説明

フォールディング洋傘

【課題】 強度の低下及び使用性の悪化を招くことなく折り畳み時における傘本体の外径を縮小化することができ、軽量性にも優れ、しかも、生産性も非常に高いフォールディング洋傘を提供すること。
【解決手段】 防水生布を放射状に支持する傘骨として、元骨1aと畳み骨1bとがヒンジ関節部Jにおいて折畳み・拡伸自在な傘骨1・1…を用いたフォールディング洋傘であって、少なくとも当該洋傘の柄シャフト2上端のインサイド・キャップ3に連接された内域側の各々の元骨1aが、射出成形されたプラスチック製のチャンネル細棒から成り、このチャンネル細棒から成る各元骨1aにおけるチャンネル溝壁11a・11a間にはジグザグ状のトラス12aを一体成形した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォールディング洋傘の改良、詳しくは、傘骨を折り畳んでコンパクトな形態とすることができ、しかも、軽量性及び強靱性にも優れたフォールディング洋傘に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、フォールディング洋傘は、傘骨を折畳み・拡伸自在に構成したものあって、不使用時には、傘本体を携帯が容易なコンパクトな形態へと縮小させることができる利便性の高い日用品である。そして、このフォールディング洋傘における携帯容易度の判断は、傘本体の軽量性及び、鞄等への収納性が主な指標となっており、優れた収容性を実現するためには、傘骨を折り畳んだときに傘本体ができるだけ細く小さく纏まった状態となることが重要である。
【0003】
そこで、従来においては、<特許文献1>のように、傘骨に繊維強化樹脂材を用いることで軽量化を図るとともに、傘骨の断面を略三角形状にして、傘骨を折り畳んだ際に、骨材同士が平行四辺形状に並列した状態となるように構成したことによって、折り畳み時における傘骨の厚みを低減したフォールディング洋傘が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記の従来技術に関しては、傘骨の骨材断面を三角形状にしたことにより、断面が矩形状の一般的な傘骨と異なり、傘骨両端及び支骨との連結部から加えられる負荷の向きによっては強靱性に大きなムラが生じてしまったため、傘骨の機械的強度が低下してしまっていた。
【0005】
一方で、汎用的に用いられている硬質系樹脂を使用して傘骨を作製する場合には、安定した強度を得るために、傘骨を通常よりもかなり太く形成せねばならなかったため、結果的に折り畳み時における傘本体の外径を大幅に縮小することができなかった。
【0006】
さらに、断面が三角形状の傘骨に、シャフトや支骨に対しての枢着部及び骨材同士の連結部を一体的に形成しようとすると傘骨が非常に複雑な形状となってしまうため、成形が非常に困難であった。それに対し、上記の枢着部や連結部を別部材によって形成すると、今度は、それらの部材をわざわざ傘骨に取り付ける製造工程が必要となったため、製造効率の低下に繋がった。
【0007】
また、従来においては、折畳み式の傘骨を採用せず、断面U字状の骨材がスライド自在に連結され、最も対辺寸法の大きい骨材内部に他の骨材を収納できる傘骨を用いたことにより、骨材の折り畳みによって生じる傘骨の嵩張りを回避したフォールディング洋傘も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
しかしながら、上記の従来技術によるフォールディング洋傘においては、骨材が負荷を受けて若干変形しただけでも、スライド機構が正常に作動しなくなってしまう等、機能上の点で大きな問題があった。
【0009】
加えて、上記の従来技術におけるフォールディング洋傘は、傘骨にスライド機構を採用していたことから、傘布を常時取り付けておくことができなかったため、使用の度に傘骨に対して傘布をわざわざ取り付けなければならず、しかも、即時の使用ができない等、傘としての使用性に欠けたものであった。
【特許文献1】特開平7−155216公報(第2−3頁、第1〜3図)
【特許文献2】特許第3046570号公報(第2−11頁、第1〜15図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、強度の低下及び使用性の悪化を招くことなく折り畳み時における傘本体の外径を縮小化することができ、軽量性にも優れ、しかも、生産性も非常に高いフォールディング洋傘を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が、上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、防水生布を放射状に支持する傘骨として、元骨1aと畳み骨1bとがヒンジ関節部Jにおいて折畳み・拡伸自在な傘骨1・1…を用いたフォールディング洋傘であって、少なくとも当該洋傘の柄シャフト2上端のインサイド・キャップ3に連接された内域側の各々の元骨1aが、射出成形されたプラスチック製のチャンネル細棒から成り、このチャンネル細棒から成る各元骨1aにおけるチャンネル溝壁11a・11a間にはジグザグ状のトラス12aを一体成形した点に特徴がある。
【0013】
また、本発明においては、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、内域側の元骨1aとヒンジ関節部Jでヒンジ連結されている畳み骨1bも、射出成形されたプラスチック製のチャンネル細棒であって、このチャンネル細棒から成る各畳み骨1bにおけるチャンネル溝壁11b・11b間にジグザグ状のトラス12bを一体成形するという技術的手段を採用することができる。
【0014】
また、本発明においては、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、傘骨1のヒンジ関節部Jを、元骨1aの一端に形成された軸受け部13aに対し、畳み骨1bの一端に形成された軸部13bを枢着して構成するという技術的手段を採用することができる。
【0015】
また、本発明においては、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、インサイド・キャップ3の周縁下部に複数の凹部31・31…を同間隔で配設するとともに、インサイド・キャップ3の周縁には前記凹部31・31…を渡して細溝32を形成する一方、前記インサイド・キャップ3の凹部31には、係止孔14aが設けられた元骨1aの一端を差し込み、さらに、インサイド・キャップ3の細溝32内に、各元骨1aの係合孔14aを挿通した状態で線状部材33を巻着して、傘骨1・1…の回動機構を構成するという技術的手段を採用することができる。
【0016】
また、本発明においては、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、傘骨1に使用するプラスチック材料として、比較的硬質で汎用性を有した高密度ポリエチレン(HDPE)を採用するという技術的手段を採用することができる。
【0017】
また、本発明においては、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、傘骨1の元骨1aに設けられたトラス12aをチャンネル溝の内側に形成して、傘骨1を閉じた際に、チャンネル溝内に支骨4を収容可能にするという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、傘骨に、溝壁間にジグザグ状のトラスが一体成形されたチャンネル棒を採用したことにより、傘骨両端及び支骨との連結部から受ける負荷をチャンネル溝とトラスとで分散吸収することができるため、安定した強度を有した傘骨をより細い形状で作製することができる。そして、これによって、折り畳んだ際の傘骨の厚みを低減することが可能となるため、折り畳み時における傘本体の外径を縮小化できる。
【0019】
加えて、上記の手段においては、傘骨の骨材同士の連結に通常のヒンジ連結を採用することができるため、使用性に支障は生じない。
【0020】
さらに、傘骨の材料にプラスチックを用いるとともに、形状をチャンネル棒状としたことにより、傘骨の軽量化を図って傘本体を一層軽量なものとすることができる。
【0021】
また、傘骨に関しては、比較的強靱なプラスチック材料を用いて射出成形することにより容易に製造が可能であるため、製造コストの低減及び製造効率の向上を図ることができる。
【0022】
したがって、本発明により、機能性に優れ、コンパクトに収納可能なフォールディング洋傘を提供することができることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
『第1実施形態』
まず、本発明の第1実施形態について、図1から図4に基いて説明する。まず、符号1で指示するものは、プラスチック製の傘骨であり、符号2で指示するものは、柄シャフトである。そして、符号3で指示するものは、インサイド・キャップであり、符号4で指示するものは、支骨である。次いで、符号5で指示するものは、摺動ロクロである。
【0024】
しかして、本実施形態の構成を以下に説明する。まず、射出成形されたプラスチック製のチャンネル細棒を使用し、このチャンネル細棒のチャンネル溝壁11a・11a間にジグザグ状のトラス12aを一体成形して、傘骨1における柄シャフト2側と連接される元骨1aを作製した(図1、図2参照)。
【0025】
なお、元骨1aは、比較的硬質で汎用的に使用されている高密度ポリエチレン(HDPE)を射出成形して作製した。
【0026】
そして、一端に軸部13bを形成した金属製の細棒を傘骨の外域側の畳み骨1bとして作製し、この畳み骨1bの軸部13bを、元骨1aの一端に形成した軸受け部13aに枢着して傘骨1を折畳み・拡伸自在な構造とするとともに、傘布Cを放射状に支持できるようにした(図3参照)。
【0027】
なお、傘布Cに関しては、雨傘ならば、ナイロンやポリエステル等の樹脂シートから成る防水生布を使用し、日傘ならば、遮光及び紫外線の遮断効果が高いシート材や、刺繍や柄等が入った装飾性の高いシート材(織物等)を使用する。
【0028】
また、柄シャフトには、軽量なアルミ棒を使用するとともに、簡単な操作でシャフトの長さを変えることができるテレスコピック伸縮機構を採用した。
【0029】
そしてまた、柄シャフト2の上部に設したインサイド・キャップ3の周縁下部には、複数の凹部31・31…を同間隔で配設し、かつ、このインサイド・キャップ3の周縁には、細溝32を凹部31・31…を渡して形成した。そして、インサイド・キャップ3の凹部31には、係止孔14aが穿設された元骨1aの他端を差し込み、さらに、インサイド・キャップ3の細溝32内に、各元骨1aの係合孔14aを挿通した状態で線状部材33を巻着して、傘骨1・1…の回動機構を構成した(図4参照)。
【0030】
そして、元骨1aの中域部には、支骨4に対しての枢支部15を形成して支骨4の一端を接続した。これにより、支骨のもう一端が接続された摺動ロクロ5が柄シャフト2を上下動に連動して、傘骨1を開閉することができる。
【0031】
上記のように全体を構成したことによって、傘骨1の両端及び支骨4との枢着部15aから受ける負荷をチャンネル棒の溝部とトラス12aとで分散吸収することができるため、安定した強度を有した傘骨1をより細い形状で作製することができる。そして、これによって、折り畳んだ際の傘骨1の厚みを低減することが可能となるため、折り畳み時における傘本体の外径を縮小できる。
【0032】
加えて、上記の手段においては、傘骨1の元骨1aと畳み骨1bをヒンジ連結しているため、使用性に支障は生じない。
【0033】
さらに、傘骨1の材料にプラスチックを用いるとともに、形状をチャンネル棒状としたことにより、傘骨1の軽量化を図って傘本体を一層軽量なものとすることができ、金属材料のように腐食することもない。
【0034】
また、傘骨1に関しては、比較的強靱なプラスチック材料であれば何れでも選択でき、しかも、射出成形による一体成形で容易に作製できるため、生産性を向上させることができる。
【0035】
また、本実施形態では、傘骨1の元骨1aに設けられたトラス12aをチャンネル溝の内側に形成して、傘骨1を閉じた際に、チャンネル溝内に支骨4を収容可能にした。これにより、支骨4の存在によって、傘本体の外径が増長してしまうような事態を回避することができる。
【0036】
『第2実施形態』
次に、本発明の第2実施形態を図5及び図6に基いて説明する。本実施形態では、傘骨1の畳み骨1bにも、チャンネル溝壁11b・11b間にジグザグ状のトラス12bが形成されたプラスチック製のチャンネル細棒を採用して、傘骨1の元骨1aと畳み骨1bにおける可撓性の格差を解消した。これによって、傘骨1に傘布Cを張設した際に、滑らかな流曲線を描かせることができる(図5、図6参照)。
【0037】
また、傘骨1全体をプラスチック製としたことにより、製造工程を単純化して製造効率を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態においては、チャンネル棒のトラス12a・12bを縄目状に交差した二重のジグザグ状に形成したことにより、傘骨1の有する強靱性をさらに向上させた。
【0039】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、傘骨1の材料には、高密度ポリエチレン(HDPE)だけでなく、比較的硬質で射出成形が可能な樹脂であれば、ポリスチレン(PS)やABS樹脂(ABS)、ポリ塩化ビニル(PVC)を採用してもよく、極めて強靱なエンジニアリングプラスチック(例えば、PPS樹脂)も使用可能である。
【0040】
また、実施形態における傘骨1は、二段式に折り畳みできる形態であるが、複数の畳み骨1b・1b…をヒンジ連結して多段式に折り畳める形態としてもよい。
【0041】
そしてまた、傘骨1に設けるトラス12a・12bの折曲角度を必要強度及び成形の容易性を考慮して適宜変更してもよく、また、形状を図7に示すような直角三角形状でもよく、何れも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0042】
近年では、降雨対策として鞄等に常備しておくことができ、必要なときに取り出して使用できるフォールディング洋傘が用いられることが多い。そして、このようなフォールディング洋傘においては、不使用時においての携帯容易性が非常に重要視されるため、製造業者も軽量性やコンパクト性を追求している。ところが、これらの性能を追求した結果、傘本体に使用性や強度等の機能的問題が生じることとなった。
【0043】
そのような中で、本発明のフォールディング洋傘は、傘としての使用性を損なうことなく不使用時の傘本体のコンパクト化を実現できることから、市場における需要は大きく、本発明の産業上の利用価値は非常に高いと云える。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の第1実施形態における傘骨を表わす全体斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態における元骨のチャンネル溝内に形成したトラス形状を表わす部分上面図である。
【図3】本発明の第1実施形態におけるフォールディング洋傘を表わす説明断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態における元骨とインサイド・キャップとの連結機構を表わす拡大斜視図である。
【図5】本発明の第2実施形態における傘骨を表わす部分斜視図である。
【図6】本発明の第2実施形態における傘骨のチャンネル溝内に形成したトラス形状を表わす部分上面図である。
【図7】本発明の変形例における傘骨のチャンネル溝内に形成したトラス形状を表わす部分上面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 傘骨
1a 元骨
11a チャンネル溝壁
12a トラス
13a 軸受け部
14a 係止孔
15a 枢支部
1b 畳み骨
11b チャンネル溝壁
12b トラス
13b 軸部
2 柄シャフト
3 インサイド・キャップ
31 凹部
32 細溝
33 線状部材
4 支骨
5 摺動ロクロ
C 傘布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘布Cを放射状に支持する傘骨として、元骨1aと畳み骨1bとがヒンジ関節部Jにおいて折畳み・拡伸自在な傘骨1・1…を用いたフォールディング洋傘であって、少なくとも当該洋傘の柄シャフト2上端のインサイド・キャップ3に連接された内域側の各々の元骨1aが、射出成形されたプラスチック製のチャンネル細棒から成り、このチャンネル細棒から成る各元骨1aにおけるチャンネル溝壁11a・11a間にはジグザグ状のトラス12aが一体成形されていることを特徴とする強靱にして軽量なフォールディング洋傘。
【請求項2】
内域側の元骨1aとヒンジ関節部Jでヒンジ連結されている畳み骨1bも、射出成形されたプラスチック製のチャンネル細棒であって、このチャンネル細棒から成る各畳み骨1bにおけるチャンネル溝壁11b・11b間にジグザグ状のトラス12bが一体成形されていることを特徴とする請求項1記載のフォールディング洋傘。
【請求項3】
傘骨1のヒンジ関節部Jが、元骨1aの一端に形成された軸受け部13aに、畳み骨1bの一端に形成された軸部13bを枢着して構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のフォールディング洋傘。
【請求項4】
インサイド・キャップ3の周縁下部に複数の凹部31・31…が同間隔で配設されるとともに、インサイド・キャップ3の周縁には前記凹部31・31…を渡して細溝32が形成される一方、前記インサイド・キャップ3の凹部31には、係止孔14aが設けられた元骨1aの一端が差し込まれ、さらに、インサイド・キャップ3の細溝32内に、各元骨1aの係合孔14aを挿通した状態で線状部材33が巻着されて、傘骨1・1…の回動機構を構成していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のフォールディング洋傘。
【請求項5】
傘骨1に使用するプラスチック材料として、比較的硬質で汎用性を有した高密度ポリエチレン(HDPE)が採用されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のフォールディング洋傘。
【請求項6】
傘骨1の元骨1aに設けられたトラス12aがチャンネル溝の内側に形成されて、傘骨1を閉じた際に、チャンネル溝内に支骨4を収容可能であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のフォールディング洋傘。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−209593(P2007−209593A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33719(P2006−33719)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(301029296)株式会社福井洋傘 (2)
【Fターム(参考)】