説明

フローセンサ出力補正方法

【課題】 フローセンサの経時変化に伴い生ずるセンサ出力の変動、特にそのゼロ点の変動に対する補正を適正に行えるフローセンサ出力補正方法を提供する。
【解決手段】 流体が現実に流れてフローセンサが閾値以上の流量を検出していた状態から流れなくなって閾値以下になった場合にはそのセンサ出力が或る程度安定した特性を示す。そこで、フローセンサが現実に閾値以上の流量を検出していた状態から閾値以下になった後の比較的安定したセンサ出力に基づきフローセンサのゼロ点を補正することで、フローセンサの経時変化に伴うゼロ点の変動に対する補正が適正となる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プロパンガス用のガスメータ、自動車の空気吸入量制御等に用いられて流量を測定するためのフローセンサ出力制御方法、特に、フローセンサとフルイディックセンサとを併用する複合流量計におけるフローセンサ出力制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、この種の流量計としてはフルイディックセンサが用いられているが、フルイディックセンサの場合、低流量域では感度が急激に低下し、満足に流量を測定できない欠点がある。そこで、フルイディックセンサを用いるが、この他、低流量域まで測定可能な異なる検出方式のフローセンサ、例えば、感熱式のフローセンサを併用することで、低流量域から高流量域まで測定可能とした複合流量計が各種提案されている。
【0003】ここに、例えば、プロパンガス用ガス流量計に関しては、流量L/H(Lは、リットルを表す)に応じて、■ 0〔L/H〕;出力しないこと■ 3〔L/H〕;流れていることを検知できること■ 125〜250〔L/H〕;公差±3%■250〜2500〔L/H〕;公差±1.5%のような精度規格が設けられている。一般に、流量ゼロ、即ち、0〔L/H〕ではガス流量計、特にフローセンサが出力しないために、不感帯が設けられている。この不感帯としては、一般に、ガス漏れ検知の3〔L/H〕を考慮して中間値の1.5〔L/H〕が用いられ、フローセンサ出力が1.5〔L/H〕以下の場合にはガス流量計は流量0〔L/H〕なる出力を出すように設定されている。また、経時変化に対しては10年間で±2%以下であるという規格もある。
【0004】このような精度規格を考慮し、規格を満たすためにフローセンサ出力に関して各種の補正方法が提案されている。
【0005】第1に、特開平3−264821号公報によれば、例えば125〜2500〔L/H〕の高流量域側をフルイディックセンサにより計測し、0〜150〔L/H〕の低流量域側をフローセンサにより計測する複合ガス流量計において、両者の計測範囲が重複する範囲(125〜150〔L/H〕)におけるフルイディックセンサの出力でフローセンサの出力を校正する補正方法が開示されている。
【0006】第2に、特開平4−208818号公報によれば、不感帯を規定する閾値以下のフローセンサ出力値をゼロ点と見做して一律にゼロ点を補正する方法が開示されている。即ち、許容し得るシフト量の絶対値の最大値を閾値に設定し、フローセンサ出力の絶対値が閾値以下の場合に限ってその出力を仮想的にフローセンサのゼロ点と見做すように補正する方法である。
【0007】第3に、特開平8−271307号公報によれば、複合流量計において、所定時間毎にフローセンサのゼロ点補正を行うのが適切かどうかを判断し、適切な時期であればフローセンサ出力の絶対値を計測し、その絶対値の標準偏差を求め、標準偏差に基づきフローセンサのゼロ点を補正する方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところが、第1の特開平3−264821号公報方式の場合、以下のような不具合がある。
【0009】まず、ガス流量範囲(使用量)は使用者(ガス需要者)の都合によって決まる恣意的な要素であり、校正可能な範囲の流量が発生する保証はない。従って、必要期間毎にフローセンサの出力が校正される保証もないものとなる。
【0010】また、フローセンサを強制的に経時変化させてその出力変化を調べたところ、図2に示すように、経時変化の初期ではセンサ出力のシフトのみが起こり(傾きは変わらず、全体的に移動する)、経時変化が大きくなるとセンサ出力のシフトに伴い傾きの変化が生ずることが判明したものである。ここに、フローセンサの強制的な経時変化の手法は、フローセンサ中に含まれる発熱抵抗体(ヒータ)の温度上昇によるものとした。流量〔L/H〕を示す横軸をx軸、センサ出力を示す縦軸をy軸とすると、初期出力y0 はy0 =0.0628x+3.2524なるセンサ出力特性を示したが、経時変化の初期時である強制経時変化1後出力y1 はy1 =0.0628x+2.9154となり、経時変化の大きい強制経時変化2後出力y2 はy2 =0.0616x+5.5495となったものである。即ち、初期出力y0 と強制経時変化1後出力y1 とでは傾きは変化せず、切片のみが変化(出力に平行にシフト)している。一方、初期出力y0 に対して強制経時変化出力y2 は、傾き及び切片の両方が変化している。このように、経時変化の初期には出力特性のシフトのみが起こり、経時変化が進むに従ってその出力特性の傾きも変化するようになる。
【0011】ここに、第1の特開平3−264821号公報方式の場合、校正流量範囲(125〜150〔L/H〕)に関して規定されている公差は±3%であり、例えば、125〔L/H〕の場合の流量の公差は±3.75〔L/H〕となり、これは、ゼロ流量時の不感帯の範囲(1.5〔L/H〕以下)を超えてしまう。従って、第1の特開平3−264821号公報方式によって出力特性のシフトの補正を行うことはできない。また、傾きの校正を行うのであれば、ゼロ点の校正は行われなくなり、結局、フローセンサの経時変化に対応することができない。従って、特開平3−264821号公報方式によってフローセンサの経時変化を校正することはできない。
【0012】また、第2の特開平4−208818号公報方式や第3の特開平8−271307号公報方式の場合には、以下のような不具合がある。
【0013】まず、フローセンサの低流量域でのセンサ出力のばらつきを測定したところ、図3に示すように流量0〔L/H〕時のばらつきの大きいことが判明したものである。この原因は、感熱式フローセンサ中のヒータ部の蓄熱やガスの対流によるものと考えられる。ちなみに、この測定は、幅5mm、長さ25mmの流路を有してこの流路の上面にフローセンサを設置して空気流量に関するセンサ出力を測ったもので、横軸は流量〔L/H〕を示し、縦軸は設定流量からのずれ〔L/H〕を示している。このような状況下に、特開平4−208818号公報方式によりゼロ点補正を行うと、例えば、図3中に示す流量0〔L/H〕時のばらつきの最低点の出力を新たなゼロ点と補正してしまう可能性がある。このような補正直後に、例えば、図3中に示す流量0〔L/H〕時のばらつきの最高点が発生した場合には、実際の流量が0〔L/H〕であるにも関わらず、ガスメータとしては或る流量を出力してしまう。このような事情は、特開平8−271307号公報方式による場合にも基本的には同様である。ここに、ガスメータの場合には、ガスメータの出力に基づきガス料金を徴収するので、流量0〔L/H〕の状態で出力が出るということは、致命的な欠点となる。即ち、プロパンガス用ガス流量計に要求される精度規格等によれば、フローセンサ出力のゼロ点の補正が重要であることがわかるが、図3に示すような流量0〔L/H〕に対するセンサ出力のばらつきが大きい点を考えると、不感帯にある任意の点を新たなゼロ点として補正することは適正でない。
【0014】そこで、本発明は、フローセンサの経時変化に伴い生ずるセンサ出力の変動を適正に校正し得るように、そのゼロ点の補正等を適正に行うことができるフローセンサ出力補正方法を提供することを目的とする。
【0015】より詳細には、まず、経時変化の初期時に生ずるフローセンサ出力のシフトの校正を適正に行うことができ、さらには経時変化の大きくなった時点で生ずるフローセンサ出力のシフトと傾きの校正を適正に行うことができるフローセンサ出力制御方法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、許容し得るシフト量の絶対値の最大値を閾値に設定し、センサ出力の絶対値が前記閾値以下の場合には流量ゼロと判定するフローセンサにおいて、前記フローセンサが前記閾値以上の流量を検出していた状態から前記閾値以下になった後のセンサ出力に基づき前記フローセンサのゼロ点を補正するようにした。従って、センサ出力の絶対値が閾値以下なる不感帯内にあっても必ずしもゼロ点の補正には適さないが、流体が現実に流れてフローセンサが閾値以上の流量を検出していた状態から流れなくなって閾値以下になった場合にはそのセンサ出力は或る程度安定していることを見出し、この時点以降のセンサ出力に基づきゼロ点を補正するので、フローセンサの経時変化に伴うゼロ点の変動に対して適正なゼロ点の補正を行える。
【0017】この場合、一旦流体が流れていた後で流量が0になった場合のセンサ出力の安定の仕方、特に、安定時間の様子は、流路形状、センサ取付位置、流体の種類、センサの駆動条件等の各種条件によって異なる。従って、ゼロ点の補正は、これらの条件に応じて適宜行えばよい。例えば、■ 請求項2記載の発明のように、センサ出力が閾値以下になった直後から一定時間内におけるセンサ出力の絶対値の最小値を新たなゼロ点とする補正■ 請求項3記載の発明のように、センサ出力が閾値以下になった直後から一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点とする補正■ 請求項4記載の発明のように、センサ出力が閾値以下になって一定時間経過時点から一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点とする補正■ 請求項5記載の発明のように、センサ出力が閾値以下になってセンサ出力の絶対値の最小値が出力された時点から一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点とする補正等がある。
【0018】また、請求項6記載の発明は、請求項1ないし5の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法によるゼロ点の補正量に従いセンサ出力をシフト校正するようにした。従って、フローセンサの経時変化の初期時におけるセンサ出力のシフト変動が適正に補正される。即ち、フローセンサの経時変化の初期時において傾きは変わらずセンサ出力がシフトする変動に対して、ゼロ点の変動分だけセンサ出力をシフトさせることにより、フローセンサの測定範囲全域に渡る適正な補正が行われる。
【0019】請求項7記載の発明は、所定流量以下の低流量域をフローセンサにより測定し、前記所定流量以下の流量域の一部を重複領域として含む高流量域をフルイディックセンサにより測定する複合流量計において、前記重複領域の前記フローセンサ出力を前記フルイディックセンサ出力に基づき校正し、前記フローセンサのゼロ点を請求項1ないし6の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法で補正するようにした。従って、フローセンサの経時変化が大きくなりセンサ出力がシフトだけでなく傾きにも変動が生じた場合には、シフトの補正は前述したようなゼロ点の補正に伴う補正により行い、傾きの補正は高流量域用のフルイディックセンサの出力に基づき校正することで、フローセンサの測定範囲のゼロ流量と最大流量との2点で適正に補正することができる。
【0020】請求項8記載の発明は、使用開始からの経過時間を管理する経時情報管理手段を備え、使用開始からの経過時間が所定の時間を超えるまでは請求項1ないし6の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法によりフローセンサ出力を補正し、使用開始からの経過時間が所定の時間を超えた後は請求項7記載のフローセンサ出力補正方法によりフローセンサ出力を補正するようにした。従って、フローセンサの経時変化の進行状況は、フローセンサの特性や駆動条件によって大きく異なり、使用開始から所定の時間が経過するまではセンサ出力のシフトのみ起こるので、この期間中には請求項1ないし6の何れか一記載の補正方法によるゼロ点補正及びシフト補正で適正に対処される。一方、使用開始から所定の時間を超える段階になるとセンサ出力のシフトだけでなく傾きの変動も生ずるが、請求項7記載の補正方法による補正で適正に対処される。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の一実施の形態を図1及び図2を参照して説明する。本実施の形態は、特に図示はしないが、フルイディックセンサと感熱式フローセンサとを併用する周知構造の複合流量計であって、プロパンガスの流量を計測する流量計中のフローセンサ出力補正方法として適用されている。ここに、例えば特開平3−264821号公報の場合と同様に、所定流量として150〔L/H〕が設定され、所定流量以下の0〜150〔L/H〕の低流量域についてはフローセンサにより計測し、125〜2500〔L/H〕の高流量域をフルイディックセンサにより計測するように設定されている。従って、125〜150〔L/H〕の流量域は両センサに対する重複領域とされている。また、本実施の形態では、前述したセンサに要求される精度規格に従い、許容し得るシフト量の絶対値の最大値が閾値に設定されて、センサ出力の絶対値がこの閾値以下の場合には流量ゼロと判定するように不感帯が設定されている。具体的には、1.5〔L/H〕以下の流量では複合流量計としての出力が0となるように設定されている。
【0022】このような通常の複合流量計なる構造の下、本実施の形態では、フローセンサの経時変化によって生ずるセンサ出力の変動、例えば、ゼロ点の変動を補正する方法として、センサ出力を常に監視し、一旦、フローセンサによって閾値よりも大きな或る程度の流量出力が検出された後で、閾値以下になるようなセンサ出力が検出された場合には、このような履歴条件下に閾値以下になったセンサ出力に基づきフローセンサのゼロ点を新たなゼロ点に補正する方法とされている。
【0023】これは、フローセンサのセンサ出力の0点が安定する状態を考察したところ、図1(a)に示すように、ガスが流れていた状態から流れなくなった時点での0点が安定していることが見出されたことを利用したものである。この実験例は、図3の場合と同様に、幅5mm、長さ25mmの流路を有してこの流路の上面にフローセンサを設置して空気流量に関するセンサ出力を測ったもので、時間がマイナスの時点では100〔L/H〕の流量で空気を流し、時間0のタイミングでバルブを閉じてガス(空気)を止めた例を示す。横軸は経過時間〔sec〕 を示し、縦軸はフローセンサの出力〔L/H〕を示している。図1(b)は縦軸のスケールを変えて出力の変化の様子を拡大して示している。
【0024】この実験例では、バルブを閉じた後(時間0)、流れていたガスの影響が約30秒でなくなり、安定したセンサ出力を示したものである。このセンサ出力の安定状態は約250秒間続き、その後、次第に不安定な状態に移行しているのがわかる。
【0025】従って、本実施の形態においては、フローセンサのセンサ出力が閾値以下になった直後(約30秒経過時点)から一定時間(約250秒が経過するまでの間)内における適切なセンサ出力値、例えば、この間のセンサ出力値の最小値Aを新たなゼロ点としてフローセンサのゼロ点の補正を行うことにより、適正なゼロ点の補正となる。
【0026】或いは、30〜250秒なる一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点としてフローセンサのゼロ点の補正を行うようにしても、適正なゼロ点の補正となる。さらには、より安定した領域を対象とするため、例えば、センサ出力が閾値以下になった直後(約30秒経過後)からさらに一定時間が経過した時点(約100秒経過時点)から一定時間(約250秒が経過するまでの間)内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点としてフローセンサのゼロ点の補正を行うようにしても、適正なゼロ点の補正となる。或いは、センサ出力が閾値以下になってからセンサ出力の最小値(絶対値)Aが検出された時点(約140秒)から一定時間(約250秒が経過するまでの間)内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点としてフローセンサのゼロ点の補正を行うようにしても、適正なゼロ点の補正となる。要は、センサ出力の安定時間の様子は、流路形状、センサ取付位置、適用ガスの種類、センサ駆動条件等の各種条件によって異なるので、各種条件に応じて最も安定した特性が得られる部分のセンサ出力をに基づきゼロ点を補正すればよい。
【0027】また、フローセンサのセンサ出力自体は、このようなゼロ点の補正に伴い、そのゼロ点の補正量(以前のゼロ点に対する新たなゼロ点への補正量)分が全体的にシフトするように校正される。即ち、フローセンサの経時変化の初期時において傾きは変わらずセンサ出力がシフトする変動に対して、ゼロ点の補正量分だけセンサ出力を全体的にシフトさせることにより、フローセンサの測定範囲全域に渡る適正な補正が行われる。
【0028】ここに、フローセンサの経時変化の進行状況は、フローセンサの特性や駆動条件等によって大きく異なり、経時変化の小さい駆動方法をとることができるフローセンサないしは複合流量計の場合であれば、上記のようなゼロ点の補正に伴うセンサ出力の全体的なシフト補正のみで10年間の精度規格(公差±2%以下)を満足し得る。
【0029】一方、センサ出力を大きくとるためにはフローセンサの発熱抵抗体(ヒータ)の駆動温度を高くする必要があり、このような駆動方法の場合には、フローセンサの経時変化が加速される。このような状況下では、センサ出力の傾きの変動も生ずるので、上記のようなセンサ出力の全体的なシフト補正のみでは不十分であり、フルイディックセンサの出力を利用した補正も必要となる。即ち、フルイディックセンサとフローセンサとの測定の重複領域125〜150〔L/H〕におけるフローセンサ出力をフルイディックセンサ出力に基づき校正するとともに、フローセンサのゼロ点を前述した方法で補正することが必要となる。このようなフローセンサの測定範囲の最小点と最大点との2点での校正により、センサ出力のシフトと傾きとに対する校正が適正に行われる。
【0030】なお、より実際的な補正処理を考えた場合には、当該複合流量計を新たに設置したときに、その使用開始からの経過時間を管理するタイマ等の経時情報管理手段を用意しておき、この経時情報管理手段により管理される使用開始からの経過時間が予め設定された所定の時間を超えるまでの経時変化の初期時にはフローセンサのゼロ点の補正及びセンサ出力のシフト補正のみを行うようにし、使用開始からの経過時間が所定の時間を超える段階となった時点からゼロ点の補正とフルイディックセンサの出力を利用したフローセンサ出力の傾き補正とを同じに行うようにすることで、経時情報管理手段による管理の下に、自動的に補正方法を切り換えるのがよい。
【0031】なお、本実施の形態は、ガスメータ、特にプロパンガス用流量計への適用例として説明したが、ガスメータに限らず、要は、フローセンサを用いて流体、特に気体の流量を測定するものに関しては同様に適用し得る。
【0032】
【発明の効果】請求項1ないし5記載の発明によれば、許容し得るシフト量の絶対値の最大値を閾値に設定し、センサ出力の絶対値が閾値以下の場合には流量ゼロと判定するフローセンサにおいて、流体が現実に流れてフローセンサが閾値以上の流量を検出していた状態から流れなくなって閾値以下になった場合にはそのセンサ出力が或る程度安定した特性を示す点に着目し、フローセンサが閾値以上の流量を検出していた状態から閾値以下になった後のセンサ出力に基づきフローセンサのゼロ点を補正するようにしたので、フローセンサの経時変化に伴うゼロ点の変動に対する補正を適正に行うことができる。
【0033】請求項6記載の発明によれば、請求項1ないし5の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法によるゼロ点の補正量に従いセンサ出力をシフト校正するようにしたので、フローセンサの経時変化の初期時における傾きは変わらずセンサ出力がシフトする変動に対して、ゼロ点の補正量分だけセンサ出力をシフトさせることにより、フローセンサの測定範囲全域に渡る適正な補正を行うことができる。
【0034】請求項7記載の発明によれば、所定流量以下の低流量域をフローセンサにより測定し、所定流量以下の流量域の一部を重複領域として含む高流量域をフルイディックセンサにより測定する複合流量計において、重複領域のフローセンサ出力をフルイディックセンサ出力に基づき校正し、フローセンサのゼロ点を請求項1ないし6の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法で補正するようにしたので、フローセンサの経時変化が大きくなりセンサ出力がシフトだけでなく傾きにも変動が生じた場合には、シフトの補正はゼロ点の補正を利用して行い、傾きの補正は高流量域用のフルイディックセンサの出力に基づき校正することで、フローセンサの測定範囲のゼロ流量と最大流量との2点で適正に補正することができる。
【0035】請求項8記載の発明によれば、使用開始からの経過時間を管理する経時情報管理手段を備え、使用開始からの経過時間が所定の時間を超えるまでは請求項1ないし6の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法によりフローセンサ出力を補正し、使用開始からの経過時間が所定の時間を超えた後は請求項7記載のフローセンサ出力補正方法によりフローセンサ出力を補正するようにしたので、経時変化の初期時には請求項1ないし6の何れか一記載の補正方法によるゼロ点補正及びシフト補正で適正に対処でき、経時変化の大きくなる段階ではセンサ出力のシフトだけでなく傾きの変動も生ずるが、請求項7記載の補正方法による補正で適正に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態における流量0になった後の出力安定性を説明するための特性図である。
【図2】経時変化に伴うセンサ出力の変化の様子を示す特性図である。
【図3】低流量域における出力のばらつきの様子を示す特性図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 許容し得るシフト量の絶対値の最大値を閾値に設定し、センサ出力の絶対値が前記閾値以下の場合には流量ゼロと判定するフローセンサにおいて、前記フローセンサが前記閾値以上の流量を検出していた状態から前記閾値以下になった後のセンサ出力に基づき前記フローセンサのゼロ点を補正するようにしたことを特徴とするフローセンサ出力補正方法。
【請求項2】 ゼロ点の補正は、センサ出力が閾値以下になった直後から一定時間内におけるセンサ出力の絶対値の最小値を新たなゼロ点とする補正であることを特徴とする請求項1記載のフローセンサ出力補正方法。
【請求項3】 ゼロ点の補正は、センサ出力が閾値以下になった直後から一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点とする補正であることを特徴とする請求項1記載のフローセンサ出力補正方法。
【請求項4】 ゼロ点の補正は、センサ出力が閾値以下になって一定時間経過時点から一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点とする補正であることを特徴とする請求項1記載のフローセンサ出力補正方法。
【請求項5】 ゼロ点の補正は、センサ出力が閾値以下になってセンサ出力の絶対値の最小値が出力された時点から一定時間内におけるセンサ出力の平均値を新たなゼロ点とする補正であることを特徴とする請求項1記載のフローセンサ出力補正方法。
【請求項6】 ゼロ点の補正量に従いセンサ出力をシフト校正するようにしたことを特徴とする請求項1ないし5の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法。
【請求項7】 所定流量以下の低流量域をフローセンサにより測定し、前記所定流量以下の流量域の一部を重複領域として含む高流量域をフルイディックセンサにより測定する複合流量計において、前記重複領域の前記フローセンサ出力を前記フルイディックセンサ出力に基づき校正し、前記フローセンサのゼロ点を請求項1ないし6の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法で補正するようにしたことを特徴とするフローセンサ出力補正方法。
【請求項8】 使用開始からの経過時間を管理する経時情報管理手段を備え、使用開始からの経過時間が所定の時間を超えるまでは請求項1ないし6の何れか一記載のフローセンサ出力補正方法によりフローセンサ出力を補正し、使用開始からの経過時間が所定の時間を超えた後は請求項7記載のフローセンサ出力補正方法によりフローセンサ出力を補正するようにしたことを特徴とするフローセンサ出力補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開平10−300548
【公開日】平成10年(1998)11月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−108716
【出願日】平成9年(1997)4月25日
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000115739)リコー精器株式会社 (2)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)