説明

プリズムアセンブリの製造方法

【課題】光硬化型接着剤の照射を妨げる光学薄膜がある場合に、高精度で小型のプリズムアセンブリを効率良く製造する。
【解決手段】まず、重ね合わせ面に光学薄膜が介在するように、厚板42上に薄板41a,41bを重ね合わせ、光硬化型接着剤を光照射により硬化させて基板接合体51を作製する。そして、複数の基板接合体51を可剥離性接着剤で仮接合した仮接合体56を作製し、各々の重ね合わせ面と一定角度で交差する方向に一定ピッチで切断し、仮接合基板を作製する。次いで、厚板42からなる部分の中央を通るように、厚板42の切断面に沿った方向に表面に対して垂直に仮接合基板を切断し、複数の角柱状基板を作製する。そして、角柱状基板の仮接合を剥離して接合基板を作製し、さらに、接合基板を長手方向に対して垂直に一定ピッチで切断することによりプリズムアセンブリを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状の異なるプリズムを複数接合したプリズムアセンブリの製造方法に関し、さらに詳しくは、プリズムの接合面が2以上あるプリズムアセンブリの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CDやDVD,ブルーレイディスク(BD)等の複数種類の光ディスクに対応した光学ドライブが普及している。複数種類の光ディスクに対応した光学ドライブでは、部品点数の削減による低コスト化や、小型化,薄型化のめに、光ピックアップの多くの部分を各光ディスクに対して共通化することが求められる。こうした光ピックアップに用いられる部材として、プリズムアセンブリが知られている。プリズムアセンブリは、形状の異なるプリズムを、偏光分離膜や分光膜等の光学薄膜を介して複数接合したものであり、光ディスクへのレーザー光の入射光路や、光ディスクに反射されて戻るレーザー光の光路を各光ディスクについて共通化する部材として使用される。
【0003】
プリズムアセンブリは、例えば、接合するプリズムを各々成形し、各プリズムに必要な光学薄膜を成膜して、これらを接合することによって製造される。しかしながら、この方法では、プリズムアセンブリを構成する各プリズムを成形する段階で研磨加工の工数が多く、さらに、プリズム材料の研磨治具への貼り付けや剥離といったように煩雑な工程を数多く必要とする。また、各プリズムをそれぞれに成形してから接合してプリズムアセンブリを製造する場合には、各プリズムの小型化や各プリズムの接合精度には限度があり、良好な光学的性能のプリズムアセンブリを安定して生産することは難しい。
【0004】
こうしたことから、プリズムアセンブリを構成する各プリズムを予め成形しておくのではなく、表面に光学薄膜が成膜された複数のガラス基板を重ね合わせて接合しておき、これを斜めに切り出すことで、高精度に接合された小型のプリズムアセンブリを容易に製造する方法が知られている(特許文献1)。
【0005】
ところで、安価で、素早く強力な接着強度が得られることから、プリズムの接合や上述のようなガラス基板の接合には、紫外線を照射することにより硬化する光硬化型接着剤が主として用いられている。一方で、近年普及の著しいBDは、波長が紫外線近い405nm近傍の青色光を用いる光ディスクであるため、BDに対応するプリズムアセンブリには、この波長帯の光を反射する反射膜や偏光分離膜が用いられる。
【0006】
このため、紫外線で硬化する光硬化型接着剤を用いて、特許文献1に記載の製造方法でBDに対応するプリズムアセンブリを製造しようとすると、重ね合わせるガラス基板上に、紫外線の照射を妨げる反射膜や偏光分離膜等が設けられているために、これらの光学薄膜以降では紫外線の照射量が不十分となり、十分な接着強度が得られなかったり、十分な接着強度を得るためには長時間の紫外線の照射が必要となってしまう。
【0007】
このように、光硬化型接着剤への紫外線の照射を妨げる光学薄膜がある場合に、光硬化型接着剤への紫外線の照射を妨げない単位でガラス基板を重ね合わせて接合しておき、これを光硬化型でない可剥離性の接着剤で仮接合することによって、特許文献1に記載の製造方法と同様にしてプリズムアセンブリを製造する方法が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特許2639312号
【特許文献2】特開2005−164982号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高精度で強力な接着の必要な面を、光硬化型接着剤により各々接合しておく方法では、光硬化型接着剤の塗布とこれを硬化させる紫外線の照射とを、高精度で強力な接着の必要な面の数だけ繰り返し行う必要があるため、プリズムアセンブリの製造工程が煩雑かつ非効率的になってしまうという問題がある。
【0009】
また、特許文献2に記載の製造方法でプリズムアセンブリを製造すると、仮接合されていた面を切除したり、研磨して、最終的なプリズムアセンブリのサイズ及び形状に整えなければならない。このため、仮接合を用いることにより、切断や研磨の工程が増し、プリズムアセンブリの製造工程が煩雑かつ非効率的になるとともに、切断や研磨により除去しなければならない部分が多く、材料が無駄になり、プリズムアセンブリが高コスト化してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたものであり、光硬化型接着剤の照射を妨げる光学薄膜がある場合においても、高精度で小型のプリズムアセンブリを効率良く安価に製造することができるプリズムアセンブリの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のプリズムアセンブリ製造方法は、重ね合わせ面に光学薄膜が介在するように、1枚の厚い透明な第1基板の両面にそれぞれ1枚以上の薄い透明な第2基板を重ね合わせ、各々の重ね合わせ面に予め塗布された光硬化型接着剤を光照射により硬化させて基板接合体を作製する第1工程と、複数の前記基板接合体を可剥離製接着剤で仮接合した仮接合体を作製する第2工程と、前記基板接合体の各々の重ね合わせ面と一定角度で交差する方向に、前記仮接合体を一定ピッチで切断し、この切断による表裏面に前記第1基板の切断面と前記第2基板の切断面とが層状に前記仮接合を介して露呈した仮接合基板を作製する第3工程と、前記第1基板からなる部分の中央を通るように、前記第1基板の切断面に沿った方向に表面に対して垂直に前記仮接合基板を切断し、複数の角柱状基板を作製する第4工程と、前記角柱状基板の仮接合を剥離して、接合基板を作製する第5工程と、前記接合基板を長手方向に対して垂直に一定ピッチで切断し、前記第1基板を切断して得られた第1プリズム要素を一端に有し、前記第1プリズム要素の一方向に前記第2基板を切断して得られた第2プリズム要素を1以上有するプリズムアセンブリを得る第6工程と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、前記基板接合体は、前記光学薄膜の順序が前記第1基板を基準に対称に配置されるように作製されることを特徴とする。
【0013】
また、前記第3工程で前記仮接合体を切断する前記一定角度に応じて、前記第1工程では前記第1基板と前記第2基板の位置を階段状にずらしながら重ね合わせて前記基板接合体を作製し、前記第2工程では前記基板接合体の位置を階段状にずらしながら重ね合わせて前記仮接合体を作製することを特徴とする。
【0014】
また、前記第1工程で、前記光硬化型接着剤を硬化させるときに、前記重ね合わせ面に平行な方向から光を照射することを特徴とする。
【0015】
また、前記光硬化型接着剤は、紫外線により硬化する紫外線硬化型の接着剤であることを特徴とする。
【0016】
また、前記基板接合体は前記第2基板の両側にそれぞれ2以上の前記第1基板を配置して作製され、前記プリズムアセンブリは、前記第2プリズム要素を2以上有するように作製されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明のプリズムアセンブリの製造方法は、重ね合わせ面に光学薄膜が介在するように、1枚の厚い透明な第1基板の両面にそれぞれ1枚以上の薄い透明な第2基板を重ね合わせ、各々重ね合わせ面に予め塗布された光硬化型接着剤を光照射により硬化させて基板接合体を作製する第1工程と、複数の前記基板接合体を可剥離製接着剤で仮接合した仮接合体を作製する第2工程と、前記基板接合体の各々の重ね合わせ面と一定角度で交差する方向に、前記仮接合体を一定ピッチで切断し、この切断による表裏面に前記第1基板の切断面と前記第2基板の切断面とが層状に前記仮接合を介して露呈した仮接合基板を作製する第3工程と、前記仮接合基板の仮接合を剥離して前記基板接合体の単位に分離した角柱状基板を作製する工程と、前記第1基板の切断面に沿って、前記第1基板からなる部分の中央を通るように、表面に対して垂直に前記角柱状基板を切断し、接合基板を作製する工程と、前記角柱状基板を長手方向と垂直に一定ピッチで切断し、前記第1基板を切断して得られた第1プリズム要素を一端に有し、前記第2基板を切断して得られた第2プリズム要素が前記第1プリズムの一方向に1以上有するプリズムアセンブリを得る第6工程と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、光硬化型接着剤の照射を妨げる光学薄膜がある場合においても、高精度で小型のプリズムアセンブリを効率良く安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1に示すように、光ピックアップ11は、光ディスク12からデータを読み出すための光学系であり、CD,DVD,BDの3種の波長帯の異なる光ディスク12に対して共通に用いられる。光ピックアップ11は、青色レーザーダイオード(以下、青色LDという)16、赤色レーザーダイオード(以下、赤色LDという)17、ダイクロイックプリズム18、プリズムアセンブリ20、青色用光電子集積回路(以下、青色用OEICという)22、赤色用光電子集積回路(以下、赤色用OEICという)23等から構成される。
【0020】
青色LD16は、波長405nmの青色レーザー光を発するレーザーダイオードであり、光ディスク12がBDの場合に発光される。青色LD16から発せられた青色レーザー光は、青色LD16の前方に設けられた回折格子(図示しない)に入射され、データ読み取り用の主ビームと、トラッキング用及びフォーカシング用の2つの副ビームに分岐される。そして、回折格子を経た青色レーザー光は、1/2波長板(図示しない)によって偏光方向が所定方向に整えられた直線偏光となって、ダイクロイックプリズム18に入射する。
【0021】
赤色LD17は、波長650nm近傍の赤色レーザー光と、波長780nm近傍の赤外レーザー光を発することができる2波長レーザーダイオードであり、光ディスク12がCDまたはDVDであるときに波長を選択して発光される。赤色LD17は、光ディスク12がCDである場合には波長780nm近傍の赤外レーザー光を発し、光ディスク12がDVDであるときには、波長650nm近傍の赤色レーザー光を発する。
【0022】
赤色LD17から発せられたレーザー光は、赤色LD17の前方に設けられた回折格子(図示しない)に入射され、データ読み取り用の主ビームと、トラッキング用及びフォーカシング用の2つの副ビームに分岐される。そして、回折格子を経た赤色(赤外)レーザー光は、1/2波長板(図示しない)によって偏光方向が所定方向に整えられた直線偏光となって、ダイクロイックプリズム18に入射する。
【0023】
ダイクロイックプリズム18には、青色の光を透過し、赤色及び赤外の光を反射する色分離面が、青色LD16及び赤色LD17の光軸に対して45度の向きに設けられている。このため、青色LD16から入射する青色レーザー光は、色分離面を透過してプリズムアセンブリ20に入射し、赤色LD17から入射する赤色レーザー光及び赤外レーザー光は色分離面に反射されてプリズムアセンブリ20に入射される。
【0024】
プリズムアセンブリ20は、形状の異なるプリズムが各種光学薄膜を介して複数接合された部材であり、CD用の赤外レーザー光,DVD用の赤色レーザー光,BD用の青色レーザー光の光路を統一化する。プリズムアセンブリ20は3個のプリズムからなり、各プリズムの境界に、偏光分離膜31と青色反射膜32が設けられている。また、プリズムアセンブリ20の一端に位置する斜面には、赤色反射膜33が設けられている。
【0025】
偏光分離膜31は所定方向の偏光成分を透過し、この方向に垂直な方向の偏光成分を反射する。偏光分離膜31には、光ディスク12がBDである場合に、青色LD16から青色レーザー光が入射し、光ディスク12がCDまたはDVDである場合に、赤色LD17から赤色レーザー光,赤外レーザー光のうち対応する波長のレーザー光が入射する。
【0026】
各LD16,17から偏光分離膜31に入射する各色のレーザー光は、前述のように各LD16,17の前方に設けられた1/2波長板によって偏光分離膜31を透過する方向に偏光方向が整えられた直線偏光となっているので、偏光分離膜31を透過する。こうして偏光分離膜31を透過した各色のレーザー光は、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板、レーザー光を平行光線に変換するコリメータレンズ、光軸を光ディスク12の方向に折り曲げる立ち上げミラー、対物レンズ(何れも図示しない)を経て、光ディスク12に入射される。
【0027】
一方、偏光分離膜31には、光ディスク12によって反射されたレーザー光が入射する。こうして光ディスク12に反射されて戻るレーザー光は、光ディスク12への入射時と同じ向きに回転し、進行方向が逆向きの円偏光となっているので、前述の1/4波長板を透過することで、偏光方向が光ディスク12への入射時から90度回転した方向になる。このため、光ディスク12に反射されて戻るレーザー光は、偏光分離膜31に入射すると、青色反射膜32の方向へ反射される。
【0028】
青色反射膜32は、青色の光を反射し、赤色及び赤外の光を透過する。このため、光ディスク12がBDの場合に、光ディスク12に反射された青色レーザー光は、偏光分離膜31,青色反射膜32の順に反射されてプリズムアセンブリ20を出射し、青色用OEIC22に入射する。一方、光ディスク12がDVD及びCDの場合には、光ディスク12に反射された赤色(赤外)レーザー光は、偏光分離膜31に反射された後、青色反射膜32を透過して、赤色反射膜33に入射する。
【0029】
赤色反射膜33は、DVD用の赤色レーザー光とCD用の赤外レーザー光を反射する。このため、光ディスク12がDVDまたはCDの場合に、光ディスク12に反射された赤色(赤外)レーザー光が、赤色反射膜33で反射される。そして、光ディスク12からの赤色(赤外)レーザー光は、ミラー34に反射され、赤色用OEIC23に入射する。
【0030】
青色用OEIC22は、光電変換素子と光電変換により取得される電気信号を処理する電気回路とが一体に形成された集積回路であり、青色LD16や対物レンズに接続されている。青色用OEIC22には、プリズムアセンブリ20の青色反射膜32から、光ディスク12からの青色レーザー光が入射される。このとき、青色用OEIC22は、青色レーザー光のうち、主ビームを光電変換することにより、光ディスク12に記録されたデータを電気信号に変換して取得する。同時に、青色用OEIC22は、青色レーザー光のうち、2種の副ビームをそれぞれ光電変換し、各副ビームのスポット形状やスポットの向き、ビーム強度等のデータを取得する。青色用OEIC22は、こうした副ビームから得られたデータに基づいて、対物レンズの位置を制御することによりフォーカシング制御やトラッキング制御を行う。また、青色用OEIC22は、青色LD16の出力を調節する。
【0031】
赤色用OEIC23は、青色用OEIC22と同様に、光電変換素子と光電変換により取得される電気信号を処理する電気回路とが一体に形成された集積回路であり、赤色LD17や対物レンズに接続されている。赤色OEIC23には、プリズムアセンブリ20の赤色反射膜33からミラー34を経て、赤色(または赤外)レーザー光が入射される。このとき、赤色OEIC23は、前述の青色用OEIC22と同様にして、入射したレーザー光の主ビームからDVD(またはCD)に記録されたデータを電気信号として取得する。さらに、同様にして、赤色OEIC23は、副ビームから得られるデータに基づいてフォーカシング制御やトラッキング制御を行うとともに、赤色LD17の出力を調節する。
【0032】
プリズムアセンブリ20は、上述のように光ピックアップ11に用いられる部材であり、図2(A)に示すように、全体としては直方体形状であり、図2(B)に示すように、透明な材料からなる3個のプリズム36,37,38から構成される。
【0033】
プリズム36は、青色LD16及び赤色LD17の光軸に平行な面が台形状となった台形プリズムであり、斜面36aでプリズム37と接合される。また、プリズム37は、青色LD16及び赤色LD17の光軸に平行な面が平行四辺形状となった平行四辺形プリズムであり、一方の側面37aはプリズム36に接合され、これに平行な他方の側面37bはプリズム38と接合される。プリズム36と接合される側面37aには偏光分離膜31が設けられている。プリズム38は、プリズム37と同様の平行四辺形プリズムであり、一方の側面38aはプリズム37に接合され、これに平行な他方の側面38bは露呈されている。側面38aには青色反射膜32が設けられており、側面38bには赤色反射膜33が設けられている。
【0034】
また、これらのプリズム36,37,38の各面の接合には、紫外線を照射することにより硬化する光硬化型接着剤が用いられ、各プリズム36,37,38は相互に十分な強度で接合される。
【0035】
以下、上述のように構成されるプリズムアセンブリ20の製造方法を説明する。プリズムアセンブリ20は、図3〜図9に示すように、複数まとめて製造される。プリズムアセンブリ20の製造には、図3(A)〜(C)に示すように、所定の厚さのガラス基板41(第2基板,以下、薄板という)と、基板41の2倍の厚さの基板42(第1基板,以下、厚板という)の2種類の基板が用いられる。薄板41及び厚板42は、いずれも透明な材料からなり、平板状に形成されている。また、薄板41及び厚板42の表面は、いずれも研磨加工が施されている。
【0036】
プリズムアセンブリ20を製造するときには、これらの2種の基板41,42のうち、薄板41から薄板41a,41bを作製する。薄板41a,41bは、表面に成膜される光学薄膜がそれぞれ異なる。まず、図3(A)に示すように、薄板41の一方の表面に偏光分離膜31を成膜することにより、薄板41aを作製する。同時に、図3(B)に示すように、薄板41の一方の表面に青色反射膜32を成膜するとともに、他方の表面に赤色反射膜33を成膜し、薄板41bを作製する。
【0037】
こうして表面に各種光学薄膜が成膜された薄板41a,41bと厚板42は、図4に示すように、階段状に一定方向に位置をずらしながら重ね合わせて接合され、基板接合体51が作製される(第1工程)。基板接合体51は、薄板41a,41bをそれぞれ2枚ずつと、1枚の厚板42とから構成され、厚板42を基準に薄板41a,41bの配置順序が対称となるように、薄板41b,薄板41a,厚板42,薄板41a,薄板41bの順に配置される。
【0038】
また、こうして各基板41a,41b,42を配置するときに、2枚の薄板41aは、厚板42側に偏光分離膜31を向け、厚板42から遠い側(薄板41bに隣接する側)に光学薄膜の成膜されていない面を向けて配置される。また、2枚の薄板42bは、厚板42から遠い側(露呈される側)に赤色反射膜33を向け、厚板42側(薄板41aに隣接する側)に青色反射膜32を向けて配置される。このため、基板接合体51の各基板41a,41b,42の各々の重ね合わせ面には、偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33のうちいずれかの光学薄膜が介在している。また、基板接合体51には、光学薄膜が、上段側から赤色反射膜33,青色反射膜32,偏光分離膜31,偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33の順に配置され、厚板42を基準として光学薄膜の配置順序が対称になっている。
【0039】
また、基板接合体51を構成する各基板41a,41b,42の間には、これらの各基板41a,41b,42をそれぞれ接合する接着剤が予め塗布される。ここで用いる接着剤は、紫外線を照射することで硬化する光硬化型の接着剤である。また、基板接合体51を構成する各基板41a,41b,42の階段状の位置ズレ量は、基板接合体51を複数仮接合した仮接合体56を切断する角度(後述)に応じて定められる。ここでは、基板接合体51の階段状の側面の傾斜は、概ね45度になっている。
【0040】
そして、各基板41a,41b,42が光硬化型接着剤を介して重ね合わせられた状態の基板接合体51に、紫外線を照射して各基板41a,41b,42間の光硬化型接着剤を硬化させ、接合させる。このとき、基板接合体51に対して、各基板41a,41b,42の表面に対して垂直な方向からだけ紫外線を照射すると、基板接合体51には紫外線の十分な透過を妨げる偏光分離膜31や青色反射膜32が含まれているので、基板接合体51の内部に紫外線が到達し難い。このため、基板接合体51に照射する紫外線は、基板接合体51の周囲全体から照射することが好ましい。特に、各基板41a,41b,42の重ね合わせ面に平行な方向から基板接合体51に入射する成分52を含むように、少なくとも基板接合体51の側方から紫外線を照射することが好ましい。
【0041】
基板接合体51の側方から紫外線を照射すると、各基板41a,41b,42の各接合面は、光硬化型接着剤によって十分な強度で接合される。例えば、薄板41aと厚板42の接合面では、厚板42側から、厚板42,光硬化型接着剤,偏光分離膜31,薄板41aのガラス基板41の順に重ね合わせられているとともに、薄板41a,41bの接合面に青色反射膜32があることから、赤色反射膜33が露呈された上面や下面から基板接合体51に入射した紫外線は、青色反射膜32に反射されたり、偏光分離膜31で減光されてしまうので、薄板41aと厚板42の間の光硬化型接着剤には到達し難い。しかし、前述のように基板接合体51の側方から紫外線を照射すると、薄板41aや厚板42の側面からも紫外線が入射し、青色反射膜32や偏光分離膜31に妨げられずに、薄板41aと厚板42との間の光硬化型接着剤に到達する。これにより、薄板41aと厚板42はムラ無く十分な強度で接合される。
【0042】
また、薄板41aと薄板41bとの接合面では、薄板41a側から、薄板41aのガラス基板41,光硬化型接着剤,青色反射膜32,薄板41bのガラス基板41の順に重ね合わせられている。このため、上面や下面から基板接合体51に入射する紫外線は、青色反射膜32に反射され、青色反射膜32の薄板41a側に塗布された光硬化型接着剤には到達し難い。しかし、基板接合体51の側方から紫外線を照射すると、側面から薄板41aに入射した紫外線が、薄板41aと薄板41bとの間の光硬化型接着剤に到達する。また、側面から厚板42に入射した紫外線も、偏光分離膜31によって減光されながらも、薄板41aと薄板41bとの間の光硬化型接着剤に到達する。これにより、薄板41aと薄板41bとはムラ無く十分な強度で接合される。
【0043】
基板接合体51の各基板41a,41b,42を接合した後には、図5に示すように、複数の基板接合体51を複数積み重ねて接合した仮接合体56が作製される(第2工程)。仮接合体56は、各基板接合体51の薄板41間に可剥離性の接着剤を塗布して仮接合される。ここで用いる可剥離性接着剤は、例えば、基板接合体51の接合後に、所定温度に加温すると固着性を消失し、基板接合体51の単位に分離される。このため、各基板接合体51間の接合面を、以下では仮接合面57という。また、仮接合体56は、基板接合体51の階段状の外形が継続されるように、基板接合体51を階段状に位置をずらしながら積み重ねられて、仮接合される。このため、仮接合体56は、全体として基板接合体51と同様に傾斜した階段状の形状となっている。
【0044】
こうして作製された仮接合体56は、図6に破線で示すように、階段状に接合または仮接合された各基板41a,41b,42の傾斜に沿って、各基板41a,41b,42の重ね合わせ面に対して一定角度(ここでは45度)で交差する方向に、一定のピッチで所定間隔に層状に切断され、平板状の仮接合基板61が複数作製される(第3工程)。
【0045】
ここで作製される仮接合基板61は、基板積層体51に対応したユニット62が仮接合面57を介して複数仮接合された平板状の基板となっている。ユニット62は、基板積層体51を構成する各基板41a,41b,42の積層順序に応じて、厚板42からなる層厚の部分62aと、この部分62aの両端に接合された薄板41a,41bからなる4個の層薄の部分62bとから構成される。したがって、ユニット62には、一方の仮接合面57から、赤色反射膜33,青色反射膜32,偏光分離膜31,偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33の順に6個の光学薄膜が配置されている。仮接合基板61は、ユニット62が仮接合面を介して複数接合されたものであるため、仮接合基板61の表裏面には、薄板41a,41b及び厚板42の切断面が層状に露呈されている。また、仮接合基板61の表裏面に露呈された各基板41a,41b,42の切断面は、仮接合体56における各基板41a,41b,42の積層順序に応じて周期的に露呈されている。また、仮接合基板61内の各光学薄膜31,32,33及び仮接合面57は、切断面である仮接合基板61の表面に対して、切断の傾斜角度(45度)だけ傾斜している。
【0046】
そして、仮接合基板61は、図7に破線で示すように、厚板42からなる部分62aの中央を通るように、厚板42の切断面に沿って、表面に対して垂直に切断される(第4工程)。この切断によって仮接合基板61から角柱状基板71が複数作製される。角柱状基板71は、側面の形状が台形状の台形部材72aと、側面の形状が平行四辺形状の平行四辺形部材72bとから構成され、全体として切断した方向に縦長であり、角柱状の形状となっている。台形部材72aは、仮接合基板61における層厚の部分62aに対応し、角柱状基板71の両端に位置する。また、平行四辺形部材72bは、仮接合基板61における層薄の部分62bに対応し、台形部材72aの間に位置する。このため、角柱状基板71は、両端の2個の台形部材72aと、これらの台形部材72aに挟まれた4個の平行四辺形部材72bとからなり、表面には厚板42の切断面と薄板41a,41bの切断面が層状に露呈されている。また、各部材72a,72bの接合面には、仮接合基板61に対応して、各光学薄膜31,32,33,仮接合面57が設けられている。このため、角柱状基板71内の光学薄膜31,32,33及び仮接合面57の配置は、一方の側から、偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33,仮接合面57,赤色反射膜33,青色反射膜32,偏光分離膜31の順の配置となっており、仮接合面57は、角柱状基板71の中央に位置し、各光学薄膜31,32,33の配置順序は仮接合面57を中心に対称な順序となっている。
【0047】
こうして作製された各々の角柱状基板71は、中央の仮接合面57を剥離して、2つに分離される(第5工程)。角柱状基板71を分離して作製された接合基板76は、1個の台形部材72aと2個の平行四辺形部材72bとからなり、一端に位置する台形状部材72aに2個の平行四辺形部材72bが順に接合された構成となっている。ここで作製される接合基板76は、台形状部材72a側から、赤色反射膜33,青色反射膜32,偏光分離膜31の順に3つの光学薄膜が配置された構成となっている。また、前述のように角柱状基板71では、中央の仮接合面57を中心に対称な順序に各光学薄膜31,32,33が配置されているため、各々の角柱状基板71から作製される接合基板76は、何れも全く同じ構成となっている。
【0048】
そして、図9に示すように、接合基板67を長手方向に対して垂直に、一定のピッチで切断することにより、プリズムアセンブリ20が作製される(第6工程)。こうして接合基板76を切断すると、厚板42を切断して得られた台形プリズム36(第1プリズム要素)が一端にあり、この台形プリズム36の一方向に薄板41a,41bを切断して得られた平行四辺形プリズム37,38(第2プリズム要素)が順に接合されたプリズムアセンブリ20が作製される。
【0049】
上述のプリズムアセンブリ20の製造方法によれば、個々にプリズムを成形することなく、複数個のプリズムアセンブリ20をまとめて作製することができるので、寸法の累積的な公差を極めて小さく抑え、プリズムアセンブリ20を精度良く効率的に製造することができる。また、プリズムアセンブリ20を構成する各プリズム36,37,38を個々に成形するのが困難な小型のプリズムアセンブリ20を容易に製造することができる。
【0050】
特に、上述のプリズムアセンブリ20の製造方法では、同じ厚さの基板(例えば薄板41a,41b)だけを重ね合わせて基板接合体51を作製するのではなく、所定厚さの薄板41a,41bに、これよりも厚い厚板42を組み合わせて用いるので、基板接合体51を構成する各基板41a,41b,42を光硬化型接着剤で接合するときに、厚板42の側面から基板接合体51の内部へ紫外線が進入し易くなっている。これにより、プリズムアセンブリ20に紫外線の照射を妨げる光学薄膜がある場合にも、光硬化型接着剤によって各基板41a,41b,42の接合面を、一度に確実に接合することができる。
【0051】
また、厚板42を基準として対称に偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33が配置されるように基板接合体51を作製するから、角柱状基板71から接合基板76を作製するときに、仮接合面57を剥離するだけで同じ形状の接合基板76を2つ作製することができる。このため、接合基板76や、接合基板76を切断して得られるプリズムアセンブリ20の寸法を整える工程が必要ないので、切断工程や研磨工程が低減されるとともに、こうした切断や研磨にともなう材料の損失が低減される。これにより、同型のプリズムアセンブリ20を、効率的かつ安価に製造することができる。
【0052】
また、上述のプリズムアセンブリ20の製造方法では、基板接合体51や仮接合体56を作製するときに、階段状に重ね合わせて接合するので、仮接合体56を切断して接合基板61を作製するときに各基板41a,41b,42の端から切除する部分が低減される。
【0053】
なお、上述の実施形態では、仮接合基板61の層厚の部分62aを切断して、仮接合面57を含む角柱状基板71を作製し、次いで角柱状基板71の仮接合面57を剥離する例を説明したが、プリズムアセンブリ20を作製するときに、仮接合面57を剥離するタイミングは上述の実施形態の例に限らない。例えば、図10〜11に示すように、上述の実施形態とは異なるタイミングで仮接合面57を剥離してプリズムアセンブリ20を作製しても良い。
【0054】
例えば、図10に示すように、上述の実施形態と同様にして基板接合体51、仮接合体56、仮接合基板61の順に作製した後に、仮接合基板61に含まれる仮接合面57を剥離して、基板接合体61の単位に分離した角柱状基板81を作製する。ここで作製される角柱状基板81は、側面の形状が平行四辺形状で、層厚の平行四辺形部材82aと層薄の平行四辺形部材82bとから構成される。平行四辺形部材82aは、仮接合基板61における層厚の部分62aに対応し、角柱状基板81の中央に位置する。また、平行四辺形部材82bは、仮接合基板61における層薄の部分62bに対応し、平行四辺形部材82aの両側に2個ずつ位置する。このため、角柱状基板81は、中央の平行四辺形部材82aと、平行四辺形部材82a両側の4個の平行四辺形部材82bとからなり、表面には、厚板42の切断面と、薄板41a,41bの切断面が層状に露呈されている。また、各部材82a,82bの接合面には、仮接合基板61に対応して各光学薄膜31,32,33が設けられている。このため、角柱状基板81内の光学薄膜31,32,33の配置順序は対象になっており、一方の側から、赤色反射膜33,青色反射膜32,偏光分離膜31,偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33の順の配置となっている。
【0055】
こうして仮接合基板61の仮接合を剥離して作製した角柱状基板81は、図11に示すように、厚板42に由来する平行四辺形部材82bの切断面に沿って、平行四辺形部材82aの中央を通るように、表面に対して垂直に切断される。この切断によって、角柱状基板81から2個の構成の等しい接合基板86が作製される。ここで作製される接合基板86は、切断されて側面の形状が台形状となった台形部材87と2個の平行四辺形部材82bとから構成され、平行四辺形部材82bは、台形部材87の斜面側の一方向に順に接合されている。また、接合基板86には、角柱状基板81に対応して、各部材87,82b間の接合面に、台形部材87側から順に偏光分離膜31,青色反射膜32が設けられているとともに、斜面が露呈された末端の平行四辺形部材82bの斜面部分には赤色反射膜33が設けられている。このため、接合基板86は、作製されるまでの工程が異なるが、前述の実施形態の接合基板76と等しい構成となっている。したがって、前述と同様にして(図9参照)、接合基板86を、長手方向に対して垂直に一定のピッチで切断することにより、プリズムアセンブリ20が作製される。
【0056】
上述のように、仮接合面57を剥離するタイミングを変更しても、前述の実施形態と同様の効果を得ることができる。したがって、複数個のプリズムアセンブリ20をまとめて作製することができるので、寸法の累積的な交差を極めて小さく抑え、プリズムアセンブリ20を精度良く、効率的に製造することができる。また、プリズム36,37,38を個々に成形することが困難な小型のプリズムアセンブリ20をも容易に製造することができる。
【0057】
なお、仮接合面57を剥離するタイミングは上述の2つの例に限らない。例えば、仮接合面57を剥離せずに仮接合基板61を切断して得た仮接合面57を含む角柱状基板71を、長手方向に一定のピッチで切断し、プリズムアセンブリ20が仮接合面57を介して2個接合された部材を複数作製し、最後に仮接合面57を剥離してプリズムアセンブリ20を得るようにしても良い。こうした場合にも、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
また、上述の実施形態及び変形例では、接合基板76,86を切断した段階でプリズムアセンブリ20が得られる例を説明したが、角柱状基板71,81を作製した後の工程は、これに限らない。例えば、角柱状基板71からプリズムアセンブリ20を作製するときには、角柱状基板71を長手方向に対して一定のピッチで切断して、2個のプリズムアセンブリ20がプリズム38の斜面で仮接合面57を介して接合された部材を作製しておき、最後に仮接合面57を剥離してプリズムアセンブリ20を得るようにしても良い。また、変形例の角柱状基板81からプリズムアセンブリ20を作製するときには、角柱状基板81を長手方向に対して一定のピッチで切断して、2個分のプリズムアセンブリ20が依然として一体となった部材を作製しておき、最後に厚板42に由来する中央の部分を、その中央を通るように表面に対して垂直に切断し、2個のプリズムアセンブリ20を得るようにしても良い。こうした例のように、角柱状基板71,81からプリズムアセンブリ20を作製する手順は、上述の例に限らないが、より容易に、より精度良くプリズムアセンブリ20を作製するためには、切断するときの工具の位置合わせの回数等を低減することが好ましい。このため、上述の実施形態または変形例の手順でプリズムアセンブリ20を作製することが好ましく、上述の実施形態の手順でプリズムアセンブリを作製することが特に好ましい。
【0059】
なお、上述の実施形態では、プリズムアセンブリ20に偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33の3つの光学薄膜が含まれている例を説明したが、これに限らず、上述の実施形態で説明したプリズムアセンブリの製造方法は2以上の光学薄膜を含むプリズムアセンブリの製造に好適に適用される。上述の実施形態で説明したプリズムアセンブリの製造方法は、3以上の光学薄膜を含み、光硬化型接着剤への光の照射が特に妨げられ易いプリズムアセンブリを製造する場合に、特に効果的である。
【0060】
このように、仮接合面57は、仮接合基板61の作製後、任意のタイミングで剥離することができる。しかし、仮接合基板61の段階で仮接合面57を剥離すると、これにより作製された角柱状基板を各々に切断しなければならないため、切断のための位置調節等を行う回数が多くなり、上述の実施形態の手順でプリズムアセンブリ20を製造する場合よりも製造効率が劣る。また、角柱状基板71を切断した後に、仮接合面57を剥離してプリズムアセンブリ20を製造する場合には、仮接合面57を剥離する回数が多くなり、上述の実施形態の手順でプリズムアセンブリ20を製造する場合よりも製造効率が劣る。このため、効率良くプリズムアセンブリ20を製造するためには、上述の実施形態のように、角柱状基板71を作製した段階で仮接合面57を剥離することが最も好ましい。
【0061】
なお、上述の実施形態では、薄板41aの一方の面に偏光分離膜31を設け、薄板41bの各表面に青色反射膜32,赤色反射膜33を設ける例を説明したが、基板接合体51を作製するときに予め各光学薄膜を設けておく位置はこれに限らない。例えば、上述の実施形態で薄板41aの表面に成膜した偏光分離膜31は、厚板42の一方の面に成膜しておいても良い。
【0062】
また、上述の実施形態では、レーザー光が入射(出射)するプリズムアセンブリ20の入射面(及び出射面)には光学薄膜が設けられていない例を説明したが、プリズムアセンブリ20の入射面及び出射面には反射防止膜を設けることが好ましい。このように、プリズムアセンブリ20の入射面及び出射面に反射防止膜を設ける場合には、これらに対応する表面が形成された後であれば、任意のタイミングで反射防止膜を設けることができる。例えば、上述の実施形態では、仮接合基板61の表面がプリズムアセンブリ20の入射面及び出射面に対応し、また、仮接合面57は最終的には剥離される。このため、例えば、上述の実施形態で反射防止膜を設ける場合には、角柱状基板71の仮接合面57を剥離して接合基板76を作製した後に、接合基板76の表面に反射防止膜を設けることが好ましい。こうして、仮接合面57の剥離によって作製される基板の表面に反射防止膜を設けると、複数個分のプリズムアセンブリ20に同時に一様な反射防止膜を設けることができるので、効率良くプリズムアセンブリ20を作製することができる。また、前述のように、上述の実施形態と異なるタイミングで仮接合面57を剥離する場合にも、仮接合面57の剥離後、更なる切断の前に反射防止膜を設けることが好ましい。
【0063】
また、上述の実施形態では、光学薄膜として、偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33を設ける例を説明したが、これに限らず、プリズムアセンブリ20の光学的性質を良好にするために、これらの光学薄膜に加えて、反射防止膜等、他の光学薄膜を併せて設けることが好ましい。例えば、上述の実施形態では、薄板41aの一方の面に偏光分離膜31を成膜し、他方の表面には光学薄膜を設けない例を説明したが、偏光分離膜31が設けられていない方の表面には、赤色レーザー光や赤外レーザー光の反射を防止する反射防止膜を設けておくことが好ましい。
【0064】
なお、上述の実施形態では、基板41a,41b,42を合計で7枚重ね合わせて基板接合体51を作製する例を説明したが、これに限らず、基板41a,41b,42を重ね合わせる数は、製造するプリズムアセンブリ20に含まれる光学薄膜の数に応じて任意に定めて良い。例えば、光学薄膜が2つ含まれるプリズムアセンブリを製造する場合には、基板接合体51の上段側から順に、光学薄膜が設けられていない薄板,両面に光学薄膜を設けた薄板,厚板,両面に光学薄膜を設けた薄板,光学薄膜が設けられていない薄板の5枚の基板を接合し、基板接合体51を作製しても良い。
【0065】
また、上述の実施形態では、複数の光学薄膜が含まれるプリズムアセンブリの製造方法について説明したが、これを光学薄膜が1つ含まれるプリズムも上述の実施形態と同様に製造することができる。この場合、厚板側の一方の面に光学薄膜が設けられた薄板,厚板,厚板側の一方の面に光学薄膜が設けられた薄板の順に重ね合わせて基板接合体51を作製する。こうして、光学薄膜が1つ含まれるプリズムに上述の実施形態で説明した製造方法を応用することにより、切断,研磨工程の低減や切除する材料の低減等、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、上述の実施形態では、光ピックアップ11に用いられるプリズムアセンブリ20を例に説明したが、プリズムアセンブリ20の用途はこれに限らない。このため、プリズムアセンブリ20に設ける光学薄膜の種類も、プリズムアセンブリ20の用途に応じて、上述の実施形態の偏光分離膜31,青色反射膜32,赤色反射膜33に限らず、任意の光学的性質の薄膜を設けることができる。
【0067】
なお、上述の実施形態では、基板接合体51を作製するときに、紫外線により硬化する光硬化型接着剤を用いる例を説明したが、これに限らず、紫外線以外の波長帯の光により硬化する光硬化型接着剤を用いても良い。また、上述の実施形態では、仮接合体56の仮接合に、加温することにより剥離可能な接着剤を用いる例を説明したが、これに限らず、剥離可能な接着剤であれば、仮接合体56の仮接合に好適に用いることができる。例えば、水溶性の接着剤等、特定の条件で剥離可能な接着剤を仮接合に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】プリズムアセンブリを用いる光ピックアップの構成を概略的に示す説明図である。
【図2】プリズムアセンブリの構成を示す斜視図である。
【図3】プリズムアセンブリの製造に用いる基板を示す説明図である。
【図4】基板接合体を作製する工程を示す説明図である。
【図5】仮接合体を作製する工程を示す説明図である。
【図6】仮接合体から仮接合基板を作製する工程を示す説明図である。
【図7】仮接合基板から接合基板を作製する工程を示す説明図である。
【図8】接合基板から角柱状基板を作製する工程を示す説明図である。
【図9】角柱状基板からプリズムアセンブリを作製する工程を示す説明図である。
【図10】仮接合面を含まない角柱状基板を作製する例を示す説明図である。
【図11】仮接合面を含まない角柱状基板からプリズムアセンブリを製造する例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
11 光ピックアップ
12 光ディスク
16 青色LD
17 赤色LD
20 プリズムアセンブリ
22 青色用OEIC
23 赤色用OEIC
31 偏光分離膜
32 青色反射膜
33 赤色反射膜
36,37,38 プリズム
41,41a,41b 薄板(第2基板)
42 厚板(第1基板)
51 基板接合体
56 仮接合体
57 仮接合面
61 仮接合基板
71,81 角柱状基板
76,86 接合基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わせ面に光学薄膜が介在するように、1枚の厚い透明な第1基板の両面にそれぞれ1枚以上の薄い透明な第2基板を重ね合わせ、各々の重ね合わせ面に予め塗布された光硬化型接着剤を光照射により硬化させて基板接合体を作製する第1工程と、
複数の前記基板接合体を可剥離製接着剤で仮接合した仮接合体を作製する第2工程と、
前記基板接合体の各々の重ね合わせ面と一定角度で交差する方向に、前記仮接合体を一定ピッチで切断し、この切断による表裏面に前記第1基板の切断面と前記第2基板の切断面とが層状に前記仮接合を介して露呈した仮接合基板を作製する第3工程と、
前記第1基板からなる部分の中央を通るように、前記第1基板の切断面に沿った方向に表面に対して垂直に前記仮接合基板を切断し、複数の角柱状基板を作製する第4工程と、
前記角柱状基板の仮接合を剥離して、接合基板を作製する第5工程と、
前記接合基板を長手方向に対して垂直に一定ピッチで切断し、前記第1基板を切断して得られた第1プリズム要素を一端に有し、前記第1プリズム要素の一方向に前記第2基板を切断して得られた第2プリズム要素を1以上有するプリズムアセンブリを得る第6工程と、
を備えることを特徴とするプリズムアセンブリの製造方法。
【請求項2】
前記基板接合体は、前記光学薄膜の順序が前記第1基板を基準に対称に配置されるように作製されることを特徴とする請求項1記載のプリズムアセンブリの製造方法。
【請求項3】
前記第3工程で前記仮接合体を切断する前記一定角度に応じて、前記第1工程では前記第1基板と前記第2基板の位置を階段状にずらしながら重ね合わせて前記基板接合体を作製し、前記第2工程では前記基板接合体の位置を階段状にずらしながら重ね合わせて前記仮接合体を作製することを特徴とする請求項1または2記載のプリズムアセンブリの製造方法。
【請求項4】
前記第1工程で、前記光硬化型接着剤を硬化させるときに、前記重ね合わせ面に平行な方向から光を照射することを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のプリズムアセンブリの製造方法。
【請求項5】
前記光硬化型接着剤は、紫外線により硬化する紫外線硬化型の接着剤であることを特徴とする請求項1ないし4いずれかに記載のプリズムアセンブリの製造方法。
【請求項6】
前記基板接合体は前記第2基板の両側にそれぞれ2以上の前記第1基板を配置して作製され、前記プリズムアセンブリは、前記第2プリズム要素を2以上有するように作製されることを特徴とする請求項1ないし5いずれかに記載のプリズムアセンブリの製造方法。
【請求項7】
重ね合わせ面に光学薄膜が介在するように、1枚の厚い透明な第1基板の両面にそれぞれ1枚以上の薄い透明な第2基板を重ね合わせ、各々重ね合わせ面に予め塗布された光硬化型接着剤を光照射により硬化させて基板接合体を作製する第1工程と、
複数の前記基板接合体を可剥離製接着剤で仮接合した仮接合体を作製する第2工程と、
前記基板接合体の各々の重ね合わせ面と一定角度で交差する方向に、前記仮接合体を一定ピッチで切断し、この切断による表裏面に前記第1基板の切断面と前記第2基板の切断面とが層状に前記仮接合を介して露呈した仮接合基板を作製する第3工程と、
前記仮接合基板の仮接合を剥離して前記基板接合体の単位に分離した角柱状基板を作製する工程と、
前記第1基板の切断面に沿って、前記第1基板からなる部分の中央を通るように、表面に対して垂直に前記角柱状基板を切断し、接合基板を作製する工程と、
前記角柱状基板を長手方向と垂直に一定ピッチで切断し、前記第1基板を切断して得られた第1プリズム要素を一端に有し、前記第2基板を切断して得られた第2プリズム要素が前記第1プリズムの一方向に1以上有するプリズムアセンブリを得る第6工程と、
を備えることを特徴とするプリズムアセンブリの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−169830(P2010−169830A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11269(P2009−11269)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】