説明

フルベストラントナノスフェア/ミクロスフェア並びにその調製方法及び使用

フルベストラントナノスフェア/ミクロスフェア並びにその調製方法及び使用が本発明において提供される。フルベストラントナノスフェア/ミクロスフェアの担体材料はメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体である。ナノスフェア/ミクロスフェアは溶媒−非溶媒法、液中乾燥法及び/又は噴霧乾燥法により調製され、高い薬剤添加率及び高いカプセル化効率、医薬の制御可能な放出、適用部位又は血管に対して刺激作用が一切ないという特徴を有する。フルベストラントナノスフェア/ミクロスフェアは閉経後の女性における転移性進行性乳癌を治療するために用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療技術分野に関する。具体的には、本発明はある種のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア、並びに、かかるフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア製剤の調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関は乳癌を女性の健康を脅かす「主要な死因」として位置付けており、乳癌で死ぬ女性が世界で毎年約百万人いる。中国では成人女性の約80%がある程度の乳癌を有しており、その罹患率は依然として増加しており、現在では、5年前の百万人当たり170人から昨年は3倍以上高い百万人当たり520人まで増加したことを臨床データは示す。最近20年間で、上海では乳癌の罹患率が約180%上昇した。一方で、癌病変の増加と共に、乳癌で死亡する女性の数は毎年20万人に上っており、女性の健康に悲惨な混乱をもたらしている。
【0003】
現在では、乳癌の治療のための薬剤は主に以下のものを含む:(1)化学療法薬:カペシタビン、ドセタキセル、5−フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、パクリタキセル、ビノレルビン等;(2)Iトラスツズマブ及び他のシグナル伝達阻害剤:トラスツズマブ、クロドロネート、パミドロネート、イバンドロネート、及びゾレドロネート等;(3)内分泌阻害剤:タモキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ブセレリン又はゴセレリン、フルベストラント等。これらのうち、ほとんどの化学療法薬が高い毒性及び副作用、小さい生存率向上効果、長期的毒性の増加、及び併用化学療法の高い費用等の欠点を有する;Iトラスツズマブ及び他のシグナル伝達阻害剤は化学療法薬の合併療法に最も多く使用される。化学療法薬と比較して、内分泌阻害剤療法における新たな進展はより一層重要な意義を有する:タモキシフェンはこの30年間、乳癌の内分泌療法のためのほぼ絶対的な基準であり、アナストロゾールは乳癌に対する潜在的予防効果を有する。フルベストラントは抗エストロゲン剤である。タモキシフェンと異なり、フルベストラントは部分アゴニスト活性なしにエストロゲン受容体を下方制御することができる。フルベストラントはタモキシフェンで治療できなかった患者で臨床治療効果を有する。したがって、乳癌を治療するための多くの薬剤の中で、タモキシフェンでの失敗後に臨床治療に広範に用いられる得る唯一の抗エストロゲン剤がフルベストラントであり、これはホルモン感受性乳癌の新規治療方法をもたらした。
【0004】
フルベストラントの化学名は7−アルファ−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]−エストラ−1,3,5−(10)−トリエン−3,17−ベータ−ジオール(7-alpha-[9-(4,4,5,5,5-pentafluoropentylsulphinyl)nonyl]estra-1,3,5-(10)-triene-3,17-beta-diol)である。フルベストラントは白色又は灰白色の粉末であり、水に不溶性で606.77の相対分子量を有する。
【0005】
フルベストラントはエストロゲン受容体下方制御因子である新規エストロゲン受容体アンタゴニスト−抗乳癌薬剤である。現在のところ、乳癌の主要な治療法はエストロゲンの濃度を減少させることである。なぜなら、エストロゲン受容体(estrogen receptors、ER)が多くの乳癌患者に見出され、腫瘍の成長がエストロゲンにより刺激されるからである。フルベストラントはエストラジオールと類似した親和性を有し、エストロゲン受容体と競合的に結合し得る;フルベストラントはまた、この受容体を遮断し、そのエストロゲンとの結合を阻害し、形態学的変化がもたらされるようこの受容体を刺激し、ER濃度を減少させて腫瘍細胞にダメージを与え得るのであり、ER経路を介するかかる効果は細胞増殖マーカーであるKi67の減少と関連する。フルベストラントはヒト乳癌細胞のERタンパク質を下方制御し得るのであり、ERは腫瘍細胞内で下方制御されて腫瘍の成長を最少化する。フルベストラントは既存の腫瘍ERの状態を変化させず、新たなERの産生に影響を及ぼさないので、腫瘍はER陽性として「プログラムされた」ままであり続け、結果としてフルベストラントは継続的な治療効果を有し得る。フルベストラントはエストロゲン効果又はタモキシフェンの有する抗エストロゲン効果又は子宮内膜に対する部分アゴニスト活性を一切有さず、それゆえその悪影響はタモキシフェンより低いことが動物実験により見出された。特に子宮内膜に対する部分アゴニスト活性は、子宮内膜癌の罹患率を増加させる危険性を有する。
【0006】
フルベストラントは水に不溶性であるがゆえに、経口バイオアベイラビリティが十分でなく、また、静脈注射後すぐに排せつされる。したがって、経口調製物及び一般的な注射用水溶液をこの薬剤に適用することはできない。フルベストラントは、他のステロイド性化合物と同様に、特定の物理的特性を示し、このことがこれら化合物の製剤を困難にする。フルベストラントは他のステロイド性化合物と比較しても特に親油性の分子であり、その水溶解度は約10ng/mlと極めて低い。
【0007】
現在まで、多数の徐放性注射用ステロイド製剤が市販されてきた。一般にこれら製剤は油を溶媒として用い、さらなる賦形剤が存在していてもよい。例えば、中国特許出願CN1553815Aは筋内投与用フルベストラント医薬製剤を2004年12月8日に開示している。これはスウェーデンのAstraZeneca UK Ltd社製フルベストラントの油性注射製剤であり、Faslodex(登録商標)という商標名で2002年4月にFDAにより認可された。この製品の溶媒系はエタノール、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、及びヒマシ油からなり、臀部筋内注射に適し、エタノールの含有量は10%〜20%、ベンジルアルコールの含有量は10%〜20%、安息香酸ベンジルの含有量は15%〜50%、ヒマシ油の含有量は5%〜60%である。これらすべての化学成分が強力な刺激作用を有し、多くの副作用が報告されている:マウスへのエタノール皮下注射のLD50は8.285g/kgであり、筋内注射の濃度が10%より高い際には痛みが感じられる。ベンジルアルコールは弱い芳香性のにおい及び刺激性の味を有する無色透明の油性液体であり、ラットへの経口投与のLD50は1.23g/kgである。安息香酸ベンジルはかすかな芳香性のにおいを有し、舌に接触した際に激しい焼けるような感覚を引き起こす無色透明の油性液体であり、ラットへの経口投与のLD50は0.5g/kgである。ヒマシ油はわずかなにおいを有し、最初は無味だが、後になって刺激性の味を有する、透明で無色又は黄色がかった粘着性で油性の液体であり、臨床的には主に刺激性下剤として用いられる。2004年12月20日にChinese Medicine Information Newsは「『蛙足病(frog foot disease)』を根絶するため、ベンジルアルコールは慎重に用いられるべきである」と題された報告を「医薬品安全性監視(Pharmacovigilance)」コラムに掲載した。これは、湖北省の鶴峰県中営村でペニシリンの溶媒としてのベンジルアルコールの使用の結果として、311人の子どもが殿筋拘縮に罹患したことを報告している。2005年11月1日に、Chinese Medicine Information Newsは「医薬補助剤により引き起こされる副作用について」と題された報告を「最近の関心(Hot Concern)」コラムに掲載した。これは、エタノールが溶媒として多くの不溶性薬剤注射に適用され、その筋内又は皮下注射がかなりの刺激作用を引き起こすことを示している。まず、焼けるような感覚が注射部位に引き起こされ、その後、激しい痛み、局所麻痺が生じる。それが不注意に神経付近に注射される際には、神経変性損傷が引き起こされ得る。この記事はまた、薬剤の溶媒、保存剤(0.5%〜1.0%)、及び局所鎮痛薬(1%〜4%)としてのベンジルアルコールの副作用が、溶血、低血圧、局所刺激等を含むことを示している。ベンジルアルコールは赤血球膜表面と結合し、溶血をもたらし得る。ある患者が、非ホジキンリンパ腫の治療のためにベンジルアルコールを含む高用量のエトポシドを服用した後に、呼吸抑制及び急速な溶血を発症したことも報告されている。また別の報告は、アミオダロン注射中の溶媒ベンジルアルコールが血管の活性を有し、低血圧を生み出すと述べている。ベンジルアルコールはまた、殿筋拘縮を引き起こす主要な原因である。2005年6月10日に、中国国家食品薬品監督管理局は「ベンジルアルコール注射の管理の強化に関する通知」(No. [2005] 263 of the State Food and Drug Administration)を出し、ベンジルアルコールを子どもの筋内注射に使用することを禁止した。
【0008】
したがって、フルベストラント注射(Faslodex(登録商標))は、強力な刺激作用を有する上記非水性化学溶媒からなり、これは注射部位にダメージを与え得る。臨床試験で10%超の患者が注射部位に痛みを発し、投与量の増加と共にダメージ度が高まる。Faslodex(登録商標)の注射後、非水性化学溶媒がヒト筋組織内へと吸収され、その後薬剤が筋組織内へと沈殿し、緩徐な吸収が続く。筋組織による非水性化学溶媒の急速な吸収ゆえに、薬剤放出プロセスは制御できず、急速な吸収はまた薬剤の吸収速度の制御不能性をもたらす。より一層重要なことに、薬剤を有効にする程度の、より高い濃度及びより多くの非水性溶媒と共にフルベストラント油性注射を用いなければならず、このことは、より長期間の薬剤作用を達成するためにフルベストラント油性注射が臨床治療に用いられる際、注射部位により大きなダメージをもたらす。
【0009】
したがって、有望な薬剤であるフルベストラントのため、投与部位又は血管を一切刺激せず、副作用が少なく、静脈注射に利用可能な新規製剤を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国特許出願CN1553815A
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Benzyl alcohol should be used cautiously for eradicating ‘frog foot disease’”, Chinese Medicine Information News, December 20, 2004.
【非特許文献2】“Concerning the adverse effects caused by pharmaceutical adjuvant”, Chinese Medicine Information News, November 1, 2005.
【非特許文献3】“Notice on Strengthening Management of Benzyl Alcohol Injection”, No. [2005] 263 of the State Food and Drug Administration.
【発明の概要】
【0012】
親水性断片ポリエチレングリコール及び親油性断片ポリ乳酸からなるがゆえに、ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体が、ナノスフェア又はミクロスフェアの調製に適した担体材料であり、これは十分な熱可塑性及び熱硬化性を有し、生分解性及び生体適合性をも有し、注射部位及び血管への刺激作用を一切有さない。米国食品医薬品局(FDA)は、薬剤制御放出及び持続放出用担体のために用いられるかかる材料を認可した。薬剤担体としてかかる材料を用いることにより、痛み及び炎症を注射部位に引き起こす油性溶媒を避けることができる。一方でこの薬剤担体は、インビボでの担体材料の分解と共に薬剤を放出し、薬剤の放出速度はブロックの分子量及び担体材料のHLB価を制御することにより制御され得る。
【0013】
本発明者は驚くべきことに、注射部位にダメージを引き起こし、制御されない薬剤放出、吸収をもたらす既存のフルベストラント油性注射製品の問題を、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を担体材料として用いることにより調製されるフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアが本質的に解決し得ることを研究活動において見出した。ナノスフェア又はミクロスフェアは静脈注射で投与され得るのであり、静脈注射で投与され得ない薬剤の問題を解決する。
【0014】
したがって、本発明の目的の1つは、ある種のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアを提供することであり、これはより高い薬剤添加率及び封入率並びに制御された薬剤放出速度を有するが、投与部位又は血管への刺激作用を有さない;本発明のまた別の目的は、上のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの調製方法を提供することである;本発明のさらなる目的は、上のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの使用を提供することである。
【0015】
上の発明目的を目指す、本発明の技術的解決策は以下の通りである:
態様の1つにおいて、本発明はフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの薬剤担体を提供し、この担体は生分解性メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を含み、これは以下の式(I)として記述される:
【0016】
【化1】

【0017】
式中:m=4〜454、n=4〜2778。
【0018】
上述のフルベストラント薬剤担体において、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体は、親水性断片ポリエチレングリコール及び親油性断片ポリ乳酸からなり、0.01〜19.84のHLB価を有する。
【0019】
上述のフルベストラント薬剤担体において、カプセル化された薬剤は7−アルファ−[9−(4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチルスルフィニル)ノニル]エストラ−1,3,5−(10)−トリエン−3,17−ベータ−ジオールであり、その国際一般的名称はフルベストラントであって、本明細書において用いられる。フルベストラントに関して言えば、その薬学的に許容可能な塩又はそのあらゆる可能な溶媒和物が含まれるべきであり、例えばフルベストラントの構造式中の17ヒドロキシルは、アセトキシ又はベンゾイルオキシで置換され得る。
【0020】
また別の態様において、本発明は、フルベストラント又はその薬学的に許容可能な塩又はそのあらゆる可能な溶媒和物及び担体材料であるメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を含む、ある種のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアを提供する。
【0021】
好ましくは、フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアは、フルベストラントの量に基づいて、0.01%〜50%重量、好ましくは5%〜50%重量、より好ましくは10%〜30%重量、最も好ましくは20%〜30%重量のフルベストラント又はその薬学的に許容可能な塩又はそのあらゆる可能な溶媒和物を含む。つまり、フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの薬剤添加率は0.01%〜50%重量、好ましくは5%〜50%重量、より好ましくは10%〜30%重量、最も好ましくは20%〜30%重量である。
【0022】
好ましくは、フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア中、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体は親水性断片ポリエチレングリコール及び親油性断片ポリ乳酸からなる;好ましくは、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の構造式は以下の通りである:
【0023】
【化2】

【0024】
式中:m=4〜454、n=4〜2778;好ましくは、m=11〜227、n=70〜2083、より好ましくは、m=22〜113、n=139〜1111である。メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の親水性−親油性バランス(hydrophile-lipophile balance、HLB)の価は、0.01〜19.84である;好ましくは、HLBは0.4〜12.0、より好ましくは、HLBは1.47〜15.0である。
【0025】
好ましくは、フルベストラントナノスフェアの粒径は0.1μm〜1μm、好ましくは、0.3μm〜0.8μmである;フルベストラントミクロスフェアの粒径は10μm〜1mm、好ましくは、10μm〜500μmである。
【0026】
さらなる態様において本発明は、上述のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの調製方法を提供し、この方法は溶媒−非溶媒法、液中乾燥法及び噴霧乾燥法を含む。
【0027】
好ましい実施形態の1つにおいて、溶媒−非溶媒法は以下のステップを含む:
a.溶解した上述の担体材料を含む溶媒系中にフルベストラントを分散又は溶解させること;
b.非溶媒系へと添加し、ナノスフェア又はミクロスフェアを形成すること;
c.凝固させ、回収し、洗浄し、且つ乾燥させること;
好ましくは、担体材料の溶媒は1又は2以上のジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルヒドロフラン、エタノール、及びエチルアセテートである;
好ましくは、溶媒系中の担体材料の濃度は0.1%〜50%(g/ml)である;
好ましくは、溶解した担体材料を含む溶媒系中のフルベストラントの濃度は0.01%〜80%(g/ml)である;
好ましくは、非溶媒系はエーテル、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトンである;
好ましくは、溶媒系の非溶媒系に対する体積比は10:1〜1:10である;且つ/或いは
好ましくは、1又は2以上のポリイソブチルエステル、ポリエチレン、及びブチルゴムを固着防止剤として非溶媒系へと添加する;より好ましくは、固着防止剤の担体材料に対する質量比は0:10〜2:10である。
【0028】
また別の好ましい実施形態において、液中乾燥法は以下のステップを含む:
a.フルベストラント及び上述の担体材料を有機溶媒中に溶解させ、油相を作製すること;
b.水相中に油相を添加し、乳化させて水中油O/W型エマルションを得ること;
c.O/W型エマルションを攪拌及び加熱し、O/W型エマルション中の有機溶媒を完全に揮発させること;
d.濾過し、洗浄し、回収し、且つ乾燥させること;
好ましくは、担体材料の溶媒は1又は2以上のジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルヒドロフラン、エタノール、及びエチルアセテートである;
好ましくは、フルベストラントの担体材料に対する質量比は1:50〜1:3である;油相中の担体材料の好ましい濃度は1%〜50%(g/ml)である;
好ましくは、水相は、界面活性剤溶液、単糖又は多糖溶液、ポリオール溶液、セルロース溶液、及びコロイド溶液の1又は2以上の混合溶液であり、水相中の溶質の濃度は0.01%〜50%(g/ml)であり、水相のpH値は3.0〜10.5の範囲である;
好ましくは、水相中で用いられるpH調整剤は無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基及び緩衝塩からなる群から選択される;且つ/或いは
好ましくは、油相の水相に対する体積比は1:300〜1:5である。
【0029】
さらなる好ましい実施形態において、噴霧乾燥法は以下のステップを含む:
a.上述の溶解した担体材料を含む溶媒系中にフルベストラントを溶解又は分散させること;
b.噴霧の形で噴霧乾燥器の乾燥塔内へと噴霧し、且つ乾燥させ、単離し、回収すること;
好ましくは、担体材料の溶媒は、1又は2以上のジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルヒドロフラン、エタノール、及びエチルアセテートである;
好ましくは、溶媒系中の担体材料の濃度は0.1%〜50%(g/ml)である;
好ましくは、担体材料の溶媒系中の溶解又は分散したフルベストラントの濃度は0.01%〜50%(g/ml)である;
好ましくは、乾燥塔の吸気温は30℃〜80℃である;
好ましくは、担体材料はさらに可塑剤を含む;より好ましくは、可塑剤は1又は2以上のジメチルベンゾエート、ジエチルベンゾエート、ジブチルベンゾエート、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル、及びグリセリルトリアセテートである;さらに好ましくは、可塑剤の担体材料に対する質量パーセントは0%〜50%である;且つ/或いは
好ましくは、溶媒系はさらに固着防止剤を含み、固着防止剤は1又は2以上のコレステロール、グリセロールモノステアレート、タルク粉末、シリカゲル、及びステアリン酸マグネシウムであり、固着防止剤の担体材料に対する質量パーセントは0%〜100%である。
【0030】
また別の態様において、本発明は、乳癌治療のための薬剤の調製における上述のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの使用を提供する;好ましくは、乳癌は進行性乳癌、より好ましくは、乳癌は抗エストロゲン療法での治療後に効果のない、進行している、或いはホルモン受容体陽性である閉経後の女性における転移性進行性乳癌である。さらに、本発明はまた乳癌治療のための医薬組成物を提供し、これは上述のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアを含む。
【0031】
さらにまた別の態様において、本発明はまた、上述のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア及び上述の乳癌治療のための医薬組成物の使用を提供する;好ましくは、乳癌は進行性乳癌、より好ましくは、乳癌は抗エストロゲン療法での治療後に効果のない、進行している、或いはホルモン受容体陽性である閉経後の女性における転移性進行性乳癌である。
【0032】
さらにまた別の態様において、本発明は乳癌の治療方法、特に、抗エストロゲン療法での治療後に効果のない、進行している、或いはホルモン受容体陽性である閉経後の女性における転移性進行性乳癌の治療方法を提供し、これは、薬学的に許容可能な有効量の上述のフルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又は上述の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含み、フルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又は医薬組成物は、1〜3ヶ月毎に投与され得る;好ましくは、投与経路は皮下又は静脈注射である。
【0033】
したがって、本発明がある種のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアを提供し、ここでカプセル化された活性物質がフルベストラントであり、その担体材料がメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体であることが理解され得る。フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア及びその医薬組成物は、非水性溶媒により引き起こされる注射部位への刺激作用等の臨床使用におけるダメージを回避する。フルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又はその医薬組成物は、皮下又は静脈内に注射され得る。フルベストラントは注射後に担体材料の分解と共に徐放され、その放出速度は担体材料中の親水性断片ポリエチレングリコール及び親油性断片ポリ乳酸の分子量を制御することにより制御され得るのであり、すなわち、薬剤の放出速度及び吸収速度は、様々な臨床的必要性を満たすため、担体材料のメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体のHLB価を制御することにより制御され得る。フルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又はその医薬組成物は、抗エストロゲン療法での治療後に効果のない、進行している、或いはホルモン受容体陽性である閉経後の女性における転移性進行性乳癌の治療のために用いられ得る。
【0034】
本発明において提供されるフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア及びその医薬組成物において、本発明者は驚くべきことに、フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアに最も適した薬剤担体が、ヒトの身体に対してより強力な生体適合性を有するメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体であることを見出した。かかる担体を用いることで、ナノスフェア又はミクロスフェア製剤は所望の薬剤放出及び薬物動態性能を有し、多数の刺激性非水性化学溶媒の使用が回避される。その結果、フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア及びその組成物はヒト血管及び皮膚組織に対する刺激性ダメージを一切有さず、注射後に担体材料の分解と共にフルベストラントを安定的で制御可能な放出速度で放出する。本発明において提供されるフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアはまた、静脈注射のために用いられ得るのであり、このことはかかる薬剤が静脈内に投与され得ないという状況を打破し、臨床使用のための新規投与経路を提供した。したがって、もし本発明により提供されるフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア及びその組成物が製品化され得るなら、臨床現場において油性注射用製剤に取って代わり、また臨床使用におけるフルベストラントの新たな見通しをも切り開くはずであり、広範な適用が見込まれるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1はインビトロでのフルベストラントミクロスフェア試料1の放出曲線である。
【図2】図2はインビトロでのフルベストラントミクロスフェア試料2の放出曲線である。
【図3】図3はフルベストラントミクロスフェア試料1の皮下投与後のラットにおける平均薬剤血漿濃度−時間曲線である。
【図4】図4はフルベストラントミクロスフェア試料2の皮下投与後のラットにおける平均薬剤血漿濃度−時間曲線である。
【図5】図5は様々な放出培地におけるフルベストラントミクロスフェアの薬剤放出曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明はさらに、以下の実施例又は実施形態を参照することで詳細に例証されるが、以下の実施例は本発明を例証及び説明するのみであり、本発明の範囲を限定しないことが理解されるべきである。
【0037】
参照されるが詳細には記述されない方法、ステップ、装置、器具、材料等に関して、よく知られている対応する方法、ステップ、装置、器具、材料等を用いることにより、或いは、当技術分野の従来の知識及び技術により、当業者がそれを得ることができることが理解されるべきである。
【0038】
別様であることが示されない限り、以下の実施例のそれぞれにおいて使用されるHPLC法の具体的なクロマトグラフ条件は以下の通りである:オクタデシルシラン化学結合型シリカゲルが充填剤として、水−アセトニトリル−メタノール(15:15:70)が移動相として用いられ、検出波長は285nm、流速は0.8ml/分、フルベストラントピークに関して計算される理論段数は3000超であるべきである。
【実施例1】
【0039】
実施例1:フルベストラントミクロスフェア及びその調製
本実施例はフルベストラントミクロスフェアの組成及びその調製方法に関する。
【0040】
処方:
油相:フルベストラント 0.5g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 5.0g
ジクロロメタン 50ml
水相:1.0%ポリビニルアルコール+0.1%Tween-80溶液 3000ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/20000でありその構造式は以下の通りである:
【0041】
【化3】

【0042】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタン中に添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は3000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断される。結果として生じた混合物はその後30℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で2時間攪拌され、さらに35℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、その後40℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、続いて150μmの篩目で濾過される(篩上に150μmより大きいミクロスフェアはほとんどない)。濾液が回収されて10μmの篩目で濾過される(濾液中に10μmより小さいミクロスフェアは少ない)。ミクロスフェアが回収されて500mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを40℃で乾燥させ、総量4.05gの乾燥産物を約73.6%の収率で得る。
【0043】
適応症:主に乳癌の治療のために用いられ、皮下注射され得る。
【0044】
主成分:フルベストラント、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=2000/20000)。
【0045】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜150μm、主に20〜30μm。
【0046】
薬剤添加率:薬剤添加率は9.0%であり、これはHPLC法により測定される。
【0047】
カプセル化効率:72.9%。
【実施例2】
【0048】
実施例2:フルベストラントミクロスフェア及びその調製
本実施例はまた別のフルベストラントミクロスフェアの組成及びその調製方法に関する。
【0049】
処方:
油相:フルベストラント 0.5g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 5.0g
ジクロロメタン 50ml
水相:1.0%ポリビニルアルコール+0.1%Tween-80溶液 750ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/40000であり、その構造式は以下の通りである:
【0050】
【化4】

【0051】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタン中に添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は3000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断される。結果として生じた混合物はその後30℃の水浴中に置かれ、300rpmの攪拌速度で2時間攪拌され、さらに35℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、その後40℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、続いて150μmの篩目で濾過される(篩上に150μmより大きいミクロスフェアはほとんどない)。濾液が回収されて10μmの篩目で濾過される(濾液中に10μmより小さいミクロスフェアは少ない)。ミクロスフェアが回収されて500mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを40℃で乾燥させ、総量4.41gの乾燥産物を約80%の収率で得る。
【0052】
適応症:主に乳癌の治療のために用いられ、皮下注射され得る。
【0053】
主成分:フルベストラント、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体(Mw=2000/40000)。
【0054】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜150μm、主に20〜30μm;粒子の形状は丸い。
【0055】
薬剤添加率:薬剤添加率は11.0%であり、これはHPLC法により測定される。
【0056】
カプセル化効率:87.7%。
【実施例3】
【0057】
実施例3:フルベストラントミクロスフェア及びその調製
本実施例はまた別のフルベストラントミクロスフェアの組成及びその調製方法に関する。
【0058】
処方:
油相:フルベストラント 0.5g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 5.0g
ジクロロメタン 50ml
水相:0.5%ポリビニルアルコール溶液 750ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/20000であり、その構造式は以下の通りである:
【0059】
【化5】

【0060】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタン中に添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液が2800rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに5分間剪断される。結果として生じた混合物がその後35℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で4時間攪拌され、さらに40℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、その後150μmの篩目で濾過される。濾液は回収されて10μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアは回収されて500mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを40℃で乾燥させ、総量5.07gの乾燥産物を約92%の収率で得る。
【0061】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜150μm、主に20〜30μmであり、次に60〜30μmである;粒子の形状は丸い。
【0062】
薬剤添加率:薬剤添加率は8.3%であり、これはHPLC法により測定される。
【0063】
カプセル化効率:84.2%。
【実施例4】
【0064】
実施例4:インビトロでのフルベストラントミクロスフェア放出に関する研究
本実施例は、実施例1及び2において試験試料として調製されたフルベストラントミクロスフェアを用い、インビトロでのフルベストラントミクロスフェア放出について研究する。
【0065】
1)実験器具及び試薬
器具:SHA-A水槽恒温振盪器、及び日本のJASCO, Inc.社から取得した高性能液体クロマトグラフ(UV-2075UV検出器、PU-2089送液ポンプ、AS-2055オートサンプラー)。
【0066】
試験薬剤:中国のXi'an Libang Pharmaceutical Co., Ltd.社から取得した100.0%の純度を有するフルベストラント。
【0067】
試薬:米国のTEDIA Company社から取得したクロマトグラフグレードのアセトニトリル及びメタノール;中国のTianjin Kermel Chemical Reagent Co., Ltd.社から取得した分析的に純粋なジクロロメタン;英国のCRODA Company社から取得したTween-80。
【0068】
試験試料:共にXi'an Libang Pharmaceutical Co., Ltd.社から取得した、フルベストラント試料1(実施例1において調製されたフルベストラントミクロスフェア)、フルベストラント試料2(実施例2において調製されたフルベストラントミクロスフェア)。
【0069】
クロマトグラフ条件:HPLC法が用いられる。オクタデシルシラン化学結合シリカゲルが充填剤として、水−アセトニトリル−メタノール(15:15:70)が移動相として用いられ、検出波長は285nm、流速は0.8ml/分であり、フルベストラントピークに関して計算される理論段数は3000超であるべきである。
【0070】
2)実験方法:
それぞれ25mgのフルベストラントを有する6つの試料がそれぞれ正確に重量測定され、6つのガラス製注入ボトル中にそれぞれ置かれる。37℃まで予熱された50mlの0.3%Tween-80溶液が正確にガラス製注入ボトルのそれぞれに添加される。ガラス製注入ボトルはゴム栓で密封されてアルミニウムキャップでキャップされ、37℃±2℃の水浴中に水平状態で迅速に固定され、水平方向に約4cmの振幅、1分間に100回の頻度ですぐに震盪される。震盪の1、2、4、8、24、28、及び40時間後にそれぞれのボトルからゴム栓を介して1mlの懸濁液が抽出され(もし懸濁液中の内容物が沈殿していたなら、均等な分布のため、震盪後に抽出されるべきである)、その後1mlの0.3%Tween-80溶液がそれぞれのボトルに補充される。懸濁液は試験試料溶液として0.2μmのフィルター膜上で濾過される。加えて、適切な量のフルベストラントが正確に重量測定され、これにジクロロメタンを添加し、溶液1ml当たり2.0mgのフルベストラントを含むよう溶解させ希釈する。1mlの溶液が正確に取り出され、25ml容量フラスコに入れられる。アセトニトリルを添加することにより総体積を25mlに定める。溶液は十分に震盪され、対照溶液として用いられる。20μlの試験溶液及び20μlの対照溶液が正確に取り出され、クロマトグラフ内へと注入される。クロマトグラムが記録され、累積放出量が外部標準法によりピーク面積で計算される。
【0071】
3)実験結果及び結論
2つのタイプのフルベストラントミクロスフェア試料のインビトロでの薬剤放出の結果が図1及び2に示される。これら2つのタイプのフルベストラントミクロスフェア試料の放出速度は安定的であり、バースト効果は一切ないが、試料1の放出速度は試料2の放出速度より有意に大きいことが結果から分かる。これは、インビトロでの薬剤放出速度が担体材料の分子量の増加と共に減少したことを示し、フルベストラントミクロスフェアの放出速度が分子量のサイズにより調節され得ることを示唆する。
【実施例5】
【0072】
実施例5:ラットにおけるフルベストラントミクロスフェアの薬物動態に関する研究
本実施例は、試験試料として実施例1及び2において調製されたフルベストラントミクロスフェアを用い、ラットにおけるフルベストラントミクロスフェアの薬物動態について研究する。
【0073】
1)実験器具及び試薬
器具:オートサンプラー、カラムオーブン、エレクトロスプレーイオン化インターフェース、2695液体クロマトグラフ及びMasslynx 4.0 MSワークステーションを含む、Micromass社製Quattroマイクロ液体クロマトグラフ−質量スペクトル(LC−MS);METTLER社製10万分の1電子天秤(one hundred-thousandth of electronic balance);Milli-Q浄水器;MICROMAX 3591遠心分離卓高速遠心分離器(Thermo Electron社製);Turbine混合器(Huxi analytical instrument factory社製、中国、上海)。
【0074】
試薬:米国のTEDIA Company社から取得したクロマトグラフグレードのメタノール;他の試薬は分析的に純粋なものを市販で入手可能である;自家調製されMilli-Q浄水器により浄化された再蒸留水。
【0075】
試験薬剤:活性医薬成分であるフルベストラント:99%。
【0076】
試験試料:9.0%の含有量を有するフルベストラントミクロスフェア試料1(実施例1において調製されたフルベストラントミクロスフェア);11.0%の含有量を有するフルベストラントミクロスフェア試料2(実施例2において調製されたフルベストラントミクロスフェア)。
【0077】
ミクロスフェア試料の溶媒(1mlの試料溶媒それぞれが以下のものを含む:50mgのマンニトール、5mgのカルボキシメチルセルロースナトリウム、1mgのTween-80及び注射に適した量の水):50ml/ボトルで2つのボトル。
【0078】
すべての上述の製品が中国のXi'an Libang Pharmaceutical Co., Ltd.社により提供される。
【0079】
すべてのフルベストラントミクロスフェア試料がミクロスフェア試料の溶媒を用いて10mg/mlに調製される。
【0080】
エモジン:内部標準、中国葯品生物制品検定所により提供、バッチ番号:0756−200110;含有量定量のために用いられる。
【0081】
HPLC条件:
移動相:メタノール:水=85:15(v:v);
クロマトグラフカラム:100×2.0mm、shim-pack;プレカラムphenomenex C18 (ODSオクタデシル)、4mm×2.0 ID 10/pk;カラム温度:35℃;注入体積:5μL;流速:0.2ml/分;
LC−MS−MS条件:
キャピラリー電圧:3.00kV;コーン電圧:30V;エクストラクタ電圧:3.00V;RFレンズ電圧:0.3V;源温度:120℃;脱溶媒和温度:400℃;コーンガス流(Cone Gas Flow):30L/時間;脱溶媒和ガス流(Desolvation gas flow):500L/時間;LM1分解能:13.0;HM1分解能:13.0;イオンエネルギー:10.5;入口(entrance):−2;コリジョン(collision):20;出口(exit):2;LM2分解能:13.0;HM2分解能:13.0;イオンエネルギー:10.5;ガスセルピラニ圧(Gas cell pirani pressure):4.0e−3ミリバール;
フルベストラント:[M−H+]m/z 605.6→427.4;
エモジン:[M−H+]m/z 269.4→225.1。
【0082】
2)実験方法:
12匹のSprague-Dawleyラット(中国、江蘇の南通大学実験動物センターより購入)はすべてメスであり、180〜220gの体重を有する。SDラットは6匹のラットからなる2つの群に分けられ、それぞれが試料1及び2の群となる。異なる処方の50mg/kg(すなわち1ml/200g)のフルベストラント製剤がラットに皮下投与される。投与前並びに投与の0.5、1、3、6、10、24時間後、2、4、7、10、14、21、28日後及び5、6、7、8、9、10、11、12、13週間後にそれぞれ、0.3mlの血液がヘパリン化チューブで眼窩静脈から回収され、3500rpmで10分間遠心分離される。血液血漿(0.1ml)が定量可能な形で回収され、分析のための準備が整う。
【0083】
3)データ分析:
AUC、Tmax及びCmax並びに他のパラメータが各動物の血漿濃度−時間のデータを用いて計算される。結果は表1に示される。
【0084】
【表1】

【0085】
フルベストラントミクロスフェアの皮下注射後のラットにおける平均薬剤血漿濃度−時間曲線が図3及び4に示される。さらに、病理学検査の際に投与部位での刺激性反応は一切観察されない。
【0086】
4)実験結果の分析:
試料1において2000〜20000のMwを有するメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がミクロスフェア担体材料として用いられ、一方で試料2において2000〜40000のMwを有するメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がミクロスフェア担体材料として用いられる。実験データは、試料2と比較して試料1がより大きい放出速度、より大きい放出量、より短いピーク時間を有するが、試料2より短い半減期を有することを示し、フルベストラントミクロスフェアの分子量増加と共に放出速度が緩徐になり、半減期が延長されることを示しており、このことはインビトロでの薬剤放出の結果と一致する。したがって、所望の薬剤放出曲線が分子量サイズの制御により得られる。
【0087】
さらに、病理学検査の際に投与部位に刺激性反応は一切観察されず、フルベストラントミクロスフェアがより良い生体適合性を有することを示している。
【実施例6】
【0088】
実施例6:様々な放出培地におけるフルベストラントミクロスフェアのインビトロ放出に関する研究
本実施例は、実施例3において調製されたフルベストラントミクロスフェアを試験試料として用い、様々な放出培地におけるフルベストラントミクロスフェアのインビトロ放出について研究する。
【0089】
1)実験器具及び試薬
器具:SHA-A水槽恒温振盪器、及び日本のJASCO, Inc.社から取得した高性能液体クロマトグラフ(UV-2075UV検出器、PU-2089送液ポンプ、AS-2055オートサンプラ)。
【0090】
試験薬剤:中国のXi'an Libang Pharmaceutical Co., Ltd.社から取得した100.0%の純度を有するフルベストラント。
【0091】
試薬:米国のTEDIA Company社から取得したクロマトグラフグレードのアセトニトリル及びメタノール;中国のTianjin Kermel Chemical Reagent Co., Ltd.社から取得した分析的に純粋なジクロロメタン;英国のCRODA Company社から取得したTween-80。
【0092】
試験試料:中国のXi'an Libang Pharmaceutical Co., Ltd.社から取得したフルベストラントミクロスフェア(実施例3において調製されたフルベストラントミクロスフェア)。
【0093】
クロマトグラフ条件:HPLC法が用いられる。オクタデシルシラン化学結合シリカゲルが充填剤として、水−アセトニトリル−メタノール(15:15:70)が移動相として用いられ、検出波長は285nm、流速は0.8ml/分であり、フルベストラントピークに関して計算される理論段数は3000超であるべきである。
【0094】
3)実験方法
それぞれ25mgのフルベストラントミクロスフェアを有する12の試料がそれぞれ正確に重量測定され、12のガラス製注入ボトル中にそれぞれ置かれて4つの群に同数ずつ分けられる。37℃まで予熱された50mlの放出培地がそれぞれのガラス製注入ボトルに正確に添加される。放出培地は群1で0.3%のTween-80溶液、群2で0.5%のTween-80溶液、群3で0.05%の臭化セチルトリメチルアンモニウム(Cetyltrimethyl Ammonium Bromide、CTAB)溶液、群4で0.1%の臭化セチルトリメチルアンモニウム溶液である。ガラス製注入ボトルはゴム栓で密封されてアルミニウムキャップでキャップされ、その後37℃±2℃の水浴中に水平状態で迅速に固定され、続けてすぐに約4cmの振幅で水平方向に1分間当たり100回の頻度で震盪される。震盪の1、2、4、20、27及び44時間後にゴム栓を介してそれぞれのボトルから1mlの懸濁液が抽出され(もし懸濁液中の内容物が沈殿していたなら、均等な分布のため、震盪後に抽出されるべきである)、その後1mlの対応する放出培地がそれぞれのボトルに補充される。懸濁液は試験試料溶液として0.2μmのフィルター膜上で濾過される。加えて、適切な量のフルベストラントが正確に重量測定され、これにジクロロメタンが添加され、溶液1ml当たり2.0mgのフルベストラントを含むよう溶解して希釈する。1ml溶液が正確に取り出され、25ml容量フラスコに入れられる。アセトニトリルを添加することにより総体積を25mlに定める。溶液は十分に震盪されて対照溶液として用いられる。20μlの試験溶液及び20μlの対照溶液が正確に取り出され、クロマトグラフへと注入される。クロマトグラムが記録される。累積放出量が外部標準法によりピーク面積で計算される。
【0095】
3)実験結果及び結論
様々な培地におけるフルベストラントミクロスフェア放出の結果が図5に示される。放出培地の4つの群におけるフルベストラントミクロスフェア試料の放出速度は安定的であり、バースト効果が一切ないということがこの結果から理解され得る。表面活性剤の濃度の増加と共に薬剤放出速度はより大きくなるが、Tween-80群における薬剤放出速度の増加は臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)溶液群ほど顕著ではない。
【0096】
実施例7〜9はフルベストラントミクロスフェアを調製するために溶媒−非溶媒法を用いた実施例である。
【実施例7】
【0097】
実施例7:フルベストラントミクロスフェアを調製するための溶媒−非溶媒法の使用−1
【0098】
処方:
溶媒相:フルベストラント 0.05g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 1.0g
トリクロロメタン 10ml
非溶媒相:ポリイソブチルエステル 0.05g
シクロヘキサン 100ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は5000/10000であり、その構造式は以下の通りである:
【0099】
【化6】

【0100】
調製方法:溶媒−非溶媒法が調製のために用いられる。ポリイソブチルエステルがシクロヘキサンに添加され、超音波処理されて溶解し、結果として生じた溶液が非溶媒相として用いられ、使用のための準備が整う。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がトリクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解し、結果として生じた溶液が溶媒相として用いられる。溶媒相は6000rpmの高速剪断下で非溶媒相に徐々に添加され、さらに5分間剪断され、その後300rpmの攪拌速度で30分間攪拌され、0.5mmの篩目で濾過される。濾液は回収されて20μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアを回収して40℃で2時間乾燥させ、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0101】
粒径の範囲及び粒子の形状:20μm〜1mm、主に50〜200μm;粒子の形状は丸い。
【0102】
薬剤添加率:薬剤添加率は4.6%であり、これはHPLC法により測定される。
【0103】
カプセル化効率:67.6%。
【実施例8】
【0104】
実施例8:フルベストラントミクロスフェアを調製するための溶媒−非溶媒法の使用−2
【0105】
処方:
溶媒相:フルベストラント 0.2g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 1.0g
Span-85 0.05g
ジクロロメタン 10ml
シリコン油 30ml
非溶媒相:石油エーテル q.s.
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/20000であり、その構造式は以下の通りである:
【0106】
【化7】

【0107】
調製方法:溶媒−非溶媒法が調製のために用いられる。フルベストラント、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体及びSpan-85がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解し、その後600rpmの攪拌速度下でシリコン油に添加され、攪拌されて乳化する。ミクロスフェアがもはや生み出されなくなるまで、石油エーテルが溶液に徐々に添加される。その後溶液は300rpmの攪拌速度で30分間攪拌され、1mmの篩目で濾過される。濾液が回収されて20μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアを回収し、100mlの水で5回洗浄して40℃で2時間乾燥させ、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0108】
粒径の範囲及び粒子の形状:20μm〜1mm、主に50〜500μm;粒子の形状は丸い。
【0109】
薬剤添加率:薬剤添加率は16.8%であり、これはHPLC法により測定される。
【0110】
カプセル化効率:65.5%。
【実施例9】
【0111】
実施例9:フルベストラントミクロスフェアを調製するための溶媒−非溶媒法の使用−3
【0112】
処方:
溶媒相:フルベストラント 0.5g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 1.0g
Span-85 0.05g
ジクロロメタン 20ml
流動パラフィン 50ml
非溶媒相:純水 q.s.
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/40000であり、その構造式は以下の通りである:
【0113】
【化8】

【0114】
調製方法:溶媒−非溶媒法が調製のために用いられる。フルベストラント、メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体及びSpan-85がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解し、その後3000rpmの攪拌速度下で流動パラフィンに添加され、攪拌されて乳化する。ミクロスフェアがもはや生み出されなくなるまで、純水が300rpmの攪拌速度下で溶液に徐々に添加される。その後溶液は30分間攪拌されて600μmの篩目で濾過される。濾液が回収されて10μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアを回収し、100mlの水で5回洗浄して40℃で2時間乾燥させ、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0115】
粒径の範囲及び粒子の形状:10μm〜600μm、主に40〜250μm;粒子の形状は丸い。
【0116】
薬剤添加率:薬剤添加率は46.1%であり、これはHPLC法により測定される。
【0117】
カプセル化効率:78.8%。
【0118】
実施例10〜14はフルベストラントミクロスフェアを調製するために液中乾燥法を用いた実施例である
【実施例10】
【0119】
実施例10:フルベストラントミクロスフェアを調製するための液中乾燥法の使用−1
【0120】
処方:
油相:フルベストラント 0.05g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 0.5g
ジクロロメタン 5ml
水相:1.0%ポリビニルアルコール+0.1%Tween-80溶液 100ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は5000/10000であり、その構造式は以下の通りである:
【0121】
【化9】

【0122】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は5000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断される。結果として生じた混合物はその後30℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で2時間攪拌され、さらに35℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、その後40℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、続けて150μmの篩目で濾過される。濾液が回収されて10μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアが回収されて100mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを40℃で乾燥させ、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0123】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜150μm、主に20〜30μm;粒子の形状は丸い。
【0124】
薬剤添加率:薬剤添加率は9.1%であり、これはHPLC法により測定される。
【0125】
カプセル化効率:64.5%。
【実施例11】
【0126】
実施例11:フルベストラントミクロスフェアを調製するための液中乾燥法の使用−2
【0127】
処方:
油相:フルベストラント 0.05g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 0.5g
ジクロロメタン 5ml
水相:1.0%ポリビニルアルコール+0.1%Tween-80溶液 300ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量 平均分子量(Mw)は2000/20000であり、その構造式は以下の通りである:
【0128】
【化10】

【0129】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は3000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断される。結果として生じた混合物はその後30℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で2時間攪拌され、さらに35℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、その後40℃まで加熱されて0.5時間攪拌され、続けて150μmの篩目で濾過される。濾液が回収されて10μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアが回収されて200mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを40℃で乾燥させ、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0130】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜150μm、主に20〜50μm;粒子の形状は丸い。
【0131】
薬剤添加率:薬剤添加率は9.5%であり、これはHPLC法により測定される。
【0132】
カプセル化効率:68.0%。
【実施例12】
【0133】
実施例12:フルベストラントミクロスフェアを調製するための液中乾燥法の使用−3
【0134】
処方:
油相:フルベストラント 0.1g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 0.5g
ジクロロメタン 5ml
水相:0.1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース (Hydroxypropyl methylcellulose、HPMC) 75ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/40000であり、その構造式は以下の通りである:
【0135】
【化11】

【0136】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は3000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断される。結果として生じた混合物はその後30℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で3時間攪拌され、さらに40℃まで加熱されて1時間攪拌され、続けて150μmの篩目で濾過される。濾液が回収されて10μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアが回収されて200mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを凍結乾燥し(前凍結温度は−45℃であり、初乾温度は25℃である)、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0137】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜150μm、主に20〜50μm;粒子の形状は丸い。
【0138】
薬剤添加率:薬剤添加率は16.5%であり、これはHPLC法により測定される。
【0139】
カプセル化効率:69.7%。
【実施例13】
【0140】
実施例13:フルベストラントミクロスフェアを調製するための液中乾燥法の使用−4
【0141】
処方:
油相:フルベストラント 0.2g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 2.0g
ジクロロメタン 20ml
水相:20%グルセロール、0.2%Tween-80溶液 300ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/20000であり、その構造式は以下の通りである:
【0142】
【化12】

【0143】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は3000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断され、その後高圧ホモジナイザーを用いて800バールの圧力及び室温で3回均質化される。エマルションは35℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で2時間攪拌され、さらに40℃まで加熱されて1時間攪拌され、続けて1μmの篩目で濾過される。濾液が回収されて0.1μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアが回収されて100mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを凍結乾燥し(前凍結温度は−45℃であり、初乾温度は25℃である)、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0144】
粒径の範囲及び粒子の形状:0.1〜1μm、主に0.5〜0.8μm;粒子の形状は丸い。
【0145】
薬剤添加率:薬剤添加率は8.5%であり、これはHPLC法により測定される。
【0146】
カプセル化効率:56.5%。
【実施例14】
【0147】
実施例14:フルベストラントミクロスフェアを調製するための液中乾燥法の使用−5
【0148】
処方:
油相:フルベストラント 0.1g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 1.0g
ジクロロメタン 10ml
水相:0.05mol/Lホウ砂溶液(0.1%HPMCを含む) 200ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/40000であり、その構造式は以下の通りである:
【0149】
【化13】

【0150】
調製方法:液中乾燥法が用いられる。フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解する。結果として生じた溶液は3000rpmの高速剪断下で水相に徐々に添加され、さらに3分間剪断され、その後ミニタイプジェットポンプ(minitype jet pump)を用いて500バールの圧力及び室温で5回乳化される。エマルションは35℃の水浴中に置かれて300rpmの攪拌速度で2時間攪拌され、さらに40℃まで加熱されて1時間攪拌され、続けて1μmの篩目で濾過される。濾液が回収されて0.1μmの篩目で濾過される。ミクロスフェアが回収されて100mlの水で5回洗浄される。濡れたミクロスフェアを凍結乾燥し(前凍結温度は−45℃であり、初乾温度は25℃である)、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0151】
粒径の範囲及び粒子の形状:0.1〜1μm、主に0.3〜0.7μm;粒子の形状は丸い。
【0152】
薬剤添加率:薬剤添加率は9.1%であり、これはHPLC法により測定される。
【0153】
カプセル化効率:60.0%。
【0154】
実施例15〜17はフルベストラントミクロスフェアを調製するために噴霧乾燥法を用いた実施例である
【実施例15】
【0155】
実施例15:フルベストラントミクロスフェアを調製するための噴霧乾燥法の使用−1
【0156】
処方:
フルベストラント 0.2g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 2.0g
グリセロールモノステアレート 0.05g
テトラヒドロフラン 50ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は5000/10000であり、その構造式は以下の通りである:
【0157】
【化14】

【0158】
調製方法:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がテトラヒドロフランに添加され、超音波処理されて溶解し、その後グリセロールモノステアレート及びフルベストラントが添加され、超音波処理されて溶解し、続けて90%のリングファン送風速度、最大に制御された圧力、80℃の吸気温、10%の蠕動ポンプの送り速度で噴霧乾燥される。乾燥終了後、結果として生じた産物は篩過され、その後10〜300μmのミクロスフェアが回収され、フルベストラントミクロスフェアがもたらされる。
【0159】
粒径の範囲及び粒子の形状:10μm〜300μm、主に50〜150μm;粒子の形状は丸い。
【0160】
薬剤添加率:薬剤添加率は9.9%であり、これはHPLC法により測定される。
【0161】
カプセル化効率:67.7%。
【実施例16】
【0162】
実施例16:フルベストラントミクロスフェアを調製するための噴霧乾燥法の使用−2
【0163】
処方:
フルベストラント 0.6g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 3.0g
コレステロール 0.1g
セバシン酸ジブチル 0.15g
ジクロロメタン 30ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/20000であり、その構造式は以下の通りである:
【0164】
【化15】

【0165】
調製方法:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、攪拌されて溶解し、その後セバシン酸ジブチル、コレステロール及びフルベストラントが順に添加されて攪拌されて溶解し、続けて90%のリングファン送風速度、最大に制御された圧力、40℃の吸気温、10%の蠕動ポンプの送り速度で噴霧乾燥される。乾燥終了後、結果として生じた産物は篩過され、その後10〜300μmのミクロスフェアが回収され、フルベストラントミクロスフェアがもたらされる。
【0166】
粒径の範囲及び粒子の形状:10μm〜300μm、主に50〜150μm;粒子の形状は丸い。
【0167】
薬剤添加率:薬剤添加率は19.4%であり、これはHPLC法により測定される。
【0168】
カプセル化効率:62.1%。
【実施例17】
【0169】
実施例17:フルベストラントミクロスフェアを調製するための噴霧乾燥法の使用−3
【0170】
処方:
フルベストラント 1.0g
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体 2.0g
ジクロロメタン 40ml
注:メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は2000/40000であり、その構造式は以下の通りである:
【0171】
【化16】

【0172】
調製方法:フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体がジクロロメタンに添加され、超音波処理されて溶解し、その後90%のリングファン送風速度、最大に制御された圧力、40℃の吸気温、10%の蠕動ポンプの送り速度で噴霧乾燥される。乾燥終了後、結果として生じた産物は篩過され、その後10〜300μmのミクロスフェアが回収され、フルベストラントミクロスフェアを得る。
【0173】
粒径の範囲及び粒子の形状:10〜300μm、主に80〜150μm;粒子の形状は丸い。
【0174】
薬剤添加率:薬剤添加率は48.7%であり、これはHPLC法により測定される。
【0175】
カプセル化効率:56.5%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)フルベストラント又はその薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物、及び
2)メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体
を含む、フルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア。
【請求項2】
フルベストラントの量に基づいて0.01%〜50%重量、好ましくは5%〜50%重量、より好ましくは10%〜30%重量、最も好ましくは20%〜30%重量のフルベストラント又はその薬学的に許容可能な塩又はその溶媒和物を含む、請求項1に記載のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア。
【請求項3】
メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体が、親水性断片ポリエチレングリコール及び親油性断片ポリ乳酸からなり;
好ましくは、前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の構造式が
【化1】


であり、
前記式中m=4〜454、n=4〜2778;好ましくは、m=11〜227、n=70〜2083、より好ましくは、m=22〜113、n=139〜1111であり;
より好ましくは、前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の親水性−親油性バランス(HLB)の価が0.01〜19.84であり;好ましくは、HLB価が0.4〜12.0、より好ましくは、HLB価が1.47〜15.0である、
請求項1又は2に記載のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア。
【請求項4】
フルベストラントナノスフェアの粒径が0.1μm〜1μm、好ましくは0.3μm〜0.8μmであり;フルベストラントミクロスフェアの粒径が10μm〜1mm、好ましくは10〜500μmである、請求項1〜3のいずれかに記載のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェア。
【請求項5】
溶媒−非溶媒法、液中乾燥法及び噴霧乾燥法からなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの調製方法。
【請求項6】
溶媒−非溶媒法が
a.溶解したメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を含む溶媒系中にフルベストラントを分散又は溶解させること;
b.非溶媒系中に添加し、ナノスフェア又はミクロスフェアを形成すること;
c.凝固させ、回収し、洗浄し、且つ乾燥させること;
というステップを含み、
好ましくは、前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の溶媒がジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルヒドロフラン、エタノール及びエチルアセテートの1又は2以上であり;
好ましくは、前記溶媒系中のメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の濃度が0.1%〜50%(g/ml)であり;
好ましくは、溶解したメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を含む前記溶媒系中のフルベストラントの濃度が0.01%〜80%(g/ml)であり;
好ましくは、前記非溶媒系がエーテル、石油エーテル、n−ヘキサン、シクロヘキサン、アセトンであり;
好ましくは、前記溶媒系の前記非溶媒系に対する体積比が10:1〜1:10であり; 且つ/或いは
好ましくは、前記非溶媒系がさらに固着防止剤を含み;より好ましくは、前記固着防止剤がポリイソブチルエステル、ポリエチレン及びブチルゴムの1又は2以上であり;さらに好ましくは、前記固着防止剤の前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体に対する質量比が0:10〜2:10である、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
液中乾燥法が
a.フルベストラント及びメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を有機溶媒中に溶解させて油相を作製すること;
b.水相中に前記油相を添加し、乳化させて水中油O/W型エマルションを得ること;
c.前記O/W型エマルションを攪拌及び加熱し、前記O/W型エマルション中の前記有機溶媒を完全に揮発させること;
d.濾過し、洗浄し、回収し、且つ乾燥させること;
というステップを含み、
好ましくは、前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の溶媒がジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルヒドロフラン、エタノール及びエチルアセテートの1又は2以上であり;
好ましくは、前記フルベストラントの前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体に対する質量比が1:50〜1:3であり;前記油相中のメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の好ましい濃度が1%〜50%(g/ml)であり;好ましくは、前記水相が界面活性剤溶液、単糖又は多糖溶液、ポリオール溶液、セルロース溶液及びコロイド溶液の1又は2以上の混合溶液であり、前記水相において溶質の濃度が0.01%〜50%(g/ml)であり、且つ前記水相のpH値が3.0〜10.5の範囲であり;
好ましくは、前記水相中に使用されるpH調整剤が無機酸、有機酸、無機塩基、有機塩基及び緩衝塩からなる群から選択され;且つ/或いは
好ましくは、前記油相の前記水相に対する体積比が1:300〜1:5である、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
噴霧乾燥法が
a.溶解したメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を含む溶媒系中にフルベストラントを溶解又は分散させること;
b.噴霧の形で噴霧乾燥器の乾燥塔内へと噴霧し、且つ乾燥させ、単離し、回収すること;
というステップを含み、
好ましくは、前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の溶媒がジクロロメタン、トリクロロメタン、メチルヒドロフラン、エタノール及びエチルアセテートの1又は2以上であり;
好ましくは、前記溶媒系中のメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体の濃度が0.1%〜50%(g/ml)であり;
好ましくは、溶解したメトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体を含む前記溶媒系中の前記溶解又は分散したフルベストラントの濃度が0.01%〜50%(g/ml)であり;
好ましくは、前記乾燥塔の吸気温が30℃〜80℃であり;
好ましくは、前記溶媒系がさらに可塑剤を含み、より好ましくは、前記可塑剤がジメチルベンゾエート、ジエチルベンゾエート、ジブチルベンゾエート、セバシン酸ジブチル、クエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリブチル及びグリセリルトリアセテートの1又は2以上であり;さらに好ましくは、前記可塑剤の前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体に対する質量パーセントが0〜50%であり;且つ/或いは
好ましくは、前記溶媒系がさらに固着防止剤を含み、前記固着防止剤がコレステロール、グリセロールモノステアレート、タルク粉末、シリカゲル及びステアリン酸マグネシウムの1又は2以上であり、より好ましくは、前記固着防止剤の前記メトキシ末端ポリエチレングリコール−ポリ乳酸ブロック共重合体に対する質量パーセントが0〜100%である、
請求項5に記載の方法。
【請求項9】
乳癌治療のための薬剤の調製における請求項1〜4のいずれかに記載のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアの使用であって;好ましくは、前記乳癌が進行性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌が抗エストロゲン療法での治療後に効果のない、進行している、或いはホルモン受容体陽性である閉経後の女性における転移性進行性乳癌である使用。
【請求項10】
請求項1〜4のいずれかに記載のフルベストラントナノスフェア又はミクロスフェアを含む、乳癌治療のための医薬組成物。
【請求項11】
乳癌の治療における請求項1〜4のいずれかに記載のフルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又は請求項10に記載の医薬組成物の使用であって;好ましくは、前記乳癌が進行性乳癌であり、より好ましくは、前記乳癌が抗エストロゲン療法での治療後に効果のない、進行している、或いはホルモン受容体陽性である閉経後の女性における転移性進行性乳癌である使用。
【請求項12】
薬学的に許容可能な有効量の請求項1〜4のいずれかに記載のフルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又は請求項10に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与する乳癌(特に進行性乳癌)の治療方法であって;好ましくは、前記フルベストラントナノスフェア若しくはミクロスフェア又は前記医薬組成物が1〜3ヶ月毎に投与され;より好ましくは、投与経路が皮下又は静脈注射である方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2013−503113(P2013−503113A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525833(P2012−525833)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【国際出願番号】PCT/CN2009/000990
【国際公開番号】WO2011/022861
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(511214989)シーアン リーバン ファーマシューティカル テクノロジー シーオー., エルティーディー. (1)
【氏名又は名称原語表記】XI’AN LIBANG PHARMACEUTICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【Fターム(参考)】