説明

フラットケーブル製造方法及びその製造装置

【課題】この発明は、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができるフラットケーブル製造方法及びその製造装置の提供を目的とする。
【解決手段】導体移送方向Aと平行して並列に配置された複数本の平角導体2を、熱ロール4,4の接点部Bに向けて配置された導体ガイド板7により所定のピッチ間隔Pに規制し、かつ、該接点部Bに対し可能な限り近づけて送り込みガイドする。接点部Bの近くに送り込みガイドされる平角導体2を、熱ロール4,4により押え込まれる一対の絶縁フィルム3,3の間に挟み込みながら加熱・溶着する。これにより、複数本の平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの上下両面に対し絶縁フィルム3,3が被覆されたフラットケーブル1を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば車両内に搭載される各種電装品の配線、或いは、電気機器内の配線等に用いられるフラットケーブル製造方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前記フラットケーブルを製造する方法及び装置として、例えば既に提案済みのフラットケーブルのスリット方法(特許文献1参照)には、図8に示すような平角導体52を絶縁フィルム53,53の間に挟み込んでフラットケーブル51を製造する装置を用いた製造方法が開示されている。
詳述すると、この装置は、導体移送方向Aと平行して並列に配置された複数本の平角導体52を、上下一対の熱ロール54,54により押え込まれる絶縁フィルム53,53の間に挟み込みながら、平角導体52が挟み込まれた絶縁フィルム53,53を熱ロール54,54により加熱・溶着して、フラットケーブル51を製造することができるとされている。
【0003】
しかし、フラットケーブルの小型化及び低コスト化を目的に、平角導体52のピッチ間隔Pを狭ピッチ化することが強く望まれている。この場合には、下記のような問題点が有る。
つまり、平角導体52のピッチ間隔が狭くなるのに伴い、隣り合う平角導体52が互いに接近することになるが、所定の絶縁耐力を保つために、平角導体52は所定のピッチ公差を外れてはならない。
【0004】
このため、ガイドロール57等の導体ガイドを、熱ロール54,54の周面が対接する接点部Bに対し可能な限り近づけるのが望ましい。しかし、引用文献1のガイドロール57は軸方向から見て断面丸形状を有するため、ガイドロール57の中心部Bと、熱ロール54,54の接点部Bとを結ぶ距離D1よりも近づけることが困難である。したがって、絶縁フィルム53,53の間に挟み込まれる平角導体52のピッチ間隔が変位しやすく、狭ピッチ化された場合、その影響は大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−235229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができるフラットケーブル製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、導体移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を、上下一対の熱ロールにより押え込まれる一対の絶縁フィルムの間に挟み込みながら加熱・溶着して、該各導体を一対の絶縁フィルムで被覆するフラットケーブル製造方法において、前記各熱ロールが対接する接点部の上流側に、前記導体移送方向と直交する方向に対し所定のピッチ間隔に隔てられた位置に前記各導体を規制する薄板状の導体ガイド部材を配置し、前記導体ガイド部材の導体をガイドする先端側の面に、前記導体が導体移送方向に向けて挿入される溝部を所定間隔に隔てて複数配列し、前記導体ガイド部材を、該導体ガイド部材の先端側を前記各熱ロールの接点部に向けて配置し、前記導体ガイド部材の各溝部に挿入された各導体を、前記各熱ロールの接点部に向けて送り込みガイドするとともに、該各熱ロールにより押え込まれる一対の絶縁フィルムの間に挟み込んで製造するフラットケーブル製造方法であることを特徴とする。
【0008】
これにより、導体ガイド部材の先端側を各熱ロールの接点部に向けて、該導体ガイド部材を接点部の上流側に配置することができるので、導体ガイド部材の先端側と各熱ロールの接点部との距離が短くなり、各導体を、各熱ロールの接点部に近づけて送り込むことができる。この結果、導体の位置及び間隔が変位しにくく、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができる。
【0009】
この発明の態様として、前記各導体を、前記導体移送方向に向けて徐々に厚みが薄くなる形状に形成された前記導体ガイド部材により前記各熱ロールの接点部に向けてガイドすることができる。
【0010】
これにより、導体ガイド部材の先端側を各熱ロールの接点部に対しさらに近接して、該導体ガイド部材を接点部の上流側に配置することができるので、導体ガイド部材の先端側と各熱ロールの接点部との距離がさらに短くなり、各導体を、各熱ロールの接点部に対しより近づけて送り込むことができる。この結果、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができる。
【0011】
また、この発明の態様として、前記導体ガイド部材を、前記溝部が形成された第1ガイド部材で構成し、前記第1ガイド部材の上流側に、前記導体移送方向に向けて前記導体を挿入するための溝部が所定間隔に隔てて複数配列された第2ガイド部材を配置し、前記第1ガイド部材及び/又は第2ガイド部材を、前記導体移送方向と直交する方向へ変位させて配置し、前記各導体を、前記各ガイド部材の変位により前記第1ガイド部材の溝部の一側壁面に対し押し当てられる方向へ変位させることができる。
【0012】
これにより、各導体を、第1ガイド部材の各溝部の一側壁面に押し当てて、該一側壁面に沿って移送することができるので、各導体の位置及び間隔が変位することを防止することができる。この結果、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができる。また、導体及び溝部のピッチ公差による影響が小さく、導体のピッチ精度の向上を図ることができる。
【0013】
また、この発明は、導体移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を、上下一対の熱ロールにより押え込まれる一対の絶縁フィルムの間に挟み込みながら加熱・溶着して、該各導体を一対の絶縁フィルムで被覆するフラットケーブル製造装置において、前記各導体を導体移送方向と直交する方向に対し所定間隔に隔てられた位置に規制する薄板状の導体ガイド部材を備え、前記導体ガイド部材の導体をガイドする先端側の面に、前記各導体が導体移送方向に向けて挿入される複数の溝部を備え、前記導体ガイド部材を、前記各熱ロールが対接する接点部の上流側で、該導体ガイド部材の先端側を該各熱ロールの接点部に向けて配置したフラットケーブル製造装置であることを特徴とする。
【0014】
これにより、導体ガイド部材の先端側を各熱ロールの接点部に近接して、該導体ガイド部材を接点部の上流側に配置することができるので、導体ガイド部材の先端側と各熱ロールの接点部との距離が短くなり、各導体を、各熱ロールの接点部に近づけて送り込むことができる。この結果、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができる。
【0015】
この発明の態様として、この発明の態様として、前記導体ガイド部材を、前記導体移送方向に向けて徐々に厚みが薄くなる形状に形成することができる。
【0016】
これにより、導体ガイド部材の先端側を各熱ロールの接点部に対しさらに近接して、該導体ガイド部材を接点部の上流側に配置することができるので、導体ガイド部材の先端側と各熱ロールの接点部との距離がさらに短くなり、各導体を、各熱ロールの接点部に対しより近づけて送り込むことができる。この結果、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができる。
【0017】
また、この発明の態様として、前記導体ガイド部材を、前記溝部が形成された第1ガイド部材で構成し、前記第1ガイド部材の上流側に、前記導体移送方向に向けて前記導体を挿入するための溝部が所定間隔に隔てて複数配列された第2ガイド部材を配置し、前記第1ガイド部材及び/又は第2ガイド部材を、前記導体移送方向と直交する方向へ変位させて配置することができる。
【0018】
これにより、各導体を、第1ガイド部材の各溝部の一側壁面に押し当てて、該一側壁面に沿って移送することができるので、各導体の位置及び間隔が変位することを防止することができる。この結果、複数本の導体を、所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができる。また、導体及び溝部のピッチ公差による影響が小さく、導体のピッチ精度の向上を図ることができる。
【0019】
なお、前記フラットケーブルは、例えば並列に配置された複数本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆するか、1本の導体を一対の絶縁フィルムで被覆した後、導体が挟み込まれていない部分の樹脂フィルム同士を一体的に溶着或いは接着したもので構成することができる。
また、導体は、例えば平角導体、丸形導体等の導電性を有する金属製の導体で構成することができる。また、絶縁フィルムは、可撓性及び絶縁性を有する肉厚の薄い合成樹脂製のフィルムで構成することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、導体ガイド部材の先端側を各熱ロールの接点部に近接して、該導体ガイド部材を各熱ロールの接点部の上流側に配置することができるので、導体ガイド部材の各溝部に挿入された各導体を、各熱ロールの接点部に対し可能な限り近づけて送り込みガイドすることができる。このため、導体を一対の絶縁フィルムの間に挟み込む際、導体のピッチ間隔が変位しにくく、導体を所定のピッチ間隔に規制したまま一対の絶縁フィルムで被覆することができるとともに、導体のピッチ精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】製造装置によるフラットケーブルの製造方法を示す側面図。
【図2】製造装置による平角導体の幅寄せ方法を示す平面図。
【図3】平角導体を溝部の一側壁面に押し当てた状態を示す説明図。
【図4】熱ロールの間に対し平角導体が挟み込まれる部分を示す拡大側面図。
【図5】熱ロールの接点部に導体ガイド板を近接した部分を示す拡大側面図。
【図6】平角導体を所定のピッチ間隔に規制する導体ガイド板を示す平面図。
【図7】平角導体の他の幅寄せ方法を示す平面図。
【図8】従来のフラットケーブルの製造方法を示す側面図。
【図9】平角導体が幅方向に変位する状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は製造装置10によるフラットケーブル1の製造方法を示す側面図、図2は製造装置10による平角導体2の幅寄せ方法を示す平面図、図3は平角導体4を溝部7aの一側壁面7bに押し当てた状態を示す説明図、図4は熱ロール4,4の間に対し平角導体2が挟み込まれる部分を示す拡大側面図、図5は熱ロール4,4の接点部Bに導体ガイド板7が近接された部分を示す拡大側面図、図6は平角導体2を所定のピッチ間隔Pに規制する導体ガイド板7を示す平面図である。
【0023】
実施形態のフラットケーブル製造方法は、製造装置10の導体供給部aから供給される導体移送方向A(図1、図2に示す矢印方向)と平行して並列に配置された複数本の平角導体2を、導体供給部aとラミネート加工部bとの間に配置された導体ガイドロール5,6により中央寄りに幅寄せするとともに、ラミネート加工部bの上流側に配置された導体ガイドロール6と薄板状の導体ガイド板7とにより導体移送方向Aと直交する方向(導体移送方向Aの左側)へ相対変位させる。
【0024】
前記変位された平角導体2を、ラミネート加工部bの上流側に配置された導体ガイド板7により導体移送方向Aと直交する方向に対し所定のピッチ間隔Pに規制する。
【0025】
所定のピッチ間隔Pに規制された平角導体2を、ラミネート加工部bに配置された上下一対の熱ロール4,4により押え込まれる一対の絶縁フィルム3,3の間に挟み込みながら加圧・加熱・溶着して、複数本の平角導体2を導体移送方向Aと平行して並列に配置してなる導体群2Aの上下両面に一対の絶縁フィルム3,3を一体的に被覆する。
これにより、複数本の平角導体2が絶縁フィルム3,3で被覆されたフラットケーブル1を製造することができる。
【0026】
前記フラットケーブル1を製造する製造装置10は、導体移送方向Aの上流側から順に配置された複数本の平角導体2を供給する導体供給部aと、導体ガイドロール5と、導体ガイドロール6と、薄板状の導体ガイド板7と、平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの上下両面に一対の絶縁フィルム3,3を被覆するラミネート加工部bと、上下一対のフィルム供給部cとで構成している。
【0027】
導体供給部aは、導体移送方向Aの上流側に配置された図示しない導体供給装置で構成している。つまり、導体供給装置から供給される断面矩形に形成された複数本の平角導体2を、導体移送方向Aと平行して並列に配置したままラミネート加工部bに向けて供給する。
【0028】
ラミネート加工部bは、平角導体2及び絶縁フィルム3が重ね合わされた部分を厚み方向に加圧・加熱する上下一対の熱ロール4で構成している(図4及び図5参照)。
熱ロール4は、絶縁フィルム3の横幅より長尺に形成されており、図示しないモータにより導体移送方向Aに向けて同期して回転する。
【0029】
上下一対の熱ロール4は、導体群2A及び絶縁フィルム3が重ね合わされた部分の上下両面と対向して、平角導体2の導体移送方向Aと直交して配置されている。
つまり、熱ロール4,4は、ラミネート加工部bの上方に設けられたフィルム供給部cから供給される絶縁フィルム3と、該ラミネート加工部bの下方に設けられたフィルム供給部cから供給される絶縁フィルム3とを、熱ロール4の平滑に形成された周面で押え込みながら、前記導体ガイド板7により所定のピッチ間隔Pに規制された複数本の平角導体2を絶縁フィルム3,3の間に挟み込むことができる。
【0030】
かつ、複数本の平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの上下両面に、熱ロール4,4により押え込まれる一対の絶縁フィルム3,3を押し付けながら、熱ロール4,4の発熱作用により絶縁フィルム3,3を溶融する温度に加熱して、絶縁フィルム3,3の互いに接触する部分を一体的に溶着することができる。
【0031】
なお、絶縁フィルム3は、前記導体ガイド板7により複数本の平角導体2を所定のピッチ間隔Pに規制してなる導体群2Aの片面全体(上面又は下面)が覆われる横幅に形成されている。
【0032】
導体供給部aとラミネート加工部bとの間には、導体供給部aから供給される平角導体2を、該導体供給部aから供給される際のピッチ間隔Pに規制するための導体ガイドロール5と、該導体ガイドロール5のピッチ間隔Pより幅狭となるピッチ間隔P2に幅寄せするための導体ガイドロール6とが配置されている。
なお、導体ガイドロール5,6は、複数本の平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの横幅より長尺に形成されている。
【0033】
導体ガイドロール5は、導体供給部aの下流側で、導体ガイドロール6よりも上流側に配置されており、導体供給部aからラミネート加工部bに向けて移送される平角導体2との接触により導体移送方向Aへ回転される。
【0034】
また、導体ガイドロール5の周面には、平角導体2を長手方向に挿入するための凹状の溝部5aが導体移送方向Aと平行して並列に形成されている。該溝部5aは、導体移送方向Aと直交する軸方向に対して所定のピッチ間隔P1を隔てて複数配列されている(図2に示すa部参照)。
【0035】
つまり、導体供給部aから供給される平角導体2は、導体ガイドロール5の溝部5aに対し上流側から挿入され、導体供給部aから供給される際のピッチ間隔P1に規制される。
【0036】
導体ガイドロール6は、導体ガイドロール5の下流側で、後述する導体ガイド板7よりも上流側に配置されており、導体供給部aからラミネート加工部bに向けて移送される平角導体2との接触により導体移送方向Aへ回転される。
【0037】
また、導体ガイドロール6の周面には、平角導体2を長手方向に挿入するための凹状の溝部6aが導体移送方向Aと平行して並列に形成されている。該溝部6aは、導体移送方向Aと直交する軸方向に対し所定のピッチ間隔Pを隔てて複数配列されている(図2に示すb部参照)。
【0038】
溝部6aのピッチ間隔Pは、導体ガイドロール5の溝部5aのピッチ間隔P1より幅狭で、後述する導体ガイド板7の溝部7aのピッチ間隔Pと一致するピッチ間隔Pに設定されている。
【0039】
つまり、導体ガイドロール5の下流側に供給される平角導体2は、導体ガイドロール6の溝部6aに対し上流側から挿入され、平角導体2を移送する移送経路の中央部に向けて左右均等に幅寄せされる。かつ、導体ガイドロール5の溝部5aのピッチ間隔P1より幅狭で、後述する導体ガイド板7の溝部7aのピッチ間隔Pと一致するピッチ間隔Pに規制される。
【0040】
なお、平角導体2は、導体移送方向Aへ移送する際に付与される引張り力によって、導体ガイドロール5,6の溝部5a,6aに対し押し付けられている。また、溝部5a,6aの溝幅及び溝深さは、後述する溝部7aの溝幅及び溝深さと同一に設定されている。
【0041】
導体ガイド板7は、導体ガイドロール6の下流側で、熱ロール4,4の周面が対接された接点部Bの上流側に配置されるとともに、該導体ガイド部材7の先端側端部7bが熱ロール4,4の接点部Bに向けて配置されている。
【0042】
導体ガイド板7の前記接点部Bに近接される先端側(側面)は、導体移送方向Aの上流側から下流側に向けて徐々に厚みが薄くなる嘴形状(或いは楔形状、三角形状)に形成されている。また、導体ガイド板7の平面は、複数本の平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの横幅より幅広に形成されている。
【0043】
導体ガイド板7の平角導体2をガイドする先端側の上面には、図6に示すように、平角導体2を長手方向に挿入するための凹状の溝部7aが導体移送方向Aと平行して並列に形成されている。
また、溝部7aは、導体移送方向Aと直交する方向に対して所定のピッチ間隔Pを隔てて複数配列されている。
【0044】
溝部7aの溝幅は、平角導体2の横幅より溝部7aの両側壁面7bの間隔が広くなるような幅に形成されている。また、溝部7aの溝深さは、平角導体2の厚みより溝部7aの両側壁面7bが高くなるような深さに形成されている(図2のc部及び図6のd部参照)。
つまり、平角導体2の両側端面と、溝部7aの両側壁面7bとの間に隙間が形成されるので、平角導体2を導体ガイド板7の溝部7aに沿って導体移送方向Aへスムースに移送することができる。
【0045】
前記導体ガイドロール6と導体ガイド板7による平角導体2のガイドを詳述すると、平角導体2は、導体ガイドロール6の溝部6aから導体ガイド板7の溝部7aに向けて導体移送方向Aに対し斜めに交差する方向へ移送される。
【0046】
このため、平角導体2の一側端面が、導体ガイド板7の溝部7aの一側壁面7bに押し当てられ、該溝部7aの一側壁面7bに沿って導体移送方向Aと平行する方向に移送することができるので、平角導体2の位置及び間隔が変位することを防止することができる。
この結果、複数本の平角導体2を、所定のピッチ間隔Pに規制したまま一対の絶縁フィルム3,3で被覆することができる。また、平角導体2及び溝部7aのピッチ公差による影響が小さく、平角導体2のピッチ精度の向上を図ることができる。
【0047】
つまり、導体ガイドロール6の溝部6aに挿入された平角導体2の一側端面(左側端面)が、導体ガイド板7の溝部7aの一側壁面7b(左側壁面)に押し当てられるとともに、該溝部7aの一側壁面7bに沿って導体移送方向Aと平行する方向に向けて移送されるので、所定のピッチ間隔Pに規制される(図3参照)。
【0048】
例えば図9に示すように、平角導体52を所定のピッチ公差(最大寸法と最小寸法との差)から外れないように、平角導体52の横幅中心とガイドロール57の溝部57a中心とが一致する理想的な状態にガイドする場合(図9のa参照)、ガイドロール57には高いピッチ精度が要求される。
しかし、平角導体52の横幅には公差(P±0.03mm)があるので、溝部57aの溝幅を、平角導体52の最大公差幅(P+0.03mm)に設定すると、平角導体52の挿入位置が溝部57aの中で幅方向に変位しやすい。
【0049】
これに対し、図3、図4に示すように、導体ガイドロール6により平角導体52を導体移送方向Aに対し斜めに交差する方向へ変位させ、平角導体2の一側端面を、導体ガイド板7の溝部7aの一側壁面7bに押し当てることにより、平角導体52のピッチ精度が向上する。したがって、複数本の平角導体52を所定のピッチ間隔Pに保ったまま絶縁フィルム53,53で被覆することができる。
【0050】
導体ガイドロール6は導体ガイド板7に対して、溝部7aの一側壁面7bに沿って平角導体2の一側端面が押し当てられる寸法だけ幅方向に変位されているので、平角導体2の一側端面が、溝部7aの一側壁面7bに押し当てられる際、平角導体2が幅方向に変形されず、ダメージを与えない程度の力で押し当てられる。
【0051】
なお、本実施形態においては、導体ガイドロール6の溝部6aの溝中心を通るセンタラインを、導体ガイド板7の溝部7aの溝中心を通るセンタラインに対して導体移送方向Aの左側へ3°の角度だけ変位させている。
また、その変位角度は、平角導体2及び溝部6a,7aの幅、或いは平角導体2及び溝部6a,7aの公差に応じて所望する角度に変更してもよい。
【0052】
フィルム供給部cは、ラミネート加工部bの上方及び下方に配置された図示しないフィルム供給装置で構成している。つまり、フィルム供給装置から供給される絶縁フィルム3,3を、導体移送方向Aの上流側からラミネート加工部bの熱ロール4,4が対接する接点部Bに供給する。
【0053】
また、平角導体2を導体移送方向Aへ移送する際、平角導体2が幅方向へ変位しようとするが、平角導体2の一側端面が溝部7aの一側壁面7bに当接して、所定のピッチ間隔Pに規制される。さらに、平角導体2が導体ガイド板7の溝部7aから飛び出そうとするのを防止することができる。
また、導体ガイド板7の溝部7aが形成された先端側端部Bは、熱ロール4,4の周面が対接された接点部Bに対し可能な限り近接されている。
つまり、図4に示すように、導体ガイド板7の先端側端部Bと、熱ロール54,54の接点部Bとを結ぶ距離D2が、引用文献1のガイドロール57の中心部Bと、熱ロール54,54の接点部Bとを結ぶ距離D1(図8参照)よりも短くなるように配置されている。
これにより、導体ガイド板7の溝部7aに挿入された平角導体2が、熱ロール4,4の周面が対接する接点部Bに向けて真っ直ぐに送り込みガイドされる。
【0054】
前記製造装置10によりフラットケーブル1を製造する方法を以下詳述する。
先ず、図1、図2に示すように、導体供給部aから供給される複数本の平角導体2を、導体ガイドロール5の溝部5aに上流側から挿入して、導体供給部aから供給される際のピッチ間隔P1に規制する。
【0055】
次に、導体ガイドロール5の溝部5aに挿入された平角導体2を、導体ガイドロール6の溝部6aに上流側から挿入して、導体ガイドロール5のピッチ間隔Pより幅狭となるピッチ間隔P2で、導体ガイド板7の溝部7aのピッチ間隔Pと一致するピッチ間隔P2に幅寄せする。
【0056】
次に、導体ガイドロール6の溝部6aに挿入された平角導体2を、ラミネート加工部bの直前、すなわち、熱ロール4,4の接点部Bに向けて配置された導体ガイド板7の溝部7aに上流側から挿入し、導体ガイドロール6の溝部6aから導体ガイド板7の溝部7aに向けて導体移送方向Aに対し斜めに交差する方向へ変位させて移送する。
【0057】
これにより、溝部7aに挿入された平角導体2の一側端面が、該溝部7aの一側壁面7bに押し当てられ、該溝部7aの一側壁面7bに沿って導体移送方向Aと平行する方向に向けて移送されるので、平角導体2が所定のピッチ間隔Pに規制される。
【0058】
図4、図5に示すように、導体ガイド板7の溝部7aが形成された先端側端部Bは、熱ロール4,4の接点部Bに対し可能な限り近接されているので、導体ガイド板7の溝部7aに挿入された平角導体2は、熱ロール4,4の周面が対接する接点部Bの近くまで確実に送り込みガイドされる。
【0059】
したがって、絶縁フィルム3,3の間に挟み込まれる平角導体2のピッチ間隔Pが変位しにくく、平角導体2を所定のピッチ間隔Pに規制したまま絶縁フィルム3,3で被覆することができる。
【0060】
次に、平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの上下両面に、熱ロール4,4により一対の絶縁フィルム3,3を同時に押し付けながら加圧・加熱して、絶縁フィルム3,3の互いに接触する部分を一体的に溶着する。
【0061】
熱ロール4,4により平角導体2及び絶縁フィルム3が重ね合わされた部分を厚み方向に加圧する際、平角導体2が挟み込まれた部分は、絶縁フィルム3の弾性により厚み方向に圧縮されるが、平角導体2が挟み込まれていない部分は、上下の絶縁フィルム3,3同士が熱により一体的に接着される。
【0062】
これにより、平角導体2を並列に配置してなる導体群2Aの上下両面に対し絶縁フィルム3,3が一体的に被覆されたフラットケーブル1を製造することができる。
【0063】
以上のように、導体ガイド板7の先端側端部Bを熱ロール4,4の接点部Bに近接して、該導体ガイド板7を接点部Bの上流側に配置することができるので、導体ガイド板7の溝部7aに挿入された平角導体2を、熱ロール4,4の接点部Bに対し可能な限り近づけて送り込みガイドすることができる。
【0064】
このため、平角導体2を絶縁フィルム3,3の間に挟み込む際、平角導体2のピッチ間隔P3が変位しにくく、平角導体2を所定のピッチ間隔P3に規制したまま絶縁フィルム3,3で被覆することができるとともに、平角導体2のピッチ精度の向上を図ることができる。
【0065】
また、特許文献1に開示される装置を用いた場合、図8に示すように、平角導体52は、ガイドロール57の半径と対応する変位量だけ下方に押し下げられ、下方の熱ロール54に押し付けられた下側の絶縁フィルム53に先行して接触するので、平角導体52と下側の絶縁フィルム53との間で熱交換が先に開始されることになる。
つまり、上下の絶縁フィルム53,53の熱収縮の開始タイミングがずれるため、絶縁フィルム53,53を熱溶着する際、絶縁フィルム53に皺が付きやすく、また、絶縁フィルム53,53の間に微細な気泡が侵入する等の不具合も起こりやすい。
【0066】
しかし、本実施形態において、導体ガイド板7を、該導体ガイド板7の先端側端部Bを熱ロール4,4の接点部Bに向けて配置しているので、体ガイド板7の先端側端部Bと熱ロール4,4の接点部Bとの距離が短くなり、平角導体2が熱ロール4,4の接点部Bに近づけて送り込まれるため、絶縁フィルム3,3が熱ロール4,4に対し略同時に接触することになる。
【0067】
つまり、熱ロール4,4の発熱作用により絶縁フィルム3,3の熱収縮が同時に開始されるので、絶縁フィルム4,4を加熱・溶着する際、絶縁フィルム3に皺が付きにくく、また、絶縁フィルム3,3の間に侵入する微細な気泡の数が減少するので、品質の向上を図ることができる。
【0068】
また、平角導体2の一側端面を該溝部7aの一側壁面7bに押し当てて導体移送方向Aに向けて移送するため、平角導体2及び溝部6a,7aの公差に関係なく、溝部7aの一側壁面7bに沿う平角導体2のピッチ間隔Pは一定になるので、その位置及び間隔を基準にすれば、部品の設計や管理等が容易に行える。
【0069】
また、平角導体2を、導体ガイドロール6の溝部6aに挿入して、該溝部6aの滑らかな底部周面に押し付けるので、平角導体2を幅寄せする際に付与される接触抵抗が小さく、平角導体2をスムースに変位することができる。
【0070】
なお、溝部7aの一側壁面7bに沿う平角導体2のピッチ精度は、平角導体2の幅寸法精度とは無関係に、平角導体2の機械加工精度に依存することになり、ピッチ精度±0.01mmの高精度な案内が実現できる。
【0071】
図7は、平角導体2の他の幅寄せ方法を示す平面図である。
本例の製造装置10は、導体ガイドロール5,6を導体移送方向Aと直交する方向(導体移送方向Aの左側)へ変位させて配置し、導体ガイド板7の溝部7aに挿入される平角導体2を、導体ガイドロール5,6により導体移送方向Aに対し斜めに交差する方向へ変位させる。
【0072】
平角導体2を、導体ガイドロール6の溝部6aから導体ガイド板7の溝部7aに向けて斜めに移送し、溝部7aに挿入された平角導体2の一側端面を該溝部7aの一側壁面7bに押し当てる。
【0073】
これにより、平角導体2が所定のピッチ間隔Pに規制されるので、絶縁フィルム3,3の間に挟み込む際、平角導体2のピッチ間隔Pが変位することがなく、前記実施形態と略同等の作用及び効果を奏することができる。
また、導体ガイド板7を導体移送方向Aと直交する方向へ変位させて配置してもよい。
【0074】
この発明の構成と、前記実施形態との対応において、
この発明の第1ガイド部材は、実施形態の導体ガイド板7に対応し、
以下同様に、
第2ガイド部材は、導体ガイドロール6に対応するも 、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、請求項に示される技術思想に基づいて応用することができ、多くの実施の形態を得ることができる。
【0075】
実施形態では、導体ガイドロール6を導体移送方向Aと直交する方向へ変位させて配置した例を説明したが、例えば導体ガイド板7を導体移送方向Aと直交する方向(導体移送方向Aの左側又は右側)へ変位させて配置してもよい。
また、同一の溝幅に形成された溝部5a,6a,7aの配列例を説明したが、例えば異なる溝幅に形成された溝部5a,6a,7aを複数組み合わせて配列してもよい。
また、平角導体2を所定のピッチ間隔に隔てられた位置に規制することが可能であれば、溝部7aの溝深さを平角導体2の厚みより浅くなるような深さに形成してもよい。
また、導体ガイドロール5,6を、図示しないモータにより導体移送方向Aへ回転させてもよい。
【符号の説明】
【0076】
…接点部
…先端側端部
1…フラットケーブル
2…平角導体
2A…導体群
3…絶縁フィルム
4…熱ロール
5,6…導体ガイドロール
7…導体ガイド板
5a,6a,7a…溝部
10…製造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を、上下一対の熱ロールにより押え込まれる一対の絶縁フィルムの間に挟み込みながら加熱・溶着して、該各導体を一対の絶縁フィルムで被覆するフラットケーブル製造方法において、
前記各熱ロールが対接する接点部の上流側に、前記導体移送方向と直交する方向に対し所定のピッチ間隔に隔てられた位置に前記各導体を規制する薄板状の導体ガイド部材を配置し、
前記導体ガイド部材の導体をガイドする先端側の面に、前記導体が導体移送方向に向けて挿入される溝部を所定間隔に隔てて複数配列し、
前記導体ガイド部材を、該導体ガイド部材の先端側を前記各熱ロールの接点部に向けて配置し、
前記導体ガイド部材の各溝部に挿入された各導体を、前記各熱ロールの接点部に向けて送り込みガイドするとともに、該各熱ロールにより押え込まれる一対の絶縁フィルムの間に挟み込んで製造することを特徴とする
フラットケーブル製造方法。
【請求項2】
前記各導体を、前記導体移送方向に向けて徐々に厚みが薄くなる形状に形成された前記導体ガイド部材により前記各熱ロールの接点部に向けてガイドする
請求項1に記載のフラットケーブル製造方法。
【請求項3】
前記導体ガイド部材を、前記溝部が形成された第1ガイド部材で構成し、
前記第1ガイド部材の上流側に、前記導体移送方向に向けて前記導体を挿入するための溝部が所定間隔に隔てて複数配列された第2ガイド部材を配置し、
前記第1ガイド部材及び/又は第2ガイド部材を、前記導体移送方向と直交する方向へ変位させて配置し、
前記各導体を、前記各ガイド部材の変位により前記第1ガイド部材の溝部の一側壁面に対し押し当てられる方向へ変位させる
請求項1又は2に記載のフラットケーブル製造方法。
【請求項4】
導体移送方向と平行して並列に配置された複数本の導体を、上下一対の熱ロールにより押え込まれる一対の絶縁フィルムの間に挟み込みながら加熱・溶着して、該各導体を一対の絶縁フィルムで被覆するフラットケーブル製造装置において、
前記各導体を導体移送方向と直交する方向に対し所定間隔に隔てられた位置に規制する薄板状の導体ガイド部材を備え、
前記導体ガイド部材の導体をガイドする先端側の面に、前記各導体が導体移送方向に向けて挿入される複数の溝部を備え、
前記導体ガイド部材を、前記各熱ロールが対接する接点部の上流側で、該導体ガイド部材の先端側を該各熱ロールの接点部に向けて配置した
フラットケーブル製造装置。
【請求項5】
前記導体ガイド部材を、前記導体移送方向に向けて徐々に厚みが薄くなる形状に形成した
請求項4に記載のフラットケーブル製造装置。
【請求項6】
前記導体ガイド部材を、前記溝部が形成された第1ガイド部材で構成し、
前記第1ガイド部材の上流側に、前記導体移送方向に向けて前記導体を挿入するための溝部が所定間隔に隔てて複数配列された第2ガイド部材を配置し、
前記第1ガイド部材及び/又は第2ガイド部材を、前記導体移送方向と直交する方向へ変位させて配置した
請求項4又は5に記載のフラットケーブル製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−210583(P2011−210583A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−77852(P2010−77852)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)