【0006】
これらを含め、関連の提案、つまりフォトクロミック化合物を用いた、光照射によりカラー画像が形成でき、かつ画像の書き換えが可能であり、さらに形成した画像が光に対して十分な安定性を有するような実用性に優れる画像表示媒体および画像形成方法などについての提案はいまだ見当たらない。
【特許文献1】特開平5−271649号公報
【特許文献2】特開平7−199401号公報
【特許文献3】特開昭63−207887号公報
【特許文献4】特開平1−226387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような状況および問題を鑑みて鋭意研究した結果、我々は本発明に至ったものである。
【0008】
この発明は、光照射によりカラー画像が形成でき、かつ画像の書き換えが可能であり、さらに形成した画像が光に対して十分な安定性を有するような実用性に優れる画像表示媒体および画像形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のフォトクロミック組成物は、 一般式(I)で表わされるフォトクロミック化合物および一般式(II)で表わされる長鎖構造を有する化合物を含む。
【0010】
【化3】

【0011】
(ただし、R、Rは独立して、炭素数12以上のアルキル基、アルカノイルオキシメチル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルフェニル基から選ばれるものであり、R〜R13は独立して水素または置換基である。)
【0012】
【化4】

【0013】
(ただし、R14、R15は独立して水素またはアルキル基であり、Xは水素結合性または会合性を有する構造であり、全体としての炭素数が12以上の長鎖構造である。)
また、この発明の画像表示媒体は、上記したフォトクロミック組成物による表示層が支持基体上に形成されていることを特徴とする。
【0014】
さらに、この発明の画像表示媒体は、会合状態における色相が異なる2種以上の上記したフォトクロミック化合物を表示層中に含むことを特徴とする。
【0015】
また、この発明の画像表示媒体は、会合状態においてイエローの色相を示す第1のフォトクロミック化合物と、マゼンタの色相を示す第2のフォトクロミック化合物と、シアンの色相を示す第3のフォトクロミック化合物とを表示層中に含み、各フォトクロミック化合物は上記したフォトクロミック組成物により構成される。
【0016】
また、この発明の画像表示媒体は、前記表示層が、第1のフォトクロミック化合物のみを含む表示層と、第2のフォトクロミック化合物のみを含む表示層と、第3のフォトクロミック化合物のみを含む表示層が積層された構造であることを特徴とする。
【0017】
この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面に部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に昇温する加熱手段と、を備えることを特徴とする。
【0019】
さらに、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
また、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面の表示層に部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0021】
また、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体に対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0022】
また、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面の表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0023】
さらに、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体に対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0024】
また、この発明の画像形成装置は、上記に記載の画像表示媒体の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面の表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする。
【0025】
この発明の画像消去装置は、上記に記載の画像表示媒体に対し、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段を備えることを特徴とする。
【0026】
また、この発明の画像消去装置は、上記に記載の画像表示媒体の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面に対し、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1に記載の発明によれば、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となる画像形成材料が得られる。
【0028】
請求項2に記載の発明によれば、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となる画像表示媒体が得られる。
【0029】
請求項3に記載の発明によれば、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となる画像表示媒体が得られ、さらに多色表示が可能となる。
【0030】
請求項4に記載の発明によれば、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となる画像表示媒体が得られ、さらにフルカラー表示が可能となる。
【0031】
請求項5に記載の発明によれば、上述の効果に加え、用いるフォトクロミック化合物ごとに適切な会合体形成効果を付与できる。
【0032】
請求項6に記載の発明によれば、シート型を含むメディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像の形成装置が得られる。
【0033】
請求項7に記載の発明によれば、光ディスク型メディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像の形成装置が得られる。
【0034】
請求項8に記載の発明によれば、シート型を含むメディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像の形成および消去が可能な装置が得られる。
【0035】
請求項9に記載の発明によれば、光ディスク型メディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像の形成および消去が可能な装置が得られる。
【0036】
請求項10に記載の発明によれば、シート型を含むメディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像または多色画像の形成装置が得られる。
【0037】
請求項11に記載の発明によれば、光ディスク型メディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像または多色画像の形成装置が得られる。
【0038】
請求項12に記載の発明によれば、シート型を含むメディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像または多色画像の形成および消去が可能な装置が得られる。
【0039】
請求項13に記載の発明によれば、光ディスク型メディアに対して、使用環境温度や装置内温度の影響を受けることなく、光に対する十分な安定性の付与が可能となるモノクロ画像または多色画像の形成および消去が可能な装置が得られる。
【0040】
請求項14に記載の発明によれば、シート型を含むメディアに対して、画像の消去が可能な装置が得られる。
【0041】
請求項15に記載の発明によれば、光ディスク型メディアに対して、画像の消去が可能な装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付し、説明の重複を避けるためにその説明は繰返さない。
【0043】
まず、この発明が関わるところの、フォトクロミック化合物を含む表示層を基体上に形成した画像表示媒体、およびそれに対して光照射によりカラー画像を形成する方法の基本的なメカニズムについて説明する。
【0044】
図1は、この発明に用いられる画像表示媒体1の構成を示す模式図である。
【0045】
この画像表示媒体1は、支持基体10上に、発色状態における極大吸収波長が異なる、つまり発色状態において認識される色が異なる、2種類以上のフォトクロミック化合物を含む表示層が形成される。図1に示したものは、極大吸収波長が異なる3種類のフォトクロミック化合物を含む表示層11、12、13が積層されて形成される。第1のフォトクロミック化合物を含む表示層11は、図2の(A)で示す極大吸収波長の特性を有し、第2のフォトクロミック化合物を含む表示層12は、図2の(B)で示す極大吸収波長の特性を有し、第3のフォトクロミック化合物を含む表示層13は、図2の(C)で示す極大吸収波長の特性を有するものでそれぞれ構成されている。
【0046】
これに、紫外光照射によって表示層に含有される全種類のフォトクロミック化合物を発色させた後、発色した各々のフォトクロミック化合物の可視域吸収帯に対応した波長域(極大吸収波長付近の波長域)の光をそれぞれ所定の領域に照射して対応する特定のフォトクロミック化合物を選択的に消色することにより、所望のカラー画像が得られる。図1に示す例においては、波長Aの光に対して、第1の表示層11が消色し、波長Bの光に対して、第2の表示層12が消色し、波長Cの光に対して第3の表示層13が消色する。
【0047】
もう少し詳しく説明すれば、発色状態における極大吸収波長が異なるということは、つまり認識される色が異なるということであり、この極大吸収波長は、表示に用いたい色に対応して設定されればよく、また当該フォトクロミック化合物の種類も、表示に用いたい色の数に対応して設定されればよい。発色状態における色相がそれぞれイエロー、マゼンタ、シアンとなるフォトクロミック化合物を用いることにより、カラー表示の3原色が構成され、例えば可視光照射工程で各フォトクロミック化合物の消色の程度を調整することで、各フォトクロミック化合物により得られる色の濃度を制御することが可能となり、前述の画像表示方法により色再現範囲が広い多色表示が可能となる。
【0048】
以上は、発色状態における極大吸収波長が異なる、2種類以上のフォトクロミック化合物を含む表示層からなる画像表示媒体に対して画像を形成する場合について述べた。1種類のフォトクロミック化合物のみを含む表示層からなる画像表示媒体を対象とする場合は、発色の色相は1つでその濃度が異なる、いわゆるモノクロ画像が形成されることになるが、その表示層に含まれるフォトクロミック化合物の発色の程度を制御して画像を形成するという基本的な方法については上述のカラー画像の形成の場合と同様である。
【0049】
また、表示層に含まれるフォトクロミック化合物が1種類の場合でも、発色状態における極大吸収波長が異なる2種類以上の場合でも、全てのフォトクロミック化合物が消色している状態に対して、所定の領域に紫外光を照射して発色させることによってモノクロの画像を形成することができる。
【0050】
この発明は、以上に述べたフォトクロミック化合物を含む表示層を基体上に形成した画像表示媒体、およびそれに対して光照射により画像を形成する方法をもとに、光照射によりカラー画像が形成でき、かつ画像の書き換えが可能であり、さらに形成した画像が光に対して十分な安定性を有するような実用性に優れる画像表示媒体および画像形成方法について検討した結果得られたものである。
【0051】
以下、この発明をさらに詳細に説明する。
【0052】
本発明の特徴の一つは、下記の一般式(I)で表わされるフォトクロミック化合物および一般式(II)で表わされる長鎖構造を有する化合物を含むフォトクロミック組成物を構成することである。
【0053】
【化5】

【0054】
(ただし、R、Rは独立して、炭素数12以上のアルキル基、アルカノイルオキシメチル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルフェニル基などであり、R〜R13は独立して水素であるかまたはハロゲン、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、メトキシ基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基などの置換基である。)
【0055】
【化6】

【0056】
(ただし、R14、R15は独立して水素またはアルキル基であり、Xはエステル基、エーテル基、カルボニル基、アミド基、イミド基、アゾ基、チオ基、ウレタン基、ウレア基、ジイミド基などの水素結合性または会合性を有する構造であり、全体としての炭素数が12以上の長鎖構造である。)
一般式(I)で表わされるスピロピラン系のフォトクロミック化合物(例えば6−シアノ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール])は紫外光照射によりメロシアニン構造に変化して発色し、加熱により安定な会合体を形成して、可視光を照射しても消色がほとんど起こらなくなる。これをポリマー中に分散させて使用する場合、長鎖アルキル化合物などを添加すると加熱による会合体の形成効率が向上する場合がある。この会合促進効果における長鎖アルキル化合物の寄与など、メカニズムの詳細は解明されていないが、一般式(II)で表わされる長鎖構造を有する化合物(例えば1,3−ジドデシルウレア、1−デシル−3−オクタデシルウレア、オクタデカノン酸オクタデカノイルアミド、ペンタノン酸オクタデシルアミド、オクタデカン酸オクタデシルアミド、18−ペンタトリアコンタノン、13−ヘントリアコンタノンなど)を用いると、単純な長鎖アルキル化合物を添加した場合に比べ、会合体を形成するのに、より高温の熱処理を必要とするようになることを見出した。
【0057】
詳細なメカニズムは不明ながら、フォトクロミック化合物の会合促進においては、加熱による長鎖構造化合物の熱運動性向上がキーになっており、単純な長鎖アルキル化合物(n−アルカン)に比べ、一般式(II)で表される長鎖構造のように、自己会合力が強い構造のものを用いることで、熱運動性が向上して会合促進効果が現れるのに要する温度が高くなるものと考えられる。
【0058】
当該温度は一般式(II)のXの構造によって、そしてまたフォトクロミック化合物の構造によっても異なるが、例えば、35〜45℃程度の温度では会合促進効果がほとんど発現せず、それよりも高い温度域例えば50〜60℃で発現するようにすることも可能となる。会合体を形成するための熱処理温度については、実用上は前述のように、35〜40℃程度の温度では会合体形成が起こらず、より高温域、例えば45℃以上で会合体形成が起こることが好ましい場合が多い。
【0059】
熱処理温度の上限については特に限定されるものではないが、処理温度が高過ぎる場合はフォトクロミック化合物自体の熱消色が生じるために会合体形成が起こりにくくなるため、概ね70℃以下が好ましい場合が多い。
【0060】
長鎖構造化合物の長さ、すなわち全体としての炭素数については、一般的に長鎖構造が12よりも短い場合には充分な自己会合性が発現しない。この発明においても長鎖構造化合物全体としての炭素数が12よりも短い場合には充分な自己会合性が発現しない。したがって、前記会合促進効果も発現しないため、12以上であることが必要である。一方、長さの上限については特別な制限はないが、長すぎると前記会合促進効果が損なわれる傾向があるため、概ね炭素数100以下であることが好ましい。
【0061】
ポリマーとしては、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリメタクリル酸メチル、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニルなど、比較的極性が小さなものが好適に用いられる。
【0062】
この発明におけるフォトクロミック組成物を、一般式(I)で表わしたフォトクロミック化合物/一般式(II)で表わした長鎖構造化合物/ポリマーで構成する場合のそれぞれの割合については、ポリマー100重量部に対して、フォトクロミック化合物は0.1〜50重量部、長鎖構造化合物は10〜200重量部となるようにするが望ましい。
【0063】
この発明のもう一つの特徴は、上述のフォトクロミック組成物を表示層として支持基体上に形成して画像表示媒体を構成することである。
【0064】
支持基体の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、芳香族ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等、あるいはこれらに白色顔料を含ませて成形された不透明材料、および紙などの材料を用いることができる。
【0065】
支持基体の形状としては、シート状、カード状、フィルム状のものに限らず、例えばブロック状のものでもよく、形状は限定されない。
【0066】
表示層を形成する方法としては、塗布法のほかに蒸着法も挙げられるが、塗布法が簡便であり、当該フォトクロミック化合物、当該長鎖構造化合物およびポリマー材料を共に溶媒に溶かして、印刷法、スピンコート法などの方法により塗布し、乾燥して成膜すればよい。表示層は必ずしも支持基体の全体に形成する必要はなく、一部に形成してもよい。表示層の好ましい厚みについては、フォトクロミック組成物中に含まれるフォトクロミック化合物の濃度等によっても異なるが、およそ0.1〜10μm程度が好ましい。
【0067】
この発明のもう一つの特徴は、上述の画像表示媒体の表示層が、会合状態における色相が異なる2種以上のフォトクロミック化合物を含むように構成することである。
用いるフォトクロミック化合物が1種類の場合は、表示可能な色相も1種類であり、すなわち、モノクロ表示となるが、色相が異なる2種以上のフォトクロミック化合物を用いる場合は、それぞれのフォトクロミック化合物の発消色状態を制御して組み合わせることにより、非常に多くの色相の表示が可能となる。
【0068】
本発明のもう一つの特徴は、図1に示すように、上述の画像表示媒体1の表示層が、会合状態においてイエローの色相を示す第1のフォトクロミック化合物を含む表示層11と、マゼンタの色相を示す第2のフォトクロミック化合物を含む表示層12と、シアンの色相を示す第3のフォトクロミック化合物を含む表示層13とを含むように構成することである。これによりカラー表示に必要な3原色が構成され、それぞれのフォトクロミック化合物発消色状態を制御して組み合わせることにより、フルカラー画像の形成が可能となる。
【0069】
上述したように、一般式(I)で表わされるフォトクロミック化合物は紫外光照射によりメロシアニン構造に変化して発色し、加熱により安定な会合体を形成して、可視光を照射しても消色がほとんど起こらなくなるが、会合体形成の前後で吸収特性が変化するために色相が若干変化する。これを考慮して会合体が形成された状態での色相に着目してフォトクロミック化合物を設定する必要がある。
【0070】
会合状態においてイエローの色相を示すフォトクロミック化合物としては、例えば1’,3’−ジヒドロ−5’−(ジメチルアミノ)−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]、6−シアノ−1’,3’−ジヒドロ−5’−(ジメチルアミノ)−3’,3’−ジメチル−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]等が挙げられる。
【0071】
会合状態においてマゼンタの色相を示すフォトクロミック化合物としては、例えば5’−クロロ−6−シアノ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]、5’,7’−ジクロロ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]等が挙げられる。
【0072】
会合状態においてシアンの色相を示すフォトクロミック化合物としては、例えば6−シアノ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]、5’−ブロモ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]、5’,7’−ジブロモ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール]等が挙げられる。
【0073】
本発明のもう一つの特徴は、上述の画像表示媒体の表示層を、画像表示媒体1の表示層が、会合状態においてイエローの色相を示す第1のフォトクロミック化合物のみを含む表示層11と、マゼンタの色相を示す第2のフォトクロミック化合物をのみ含む表示層12と、シアンの色相を示す第3のフォトクロミック化合物をのみ含む表示層13とが積層された構造とすることである。
【0074】
一般式(I)で表わされるフォトクロミック化合物が紫外光照射によりメロシアニン構造に変化して発色し、さらに加熱により安定な会合体を形成する工程において、前述したように長鎖構造化合物の存在下で会合体の形成効率が向上するが、特にポリマー中では実質的にはその効果によって会合体形成が可能になると言える。そしてフォトクロミック化合物の構造により、実質的に会合体形成が可能になるための長鎖構造化合物の構造および濃度などの条件が異なる場合もある。そのような場合、それぞれのフォトクロミック化合物について適切な条件で表示層を形成し、それらを積層すればよい。
【0075】
各表示層間に中間層を設けてもよい。各層を積層する過程で、積層膜の形成方法によっては各層の境界近傍を中心として、各層の構成要素が混合する場合があるため、中間層を設けることによりこのような混合を防ぎ、結果として各層において適切な会合体形成が可能になる。中間層を形成する材料としては、透明であるか、あるいは着色していてもその程度が小さく、表示層の形成に好適に用いられる塗布法で使用する有機溶媒に対し、ある程度の耐性を有するものが好ましく、シリコーン樹脂やPVA(ポリビニルアルコール)等が挙げられる。形成方法は、表示層と同様であってどのような方法でもよいが、塗布法が簡便である。
【0076】
次に、上述した画像表示媒体およびそれを、例えば、シート状の印刷体や光ディスクのレーベル記録面に印刷面を形成したものに対して、画像を形成および消去する装置に関して説明する。それに際して、まずは、画像を形成および消去する方法について説明する。
【0077】
(モノクロ画像を形成する方法)
上述の画像表示媒体(表示層に含まれるフォトクロミック化合物が1種でも2種類以上でも)に対し、画像データに従い部分的に紫外光を照射する工程と、会合に必要な所定温度に昇温する工程を施すことでモノクロ画像を形成することが可能となる。また、消去に必要な所定温度に昇温する工程を施すことで画像の消去を行なうことが可能となる。
【0078】
まず、表示層に含まれる全てのフォトクロミック化合物が消色している状態を初期状態として、これに形成したい画像に対応させたデータに基づき部分的に紫外光を照射して発色させることによりモノクロ画像が形成される。
【0079】
次に、表示層を例えば50〜60℃程度の温度に昇温させることにより表示層中に含まれるフォトクロミック化合物が会合体を形成して前記モノクロ画像は安定化し、照明などの光に長時間晒しても画像が薄くなったり消えてしまうことがなくなる。そして、この画像を消去したい場合は、表示層を例えば100℃程度の温度に昇温させることにより表示層中に含まれるフォトクロミック化合物の会合状態が解けるとともに消色して画像は消去される。
【0080】
部分的に紫外光を照射する方法としては、ランプ状のUV光源とアレイ型あるいは面型のシャッターを組み合わせる方法、それ自体で照射のON/OFFを制御できるUVアレイ光源を用いる方法、あるいはUVレーザースキャンなどが挙げられる。
【0081】
会合に必要な所定温度に昇温させる手段としては、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーターなどをはじめとする従来のヒーター類を用いることができ、前記ヒーター類の加熱温度や、画像表示媒体との近接距離と時間、あるいは当接圧と時間などの条件により、画像表示媒体の感光層の加熱温度、加熱時間などを調整できる。したがって、これらは、消去に必要な所定温度に昇温させる手段としても用いることができる。
【0082】
(多色画像を形成する方法)
上述の画像表示媒体に対し、紫外光を照射することによって表示層に含有される全てのフォトクロミック化合物を発色させる工程と、発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を画像データに基づき照射してフォトクロミック化合物を選択的に消色する工程と、会合に必要な所定温度に昇温する工程を施すことで、表示層に含まれるフォトクロミック化合物が1種類の画像表示媒体に対してはモノクロ画像が形成され、表示層に含まれるフォトクロミック化合物が2種類以上の画像表示媒体に対しては多色画像を形成することができる。
【0083】
まず、表示層全面に紫外光を照射して表示層に含まれる全てのフォトクロミック化合物を発色させる。次に形成したい画像に対応させて、発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を画像データに基づき部分的に照射してフォトクロミック化合物を選択的に消色することにより、所望の画像が形成される。次に、表示層を例えば50〜60℃程度の温度に昇温させることにより表示層中に含まれるフォトクロミック化合物が会合体を形成して前記画像は安定化し、照明などの光に長時間晒しても画像が薄くなったり消えてしまうことがなくなる。そしてこの画像を消去したい場合は、表示層を例えば100℃程度の温度に昇温させることにより表示層中に含まれるフォトクロミック化合物の会合状態が解けるとともに消色して画像は消去される。
【0084】
表示層全面に紫外光を照射する方法としては、水銀ランプやキセノンランプなどに光学フィルターを組み合わせて所望の波長域の紫外光を取り出して用いてもよいし、LEDやLDなどの特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよい。
【0085】
可視光を部分的に照射する方法としては、白色光光源に光学フィルターを組み合わせた構成のランプ類を用いてもよいし、LEDやLDなどの特定波長域の光を発する発光素子を用いてもよい。所望の領域にのみ照射する方法としては、例えば微小な領域ごとに照射のオン/オフが制御できる発光面を連続して並べて形成した光源アレイと、画像表示媒体とを相対的に移動させながら光源アレイの各発光面の照射のオン/オフを制御することによっても可能となる。
【0086】
会合に必要な所定温度に昇温させる手段としては、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーターなどをはじめとする従来のヒーター類を用いることができ、前記ヒーター類の加熱温度や、画像表示媒体との近接距離と時間、あるいは当接圧と時間などの条件により、画像表示媒体の感光層の加熱温度、加熱時間などを調整できる。したがってこれらは、消去に必要な所定温度に昇温させる手段としても用いることができる。
【0087】
本発明のもう一つの特徴は、上述の画像表示媒体に対し、画像データに対応して部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段、および画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段を備えた装置を構築することである。
【0088】
この発明における画像表示媒体に用いる支持基体はシート状に限らずどんな形状でもよいが、ここではシート状の画像表示媒体を例にとってモノクロ画像の形成および消去が可能な装置の構成例および動作を図3を用いて説明する。
【0089】
図3は、この発明の画像形成装置の第1の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体をモノクロ画像形成を行う画像形成装置の一例を示す模式図である。
【0090】
この発明にかかるシート状の画像表示媒体1が画像形成装置20のシート載置台26上にセットされる。画像表示媒体1は、基体10上にこの発明にかかるフォトクロミック化合物を含む表示層が設けられている。基体10の色は白色であり、フォトクロミック化合物が発色していない状態においては、画像表示媒体1は白色を呈している。
【0091】
画像表示媒体1が挿入口21から搬送ローラ22によって装置20内に搬送される。紫外光照射手段24により、形成したい画像に対応させて部分的に紫外光を照射して発色させることによりモノクロ画像を形成する。この紫外光照射手段24は、ランプ状のUV光源とアレイ型あるいは面型のシャッターを組み合わせる方法、それ自体で照射のON/OFFを制御できるUVアレイ光源を用いる方法、あるいはUVレーザースキャンなどで構成される。
【0092】
紫外光照射手段24により、表示層にモノクロ画像が形成された画像表示媒体1は、搬送ローラ22により、更に送られ、加熱手段25により、会合に必要な所定温度に昇温して画像が安定化される。会合に必要な所定温度に昇温させる手段としては、ヒートローラー、サーマルヘッド、ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーターなどが用いられる。
【0093】
加熱手段24により、画像の安定化処理が終わった画像表示媒体1は、搬送ローラ23により、搬送され、排出口24より排出され、排紙トレイ27上に排出される。
【0094】
例えば、このような構成で装置を作製することで、モノクロ画像の形成が可能となる。
【0095】
次に、上述した表示層が形成された光ディスクレーベル記録面に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段、および画像安定化に必要な所定温度に昇温する加熱手段を備えて、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置につき説明する。
【0096】
近年、情報記録メデイアとして、CDやDVDのような光ディスクが普及している。CDとしては、再生専用のCD−ROM、追記可能なCD−R、書き換え可能なCD−RW等があり、DVDとしては、再生専用のDVD−ROM、追記可能なDVD−R、書き換え可能なDVD−RAM、DVD−RW等がある。記録型光ディスクは、例えば、追記可能な或いは書き換え可能な光ディスクは情報記録層を有している。この情報記録層の側の面とは逆の反対側のレーベル記録面には、インクジェットプリンタや手書きで文字や画像を記録できるレーベル記録面を有する光ディスクが普及している。
【0097】
インクジェットプリンタや手書きで文字や画像を一旦レーベル記録面に記録すると、この画像等を消去することができない。書き換え可能な光ディスクにおいては、内容を書き換えた際に、レーベル記録面も対応して書き換えられることが望まれる。そこで、レーベル記録面にこの発明にかかる画像表示媒体からなる記録層を設ければ、画像形成および消去が容易に行える。そこで、この発明は、光ディスクレーベル記録面に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段、および画像安定化に必要な所定温度に昇温する加熱手段を備えて、光ディスクレーベル記録面に画像を形成するとともに、必要に応じて消去も可能にした装置を提供するものである。
【0098】
図4を用いて、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置の構成例およびその動作の概略を説明する。図4は、この発明の画像形成装置の第2の実施形態を示し、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置を示す模式図である。図4を用いて、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置の構成例およびその動作の概略を説明する。
【0099】
例えば、既存の光ディスクドライブ装置のように、光ディスク100を固定し、さらに回転の制御が可能な装置をベースに用いる。光ディスク100の情報記録面と反対側の面にレーベル記録面100aが設けられる。このレーベル記録面100aには、上述したこの発明にかかる画像記録媒体が設けられている。この場合、光ディスクが基板が基体10を構成することになる。
【0100】
そして、このレーベル記録面100aに対向して加熱手段110および紫外光照射手段111を設ける。
【0101】
画像の記録は、まず、光ディスク100を図中矢印方向に回転させ、紫外光照射手段111により、形成したい画像に対応させて部分的に紫外光を照射して発色させることによりモノクロ画像を形成する。次に、加熱手段110により会合に必要な所定温度に昇温して画像を安定化させることでモノクロ画像の形成が可能となる。
【0102】
光ディスクレーベル記録面100aへの画像の形成は、基本的には、上記したように行われるが、実際には、光ディスクの回転速度、ディスクの径方向に対応する紫外光の照射タイミングなどを画像データに応じて制御する必要がある。
【0103】
次に、上記した光ディスクドライブ装置にこの発明の画像記録装置を設けた装置の構成例につき、図5のブロック図に従い説明する。
【0104】
光ディスクのレーベル記録面100aにこの発明の画像記録媒体を設けた光ディスク100に対して、光ディスクを再セットすることなく、レーベル記録面への画像形成を行うことができる画像記録装置を設けた光ディスク装置を提供する。
【0105】
図5は、この発明の第2の実施の形態における画像記録装置を設けた光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0106】
図5において、120はドライブ機構部、123はスピンドルモータ、124は光ピックアップ、127はフィード部、111は、紫外光照射手段、125は、加熱手段、128は第1アナログ処理部、129はサーボ処理部、130はモータ駆動部、131はコントローラ、132はレーザ駆動部、133はディジタル信号処理部、134はバッファメモリ、135は第2モータ駆動部、137は照射手段駆動部、138は第2サーボ処理部、100は光ディスクである。
【0107】
上記のように構成された本発明の一実施の形態における光ディスク装置の動作について説明する。図5において、ドライブ機構部120は、光ディスク100を回転させるスピンドルモータ123と、光ディスク100の情報記録面に対して情報の記録又は再生を行なう光ピックアップ124と、光ディスクのレーベル記録面100aに対して紫外線を照射することにより可視画像の形成を行なう紫外光照射手段111と、光ピックアップ124が搭載されたキャリッジを光ディスク100の半径方向に移動させるためのフィード部127と、会合に必要な所定温度に昇温して画像を安定化させる加熱手段125とによって構成されたものである。
【0108】
第1アナログ信号処理部128は、ドライブ機構部120の内部に設けられた光ピックアップ124の内部の光センサ(図示せず)からの信号出力を基に、フォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号とを生成し、サーボ処理部129に出力する。
【0109】
サーボ処理部129は、ピックアップ124の対物レンズとキャリッジとの相対的な位置関係を示すレンズ位置信号を生成し、第1モータ駆動部130に出力する。第1モータ駆動部130は、光ピックアップ124とスピンドルモータ123とフィード部127を駆動する。
【0110】
また、サーボ処理部129はON/OFF回路、演算回路、フィルタ回路、増幅回路等によって構成され、光ビームスポットが光ディスク100の情報トラックに追従するように光ピックアップ124の対物レンズをフォーカス/トラッキング制御し、さらにトラッキングエラー信号の低域成分を用いて対物レンズが概略中立位置を保持するようにフィード制御を行う。
【0111】
フィード部127は、フィードモータ、ギヤ、スクリューシャフト(図示せず)等から構成され、フィードモータを回転させることによってキャリッジが光ディスク100の半径方向に移動するようになっている。
【0112】
ディジタル信号処理部133は、第1アナログ信号処理部128から送られてきたアナログ信号をディジタル信号に変換し、コントローラ131、レーザ駆動部132、紫外光照射手段駆動部137、バッファメモリ134の各部に送出する。
【0113】
コントローラ131は、このように構成されたサーボ部の全体のコントロールを行うものであり、第1アナログ信号処理部128、サーボ処理部129、モータ駆動部130、ディジタル信号処理部133、137は照射手段駆動部の各部から送られる信号が入力され、これらの信号の演算処理等を行い、この演算処理の結果(信号)を各部に送出し、各部にて駆動、処理を実行させ、各部の制御を行うものである。
【0114】
モータ駆動部130は、スピンドルモータ123から得られる逆起電流を利用してスピンドルモータ123の回転数に応じた周波数のFGパルス信号をディジタル信号処理部13内にあるPLL回路に出力する。
【0115】
PLL回路は、FGパルス信号を逓倍し、可視画像形成のために用いられるPLLクロック信号を生成する。例えば、スピンドルモータ123が1回転、すなわち光ディスクが1回転している間にn個のFGパルスを生成するものである場合に、PLL回路はFGパルスを逓倍したPLLクロック信号を生成する。
【0116】
ディジタル信号処理部133は、PLLクロック信号毎、つまりある一定角度分だけ光ディスクが回転する毎に1つの座標の階調度を示す画像形成に必要なデータをバッファメモリ134から読み出して、照射手段駆動部137に点灯制御信号を送る。
【0117】
この実施形態における紫外光照射手段111は、光ディスク100の半径方向にライン状に複数の照射部を有して構成される。このライン状の紫外光照射手段111としては、ランプ状のUV光源とアレイ型のシャッターを組み合わせたものや、それ自体で照射のON/OFFを制御できるUVアレイ光源が用いられる。シャッターを用いたものでは、シャッターの開閉を画像データに対応して、照射駆動手段137が制御する。また、UVアレイ光源を用いた場合には、照射駆動手段137がON/OFFを制御する。
【0118】
ところで、図6のレーベル記録面の記録トラックの概念図に示すように、光ディスク100は外周方向に従って記録するドット数が多くなる。ライン状の紫外光照射手段126を用いた場合、内周側と外周側では記録するドット数が異なる。このため、内周側の光照射手段126のドットに対応する光発光部は、外周側の発光部に比べて、点灯されるドットが少なくなる。図6の例によれば、まずL3、L2ラインに対応するドットを点灯させる。この時L1ラインは、点灯されていない。続いて、L3ラインの1ドット分光ディスク100が回転されると、L3ラインに対応するドットを点灯させる。この時L1、L2ラインは、点灯されていない。続いて、3ラインの1ドット分光ディスク100が回転されると、L1、L2、L3ラインに対応するドットを点灯させる。更に、L3ラインの1ドット分光ディスク100が回転されると、L2、L3ラインに対応するドットを点灯させる。この時L1ラインは、点灯されていない。
【0119】
このように、この例では、L3ラインの4ドットの点灯する間に、L2ラインは3ドット、L1ラインは1ドットと点灯制御され、内周側と外周側において記録するドット数を異ならせて記録するように、制御される。
【0120】
次に、光ディスク100のレーベル記録面への画像記録動作につき説明する。光ディスク装置は、光ディスク100が挿入されると、スピンドルモータ123を回転させ、起動処理を開始し、フォーカスサーボ、トラッキングサーボをかけ、ディスク判別を行なう。
【0121】
次に、使用者の指示により、レーベル記録面100aへの可視画像記録動作を行なう。レーベル記録面100aへの画像記録動作では、最初にディスク回転速度の設定が行なわれる。
【0122】
光ディスク100の回転速度の設定は,使用者の各種入力情報がホスト装置からディジタル信号処理部133を介してコントローラ131に伝えられ、コントローラ131はその情報を基に、サーボ処理部129を介してモータ駆動部130へ指示を出し、スピンドルモータ123を動作させる。また、コントローラ131は、第2サーボ処理部138、紫外線照射駆動手段137を介して、紫外光照射手段111へ情報を伝え、紫外光照射手段111の点灯制御動作を開始する。
【0123】
次に、コントローラ131は、スピンドルモータ123の動作状況から各記録位置線速度検出を行なう。記録位置線速度検出は、紫外光照射手段126の各照射部の半径位置とスピンドルモータ123の回転速度から計算される。
【0124】
続いて、光ディスク100のレーベル記録面100aへの画像記録動作が開始される。光ディスク100のレーベル記録面100aへの画像記録動作は、使用者から既に受け取っている情報を基に、まずコントローラ131がディジタル信号処理部133に指示を出し、それが紫外線照射駆動手段137を介して、紫外光照射手段111の順に伝わり、紫外光照射手段111の所望の照射部が点灯することにより行なわれる。
【0125】
光ディスク1が1回転することにより、光ディスク100のレーベル記録面100aに画像が記録される。ここで、紫外光照射手段111の記録パワーの出力に限界がある場合には、同一箇所に複数回の記録動作を行なう重ね記録を行うために、光ディスク100を数回転させ、同じ箇所に重ね記録するように構成すればよい。
【0126】
そして、光ディスク100のレーベル記録面100aに画像が記録した後、画像を安定化させる動作に入る。画像の安定化は、加熱手段110を会合に必要な所定温度に昇温し、スピンドルモータ123を駆動させ、光ディスク100を回転させ、加熱手段110の下を通過させる。1度の通過により会合に必要な所定温度まで昇温される場合には、光ディスク1の回転は1度でよいが、加熱手段110のパワーによれば、複数回、光ディスク100を回転させ安定化させればよい。
【0127】
次に、この発明の第3の実施形態につき説明する。第3の実施形態は、図7に示すように、上述の画像表示媒体に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段24と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25b、および形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25aを備えたものである。
【0128】
図7は、この発明の第3の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体をモノクロ画像形成および消去を行う画像形成装置の一例を示す模式図である。
【0129】
この発明にかかるシート状の画像表示媒体1が画像形成装置20のシート載置台26上にセットされる。画像表示媒体1は、基体10上にこの発明にかかるフォトクロミック化合物を含む表示層が設けられている。基体10の色は白色であり、フォトクロミック化合物が発色していない状態においては、画像表示媒体1は白色を呈している。
【0130】
画像表示媒体1が挿入口21から搬送ローラ22によって装置20内に搬送される。必要に応じて第一加熱手段25aにより表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温して画像を消去する。そして、紫外光照射手段24により、形成したい画像に対応させて部分的に紫外光を照射して発色させることによりモノクロ画像を形成する。
【0131】
紫外光照射手段24により、表示層にモノクロ画像が形成された画像表示媒体1は、搬送ローラ22により、更に送られ、第2の加熱手段25bにより、会合に必要な所定温度に昇温して画像が安定化される。
【0132】
第2の加熱手段25bにより、画像の安定化処理が終わった画像表示媒体1は、搬送ローラ23により、搬送され、排出口24より排出され、排紙トレイ27上に排出される。
【0133】
例えば、このような構成で装置を作製することで、モノクロ画像の形成及び消去が可能となる。
【0134】
上記した構成例では消去用の第一加熱手段25aと画像安定化用の第二加熱手段25bをそれぞれ別に設けたが、一つの加熱手段のみを用いて消去工程および安定化工程のそれぞれに必要な温度に加熱して使い分けても良い。その場合、画像表示媒体1は搬送されながら加熱手段による消去工程および紫外光照射手段24による画像形成工程を経た後に、再び加熱手段に搬送されて安定化工程が行なわれるように装置を構成することが必要となるが、様々な構成が考えられる。
【0135】
次に、この発明の第4の実施形態につき説明する。この実施形態は、図8に示すように、上述の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面100aに対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段111と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25b、および形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25aを備えた装置を構築することである。
【0136】
装置の構成例としては、図4及び図5に示したものと同様に構成される。図4及び図5の構成と異なるところは、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25b、および形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25aを有することである。
【0137】
尚、図4及び図5に示したものと同じ構成で、同一の加熱手段を消去工程および安定化工程に必要なそれぞれの温度に加熱することで使い分けるようにしてもよい。この場合、例えばまず必要に応じて表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温してディスクの回転を制御して画像を消去する。次に、紫外光照射手段により、形成したい画像に対応させて部分的に紫外光を照射して発色させることによりモノクロ画像を形成する。次に加熱手段により会合に必要な所定温度に昇温して画像を安定化させることでモノクロ画像の形成および消去が可能となる。
【0138】
次に、この発明の第5の実施形態につき説明する。この実施形態は、図9に示すように、上述の画像表示媒体1に対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段24と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段26、および画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25を備えて構成するものである。
【0139】
図9を用いて、この第5の実施形態の構成例および動作を説明する。
【0140】
この発明にかかるシート状の画像表示媒体1が画像形成装置20のシート載置台26上にセットされる。画像表示媒体1は、基体10上にこの発明にかかるフォトクロミック化合物を含む表示層が設けられている。基体10の色は白色であり、フォトクロミック化合物が発色していない状態においては、画像表示媒体1は白色を呈している。
【0141】
画像表示媒体1が挿入口21から搬送ローラ22によって装置20内に搬送される。必要に応じて第一加熱手段25aにより表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温して画像を消去する。そして、紫外光照射手段24により、表示層中に含まれる全てのフォトクロミック化合物を発色させる。
【0142】
そして、搬送ローラ22により、発色された画像表示媒体1は、可視光照射手段26へ送られる。可視光照射手段26により、形成したい画像に対応させて、発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を部分的に照射して、図1に示すように、フォトクロミック化合物を選択的に消色させる。選択的に消色させることにより、所望の画像が形成される。
【0143】
次に、加熱手段25により、表示層を会合に必要な所定温度に昇温して画像を安定化させ、排出口29から装置外に排出する。例えば、このような構成で装置を作製することでモノクロ画像または多色画像の形成が可能となる。
【0144】
次に、この発明の第6の実施形態を説明する。この実施形態は図10に示すように、上述の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面100aに対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段111と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段126、および画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段110を備えて構成される。
【0145】
図10を用いて、この第6の実施形態の装置の構成例および動作を説明する。
【0146】
例えば、既存の光ディスクドライブ装置のように、光ディスク100を固定し、さらに回転の制御が可能な装置をベースに用いる。光ディスク100の情報記録面と反対側の面にレーベル記録面100aが設けられる。このレーベル記録面100aには、上述したこの発明にかかる画像記録媒体が設けられている。この画像記録媒体1としては、カラー表示が可能に構成する。図1に示すように、画像表示媒体1は、第一、第二、第三の感光層11、12、13を有するものと同様に構成されている。なお、第1の感光層11は、極大吸収波長が400nm以上500nm未満の範囲にある上記したフルギド化合物を含む層、第2の感光層12は、極大吸収波長が500nm以上600nm未満の範囲にある上記したフルギド化合物を含む層、第3の感光層13は、極大吸収波長が400nm以上500nm未満の範囲にある上記したフルギド化合物を含む層で構成されている。このようにして形成した感光層は無色であり、基体10の色が白である。この画像表示媒体1は観察者には白と認識される。
【0147】
そして、このレーベル記録面100aに対向して加熱手段110、紫外光照射手段111、可視光照射手段126を設ける。可視光照射手段126は、カラー表示を行うために、それぞれの極大吸収波長に対応した3種類の可視光を照射を照射することができるように構成されている。例えば、3種類の発光ダイオードアレイで構成される。例えば、第1の発光ダイオードアレイとしては、中心波長460nm、半値幅10nmの可視光照射し、第2の発光ダイオードアレイとしては、中心波長560nm、半値幅10nmの可視光を照射し、発光ダイオードアレイとしては、中心波長660nm、半値幅10nmの可視光を照射できるように構成すればよい。上記した3種類の発光ダイオードアレイを対応する画像データに基づき照射することにより、照射された可視光に吸収波長を有する表示層が選択的に消色され、カラー画像が表示される。
【0148】
まず、光ディスク100を図中矢印方向に回転させ、紫外光照射手段111により、形成したい画像に対応させて部分的に紫外光を照射して発色させると、3つの表示層が全て発色し、黒色となる。次に、可視光照射手段126により、形成したい画像に対応させて発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を部分的に照射してフォトクロミック化合物を選択的に消色することにより、所望の画像を形成する。
【0149】
その後、加熱手段110により、会合に必要な所定温度に昇温して画像を安定化させることでモノクロ画像または多色画像の形成が可能となる。
【0150】
次に、上記した装置を光ディスクドライブ装置に適用した第6の実施形態につき、図11のブロック図に従い説明する。基本構成は図5に示したものと同じであるが、図5に示したものは紫外光照射手段111の照射により、画像記録を行っていたが、この図11に示すものは、可視光照射手段126にて、画像データに基づく画像記録を行っている。尚、図5と同じ構成については同じ符号を付し、説明の重複を避けるために、ここでは、その説明を省略する。
【0151】
図11は、この発明の第6実施の形態における画像記録装置を設けた光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0152】
図11において、120はドライブ機構部、123はスピンドルモータ、124は光ピックアップ、125はフィード部、111aは、紫外光照射手段、126は、可視光照射手段、125は、加熱手段、128は第1アナログ処理部、129はサーボ処理部、130はモータ駆動部、131はコントローラ、132はレーザ駆動部、133はディジタル信号処理部、134はバッファメモリ、135は第2モータ駆動部、136は第2アナログ信号処理部、137aは可視光駆動部、138は第2サーボ処理部、100は光ディスクである。
【0153】
図5にした実施形態は、紫外光照射手段にて、画像データの記録を行っている。このため、画素ドットに対応してオンオフ可能なように構成されている。これに対し、図11に示す実施形態においては、紫外光照射手段111aは、画素ドットに関係なく、画像表示媒体1全体を発色させればよい。このため、水銀ランプ等で光ディスク100の半径方向をライン状に照射できるようなものであればよい。そして、この実施形態においては、画像データに基づく光照射は、可視光照射手段126にて行う。このため、上述したように、可視光照射手段126は、カラー表示を行うために、それぞれの極大吸収波長に対応した3種類の可視光を照射を照射することができるように構成されている。この実施形態においては、第1の発光ダイオードアレイとして、中心波長460nm、半値幅10nmの可視光照射が可能なもの、第2の発光ダイオードアレイとして、中心波長560nm、半値幅10nmの可視光を照射が可能なもの、発光ダイオードアレイとして、中心波長660nm、半値幅10nmの可視光を照射が可能なものを用意し、この3つの発光ダイオードアレイで可視光照射手段126を構成している。この可視光照射手段126は、可視光駆動部137aから与えられ駆動信号により、画像データに対応した発光ダイオードアレイの各ドットの点灯制御が行われる。
【0154】
次に、光ディスク100のレーベル記録面への画像記録動作につき説明する。光ディスク装置は、光ディスク100が挿入されると、スピンドルモータ123を回転させ、起動処理を開始し、フォーカスサーボ、トラッキングサーボをかけ、ディスク判別を行なう。
【0155】
次に、使用者の指示により、レーベル記録面100aへの可視画像記録動作を行なう。レーベル記録面100aへの画像記録動作では、最初にディスク回転速度の設定が行なわれる。
【0156】
光ディスク100の回転速度の設定は,使用者の各種入力情報がホスト装置からディジタル信号処理部133を介してコントローラ131に伝えられ、コントローラ131はその情報を基に、サーボ処理部129を介して第1モータ駆動部130へ指示を出し、スピンドルモータ123を動作させる。また、コントローラ131は、第2サーボ処理部138、紫外線照射駆動手段137を介して、紫外光照射手段111a、可視光照射手段126へ情報を伝え、紫外光照射手段111a、可視光照射手段126の点灯制御動作を開始する。
【0157】
次に、コントローラ131は、スピンドルモータ123の動作状況から各記録位置線速度検出を行なう。記録位置線速度検出は、可視光照射手段126の各照射部の半径位置とスピンドルモータ123の回転速度から計算される。
【0158】
続いて、光ディスク100のレーベル記録面100aへの画像記録動作が開始される。光ディスク100のレーベル記録面100aへの画像記録動作は、まず、紫外光照射手段11aにより、レーベル記録面100aに紫外線を照射する。紫外線照射により、3つの表示層が全て発色し、黒色となる。紫外光照射手段111aは、光ディスク100が、紫外光照射手段111aにおいて、1回転したことを検出すると、その照射が停止する。このように制御することで、可視光照射手段126で消色されたドットが再発色することを防止している。
【0159】
そして、使用者から既に受け取っている情報を基に、まずコントローラ131がディジタル信号処理部133に指示を出し、それが可視光駆動部137aを介して、可視光照射手段126の順に伝わり、可視光照射手段126の所望の発光ダイオードが点灯することにより、照射された可視光に吸収波長を有する表示層が選択的に消色され、カラー画像又はモノクロ画像が表示される。
【0160】
光ディスク1が1回転することにより、光ディスク100のレーベル記録面100aに画像が記録される。ここで、可視光照射手段126の記録パワーの出力に限界がある場合には、同一箇所に複数回の記録動作を行なう重ね記録を行うために、光ディスク100を数回転させ、同じ箇所に重ね記録するように構成すればよい。
【0161】
そして、光ディスク100のレーベル記録面100aに画像が記録した後、画像を安定化させる動作に入る。画像の安定化は、加熱手段110を会合に必要な所定温度に昇温し、スピンドルモータ123を駆動させ、光ディスク100を回転させ、加熱手段110の下を通過させる。1度の通過により会合に必要な所定温度まで昇温される場合には、光ディスク1の回転は1度でよいが、加熱手段110のパワーによれば、複数回、光ディスク100を回転させ安定化させればよい。加熱手段110はセラミックヒータを用い、画像表示媒体の表示層をそれぞれ100℃および50℃に昇温できるように、画像表示媒体の搬送速度によってその温度が制御されるように構成している。
【0162】
次に、この発明の第7の実施形態は、図12に示すように、上述の画像表示媒体に対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段24と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段26と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25b、および形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25aを備えたものである。
【0163】
図12は、この発明の第7の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体を多色画像形成又はモノクロ画像形成および消去を行う画像形成装置の一例を示す模式図である。
【0164】
この発明にかかるシート状の画像表示媒体1が画像形成装置20のシート載置台26上にセットされる。画像表示媒体1は、基体10上にこの発明にかかるフォトクロミック化合物を含む3つの表示層が積層して設けられている。基体10の色は白色であり、フォトクロミック化合物が発色していない状態においては、画像表示媒体1は白色を呈している。
【0165】
画像表示媒体1が挿入口21から搬送ローラ22によって装置20内に搬送される。必要に応じて第一加熱手段25aにより表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温して画像を消去する。そして、紫外光照射手段24により、紫外光を照射して、表示層に含まれる全てのフォトクロミック化合物を発色させる。
【0166】
可視光照射手段26により、発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を部分的に照射してフォトクロミック化合物を選択的に消色することにより、所望の画像を形成する。
【0167】
表示層に画像が形成された画像表示媒体1は、搬送ローラ22により、更に送られ、第2の加熱手段25bにより、会合に必要な所定温度に昇温して画像が安定化される。
【0168】
第2の加熱手段25bにより、画像の安定化処理が終わった画像表示媒体1は、搬送ローラ23により、搬送され、排出口24より排出され、排紙トレイ27上に排出される。
【0169】
例えば、このような構成で装置を作製することで、例えばこのような構成で装置を作製することで、カラー画像又はモノクロ画像の形成および消去が可能となる。
【0170】
上記した構成例では消去用の第一加熱手段25aと画像安定化用の第二加熱手段25bをそれぞれ別に設けたが、一つの加熱手段のみを用いて消去工程および安定化工程のそれぞれに必要な温度に加熱して使い分けても良い。その場合、画像表示媒体1は搬送されながら加熱手段による消去工程および紫外光照射手段24による画像形成工程を経た後に、再び加熱手段に搬送されて安定化工程が行なわれるように装置を構成することが必要となるが、様々な構成が考えられる。
【0171】
次に、この発明の第8の実施形態につき説明する。この実施形態は、図13に示すように、上述の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面100aに対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段111と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段126と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段125b、および形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段125aを備えた装置を構築することである。
【0172】
装置の構成例としては、図10及び図11に示したものと同様に構成される。図10及び図11の構成と異なるところは、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段125b、および形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段125aを有することである。
【0173】
装置の構成例としては図12に示したのと同様の構成で、同一の加熱手段を消去工程および安定化工程に必要なそれぞれの温度に加熱することで使い分けるようにしてもよい。この場合、例えばまず必要に応じて表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温して光ディスク100の回転を制御して画像を消去する。次に、紫外光照射手段111により、表示層中に含まれる全てのフォトクロミック化合物を発色させ、次に可視光照射手段126により、形成したい画像に対応させて発色した各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を部分的に照射してフォトクロミック化合物を選択的に消色することにより、所望の画像を形成する。次に、加熱手段により会合に必要な所定温度に昇温して画像を安定化させることでモノクロ画像または多色画像の形成が可能となる。
【0174】
加熱手段については、図13に示すように消去工程用および安定化工程用の専用の加熱手段を1つずつ設ける構成としてもよい。
【0175】
この発明の第9の実施形態は、図14に示すように、上述の画像表示媒体に対し、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段25を備えた装置を構成するものである。
【0176】
図14を用いて装置の構成例および動作を説明する。
【0177】
画像表示媒体1が挿入口21から搬送ローラ22によって装置内に搬送されると、加熱手段25により表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温して画像が消去されて、排出口29から装置外に排出される。また別の構成例として、図15に示すように消去工程がなされた複数の画像表示媒体1が装置内に保管され、必要に応じて装置外に取り出されるような構成としてもよい。
【0178】
本発明の第10の実施形態は、図16に示すように、上述の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面110aに対し、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段110を備えた装置を構成するものである。
【0179】
図16を用いて装置の構成例および動作を説明する。既存の光ディスクドライブのように、光ディスク100を固定しさらに回転の制御が可能な装置をベースに用い、加熱手段110を設ける。画像を消去したいディスク100を装置にセットして、加熱手段110により表示層を画像の消去に必要な所定温度に昇温してディスクの回転を制御して画像を消去する。
【0180】
またはディスクの回転機構をもたない、図14および図15と同様の構成の装置を用いて消去することもできる。
【実施例】
【0181】
以下、この発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0182】
(実施例1)
フォトクロミック化合物として、5’−ブロモ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール](以下、「PC1」と記す。)を用い、長鎖構造化合物として1,3−ジドデシルウレアを用い、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いた。20重両部のPC1に対し、1,3−ジドデシルウレアを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加した。溶媒としてトルエンを用い、塗布液を調製して石英基板上にキャスト膜(2μm)を作製した。
【0183】
光照射前の吸収スペクトルを測定したところ、300〜400nmの範囲に吸収帯が認められ、無色であった。
【0184】
これに高圧水銀ランプから取り出した366nmの紫外光を照射したところ青紫に発色し、吸収スペクトルの極大吸収波長は630nmであった。これをヒートローラーにより40℃に加熱処理したところ、色相が変化し、吸収スペクトルの極大吸収波長は645nmであった。
【0185】
これを再びヒートローラーにより一時的に100℃に加熱処理したところ、無色に戻り、可視域に吸収は見られなかった。
【0186】
次に、上と同様の処方によるキャスト膜を白色PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(厚さ188μm)上に形成し、さらに保護層としてPVA(ポリビニルアルコール)膜(2μm)を形成し、画像表示媒体を作製した。このようにして形成した表示層は無色であり、基板の色が白であるため、作製した画像表示媒体は観察者には白と認識された。
【0187】
次に、この画像表示媒体の表示層に366nmの紫外光を再び照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより40℃に加熱処理したが、表示層に変化は見られず、これに10万Lxの白色光を照射すると数分で消色した。
【0188】
この画像表示媒体の表示層に再度366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより50℃に加熱処理したところ、表示層の色相が変化し、これに10万Lxの白色光を24時間照射しても発色状態に全く変化が見られなかった。
【0189】
(比較例1)
長鎖構造化合物を用いないこと以外は全て実施例1と同様にして画像表示媒体を作製した。この画像表示媒体の表示層に366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより35℃、40℃、45℃、50℃の各温度で加熱処理したが、いずれの場合も表示層に変化は見られず、10万Lxの白色光を照射すると数分で消色した。
【0190】
(比較例2)
長鎖構造化合物として1,3−ジドデシルウレアに替えてn−オクタデカンを用いること以外は全て実施例1と同様にして画像表示媒体を作製した。この画像表示媒体の表示層に366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより35℃、40℃、45℃、50℃の各温度で加熱処理したが、いずれの場合も表示層の色相が変化し、10万Lxの白色光を24時間照射しても発色状態に全く変化が見られなかった。
【0191】
(実施例2)
フォトクロミック化合物として、5’−クロロ−6−シアノ−1’,3’−ジヒドロ−3’,3’−ジメチル−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール](以下、「PC2」と記す。)を用い、長鎖構造化合物として1,3−ジドデシルウレアを用い、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いた。20重両部のPC2に対し、1,3−ジドデシルウレアを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加した。溶媒としてトルエンを用い、塗布液を調製して石英基板上にキャスト膜(2μm)を作製した。
【0192】
光照射前の吸収スペクトルを測定したところ、300〜400nmの範囲に吸収帯が認められ、無色であった。
【0193】
これに高圧水銀ランプから取り出した366nmの紫外光を照射したところ青紫に発色し、吸収スペクトルの極大吸収波長は570nmであった。これをヒートローラーにより40℃に加熱処理したところ、色相が変化し、吸収スペクトルの極大吸収波長は532nmであった。
【0194】
これを再びヒートローラーにより一時的に100℃に加熱処理したところ、無色に戻り、可視域に吸収は見られなかった。
【0195】
次に、上と同様の処方によるキャスト膜(2μm)を白色PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(厚さ188μm)上に形成し、さらに保護層としてPVA(ポリビニルアルコール)膜(2μm)を形成し、画像表示媒体を作製した。このようにして形成した表示層は無色であり、基板の色が白であるため、作製した画像表示媒体は観察者には白と認識された。
【0196】
次に、この画像表示媒体の表示層に366nmの紫外光を再び照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより40℃に加熱処理したが、表示層に変化は見られず、これに10万Lxの白色光を照射すると数分で消色した。
【0197】
この画像表示媒体の表示層に再度366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより50℃に加熱処理したところ、表示層の色相が変化し、これに10万Lxの白色光を24時間照射しても発色状態に全く変化が見られなかった。
【0198】
(実施例3)
フォトクロミック化合物として、PC1およびPC2を用い、長鎖構造化合物としては1,3−ジドデシルウレアを用い、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いた。20重量部ずつのPC1およびPC2に対し、1,3−ジドデシルウレアを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加した。溶媒としてトルエンを用い塗布液を調製して、白色PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(厚さ188μm)上にキャスト膜(2μm)を形成し、さらに保護層としてPVA(ポリビニルアルコール)膜(2μm)を形成して画像表示媒体を作製した。このようにして形成した表示層は無色であり、基板の色が白であるため、作製した画像表示媒体は観察者には白と認識された。
【0199】
この画像表示媒体の表示層に366nmの紫外光を照射するとPC1、PC2ともに発色し、青色を呈した。また、これに白色光を照射したところ、再び表示層は無色透明になったため、画像表示媒体は白色と認識された。
【0200】
この画像表示媒体に、再び366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に中心波長630nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部は赤紫を呈した。また、別の一部に中心波長570nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部は青紫を呈した。これらをヒートローラーにより40℃に加熱処理したが、表示層に変化は見られず、これに10万Lxの白色光を照射すると全体が数分で消色した。
【0201】
この画像表示媒体に、再び366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に中心波長630nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部は赤紫を呈した。また、別の一部に中心波長570nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部は青紫を呈した。これらをヒートローラーにより50℃に加熱処理したところ、赤紫色だった部分はマゼンタを呈し、青紫色だった部分はシアンを呈した。これらに10万Lxの白色光を24時間照射しても色相および色濃度に全く変化が見られなかった。
【0202】
(実施例4)
フォトクロミック化合物として、1’,3’−ジヒドロ−5’−(ジメチルアミノ)−3’,3’−ジメチル−6−ニトロ−1’−オクタデシル−8−ドコサノイルオキシメチルスピロ[2H−1−ベンゾピラン−2,2’−[2H]インドール](以下、「PC3」と記す。)を用い、長鎖構造化合物としてオクタデカノン酸オクタデカノイルアミドを用い、ポリマーとしてポリメタクリル酸メチルを用いた。20重両部のPC3に対し、オクタデカノン酸オクタデカノイルアミドを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加した。溶媒としてトルエンを用い、塗布液を調製して石英基板上にキャスト膜(2μm)を作製した。光照射前の吸収スペクトルを測定したところ、300〜400nmの範囲に吸収帯が認められ、無色であった。
【0203】
これに高圧水銀ランプから取り出した366nmの紫外光を照射したところ赤色に発色し、吸収スペクトルの極大吸収波長は495nmであった。これをヒートローラーにより40℃に加熱処理したところ、色相が黄色に変化し、吸収スペクトルの極大吸収波長は465nmであった。
【0204】
これを再びヒートローラーにより一時的に100℃に加熱処理したところ、無色に戻り、可視域に吸収は見られなかった。
【0205】
次に、上と同様の処方によるキャスト膜(2μm)を白色PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(厚さ188μm)上に形成し、さらに保護層としてPVA(ポリビニルアルコール)膜(2μm)を形成し、画像表示媒体を作製した。このようにして形成した表示層は無色であり、基板の色が白であるため、作製した画像表示媒体は観察者には白と認識された。
【0206】
次に、この画像表示媒体の表示層に366nmの紫外光を再び照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより40℃に加熱処理したが、表示層に変化は見られず、これに10万Lxの白色光を照射すると数分で消色した。
【0207】
この画像表示媒体の表示層に再度366nmの紫外光を照射して発色反応を飽和させた後、ヒートローラーにより50℃に加熱処理したところ、表示層の色相が黄色に変化し、これに10万Lxの白色光を24時間照射しても発色状態に全く変化が見られなかった。
【0208】
20重量部のPC1に対し、1,3−ジドデシルウレアを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加した。溶媒としてトルエンを用い塗布液を調製して、白色PET(ポリエチレンテレフタレート)基板(厚さ188μm)上にキャスト膜(2μm)を形成し、PVAによる中間層(2μm)を介して、その上に、20重量部のPC2に対し、1,3−ジドデシルウレアを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加した。溶媒としてトルエンを用いた塗布液によるキャスト膜(2μm)を形成し、さらに、PVAによる中間層(2μm)を介して、その上に、20重量部のPC3に対し、オクタデカノン酸オクタデカノイルアミドを20重量部添加し、ポリメタクリル酸メチルを80重量部添加し、溶媒としてトルエンを用いた塗布液によるキャスト膜(2μm)を形成し、さらに保護層としてPVA膜(2μm)を形成して画像表示媒体を作製した。このようにして形成した表示層は無色であり、基板の色が白であるため、作製した画像表示媒体は観察者には白と認識された。
【0209】
この画像表示媒体の表示層に、366nmの紫外光を照射するとPC1、PC2、PC3すべてが発色し、黒色を呈した。また、これに白色光を照射したところ、再び表示層は無色透明になったため、画像表示媒体は白色と認識された。
【0210】
この画像表示媒体に、再び366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に中心波長500nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC3が選択的に消色され、照射部は青色を呈した。また、別の一部に中心波長570nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部は青紫色を呈した。また、別の一部に中心波長630nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部は赤紫色を呈した。また、これに白色光を照射したところ、再び表示層は無色透明になったため、画像表示媒体は白色と認識された。
【0211】
この画像表示媒体に、再び366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に中心波長500nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC3が選択的に消色され、照射部は青緑色を呈した。また、別の一部に中心波長570nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部は青紫色を呈した。また、別の一部に中心波長630nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部は赤紫色を呈した。これらをヒートローラーにより40℃に加熱処理したが、表示層に変化は見られず、これに10万Lxの白色光を照射すると全体が数分で消色した。
【0212】
この画像表示媒体に、再び366nmの紫外光を照射して発色させた後、その一部に中心波長500nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC3が選択的に消色され、照射部は青緑色を呈した。また、別の一部に中心波長570nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC2が選択的に消色され、照射部は青紫色を呈した。また、別の一部に中心波長630nm、半値幅10nmの可視光を照射したところ、PC1が選択的に消色され、照射部は赤紫色を呈した。これらをヒートローラーにより50℃に加熱処理したところ、青緑色だった部分は青色を呈し、青紫色だった部分は緑色を呈し、赤紫色だった部分は赤色を呈した。これらに10万Lxの白色光を24時間照射しても色相および色濃度に全く変化が見られなかった。
【0213】
(実施例5)
図7に示す構成の画像形成および画像消去が可能な装置を作製した。画像消去用の第一加熱手段25a及び画像安定化用の第二加熱手段25bはともにセラミックヒータを用い、画像表示媒体の表示層をそれぞれ100℃および50℃に昇温できるように、画像表示媒体の搬送速度によってその温度が制御されるように構成した。紫外光照射手段としてはUV−LEDアレイ(380nm、200dpi)を用いた。
【0214】
本実施例で作製した装置を用い、実施例1および実施例4で作製した画像表示媒体に対して画像を形成したところ、それぞれシアン色および黒のモノクロ画像が形成され、これらに10万Lxの白色光を24時間照射しても色相および色濃度に全く変化が見られなかった。またこれらの画像表示媒体には何度も画像を書き換えることが可能であった。
【0215】
(実施例6)
図4に示す構成の画像形成および画像消去が可能な装置を作製した。画像消去用の第一加熱手段及び画像安定化用の第二加熱手段はともにセラミックヒータを用い、画像表示媒体の表示層をそれぞれ100℃および50℃に昇温できるように、画像表示媒体の搬送速度によってその温度が制御されるように構成した。紫外光照射手段としてはブラックライトを用い、可視光照射手段としてはRGB−LEDアレイ(500nm、570nm、640nm、200dpi)を用いた。
【0216】
実施例4で作製した画像表示媒体に対し、本実施例で作製した装置を用いて画像を形成したところ、フルカラー画像が形成され、これらに10万Lxの白色光を24時間照射しても色相および色濃度に全く変化が見られなかった。またこれらの画像表示媒体には何度も画像を書き換えることが可能であった。
【0217】
(実施例7)
既存の光ディスクドライブ装置を利用し、図4に示すように加熱手段110および紫外光照射手段111を設け、またディスクの回転速度の制御が可能なように改造を施し、光ディスク状の画像表示媒体に対する画像形成および画像消去が可能な装置を作製した。加熱手段としてはセラミックヒータを用い、画像消去工程には表示層を100℃に昇温できるように、画像安定化工程には表示層を50℃に昇温できるように温度の制御がなされるようにした。紫外光照射手段111には、UV−LEDアレイ(380nm、200dpi)を用いた。画像形成(書き換え)の手順としては、まず加熱手段により画像消去工程が行なわれ、続いて紫外光照射手段により画像形成工程が行なわれ、最後に加熱手段により画像安定化工程が行なわれるようにした。
【0218】
本実施例で作製した装置を用い、実施例2および実施例4の要領で光ディスクのレーベル記録面上に表示層を形成して作製した画像表示媒体に対して画像を形成したところ、それぞれマゼンタ色および黒のモノクロ画像が形成され、これらに10万Lxの白色光を24時間照射しても色相および色濃度に全く変化が見られなかった。またこれらの画像表示媒体には何度も画像を書き換えることが可能であった。
【0219】
(実施例8)
既存の光ディスクドライブ装置を利用し、図10に示すように加熱手段、紫外光照射手段111および可視光照射手段126を設け、またディスクの回転速度の制御が可能なように改造を施し、光ディスク状の画像表示媒体に対する画像形成および画像消去が可能な装置を作製した。加熱手段110としてはセラミックヒータを用い、画像消去工程には表示層を100℃に昇温できるように、画像安定化工程には表示層を50℃に昇温できるように温度の制御がなされるようにした。紫外光照射手段111としてはUV−LED(380nm)を用い、可視光照射手段126としてはRGB−LEDアレイ(500nm、570nm、640nm、200dpi)を用いた。画像形成(書き換え)の手順としては、まず加熱手段110により画像消去工程が行なわれ、続いて紫外光照射手段111による全面発色および可視光照射手段126による選択消色により画像形成工程が行なわれ、最後に加熱手段により画像安定化工程が行なわれるようにした。
【0220】
本実施例で作製した装置を用い、実施例4の要領で光ディスクのレーベル記録面上に表示層を形成して作製した画像表示媒体に対して画像を形成したところ、フルカラー画像が形成され、これらに10万Lxの白色光を24時間照射しても色相および色濃度に全く変化が見られなかった。またこれらの画像表示媒体には何度も画像を書き換えることが可能であった。
【0221】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0222】
この発明は、所謂電子ペーパ、CD、DVDのレーベル面などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】この発明に用いられる画像表示媒体の構成を示す模式図である。
【図2】フォトクロミック化合物の吸光度と波長との関係を示す模式図である。
【図3】この発明の画像形成装置の第1の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体をモノクロ画像形成を行う画像形成装置を示す模式図である。
【図4】この発明の画像形成装置の第2の実施形態を示し、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置を示す模式図である。
【図5】この発明の画像形成装置の第2の実施形態を示し、光ディスクドライブ装置にこの発明の画像記録装置を設けた装置を示すブロック図である。
【図6】レーベル記録面の記録トラックの概念図である。
【図7】この発明の第3の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体をモノクロ画像形成および消去を行う画像形成装置を示す模式図である。
【図8】この発明の画像形成装置の第4の実施形態を示し、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置を示す模式図である。
【図9】この発明の第5の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体をモノクロ画像形成および消去を行う画像形成装置を示す模式図である。
【図10】この発明の画像形成装置の第6の実施形態を示し、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置を示す模式図である。
【図11】この発明の画像形成装置の第6の実施形態を示し、光ディスクドライブ装置にこの発明の画像記録装置を設けた装置を示すブロック図である。
【図12】この発明の第7の実施形態を示し、シート状の画像表示媒体を多色画像形成又はモノクロ画像形成および消去を行う画像形成装置を示す模式図である。
【図13】この発明の画像形成装置の第8の実施形態を示し、光ディスクレーベル記録面に画像を形成する装置を示す模式図である。
【図14】この発明の画像消去装置を示す模式図である。
【図15】この発明の画像消去装置を示す模式図である。
【図16】この発明の画像消去装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0224】
1 画像表示媒体
10 支持基体
11、12、13 表示層
24 紫外光照射手段
25 加熱手段
26 可視光照射手段
100 光ディスク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)で表わされるフォトクロミック化合物および一般式(II)で表わされる長鎖構造を有する化合物を含むフォトクロミック組成物。
【化1】

(ただし、R、Rは独立して、炭素数12以上のアルキル基、アルカノイルオキシメチル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アルキルフェニル基から選ばれるものであり、R〜R13は独立して水素または置換基である。)
【化2】

(ただし、R14、R15は独立して水素またはアルキル基であり、Xは水素結合性または会合性を有する構造であり、全体としての炭素数が12以上の長鎖構造である。)
【請求項2】
請求項1に記載のフォトクロミック組成物による表示層が支持基体上に形成されていることを特徴とする画像表示媒体。
【請求項3】
会合状態における色相が異なる2種以上のフォトクロミック化合物を表示層中に含むことを特徴とする請求項2に記載の画像表示媒体。
【請求項4】
会合状態においてイエローの色相を示す第1のフォトクロミック化合物と、マゼンタの色相を示す第2のフォトクロミック化合物と、シアンの色相を示す第3のフォトクロミック化合物とを表示層中に含むことを特徴とする請求項3に記載の画像表示媒体。
【請求項5】
前記表示層が、第1のフォトクロミック化合物のみを含む表示層と、第2のフォトクロミック化合物のみを含む表示層と、第3のフォトクロミック化合物のみを含む表示層が積層された構造であることを特徴とする請求項4に記載の画像表示媒体。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれかに記載の画像表示媒体に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項2ないし5のいずれかに記載の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面に部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に昇温する加熱手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項2ないし5のいずれかに記載の画像表示媒体に対し、部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項2ないし5のいずれかに記載の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面の表示層に部分的に紫外光を照射する紫外光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項2ないし5のいずれかに記載の画像表示媒体に対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項2ないし5のいずれかに記載の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面の表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項2ないし5のいずれかに記載の画像表示媒体に対し、表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項13】
請求項2ないし5のいずれかに記載の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面を有する光ディスクを回転駆動する回転駆動手段と、前記光ディスクレーベル記録面の表示層に紫外光を照射する紫外光照射手段と、発色状態における各々のフォトクロミック化合物の極大吸収波長に対応した波長域の可視光を照射する可視光照射手段と、画像安定化に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段と、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
請求項2ないし5のいずれかに記載の画像表示媒体に対し、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段を備えることを特徴とする画像消去装置。
【請求項15】
請求項2ないし5にいずれかに記載の表示層が形成された光ディスクレーベル記録面に対し、形成された画像の消去に必要な所定温度に表示層を昇温する加熱手段を備えることを特徴とする画像消去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−164784(P2008−164784A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352279(P2006−352279)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】