説明

フラットケーブル折り曲げ装置

【課題】フラットケーブルに少なくとも3箇所の折り目をつける作業を、手間がかからず、規定の折り目をつけることができる装置を提供すること。
【解決手段】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置は、第1のプレス部材は、第1のV字状の溝状凹部と、第2のV字状の溝状凹部と、これらの2つの溝状凹部の間に形成された第1の山状凸部とを備え、第2のプレス部材は、前記第1のV字状の溝状凹部に対応する第2の山状凸部と、前記第2のV字状の溝状凹部に対応する第3の山状凸部と、前記山状凸部に対応する第3のV字状の溝状凹部とを備え、前記第3のV字状の溝状凹部は、前記第2の山状凸部と前記第3の山状凸部とに対して相対的にプレス方向に進退可能に配設され、第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスする際には、まず、フラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして中央の折り目をつけ、その後、2つの側部の折り目をつける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルフラットケーブルを折り曲げるフラットケーブル折り曲げ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルフラットケーブルを折り曲げるフラットケーブル折り曲げ装置としては、例えば、特許文献1(特開2007-103018号公報)には、ケーブルをU字状に折り曲げる装置が提案されている。
無線機等の電子機器においては、フラットケーブルに3箇所の折り目をつけて、W字状に折り曲げ加工して使用することがあるが、そのような加工には、前記特許文献1に記載の装置では対応できない。
そこで、フラットケーブルに3箇所の折り目をつけるためには、1箇所ずつ3回折り目をつけて加工していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-103018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラットケーブルに3箇所の折り目をつけるために、3回の折り目加工を繰り返すことは、手間がかかり過ぎるという問題や、折り曲げ位置がずれるという問題や、折り曲げ部が丸みを帯びてしまうという問題などがあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置は、
第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスすることによって、フラットケーブルに、中央の折り目と、中央の折り目に隣接する2つの側部の折り目とを含んだ少なくとも3つの折り目をつけるフラットケーブル折り曲げ装置であって、
第1のプレス部材は、
第1のV字状の溝状凹部と、第2のV字状の溝状凹部と、これらの2つの溝状凹部の間に形成された第1の山状凸部とを備え、
第2のプレス部材は、
前記第1のV字状の溝状凹部に対応する第2の山状凸部と、前記第2のV字状の溝状凹部に対応する第3の山状凸部と、前記山状凸部に対応する第3のV字状の溝状凹部とを備え、
前記第3のV字状の溝状凹部は、前記第2の山状凸部と前記第3の山状凸部とに対して相対的にプレス方向に進退可能に配設され、
第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスする際には、
まず、進出させた状態の第3のV字状の溝状凹部と、第1の山状凸部とで、フラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして中央の折り目をつけ、
その後、第3のV字状の溝状凹部を後退させつつ、第1のV字状の溝状凹部と第2の山状凸部とでフラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして1つの側部の折り目をつけるとともに、第2のV字状の溝状凹部と第3の山状凸部とでフラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして他の1つの側部の折り目をつけることを特徴としている。
請求項2では、
前記第1のV字状の溝状凹部および前記第2のV字状の溝状凹部の底部にはそれぞれ逃げ溝が形成されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置によれば、
第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスすることによって、フラットケーブルに、中央の折り目と、中央の折り目に隣接する2つの側部の折り目とを含んだ少なくとも3つの折り目をつけるフラットケーブル折り曲げ装置であって、
第1のプレス部材は、
第1のV字状の溝状凹部と、第2のV字状の溝状凹部と、これらの2つの溝状凹部の間に形成された第1の山状凸部とを備え、
第2のプレス部材は、
前記第1のV字状の溝状凹部に対応する第2の山状凸部と、前記第2のV字状の溝状凹部に対応する第3の山状凸部と、前記山状凸部に対応する第3のV字状の溝状凹部とを備え、
前記第3のV字状の溝状凹部は、前記第2の山状凸部と前記第3の山状凸部とに対して相対的にプレス方向に進退可能に配設され、
第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスする際には、
まず、進出させた状態の第3のV字状の溝状凹部と、第1の山状凸部とで、フラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして中央の折り目をつけ、
その後、第3のV字状の溝状凹部を後退させつつ、第1のV字状の溝状凹部と第2の山状凸部とでフラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして1つの側部の折り目をつけるとともに、第2のV字状の溝状凹部と第3の山状凸部とでフラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして他の1つの側部の折り目をつけるので、
1回の操作で3つの折り目をつけることができ、
手間がかからず作業効率が向上する。
特に、第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスする際には、まず、進出させた状態の第3のV字状の溝状凹部と、第1の山状凸部とで、フラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして中央の折り目をつけるので、中央の折り目が規定の位置からずれることは防止できる。そして、フラットケーブルの中央を挟んだ状態で側部の折り目をつけるので、側部の折り目の位置も規定の位置からずれることは防止される。このようにして、本発明のフラットケーブル折り曲げ装置によれば、折り曲げ位置がずれることもなくなる。
請求項2では、
前記第1のV字状の溝状凹部および前記第2のV字状の溝状凹部の底部にはそれぞれ逃げ溝が形成されているので、折り曲げ部が丸みを帯びずに明確な折り目がつけられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置で折り目をつけた状態のフラットケーブルの斜視図である。
【図2】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置の全体の概略を示す正面断面図である。
【図3】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置の下部プレス部の平面図である。
【図4】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置の上部プレス部材の動作を説明する正面断面図である。
【図5】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置を用いた折り目加工の工程を説明する正面断面図である。
【図6】本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置の実施例2の概略を示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置は、図1の(A)に示したような平坦な加工前のフラットケーブルFaに、一回の操作で、図1の(B)に示したような3つの折り目B1,B2,B3をつけて、W字状に折り畳むことができるフラットケーブルFbをつくることができる装置である。
以下、フラットケーブルにつける2つの折り目を、図上の左から順に第1の折り目B1,第2の折り目B2,第3の折り目B3と呼び、第1の折り目B1と第3の折り目B3とを側部の折り目と総称し、第2の折り目B2を中央の折り目とも呼ぶことにする。
【0009】
本発明に係るフラットケーブル折り曲げ装置の全体の正面図を示した図2において、
フラットケーブル折り曲げ装置1は、固定された下部プレス部材2を備えた基台部20と、昇降する上部プレス部材3を備えたフレーム部30とを備えており、フレーム部30はハンドル4を押し下げると支柱5に沿って下降し、前記下部プレス部材2と前記上部プレス部材3との間にセットされた平坦なフラットケーブルFaを挟み込んでプレスするように構成されている。
【実施例1】
【0010】
図2と、前記下部プレス部材2の平面図を示した図3において、
下部プレス部材2の中央部近傍には、2つのV字状の溝状部21、22が形成されており、2つの溝状部21、22の間には山状部23が形成されている。前記2つの溝状部21、22の外側には平坦なケーブル設置部24、24が形成されている。
前記下部プレス部材2は、略直方体の部材を長手方向の断面がW字形状となるように加工して、前記2つのV字状の溝状部21、22と前記山状部23とケーブル設置部24、24とが形成されたものであり、その長手方向の長さは、図1の(A)に示した折り目加工前の平坦なフラットケーブルFaの長さLに等しく形成され、その短手方向の長さ(幅)は、図1の(A)に示した折り目加工前の平坦なフラットケーブルの幅Wに等しく形成されている。
【0011】
前記断面のW字形状のうち、両側の2つのV字状の溝状部21、22の断面の挟み角度は、それぞれ、第1の折り目の角度と、第3の折り目の角度に対応した角度であり、中央の山状部23の断面の挟み角度は、第2の折り目に対応した角度に設定されている。
前記両側のケーブル設置部24、24をコ字状に囲むようにケーブルガイド25、25が配設されている。
フラットケーブルの折り曲げ加工に際しては、まず、前記ケーブルガイド25、25に囲まれた領域に、破線で示した平坦なケーブルFaを設置する。このようなケーブルガイド25、25があるため、平坦なケーブルFaを所定の位置に設置しやすい。
【0012】
次に、図2、図4を参照して、上部プレス部材3の構造を説明する。
図4に示したように、上部プレス部材3は、フレーム部30に固定された外側押さえ部材31と、フレーム部30に対して相対的に上下動可能な中央押さえ部材32とを備えている。中央押さえ部材32は、十分な強さのバネ33を用いて下方に付勢されている。
前記外側押さえ部材31には、前記下部プレス部材2の断面形状に対応させて、断面形状がW字形状となるように加工して、下方に凸出した2つのV字形状の凸部311、312が形成されている。
【0013】
前記2つのV字状の凸部311、312の断面の挟み角度は、それぞれ、フラットケーブルに形成される第1の折り目B1の角度と、第3の折り目B3の角度に対応した角度に設定されている。
前記中央押さえ部材32は、前記下部プレス部材2の中央の山状部23の断面形状と、断面形状が逆V字形状となるように加工した凹部321が上方に凹設されている。前記凹部321の断面の挟み角度は、フラットケーブルに形成される第2の折り目B2に対応した角度に設定されている。
【0014】
以上のように構成された上部プレス部材3は、ハンドルが押し下げられていない状態では、中央押さえ部材32は前記バネ33によって下方に付勢されているので、図4の(A)に示したように、所定の下限位置にあって、この下限位置では、中央押さえ部材32の下端323は、外側押さえ部材31の下端315とほぼ同一直線上にある。
そして、ハンドルを押し下げることによって、前記フレーム部30が下降して、中央押さえ部材32がフラットケーブルに当たりはじめると、前記バネ33が徐々に圧縮されて、中央押さえ部材32は、図4の(A)に示した状態の位置から、図4の(B)に示した状態を通って、図4の(C)に示した状態まで押し上げられ得る。
図4の(C)に示した状態まで押し上げられると、中央押さえ部材32の凹部321は外側押さえ部材31の凸部311、312の傾斜面と一致した面を形成する位置になり、それ以上押し上げられることはない。
【0015】
以上のように構成されたフラットケーブル折り曲げ装置1を用いて、平坦なフラットケーブルに3つの折り目をつける加工操作を、図5を参照して説明する。図5には、フラットケーブル折り曲げ装置1の要部を示し、細部は省略した。
図5の(A)において、
まず、下部プレス部材2のケーブル設置部24、24に平坦なケーブルFaを置く。このとき、ケーブルガイド25、25に囲まれた所定の設置領域に平坦なケーブルFaを置き易い。
その後、ハンドルを押し下げると、上部プレス部材3が図5の(A)のように下降して平坦なケーブルFaに接触する。ハンドルをさらに押し下げると、上部プレス部材3が図5の(B)のようにさらに下降するので、平坦なケーブルFaの中央部分は、上部プレス部材3の中央押さえ部材32と、下部プレス部材2の中央部の山状部23との間に挟まれてプレスされ、山形の第2の折り目B2(中央の折り目)が、ほぼ形成される。
【0016】
その後、ハンドルをさらに押し下げると、フレーム部30が下降して、上部プレス部材3の中央押さえ部材32を付勢するバネ33が、ハンドル操作による下方へのプレス圧力に負けて圧縮され始める。
ハンドルをさらに押し下げると、フレーム部30がさらに下降して、上部プレス部材3のフレーム部30に固定された外側押さえ部材31がさらに下降し、図5の(C)のように、フラットケーブルは、上部プレス部材3の外側押さえ部材32と、下部プレス部材2の2つのV字状の溝状部21、22との間に挟まれてプレスされ、第1の折り目B1と第3の折り目B3(側部の折り目)が形成される。
【0017】
図5の(B)の状態から図5の(C)の状態に移行する間、フラットケーブルの中央部分は、上部プレス部材3の中央押さえ部材32と、下部プレス部材2の中央部の山状部23との間に挟まれてプレスされた状態であるので、ずれることは防止され、3つの折り目が規定の位置に形成されるのである。
【0018】
なお、図2、4に示したように、上部プレス部材3の中央押さえ部材32の凹部321の中央部分には、逃げ溝324が形成されているので、図4の(C)の状態で形成されるフラットケーブルの第2の折り目B2は、丸みを帯びることなく明瞭な折り目が形成される。
同様に、下部プレス部材2の2つのV字状の溝状部21、22のそれぞれの中央部分にも、逃げ溝211、221が形成されているので、フラットケーブルの第1と第3の目B1,B3は、丸みを帯びることなく明瞭な折り目が形成される。
【0019】
以上のようにして、フラットケーブルに3つの折り目をつけた後、ハンドルを押し上げると、上部プレス部材3は下部プレス部材2から離れて上昇するので、折り目のついたフラットケーブルFbを取り出すことができる。
なお、上部プレス部材3の中央押さえ部材32を進退可能に設けたが、中央押さえ部材32をフレーム部30に固定して、外側押さえ部材31を進退可能に設けてもよい。
【実施例2】
【0020】
以上の実施例1においては、上部プレス部材3の中央押さえ部材を進退可能に配設したが、図6に示した実施例2のように、上部プレス部材2Bは一体に形成し、下部プレス部材3Bの中央押さえ部材32Bを進退可能に配設してもよい。
【符号の説明】
【0021】
Fa,Fb フラットケーブル
B1 第1の折り目、側部の折り目
B2 第2の折り目、中央の折り目
B3 第3の折り目、側部の折り目
1 フラットケーブル折り曲げ装置
2 下部プレス部材
20 基台部
21、22 V字状の溝状部
23 山状部
24、24 ケーブル設置部
25、25 ケーブルガイド
3 上部プレス部材
30 フレーム部
31 外側押さえ部材
32 中央押さえ部材
33 バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスすることによって、フラットケーブルに、中央の折り目と、中央の折り目に隣接する2つの側部の折り目とを含んだ少なくとも3つの折り目をつけるフラットケーブル折り曲げ装置であって、
第1のプレス部材は、
第1のV字状の溝状凹部と、第2のV字状の溝状凹部と、これらの2つの溝状凹部の間に形成された第1の山状凸部とを備え、
第2のプレス部材は、
前記第1のV字状の溝状凹部に対応する第2の山状凸部と、前記第2のV字状の溝状凹部に対応する第3の山状凸部と、前記山状凸部に対応する第3のV字状の溝状凹部とを備え、
前記第3のV字状の溝状凹部は、前記第2の山状凸部と前記第3の山状凸部とに対して相対的にプレス方向に進退可能に配設され、
第1のプレス部材と第2のプレス部材でフラットケーブルを挟んでプレスする際には、
まず、進出させた状態の第3のV字状の溝状凹部と、第1の山状凸部とで、フラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして中央の折り目をつけ、
その後、第3のV字状の溝状凹部を後退させつつ、第1のV字状の溝状凹部と第2の山状凸部とでフラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして1つの側部の折り目をつけるとともに、第2のV字状の溝状凹部と第3の山状凸部とでフラットケーブルの一部を挟みこんでプレスして他の1つの側部の折り目をつけることを特徴とするフラットケーブル折り曲げ装置。
【請求項2】
前記第1のV字状の溝状凹部および前記第2のV字状の溝状凹部の底部にはそれぞれ逃げ溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のフラットケーブル折り曲げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−34716(P2011−34716A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177756(P2009−177756)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000100746)アイコム株式会社 (273)