説明

フォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒

【課題】 レンズ鏡筒のフォーカス調整機構を構成するフォーカス操作環とフォーカス駆動環との連結状態を安定化したレンズ鏡筒を提供する。
【解決手段】 光軸回りに回動操作されるフォーカス操作環4と、フォーカス操作環に連結されて一体的に回動され、フォーカスレンズL2を光軸方向に移動させてフォーカス調整を行うフォーカス駆動環3とを備え、フォーカス操作環4に設けられ円周方向に所要の長さを有する連結穴71と、連結穴71内に内挿され、外側面が連結穴の内面に摩擦係合されたカラー72と、外径側からカラー72の軸穴を挿通されフォーカス駆動環3に締結されるビス73とを備える。ビス73が緩んだ場合でもカラー72と連結穴71との摩擦係合により両者の連結が保持される。フォーカス調整を容易に行うとともに、両者の連結状態の信頼性を高める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラのレンズ鏡筒に関し、特にズーム機構を備えたレンズ鏡筒におけるフォーカス調整機構を改善したレンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ズーム機構を備えたカメラのレンズ鏡筒では、ズーム機構により焦点距離を変化させたときにフォーカス位置(焦点位置)が変化することがある。焦点距離を変化させた場合でもフォーカス位置を一定に保持するレンズ鏡筒は構造が複雑になることは避けられず、低コスト化が難しい。特に、複数のレンズ又はレンズ群で構成されるレンズ鏡筒において、最前群又は最後群以外のレンズを移動してフォーカス調整を行うインナーフォーカスレンズ鏡筒ではフォーカス位置を一定に保持することは困難である。そのため、ズーム機構により焦点距離を変化したときに、フォーカス操作環を操作してフォーカスレンズでの合焦を行なう必要がある。このようにインナーフォーカスレンズではフォーカス操作環に表示される距離目盛りの重要性が高いため、ズーム機構のテレ(長焦点)或いはワイド(短焦点)のいずれかの無限遠位置に対してフォーカス調整を行う構成がとられている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載のズームレンズ鏡筒はインナーフォーカスレンズ鏡筒ではないが、フォーカスレンズを光軸方向に移動してフォーカス調整を行うためのフォーカスカム環と、フォーカス調整時に操作するフォーカス操作環とをビスで連結した構成がとられている。このようなレンズ鏡筒において前述したフォーカス調整を行うには、フォーカス操作環とフォーカスカム環を連結しているビスが挿通されている穴を光軸回り方向、すなわち円周方向に長い長穴で構成し、ビスを緩めて当該長穴内で移動させることでフォーカス操作環とフォーカスカム環との相対回動位置を変化調整する。これにより、フォーカスレンズを所定の光軸方向の位置に調整したときに、フォーカス操作環が所定の回動位置になるように設定することができる。
【特許文献1】実用新案登録第2584208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、フォーカス操作環とフォーカスカム環を単にビスで連結した構成では、ビスの頭部とフォーカス操作環の外周面との面接触により生じる摩擦係合力のみで連結状態を保持しなければならない。近年、レンズ鏡筒の小型化を図るためにビスの径寸法及び頭部寸法も縮小される傾向があるため、ビスによるフォーカス操作環とフォーカスカム環の連結力が低下し、フォーカス操作環とフォーカスカム環に光軸回り方向の位置ずれが生じ易くなる。特に、経年変化や外部振動等によりビスに緩みが生じたような場合には、ビスがごく僅か緩んだだけでもビス頭部とフォーカス操作環の外周部との当接面での摩擦係合力が失われてしまい、フォーカス操作環を操作したときにビスと長穴との間に滑りが生じ、両者の連結状態が崩れてしまう。そのため、フォーカス操作環の回動量とフォーカスカム環の回動量とにずれが生じ、フォーカス操作環の距離目盛りとフォーカスレンズによる実際の被写体距離とに誤差が生じてしまうことになる。なお、このような問題はフォーカスカム環の代わりにフォーカスレンズをスクリュー(リードネジ)環で光軸方向に移動させる構成のフォーカス機構についても言えるものである。本明細書ではこれらフォーカスカム環やフォーカススクリュー環のようにフォーカスレンズを光軸方向に移動させるための環部材をフォーカス駆動環と称する。
【0005】
本発明の目的は、フォーカス操作環とフォーカス駆動環との連結状態を安定化したフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光軸回りに回動操作されるフォーカス操作環と、フォーカス操作環に連結されて一体的に回動され、フォーカスレンズを光軸方向に移動させてフォーカス調整を行うフォーカス駆動環とを備えるレンズ鏡筒において、フォーカス操作環と前記フォーカス駆動環とを連結する部分において外径側に配置された環部材に設けられ円周方向に所要の長さを有する連結穴と、連結穴内に内挿され、外側面が連結穴の内面に摩擦係合されたカラーと、外径側から前記カラーの軸穴を挿通され内径側に配置された環部材に締結されるビスとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フォーカス操作環とフォーカス駆動環は、一方の環部材に締結されるビスの頭部が当接される外径側の環部材との摩擦係合力によって連結状態が保持されるとともに、外径側の環部材に設けた連結穴に内挿されて当該ビスにより固定されるカラーと連結穴の内面との摩擦係合力によっても連結状態が保持される。そのため、ビスを緩めたときにフォーカス操作環とフォーカス駆動環の相対回動を可能にしてフォーカス調整を可能にする一方で、ビスを締結したときのフォーカス操作環とフォーカス駆動環の連結状態を確保し、特にビスが緩んだ場合でもカラーによる両環部材の連結状態を安定かつ確実なものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のレンズ鏡筒の好ましい形態としては、連結穴は光軸回り方向に長辺を有する長穴であり、カラー及びビスは連結穴の内部で長辺方向に相対移動可能とする。これにより、連結穴の長辺の長さ範囲でのフォーカス調整が可能になる。
【0009】
カラーは少なくとも側面の一部に平坦面が形成された筒体で形成され、平坦面が連結穴の円周方向に延びる内面に当接されている。カラーの平坦面と連結穴の平坦な内面とが密接状態に当接し、摩擦係合力が高められ、連結状態が保持される。また、ビスは頭部が連結穴の周縁部において外径側の環部材の表面に当接されているので、頭部と当該環部材との摩擦係合力がよっても連結状態が保持される。特に、連結穴は厚み方向の上部穴の内法寸法が下部穴の内法寸法よりも大きくされ、ビスの頭部は上部穴の底辺に当接することで、ビスの頭部と外径側環部材との摩擦係合を確実なものにする。
【0010】
本発明のレンズ鏡筒では、例えば、フォーカス操作環の一部がフォーカス駆動環の一部に外径方向から重ねられ、フォーカス操作環の一部に連結穴が設けられ、ビスはフォーカス駆動環の外周面に螺合される。また、本発明のレンズ鏡筒において、フォーカス駆動環はフォーカスレンズにカム係合するフォーカスカム環、またはフォーカスレンズにネジ結合するフォーカススクリュー環であってもよい。
【実施例1】
【0011】
次に、本発明の実施例1について図面を参照して説明する。図1は一眼レフカメラの交換レンズとして構成した実施例1のレンズ鏡筒OSの光軸Oxより上側領域の断面図である。実施例1では鏡筒内に第1ないし第5のレンズ又はレンズ群を内装したレンズ鏡筒を示している。鏡筒OSは光軸方向に沿って前環11と後環12とに分割され、これらがネジ13により一体化された内側固定環1を備えており、この内側固定環1の前端部に第1レンズ枠F1により第1レンズL1が固定されている。また、前記内側固定環1の後端部に第5のレンズ枠F5により第5レンズL5が固定されている。なお、この内側固定環1の後端部は図には表れないカメラ本体のレンズマウントに着脱可能なバヨネット部14として構成されている。前記内側固定環1の前環11内には第2レンズ枠F2により第2レンズL2が支持されており、当該前環11に設けられた直進溝111に沿って光軸方向に移動可能とされている。また、後環12内には第3レンズ枠F3と第4レンズ枠F4によってそれぞれ第3レンズL3と第4レンズL4が支持されており、当該後環12に設けられた直進溝121に沿ってそれぞれ光軸方向に移動可能とされている。また、前記前環11と後環12を覆うように内側固定環1と一体的に前外環21と後外環22からなる外側固定環2が設けられている。この実施例1のレンズ鏡筒OSは、いわゆるインナーフォーカスレンズ鏡筒として構成されており、後述するように前記第2レンズL2がフォーカスレンズとして構成され、第2レンズL2の光軸方向の位置調整により撮影する被写体像の合焦を行うようになっている。
【0012】
前記内側固定環1の前環11の外周にはフォーカスカム環3が嵌合配置されている。このフォーカスカム環3は後述するフォーカス調整機構7によってフォーカス操作環4に連結されており、フォーカス操作環4の回動に伴って鏡筒光軸回りに一体的に回動可能とされている。前記フォーカス操作環4は円周一部に内径方向に向けてストップレバー41が設けられており、このストップレバー41は前記後外環22の前端部に設けた円周溝22aに係合され、当該円周溝22aの円周範囲内で回動操作が可能にされている。図2にフォーカス調整機構7を含む前記前環11とフォーカスカム環3の概略構成を示すように、フォーカスカム環3には所要形状のフォーカスカム溝31が形成されており、前記第2レンズ枠F2の外周に外径方向に立設したローラR2が前記前環11の直進溝111とフォーカスカム環3のカム溝31を貫通した状態で係合している。また、前記内側固定環1の後環12の外周にはズームカム環5が嵌合配置されており、前記後外環22の外周面に沿って回動操作可能に構成されたズーム操作環6から内径方向に突出したレバー61に係合され、ズーム操作環6の回動に伴って鏡筒光軸回りに一体的に回動可能とされている。このズームカム環5には所要形状のズームカム溝51,52が形成されており、前記第3レンズ枠F3と第4レンズ枠F4のそれぞれの外周に外径方向に立設したローラR3,R4が前記後環12の直進溝121とズームカム環5のカム溝51,52を貫通した状態で係合している。なお、前記直進溝111,121、カム溝31,51,52、及び各レンズ枠F2,F3,F4のローラR2,R3,R4はそれぞれレンズ鏡筒OSを正面方向から見たときに円周方向の3箇所、通常では鏡筒光軸の回りに120度の中心角の位置にそれぞれ同じ形状の溝、ローラとして設けられている。また、前記フォーカス操作環4とズーム操作環6にはそれぞれ飾り環42,62が設けられ、各環の意匠上の見栄えを高めていると同時に、図には表れないが前記外周環2に設けられた指標に対向するようにフォーカス操作環4には距離目盛りが設けられ、ズーム操作環6には焦点距離目盛りが設けられている。
【0013】
このレンズ鏡筒OSの概略動作を説明すると、ズーム操作環6を回動操作するとズームカム環5が一体に回動されるため、ズームカム溝51,52と後環12の直進溝121との交差位置が光軸方向に変化され、これら溝の交差位置にある第3レンズ枠F3と第4レンズ枠F4の各ローラR3,R4の位置も光軸方向に変化され、これらに支持された第3レンズL3と第4レンズL4の光軸方向の位置が変化され、所望のズーム値、すなわち焦点距離に設定される。同様にフォーカス操作環4を回動操作するとフォーカスカム環3が一体に回動されるため、フォーカスカム溝31と前環11の直進溝111との交差位置が光軸方向に変化され、当該溝の交差位置にある第2レンズ枠F2のローラR2の位置も光軸方向に変化され、これらに支持された第2レンズL2の光軸方向の位置が変化され、合焦状態に設定される。
【0014】
この実施例1のレンズ鏡筒OSにおいて、前記フォーカス操作環4とフォーカスカム環3は前記フォーカス調整機構7により連結されているが、このフォーカス調整機構7を図3に示す。フォーカスカム環3の光軸方向の後端部とフォーカス操作環4の光軸方向の前端部は径方向に重ねられており、この重ねられた領域においてフォーカス操作環4には円周方向に長い長方形をした連結穴71が径方向に貫通されている。この連結穴71は厚み方向の上部穴71aの内法寸法が下部穴71bの内法寸法よりも一回り大きくされ、厚み方向の断面形状がT字型に形成されている。そして、この連結穴71の下部穴71bには筒状をしたカラー72が内挿されるとともに、このカラー72の中心軸穴72aにビス73を挿通し、このビス73を前記フォーカスカム環3の外周面に設けたネジ穴74に螺合させている。前記カラー72は大略円筒状に形成され、その外周面の径方向に対向する2箇所に互いに平行な平坦面72bを有しており、これらの平坦面72bの径方向の対向寸法が前記連結穴71の下部穴71bの鏡筒光軸方向に沿った内法寸法にほぼ等しく形成されている。また、前記ビス73の軸部(ネジ部)73aは前記カラー72の中心軸穴72aの内径よりも若干小さい径寸法とされ、またビス73の頭部73bは前記連結穴71の上部穴71aの鏡筒光軸に沿った内法寸法よりも小さく、当該連結穴71の下部穴71bの鏡筒光軸に沿った内法寸法よりも若干大きくされている。
【0015】
そして、ビス73をフォーカスカム環3のネジ穴74に螺合した状態では、図4(a)の水平方向断面図と、図4(b)のA−A線縦断面図に示すように、ビス73の頭部73bは連結穴71の上部穴71aに収容された状態となり、同時に当該上部穴71aの上面に当接した状態となる。また、ビス73によってカラー72は連結穴71の下部穴71b内に固定され、当該カラー72の両側の平坦面72bは当該下部穴71bの対向する両内側面に当接した状態となる。すなわち、ビス73の頭部73bの下面と連結穴71の上部穴71aの底面との当接によって生じる摩擦力と、カラー72の平坦面72bと連結穴71の下部穴71bの内側面との当接によって生じる摩擦力とによりフォーカス操作環4とフォーカスカム環3は円周方向に連結されることになる。フォーカス操作環4とフォーカスカム環3がビス73により固定されたカラー72と連結穴71との当接構造によって鏡筒光軸方向に一体的に連結されることは言うまでもない。
【0016】
この実施例1のレンズ鏡筒においてフォーカス調整を行う手順は、まず、ズーム操作環6を回動操作し、これに連結されているズームカム環5を回動し、カム溝51,52とローラR3,R4とのカム動作によって第3レンズL3と第4レンズL4の光軸位置を変化させて所定の焦点距離、この場合には無限遠の焦点距離に設定する。しかる上でフォーカス操作環4を回動操作し、これに連結されているフォーカスカム環3を回動し、カム溝31とローラR2とのカム動作によって第2レンズL2の光軸位置を変化させて合焦状態とする。そして、このときにフォーカス操作環4における距離目盛りにずれが生じているときには、連結構造7を利用してフォーカス操作環4のみを回動して距離目盛のずれを修正する。このときフォーカスカム環3は回転しないようにしておく。このフォーカス調整機構7での修正では、ビス73を少し緩めた上でフォーカス操作環4を強制的に鏡筒光軸回りに回動させると、ビス73及びカラー72はフォーカスカム環3と一体で固定されている状態にあるので、連結穴71はカラー72に対して摺動しながら鏡筒光軸回り方向に移動される。そして、フォーカス操作環4の回動位置が修正された時点でビス73を締結し、ビス73によってフォーカス操作環4とフォーカスカム環3を再び一体的に連結する。これにより、前述のようにビス73の頭部73bの下面と連結穴71の上部穴71aの底面との当接によって生じる摩擦力と、カラー72の平坦面72bと連結穴71の下部穴71bの内面との当接によって生じる摩擦力とによりフォーカス操作環4とフォーカスカム環3は連結されることになる。したがって、以降はフォーカス操作環4とフォーカスカム環3との対応が適正なものとなり、フォーカス調整が完了される。
【0017】
このフォーカス調整機構によれば、フォーカス調整に際しては前述のようにビス73を緩めた上でフォーカス操作環4とフォーカスカム環3との相対回動位置を設定ないし修正し、その上で再びビス73を締結する作業のみでよく、従来のフォーカス調整と殆ど同じ作業でよく、フォーカス調整を容易に行うことができる。一方、フォーカス調整が行われたレンズ鏡筒では、仮に経年変化や外部振動等によってビス73の締結状態が緩むことがあり、ビス73の頭部73bと連結穴71の上部穴71aの底面との当接による摩擦力が低減ないし失われることがあっても、カラー72の平坦面72bが連結穴71の下部穴71bの内面に当接して生じる両者間での摩擦力による連結状態が低下することはない。特に、カラー72の平坦面72bの下部穴71bに接する面積は、ビス73の頭部73bが上部穴71aに接する面積よりも大きくなるので、平坦面72bにおける摩擦係合力には大きなものが得られる。これにより、フォーカス操作環4とフォーカスカム環3の連結状態を安定なものとし、信頼性を高めることができる。
【0018】
ここで、実際にフォーカス調整機構を構成した場合には、カラー72の両側の平坦面72bの径方向の対向寸法と、連結穴71の下部穴71bの光軸方向の内法寸法とに製造公差が生じることがあり、この公差によって摩擦係合力が得られ難くなる場合が考えられる。この場合には、図5に示すように、カラー72の中心軸穴72aの径寸法をビス73の軸部73aの径寸法よりも若干大きくなるように設計しておき、ビス73を締結する際にはフォーカス操作環4に鏡筒光軸方向の一方向(図5の右方向)の力を加えるようにする。これにより、カラー72は図5(a)のように微小寸法、すなわちビス73の軸部73aの径寸法とカラー72の中心軸穴72aの内径寸法の差Δに相当する寸法だけ鏡筒光軸に沿った左方向に変位されることになり、図5(b)に示すように一方の平坦面72bにおいて連結穴71の下部穴71bの一方の内面に確実に当接する状態となり、この当接した面での摩擦係合力によってフォーカス操作環4とフォーカスカム環3との連結力を得ることができる。このとき、ビス73の頭部73bの下面と上部穴71aの底面とが当接していることは言うまでもない。
【0019】
実施例1ではカラーの平坦面と連結穴の内面は径方向に平行な面として形成しているが、図6に示すように、カラー72Aの平坦面72bと連結穴71の下部穴71bの内面を外径方向から内径方向に向けて若干の傾斜をもったテーパ状にしてもよい。この場合には、カラー72Aの上面が連結穴71の上部穴71aの底面よりも低くなるようにカラー72Aを設計しておき、ビス73の頭部73bの下面とカラー72の上面との間にばね座金75を介挿する。この構成ではカラー72Aの2つの平坦面72bの径方向の対向寸法と連結穴71の下部穴71bの鏡筒光軸方向の内法寸法との間に公差等の寸法誤差が生じている場合でも、これら平坦面72bと下部穴71bの対向する内面でのテーパ作用によって両面を常に密接状態とすることができ、カラー72Aと連結穴71とにおける摩擦係合力を高めることができる。このとき、ビス73の頭部73bの下面と上部穴71aの底面とが当接していることは言うまでもない。
【0020】
実施例1では連結穴71は長方形に形成しているが、図7に示すように、連結穴71Aのように長さ方向の両端部を円弧状に形成してもよい。あるいは、カラーは連結穴の内法寸法に合った辺寸法の角筒状に形成してもよい。
【0021】
実施例1ではフォーカスレンズをフォーカスカム環によりフォーカス調整するレンズ鏡筒に適用したが、フォーカスレンズをフォーカススリクュー環によりフォーカス調整するレンズ鏡筒においても、フォーカス操作環とフォーカススクリュー環との連結構造に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1のレンズ鏡筒の一部の断面図である。
【図2】実施例1の要部の概略構成を示す分解斜視図である。
【図3】フォーカス調整機構の部分分解斜視図である。
【図4】フォーカス調整機構の平面断面図とA−A線縦断面図である。
【図5】フォーカス調整機構の変形例の平面断面図とB−B線縦断面図である。
【図6】連結穴の変形例の平面図である。
【図7】フォーカス調整機構の変形例の縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
OS レンズ鏡筒
1 内側固定環
2 外側固定環
3 フォーカスカム環
4 フォーカス操作環
5 ズームカム環
6 ズーム操作環
7 フォーカス調整機構
71 連結穴
71a 上部穴
71b 下部穴
72,72A カラー
72b 平坦面
73 ビス
73b ビス頭部
L1〜L5 第1〜第5レンズ
F1〜F5 第1〜第5レンズ枠
R2〜R4 ローラ
Ox 鏡筒光軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸回りに回動操作されるフォーカス操作環と、前記フォーカス操作環に連結されて一体的に回動され、フォーカスレンズを光軸方向に移動させてフォーカス調整を行うフォーカス駆動環とを備えるレンズ鏡筒において、前記フォーカス操作環と前記フォーカス駆動環とを連結する部分において外径側に配置された環部材に設けられ円周方向に所要の長さを有する連結穴と、前記連結穴内に内挿され、外側面が前記連結穴の内面に摩擦係合されたカラーと、外径側から前記カラーの軸穴を挿通され内径側に配置された環部材に締結されるビスとを備えることを特徴とするフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記連結穴は光軸回り方向に長辺を有する長穴であり、前記カラー及びビスは当該連結穴の内部で長辺方向に相対移動可能であることを特徴とする請求項1に記載のフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記カラーは少なくとも側面の一部に平坦面が形成された筒体で形成され、前記平坦面が前記連結穴の円周方向に延びる内面に当接されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記ビスは頭部が前記連結穴の周縁部において前記外径側の環部材の表面に当接されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記連結穴は厚み方向の上部穴の内法寸法が下部穴の内法寸法よりも大きくされ、前記ビスの頭部は前記上部穴の底辺に当接されることを特徴とする請求項4に記載のフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記フォーカス操作環の一部が前記フォーカス駆動環の一部に外径方向から重ねられ、前記フォーカス操作環の一部に前記連結穴が設けられ、前記ビスは前記フォーカス駆動環の外周面に螺合されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記フォーカス駆動環はフォーカスレンズにカム係合するフォーカスカム環、またはフォーカスレンズにネジ結合するフォーカススクリュー環であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のフォーカス調整機構を備えたレンズ鏡筒。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−46440(P2008−46440A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−222974(P2006−222974)
【出願日】平成18年8月18日(2006.8.18)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】