説明

ブリケットロール、その製造方法及びブリケットマシン

【課題】粉粒体の付着が防止されるブリケットロールとその製造方法、並びにこのブリケットロールを有するブリケットマシンを提供する。
【解決手段】ブリケットマシンは、同期して回転駆動される1対のブリケットロール1を備えている。各ブリケットロール1の周面にはポケット2が設けられている。このブリケットロール1は、ロール本体3と、該ロール本体3の周面にポケット2の内面も含めて形成されたサーメットの溶射層4とで構成されている。サーメットはタングステンカーバイド(WC)を含む高硬度のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒状の原料を圧縮成形してブリケットとするためのブリケットロールとその製造方法、並びにこのブリケットロールを有するブリケットマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
1対のブリケットロールを有するブリケットマシンを用いて各種の粉粒体を圧縮成形して成形物(ブリケット)とすることは周知である(例えば、特開2003−201157号、特開2004−35950号)。
【特許文献1】特開2003−201157号公報
【特許文献2】特開2004−35950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のブリケットマシンにあっては、粉粒体の種類によっては該粉粒体がブリケットロールの表面に付着してしまい、安定してブリケットを製造できないことがある。
【0004】
本発明は、粉粒体の付着が防止されるブリケットロールとその製造方法、並びにこのブリケットロールを有するブリケットマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のブリケットロールは、外周面にポケットを有し、粉粒状の原料を圧縮成形してブリケットとするためのブリケットロールにおいて、該外周面に高硬度材を溶射し、研摩してなることを特徴とするものである。
【0006】
この高硬度材としてはサーメットが好適であり、サーメットとしてはタングステンカーバイド(WC)あるいはさらにクロムカーバイド(Cr)を含むものが好適である。
【0007】
本発明においては、高硬度材を溶射後、形成された溶射層の表面を表面粗さRaが3μm以下となるように研磨することが好ましい。
【0008】
本発明のブリケットマシンは、かかる本発明のブリケットロールを有することを特徴とするものである。
【0009】
本発明のブリケットロールの製造方法は、外周面にポケットを有し、粉粒状の原料を圧縮成形してブリケットとするためのブリケットロールの製造方法において、外周面にポケットが設けられたロール本体の該外周面に高硬度材を溶射して溶射層を形成する工程と、該溶射層の表面を研摩する工程とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明者がブリケットロール表面への原料粉粒体の付着の原因について検討したところ、ブリケットの成形を継続しているとポケットの縁部に磨耗や欠け(チッピング)が発生し、この磨耗や欠けの部分に原料粉粒体が付着し、これを起点としてブリケットロール表面の広い範囲に原料が付着することが認められた。
【0011】
本発明のブリケットロールは、外周面に高硬度材を溶射して研摩してあるため、原料の成形を継続してもポケット縁部における磨耗や欠けが防止され、長期にわたって原料が付着することなく、安定してブリケットの成形を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0013】
図1(a)はブリケットマシンの模式図、図1(b)は実施の形態に係るブリケットロールの外周面の断面図、図2は別の実施の形態に係るブリケットロールの外周面の断面図である。
【0014】
このブリケットマシンは、同期して回転駆動される1対のブリケットロール(以下、単にロールと称することがある。)1を備えており、各ロール1の周面には多数のポケット2が設けられている。このロール1は、ステンレス鋼などの鋼材よりなるロール本体3と、該ロール本体3の周面にポケット2の内面も含めて形成されたサーメットの溶射層4とで構成されている。なお、ポケット2の内面は、図1(b)においては底部が平坦面となっているが、図2の如く球面であってもよい。また、ポケット2は図示以外の形状であってもよい。
【0015】
このサーメットはタングステンカーバイド(WC)、クロムカーバイド(Cr)等の金属炭化物を含む高硬度のものである。一般的に知られているものとしては、「JIS H8306」に規定されるサーメット溶射皮膜が挙げられる。
【0016】
この溶射を行うに際し、ロール本体3の外周面をブラスト処理し、表面の粗度を高めてから溶射することにより、溶射層4とロール本体3との付着力を高めることができる。
【0017】
この溶射を行った後、研摩して溶射層4の表面を平滑にする。この研摩は例えばダイヤモンド砥粒を用いて行うことができる。研摩は、表面粗さRが3μm以下特に1μm以下となるように行うのが好ましい。
【0018】
上記のサーメットとしては、硬質粒子としてWCあるいはさらにCrを含むものが好ましい。バインダーとしてはNi,Co,Cr,Ni−Cr等を用いることができる。
【0019】
好適なサーメット組成としては、
WC:60〜80重量部、特に70〜75重量部
CrC:10〜30重量部、特に15〜25重量部
Ni:5〜15重量部、特に5〜10重量部
が挙げられる。なお、WCのみを硬質粒子として含む
WC 80〜90重量部
Co,Cr,Niの少なくとも1種 残部
(ただし、Niは2重量部以下、Crは5重量部以下が好ましい。)なる組成のサーメットも用いることができる。
【0020】
溶射は、溶射層4の厚さがポケット以外のロール周面において50〜500μm特に100〜300μm程度となるように行うのが好ましい。
【実施例】
【0021】
実施例1,比較例1〜4
直径160mm、周面のポケットの数4032個、ポケットの開口径4.8mm、ポケット深さ1.2mmのロールを試作し、入浴剤組成物のブリケット成形を行った。各ロールの構成材料の詳細は次の通りである。
実施例1:SUS420よりなるロール本体の周面にWC73重量部、CrC20重量部、Ni7重量部なる組成のサーメットを厚さ150μmに溶射し、表面粗さR1μmに研摩したもの。
比較例1:SUS304よりなるロール。径、ポケットの数及び大きさは実施例1と同一。
比較例2:SUS329よりなるロール。径、ポケットの数及び大きさは実施例1と同一。
比較例3:SUS329よりなるロール本体の周面にSUS630を厚さ約5mm肉盛り溶接したロール。径、ポケットの数及び大きさは実施例1と同一。
比較例4:SUS420よりなるロール本体の周面にSUS630を厚さ約5mm肉盛り溶接したロール。径、ポケットの数及び大きさは実施例1と同一。
【0022】
入浴剤組成物の配合は次の通りである。
炭酸水素ナトリウム 35重量部
炭酸ナトリウム 20重量部
DL−リンゴ酸 30重量部
フマル酸 10重量部
カオリン 3重量部
ベントナイト 2重量部
【0023】
ロール間隙を0.25mmとし、この入浴剤組成物を540kg/Hの割合で供給し、ロール回転数を28rpmとして成形を行った。
【0024】
この結果、比較例1〜5ではいずれも20時間以内に入浴剤組成物がロールに付着したのに対し、実施例1では10日以上、全く支障なく連続して製造を行うことができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(a)図はブリケットマシンの模式図、(b)図は実施の形態に係るブリケットロールの外周面の断面図である。
【図2】別の実施の形態に係るブリケットロールの外周面の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 ロール
2 ポケット
3 ロール本体
4 溶射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にポケットを有し、粉粒状の原料を圧縮成形してブリケットとするためのブリケットロールにおいて、
該外周面に高硬度材を溶射し、研摩してなることを特徴とするブリケットロール。
【請求項2】
請求項1において、該高硬度材はサーメットよりなることを特徴とするブリケットロール。
【請求項3】
請求項2において、該サーメットはタングステンカーバイドを含むことを特徴とするブリケットロール。
【請求項4】
請求項2において、該サーメットはタングステンカーバイド及びクロムカーバイドを含むことを特徴とするブリケットロール。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、前記高硬度材を溶射後、形成された溶射層の表面を表面粗さRaが3μm以下となるように研磨してなることを特徴とするブリケットロール。
【請求項6】
1対のブリケットロールにより粉粒状の原料を圧縮成形してブリケットとするブリケットマシンにおいて、
該ブリケットロールが請求項1ないし5のいずれか1項に記載のブリケットロールであることを特徴とするブリケットマシン。
【請求項7】
外周面にポケットを有し、粉粒状の原料を圧縮成形してブリケットとするためのブリケットロールの製造方法において、
外周面にポケットが設けられたロール本体の該外周面に高硬度材を溶射して溶射層を形成する工程と、
該溶射層の表面を研摩する工程と
を有することを特徴とするブリケットロールの製造方法。
【請求項8】
請求項7において、前記溶射層の表面を表面粗さRaが3μm以下となるように研磨することを特徴とするブリケットロールの製造方法。

【図1】
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【図2】
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