説明

フォトマスクケース

【課題】位置を確定する作業中に塵などがフォトマスクに付着すること及び運搬中にガタツキが発生することを抑制することができるフォトマスクケースを提供する。
【解決手段】
収納するフォトマスクの上下方向一方側に当接する当接部と、該フォトマスクの左右方向及び上下方向での位置を確定するための保持手段とを備えたケース本体と、該フォトマスクを厚み方向でケース本体側に押し付けて固定するための蓋体とを備え、保持手段が、フォトマスクの左右方向及び上下方向での位置の確定を行う左右方向保持手段8及び上下方向保持手段11を備え、左右方向保持手段8の操作部8C及び左右方向保持手段11の操作部11Cをフォトマスクの左右両端から外れた外側の位置に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばガラス基板上に回路パターンを転写するためのフォトマスクを収納して保管及び運搬するためのフォトマスクケースに関し、特に縦寸法及び横寸法が共に1mを超えるような大型のフォトマスクを収納する際に有用なフォトマスクケースに関する。
【背景技術】
【0002】
上記フォトマスクケースは、フォトマスクを収納するための収納空間を形成するための基部と蓋部とから構成され、基部には、フォトマスクを載置して仮置き状態にするための支持用保持手段と、この支持用保持手段に一体化されてフォトマスクの高さ位置を調整する高さ調整部と、フォトマスクを左右方向での位置を確定するためのサイド方向位置決め用保持手段と、フォトマスクを厚さ方向での位置を確定するための厚さ方向位置決め用保持手段とを備えている。
そして、前記高さ調整部を備えた支持用保持手段が、フォトマスクの4つの角部にそれぞれ配置され、前記サイド方向位置決め用保持手段が、フォトマスクの左右両側の上下方向中間部の2箇所にそれぞれ配置され、厚さ方向位置決め用保持手段が、フォトマスクの左右幅の中央部の上下方向両端にそれぞれ配置され、全ての保持手段がそれぞれのボルトにより位置固定及び固定解除ができるように構成されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−32915号公報(図2〜図6参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成によれば、フォトマスクケースを構成する基部を例えば斜めに立てかけ、その立てかけた基部にフォトマスクを仮置きし、その仮置きしたフォトマスクに対して各保持手段のボルトを操作してフォトマスクの位置確定を行うようにしているため、次のような不都合が発生していた。
即ち、厚さ方向位置決め用保持手段が、フォトマスクの左右幅の中央部の上下方向両端にそれぞれ配置されているため、特に上側の厚さ方向位置決め用保持手段を操作する場合に、作業者がフォトマスクの左右幅の中央前方に立って操作しなければならない。従って、作業中に作業者の抜けた髪の毛や衣服に付着している塵がフォトマスクの表面に付着してしまう。
また、特に大型のフォトマスクは、重量が重いため、そのような重いフォトマスクの下端を、上下方向に移動可能な厚さ方向位置決め用保持手段及び高さ位置決め用保持手段により保持する構成では、それら保持手段のボルトがフォトマスクの重量を受けて緩んでしまうことがあり、運搬中に上下にガタツキが発生してしまう。
【0005】
本発明は前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、位置を確定する作業中に塵などがフォトマスクに付着すること及び運搬中にガタツキが発生することを抑制することができるフォトマスクケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のフォトマスクケースは、前述の課題解決のために、収納するフォトマスクの上下方向一方側に当接する当接部と、該フォトマスクの左右方向及び上下方向での位置を確定するための保持手段とを備えたケース本体と、該フォトマスクを厚み方向でケース本体側に押し付けて固定するための蓋体とを備え、前記保持手段が、前記フォトマスクの左右方向での位置を確定すべく、該フォトマスクの左右両側の上下方向中間部に対応する位置にそれぞれ配置される左右方向保持手段と、前記フォトマスクの上下方向での位置を確定すべく、該フォトマスクの上下方向他方側の左右両側に対応する位置にそれぞれ配置される上下方向保持手段とを備え、前記フォトマスクの左右方向での位置確定を可能にするための左右方向保持手段の操作部及び該フォトマスクの上下方向での位置確定を可能にするための上下方向保持手段の操作部を、前記フォトマスクの左右両端から外れた位置に対応する位置に配置したことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、まず、例えば当接部を下方側にしてケース本体を上下に立てる、あるいは斜めに立てかけて、フォトマスクの下端を当接部に当接させて該フォトマスクを支持する。この状態において、フォトマスクの左右方向での位置確定を可能にするための左右方向保持手段の操作部及びフォトマスクの上下方向での位置確定を可能にするための上下方向保持手段(フォトマスクの上端に配置されている)の操作部を操作する場合には、それら両方の操作部がフォトマスクの左右両端から外れた位置に配置されていることから、フォトマスクの左右端から外側に外れた位置でそれら操作部を操作することができる。即ち、作業者は、ケース本体の当接部に当接して支持されているフォトマスクの前方に位置することなく、2つの操作部を操作することができる。その結果、作業中に作業者の抜けた髪の毛や衣服に付着している塵がフォトマスクの表面に付着することを抑制することができる。
また、フォトマスクの下端が下方側に設けた当接部に支持される構成であるから、特に重量のあるフォトマスクをガタツキなく確実に支持することができる。
前述とは逆に、当接部が上方側に設けられている場合には、フォトマスクの上端を当接部に当接させて該フォトマスクを支持する。この状態において、前記と同様に、左右方向保持手段の操作部及び上下方向保持手段(フォトマスクの下端に配置されている)の操作部をフォトマスクの左右両端から外れた位置に位置している作業者によって操作することができる。運搬する際には、当接部が下方に位置するようにフォトマスクケースの上下が逆になるようにフォトマスクケースを引っくり返すことになる。
更に、当接部はフォトマスクを支持するだけの構成であるため、当接部に対する操作が不要になる。その結果、操作が必要となる部品点数を少なくすることができる。
【0008】
また、本発明のフォトマスクケースは、前記当接部が、前記ケース本体の下方側に配置され、前記上下方向保持手段が、前記フォトマスクの上端の左右両側のコーナー部に配置され、かつ、該フォトマスクのコーナー部の上端から横側に沿って折れ曲がった鉤型形状に構成され、該フォトマスクのコーナー部の横側に配置された上下方向保持手段の横側部に、該上下方向保持手段の操作部を備えていてもよい。
【0009】
上記のように、上下方向保持手段を、当接状態にしたフォトマスクのコーナー部の上端から横側に沿って折れ曲がった鉤型形状に構成すれば、上下方向保持手段の占めるスペースを少なくすることができ、フォトマスクケースの小型化を図ることができる。
【0010】
また、本発明のフォトマスクケースは、前記上下方向保持手段の横側部に、上下方向に沿う長孔を形成し、該長孔を貫通すると共に前記ケース本体側に備えたネジ孔に螺合することにより該横側部を該ケース本体に固定するための固定ネジから該上下方向保持手段の操作部を構成していてもよい。
【0011】
また、本発明のフォトマスクケースは、前記長孔が、複数個備えられ、それら複数の長孔が上下方向で並ぶように並設されていてもよい。
【0012】
上記のように、上下方向で並ぶように複数の長孔を並設するようにすれば、上下方向保持手段を上下方向にスムーズに移動させるガイド部として機能させることができる。しかも、複数の長孔を上下方向で並ぶように配置することによって、例えば複数の長孔を左右方向に間隔を置いて平行に並べて配置する場合に比べて、横側部の左右幅をコンパクトにすることができ、フォトマスクケースの小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
左右方向保持手段の操作部及び上下方向保持手段の操作部を当接部に当接状態にしたフォトマスクの左右両端から外れた位置に配置することによって、従来のようにフォトマスクの前方でそれら操作部を操作しなくて済む。また、フォトマスクの上下方向の一方を当接部により当接支持させることによって、従来のようにネジが緩んで運搬中にフォトマスクケース内でガタツクといったことがない。したがって、位置を確定する作業中に髪の毛や塵などがフォトマスクに付着すること及び運搬中にガタツキが発生することを抑制することができるフォトマスクケースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】フォトマスクケースのケース本体の正面図である。
【図2】フォトマスクケースの蓋体の正面図である。
【図3】フォトマスクを収納したケース本体に蓋体を閉じる直前の状態を示す上下方向に沿って切断した端面図である。
【図4】フォトマスクを収納したケース本体に蓋体を閉じた状態を示す上下方向に沿って切断した端面図である。
【図5】上下方向保持手段を示し、(a)はそれの側面図、(b)はそれの正面図、(c)はそれの底面図である。
【図6】左右方向保持手段を示し、(a)はそれの平面図、(b)はそれの正面図、(c)はそれの側面図である。
【図7】当接部を示し、(a)はそれの平面図、(b)はそれの側面図、(c)はそれの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図3及び図4に、フォトマスク1を収納して保管や運搬を行うための本発明のフォトマスクケース2を示している。
前記フォトマスクケース2は、前方が開放され、フォトマスク1を収納するための箱型形状のケース本体3と、このケース本体3の前方の開口を閉じて密閉するための箱型形状の蓋体4とを備えている。
【0016】
前記フォトマスク1は、所定の大きさに加工されたブランクス上に回路パターンが形成されている。このように形成されたフォトマスクを用いて、ガラス基板に転写することによって、半導体素子やフラットパネルディスプレイといった電子部品を製造することができる。
【0017】
ケース本体3は、図1、図3及び図4に示すように、正方形状の平板部3Aと、この平板部3Aの外周縁の4辺から前方側に垂直に延びる4つの板部3B,3C,3D,3Eとを備え、平板部3Aの前面に左右方向及び上下方向に向かって延びる保形用のリブ3F,3Gを備えている。
【0018】
また、ケース本体3の下端には、フォトマスク1の下端に当接する4個の当接部5A、5B,6A,6Bを備えている。これら当接部のうち左右方向両端に位置する当接部5A,5Bのうちの左側の当接部5Aは、図1、図3及び図7(a),(b),(c)に示すように、平板部3Aの前面から延びる板部5Iと、この板部5Iの前端に一体化された直方体形状のブロック体5Jとを備えている。そして、ブロック体5Jの前方でかつ左右方向内側に位置する特定領域に他の部分よりも凹んだ凹部5aが形成されている。また、前記凹部5aの底面に左右方向に沿って溝5m(図7のみ図示)を形成し、その溝5mにフォトマスク1の下端面が当接するパッキン7(図7のみ図示)を嵌め込んでいる。この凹部5aは、前方側のみ開放された構成となっており、後側に備えた縦壁部5Tにフォトマスク1の下端部の前面(表面)が当接することによって、フォトマスク1の厚み方向での位置を確定することができるようになっている。図7(b)では、2点鎖線で示すフォトマスク1を下降させて該フォトマスク1の下端を当接部5Aに支持させる直前の状態を示している。
【0019】
尚、右側の当接部5Bは、左側の当接部5Aと溝5mの形成位置が異なるだけで基本的構成が同一であるため、図1において同一の符号を付すが、説明は省略する。また、当接部6A,6Bにおいても同様に、後側に縦壁部6Tを備えており、フォトマスク1の下端の前面(表面)が縦壁部6Tに当接することによって、フォトマスク1の厚み方向での位置の確定が行えるようになっている。
【0020】
また、図1に示すように、ケース本体3の左右両端の上下方向中央部(上端と下端の間を上下方向中間部と定義すれば、上端と下端を除いた位置であれば、どの位置であってもよい)にそれぞれ、左右方向保持手段8を配置している。
【0021】
左右方向保持手段8は、図6(a),(b),(c)に示すように、フォトマスク1に矢印で示す左側に移動させることにより当接して位置の確定を行うための位置確定部8Aと、この位置確定部8Aに一体化され、ケース本体3側に固定されている固定部材9に左右方向で移動自在に取り付けられた本体部8Bとを備えている。
【0022】
前記位置確定部8Aは、フォトマスク1の左右の横側端面に当接する当接面8aと、該当接面8aの前後方向両端から左右方向内側にそれぞれ延びてフォトマスク1の厚み方向での移動を規制する前後一対の規制部8b,8bとを備えている。
【0023】
本体部8Bの上下2箇所には、平行でかつ水平方向に伸びる長孔8N,8Nが形成され、それらの長孔8N,8Nを貫通して前記固定部材9に形成のネジ孔9Nに螺合する固定ネジ8C,8C(操作部)を本体部8Bに備えている。尚、前記位置確定部8Aには、当接面8aから本体部8B側へ凹んだ溝8mが上下方向全域に渡って形成され、その溝8m内にフォトマスク1と当接させるパッキン10をそれの一部が溝8mから突出する状態で入り込ませている。前記のように上下2箇所に長孔8N,8Nを形成することによって、上下に特別なガイド部材などを設けることなく、左右方向保持手段8を左右方向にスムーズに移動させるガイド部として機能させることができる。例えば1つの長孔8Nで構成した場合に、左右方向保持手段8を左右方向に移動させる際に、左右方向保持手段8が上下方向に姿勢変更してしまうことがあるため、左右方向保持手段8の上下両側にガイド部材を配置することになる。
【0024】
従って、固定ネジ8C,8Cを緩めることによって、左右方向保持手段8を上下一対の長孔8N,8Nを介して左右方向に移動させることによって、フォトマスク1の横側端面に当接させる。その後、一対の固定ネジ8C,8Cを締めることによって、左右方向保持手段8をその位置で固定することができる。
【0025】
また、図1に示すように、ケース本体3の上端側の左右両横側のコーナー部のそれぞれに、フォトマスク1のコーナー部の上端から横側に沿って折れ曲がった鉤型形状の上下方向保持手段11を配置している。
【0026】
右側の上下方向保持手段11は、図5(a),(b),(c)に示すように、フォトマスク1の上端面に矢印で示す下方へ移動させることにより当接して上下方向での位置を確定するための横長状の当接部11Aと、この当接部11Aの左右方向外側端から下方に垂下した横側部11Bとを備えている、
【0027】
前記横側部11Bには、上下2箇所に縦向きの長孔11b,11bが形成され、該長孔11b,11bに貫通する固定ネジ11C,11C(操作部)を備えている。前記固定ネジ11C,11Cは、ケース本体3側に備えている固定部材12に備えたネジ孔12Nに螺合している。
【0028】
また、前記当接部11Aの当接面11aには、左右方向に長くかつ間隔を置いて互いに平行に形成された2つの溝11m,11mが形成され、その溝11m,11m内にフォトマスク1の上端面が当接するパッキン13,13をそれの一部が溝11m,11mから突出する状態で入り込ませている。
【0029】
前記のように上下一対の長孔11b,11bを形成することによって、左右に特別なガイド部材などを設けることなく、上下方向保持手段11を上下方向にスムーズに移動させるガイド部として機能させることができる。例えば1つの長孔11bで構成した場合に、上下方向保持手段11を上下方向に移動させる際に、上下方向保持手段11が左右方向に姿勢変更してしまうことがあるため、上下方向保持手段11の左右両側にガイド部材を配置することになる。
【0030】
しかも、2つの長孔11b,11bを上下方向で並ぶように(上下方向で重複するように)並設することによって、例えば2つの長孔11b,11bを左右方向に間隔を置いて平行に並べて配置する場合に比べて、横側部11Bの左右幅をコンパクトにすることができる。よって、フォトマスクケース2の小型化を図ることができる。尚、左側の上下方向保持手段11も右側の上下方向保持手段11と同様な構成であるため、説明は省略する。
【0031】
従って、上下一対の固定ネジ11C,11Cを緩めることによって、上下方向保持手段11を上下一対の長孔11b,11bを介して下方へ移動させることによって、フォトマスク1の上端面に当接させる。その後、上下一対の固定ネジ11C,11Cを締めることによって、上下方向保持手段11をその位置で固定することができる。
【0032】
また、ケース本体3の上端には、フォトマスク1の上端前面に当接する3個の当接部14A、14B,14C(真ん中に位置する当接部14Bの左右寸法が他の当接部14A,14Cの左右寸法よりも長くなっている)を左右方向に間隔を置いて備えている。これら当接部14A、14B,14Cは、同一形状であり、左側の当接部14Aについて図1及び図3に基づいて説明する。
【0033】
前記当接部14Aは、平板部4Aの前面から延びる板部14Iと、この板部14Iの前端に一体化された直方体形状のブロック体14Jとを備えている。そして、ブロック体14Jの前方でかつ下側に上方側へ凹んだ凹部14aが形成され、この凹部14aを構成する後側の縦壁部14bがフォトマスク1の上端前面に当接する当接面を構成している。
【0034】
蓋体4について説明すれば、図2に示すように、ケース本体3と同様に、正方形状の平板部4Aと、この平板部4Aの外周縁の4辺から前面側(表面側)に垂直に延びる4つの板部4B,4C,4D,4Eとを備え、平板部4Aの前面(表面)に、左右方向に向かって延びる保形用の第1リブ4F及び上下方向に向かって左右に間隔を置いて平行に延びる一対の保形用の第2リブ4G,4Hを備えている。
【0035】
また、蓋体4の上端側には、フォトマスク1の上端前面(上端表面)に当接する3個の当接部15A、15B,15C(真ん中に位置する当接部15Bの左右寸法が他の当接部15A,15Cの左右寸法よりも長くなっている)を左右方向に間隔を置いて備えている。これら当接部15A、15B,15Cは、同一形状であり、右側の当接部15Cについて図2及び図3に基づいて説明する。
【0036】
前記右側の当接部15Cは、平板部4Aの前面(表面)から延びる上下一対の板部15I、15Jと、これら板部15I、15Jの前端に一体化された直方体形状のブロック体15Kを備えている。そして、ブロック体15Kの前面がフォトマスク1の上端後面(上端裏面)に当接する当接面を構成している。
【0037】
また、蓋体4の下端には、フォトマスク1の下端に当接する4個の当接部16A、16B,17A,17Bを備えている。これら当接部のうち右端に位置する当接部16Bは、図2及び図3に示すように、平板部4Aの前面(表面)から延びる上下一対の板部16I,16Jと、これら板部16I,16Jの前端に一体化された直方体形状のブロック体16Kを備えている。
【0038】
そして、ブロック体16Kの前面がフォトマスク1の下端後面(下端裏面)に当接する当接面を構成し、フォトマスク1の下端裏面がブロック体16Kの前面に当接することによって、フォトマスク1の厚み方向での位置の確定が行えるようになっている。尚、左側の当接部16Aも右側の当接部16Bと基本的構成は同一であるため、説明は省略する。また、当接部17A,17Bにおいても同様に、フォトマスク1の下端の裏面が当接部17A,17Bの前面に当接することによって、フォトマスク1の厚み方向の位置を確定することができるようになっている。
【0039】
また、前記蓋体4の板部4B,4C,4D,4Eの端面には、図3に示すように、前記ケース本体3の板部3B,3C,3D,3Eの端面に備えさせた突出縁3Sが入り込んで係合することでケース本体3と蓋体4とを密閉状態にするための係合周溝4Sが形成されている。
【0040】
このように構成されたフォトマスクケース2にフォトマスク1を位置確定した状態で収納する手順を説明する。
まず、フォトマスク1を縦向き(フォトマスク1の厚み方向が水平方向となる姿勢)で収納できるように、図1に示すように、床面にケース本体3の下側の板部3Dを当接させて、ケース本体3を縦向き(平板部3Aの厚み方向が水平方向となる姿勢)に配置する。尚、フォトマスク1をケース本体3内に移動させる際にフォトマスク1の外周縁が当接することがないように、フォトマスク1をケース本体3内に移動させる前に、図1の実線で示すように左右方向保持手段8,8を左右方向外方側の待機位置に位置させるとともに、図1の2点鎖線で示すように上下方向保持手段11,11を上方の待機位置に位置させておくことになる。
【0041】
縦向きにセットされたケース本体3に向けてフォトマスク1を例えばハンドリング装置を用いて移動させる(人為力により移動させてもよい)。そして、図1の2点鎖線で示すように、フォトマスク1を当接部5A、5B,6A,6B上にハンドリング装置を用いて載置した状態にする。このとき、フォトマスク1の下端前面が当接部5A、5B,6A,6Bの縦壁部5T,5T,6T,6Tに当接し、フォトマスク1の上端前面が当接部14A,14B,14Cの縦壁部14b,14b,14bに当接するようにセットする。
【0042】
次に、一方の上下方向保持手段11の固定ネジ11C,11Cを緩めてから、上下方向保持手段11を図1の2点鎖線の待機位置から下方へ移動させて、上下方向保持手段11の当接面11aをフォトマスク1の上端面に当接させ、その位置で固定ネジ11C,11Cを締めて上下方向保持手段11を固定する。続いて、他方の上下方向保持手段11も同様に、その当接面11aをフォトマスク1の上端面に当接させ、その位置で固定することによって、フォトマスク1の上下方向での位置の確定が完了する。上下方向保持手段11の固定ネジ11C,11Cが、フォトマスク1の左右両端から外れた位置、つまり左右両端よりも左右方向外方側位置に配置されていることから、作業者は、フォトマスク1の左右両端から外れた位置から上下方向保持手段11の固定ネジ11C,11Cを操作することができる。
【0043】
次に、一方の左右方向保持手段8の固定ネジ8C,8Cを緩めてから、左右方向保持手段8を図1の実線の待機位置から図の矢印で示す左右方向内方側へ移動させて、左右方向保持手段8の当接面8aをフォトマスク1の横側端面に当接させ、その位置で固定ネジ8C,8Cを締めて左右方向保持手段8を固定する。続いて、他方の左右方向保持手段8も同様に、その当接面8aをフォトマスク1の横側端面に当接させ、その位置で固定することによって、フォトマスク1の左右方向での位置の確定が完了する。左右方向保持手段8の固定ネジ8C,8Cが、フォトマスク1の左右両端から外れた位置に配置されていることから、作業者は、フォトマスク1の左右両端から外れた位置から左右方向保持手段8の固定ネジ8C,8Cを操作することができる。
【0044】
フォトマスク1の上下方向及び左右方向での位置の確定が完了すると、蓋体4を図3に示すように、ケース本体3に向けて移動させる。そして、図4に示すように、ケース本体3の側板部3B,3C,3D,3Eの端面に備えさせた突出縁3Sに蓋体4の係合周溝4Sが係合して、ケース本体3と蓋体4とが密閉状態になるとともに、ケース本体3の上下の当接部14A,14B,14C、5A,5B,6A,6Bと、蓋体4の上下の当接部15A,15B,15C、16A,16B,17A,17Bとでフォトマスク1の上下端を厚み方向で押さえ付けてフォトマスク1の厚み方向での位置の確定が完了する。尚、図示していないが、ケース本体3と蓋体4とが容易に開放しないように固定するためのロック機構などを更に備えていることが好ましい。
【0045】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
例えば、蓋体4の当接部14A,14B,14Cに凹部を形成しないでケース本体側へフォトマスク1を押し付ける上下方向の平面のみを備えたものであってもよい。尚、フォトマスク1の厚み方向で当接する部分にパッキンを備えさせてフォトマスク1と当接する部分に傷が付くことを抑制するようにしてもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、フォトマスク1を下側に載置した状態で上下方向および左右方向での位置の確定を行うようにしたが、例えば図1のフォトマスクケース2を上下が逆になるように配置し、フォトマスク1を上側に位置する当接部5A,5B,6A,6Bに当接させた状態にして上下方向および左右方向での位置の確定を行うようにしてもよい。この場合、フォトマスク1をフォトマスクケース2に収納後に運搬する際には、フォトマスクケース2の上下が逆になるようにフォトマスクケース2を引っくり返してから運搬することが好ましい。つまり、下側に位置する当接部5A,5B,6A,6Bにフォトマスク1の下端が支持された状態でフォトマスクケース2を運搬することが好ましい。
【0048】
また、上記実施形態では、ケース本体3が箱型で構成することによって、ケース本体3を床面に対して垂直に立てた状態にケース本体3自体で保持することができたが、ケース本体3を板状のものから構成することもできる。この場合、板状のケース本体3を所定姿勢に保持する保持機構を設ける、あるいは固定物に少し斜めに傾けた状態で立てかけて、フォトマスク1を収納するようにしてもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、鉤形状の上下方向保持手段11から構成したが、一直線状のものから構成してもよい。また、この場合、左右方向に長い上下方向保持手段に構成すれば、1個の上下方向保持手段で構成することもできる。
【0050】
また、上記実施形態では、左右方向保持手段8及び上下方向保持手段11を手動により移動させるようにしたが、電動モータなどのアクチュエータを用いて移動させてもよい。この場合には、アクチュエータを操作する操作部をフォトマスクの左右両端から外れた位置に配置すれば、左右方向保持手段8及び上下方向保持手段11の位置はどのような位置であってもよい。
【0051】
更に、上記実施形態では、当接部5A,5B,6A,6Bを備えたものから構成したが、当接部5A,5B,6A,6Bを省略し、上下方向保持手段11をフォトマスクケースの下端の左右両側に配置したものから構成することもできる。この場合、フォトマスクの下端を上下方向保持手段11,11で支持することになる。また、フォトマスクの下端を支持する当接部を備えつつ、上下方向保持手段11をフォトマスクケースの下端の左右両側に配置したものであってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…フォトマスク、2…フォトマスクケース、3…ケース本体、3A…平板部、3B,3C,3D,3E…板部、3F,3G…リブ、3S…突出縁、4…蓋体、4A…平板部、4B,4C,4D,4E…板部、4F,4G,4H…リブ、4S…係合周溝、5A,5B…当接部、5I…板部、5J…ブロック体、5T…縦壁部、5a…凹部、5m…溝、6A,6B…当接部、6T…縦壁部、7 …パッキン、8…左右方向保持手段、8A…位置確定部、8B…本体部、8C,8C…固定ネジ(操作部)、8N,8N…長孔、8a…当接面、8b,8b…規制部、8m…溝、9…固定部材、9N…ネジ孔、11…上下方向保持手段、11A…当接部、11B…横側部、11C,11C…固定ネジ(操作部)、11a…当接面、11b,11b…長孔、11m,11m…溝、12…固定部材、12N…ネジ孔、13…パッキン、14A,14B,14C…当接部、14I…板部、14J…ブロック体、14a…凹部、14b…縦壁部、15A,15B,15C…当接部、15I…板部、15K…ブロック体、16A,16B…当接部、16I,16J…板部、16K…ブロック体、16b…縦壁部、17A,17B…当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納するフォトマスクの上下方向一方側に当接する当接部と、該フォトマスクの左右方向及び上下方向での位置を確定するための保持手段とを備えたケース本体と、該フォトマスクを厚み方向でケース本体側に押し付けて固定するための蓋体とを備え、
前記保持手段が、前記フォトマスクの左右方向での位置を確定すべく、該フォトマスクの左右両側の上下方向中間部に対応する位置にそれぞれ配置される左右方向保持手段と、前記フォトマスクの上下方向での位置を確定すべく、該フォトマスクの上下方向他方側の左右両側に対応する位置にそれぞれ配置される上下方向保持手段とを備え、前記フォトマスクの左右方向での位置確定を可能にするための左右方向保持手段の操作部及び該フォトマスクの上下方向での位置確定を可能にするための上下方向保持手段の操作部を、前記フォトマスクの左右両端から外れた位置に対応する位置に配置したことを特徴とするフォトマスクケース。
【請求項2】
前記当接部が、前記ケース本体の下方側に配置され、前記上下方向保持手段が、前記フォトマスクの上端の左右両側のコーナー部に配置され、かつ、該フォトマスクのコーナー部の上端から横側に沿って折れ曲がった鉤型形状に構成され、該フォトマスクのコーナー部の横側に配置された上下方向保持手段の横側部に、該上下方向保持手段の操作部を備えたことを特徴とする請求項1記載のフォトマスクケース。
【請求項3】
前記上下方向保持手段の横側部に、上下方向に沿う長孔を形成し、該長孔を貫通すると共に前記ケース本体側に備えたネジ孔に螺合することにより該横側部を該ケース本体に固定するための固定ネジから該上下方向保持手段の操作部を構成したことを特徴とする請求項2記載のフォトマスクケース。
【請求項4】
前記長孔が、複数個備えられ、それら複数の長孔が上下方向で並ぶように並設されていることを特徴とする請求項3記載のフォトマスクケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−191149(P2010−191149A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34978(P2009−34978)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(302003244)株式会社エスケーエレクトロニクス (31)
【Fターム(参考)】