説明

フラワーペースト類

【課題】 風味素材の艶及び発色が良好で、さらに包材からの剥れも良好である、フラワーペースト、カスタード、スープ等のフラワーペースト類を提供すること。
【解決手段】 澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有することを特徴とするフラワーペースト類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラワーペースト、カスタード、スープ等のフラワーペースト類に関する。また、本発明は、該フラワーペースト類の製造方法、及び該フラワーペースト類を用いたベーカリー食品に関する。
【背景技術】
【0002】
フラワーペーストや、カスタード、スープ等の澱粉の糊化によるボディーを有するフラワーペースト類は、一般的に、小麦粉や穀物澱粉等の澱粉類、ミルク、砂糖、卵、水等を混合した後、加熱して糊化させることによって得られるものであり、このフラワーペーストの改良は、従来、その風味、耐熱性、保存性、冷凍耐性等の観点からが主であった。
【0003】
ここで、フラワーペースト類は、通常、茶、チョコ、カスタード(卵)等の風味素材を含んでいる。しかし、フラワーペースト類は、澱粉類の糊化により不透明なゲルやゾルを生成するため、これらの風味素材の艶がなくなり、発色が悪くなるという問題があった。
さらに、これらのフラワーペースト類をパン生地やクッキー生地等のベーカリー生地に包餡、サンド、トッピング、積層等の方法により複合して複合生地とした後、焼成及び/又はフライした場合、風味素材の艶が一層なくなり、経日的に色がくすんでいくという問題もあった。
【0004】
これらの問題を解決するため、例えば、風味素材の添加量を増やしたり、着色料を添加して、フラワーペースト類自体の呈色を濃くする方法、小麦粉の蛋白質を改質する方法(例えば特許文献1参照)、特定の澱粉糖を使用する方法(例えば特許文献2参照)等が提案されている。しかし、フラワーペースト類自体の呈色を濃くする方法は、色を濃くすることはできても、艶や発色を向上させることはできないという問題があり、特許文献1に記載の方法は、特殊な小麦粉を必要とする上に、艶や発色の向上効果に乏しく、特許文献2に記載の方法は、低粘度のフラワーペースト類に限られてしまうという問題があった。また、特許文献1や特許文献2に記載の方法では、経日的な色のくすみの防止効果が見られず、さらに、ゲル濃度の高いフラワーペースト類の場合には、包材が剥れにくくなるという問題があった。
このように、フラワーペースト類には、普遍的に艶や発色を向上させることができないという問題があった。
【0005】
【特許文献1】特開平05−103611号公報
【特許文献2】特開平05−38262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、風味素材の艶及び発色が良好で、さらに包材からの剥れも良好である、フラワーペースト、カスタード、スープ等のフラワーペースト類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定組成のフラワーペースト類に、極度硬化油脂を含有する油脂を特定量含有させることにより、上記問題の解決が可能であることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有することを特徴とするフラワーペースト類を提供するものである。
また、本発明は、澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱することを特徴とするフラワーペースト類の製造法を提供するものである。
また、本発明は、上記フラワーペースト類及びベーカリー生地を複合させた複合生地を、焼成及び/又はフライしてなることを特徴とするベーカリー食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、口溶けを良好に保ちながら、その風味素材の艶及び発色が向上されており、しかも経日的な色のくすみをも防止されたフラワーペースト類を提供することができる。さらに、該フラワーペースト類は、包材からの剥れも良好である。また、該フラワーペースト類をベーカリー生地に包餡、サンド、トッピング、積層等の方法により複合して複合生地として使用する場合には、作業性が向上し、しかも焼き残り性や保型性を向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明のフラワーペースト類について詳述する。
【0011】
本発明のフラワーペースト類は、澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有する。
ここで、本発明でいうフラワーペースト類とは、澱粉類の糊化によるボディーを有するものであり、例えば、フラワーペースト、カスタード、スープ等が挙げられる。
【0012】
本発明のフラワーペースト類に用いられる上記澱粉類としては、一般的な小麦粉、コーンスターチの他、各種澱粉から得られる化工澱粉を用いることができる。
【0013】
上記澱粉類の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、2〜10質量%、好ましくは2.5〜8質量%である。該澱粉類の含有量が2質量%未満では、液状となって十分にペースト化されず、また、10質量%超では、硬く口溶けの悪いものとなる。
【0014】
本発明で使用する上記極度硬化油とは、1種又は2種以上の油脂からなる配合油を、ヨウ素価が5以下、好ましくは1未満となるまで水素添加した硬化油脂であって、その融点が好ましくは45℃以上、さらに好ましくは50℃以上の硬化油脂である。上記配合油に用い得る油脂としては、例えば、パーム油、コーン油、綿実油、大豆油、ハイエルシンナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。
【0015】
本発明においては、上記極度硬化油の中でも、風味素材の艶及び発色の向上効果が特に高い点で、ハイエルシンナタネ油の極度硬化油、大豆油の極度硬化油及びパーム油の極度硬化油から選択される1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0016】
本発明のフラワーペースト類中の上記極度硬化油の含有量は、0.01〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%、より好ましくは0.01〜0.3質量%である。0.01質量%未満であると、風味素材の艶及び発色の向上効果が得られないことに加え、べたつきや水分の分離が起こりやすく、また保型性や焼き残り性が悪く、更には包材からの剥れが悪い等の問題が生じる。1質量%を超えると、風味素材の艶及び発色向上効果が得られないことに加え、フラワーペースト類の口溶けがワキシーになり、伸展性や生地密着性等の物性が悪化することに加え、包材からの剥れが悪い等の問題が生じる。
【0017】
また、本発明のフラワーペースト類には、上記極度硬化油以外の油脂も使用する。上記極度硬化油以外の油脂としては、特に限定されないが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、キャノーラ油、牛脂、乳脂、豚脂、カカオ脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂及び動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂等が挙げられる。これらの油脂は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0018】
本発明のフラワーペースト類中、油脂の含有量は、上記極度硬化油の含有量もあわせて、3〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜25質量%である。該油脂の含有量が3質量%未満では、フラワーペースト類の風味素材の艶及び発色向上効果が得られないことに加え、口溶け等の食感や、伸展性や生地密着性等の物性が悪化する。また、40質量%超では、風味素材の艶及び発色向上効果が得られないことに加え、べとつきやすく、油分が分離しやすくなる。
なお、本発明のフラワーペースト類に、油脂を含有する副原料を使用した場合は、上記油脂の含有量には、それらの副原料に含まれる油脂分も含めるものとする。
【0019】
また、全油脂中における上記極度硬化油の含有量は、好ましくは0.05〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%、最も好ましくは0.1〜1質量%である。0.05質量%未満であると、風味素材の艶及び発色の向上効果が得られなくなるおそれがあることに加え、ベーカリー生地との複合生地を焼成した際の保型性や焼き残り性が悪化する場合がある。また、5質量%を超えると、風味素材の艶及び発色の向上効果が得られなくなるおそれがあることに加え、フラワーペースト類の口溶けがワキシーになるおそれもある。
【0020】
本発明において、極度硬化油が、なぜ風味素材の発色のくすみを抑制し、艶及び発色を向上させ、更には経日的な色のくすみをも防止することができるのかは明確ではないが、フラワーペースト類製造時の糊化澱粉との相互作用による澱粉の老化防止効果と、油脂の結晶が微細化することによる光屈折率の変化との相乗効果によるものと推察される。また、この効果は、ベーカリー生地との複合生地を焼成した場合にも有効である。
【0021】
また、本発明のフラワーペースト類に用いられる上記糖類は、上記澱粉類のような高分子の糖類以外の単糖類、二糖類、オリゴ糖等の低分子の糖類であれば特に限定されず、例えば、上白糖、グラニュー糖、粉糖、液糖、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、乳糖、酵素糖化水飴、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、還元乳糖、ソルビトール、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖等が挙げられる。これらの糖類は、単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0022】
上記糖類の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、8〜30質量%、好ましくは10〜27質量%、さらに好ましくは10〜25質量%である。糖類の含有量が8質量%未満では、風味素材の艶及び発色の向上効果が得られないことに加え、食感も硬く、老化しやすいものとなる。また、30質量%超では、風味素材の艶及び発色向上効果が得られないことに加え、べたつきやすく、また、保型性や焼き残り性が悪く、更には包材からの剥れが悪い等の問題が生じる。
【0023】
また、本発明のフラワーペースト類は、実質的にトランス酸を含まないことが好ましい。水素添加は、油脂の融点を上昇させる典型的な方法であるが、水素添加油脂は、完全水素添加油脂(極度硬化油脂)を除いて、通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれている。一方、天然油脂中にはトランス酸が殆ど存在せず、反芻動物由来の油脂に10質量%未満含まれているにすぎない。近年、化学的な処理、特に水素添加に付されていない油脂組成物、即ち実質的にトランス酸を含まない油脂組成物であって、適切なコンシステンシーを有するものも要求されている。ここでいう「実質的にトランス酸を含まない」とは、油脂の全構成脂肪酸中、トランス酸の含有量が好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは1質量%以下であることを意味する。本発明においては、上記極度硬化油以外の油脂として、天然油脂、並びに該天然油脂に分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂から選択される1種又は2種以上を組み合わせて用いることにより、実質的にトランス酸を含まないフラワーペースト類を簡単に得ることができる。
【0024】
また、本発明のフラワーペースト類は、増粘安定剤を含有することが好ましい。増粘安定剤を含有させることにより、フラワーペースト類の製造時やベーカリー生地への複合作業時等における乳化破壊を防止することによる物性改良効果や、保水性を向上させることによる離水防止効果や食感向上効果を得ることが可能となる。
【0025】
上記増粘安定剤としては、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0026】
本発明のフラワーペースト類では、離水防止効果が高いことから、ローカストビーンガム、ペクチン、カラギーナン、キサンタンガム及びゼラチンからなる群から選ばれる1種又は2種以上を使用することが好ましい。
【0027】
上記増粘安定剤の含有量は、本発明のフラワーペースト類中、好ましくは0.01〜10質量%、さらに好ましくは0.01〜5質量%である。
【0028】
また、本発明のフラワーペースト類は、合成乳化剤を含有しないことが好ましい。
上記の合成乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等が挙げられる。
【0029】
本発明のフラワーペースト類には、上記合成乳化剤でない乳化剤を用いることができる。該乳化剤としては、例えば、大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、乳脂肪球皮膜蛋白質が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
【0030】
その他、本発明のフラワーペースト類には、通常フラワーペースト類の原料として使用し得る成分を使用することが可能であり、例えば、水、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、牛乳・練乳・脱脂粉乳・カゼイン・ホエーパウダー・バター・クリーム・ナチュラルチーズ・プロセスチーズ・発酵乳等の乳や乳製品、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β−カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、小麦蛋白や大豆蛋白等の植物蛋白、ホエー蛋白濃縮物・トータルミルクプロテイン等の乳蛋白や動物蛋白、卵及び各種卵加工品、着香料、乳製品、調味料、pH調整剤、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、香辛料抽出物、カカオマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。尚、これらの成分のうち、水並びに牛乳及び卵等の水分を含有する成分は、本発明のフラワーペースト類中の水分含有量が30〜85質量%となるように使用することが好ましい。
【0031】
次に、本発明のフラワーペースト類の好ましい製造方法について述べる。
本発明のフラワーペースト類は、澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱することによって得ることができる。
【0032】
具体的には、まず、澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、糖類8〜30質量%、及び水、牛乳、卵等の水性原料を含有するフラワーペースト原料を、加熱溶解、乳化混合して予備乳化組成物を作成する。その際、水相と油相との比率(前者:後者、質量基準)は、95:5〜60:40とすることが好ましい。なお、増粘安定剤を添加する場合は、作業性の点から、油相に添加するのが好ましい。
【0033】
得られた予備乳化組成物は、バルブ式ホモジナイザー、ホモミキサー、コロイドミル等の均質化装置により、好ましくは圧力0〜800kg/cm2 の範囲で、均質化した後、加熱する。加熱は、インジェクション式、インフージョン式等の直接加熱方式、あるいはプレート式、チューブラー式、掻き取り式等の間接加熱方式を用いたUHT、HTST、バッチ式、レトルト、マイクロ波加熱等の加熱滅菌若しくは加熱殺菌処理、あるいは直火等を用いた加熱調理により行なうことができる。加熱温度は60〜120℃が好ましく、加熱時間は0.5〜30分が好ましい。
【0034】
また、加熱後には、必要により、再度均質化してもよい。また、加熱後には、必要により、急速冷却、徐冷却等の冷却操作を施したり、エージングを行ってもよい。更に、得られた本発明のフラワーペースト類は、必要により、冷蔵状態もしくは冷凍状態で保存してもよい。
【0035】
さらに、本発明のフラワーペースト類は、その形状を、シート状、ブロック状、円柱状、ダイス状等としてもよい。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mm、ダイス状:縦5〜50mm、横5〜50mm、厚さ5〜50mmである。
【0036】
このようにして得られた本発明のフラワーペースト類は、フィリング、トッピング、練り込み用、折り込み(ロールイン)用として、クッキー、パイ、シュー、サブレ、スポンジケーキ、バターケーキ、ケーキドーナツ等の菓子類、食パン、フランスパン、デニッシュ、スイートロール、イーストドーナツ等のパン類等に広く用いることができる。
【0037】
以下に、本発明のベーカリー食品について述べる。
本発明のベーカリー食品は、本発明のフラワーペースト類をベーカリー生地にフィリング、トッピング、練り込み、折り込み等の方法で複合させた複合生地を、必要に応じ圧延、成形、ホイロ、ラックタイムをとった後、焼成及び/又はフライして得られたものである。
【0038】
上記のベーカリー生地としては、例えば、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地、ケーキドーナツ生地、食パン生地、フランスパン生地、デニッシュ生地、スイートロール生地、イーストドーナツ生地等の菓子生地やパン生地が挙げられる。
【0039】
上記の複合生地としては、例えば、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペースト類を包餡した包餡生地、ベーカリー生地にペースト状のフラワーペースト類をトッピング又はサンドした積層生地、ベーカリー生地にシート状のフラワーペースト類をロールインした積層生地、製パン連続ラインにおいて、ブロック状のフラワーペースト類を、ファットポンプ等を使用して薄板状に押し出し、ベーカリー生地にロールインした積層生地、円柱状のフラワーペースト類をベーカリー生地中に分散させた混合生地等が挙げられる。
【0040】
上記複合生地を焼成する場合、ホイロは、イーストを含まないベーカリー生地を使用する場合は必要なく、イーストを配合したベーカリー生地を使用する場合のみ必要である。体積が大きく、層剥れの少ないベーカリー食品を得るためには、ホイロは、好ましくは25〜40℃、相対湿度50〜80%で20〜90分、さらに好ましくは32〜38℃、相対湿度50〜80%で30〜60分で行う。
【0041】
上記複合生地の焼成は、通常のベーカリー食品と同様、160〜250℃、特に170〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると、火通りが悪くなりやすく、また良好な食感が得られにくい。また、250℃を超えると、フラワーペースト類の水分が飛びすぎて色艶が悪化しやすい上、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
【0042】
上記複合生地をフライする場合、ラックタイムは特に有効である。ラックタイムをとることにより、ベーカリー生地の水分を飛ばし、表面を固化させることができ、結果として、ベーカリー生地の水分を減少させること及びフライ操作時の吸油を減少させることができる点で、ラックタイムをとることが望ましく、時間にして10〜40分、相対湿度50%以下の環境中で静置することにより好ましい効果が得られる。
フライ操作は、通常のドーナツ等と同様、160〜250℃、特に170〜220℃で行なうのが好ましい。160℃未満であると吸油が多く、良好な食感が得られにくい。250℃を超えると、焦げを生じて食味が悪くなりやすい。
なお、上記焼成とフライとを併用する場合は、フライした後に焼成しても、焼成した後にフライしてもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例により何等制限されるものではない。
【0044】
<フラワーペーストの製造>
〔実施例1〕
パーム軟部油の硬化油(融点28℃)8質量%及びパーム極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.02質量%に、ソルビタン脂肪酸エステル0.5質量%及びキサンタンガム0.2質量%を添加し、油相とした。水47.98質量%、デンプン5質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)35質量%、脱脂粉乳1.1質量%、乾燥全卵2質量%及び香料0.1質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化後、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は5質量%、極度硬化油脂含量は0.02質量%、油脂含量は8.02質量%、糖類含量は26.2質量%、油相中の極度硬化油脂含量は0.25質量%、トランス酸含量は4.9質量%であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験1(実施例10)に供した。
【0045】
〔実施例2〕
パーム軟部油の硬化油(融点28℃)8質量%及び大豆極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.02質量%に、レシチン0.5質量%及びキサンタンガム0.2質量%を添加し、油相とした。水47.98質量%、デンプン4質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)35質量%、小麦粉1質量%、脱脂粉乳1.1質量%、乾燥全卵2質量%及び香料0.1質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化後、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、合成乳化剤無添加で、ペースト状であるカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は5質量%、極度硬化油脂含量は0.02質量%、油脂含量は8.02質量%、糖類含量は26.2質量%、油相中の極度硬化油脂含量は0.25質量%、トランス酸含量は4.9質量%であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験1(実施例11)に供した。
【0046】
〔実施例3〕
パーム軟部油の硬化油(融点28℃)6質量%、ハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.02質量%及びカカオマス(油脂含量55質量%)6質量%に、レシチン0.5質量%及びキサンタンガム0.2質量%を添加し、油相とした。水46.08質量%、デンプン4質量%、ソルビン酸カリウム0.1質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)35質量%、小麦粉1質量%、カカオパウダー(油脂含量12質量%)1質量%及び香料0.1質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化後、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、合成乳化剤無添加で、ペースト状であるチョコレート風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は5質量%、極度硬化油脂含量は0.02質量%、油脂含量は9.44質量%、糖類含量は26.2質量%、油相中の極度硬化油脂含量は0.21質量%、トランス酸含量は3.2質量%であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験1(実施例12)に供した。
【0047】
〔実施例4〕
パーム油25質量%及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%に、キサンタンガム0.01質量%及びペクチン0.3質量%を添加し、油相とした。水29.95質量%、デンプン4質量%、小麦粉3質量%、ゼラチン2質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)27質量%、脱脂粉乳3質量%、乾燥全卵5質量%及び香料0.69質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状であり、合成乳化剤無添加であるカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.05質量%、油脂含量は25.05質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0.2質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(実施例13)に供した。
【0048】
〔実施例5〕
実施例4におけるハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%を0.1質量%とし、水29.95質量%を29.9質量%に変更した以外は、実施例4と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.1質量%、油脂含量は25.1質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0.4質量%、トランス酸含量は1質量%以下であり、実質的に含有していなかった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(実施例14)に供した。
【0049】
〔実施例6〕
実施例4におけるハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%を0.7質量%とし、水29.95質量%を29.3質量%に変更した以外は、実施例4と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.7質量%、油脂含量は25.7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は2.7質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(実施例15)に供した。
【0050】
〔実施例7〕
実施例4におけるパーム油25質量%を15質量%とし、ハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%を0.7質量%とし、水29.95質量%を39.3質量%に変更した以外は、実施例4と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.7質量%、油脂含量は15.7質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は4.46質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(実施例16)に供した。
【0051】
〔実施例8〕
パーム油25質量%及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%に、カカオマス(油脂含量55質量%)1質量%、キサンタンガム0.01質量%及びペクチン0.3質量%を添加し、油相とした。水28.95質量%、デンプン4質量%、小麦粉3質量%、ゼラチン2質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)27質量%、脱脂粉乳3質量%、カカオパウダー(油脂含量12質量%)5質量%及び香料0.69質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状であり、合成乳化剤無添加であるシート状のチョコレート風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.05質量%、油脂含量は26.2質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0.19質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(実施例17)に供した。
【0052】
〔実施例9〕
パーム油25質量%及びハイエルシンナタネ極度硬化油(ヨウ素価1未満)0.05質量%に、カカオマス(油脂含量55質量%)1質量%、キサンタンガム0.01質量%及びペクチン0.3質量%を添加し、油相とした。水28.95質量%、デンプン4質量%、小麦粉3質量%、ゼラチン2質量%、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(糖分75質量%)27質量%、脱脂粉乳3質量%、カカオパウダー(油脂含量12質量%)5質量%及び香料0.69質量%を混合し、水相とした。この油相と水相とを加熱溶解、混合、乳化、均質化し、加熱殺菌し、厚さ0.2mmポリエチレン製の包材にピロー充填後、22℃まで冷却し、長さ400mm、幅200mm、厚さ8mmのシート状に成形し、さらに5℃まで冷却後、8mm角にカットし、合成乳化剤無添加であるダイス状のチョコレート風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.05質量%、油脂含量は26.2質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0.19質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のベーカリー試験3(実施例18)に供した。
【0053】
〔比較例1〕
実施例2におけるハイエルシンナタネ極度硬化油を無添加とし、水47.98質量%を48質量%に変更した以外は、実施例2と同様の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるペースト状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は5質量%、極度硬化油脂含量は0質量%、油脂含量は8質量%、糖類含量は26.2質量%、油相中の極度硬化油脂含量は0質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験1(比較例8)に供した。
【0054】
〔比較例2〕
実施例4におけるハイエルシンナタネ極度硬化油を無添加とし、水29.95質量%を30質量%に変更した以外は、実施例4と同様の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0質量%、油脂含量は25質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(比較例9)に供した。
【0055】
〔比較例3〕
実施例4におけるパーム油25質量%を1.5質量%とし、水29.95質量%を53.45質量%に変更した以外は、実施例4と同様の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.05質量%、油脂含量は1.55質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は3.22質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(比較例10)に供した。
【0056】
〔比較例4〕
実施例4におけるパーム油25質量%を45質量%とし、水29.95質量%を14.95質量%に変更した以外は、実施例4と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.05質量%、油脂含量は45.05質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0.11質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(比較例11)に供した。
【0057】
〔比較例5〕
実施例4におけるハイエルシンナタネ極度硬化油0.05質量%を0.005質量%に変更し、水29.95質量%を30質量%に変更した以外は、実施例4と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0.005質量%、油脂含量は25.005質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0.02質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(比較例12)に供した。
【0058】
〔比較例6〕
実施例4におけるハイエルシンナタネ極度硬化油0.05質量%を3質量%に変更し、水29.95質量%を27質量%に変更した以外は、実施例4と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるシート状のカスタード風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は3質量%、油脂含量は28質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は10.7質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のフラワーペースト評価及びベーカリー試験2(比較例13)に供した。
【0059】
〔比較例7〕
実施例9におけるハイエルシンナタネ極度硬化油を無添加とし、水28.95質量%を29質量%に変更した以外は、実施例9と同一の配合・製法で、合成乳化剤無添加であるダイス状のチョコレート風味フラワーペーストを得た。
このフラワーペーストの澱粉含量は7質量%、極度硬化油脂含量は0質量%、油脂含量は26.15質量%、糖類含量は20.3質量%、油脂中の極度硬化油脂含量は0質量%、トランス酸含量は1質量%以下であった。
得られたフラワーペーストは、後述のベーカリー試験3(比較例14)に供した。
【0060】
<フラワーペースト評価>
上記の実施例1〜8及び比較例1〜6のフラワーペースト各50gを、製造直後に包材から取り出し、口溶け及び色艶の評価を行なった。また、実施例4〜8、比較例2〜6のシート状のフラワーペーストについては、包材からの剥れやすさについての評価もあわせて行った。尚、各評価は、それぞれ以下に示す評価基準に従って行なった。
さらに、上記の実施例1〜8及び比較例1〜6のフラワーペースト各50gを製造直後に包材から取り出し、シャーレに入れて蛍光灯照射下(2000Lx)、20℃の恒温槽にて保存し、保存開始から3日後に、製造直後と同様にして口溶け及び色艶の評価を行なった。
それらの結果を表1に記した。
【0061】
・包材からの剥れやすさ評価基準
◎:極めて良好である。
○:良好である。
△:包材への付着量が多く、やや不良である。
×:包材への付着量が極めて多く、不良である。
−:ペースト状のフラワーペーストであるため評価せず。
・口溶け評価基準
◎:極めて良好である。
○:良好である。
△:ワキシーである。
×:ワキシーで、さらにざらつきも感じる等、口溶けが極めて悪い。
・色艶評価基準
◎:艶があり、極めて良好である。
○:良好である。
△:艶がない発色である。
×:やや白色化し、くすんでいる。
【0062】
【表1】

【0063】
<ベーカリー試験1>
実施例1〜3及び比較例1で得られたペースト状のフラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、フラワーペーストを包餡した包餡生地を焼成して、実施例10〜12及び比較例8のクリームパンをそれぞれ得た。
得られたクリームパンについて、以下の評価基準に従って、製造の際の包餡時作業性、焼き残り性、並びにフラワーペースト部分の口溶け及び色艶の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を表2に記した。
【0064】
(クリームパン用生地の配合)
強力粉90質量部、薄力粉10質量部、砂糖18質量部、食塩1.3質量部、脱脂粉乳3質量部、卵(正味)20質量部、イースト5質量部、イーストフード0.1質量部、練込用マーガリン18質量部、水35質量部
【0065】
(クリームパン用生地の製法)
練込用マーガリン以外の全原料をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で3分、中速で4分混捏した後、練込用マーガリンを加えて低速で3分、中速で4分、高速で3分混捏し、捏上温度を25℃とし、クリームパン用生地とした。
【0066】
(クリームパンの製法)
上記クリームパン用生地60gに対して、ペースト状のフラワーペースト30gを、めん棒を使用して包餡して、包餡生地とした複合生地を得た。この複合生地を天板に並べ、温度35℃、相対湿度80%のホイロで60分醗酵させた後、200℃に設定した固定窯で12分焼成した。
【0067】
・包餡時作業性評価基準
◎:べたつきも無く、適度な硬さである。
○:良好である。
△:ややべたつきがある。
×:べたつき、極めて包餡し難い。
・焼き残り性評価基準
◎:乳化破壊も無く、生地からの剥れも無く、極めて良好である。
○:良好である。
△:分離気味で、やや生地との間に空隙がある。
×:分離激しく、また、大きな空洞が生じている。
・口溶け評価基準
◎:極めて良好である。
○:良好である。
△:ワキシーである。
×:ワキシーで、さらにざらつきも感じる等、口溶けが極めて悪い。
・色艶評価基準
◎:艶があり、極めて良好である。
○:良好である。
△:艶がない発色である。
×:やや白色化し、くすんでいる。
【0068】
【表2】

【0069】
<ベーカリー試験2>
実施例4〜8及び比較例2〜6で得られたシート状のフラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、実施例13〜17及び比較例9〜13のフラワーペースト折り込みデニッシュをそれぞれ製造した。
得られたフラワーペースト折り込みデニッシュについて、以下の評価基準に従って、ロールイン時の作業性、内相並びにフラワーペースト部分の口溶け及び色艶の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を表3に記した。
【0070】
(デニッシュ用生地の配合)
強力粉50質量部、薄力粉50質量部、脱脂粉乳3質量部、食塩1.5質量部、全卵(正)8質量部、イースト3質量部、イーストフード0.1質量部、練込用マーガリン10質量部、冷水48質量部、チップ状マーガリン70質量部
【0071】
(デニッシュ用生地の製法)
冷水以外の原料をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で各材料が均一になるまで3分混捏した後、撹拌しながら冷水を加え、低速で2分混合し、捏ね上げ温度を20℃とした。次いで、20分フロアタイムを取った後、−20℃の冷凍庫にて60分生地を冷却し、リバースシーターにて生地の3つ折りを3回行なった。
【0072】
(フラワーペースト折り込みデニッシュの製法)
上記デニッシュ用生地100質量部に、シート状のフラワーペースト50質量部を積置後、包み込み、リバースシーターで3つ折り2回のロールイン操作を行ない、9層の積層生地である複合生地を得た。この複合生地を2℃で4時間冷却した後、厚さ10mmまで圧延し、幅30mm、長さ150mmにカットして天板に並べ、室温にて30分ラックタイムを取った後、上火200℃、下火180℃に設定した固定窯で14分焼成した。
【0073】
・ロールイン時作業性評価基準
◎:適度な硬さであり、伸展性も良好であり、切れも見られない。
○+:やや硬いが、伸展性は良好である。
○−:やや軟らかいが、伸展性は良好である。
△+:硬すぎて伸展性が悪く、やや切れが見られる。
△−:べたつきがあり、やや生地の滑りが見られる。
×+:硬すぎて伸展性が極めて悪く、切れが多い。
×−:べたつきが激しく、生地からのはみ出し、生地の滑りが見られる。
・内相評価基準
◎:生地からの剥れも無く、極めて良好である。
○+:良好であるが、やや生地からの剥れが見られる。
○−:良好であるが、やや生地に練り込まれ気味である。
△+:生地との間に空隙が見られる。
△−:フラワーペーストの層構造が薄く、視認し難い。
×+:フラワーペーストの層構造が不連続で、切れた部分が多い。
×−:フラワーペーストの層構造が極めて薄く、視認が困難である。
・口溶け評価基準
◎:極めて良好である。
○:良好である。
△:ワキシーである。
×:ワキシーで、さらにざらつきも感じる等、口溶けが極めて悪い。
・色艶評価基準
◎:艶があり、極めて良好である。
○:良好である。
△:艶がない発色である。
×:やや白色化し、くすんでいる。
【0074】
【表3】

【0075】
<ベーカリー試験3>
実施例9及び比較例7で得られたダイス状のフラワーペーストを使用し、下記配合・製法により、実施例18及び比較例14のフラワーペースト分散食パンをそれぞれ得た。
得られたフラワーペースト分散食パンについて、以下の評価基準に従って、製造時の作業性(ダイス状フラワーペーストのパン生地への分散性)、内相並びにフラワーペースト部分の口溶け及び色艶の評価をそれぞれ行なった。それらの結果を表4に記した。
【0076】
(食パン用生地の配合)
中種:強力粉70質量部、イースト2質量部、イーストフード0.1質量部、水40質量部
本捏:強力粉30質量部、砂糖5質量部、食塩1.3質量部、脱脂粉乳3質量部、卵(正味)10質量部、練込用マーガリン10質量部、水22質量部
【0077】
(中種法による食パン用生地の製法)
中種配合原料をミキサーボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で3分、高速で1分混捏した。捏上温度を25℃とした後、28℃の醗酵室で4時間醗酵させた。醗酵した中種生地と、練込用マーガリン以外の本捏配合原料とをボールに入れ、縦型ミキサーを用い、低速で3分、中速で2分、高速で1分混捏した後、練込用マーガリンを加えて低速で3分、中速で4分、高速で3分混捏し、捏上温度を25℃とした。次いで、この生地100質量部に、ダイス状のフラワーペーストを30質量部添加し、低速で30秒混合し、フラワーペースト混合生地である複合生地を得た。
【0078】
(フラワーペースト分散食パンの製法)
かくして得られた複合生地を、20分のフロアータイムを取った後、250gに分割した。15分ベンチタイムをとった後、3斤型に6本生地を入れ、温度38℃、相対湿度80〜85%のホイロで70分醗酵させ、次いで210℃で30分間焼成した。
【0079】
・パン生地への分散性評価基準
◎:極めて良好である。
○:良好である。
△:べたつき気味で、分散性が悪い。
×:べたつき、極めて分散性が悪い。
・内相評価基準
◎:乳化が安定で、生地からの剥れも無く、極めて良好である。
○:良好である。
△:フラワーペーストが分離気味で、更にやや生地との間に空隙がある。
×:フラワーペーストが分離気味で、更に周囲に空洞が生じている。
・口溶け評価基準
◎:極めて良好である。
○:良好である。
△:ワキシーである。
×:ワキシーで、さらにざらつきも感じる等、口溶けが極めて悪い。
<色艶評価基準>
◎:艶があり、極めて良好である。
○:良好である。
△:艶がない発色である。
×:やや白色化し、くすんでいる。
【0080】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有することを特徴とするフラワーペースト類。
【請求項2】
油脂中の極度硬化油の含有量が0.05〜5質量%であることを特徴とする請求項1記載のフラワーペースト類。
【請求項3】
トランス酸を含有しないことを特徴とする請求項1又は2記載のフラワーペースト類。
【請求項4】
増粘安定剤を更に含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のフラワーペースト類。
【請求項5】
合成乳化剤を含有しないことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフラワーペースト類。
【請求項6】
澱粉類2〜10質量%、極度硬化油脂0.01〜1質量%を含む油脂3〜40質量%、及び糖類8〜30質量%を含有するフラワーペースト原料を、均質化処理した後、加熱することを特徴とするフラワーペースト類の製造法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のフラワーペースト類及びベーカリー生地を複合させた複合生地を、焼成及び/又はフライしてなることを特徴とするベーカリー食品。

【公開番号】特開2006−129763(P2006−129763A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321630(P2004−321630)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】