説明

ブーツ

【課題】できるだけ簡単に着脱でき、かつブーツ全体で足をしっかりサポートすることのできる緊締具を備えたブーツを提供することを目的とする。
【解決手段】一本のブーツ紐を有し、かつ、上側、中間、下側の3つの作用領域を有する緊締具を備えたことを最大の特徴点とする。中間作用領域が、ブーツを締めたり開いたりする際に、上側作用領域と下側作用領域の双方と機能的に直接連結している。従って既存のブーツとは異なり、2本の別々のブーツ紐ではなく1本のブーツ紐を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブーツに関する。
【背景技術】
【0002】
ブーツは、例えば登山、スキー、スノーボード等、様々なスポーツで用いられているが、ブーツは第一に、使用中に足の曲がる部分に食い込むことなく足をしっかりとサポートできなければならない。又、特にスキーやスノーボードの場合はこれらのスポーツ用具に使用者からの力が伝わるよう、脛部分も充分に固定されていなければならない。
【0003】
安定したサポートの他、ブーツはさらに、使用者が比較的手間をかけずに簡単に脱ぎ履きできるような緊締具を備えていなければならない。
【0004】
ドイツ実用新案登録第20,2004,019,082U1号明細書は、2本のブーツ紐から成る緊締具を開示している。一方のブーツ紐はブーツの脚部分を、もう一方のブーツ紐は足部分を締めるために使用されている。このため、足部分用のブーツ紐は一端がブーツに接着されている。足部分においては、ブーツ紐が、ブーツ舌片の両側に3つずつ設けられたガイドフックに通されている。この下側ブーツ紐は3つ目のガイドフックに通された後、その自由端がブーツ脚部に沿って上方へ案内され、握り部で終わっている。
脚部分用の上側ブーツ紐はブーツに結合され、ブーツ内を同様の方法で通されている。
【0005】
2本のブーツ紐は互いに独立して働くので、ブーツの脚部分にあたる第1上側締め領域は、ブーツの足部分にあたる第2下側締め領域とは独立して締めたり緩めたりすることができる。ブーツの足と脚の部分に別々の2つの締め領域を設けた結果、この2つの領域の境界部分、すなわち足の曲がる部分では、どうしても緊締力の働かない部分が生じてしまう。
【0006】
そのため、足の曲がる部分で張力が不十分な状態が続いて、ブーツの安定したサポートが失われてしまう危険がある。さらにまた、ブーツを脱ぐ際には上側と下側の両方の領域で紐を緩めなければならない。2本のブーツ紐は互いに独立して働くため、上側の締め領域を緩めても、下側の領域で足がしっかり固定されているために、これだけでは簡単にブーツを脱ぐことはできない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、できるだけ簡単に着脱でき、かつブーツ全体で足をしっかりサポートすることのできる緊締具を備えたブーツを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は特許請求の範囲第1項に記載の特徴点を有するブーツを提供し、上記目的を達成する。本発明の様々な利点を有するブーツの具体的構成や実施形態は、従属項に記載の通りである。
【0009】
すなわち、本発明のブーツは、一本のブーツ紐を有し、かつ、上側、中間、下側の3つの作用領域を有する緊締具を備えたことを最大の特徴点とする。中間作用領域が、ブーツを締めたり開いたりする際に、上側作用領域と下側作用領域の双方と機能的に直接連結している。従って既存のブーツとは異なり、本発明のブーツは2本の別々のブーツ紐ではなく1本のブーツ紐を備える。1本のブーツ紐と3つの領域によって、足の曲がる部分、すなわち中間作用領域において、ブーツを締めたときに充分な張力がかかり、曲がる部分も含めて足をブーツ内でしっかりとサポートすることができる。また、作用領域が機能的に連結されていることから、一本のブーツ紐の上側作用領域を緩めることで中間作用領域と、また、少なくともある程度は、下側作用領域をも緩めることができるので、緊締具の上側作用領域を緩めるだけでブーツを簡単に脱ぐことができる。さらに、中間作用領域が隣接する2つの領域と機能的に連結されていることから、張力均一化領域としても働くので、ブーツの緊締具を均一に締めることができる。その結果、ブーツの履き心地とサポート力をともに高めることができる。
【0010】
本発明の特に好ましい実施形態では、上側と下側の作用領域のそれぞれに、ロック付き引き締め具が与えられている。両作用領域に割り当てられたこの引き締め具によって、前足部分と脚部分のそれぞれにおいて別々に張力を調整することができて好都合であり、中間作用領域が張力均一化領域として働くので、ブーツ全体で圧力を均一に分布させることができる。特に、この引き締め具によってブーツ内の圧力を徐々に高めることができ、従来のブーツのように面倒な緊締具を特に設ける必要もなく、まず前足部分を、次いで脚部分で紐を締めることができる。中間作用領域(張力均一化領域)によって、敏感な足の曲がる部分にも圧力が及ぶため、この部分にブーツが食い込むことがない。ブーツの脱着のし易さに関しては、このような実施形態によれば、上側作用領域が中間及び下側作用領域と機能的に連結しているため、上側作用領域用の引き締め具を緩めるだけで、緊締具全体を一つの握り部のみによって緩めることができる。つまり、緊締具の上側作用領域を緩めることで、連続して中間及び下側作用領域も緩めることができる。
また、引き締め具をロックすれば、上側及び下側作用領域の紐の締め具合を別個に設定することができる。
【0011】
好ましくは、上側及び下側作用領域のそれぞれが複数のガイドフックを備え、引き締め具が2つのガイドフック、特に、隣接する2つのガイドフック間に位置しているとよい。このような引き締め具構成により、それぞれのガイドフックから緊締具の両方向に向けて引き締め具からの力が伝達されるので、力の伝達が特に効率的となる。この結果、緊締具を上側及び下側作用領域において比較的小さな力で締めることができる。
【0012】
引き締め具が、ブーツ紐から延びる一部分であって、ブーツの開閉用に操作しやすい輪部の形で設けられていると特に好都合である。すなわち、ガイドフック領域に設けられたブーツ紐のこの輪部はガイドフックに接触することなく延ばされて、ブーツの開閉用に操作できるようになっている。緊締具を締めるために、輪部分はロック可能となっている(ロック付き引き締め具)。輪部分はガイドフックに掛けられることなく延ばされているので、輪のある領域ではガイドフックを設ける必要がない。この実施形態では、引き締め具が既にあるブーツ紐の一部から成るため、その構成が特に簡単である。さらにこの実施形態では、引き締め具からブーツ紐の残りの部分に力をかけるとき、延長輪部から直接、隣接するガイドフックに掛けられたブーツ紐のその他部分に力が伝わるため、特に効果的に行われる。
【0013】
ブーツ紐の輪部分はブーツ内及び/又はブーツ上においてガイドを通して設けられ、その自由端を用いて引き締め具を操作することができる。すなわち、ブーツ紐の輪部分が、例えばスノーボードで走行中に枝などの物体に絡まったりすることがない。
【0014】
ブーツ紐の輪部分の自由端は、この輪部分上を自由に移動可能な握り部に通されており、これによりブーツの脱着をさらに容易にすることができる。
【0015】
引き締め具をロックするために、ブーツの特に脚部分に接着されている紐ロック部にブーツ紐の輪部分を通してもよい。
ブーツ紐の端部をブーツに接合すれば、特に簡単にこれらを定位置に固定させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の具体的な実施形態につき、添付の図面を参照して詳細に述べる。図1は、本発明の一実施形態におけるブーツの緊締具構成を示す簡略図である。
【0017】
図1に示す緊締具は例えば登山靴やスノーボード用ソフトブーツに適用可能であり、特にソフトブーツでの使用に適している。
明確にするために、緊締具のみを示しブーツ全体は図示していない。
【0018】
ドイツ実用新案登録第20,2004,019,082U1号明細書の緊締具とは異なり、本発明のブーツの緊締具10は一本の連続したブーツ紐11を備える。緊締具10はさらに3つの作用領域12a、12b、12cを備え、上側作用領域12aはブーツの脚部分に位置し、下側作用領域12cは前足部分に位置している。中間作用領域12bは上側及び下側作用領域12a、12cの中間に位置し、ブーツの曲がる部分で作用する。中間作用領域12bは上側及び下側作用領域12a、12cと機能的に直接連結されており、張力均一化領域として働く。この結果、上側及び/又は下側作用領域12a、12cにかかる張力が少なくとも部分的に中間作用領域12bにも伝達されるので、ブーツの曲がる部分にも張力が及ぶことになる。
【0019】
さらに、図1の緊締具10によれば、上側及び下側作用領域12a、12cにおける紐の締め具合を個別に調節することができる。ちなみに、中間作用領域12bは張力均一化領域として働くが、その張力均一化作用はある程度までしか働かないので、上側及び下側作用領域12a、12cにおいて全く支障なく別個に紐の締め具合を設定することができる。個別に締め具合を調節できるように、上側及び下側作用領域12a、12cのそれぞれにロック付き引き締め具13が与えられている。引き締め具13を操作することで上側及び下側作用領域12a、12cをそれぞれ独立して締めることができ、引き締め具13をロックすれば設定した紐の締め具合を固定することができる。
【0020】
図示例では、引き締め具13はブーツの開閉用に操作できる延長輪部の形で設けられている。このために、ブーツ紐の、ブーツ舌片(図示せず)の片側に設けられたガイドフック15から出てくる部分は、既存のブーツのように舌片の反対側に設けられたガイドフックに通されていない。その代わり、ガイドフックは省略され、ブーツ紐の2部分が延びて輪部14を形作っており、ブーツの使用者が操作できるようになっている。ブーツ紐の延長部分は、脚部分の上端付近に設けられた紐ロック部19を通り、輪部14の自由端17は紐ロック部19からさらに延びて、使用者が簡単に握ることができる。実用上、輪部14の自由端17は、少なくともブーツの脚部高さと同じ長さ分、紐ロック部19からさらに延び出ている。
【0021】
ブーツ紐の延び出た部分がもつれたり絡まったりしないように、これらはブーツ内及び/又はブーツ上に設けられたガイド16内に通されている。ガイドはブーツ素材内に組み込まれるか、あるいは固着された2本の弾性筒状体から成る。2本の筒状体それぞれの舌片側端は、上側及び下側作用領域12a、12cにおけるガイドフック15の中間、あるいはこれらと同じ高さに位置している。2つの筒状体の舌片側端は互いに離間し、ガイドフック15からも離れた位置にあり、ブーツ紐がガイドフック15から略水平方向に延びて筒状ガイド内に案内されている。筒状体の位置はこれに限らず、ブーツ紐が緊締具全体に渡って均一な角度で配置されるようにして、ブーツ紐が筒状体に角度をもって進入するような構成としてもよい。
【0022】
紐ロック部19の下方では紐の2部分がガイドから出てそのまま紐ロック部19に進入しており、この結果、ブーツ上で紐が自由な部分はわずかしかないため、紐が引っ掛かることがない。
【0023】
自由端17は、輪部14上を自由に動くことのできる握り部18に通されており、握り部18を介して輪部14即ち緊締具10を簡単に締めることができる。
【0024】
上側及び下側作用領域12a、12cのブーツ紐輪部14はそれぞれが相応に構成されており、上側作用領域12aにおける輪部14の紐部分は下側作用領域12c用の輪部14の紐部分より短く、2つの輪部14の自由端17がそれぞれ同じ高さに位置するようになっている。
【0025】
尚、連続したブーツ紐11の2つの終端はそれぞれが、ブーツの脚部分及び下方の前足部分に接着されている(不図示)。
【0026】
図1に示すように上側及び下側作用領域12a、12cのそれぞれにガイドフック15を2つ設ける代わりに、これ以外の数のガイドフックを設けることもできる。例えば、4つあるいは6つのガイドフックを設けてもよく、この場合、必ずしも隣接する2つのガイドフック間に延長輪部14を設ける必要はない。その代わりに、追加のガイドフックを輪部14の2本の紐の間に設けてもよい。
【0027】
延長輪部14の代わりに、例えば、上側及び下側作用領域12a、12cの自由輪部のそれぞれに固定された2本のテープにて引き締め具13を構成してもよい。
【0028】
ブーツを締めたり緩めたりする際は、図に示す緊締具を次のように操作する。上側作用領域12a用の輪部14を引っ張ると、この領域において緊締具が締まり、ブーツの脛部分における紐の締め具合を調節することができる。前足部分は、下側作用領域12c用の輪部14を引っ張ることで締めることができる。中間作用領域12bは上側及び下側作用領域12a、12cと機能的に直接連結されているため、上側及び下側作用領域12a、12c間である程度まで張力が均一化されるが、それぞれの領域で個別に調節された締め具合は実質的にそのまま保たれる。中間作用領域12bの張力均一化作用によってブーツの曲がる部分にもある程度の張力がかかり、敏感な足の曲がる部分にブーツが食い込むことなくこの部分でも足をしっかりとサポートすることができる。
【0029】
全体として、ブーツ内でしっかりと揺るぎなく、かつ非常に心地よく足を支えることができる。
【0030】
ブーツを脱ぐ際は、上側作用領域12a用の紐ロック部19を緩めるだけで足りる。これは、緊締具の上側作用領域12aを緩めることで中間及び下側作用領域も緩まるためである。従って従来必要であったように下側作用領域12c側の紐ロック部19を緩める動作は必ずしも必要ではない。
【0031】
従って本発明の緊締具によれば、ブーツを部分選択的に閉じることができるだけでなく、機能的に直接連結された作用領域12a、12b、12cによって、素早く簡単にブーツを脱着することができる。
【0032】
さらに、本発明の緊締具は、ドイツ実用新案第20 2004 019082 U1号明細書の緊締具より少ない数のガイドフックで実現することができる。これは、舌片の片側に設けられたガイドフックの代わりに延長輪部14が設けられ、いわばガイドフックの役目を果たしているためである。この結果、ブーツ紐を締めたり緩めたりする時の摩擦も減るため操作性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態におけるブーツの緊締具構成を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0034】
10 緊締具
11 ブーツ紐
12a 上側作用領域
12b 中間作用領域
12c 下側作用領域
13 引き締め具
14 輪部
15 ガイドフック
16 ガイド
17 自由端
18 可動握り部
19 紐ロック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本のブーツ紐(11)を有する緊締具(10)を備え、前記緊締具が上側、中間、下側の3つの作用領域(12a、12b、12c)を備え、ブーツを締めたり開いたりする際に、前記中間作用領域(12b)が前記上側作用領域(12a)と前記下側作用領域(12c)の双方に機能的に直接連結していることを特徴とするブーツ。
【請求項2】
前記上側及び下側作用領域(12a、12c)のそれぞれにロック付き引き締め具(13)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のブーツ。
【請求項3】
前記上側及び下側作用領域(12a、12c)がそれぞれ複数のガイドフック(15)を備え、前記引き締め具(13)が2つのガイドフック、特に、隣接する2つのガイドフック(15)間に位置することを特徴とする請求項1又は2に記載のブーツ。
【請求項4】
前記引き締め具(13)がブーツ紐(11)の一部分から成り、ブーツの開閉用に操作することができる延長輪部(14)の形で設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載のブーツ。
【請求項5】
前記輪部(14)がそれぞれブーツ内及び/又はブーツ上に設けられたガイド(16)内に配され、前記輪部(14)の自由端(17)を持って前記引き締め具(13)を操作することができることを特徴とする請求項4に記載のブーツ。
【請求項6】
前記ガイド(16)が2本の筒状体から成り、ブーツ紐(11)の、前記輪部を形成する2つの延長部分のそれぞれが各筒状体内に通されていることを特徴とする請求項5に記載のブーツ。
【請求項7】
前記輪部(14)の自由端(17)がそれぞれ、該輪部(14)上を自由に動くことのできる握り部(18)内にそれぞれ通されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のブーツ。
【請求項8】
前記輪部(14)がそれぞれ、ブーツの、特に脚部分に接着された紐ロック部(19)に通されていることを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のブーツ。
【請求項9】
ブーツ紐(11)の2つの終端がブーツに固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のブーツ。

【公開番号】特開2007−144171(P2007−144171A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−315989(P2006−315989)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(503211312)ディーラックス シュポルトアルティーケル ハンデルス ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】