説明

プランジャポンプおよびプランジャポンプ用の基体の製造方法

【課題】基体の製造に用いる刃具の種類を少なくすることができるプランジャポンプを提供することを課題とする。
【解決手段】プランジャポンプ1であって、ポンプ穴13と、ポンプ穴13に連通する吸入穴17および吐出穴18とを有する基体10と、ポンプ穴13に収容されるとともに、偏心カム201(駆動部材)に当接しているプランジャ20と、を備え、プランジャ20がポンプ穴13内で往復動することで、吸入穴17からポンプ穴13内に液体が吸入されるとともに、ポンプ穴13内の液体が吐出穴18に吐出される。そして、吸入穴17および吐出穴18の軸線は、ポンプ穴13の軸線に対して交差しており、ポンプ穴13および吐出穴18の少なくとも一部が同一径に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャポンプおよびプランジャポンプ用の基体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用ブレーキ液圧制御装置に用いられるプランジャポンプは、偏心カムなどの駆動部材によって、ポンプ穴内でプランジャ(ピストンとも呼ばれる)を往復動させることで、吸入穴からポンプ穴内にブレーキ液を吸入するとともに、ポンプ穴内のブレーキ液を吐出穴に吐出させている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−236077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来のプランジャポンプでは、ポンプ穴と吐出穴との径が異なっているため、基体となる素形材にポンプ穴や吐出穴などの穴を穿設するための刃具の種類が多くなり、刃具の管理が煩雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、基体の製造に用いる刃具の種類を少なくすることができるプランジャポンプおよびプランジャポンプ用の基体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のプランジャポンプは、ポンプ穴と、前記ポンプ穴に連通する吸入穴および吐出穴とを有する基体と、前記ポンプ穴に収容されるとともに、駆動部材に当接しているプランジャと、を備え、前記プランジャが前記ポンプ穴内で往復動することで、前記吸入穴から前記ポンプ穴内に液体が吸入されるとともに、前記ポンプ穴内の液体が前記吐出穴に吐出される。そして、前記吸入穴および前記吐出穴の軸線は、前記ポンプ穴の軸線に対して交差しており、前記ポンプ穴および前記吐出穴の少なくとも一部が同一径に形成されている。
【0007】
この構成では、ポンプ穴および吐出穴の少なくとも一部を同一径にすることで、基体となる素形材に対して、ポンプ穴および吐出穴の少なくとも一部を同じ刃具によって穿設することができるため、基体の製造に用いる刃具の種類を少なくすることができ、刃具を容易に管理することができる。
【0008】
なお、ポンプ穴の各部位の径と吐出穴の各部位の径とが同じになるように対応させた場合には、ポンプ穴と吐出穴を同じ種類の刃具のみで形成することができるため、基体の製造に用いる刃具の種類を更に少なくすることができる。
【0009】
また、前記したプランジャポンプにおいては、前記ポンプ穴に、前記プランジャの一端側の部位が収容されるプランジャ収容穴と、前記プランジャ収容穴の底面に開口し、前記プランジャの他端側の部位が摺動自在に内挿されるシリンダ穴と、を設け、前記プランジャ収容穴の底部には、前記プランジャが摺動自在に内挿される環状のシール部材を収容し、前記シール部材によって、前記プランジャの外周面と前記プランジャ収容穴の内周面との間を液密にシールするとよい。
【0010】
この構成では、プランジャ収容穴に収容されたプランジャの周囲に形成された空間にシール部材を収容しているため、ポンプ穴にシール部材を収容するための溝部を加工する必要がなくなり、その結果として基体の製造工数を低減することができる。
【0011】
前記したプランジャポンプにおいて、前記プランジャ収容穴を封止する蓋部材と、前記吐出穴を封止する蓋部材とを同一形状に形成することが好ましい。このようにすると、部品の種類が少なくなるため、プランジャポンプの製造コストを低減することができる。
さらに、前記蓋部材がボール栓である場合には、プランジャ収容穴および吐出穴に対して蓋部材を簡単に圧入することができる。
【0012】
本発明のプランジャポンプ用の基体の製造方法は、プランジャを収容するポンプ穴と、前記ポンプ穴に連通する吸入穴および吐出穴とを有する基体となる素形材に対して、前記ポンプ穴および前記吐出穴の少なくとも一部を、同じ刃具によって同一径に穿設する工程を備えている。この構成では、基体の製造に用いる刃具の種類が少なくなるため、刃具を容易に管理することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプランジャポンプおよびプランジャポンプ用の基体の製造方法によれば、基体の製造に用いる刃具の種類を少なくすることができ、刃具を容易に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態のプランジャポンプを示した側断面図である。
【図2】本実施形態の基体を側面から見た透視図である。
【図3】本実施形態の基体を表側から見た透視図である。
【図4】本実施形態のプランジャ収容穴に蓋部材を圧入する手順を示した図で、(a)は蓋部材をプランジャ収容穴に圧入した状態の側断面図、(b)は蓋部材にプランジャ収容穴の開口縁部をかしめた状態の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態では、自動車などの車両に搭載される車両用ブレーキ液圧制御装置の油圧発生装置として用いられるプランジャポンプを例として説明する。
【0016】
プランジャポンプ1は、図1に示すように、ポンプ穴13、吸入穴17および吐出穴18を有する基体10と、ポンプ穴13に収容されたプランジャ20と、を備えている。
このプランジャポンプ1は、プランジャ20がポンプ穴13内で往復動することで、吸入穴17からポンプ穴13内にブレーキ液が吸入されるとともに、ポンプ穴13内のブレーキ液が吐出穴18に吐出される。
【0017】
基体10は、図2に示すように、略直方体に形成された金属製部品であり、表側の面10aには制御装置300が固着され、裏側の面10bにはモータ200が固着される。
基体10の内部には、図3に示すように、入口ポート11a、出口ポート11b、軸受穴12、ポンプ穴13、リザーバ穴15、入口弁装着穴16a、出口弁装着穴16b、吸入穴17、吐出穴18およびこれらを連通する穴が形成されており、マスタシリンダとホイールシリンダとを接続するための液路が形成されている。
【0018】
なお、本実施形態の基体10では、図3の左半分に形成された液路と、図3の右半分に形成された液路とが左右対称であるため、以下では、図3の左半分に形成された液路について説明し、図3の右半分に形成された液路の説明は省略する。
【0019】
入口ポート11aは、図2に示すように、基体10の裏側の面10bの上隅部に開口した有底円形の穴であり、マスタシリンダからの配管が接続される部位である。
出口ポート11bは、基体10の上面10cに開口した有底円形の穴であり、ホイールシリンダに至る配管が接続される部位である。
【0020】
軸受穴12は、図3に示すように、基体10の裏側の面10bの中心部に開口した有底円形の穴である。
軸受穴12には、図1に示すように、基体10に取り付けられたモータ200(図2参照)の出力軸に設けられた偏心カム201が収められている。偏心カム201の中心位置は、軸受穴12に対して同心に配置された出力軸の軸中心に対して偏心しており、偏心カム201は出力軸の回転に伴って、出力軸の軸中心回りに公転する。
【0021】
ポンプ穴13は、図1に示すように、基体10の左右の側面10dに形成された円形の凹部13aと、凹部13aの底面13bに開口した有底円形のプランジャ収容穴13cと、一端はプランジャ収容穴13cの底面13fに開口し、他端は軸受穴12に連通している円形のシリンダ穴13gと、を備えている。ポンプ穴13の中心軸線は、図1の左右方向に延設されており、軸受穴12の中心を通過している。
【0022】
プランジャ収容穴13cの底部13e(軸受穴12側の端部)は縮径されている。また、シリンダ穴13gは、プランジャ収容穴13cの底部13eよりも縮径されており、後記するプランジャ20が摺動自在に内挿される。
【0023】
プランジャ収容穴13cの凹部13a側の端部は、金属製のボール栓(球体)である蓋部材14aによって封止されている。
蓋部材14aの外径は、プランジャ収容穴13cの内径よりも僅かに大きく形成されており、蓋部材14aはプランジャ収容穴13cに圧入されている。さらに、蓋部材14aの中心よりも凹部13a側には抜け止め部13dが形成されている。
抜け止め部13dは、プランジャ収容穴13cの凹部13a側の開口縁部を蓋部材14aの球面にかしめることで形成された部位である。
【0024】
ここで、プランジャ収容穴13cに蓋部材14aを取り付ける手順を説明する。
まず、図4(a)に示すように、プランジャ収容穴13cの凹部13a側の開口縁部に蓋部材14aを当接させ、その状態から治具Jを用いて、蓋部材14aをプランジャ収容穴13cに押し込んで圧入し、治具Jの先端面を凹部13aの底面13bに当接させる。
さらに、図4(b)に示すように、蓋部材14aをプランジャ収容穴13cに押し込み、治具Jの先端面の外周縁部によって、プランジャ収容穴13cの開口縁部を押し潰して、蓋部材14aの球面にかしめることで抜け止め部13dを形成する。
【0025】
リザーバ穴15は、図1に示すように、基体10の下面10eに開口した有底円形の穴である。リザーバ穴15には、リザーバ30が装着される。
リザーバ30は、リザーバ穴15内に摺動自在に装着されたピストン31と、リザーバ穴15の下面10e側の開口部を塞ぐように、下面10eに取り付けられた板状のばね受け部材32と、ピストン31とばね受け部材32との間に介設され、ピストン31をリザーバ穴15の底面側に付勢するコイルばね33と、を備えている。
リザーバ穴15の底面には、流入穴(図示せず)および吸入穴17が連通しており、流入穴からリザーバ穴15内にブレーキ液が流入したときに、ピストン31がコイルばね33の付勢力に抗して移動し、リザーバ穴15内にブレーキ液が貯溜される。
【0026】
入口弁装着穴16aは、図3に示すように、基体10の表側の面10aに開口した有底円形の穴である。入口弁装着穴16aには、入口弁(図示せず)が装着される。
出口弁装着穴16bは、基体10の表側の面10bに開口した有底円形の穴であり、入口弁装着穴16aの下側に配置されている。出口弁装着穴16bには、出口弁(図示せず)が装着される。
【0027】
吸入穴17は、リザーバ穴15の底面からプランジャ収容穴13cに通じる円形の穴であり、図1の上下方向に延設されている。つまり、吸入穴17の軸線は、ポンプ穴13の軸線に交差(本実施形態では直交)している。また、吸入穴17のうちリザーバ穴15側の開口端部17aは拡径されている。
【0028】
吸入穴17には、プランジャ収容穴13cへのブレーキ液の流入のみを許容する逆止弁である吸入弁40が設けられている。
吸入弁40は、穴部42が貫通している円筒部材41と、穴部42のプランジャ収容穴13c側の開口部を封止する吸入弁体43と、吸入弁体43を収容するリテーナ44と、リテーナ44内に収められたばね部材45と、を備えている。
【0029】
円筒部材41は、円筒状の金属製部品であり、吸入穴17の開口端部17aに内嵌されている。
吸入弁体43は、球状の金属製部品であり、穴部42のプランジャ収容穴13c側の開口部を封止している。
リテーナ44は、有底の円筒状の金属製部品であり、円筒部材41のプランジャ収容穴13c側の端部に外嵌されている。リテーナ44内には吸入弁体43が収められている。また、リテーナ44には複数の穴が形成されており、リテーナ44内と吸入穴17内とが連通している。
ばね部材45は、リテーナ44の底面と吸入弁体43との間に圧縮状態で配置されたコイルばねであり、吸入弁体43を穴部42側に押圧している。
【0030】
このような吸入弁40では、吸入穴17の下流側(リザーバ穴15側)のブレーキ液圧から上流側(プランジャ収容穴13c側)のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材45の付勢力)以上になったときに、ばね部材45の付勢力に抗して、吸入弁体43が円筒部材41の穴部42から離間して開弁する。
【0031】
吐出穴18は、基体10の上面10cに形成された円形の凹部18aと、凹部18aの底面18bに開口した有底円形の流通穴18cと、一端は流通穴18cの底面18fに開口し、他端はプランジャ収容穴13cに連通している円形の連通穴18gと、を備えている。吐出穴18の軸線は、図3の上下方向に延設されており、ポンプ穴13の軸線に交差(本実施形態では直交)している。また、流通穴18cの底部18e(プランジャ収容穴13c側の端部)は縮径されている。
【0032】
吐出穴18の凹部18aは、ポンプ穴13の凹部13aと同一径に形成されている。また、流通穴18cの凹部18a側の部位は、プランジャ収容穴13cの凹部13a側の部位と同一径に形成されている。また、流通穴18cの底部18eは、プランジャ収容穴13cの底部13eと同一径に形成されている。さらに、連通穴18gは、シリンダ穴13gと同一径に形成されている。
なお、本実施形態では、ポンプ穴13の各部位13a,13c,13e、13gの径と、吐出穴18の各部位18a,18c,18e、18gの径とが同じになるように形成されているが、ポンプ穴13と吐出穴18との全ての部位が同じ径である必要はない。後記するように、本実施形態では、ポンプ穴13と吐出穴18とを同一径の蓋部材14a,14bで封止しているため、ポンプ穴13において蓋部材14aが圧入される部位(プランジャ収容穴13cの凹部13a側の部位)と、吐出穴18において蓋部材14bが圧入される部位(流通穴18cの凹部18a側の部位)と、を少なくとも同一径に形成する必要がある。
【0033】
吐出穴18には、プランジャ収容穴13cからのブレーキ液の流出のみを許容する逆止弁である吐出弁50が設けられている。
吐出弁50は、吐出穴18の底部18eに内嵌された円筒部材51と、円筒部材51に形成された穴部52の開口部を封止する吐出弁体53と、吐出弁体53を収容するリテーナ54と、リテーナ54内に収められたばね部材55と、を備えている。
吐出弁50は、前記した吸入弁40と同じ構成の逆止弁であり、吐出穴18の上流側(プランジャ収容穴13c側)のブレーキ液圧から下流側のブレーキ液圧を差し引いたときの値が、開弁圧(ばね部材55の付勢力)以上になったときに、ばね部材55の付勢力に抗して、吐出弁体53が円筒部材51の穴部52から離間して開弁する。
【0034】
流通穴18cの凹部18a側の端部は、金属製のボール栓(球体)である蓋部材14bによって封止されている。
蓋部材14bの外径は、流通穴18cの内径よりも僅かに大きく形成されており、蓋部材14bは流通穴18cに圧入されている。さらに、蓋部材14bの中心よりも凹部18a側には抜け止め部18dが形成されている。
抜け止め部18dは、流通穴18cの凹部18a側の開口縁部を蓋部材14bの球面にかしめることで形成された部位であり、前記したプランジャ収容穴13cを封止している蓋部材14aと同様の手順で流通穴18cに圧入して抜け止め部18dが形成されている。
【0035】
なお、流通穴18cの凹部18a側の部位と、プランジャ収容穴13cの凹部13a側の部位とは同一径であるため、流通穴18cを封止する蓋部材14bと、プランジャ収容穴13cを封止する蓋部材14aとは、同一径のボール栓である。
このように、本実施形態では、ポンプ穴13と吐出穴18とを同一径の蓋部材14a,14bで封止するため、ポンプ穴13および吐出穴18において、蓋部材14a,14bが圧入される部位であるプランジャ収容穴13cの凹部13a側の部位と、流通穴18cの凹部18a側の部位と、を少なくとも同一径に形成する必要がある。
【0036】
プランジャ20は、ポンプ穴13内に収容される円形断面の金属製部品であり、一端21側の部位はプランジャ収容穴13c内に突出し、他端22側の部位はシリンダ穴13gに挿入され、他端22は軸受穴12内に突出している。プランジャ20をポンプ穴13内で軸方向に往復動させたときには、プランジャ20の外周面がシリンダ穴13gの内周面を摺動する。
【0037】
プランジャ20は、プランジャ収容穴13cの底部13eに嵌め込まれた環状のシール部材23に摺動自在に内挿されている。
シール部材23は、弾性を有する環状の樹脂製部品であり、プランジャ20の外周面とプランジャ収容穴13cの内周面との間を液密にシールするものである。
また、シール部材23は、プランジャ収容穴13cの底部13eに嵌め込まれた環状のストッパ24a,24bの間に配置されており、各ストッパ24a,24bによって位置決めされている。
【0038】
プランジャ20の他端22側の端面は、偏心カム201のカム面に当接している。偏心カム201は、モータ200(図2参照)の出力軸の軸回りに偏心して回転するため、モータ200の出力軸を回転させたときには、プランジャ20は偏心カム201のカム面に押されてプランジャ収容穴13c側に向けて軸方向に移動する。
【0039】
プランジャ20の一端21は、他端22側の部位よりも縮径されており、コイルばね25の他端が外嵌されている。
コイルばね25は、一端が蓋部材14aの球面に当接し、他端がプランジャ20の一端21に外嵌されており、圧縮状態でプランジャ収容穴13c内に配置されている。また、コイルばね25は、一端側(蓋部材14a側)から他端側(プランジャ20側)に向かうに従って縮径されている。
【0040】
コイルばね25は、プランジャ20を偏心カム201側に押圧しており、偏心カム201に押されてプランジャ20がプランジャ収容穴13c側に移動した後に、偏心カム201のカム面が、プランジャ20から離れる方向に変位したときには、プランジャ20を偏心カム201側に移動させる。すなわち、プランジャ20はコイルばね25からの押圧力によって、偏心カム201側に向けて軸方向に移動する。これにより、プランジャ20の他端22側の端面は、偏心カム201のカム面に当接した状態に保たれる。
【0041】
次に、本実施形態のプランジャポンプ1の動作について説明する。
図1に示すように、プランジャ収容穴13c内にブレーキ液が満たされた状態で、回転する偏心カム201のカム面に押されて、プランジャ20が蓋部材14a側に向けて軸方向に往動作したときには、プランジャ収容穴13c内の容積が減少し、プランジャ収容穴13c内のブレーキ液の液圧が上昇する。これにより、吐出弁50が開弁して、プランジャ収容穴13c内のブレーキ液が吐出穴18に吐出される。
【0042】
続いて、プランジャ20が最も一端側(上死点)まで移動し、プランジャ収容穴13c内の容積が最小となった後に、回転する偏心カム201のカム面はプランジャ20から離れる方向に変位する。このとき、プランジャ20は、コイルばね25からの押圧力によって、偏心カム201側に向けて軸方向に復動作してプランジャ収容穴13c内の容積が増大する。
プランジャ収容穴13c内の容積が増大することで、プランジャ収容穴13c内は負圧状態となり、吸入弁40が開弁して、ブレーキ液が吸入穴17からプランジャ収容穴13c内に吸入される。
【0043】
そして、プランジャ20が最も偏心カム201側(下死点)まで復動作して、プランジャ収容穴13c内の容積が最大となった後に、プランジャ20は回転する偏心カム201のカム面に押されて再び往動作し、前記した往動作の場合と同様に、プランジャ収容穴13c内のブレーキ液がプランジャ20によって加圧されて吐出穴18に吐出される。
【0044】
次に、本実施形態のプランジャポンプ1に用いられる基体10の製造方法において、図1に示すように、基体10となる素形材に対して、ドリルなどの刃具によって、ポンプ穴13および吐出穴18を穿設する工程について説明する。
【0045】
基体10となる素形材を鋳造により成形し、その側面10dに対して、第一の刃具を用いて、シリンダ穴13gと同径の穴を穿設して、シリンダ穴13gを形成する。
続いて、第一の刃具よりも拡径された第二の刃具を用いて、シリンダ穴13gとなる部位よりも側面10d側の部位を拡径して、プランジャ収容穴13cの底部13eを形成する。
また、第二の刃具よりも拡径された第三の刃具を用いて、プランジャ収容穴13cの底部13eとなる部位よりも側面10d側の部位を拡径して、プランジャ穴13cおよびプランジャ収容穴13cの凹部13a側の部位を形成する。
さらに、第三の刃具よりも拡径された第四の刃具を用いて、プランジャ収容穴13cとなる部位よりも側面10d側の部位を拡径して、側面10dに凹部13aを形成する。
これにより、基体10となる素形材にポンプ穴13が形成される。
【0046】
また、素形材の上面10cに対して、前記第一の刃具を用いて、連通穴18gと同径の穴を穿設して、連通穴18gを形成する。
続いて、前記第二の刃具を用いて、連通穴18gとなる部位よりも上面10c側の部位を拡径して、流通穴18cの底部18eを形成する。
また、前記第三の刃具を用いて、流通穴18cの底部18eとなる部位よりも上面10c側の部位を拡径して、流通穴18cおよび流通穴18cの凹部18a側の部位を形成する。
さらに、前記第四の刃具を用いて、流通穴18cとなる部位よりも上面10c側の部位を拡径して、上面10cに凹部18aを形成する。
これにより、基体10となる素形材に吐出穴18が形成される。
【0047】
以上のような本実施形態のプランジャポンプ1では、図1に示すように、ポンプ穴13の各部位13a,13c,13e、13gの径と、吐出穴18の各部位18a,18c,18e、18gの径とが同じになるように対応しているため、ポンプ穴13と吐出穴18とを同じ種類(本実施形態では四種類)の刃具のみによって形成することができる。
したがって、基体10の製造に用いる刃具の種類を少なくすることができ、刃具を容易に管理することができる。
また、ポンプ穴13のプランジャ収容穴13cを封止する蓋部材14aと、吐出穴18の流通穴18cを封止する蓋部材14bとは、同一径のボール栓を用いており、部品の種類が少ないため、プランジャポンプ1の製造コストを低減することができる。
【0048】
また、プランジャ収容穴13cに収容されたプランジャ20の周囲に形成された空間にシール部材23を収容しているため、プランジャ収容穴13cにシール部材23を収容するための溝部を加工する必要がなくなり、基体10の製造工数を低減することができる。
【0049】
また、ポンプ穴13のプランジャ収容穴13cを封止する蓋部材14aと、吐出穴18の流通穴18cを封止する蓋部材14bとは、ボール栓(球体)であるため、プランジャ収容穴13cおよび流通穴18cに対して、蓋部材14a,14bを簡単に圧入することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、図1に示す吸入穴17の少なくとも一部を、ポンプ穴13および吐出穴18の少なくとも一部と同一径に形成した場合には、基体10の製造に用いる刃具の種類を更に少なくすることができる。
【0051】
また、ポンプ穴13および吐出穴18は、同じ刃具によって少なくとも一部が同一径に形成されていればよい。
【0052】
また、本実施形態では、吸入穴17および吐出穴18の軸線が、ポンプ穴13の軸線に対して直交しているが、吸入穴17および吐出穴18の軸線が、プランジャ収容穴13cの軸線に交差する角度は限定されるものではない。
【0053】
また、本実施形態では、ポンプ穴13を封止する蓋部材14aおよび吐出穴18を封止する蓋部材14bとしてボール栓を用いているが、蓋部材14a,14bの形状は限定されるものではない。また、ポンプ穴13を封止する蓋部材と、吐出穴18を封止する蓋部材とが異なる形状でもよい。
【0054】
また、本実施形態では、車両用ブレーキ液圧制御装置に用いられるプランジャポンプ1を例として説明しているが、本発明のプランジャポンプは、各種の装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 プランジャポンプ
10 基体
12 軸受穴
13 ポンプ穴
13a 凹部
13c プランジャ収容穴
13d 抜け止め部
13e 底部
13g シリンダ穴
14a,14b 蓋部材
15 リザーバ穴
17 吸入穴
18 吐出穴
18a 凹部
18c 流通穴
18d 抜け止め部
18e 底部
18g 連通穴
20 プランジャ
23 シール部材
30 リザーバ
40 吸入弁
50 吐出弁
200 モータ
201 偏心カム
300 制御装置
J 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ穴と、前記ポンプ穴に連通する吸入穴および吐出穴とを有する基体と、
前記ポンプ穴に収容されるとともに、駆動部材に当接しているプランジャと、を備え、
前記プランジャが前記ポンプ穴内で往復動することで、前記吸入穴から前記ポンプ穴内に液体が吸入されるとともに、前記ポンプ穴内の液体が前記吐出穴に吐出されるプランジャポンプであって、
前記吸入穴および前記吐出穴の軸線は、前記ポンプ穴の軸線に対して交差しており、
前記ポンプ穴および前記吐出穴の少なくとも一部が同一径に形成されていることを特徴とするプランジャポンプ。
【請求項2】
前記ポンプ穴は、
前記プランジャの一端側の部位が収容されるプランジャ収容穴と、
前記プランジャ収容穴の底面に開口し、前記プランジャの他端側の部位が摺動自在に内挿されるシリンダ穴と、を備え、
前記プランジャ収容穴の底部には、前記プランジャが摺動自在に内挿される環状のシール部材が収容されており、
前記シール部材によって、前記プランジャの外周面と前記プランジャ収容穴の内周面との間が液密にシールされていることを特徴とする請求項1に記載のプランジャポンプ。
【請求項3】
前記プランジャ収容穴を封止する蓋部材と、前記吐出穴を封止する蓋部材とが同一形状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載のプランジャポンプ。
【請求項4】
前記蓋部材は、ボール栓であることを特徴とする請求項3に記載のプランジャポンプ。
【請求項5】
プランジャを収容するポンプ穴と、前記ポンプ穴に連通する吸入穴および吐出穴とを有する基体の製造方法であって、
前記基体となる素形材に対して、前記ポンプ穴および前記吐出穴の少なくとも一部を、同じ刃具によって同一径に穿設する工程を備えていることを特徴とするプランジャポンプ用の基体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−44268(P2013−44268A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181977(P2011−181977)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】