説明

フック

【課題】 あらゆる壁や柱に対しても設置可能で、かつ、十分な吊り下げ強度を有するフックを提供する。
【解決手段】 壁等15に皿部分を残して首下までねじ込まれるビス40と、ビスの皿部分41に取付けられるフック基部30と、フック基部の表面に設けられた引っかけ部20と、フック基部の裏面側に設けられ、フック基部の下端面から中心付近までビスの皿部分が挿通可能な嵌合用スリット31と、を有し、嵌合用スリットのフック基部の裏面位置におけるスリット開口部の幅がビスの皿部分の最大径より狭く、嵌合用スリット31にビスの皿部分41を挿通することによって、ビスの皿部分41とフック基部30が取付けられていることを特徴とするフック10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁や柱に取付けて衣服等を吊り下げるフックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服等を吊り下げるためのフックの壁等への取付方法としては、両面テープを用いて接着するもの(例えば、特許文献1)、ビスをフック基部(フックと壁等とが密着する部分)に貫通させて留めるもの(例えば、特許文献2)、又は、吸盤を用いて吸着させるもの(例えば、特許文献3)がある。ここで、両面テープの場合は、ビスで留めるのに比べると、比較的重い衣服等を吊す場合には、強度上の問題がある。また、ビスをフック基部に貫通させて留めるものは、背後の壁等の種類によっては、ビスが抜けやすい場合や、硬くて容易に留められない場合がある。吸盤を用いるものも、背後の壁等の凹凸によっては、吸着できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−268248号公報
【特許文献2】特開2002−78597号公報
【特許文献3】特開2000−126014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯かる実情に鑑み、あらゆる壁や柱に対しても設置可能で、かつ、十分な吊り下げ強度を有するフックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフックは、壁又は柱に皿部分を残して首下までねじ込まれるビスと、前記ビスの皿部分に取付けられるフック基部と、フック基部の表面に設けられた引っかけ部と、フック基部の裏面側に設けられ、フック基部の下端面から中心付近まで前記ビスの皿部分が挿通可能な嵌合用スリットと、を有し、嵌合用スリットのフック基部の裏面位置におけるスリット開口部の幅がビスの皿部分の最大径より狭く、嵌合用スリットにビスの皿部を挿通することによって、ビスの皿部分とフック基部が取付けられていることを特徴とするものである。
【0006】
また、スリット開口部の周囲に、嵌合用スリットよりも浅い補助スリットが設けられている構成にしても良い。さらに、フック基部の裏面に任意の方向に削った摩擦スリットを有し、フック基部の裏面の摩擦抵抗を増加させる構成にすることもできる。
【0007】
なお、壁又は柱が石膏ボードの場合は、壁又は柱にねじ込まれた石膏ボード用アンカーねじに、ビスが皿部分を残して首下までねじ込まれることにしたり、壁又は柱がコンクリート、タイル又はブロックの場合は、壁又は柱に穿孔した孔に設けたプラグに、ビスが皿部分を残して首下までねじ込まれることにしても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明のフックによれば、壁や柱にねじ込まれたビスにフック基部が取付けられているため、フックの吊り下げ強度が高く、また、壁や柱が石膏ボードのように柔らかい場合や、逆にコンクリートのようにビスをねじ込むには硬すぎる場合には、石膏ボード用アンカーねじやプラグを用いれば良いので、あらゆる壁等に使用できるという優れた効果を奏し得る。
【0009】
さらに、フック基部の裏面に補助スリットを設けることにより、石膏ボード用アンカーねじ等の皿部分が壁等の面位置よりも出ている場合でも、壁等とフック基部の裏面とを密着させることができ、また、摩擦スリットを設けることにより、壁等とフック基部の裏面との摩擦抵抗が高くなるため、フックが回転しにくくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のフックを壁等に取付ける状況を示す図であり、(a)はビスとフック基部の嵌合前、(b)はビスとフック基部の嵌合後を示す。
【図2】図1(b)の下面図である。
【図3】背後の壁等が石膏ボードの場合に、本発明のフックを取付けた状況を示す図である。
【図4】背後の壁等がコンクリートのように硬い場合に、本発明のフックを取付けた状況を示す図である。
【図5】図3の下面図である。
【図6】本発明のフック基部の裏面図であり、(a)は図1,2で用いたフック基部、(b)は図3〜5で用いたフック基部、(c)は嵌合用スリットの形状を変えたフック基部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明のフックを壁等に取付ける状況を示す図であり、(a)はビスとフック基部の嵌合前、(b)はビスとフック基部の嵌合後を示す。また、図2は、図1(b)の下面図である。本発明のフック10は、壁等15に首下までビス40をねじ込み、そのビスの皿部分41をフック基部30の裏面側に設けられた嵌合用スリット31に挿通させることにより、設置するものである。
【0012】
ここで、フック基部30とは、表面に吊り下げ用の引っかけ部20を有し、裏面側には嵌合用スリット31を有して、ビスの皿部分41と嵌合する部材のことである。形状は、丸、四角など特に制限はないが、嵌合用スリット31を設けるため、ビスの皿部分41よりも厚くなければならない。ビスの皿部分41とフック基部30との嵌合は、図1(a)(b)に示したように、フック基部30の裏面を壁等15に押し当てた状態で下方向に滑らせ、ビスの皿部分41が嵌合用スリット31に挿通し、嵌合用スリット31の最上端部に当接するまで動かされる。
【0013】
ここで、嵌合用スリット31は、フック基部30の下端面からフック基部30の中心付近まで設けられており、その断面は、ビスの皿部分41が挿通可能な形状かつ大きさであって、さらに、フック基部30の裏面位置におけるスリット開口部の幅dがビスの皿部分41の最大径Rよりも狭くなっていなければならない。これは、嵌合用スリット31にビスの皿部分41を挿通させたときに、フック基部30の裏面がビスの皿部分41と壁等15との間に挟まれることで、フック10が固定されるからである。なお、ビスの皿部分41の壁等15からの突出量を調整すれば、フック基部30の裏面と壁等15との密着度を調整することができ、フック10のガタつきを抑えることができる。
【0014】
引っかけ部20は、フック基部30の表面に設けられ、衣服等を吊り下げられるように先端が上を向いている。ここで、引っかけ部20とフック基部30とは、フック基部30の下方で結合されていることが望ましい。これは、フック10を壁等15に取付けたときに、壁等15にねじ込んだビスの皿部分41が、引っかけ部20の位置よりも下方にあると、引っかけ部20に衣服等を吊り下げたときに、フック10が回転する恐れがあるからである。したがって、嵌合用スリット31は、なるべくフック基部30の中心位置より少し上まで設けられていて、引っかけ部20は、フック基部30の下方に設けられていることが望ましい。
【0015】
図3は、背後の壁等が石膏ボードの場合に、本発明のフックを取付けた状況を示す図である。また、図4は、背後の壁等がコンクリートのように硬い場合に、本発明のフックを取付けた状況を示す図であり、図5は、図3の下面図である。
【0016】
図3のように、背後の壁等15が石膏ボードの場合には、図1と同様にしてビスをねじ込んだとしてもビスが抜けやすく、吊り下げ強度は不足する。そこで、石膏ボード用アンカーねじ42を先にねじ込んでおくことで、強度不足を解消することができる。また、背後の壁等15がコンクリート、タイル又はブロックのように硬い場合は、ビスを直接ねじ込むことは難しいので、図4のように、先に穿孔した孔にプラグ43を設けることで、ビスを使用することができる。ここで、石膏ボード用アンカーねじ42やプラグ43の皿部分が、壁等15の面位置よりも中に押し込まれていれば問題はないが、面位置よりも突出している場合は、壁等15とフック基部30の裏面とが密着することができないため、フック10にガタつきが生じるという問題がある。そこで、図5のように嵌合用スリット31のスリット開口部の周囲に嵌合用スリット31よりも浅い(深さ1mm〜2mm程度)補助スリット32を設けると良い。そうすることにより、石膏ボード用アンカーねじ42やプラグ43の皿部分が補助スリット32の中に収まり、フック基部30の裏面と壁等15が密着することができるようになる。
【0017】
図6は、本発明のフック基部の裏面図であり、(a)は図1,2で用いたフック基部、(b)は図3〜5で用いたフック基部、(c)は嵌合用スリットの形状を変えたフック基部を示す。
【0018】
図6(a)では、フック基部30の裏面と壁等との摩擦抵抗を大きくするために、嵌合用スリット31のスリット開口部を除いて、横方向に摩擦スリット33を設けている。摩擦スリット33は、フック基部30の裏面を線状に数カ所削ることによって設けることができる。なお、削る向きは任意で良いと考えられる。このように、摩擦スリット33を設けることにより、壁等とフック基部30の裏面との摩擦抵抗が大きくなるので、フックが回りにくいという効果を奏する。
【0019】
図6(b)では、石膏ボード用アンカーねじ等の皿部分が壁等の面位置よりも突出している場合に、その突出している皿部分がフック基部30の裏面に接してガタつきが生じることを防止するために、嵌合用スリット31のスリット開口部の周囲に、浅い補助スリット32を設けたものである。この補助スリット32に石膏ボード用アンカーねじ等の皿部分が納まることにより、フック基部30の裏面と壁等が密着でき、ガタつきを抑えられる。
【0020】
図6(c)は、嵌合用スリット31をフック基部30の下端面から設けるのではなく、フック基部30の裏面中央付近に設けたものである。ここでは、ビスの皿部分をフック基部30の裏面から直接嵌合用スリット31に差し込み、フック基部30を少し下げて、嵌合できるようになっている。したがって、図6(c)の嵌合用スリット31の開口部は、ビスの皿部分を挿入できるようにスリットの拡がった部分と、ビスの皿部分を引っかけることができるスリット部分が組み合わされた形状になる。
【0021】
なお、図6(b)(c)では、摩擦スリット33を図示していないが、当然これらにも摩擦スリット33を施すことができる。特に図6(b)のように補助スリット32を設けた場合は、壁等に密着するフック基部30の裏面の面積が小さくなるので、摩擦抵抗を大きくする対策を施すことは、フックが回らないようにするのに効果的である。
【0022】
さらに、本発明のフックは、基本的には、特定のビスを使用する必要がある。しかし、設置場所の条件で小さなビスしか使用できない場合や、手持ちのビスを使用したい場合もある。そこで、様々な大きさのビスでもフックを設けられるように、嵌合用スリットの形状に対応した特定のワッシャーを利用できるようにしても良い。つまり、皿部分の小さいビスに、特定のワッシャーを装着することで、嵌合用スリットと嵌合することができるようにすれば、利便性が高くなると考えられる。
【0023】
また、図示した例は、いずれもビスが1本の場合であるが、ビスを2本使用しても良い。ビスを2本にすることによって、取付けたフックが回転しなくなり、また、吊り下げ強度を高めることもできる。
【符号の説明】
【0024】
10 フック
15 壁等
20 引っかけ部
30 フック基部
31 嵌合用スリット
32 補助スリット
33 摩擦スリット
40 ビス
41 ビスの皿部分
42 石膏ボード用アンカーねじ
43 プラグ
d スリット開口部の幅
R ビスの皿部分の最大径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁又は柱に設けられるフックであって、
前記壁又は柱に皿部分を残して首下までねじ込まれるビスと、
前記ビスの皿部分に取付けられるフック基部と、
前記フック基部の表面に設けられた引っかけ部と、
前記フック基部の裏面側に設けられ、前記フック基部の下端面から中心付近まで前記ビスの皿部分が挿通可能な嵌合用スリットと、を有し、
前記嵌合用スリットの前記フック基部の裏面位置におけるスリット開口部の幅が前記ビスの皿部分の最大径より狭く、前記嵌合用スリットに前記ビスの皿部を挿通することによって、前記ビスの皿部分と前記フック基部が取付けられていることを特徴とするフック。
【請求項2】
前記スリット開口部の周囲に、前記嵌合用スリットよりも浅い補助スリットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフック。
【請求項3】
前記フック基部の裏面に任意の方向に削った摩擦スリットを有し、前記フック基部の裏面の摩擦抵抗を増加させたことを特徴とする請求項1または2に記載のフック。
【請求項4】
前記壁又は柱が石膏ボードの場合は、前記壁又は柱にねじ込まれた石膏ボード用アンカーねじに、前記ビスが皿部分を残して首下までねじ込まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフック。
【請求項5】
前記壁又は柱がコンクリート、タイル又はブロックの場合は、前記壁又は柱に穿孔した孔に設けられたプラグに、前記ビスが皿部分を残して首下までねじ込まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−78464(P2011−78464A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231151(P2009−231151)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(591178964)ダンドリビス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】