説明

ブレース付き壁パネルの脚部構造

【課題】 ブレース芯の偏芯に起因する柱脚部への負荷を無くすことができ、ブレース接合板の壁パネル建起こし時の変形防止、製作精度の向上が可能なブレース付き壁パネルの脚部構造を提供する。
【解決手段】 ブレース付き壁パネル1Aは、パネル外周フレーム2の縦フレーム材5が建物の柱10に沿って配置されて柱10に接合され、下辺フレーム材7が柱10の柱脚プレート11よりも上方に位置する。ブレース材3の下端はパネル外周フレーム2の下隅部付近に位置する。パネル外周フレーム下辺の柱側端部から下方に延びて、柱脚側面から張り出したパネル取合板13に重ねてボルト接合される柱取合兼ブレース接合板14を設ける。ブレース材3の下端を、ブレース芯が柱芯に柱脚プレート11の高さ位置で交わるように、柱取合兼ブレース接合板14に接合する。柱取合兼ブレース接合板14に、パネル建起こし時補強用の建方用アングル材15を重ねて接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、軽量鉄骨造や鉄骨造のパネル工法建物におけるブレース付き壁パネルの脚部構造、特に無柱側の脚部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6は、この種のブレース付き壁パネルの脚部構造の従来例を示す。従来の脚部構造では、パネル外周フレーム22の下隅部から上方に張り出したブレース接合板34にブレース材23の下端を接合している。また、壁パネルのレベル調整用ボルト37を、パネル外周フレーム22の下辺フレーム材27に取付けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−91785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図6の例のように、パネル外周フレーム22の下隅部から上方に張り出したブレース接合板34にブレース材23の下端を接合した従来例の脚部構造では、同図に矢印で示すように、柱30の柱芯における柱脚プレート31よりも高い位置でブレース芯が交わることになる。つまり、ブレース材23の引付点Aが柱脚プレート31から偏芯した位置にあることになり、柱30の柱脚部に負荷がかかるという問題がある。
また、従来例の脚部構造では、壁パネルのレベル調整用ボルト37をパネル外周フレーム22の下辺フレーム材27に取付けているため、レベル調整用ボルト37が長くなりコストアップを招く。また、ブレース材23との干渉を避けるため、レベル調整用ボルト37の取付け位置が制限されるという問題もある。
【0005】
この発明の目的は、ブレース芯の柱脚プレートからの偏芯に起因する柱脚部への負荷を無くすことができるとともに、ブレース接合板の壁パネル建起こし時の変形防止、および製作精度の向上が可能なブレース付き壁パネルの脚部構造を提供することである。
この発明の他の目的は、壁パネルに取付けるレベル調整用ボルトのボルト長を短くできるブレース付き壁パネルの脚部構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明のブレース付き壁パネルの脚部構造は、両側辺の一対の縦フレーム材、上辺フレーム材、および下辺フレーム材により矩形に枠組みされたパネル外周フレームと、このパネル外周フレームの下隅部付近に下端が位置するブレース材とを有し、前記一対の縦フレーム材の両方または片方の縦フレーム材が、建物の柱に沿って配置されて前記柱に接合され、かつ前記下辺フレーム材が前記柱の柱脚プレートよりも上方に位置するブレース付き壁パネルにおいて、前記パネル外周フレームに、下辺における前記柱との接合側の端部から下方に延びて、前記柱の柱脚側面から張り出したパネル取合板に重ねてボルト接合される柱取合兼ブレース接合板を設け、前記ブレース材の下端を、ブレース芯が前記柱の柱芯に前記柱脚プレートの高さ位置で交わるように、前記柱取合兼ブレース接合板に接合し、かつこの柱取合兼ブレース接合板に、パネル建起こし時補強用の建方用アングル材を重ねて接合したことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、ブレース芯が柱芯に柱脚プレートの高さ位置で交わるので、従来例に見られたようなブレース芯の柱脚プレートからの偏芯に起因する柱脚部への負荷を無くすことができる。ブレース芯が柱芯に柱脚プレートの高さ位置で交わるようにした結果、ブレースを接合する柱取合兼ブレース接合板の下方への突出高さが高くなり、パネル建起こし時に、支点となる柱取合兼ブレース接合板に作用する外力が大きくなる。しかも、柱取合兼ブレース接合板に建方用アングル材を重ねて接合したため、壁パネルを建起こしする際に柱取合兼ブレース接合板が変形するのを防止でき、かつこの変形防止に加えて、柱取合兼ブレース接合板の製作精度を上げることが可能となる。
【0008】
この発明において、前記柱が設置された基礎または土台の上面に下端が接するレベル調整用ボルトを、前記建方用アングル材に調整ボルト取付部材を介して上下位置調整可能に設けても良い。
この構成の場合、パネル外周フレームの下辺フレーム材にレベル調整用ボルトを取付けていた従来例の場合に比べて、レベル調整用ボルトのボルト長を短くでき、それだけコストダウンが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
この発明のブレース付き壁パネルの脚部構造は、両側辺の一対の縦フレーム材、上辺フレーム材、および下辺フレーム材により矩形に枠組みされたパネル外周フレームと、このパネル外周フレームの下隅部付近に下端が位置するブレース材とを有し、前記一対の縦フレーム材の両方または片方の縦フレーム材が、建物の柱に沿って配置されて前記柱に接合され、かつ前記下辺フレーム材が前記柱の柱脚プレートよりも上方に位置するブレース付き壁パネルにおいて、前記パネル外周フレームに、下辺における前記柱との接合側の端部から下方に延びて、前記柱の柱脚側面から張り出したパネル取合板に重ねてボルト接合される柱取合兼ブレース接合板を設け、前記ブレース材の下端を、ブレース芯が前記柱の柱芯に前記柱脚プレートの高さ位置で交わるように、前記柱取合兼ブレース接合板に接合し、かつこの柱取合兼ブレース接合板に、パネル建起こし時補強用の建方用アングル材を重ねて接合したため、ブレース芯の柱脚プレートからの偏芯に起因する柱脚部への負荷を無くすことができるとともに、ブレース接合板の壁パネル建起こし時の変形防止、および製作精度の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の一実施形態にかかるブレース付き壁パネルの脚部構造を適用した建物の外壁構造の正面図である。
【図2】同外壁構造におけるブレース付き壁パネルの脚部構造を示す部分正面図である。
【図3】同脚部構造の斜視図である。
【図4】同脚部構造における壁パネル側の構成を正面側から見た部分拡大斜視図である。
【図5】同壁パネルの建方の説明図である。
【図6】従来例の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、この実施形態のブレース付き壁パネルの脚部構造を適用した建物の外壁構造の正面図を示す。ここでは、複数のブレース付き壁パネル1A,1Bを、建物の一つの外壁面における両端の柱10,10(一端の柱のみ図示)間に配置して外壁が構成される。ブレース付き壁パネル1A,1Bは、パネル外周フレーム2と、ブレース材3と、外装面材4(図5)とを有する。パネル外周フレーム2は、両側辺の一対の縦フレーム材5,5、上辺フレーム材6、および下辺フレーム材7により矩形に枠組みされる。ブレース材3は、その下端がパネル外周フレーム2の下隅部付近に位置するように配置される。
【0012】
同図において、外壁の端の柱10に隣接して配置されるブレース付き壁パネル1Aは無柱パネルとされ、前記一対の縦フレーム材5,5の両方が建物の柱10に沿って配置されて柱10に接合される。柱10は、その下端に設けられる柱脚プレート11を介して基礎12または土台の上面に設置される。下辺フレーム材7は、柱10の柱脚プレート11よりも上方に位置する。
【0013】
外壁の中間に位置するブレース付き壁パネル1Bは片柱パネルとされ、前記一対の縦フレーム材5,5の片方が柱10を兼ね、その縦フレーム材5の下端は下辺フレーム材7よりも下方に延び、その下端に設けられる柱脚プレート11を介して基礎12または土台の上面に設置される。無柱パネルであるブレース付き壁パネル1Aの片方の縦フレーム材5は、隣接する片柱パネルであるブレース付き壁パネル1Bの柱を兼ねる縦フレーム材5に沿って配置され、これに接合される。
【0014】
各ブレース付き壁パネル1A,1Bのパネル外周フレーム2における各フレーム材5,6,7は、溝形、リップ溝形、または角形鋼管等の形鋼からなる。ブレース材3は、平鋼または鋼棒からなる。
【0015】
ブレース付き壁パネル1A,1Bのパネル外周フレーム2には、図2〜図4に示すように、下辺における柱との接合側の端部から下方に延びて、柱取合兼用ブレース接合板14が設けられる。柱取合兼用ブレース接合板14は鋼板等からなり、下辺フレーム材7に、または下辺フレーム材7と縦フレーム材5の両方に、溶接等で接合される。ブレース材3の下端は、ブレース芯が柱10の柱芯に柱脚プレート11の高さ位置で交わるように、柱取合兼ブレース接合板14にボルトまたは溶接などにより接合される。柱取合兼用ブレース接合板14は、隣接する柱10の柱脚側面から張り出したパネル取合板13に重ねてボルト接合される。
【0016】
また、柱取合兼ブレース接合板14には、パネル建起こし時補強用の建方用アングル材15が、重ねて溶接などにより接合される。建方用アングル材15は、柱取合兼ブレース接合板14におけるブレース重ね側の面とは反対側の面に、両フランジのうちの片方のフランジが重ねて接合され、もう片方のフランジは柱取合兼ブレース接合板14の側辺に沿って突出するように配置される。建方用アングル材15の上端は、パネル外周フレーム2の下辺フレーム材7の下面に溶接等で接合される。
【0017】
図4に拡大して示すように、建方用アングル材15の突出側のフランジには、調整ボルト取付部材16を介して、レベル調整用ボルト17が上下位置調整可能に設けられる。調整ボルト取付部材16は、長ナット状の雌ねじ部材16aと、この雌ねじ部材16aを調整ボルト取付部材16に間隔を開けて接合する板状等の接合片16bとからなる。レベル調整用ボルト17は、雌ねじ部材16aに螺合するボルト本体17aと、このボルト本体17aの下端に回転自在に連結されてボルト外周に広がる着座部材17bとでなる。
【0018】
無柱パネルであるブレース付き壁パネル1Aの下部は、左右対象構造であり、左右両端とも、前記のように柱取合兼ブレース接合板14、建方用アングル材15、調整ボルト取付部材16、およびレベル調整用ボルト17が設けられる。
【0019】
図3に示すように、片柱パネルである中間位置のブレース付き壁パネル1Bでは、パネル外周フレーム2の柱兼用の縦フレーム材5における下フレーム材7よりも下側の箇所に、パネル内側に伸びてブレース接合板18が溶接等により接合されている。このブレース接合板18が設けられた隅に位置するブレース材3の下端は、ブレース接合板18に重ねてボルトや溶接等により接合される。
【0020】
上記構成のブレース付き壁パネルの脚部構造によると、ブレース芯が柱芯に柱脚プレート11の高さ位置で交わるようにしたため、従来例に見られたようなブレース芯の柱脚プレートからの偏芯に起因する柱脚部への負荷を無くすことができる。ブレース芯が柱芯に柱脚プレートの高さ位置で交わるようにした結果、ブレース3を接合する柱取合兼ブレース接合板14の下方への突出高さが高くなり、図5のように壁パネル1A(1B)を建起こしする際に、支点となる柱取合兼ブレース接合板14に作用する外力が大きくなる。しかし、柱取合兼ブレース接合板14には建方用アングル材15を重ねて接合したため、壁パネル1A(1B)を建起こしする際に柱取合兼ブレース接合板14が変形するのを防止することができる。建方用アングル材15の接合は、上記の変形防止だけでなく、柱取合兼ブレース接合板14の製作精度を上げることが容易となる。
【0021】
また、図4に示すように、前記建方用アングル材15には、調整ボルト取付部材15を介して、レベル調整用ボルト17が上下位置調整可能に設けられる。このように、レベル調整用ボルト17を、建方用アングル材15に調整ボルト取付部材16を介して上下位置調整可能に設けることにより、パネル外周フレームの下辺フレーム材にレベル調整用ボルトを取付けていた従来例の場合に比べて、レベル調整用ボルト17のボルト長を短くでき、それだけコストダウンが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1A,1B…ブレース付き壁パネル
2…パネル外周フレーム
3…ブレース材
5…縦フレーム材
6…上辺フレーム材
7…下辺フレーム材
10…柱
11…柱脚プレート
12…基礎
13…パネル取合板
14…柱取合兼用ブレース接合板
15…建方用アングル材
16…調整ボルト取付部材
17…レベル調整用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両側辺の一対の縦フレーム材、上辺フレーム材、および下辺フレーム材により矩形に枠組みされたパネル外周フレームと、このパネル外周フレームの下隅部付近に下端が位置するブレース材とを有し、前記一対の縦フレーム材の両方または片方の縦フレーム材が、建物の柱に沿って配置されて前記柱に接合され、かつ前記下辺フレーム材が前記柱の柱脚プレートよりも上方に位置するブレース付き壁パネルにおいて、
前記パネル外周フレームに、下辺における前記柱との接合側の端部から下方に延びて、前記柱の柱脚側面から張り出したパネル取合板に重ねてボルト接合される柱取合兼ブレース接合板を設け、前記ブレース材の下端を、ブレース芯が前記柱の柱芯に前記柱脚プレートの高さ位置で交わるように、前記柱取合兼ブレース接合板に接合し、かつこの柱取合兼ブレース接合板に、パネル建起こし時補強用の建方用アングル材を重ねて接合したことを特徴とするブレース付き壁パネルの脚部構造。
【請求項2】
請求項1において、前記柱が設置された基礎または土台の上面に下端が接するレベル調整用ボルトを、前記建方用アングル材に調整ボルト取付部材を介して上下位置調整可能に設けたブレース付き壁パネルの脚部構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−172330(P2012−172330A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33049(P2011−33049)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】