説明

フレキシブル管用継手

【課題】T型防水パッキンを組み込むだけで気体漏れ検査を可能にするフレキシブル管用継手を提供する。
【解決手段】押輪7の内周と該押輪7に差込まれたフレキシブル管2の合成樹脂層10の外周との間の隙間をT型防水パッキン19でシールする。T型防水パッキン19の円周方向数箇所には、気体を透過するが固体や液体は透過しない選択透過性部材26をパッキン軸線方向に一体に埋設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等気体用のフレキシブル管を差込み接続するためのフレキシブル管用継手に係り、詳しくは気体漏れ検査を可能にしているフレキシブル管用継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のフレキシブル管用継手として、例えば、継手本体とナット(押輪)を備え、継手本体またはナットに貫通孔を設け、この貫通孔に空気、水蒸気のような気体を透過するが塵芥等の固体や水、霧等の液体は透過しないという機能を有する選択透過性部材で塞いでいる。これによれば、施工時に誤ってフレキシブル管に釘が打ち込まれると、この釘打ち部から漏れた気体はフレキシブル管の金属製コルゲイト管とこの外周を被覆した合成樹脂層との間の隙間を通って管軸方向に移動し、フレキシブル管の接続された継手の内部まで到達する。継手においては継手本体又はナットに継手外部と連通する貫通孔を設けているので、この貫通孔を通って漏れた気体は積極的に外部に排出される。このとき、貫通孔は選択透過性部材で塞いでいるので、漏れた気体の透過は積極的に行われ、一方で継手内への固体(塵芥など)や液体(水や霧など)の透過を阻止できる。以上によって、漏れ検査時にはこの漏れを確実に検知して釘打ちミス等を知ることができるというものである(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、上記フレキシブル管用継手は前記ナットの内周にパッキン溝を設け、このパッキン溝にT型防水パッキンを嵌め込んでナットの内周と該ナットに差込まれたフレキシブル管の合成樹脂層の外周との間を防水シールしている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−321103号公報(例えば、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記フレキシブル管用継手では、気体漏れ検出対策として、特別に貫通孔を継手本体又はナットに設ける工程と、この貫通孔に選択透過性部材を嵌め込む工程を要するため、フレキシブル管用継手の組立工数の増大を招く。また、選択透過性部材は四フッ化エチレン樹脂粉体を成形した連続多孔質膜を含むシート材等の素材からなって弾性が無く、非圧縮性であるため、貫通孔の内周と選択透過性部材の外周との間に隙間が生じ易く、この隙間を通って水や霧等液体が継手本体内に浸入しやすいという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解消するためになされたものであり、その目的とするところは、上記のような、押輪の内周と該押輪に差込まれたフレキシブル管の合成樹脂層の外周との間を防水シールするT型防水パッキンを備えたフレキシブル管用継手において、T型防水パッキンそれ自体に選択的に気体を透過する選択透過性を付与することによりT型防水パッキンを組み込むだけで気体漏れ検査を可能にするフレキシブル管用継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、請求項1に記載のように、その発明の内容を理解しやすくするために図1〜図4に付した符号を参照して説明すると、受口部3を有する継手本体5と、受口部3に挿入された押輪7と、押輪7から受口部3内に差込まれ、金属製コルゲイト管2aの外周に合成樹脂層10を被覆したフレキシブル管2と、受口部3内に収容され、受口部3に差込まれたフレキシブル管2aの合成樹脂層10で被覆されず露出した先端部付近の外周と受口部3の内周との間の隙間をシールするシールゴム6と、押輪7の内周に設けたパッキン溝18に嵌め込まれ、押輪7の内周と該押輪7に差込まれたフレキシブル管2の合成樹脂層10の外周との間の隙間をシールするT型防水パッキン19と、を備えたフレキシブル管用継手において、T型防水パッキン19の円周方向数箇所に、気体を透過するが固体や液体は透過しない選択透過性部材26をパッキン軸線方向に一体に埋設し、T型防水パッキン19の前後両端面に露出する選択透過性部材26の前後両端面26a,26bは、押輪7の内周と合成樹脂層10の外周との間の隙間33に連通するようにパッキン溝18内とT型防水パッキン19の前後両端面19d,19eとの間に形成した空隙32a、32bに臨ませていることに特徴を有するものである。
【0008】
上記構成によると、気体漏れ検査時に、フレキシブル管2の金属製コルゲイト管2aの釘打ち部等から漏れた気体(漏れ検査時の封入空気)は、フレキシブル管2の金属製コルゲイト管2aと合成樹脂層10との間の隙間を通って継手本体5の内部まで到達し、押輪7のT型防水パッキン19より前側の内周と合成樹脂層10の外周との間の隙間33およびパッキン溝18内とT型防水パッキン19の前端面19dとの間の空隙32aを経て選択透過性部材26を透過し、パッキン溝18内とT型防水パッキン19の後端面19eとの間の空隙32b、さらに押輪7のT型防水パッキン19より後側の内周と合成樹脂層10の外周との間の隙間33を通って積極的に外部に排出される。これによって漏れを確実に検知することができる。
【0009】
T型防水パッキン19に選択透過性部材26を一体に埋設してあると、前述した従来例のように特別に貫通孔を継手本体又はナット(押輪)に設けたり、この貫通孔に選択透過性部材を嵌め込んだりすることなく、T型防水パッキン19を組み込むだけの数少ない工程で気体漏れ検査を可能にするフレキシブル管用継手を得ることができる。
【0010】
請求項1記載のフレキシブル管用継手は、請求項2に記載のように、選択透過性部材26は、四フッ化エチレン樹脂粉体を成形した連続多孔質膜を含むシート材、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレート等の熱可塑性樹脂粉体から成形した連続気孔を有する多孔質体であるものを使用することができる。
【0011】
請求項1又は2記載のフレキシブル管用継手は、請求項3に記載のように、T型防水パッキン19の円周方向数箇所に通気孔19cをパッキン軸線方向(前後方向)に貫通するように設け、この通気孔19cにピン形状の選択透過性部材26を圧入嵌合した構成を採用することができる。これによると、T型防水パッキン19の通気孔19cの内周はT型防水パッキン19自体がもつ弾性によって選択透過性部材26の外周に密着するので、選択透過性部材26が弾性が無く、非圧縮性である素材からなる場合も、T型防水パッキン19の通気孔19cの内周と選択透過性部材26の外周との間に隙間が生じるようなことがなく、T型防水パッキン19の防水性を確保できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、T型防水パッキンは本来の防水性を確保し得ながら気体漏れ検査を可能にするので、気体漏れ検査を可能にするフレキシブル管用継手を数少ない工数で容易に組立てることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図、図2はフレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図3はフレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図、図4の(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの背面図、(c)はシールゴムの側面図、図5(a)はT型防水パッキンの正面図、(b)は図5(a)におけるA−A線断面図、図6は図3におけるT型防水パッキン部分の拡大断面図である。
【0014】
図1に示すように、本発明に係るフレキシブル管用継手1は、一端部に金属製のフレキシブル管2の先端部を受け入れる受口部3を形成し、他端部の外周に接続用雄ねじ4を形成した継手本体5と、この継手本体5の受口部3の内部に収容されるシールゴム6と、受口部3内に挿入される押輪7等を備える。
【0015】
フレキシブル管2は、図1に示すように、円周方向全周に延びる山部8と谷部9とを管軸方向へ交互に並設した金属製コルゲイト管2aの外周を塩化ビニール等の合成樹脂層10で被覆している。
【0016】
図1に示すように、継手本体5の受口部3内には入口側(後方側)から内奥側(前方側)に向かって順に大径孔11、中径孔12、小径孔13を連通状に形成する。小径孔13の内奥端にはストッパー部14を径方向内方へ突設している。小径孔13と中径孔12との間には第1テーパ15を小径孔13に向かって窄まり状に形成し、中径孔12と大径孔11との間には第2テーパ16を中径孔13に向かって窄まり状に形成している。
【0017】
図4の(a)〜(c)に示すように、シールゴム6は、金属製コルゲイト管2aの山部8の外径と略同一の内径を有する筒状の前側胴部6aと、この前側胴部6aの前端部に内向きに張り出した管端受け部6bと、前側胴部6aの後端部に外向きに張り出した環状のシール作用部6cと、このシール作用部6cから後方へ連設され前側胴部6aの内径より大きい内径の後側胴部6dと、この後側胴部6dの後端部に連設され後側胴部6dの内径より小さく且つ金属製コルゲイト管2aの山部8の外径より大きい内径で且つ後側胴部6dの外径より大きい外径の抜止め爪部6eとを有する形に一体形成されている。
前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dはNBR、SBR、EPDM等で形成される。管端受け部6bは、それら前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6d等と同一材料又は異材料で形成し、黄銅製座金等の補強芯金6fを埋込み成形している。
抜止め爪部6eは、前側胴部6a、シール作用部6cおよび後側胴部6dよりも硬い黄銅等の金属材料または硬質樹脂等で部分円弧状に形成され、この複数個が後側胴部6dの後端部の円周方向に所定間隔置きに並べて一体成形される。抜止め爪部6eの外周と後端面の交わる角部には後方窄まり状のテーパ25を形成している。
【0018】
このシールゴム6は、フレキシブル管2の差込み前(初期状態)において、図1に示すように、管端受け部6bおよび前側胴部6aが小径孔13内に位置し、かつシール作用部6cが中径孔12内に位置するとともに、抜止め爪部6eが大径孔11内に位置するように収容配置される。
【0019】
図1に示すように、継手本体5内のストッパー部14には先端掛止め部材17を装着している。先端掛止め部材17は、拡縮径自在なC形のリング部17aと、このリング部17aの内径部の数箇所から突設する弾性変形自在な逆止爪17bとを有する形に金属や硬質樹脂等で形成されている。そして、先端掛止め部材17は、リング部17aがストッパー部14に重合するとともにリング部17aの外径部がストッパー部14の外径側に設けた円周溝14a内に係合して、逆止爪17bが小径孔13内に向けて突出するようにストッパー部14に装着される。
【0020】
図1に示すように、押輪7は、継手本体5の大径孔11の入口側に軸方向に移動可能に挿入されフレキシブル管2が挿通可能な円筒部7aを有し、この円筒部7aの入口側後端部の外周には大径孔11の孔径より大きい外径の鍔部7bを一体に形成している。押輪7の円筒部7aの入口側後端の内周にはパッキン溝18を円周方向に形成し、このパッキン溝18にT型防水パッキン19を嵌め込んで押輪7の内周と該押輪7に差込まれたフレキシブル管2の合成樹脂層10の外周との間の隙間をシールして外部からの水浸入を防止する。T型防水パッキン19はEPDM(エチレン・プロピレン・ジエンゴム)等からなり、パッキン溝18内に外周が接触するように嵌め込まれる環状のパッキン本体(輪周部)19aと、このパッキン本体部19aの内周に一体に形成されフレキシブル管2の合成樹脂層10の外周に密着するリップ部19bとを有する断面T形状に成形されている。
押輪7の円筒部7aの先端部の外周には第2テーパ16と略同一勾配の先細状のテーパ20aを、円筒部7aの先端部の内周には先拡がり状のテーパ20bをそれぞれ形成している。
【0021】
図1に示すように、押輪7の円筒部7aの外周にはスナップリング収容保持溝21を円周方向に形成する一方、継手本体5の大径孔11の内周には入口側から奥側に向かって順に第1のスナップリング係合溝22、第2のスナップリング係合溝23をそれぞれ円周方向に形成している。第1のスナップリング係合溝22内の前側溝壁には前方へ向かって漸次窄まり状のテーパ面22aを形成している。
【0022】
押輪7の円筒部7aのスナップリング収容保持溝21より後側には防水パッキン溝28を設け、この防水パッキン溝28にNBRやSBR系ゴム等からなるO型防水パッキン29を嵌め込んで受口部3の大径孔11の内周と押輪7の円筒部7aの外周との間の隙間をシールする。継手本体5の中径孔12又は小径孔13の内周には耐火パッキン溝30を設け、この耐火パッキン溝30に熱膨張性黒鉛入りゴム等からなる耐火パッキン31を嵌め込んでいる。
【0023】
押輪7はこれの先端部が図1のようにフレキシブル管2の差込み前におけるシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に位置する半挿入状態(初期位置)に位置決め保持される第1の位置決め保持手段と、前記先端部が図3のようにフレキシブル管2の差込みに伴い小径孔13内にまで押込まれるシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に僅かな隙間を置いて位置する完全な押込み位置に位置決め保持される第2の位置決め保持手段を備えている。
【0024】
第1の位置決め保持手段は、図1に示すように、押輪7のスナップリング収容保持溝21に、穴用のC形止め輪等からなる拡縮径自在なスナップリング27の内周部が嵌め込まれて収容されているとともに、スナップリング27の外周部が押輪7の円筒部7aの外周面より突出して継手本体5の第1のスナップリング係合溝22に係脱可能に係合されている。このスナップリング27は、スナップリング収容保持溝21に拡径可能な状態に収容されている。
【0025】
上記第1の位置決め保持手段により、押輪7は、図1のように、フレキシブル管2の差込み前において半挿入状態の押輪7の先端部がシールゴム6の中径孔12内に位置する抜止め爪部6eの後側に位置する初期位置に位置決め保持される。すなわち、半挿入状態の押輪7は、初期位置において、スナップリング27の外周部と第1のスナップリング係合溝22との係合作用によって押込まれるのを確実に阻止される。押輪7は、この第1の位置決め保持手段により初期状態の半挿入状態より不用意に押し込まれるのを阻止されることにより、シールゴム6を不用意に押し込んで変形を加えるような不具合を防止できる。
【0026】
上記第2の位置決め保持手段は、受口部3の内周に第2のスナップリング係合溝23を第1のスナップリング係合溝22より前方に並べて設け、半挿入状態の押輪7が押込まれるに伴いスナップリング27が第1のスナップリング係合溝22のテーパ面22aから滑り出して第2のスナップリング係合溝23に係合するように構成している(図3参照)。押輪7の押込み代であるストローク長さS(図2参照)は、第1のスナップリング係合溝22と第2のスナップリング係合溝23との間の距離と略同じになるように設定されている。
【0027】
次に、上記のフレキシブル管用継手1にフレキシブル管2を接続する要領について図1〜図3を参照にして説明する。
【0028】
図1のようにフレキシブル管2の接続前における継手1の在庫・保管時や搬送時等においては、スナップリング27の外周部と第1のスナップリング係合溝22との係合作用による第1の位置決め保持手段により、半挿入状態の押輪7が、不用意に押込まれてシールゴム6に変形を加える不具合な事態の発生を防止できる。
【0029】
フレキシブル管2の接続に際しては、先ず、合成樹脂層10を剥離して山部8が6個分ほど露出したフレキシブル管2の金属製コルゲイト管2aの先端部を、押輪7の入口側から継手本体5の受口部3内のシールゴム6の抜止め爪部6e、後側胴部6d、シール作用部6c、および前側胴部6aの順に差込み、その金属製コルゲイト管2aの先端部をシールゴム6の管端受け部6bに当接させる。その際、シールゴム6のシール作用部6cは外向きに張り出す形に形成しているので、フレキシブル管2の差込み時にそのシール作用部6cが障害になるようなことなくフレキシブル管2の先端部をシールゴム6内にスムーズに挿入できる。
【0030】
引き続いて、図2のようにフレキシブル管2を所定深さまで差込むと、シールゴム6がフレキシブル管2と共に受口部内奥方向へ押込まれ、この押込みに伴いシールゴム6のシール作用部6cが第1テーパ15の窄まり側に摺接することにより該第1テーパ15で押圧されて内向きに縮径変形し、第1テーパ面15を通過して小径孔13内に移動するや否やフレキシブル管2の谷部9の斜面9a及び谷底部9bの双方、または少なくとも斜面9aに圧縮状に密着し、これと同時にシールゴム6の抜止め爪部6eが第2テーパ16の窄まり側に摺接することにより該第2テーパ16で縮径方向に押圧されながら中径孔12に移動する。これによりフレキシブル管2の先端部の外周面と継手本体5の小径孔13の内周面との間がシールゴム6により確実に密封シールされ、フレキシブル管2内を流れる流体がフレキシブル管2の先端部からフレキシブル管2の先端部外周と継手本体5の小径孔13内周との間を経て漏れ出るのを防止できる状態が得られる。なお、フレキシブル管2の先端部とシールゴム6の管端受け部6bとの間でもシール機能を期することができる。
【0031】
また、図2のようにフレキシブル管2が所定深さまで差込まれると、シールゴム6の管端受け部6bの内径部及びフレキシブル管2の先端部の内面が先端掛止め部材17の逆止爪17bと小径孔13の内周面との間を該逆止爪17bの弾性縮径変形を介して通過後に該逆止爪17bに係合する。この管端受け部6bが逆止爪17bを通過する時、施工者は手応えを感じ、フレキシブル管2が所定深さまで差込まれたことを実感できる。
また、そのようにフレキシブル管2の先端部が先端掛止め部材17の逆止爪17bに係合するとともに、抜止め爪部6eが谷部9に入り込むことで、フレキシブル管2が振れるのを抑制することができる。
【0032】
フレキシブル管2の差込み完了後には、図3のように押輪7を押込み代分だけ完全に押込む。この押し込みに伴い、スナップリング27は、スナップリング収容保持溝21内に内周部が嵌め込み収容された状態で、継手本体5の第1のスナップリング係合溝22のテーパ面22aを摺接しながらその直径が弾性的に縮径される。そして、押輪7が完全に押し込まれた時点で、この縮径されたスナップリング27の外周部が第2のスナップリング係合溝23に至ってスナップリング27が弾性復元作用で拡径して外周部を第2のスナップリング係合溝23に係合する、という第2の位置決め保持手段が作用する。これにより、押輪7はこれの先端部がシールゴム6の抜止め爪部6eの後側に位置する完全な押込み位置に保持されるため、シールゴム6が受口部3の入口側方向へ戻り移動するのを防止できる。したがって、シールゴム6によるシール状態を確保できる。
【0033】
また、押輪7の完全な押込みに伴い押輪7の先端部のテーパ20bがシールゴム6の抜止め爪部6eのテーパ25に近接対向する。したがって、このときフレキシブル管2を引き抜く方向に外力が加わったとしても、フレキシブル管2と同行する抜止め爪部6eのテーパ25が押輪7のテーパ20bの窄まり側に当接することになり、フレキシブル管2の抜け出しが確実に阻止される。
【0034】
本発明は、上記のようなフレキシブル管用継手において、図1、図5、図6に示すように、T型防水パッキン19のパッキン本体19aの円周方向数箇所に気体を透過するが固体や液体は透過しない選択透過性部材26を一体に埋設して気体漏れ検査を可能にしていることに特徴を有する。
【0035】
T型防水パッキン19の円周方向数箇所に通気孔19cをパッキン軸線方向(前後方向)に貫通するように設け、この通気孔19cにピン形状の選択透過性部材26を圧入嵌合してなる。そのほかに、T型防水パッキン19の成形時に選択透過性部材26を一体に成形することもできる。
選択透過性部材26は、例えば、四フッ化エチレン樹脂粉体を成形した連続多孔質膜を含むシート材、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレート等の熱可塑性樹脂粉体から成形した連続気孔を有する多孔質体である。
【0036】
図6に示すように、T型防水パッキン19は押輪7のパッキン溝18内にT型防水パッキン19の前後両端面19d,19eがパッキン溝18内の前後側溝壁18a,18bとの間にそれぞれ空隙32a、32bを形成するように嵌め込まれる。これによりT型防水パッキン19の前後両端面19d,19eに露出する選択透過性部材26の前後両端面26a,26bは空隙32a,32bに臨む。その空隙32a、32bは押輪7の内周とフレキシブル管2の合成樹脂層10の外周との間の隙間33に連通している。
【0037】
このように構成することにより、気体漏れ検査時には、金属製コルゲイト管2aの釘打ち部等から漏れた気体は、金属製コルゲイト管2aと合成樹脂層10との間の隙間を通って継手本体5の内部に流れ込み、さらに押輪7のT型防水パッキン19より前側の内周と合成樹脂層10の外周との間の隙間33およびT型防水パッキン19の前端面19dとパッキン溝18内との間の空隙32aを経て選択透過性部材26を透過し、T型防水パッキン19の後端面19eとパッキン溝18内との間の空隙32b、および押輪7のT型防水パッキン19より後側の内周と合成樹脂層10の外周との間の隙間33を通って外部に漏出される。その結果封入圧力が低下し漏れがあることを確実に検知される。
【0038】
このように、フレキシブル管2の合成樹脂層10の外周と押輪7の内周との間の隙間をシールするT型防水パッキン19は本来の防水シール機能に加えて漏れ検出を可能にする機能を兼備する。
【0039】
なお、本発明の対象とするフレキシブル管用継手は上記実施例のものに限られず、例えば、図7に示すような断面形状のフレキシブル管用継手にも同様に適用できる。この場合、図7に示すフレキシブル管用継手においては、押輪7は継手本体5の受口部3の内周に雌ねじ34を設け、この雌ねじ34に押輪7の先端部の外周に設けた雄ねじ35をねじ込むことで押輪7を受口部3に挿入している。また、シールゴム6も上記実施例のような断面形状を有する構造のものに限られず、図7に示すようなシールゴム6であってもよい。尚、図7中、符号36は防水ゴムシールを示す。
また、上記各実施例では、継手本体5の一端に受口部3を、他端の外周に接続用雄ねじ4を形成した雄ねじフレキシブル管用継手について記述したが、本発明はこれに限られず、他の構造、例えば、両端に受口部を有する左右対称のソケット形のフレキシブル管用継手や、エルボ型のフレキシブル管用継手等にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例を示すフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み前の状態で示す半欠截断面図である。
【図2】フレキシブル管差込み途中の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図3】フレキシブル管の差込み完了後の状態で示す同フレキシブル管用継手の半欠截断面図である。
【図4】(a)はシールゴムの半欠截断面図、(b)はシールゴムの背面図、(c)はシールゴムの側面図である。
【図5】(a)はT型防水パッキンの正面図、(b)は図5(a)におけるA−A線断面図である。
【図6】図3におけるT型防水パッキン部分の拡大断面図である。
【図7】他の実施例のフレキシブル管用継手を、フレキシブル管差込み完了後の状態で示す半欠截断面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 フレキシブル管用継手
2 フレキシブル管
2a 金属製コルゲイト管
3 受口部
5 継手本体
6 シールゴム
7 押輪
10 合成樹脂層
19 T型防水パッキン
19c 通気孔
19d T型防水パッキンの前端面
19e T型防水パッキンの後端面
26 選択透過性部材
26a 選択透過性部材の前端面
26b 選択透過性部材の後端面
32a,32b 空隙
33 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受口部を有する継手本体と、前記受口部に挿入された押輪と、前記押輪から前記受口部内に差込まれ、金属製コルゲイト管の外周に合成樹脂層を被覆したフレキシブル管と、前記受口部内に収容され、前記受口部に差込まれた前記フレキシブル管の合成樹脂層で被覆されず露出した先端部付近の外周と前記受口部の内周との間の隙間をシールするシールゴムと、前記押輪の内周に設けたパッキン溝に嵌め込まれ、前記押輪の内周と該押輪に差込まれた前記フレキシブル管の合成樹脂層の外周との間の隙間をシールするT型防水パッキンと、を備えたフレキシブル管用継手において、
前記T型防水パッキンの円周方向数箇所に、気体を透過するが固体や液体は透過しない選択透過性部材をパッキン軸線方向に一体に埋設し、前記T型防水パッキンの前後両端面に露出する前記選択透過性部材の前後両端面は、前記押輪の内周と前記合成樹脂層の外周との間の隙間に連通するように前記パッキン溝内と前記T型防水パッキンの前後両端面との間に形成した空隙に臨ませていることを特徴とする、フレキシブル管用継手。
【請求項2】
前記選択透過性部材は、四フッ化エチレン樹脂粉体を成形した連続多孔質膜を含むシート材、あるいはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルアクリレート等の熱可塑性樹脂粉体から成形した連続気孔を有する多孔質体である、請求項1記載のフレキシブル管用継手。
【請求項3】
前記T型防水パッキンの円周方向数箇所に通気孔をパッキン軸線方向に貫通するように設け、この通気孔にピン形状の選択透過性部材を圧入嵌合してなる、請求項1又は2記載のフレキシブル管用継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−14245(P2010−14245A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176527(P2008−176527)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000231121)JFE継手株式会社 (140)
【Fターム(参考)】