説明

プリンタ一体型カメラ

【目的】 対象被写体を撮像後、即時にプリント可能であるとともに、そのプリントされた写真をカメラ本体内に収容可能なカメラを提供する。
【構成】 撮像データをシート状媒体(40)にプリントするプリント機構(30)を内蔵したプリンタ一体型カメラ(1A)である。プリンタ一体型カメラ(1A)は、箱状の本体(10)と、その本体(10)に固定され、対象被写体を取り込むレンズ(20)と、本体(10)においてレンズ(20)とは反対側に、プリント機構(30)がプリントしたシート状媒体(40)の排出口(31)と、を備えている。プリント済みのシート状媒体(40)は、本体(10)がなす範囲に収まるように排出口(31)から排出される。前記プリント機構(30)は、対象被写体がレンズ(20)に入る画像パターンにて、対象被写体の姿勢通りにプリントする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置(カメラ)の技術に関し、特に、撮像装置にプリント機構を内蔵した技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象被写体を撮像する撮像装置としては、撮像データをフィルムに記録し、そのフィルムを現像してプリントするフィルム(銀塩)カメラ、撮影直後にいわゆるインスタントフィルムに対して自動的に現像を行い、カメラの前方や上方などから現像した写真を排出するいわゆるインスタントカメラ、撮像データをデジタルデータとしてフラッシュメモリなどの記憶媒体に記録し、そのフラッシュメモリをパソコンや印刷用端末装置等に接続してプリントするデジタルカメラが知られている。
【0003】
近年では、撮像データを電子的に処理したり送受信したりすることの簡便さなどの利便性に優れたデジタルカメラの人気が高い。
一方、いわゆるインスタントカメラは、撮ったその場で写真を、紙媒体にて見ることができるという点が優れている。
【0004】
ここで、従来のインスタントカメラの技術として特開平2003−233118号公報を抽出した。
この技術は、撮影済みのインスタント写真フィルムを、一対のローラに挟んで外部に送り出すインスタントカメラである。撮影済みのインスタント写真フィルムを排出するためのスリットを開閉自在に覆うとともに、そのスリットから外部に送り出されてきたインスタント写真フィルムを、スリットから送り出されてきた方向とは異なる方向にガイドするガイド部材を備えている。
この技術によると、フィルム排出口からインスタントフィルムパックまでの距離を短くすることによるインスタントカメラの小型化と、ライトパイピングにより引き起こされる未露光のインスタント写真フィルムに対する不用意な光の照射の抑制との両立を図ることが可能となる。
【0005】
【特許文献1】特開平2003−233118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、多くのインスタントカメラでは、プリントされた写真はカメラ本体の前方や上方など、カメラ本体よりも飛び出すように排出される。すると、排出された写真がそのカメラの使用者(カメラマン)の視界を遮るという問題点があった。
【0007】
また、特許文献1に記載の技術では、即時性と小型化が図られたインスタントカメラの技術が記載されているが、プリントされた写真は、やはりカメラ本体から飛び出してしまう。このため、前述した課題を解決するための技術は開示されていない。
したがって、対象被写体を撮像直後にプリント可能であるとともに、そのプリントされた排出された写真がカメラマンの視界を遮らないカメラが望まれていた。
【0008】
請求項1から請求項10記載の発明は、対象被写体を撮像直後にプリント可能であるとともに、そのプリントされた排出された写真がカメラマンの視界を遮らないカメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、撮像データをシート状媒体(40)にプリントするプリント機構(30)を内蔵したカメラに係る。
すなわち、箱状の本体(10)と、その本体(10)に固定され、対象被写体を取り込むレンズ(20)と、前記本体(10)において前記レンズ(20)とは反対側に、前記プリント機構(30)がプリントしたシート状媒体(40)の排出口(31)と、を備え、プリント済みのシート状媒体(40)は、前記本体(10)がなす範囲に収まるように前記排出口(31)から排出されることとしたプリンタ一体型カメラである。
【0010】
(作用)
本発明に係るプリンタ一体型カメラを使用して撮影する者を、以下の説明における便宜上「カメラマン」と記す。
対象被写体はレンズ(20)から取り込まれ、本体(10)に内蔵されたプリント機構(30)にてその対象被写体が撮像データとしてシート状媒体(40)にプリントされる。したがって、本体(10)とは別体として形成されたプリンタに接続したり、記憶メディアを移動させたり、赤外線などを使ったデータ通信を行ったりしなくても、プリントできる。
プリントされるシート状媒体(40)は、本体(10)がなす範囲に収まるように排出口(31)から排出されるので、撮影後にカメラマンの視界を遮るなどの不都合がない。
【0011】
(請求項2)
請求項2記載の発明は、請求項1に記載のプリンタ一体型カメラを限定したものである。
すなわち、前記排出口(31)から排出されるプリント済みのシート状媒体(40)は、撮像データがプリントされた面が前記レンズ(20)とは反対側に位置するとともに、前記プリント機構(30)は、対象被写体がレンズ(20)に入る画像パターンにて、対象被写体の姿勢通りにプリントすることを特徴とする。
【0012】
(作用)
排出口(31)から排出されるプリント済みのシート状媒体(40)は、撮像データがプリントされた面が前記レンズ(20)とは反対側、すなわち、カメラマンに向いて排出される。そして、対象被写体がレンズ(20)に入る画像パターンにて、対象被写体の姿勢通りにプリントされる。したがって、レンズ越しに捉えた撮像データがそのままの姿勢でプリントされてくるので、カメラマンの感覚に合うプリントが得られる。
【0013】
(請求項3)
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものである。
すなわち、前記本体(10)には、前記レンズ(20)が取り込むデータを出力する液晶画面(11)を備えるとともに、その液晶画面(11)は、前記排出口(31)から排出されるプリント済みのシート状媒体(40)に重なる位置へ配置したことを特徴とする。
【0014】
(作用)
本体(10)には、前記レンズ(20)が取り込むデータを出力する液晶画面(11)を備えるものの、その液晶画面(11)は、前記排出口(31)から排出されるプリント済みのシート状媒体(40)に重なる位置へ配置されている。そのため、プリントされるシート状媒体(40)は、本体(10)がなす範囲に収まるように排出口(31)から排出されるという特性を損なうことなく、本体(10)の小型化に寄与する構造となる。
なお、カメラマンとしては、液晶画面(11)とプリント済みのシート状媒体(40)とは、選択的にしか見ることがないのが普通であり、特段の不便さはない。
【0015】
(請求項4)
請求項4記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものである。
すなわち、複数枚のシート状媒体(40)を収納するシート収容ケース(50)を、前記本体(10)とは着脱自在の別体にて形成し、そのシート収容ケース(50)は、前記本体(10)における前記排出口(31)に隣接させて装着するように形成したことを特徴とする。
【0016】
(作用)
複数枚のシート状媒体(40)を収納するシート収容ケース(50)は、本体(10)における排出口(31)に隣接しており、且つ着脱自在なので、本体(10)の小型化に寄与する構造となる。また、シート収容ケース(50)を本体(10)から外せば、シート状媒体(40)の補充作業が容易となる。
【0017】
(請求項5)
請求項5記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものである。
すなわち、前記レンズ(20)が取り込む画像を目視可能なファインダ(14)を前記本体(10)に備え、そのファインダ(14)は、前記排出口(31)から排出されるプリント済みのシート状媒体(40))に隣接するように形成したことを特徴とする。
【0018】
(作用)
ファインダ(14)は、前記排出口(31)から排出されるプリント済みのシート状媒体(40))に隣接するように形成すれば、撮影時に対象被写体が見やすい。このため、液晶画面のみに頼らなくても良いことになるので、撮影時の手振れ防止に寄与する。
【0019】
(請求項6)
請求項6記載の発明は、請求項2から請求項5のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものである。
すなわち、前記プリント機構(30)は、プリントされるシート状媒体(40)よりもレンズ(20)側に位置するプラテンローラ(32)と、当該シート状媒体(40)よりもレンズ(20)と反対側に位置するサーマルヘッド(33)とを備えたことを特徴とする。
【0020】
(作用)
プラテンローラ(32)をプリントされるシート状媒体(40)よりもレンズ(20)側に位置させるとともに、サーマルヘッド(33)を当該シート状媒体(40)よりもレンズ(20)と反対側に位置させたので、プリント機構(30)が合理的に配置され、本体(10)の小型化に寄与する構造となる。
【0021】
(請求項7)
請求項7記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものであり、
撮像後にプリントされた撮像データを更に追加してプリント可能なコピーボタン(15)を備えたことを特徴とする。
【0022】
(作用)
カメラマンが撮像すると、その撮像データは排出口からプリントされる。コピーボタン(15)を押すと、このプリントされた写真と同一の写真がプリントされる。つまり、その場で「焼き増し」が可能になる。例えば、被写体に複数の人が含まれる記念撮影などの場合、人数分のプリントがその場で可能となる。
【0023】
(請求項8)
請求項8記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものである。
複数の撮像データを記録可能な記憶手段を備え、その記憶手段に記録された撮像データのうち、選択された撮像データをプリントするコピーボタン(15)を備えたことを特徴とする。
【0024】
(作用)
記憶手段に撮像した複数の撮像データが記録されている。カメラマンは所望する撮像データを選択し、コピーボタン(15)を押すと、選択された撮像データがプリントされる。したがって、好きな撮像データをその場でプリントすることが可能となり便利である。
【0025】
(請求項9)
請求項9記載の発明は、請求項1から請求項8のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラを限定したものであり、搬送時の圧力よりも高い圧力を掛けられた場合に印刷した色が定着する構造を備えたシート状媒体(40)を採用した場合に用いられる。
すなわち、前記プリント機構(30)は、収納位置にあるシート状媒体(40)に対する摩擦力でそのシート状媒体(40)を相対的に送り出す用紙送り機構(36)と、 前記シート状媒体(40)における面に対して局所的な加熱が可能なサーマルヘッド(33)と、 前記シート状媒体(40)の面に対して局所的にかける圧力を制御する圧力機構(例えばプラテンローラ32とそのプラテンローに向かい合うサーマルヘッド33との組合せ)と、 その圧力機構(32)から出されたシート状媒体(40)を待機させる第一待機スペース(37)と、 その第一待機スペース(37)から前記圧力機構(32)および前記サーマルヘッド(33)を再び通過させる回転自在な搬送補助ローラ(35a,35b)と、 その搬送補助ローラ(35a,35b)から搬送されたシート状媒体(40)を排出する排出口(31)と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
(作用)
プリント命令(たとえば制御部(51)からの制御信号)に基づいて用紙送り機構(36)が回転する。バネの付勢力がもたらすシート状媒体(40)と用紙送り機構(36)との間に生じた摩擦力によって、用紙送り機構(36)の回転に連動してシート状媒体(40)がサーマルヘッド(33)に向けて搬送される。サーマルヘッド(33)が、シート状媒体(40)に加熱処理を施す。
また、圧力機構(32)がシート状媒体(40)を搬送補助ローラ(35a,35b)に向けて搬送する。ここで、シート状媒体(40)は、圧力機構(32)によって加圧され、シート状媒体(40)の発色について定着が行われる。
【0027】
この状態ではシート状媒体(40)は、一旦、第一待機スペース(37)によって待機されているが、搬送補助ローラ(35a,35b)が逆向きに回転し、シート状媒体(40)をサーマルヘッド(33)に向けて再び搬送する。そして、サーマルヘッド(33)が、シート状媒体(40)に加熱処理し画像を形成する。そして、圧力機構(32)および搬送補助ローラ(35a,35b)が回転し、シート状媒体(40)を排出口(31)に搬送させる。
【0028】
本請求項に記載の発明によれば、インクシート収容ケースやインクリボン等の消耗品が不要となる。そのため、従来のインクシート収容ケース等を必要とするプリンタに比べて、インクシート収容ケースの交換が不要で、メインテナンスが容易になる。
【0029】
また、使用済みのインクリボンやインク類のカセットといった廃棄物をなくすことができる。なお、本実施形態のプリンタ一体型カメラによれば、インクリボンを使用する方式のように、プリント内容がシート側に残ることも無いので、機密保持性に優れている。
【0030】
(請求項10)
請求項10記載の発明は、請求項9に記載のプリンタ一体型カメラを限定したものであり、
前記搬送補助ローラ(35a,35b)は、前記サーマルヘッド(33)から搬送されてきたシート状媒体(40)を加圧する加圧ローラとしても機能させることとしたことを特徴とする。
【0031】
(作用)
搬送補助ローラ(35a,35b)が、サーマルヘッド(33)から搬送されてきたシート状媒体(40)を加圧する。つまり、サーマルヘッド(33)や圧力機構(32)で加圧する必要がなくなるので、各処理の負荷分散が可能となる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1から請求項10に記載の発明によれば、対象被写体を撮像後、即時にプリント可能であるとともに、そのプリントされた写真をカメラ本体内に収容可能なプリンタ一体型カメラを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の実施の形態について、図面を参照させながら説明する。ここで使用する図面は、図1から図11である。図1は、第一実施形態におけるプリンタ一体型カメラの全体構成を示した斜視図であり、図2は、記録シートの断面構成図であり、図3は、記録シート内の高温発色カプセル、低温発色カプセルおよび低温発色抑制カプセルの特性を説明ための図であり、図4は、発色カプセルの発色原理を説明ための図であり、図5は、低温発色抑制カプセルの発色抑制作用を説明するための図であり、図6は、プリント機構の構成を概略的に示した平面断面図であり、図7および図8は、プリント機構を示した正面図あり、図9および図10は、プリント機構を搭載したプリンタ一体型カメラを示した概略図である。
【0034】
(プリンタ一体型カメラ)
図1において、プリンタ一体型カメラ1Aは、対象となる対象被写体をデジタルデータ(以下、撮像データと表記する)として記憶媒体(図示は表示しない)に記録し、その記録された撮像データを即時に記録シート(シート状媒体)40にプリントするプリント機構30を備えたインスタントカメラ機能付きのデジタルカメラである。
このプリンタ一体型カメラ1Aは、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary
Metal Oxide Semiconductor)などの光に反応する半導体素子を使って映像を電気信号に変換し、対象被写体を撮像データとしてフラッシュメモリなどの記憶媒体(図示は表示しない)に記憶する。
【0035】
プリンタ一体型カメラ1Aの構成としては、箱状に形成されたカメラ本体(本体)10と、そのカメラ本体10に固定され、対象被写体が取り込まれるレンズ20と、そのレンズ20が取り込んだデータが出力される液晶画面11と、プリント機構30によってプリントされた記録シート40が排出される排出口31と、複数枚の記録シート40が収納可能なシート収容ケース50と、マイクロコンピュータ等の電子回路であり、カメラの撮像及びプリント命令等の各種制御や動作を統括的に制御する制御部51と、撮像された撮像データが記録される記憶媒体(図示は表示しない)とを備えて構成されている。
【0036】
カメラ本体10には、対象被写体を撮像するための撮像信号を送信するシャッターボタン12と、そのシャッターボタン12と連動して強力な光を発する補助照明装置であり、夜間撮影や暗がりでの撮影に使用されるフラッシュ13と、対象被写体を目視可能なファインダ14と、最新の撮像データや記憶媒体に記録された撮像データから所望する撮像データを選択し、その撮像データをプリントするコピーボタン15とを備えている。
【0037】
液晶画面11は、カメラ本体10における反レンズ20側に、カメラ本体10よりも手前側に突出した略長方形の枠体11aに保持されて形成されている。液晶画面11は、例えば、薄膜状のトランジスタを利用したもので形成されたTFT液晶などからなり、レンズ20が取り込んだ対象被写体を撮像データとして画面に出力する。
【0038】
(記録シート)
本実施形態で用いられる記録シートについて説明する。
図2は、本実施形態で用いる記録シート40の断面構成図である。
図2に示すように、記録シート40は、例えば、基材41に高温発色層43、混防止層45、低温発色層47および保護層49を順に積層して構成される。
記録シート40は、低温発色層47内に低温発色カプセル27の他に低温発色抑制カプセル28を内包している。記録シート40は、画像形成時に低温発色カプセル27が低温発色された後に、加圧されて低温発色抑制カプセル28が破壊され、低温定着される。その後に、高温発色カプセル23が高温発色される。
【0039】
基材41は、例えば、ポリエステルやポリエチレンテレフタレート(PET)等によって構成される。基材41は、白色あるいは透明である。
高温発色層43は、高温発色カプセル23、顕色剤および必要に応じて塩基性物質または酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。高温発色カプセル23は、例えば、発色剤を内包する。高温発色層43は、例えば、図3に示す温度T3(例えば、330℃)以上の高温状態となると、高温発色カプセル23が内包する発色剤と高温発色層43内の顕色剤とが反応して発色する。
【0040】
高温発色カプセル23は、いわゆるマイクロカプセルであり、その壁が300〜350℃のガラス転移点を持つポリウレアあるいはポリウレタンからなる。高温発色カプセル23は、ガラス転移点前後で物質浸透(透過)性が大きくなる特性を持つ。これにより、図4(A)に示すように、温度T3未満(非高温)においては、高温発色カプセル23内に顕色剤は浸透せず、高温発色カプセル23内の発色剤は発色しない。一方、図4(B)に示すように、温度T3以上(上記高温状態)になると、高温発色層13内の顕色剤が高温発色カプセル23内に浸透し、当該顕色剤と高温発色カプセル23内の発色剤とが反応して色素が形成されて発色する。
【0041】
高温発色カプセル23等の本実施形態におけるマイクロカプセルの壁は、例えば、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂等の合成樹脂で形成される。具体的には、高温発色カプセル23の壁として、メラミン−ホルムアルデヒドポリマー、尿素−ホルムアルデヒドポリマー等が用いられる。
また、マイクロカプセルの平均粒径は、例えば約3〜4μmであり、そのガラス転移点は壁の材質によって規定される。マイクロカプセルは、反応する物質を多層構造の状態で隔離しておくだけでなく、マイクロカプセルの壁を隔ててミクロンに分散して共存させることにより、数μの薄い塗布膜の中で、常温では十分に隔離性を保ちながら、加熱時に瞬時に十分な物質浸透性を持たせる機能を持つ。
【0042】
なお、高温発色カプセル23は、上記高温状態になると、その壁が溶けて、カプセル内の発色剤がカプセル外に流出して、カプセル外の顕色剤と反応して発色するように構成してもよい。
本実施形態において、発色剤と、それに反応する顕色剤との組み合わせには、例えば、ジアゾ化合物(発色剤)とカプラー(顕色剤)との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料(発色剤)と電子受容性化合物(顕色剤)との組み合わせ等がある。なお、ジアゾ化合物の化学構造とカプラーの化学構造との組み合わせ、あるいは電子供与性無色染料の化学構造と電子受容性化合物の化学構造との組み合わせによって任意の色相を発色できることは公知である。
【0043】
なお、上記ジアゾ化合物は、例えば、リン酸トリクレジル等である。ジアゾ化合物は、電子供与性染色前駆体(染料前駆体)であり、塩基性雰囲気でカプラーと反応して発色する。カプラーは、例えば、レゾルシルやフロログルシンであり、塩基性雰囲気中でジアゾ化合物とカップリングして色素を形成する。塩基性雰囲気は、水難溶性か水不溶性の塩基性物質や加熱によりアルカリを発生する物質(例えば、有機アンモニウム塩)によって作られる。
また、上記電子供与性無色染料は例えばロイコ染料であり、電子受容性化合物は例えばフェノール系酸性物質である。この組み合わせでは、ロイコ染料が酸性物質である顕色剤に吸着して酸化されて発色する。
【0044】
また、上記カプラーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3ナフトエ酸アニリド等が用いられる。
また、上記電子受容性化合物としては、例えば、フェノール化合物、有機酸またはその金属塩、オキシ安息香酸エステル等の酸性物質が用いられる。
【0045】
また、本実施形態では、発色剤をマイクロカプセル内に内包する場合を例示するが、例えば、発色剤と顕色剤とをバインダ内に分散して配置し、過熱によりバインダが溶融して発色剤と顕色剤とが反応するような構成にしてもよい。
【0046】
混防止層45は、高温発色層43と低温発色層47との間でカプセルが混ざり合うことを防止するための層である。
【0047】
低温発色層47は、低温発色カプセル27、顕色剤、低温発色抑制カプセル28、並びに必要に応じて塩基性物質または酸性物質をバインダ材中に分散させて構成される。低温発色カプセル27は、発色剤を内包し、その壁のガラス転移点が例えば、90〜140℃の低温である。低温発色層47は、例えば、図3に示す温度T1(例えば、110℃)以上の低温状態となると、低温発色カプセル27が内包する発色剤と低温発色層47内の発色剤とが反応して発色する。低温発色カプセル27の壁のガラス転移点を除いて、発色の原理は、高温発色カプセル23と同じである。
【0048】
本実施形態において、高温発色カプセル23および低温発色カプセル27が内包する発色剤と、その外部の顕色剤とが反応する条件として、圧力は不要である。
【0049】
低温発色抑制カプセル28は、図5(A)に示すように、通常圧力(非破壊圧力)状態で、低温発色層47の発色機能を抑制する低温発色抑制剤を内包する。
低温発色抑制カプセル28は、図5(B)に示すように、図3に示す破壊圧力P1以上の圧力が加わると、カプセルが破壊状態(あるいは浸透状態)となり、低温発色抑制剤を低温発色抑制カプセル28外に流出させる。
低温発色抑制カプセル28等のマイクロカプセルの破壊(浸透)圧力は、マイクロカプセルの径と壁厚との関係、並びに壁の材質によって規定される。
低温発色抑制カプセル28が内包する低温発色抑制剤は、例えば、低温発色カプセル27内は発色剤、低温発色層47内の顕色剤、塩基性物質および酸性物質のうち、1つ以上の物質の化学構造を変化させて、化学反応を起こさないようにする機能、あるいは化学反応しても色素が生成されないようにする機能を有する。
また、低温発色抑制カプセル28は、低温発色カプセル27のカプセルの壁の物質透過性を変化させて浸透性を低下させて発色反応を抑制する機能を有していてもよい。
なお、本実施形態において、低温発色抑制カプセル28が内包する低温発色抑制剤がカプセル外部に流出する条件として、温度条件は特に不要である。
【0050】
低温発色層47において電子供与性無色染料(発色剤:例えばロイコ染料)と電子受容性化合物(顕色剤:例えば酸性物質)との組み合わせで発色する場合には、低温発色抑制カプセル28として、例えば、リン酸エステル類、テトラヒドロフタル酸、脂肪酸エステル、2価アルコールエステル類、エポキシ系可塑剤あるいはトリメット酸系可塑剤等が用いられる。
【0051】
保護層49は、低温発色層47を保護するための層である。保護層49は、例えば、耐熱機能を有する。
【0052】
本実施形態において、高温発色層43および低温発色層47の厚みは、例えば1〜4μmである。
【0053】
(プリント機構)
次に、図6から図8を参照してプリント機構30について説明する。
プリント機構30は、温度と時間を制御して、高温発色層と低温発色層とを連続して発色することが可能な1ヘッド1パス方式を採用している。ここでいう1ヘッドとは後述するサーマルヘッド33のことであり、1パスとは、記録シート40がサーマルヘッド33と一回接触して通過するだけで、画像形成が可能な印刷方式のことである。
【0054】
プリント機構30は、プリントされる記録シート40よりもレンズ20側に位置するプラテンローラ32と、記録シート40の面に対して局所的にかける圧力を制御する圧力機構70と、当該記録シート40よりも反レンズ20側に位置するサーマルヘッド33と、シート収容ケース50から記録シート40をサーマルヘッド33側に搬送するシート送りローラ36が設けられている。
【0055】
(シート送りローラ)
シート送りローラ36は、シート収容ケース50の最上段の記録シート40に接触して位置し、制御部51からの制御信号に基づいてモータ(図示は表示しない)によって回転駆動される。シート送りローラ36が回転すると、バネ34の付勢力により記録シート40とシート送りローラ36との間に生じた摩擦力によって、シート送りローラ36の回転に連動してシート収容ケース50の最上段の記録シート40がサーマルヘッド33に向けて搬送される。なお、制御部51は、上記制御信号に基づいて、モータ(シート送りローラ36)の回転量を制御することで、記録シート40の位置や送り量を制御する。
【0056】
(サーマルヘッド)
サーマルヘッド33は、複数の発熱素子を主走査方向にライン状に並べた発熱素子アレイを備えている。サーマルヘッド33は、発熱素子アレイを記録シート40に接触した状態で、形成する画像に応じたパターンで各発熱素子を発熱させる。本実施形態では、各発熱素子は、少なくとも、非発熱状態、低温発熱状態および高温発熱状態の3状態を有し、これら3状態のうち一つが制御部51によって選択される。
【0057】
各発熱素子の発熱温度は、その発熱素子に接続された抵抗に電流を流す時間によって制御される。制御部51は、加熱時間に応じて、サーマルヘッド33の各発熱素子に電流を流す時間を規定するストローブ信号のパルス幅を制御する。なお、サーマルヘッド33は、低温発色状態および高温発色状態の各々において、画像データの諧調に応じた複数の発熱温度を調整可能にしてもよい。
【0058】
(プラテンローラ)
プラテンローラ32は、記録シート40の搬送経路を挟んだ反対側に設けられている。プラテンローラ32は、記録シート40の搬送に応じて回転し、記録シート40とサーマルヘッド33の発熱素子との接触状態を安定にする。また、プラテンローラ32及びサーマルヘッド33に隣接した搬送経路の下流側には、排出口31から排出された記録シート40を挟み込んで搬送させる搬送補助ローラ35a、35bが対向配置されている。
【0059】
図7および図8に示すように、圧力機構70は、印刷状態を発色させる高圧状態およびその高圧状態よりも低い圧力の低圧状態という少なくとも二段階を制御可能な機能を有する。
この圧力機構70は、サーマルヘッド33を記録シート40に押し付ける方向への回動を可能とする回転軸71と、その回転軸71に対する記録シート40に押し付ける方向への付勢力を与える付勢手段と、その付勢手段に対する付勢力を二段階に切り替え可能な切替機構と、を備えている。
【0060】
切替機構は、前述した付勢手段を用いている。すなわち、低圧状態を作り出すための低圧バネ72と高圧状態を作り出すための高圧バネ73と、それら低圧バネ72および高圧バネ73の一端は、サーマルヘッド33の回転軸71に対するヘッド部33aとは反対側に固定し、高圧バネ73が効かなくなる無圧位置と高圧状態を作り出す高圧位置との少なくとも二段階を実現可能な回転カム76と、その回転カム76の回転を制御するモータ(図示を省略)と、そのモータの制御によって回転した回転カム76の周面を移動して、サーマルヘッド33を押圧させるL字梃子(てこ)78とから構成されている。
【0061】
(バネ)
低圧バネ72の一端72aはフック状に形成されており、サーマルヘッド33に固定された低圧バネ支持部33bに接続されている。同様に、フック状の他端72bは、低圧バネ支持部33bに対向配置された第二低圧バネ支持部33bに接続されている。
高圧バネ73の一端73aもフック状に形成されており、L字梃子78に固定された高圧バネ支持部78bに接続されている。フック状の他端73bは、高圧バネ支持部78bに対向配置された第二高圧バネ支持部78cに接続されている。
【0062】
(L字梃子)
L字梃子78は、サーマルヘッド33と回転軸71によって回転自在に結合されており、サーマルヘッド33側に位置する一端に、サーマルヘッド33の上部33dに当接する当接部78aとを備え、サーマルヘッド33の回転軸71に対するヘッド部33aとは反対側に固定されている。また、L字梃子78の他端78dは、回転カム76の切り欠き部76aに接続され、回転カム76の回転動作に応じて高圧バネ73が伸縮し、高圧状態と低圧状態が作られる。
【0063】
(回転カム)
回転カム76は、モータからの駆動力が伝達されることで同一方向に回転する回転体であり、その円周上に切り欠き部76aを備えている。また、高圧バネ73が効かなくなる低圧位置と、高圧状態を作り出す高圧位置との少なくとも二段階の状態を実現可能な機能を備えている。
すなわち、図7に示した状態は、切り欠き部76aにL字梃子78の端部が噛み合った状態である。この状態は高圧状態であり、サーマルヘッド33の上部33dにL字梃子78の当接部78aが当接して押圧している。このため、サーマルヘッド33だけの押圧力に加え、L字梃子78の押圧力も加わることになる。
【0064】
また、図8に示した状態は、回転カム76が矢印方向に回転し、切り欠き部76aに対してL字梃子78の端部が外れた状態である。この状態は低圧状態(無圧)であり、サーマルヘッド33の上部33dにL字梃子78の当接部78aが外れている。このため、低圧バネ72のみによる付勢力が産み出す押圧力が掛かっていることになる。
【0065】
図9は、圧力機構70を図示したプリント機構30を搭載したプリンタ一体型カメラ1Aである。また、図10は、低圧バネ72および高圧バネ73の設置箇所と、L字梃子78の先端部分に回転軸71によって軸支してサーマルヘッド33に接続させている点が、図9のプリント機構30とは異なるが、その他は、前述したプリント機構の構成と同一である。図10のように構成すれば、カメラ本体10からプリント機構30の出っ張り部分を少なくすることができるので、プリンタ一体型カメラ1Aの小型化に寄与する。
【0066】
図9及び図10に示したプリント機構30の作用としては、次のようになる。
まず、カメラマンによってシャッターボタン12が押されると、制御部51がレンズ20によって撮像された撮像信号をデジタルデータの撮像データに変換し、一時メモリに記憶し、液晶画面に出力する。続けて、一時メモリに記憶された撮像データを記録シート40にプリントするためのプリント実行信号を送信する。
【0067】
プリント機構30は、プリント実行信号を受信すると、制御部51からの制御に基づいてシート送りローラ36を回転させ、その回転に連動してシート収容ケース50の最上段に収容された記録シート40をサーマルヘッド33に向けて搬送させる。そして、搬送された記録シート40は、プラテンローラ32とサーマルヘッド33によって加熱および加圧によって印刷処理される。
【0068】
この印刷処理としては、制御部51からの制御に基づいたサーマルヘッド33が、記録シート40に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を低温に発熱させる。これにより、記録シート40の低温発色層17が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T1で低温加熱され、低温加熱された位置の低温発色カプセル27内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(低温発色)する。なお、制御部51は、各発色において、加熱時間によって発色の諧調を制御する。
【0069】
続いて、記録シート40は、制御部51からの制御に基づき、プラテンローラ32によって破壊圧力で加圧される。これにより、発色層内の発色抑制カプセルが破壊され、発色抑制カプセル内の発色抑制剤がカプセル外部に流出し、発色剤と顕色剤との反応が抑制される。
そして、記録シート40に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を高温に発熱させる。これにより、記録シート40の高温発色層43が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T3で高温加熱され、高温加熱された位置の高温発色カプセル23内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(高温発色)する。なお、制御部51、好ましくは、高温発色時の加熱時間を、低温発色時に比べて短くする。
【0070】
また、印刷処理されたプリント済みの記録シート40は、プラテンローラ32から搬送補助ローラ35a,35bに向けて搬送される。搬送補助ローラ35a,35bは、記録シート40を排出口31に向けて搬送させる。排出口31から排出された記録シート40は、液晶画面11に向けて搬送されていき、液晶画面11上に重なって配置される。
【0071】
すなわち、液晶画面11の大きさと記録シート40の大きさは略等しく形成されていることになる。これは、プリント済みの記録シート40は、カメラ本体10がなす範囲、つまり、カメラ本体10の幅方向の大きさ内に収まるようにするためである。このようにすれば、プリント済みの記録シート40が排出口31から排出されるという特性を損なうことなくカメラ本体10内に収まる。これにより、カメラ本体10の小型化に寄与する構造となる。また、カメラ本体10とは別体として形成されたプリンタにケーブル接続したり、記憶メディアを移動させたり、赤外線などを用いてデータを外部のプリンタなどに送信したりしなくても、プリントできることになる。
【0072】
また、カメラマンとしては、液晶画面11とプリント済みの記録シート40とは、選択的にしか見ることがないのが普通であり、プリント済みの記録シート40が液晶画面11上に重なって排出されても、特段の不便さはない。また、排出されたプリント済みの記録シート40が、カメラマンの視界を遮ることがなくなるので連続撮影をする場合にも邪魔にならない。
【0073】
さらに、プリント済みの記録シート40が排出口31から排出される際、撮像データがプリントされた面が反レンズ20側に位置して排出されてくる。このように形成することによって、レンズ越しに捉えた撮像データがそのままプリントされてくるので、カメラマンの感覚に合うプリント画像が得られる。
【0074】
なお、図示は省略するが、プラテンローラ32によって加圧処理を実現しても良い。加圧処理を図9または図10のようにサーマルヘッド33にて実現する機構であっても、プラテンローラ32にて実現する機構であっても、記録シート40への加熱処理から加圧処理までの一連の処理を実現する機構を小型化することができるので、本実施形態に係るカメラ全体の小型化に寄与する。
【0075】
また、本実施形態におけるプリント機構30は、高温発色層と低温発色層とを連続して発色して1ヘッド1パス方式を実現しているが、高温発色層と中温発色層や中温発色層と低温発色層としても良い。高温発色層、中温発色層及び低温発色層としても良いが、いずれにしてもサーマルヘッド33のみで加熱処理と加圧処理を実現できれば製造コストの削減に有用である。
【0076】
(第二実施形態)
図11は、プリンタ一体型カメラの他の形態を示したプリンタ一体型カメラ1Bである。このプリンタ一体型カメラ1Bは、箱状に形成されたカメラ本体10と、レンズ20と、液晶画面11と、プラテンローラ32、サーマルヘッド33、圧力機構70等を備えたプリント機構30と、プリントされた記録シート40を排出する排出口31と、シート収容ケース50とを備えるほか、シャッターボタン12と、フラッシュ13、ファインダ14及びコピーボタン15を備えている点は、前述したプリンタ一体型カメラ1Aと全く同様である。
【0077】
しかしながら、複数枚の記録シート40が収納可能なシート収容ケース50がカメラ本体10から着脱可能な着脱式シート収容ケース50Bとした点で、前述したプリンタ一体型カメラ1Aと異なる。着脱式シート収容ケース50Bは、内部に複数枚の記録シート40が収納可能な空間を有し、カメラ本体10とは別体に形成されている。その着脱式シート収容ケース50Bは、カメラ本体10における排出口31に隣接されて装着される。したがって、シート収容ケースのみを外せば記録シート40の補充作業が容易となるし、カメラ本体10の小型化に寄与する構造となる。
なお、この着脱式シート収容ケース50Bは、記録シート40の収容枚数をより多くした大容量タイプや、反対に少なくして軽量化を図った軽量タイプなどをオプションとして採用することもできる。
【0078】
(第三実施形態)
図12は、プリンタ一体型カメラの他の形態を示したプリンタ一体型カメラ1Cである。このプリンタ一体型カメラ1Cもまた、プリンタ一体型カメラ1Aとほぼ同様の構成を備える。
【0079】
上述した第一実施形態とは異なる点は、ファインダ14の設置位置が液晶画面11の上部ではなく、液晶画面の右横、すなわち、排出口31から排出された記録シート40に隣接する位置に配置させたファインダ14Bとした点である。排出口31から排出される記録シート40に隣接するように形成すれば、撮影時にファインダ14Bを介して対象被写体が見やすい。カメラマンがファインダ14Bを覗いて撮影する場合にはカメラ本体やレンズを自然にカメラマンの身体に引きつけて撮影することとなる。そのため、液晶画面11のみに頼らなくても良いことになり、撮影時の手振れ防止に寄与する。
【0080】
(第四実施形態)
図13は、プリンタ一体型カメラの他の形態を示したプリンタ一体型カメラ1Dである。このプリンタ一体型カメラ1Dは、箱状に形成されたカメラ本体10と、そのカメラ本体10に固定され、対象被写体を取り込むレンズ20と、そのレンズ20が取り込むデータを出力する液晶画面11と、プラテンローラ32、サーマルヘッド33、圧力機構70等を備えたプリント機構30と、そのプリント機構30によってプリントされた記録シート40を排出する排出口31と、複数枚の記録シート40が収納可能なシート収容ケース50とを備えるほか、シャッターボタン12と、フラッシュ13及びコピーボタン15を備えている点は前述したプリンタ一体型カメラ1Aと全く同様であるが、ファインダ14を搭載していない点で前述した第一実施形態と異なる。ファインダ14を搭載していなくても、液晶画面11を確認しながら撮像することができる。
【0081】
また、このプリンタ一体型カメラ1Dでは、排出口31から排出されるプリント済みの記録シート40は、撮像データがプリントされた面が、レンズ20とは反対側に位置するとともに、プリント機構30は、対象被写体がレンズ20に入る画像パターンにて、対象被写体の姿勢通りにプリントされる機能を備えている。
【0082】
図14を参照してさらに説明する。
図14(a)は、撮像時にカメラを90度回転させて撮像し、プリント時に元の状態へ戻した場合の図である。図に示すように、撮像後にカメラを元の横向きに戻すと、対象被写体が横向きに撮像された状態になる。この状態からプリントが実行されると、図14(b)のように対象被写体の姿勢通りにプリントされることになる。
【0083】
また、カメラマンが画像処理を施した場合にも有効である。例えば、予め撮像データが記録された記憶媒体から所定の撮像データを選択し、その撮像データを回転させるなどとした場合でも同様にプリントされることとなる。つまり、対象被写体がレンズ20に入る画像パターン及び液晶画面に表示された画像パターンの姿勢通りにプリントされる。したがって、レンズ越しに捉えた撮像データの姿勢を維持したままにプリントされてくるので、カメラマンの感覚に合う。
【0084】
(第五実施形態)
図15は、プリンタ一体型カメラの他の形態を示したプリンタ一体型カメラ1Eであり、(a)は記録シート40の搬送経路における往路の状態を示し、(b)は記録シート40の搬送経路における復路の状態を示している。
このプリンタ一体型カメラ1Eは、前述してきた実施形態とはプリント機構30の構成を異ならせている。
【0085】
すなわち、プリント機構30は、収納位置にある記録シート40に対する摩擦力でその記録シート40を相対的に送り出すシート送りローラ36(用紙送り機構)と、記録シート40における面に対して局所的な加熱が可能なサーマルヘッド33と、記録シート40の面に対して局所的にかける圧力を制御するプラテンローラ32(圧力機構)と、そのプラテンローラ32から排出された記録シート40を待機させる第一待機スペース37と、その第一待機スペース37からプラテンローラ32およびサーマルヘッド33を再び通過させる回転自在な搬送補助ローラ35a、35bと、その搬送補助ローラ35a、35bから搬送された記録シート40を排出する排出口31と、その排出口31から排出された記録シート40を保持可能な第二待機スペース60とを備えて構成されている。
一つのサーマルヘッドにて記録シートを往復させることによってプリントするいわゆる「1ヘッド2パス方式」を採用した点で、前述した第一実施形態から第四実施形態までのプリンタ一体型カメラとは異なる。
【0086】
1ヘッド2パス方式を更に詳しく説明すると記録シート40がヘッド32を往路及び復路の二度にわたって異なる温度で加熱されることで画像形成される方式である。より具体的には、次のようになる。
まず、シート送りローラ36は、シート収容ケース50の最上段の記録シート40に接触して位置し、制御部51からの制御信号に基づいてモータ(図示は表示しない)によって回転駆動される。シート送りローラ36が回転すると、バネ34の付勢力により記録シート40とシート送りローラ36との間に生じた摩擦力によって、シート送りローラ36の回転に連動してシート収容ケース50の最上段の記録シート40がサーマルヘッド33に向けて搬送される。
【0087】
制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド33が、記録シート40に形成する画像の低温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を低温に発熱させる。これにより、記録シート40の低温発色層47が、画像情報に対応した低温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T1で低温加熱され、低温加熱された位置の低温発色カプセル27内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(低温発色)する。
【0088】
続いて、制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ32が記録シート40を搬送補助ローラ35a,35bに向けて搬送する。記録シート40は、搬送補助ローラ35a,35bにおいて図3に示す破壊圧力P1で加圧される。これにより、図2に示す低温発色層47内の低温発色抑制カプセル28が破壊され、低温発色抑制カプセル28内の低温発色抑制剤がカプセル外部に流出し、低温発色剤と顕色剤との反応が抑制される。すなわち、記録シート40の低温発色について定着が行われる。
【0089】
この状態では記録シート40は、一旦、第一待機スペース37によって待機されているが、制御部51からの制御に基づいて、搬送補助ローラ35a,35bが逆向きに回転し、記録シート40をサーマルヘッド32に向けて再び搬送する。
【0090】
制御部51からの制御に基づいてサーマルヘッド33が、記録シート40に形成する画像の高温発色成分に応じた画素パターンで各発熱素子を高温に発熱させる。これにより、記録シート40の高温発色層43が、画像情報に対応した高温発色成分の画素パターンで、図3に示す温度T3で高温加熱され、高温加熱された位置の高温発色カプセル23内の発色剤とその周囲に顕色剤とが反応して発色(高温発色)する。
【0091】
制御部51からの制御に基づいてプラテンローラ32および搬送補助ローラ35a,35bが回転し、記録シート40が排出口31を介して第二待機スペース60に向けて搬送される。
【0092】
なお、搬送補助ローラ35a,35bは、サーマルヘッド33から搬送されてきた記録シート40を加圧する加圧ローラとしても機能させることもできる。このようにすれば、サーマルヘッド33やプラテンローラ32に加圧機能を備える必要がなくなり、各処理の負荷分散が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】プリンタ一体型カメラの全体構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の第一実施形態の記録シートの断面構成図である。
【図3】図2に示す記録シート内の高温発色カプセル、低温発色カプセルおよび低温発色抑制カプセルの特性を説明するための図である。
【図4】図2に示す発色カプセルの発色原理を説明するための図である。
【図5】図2に示す低温発色抑制カプセルの発色抑制作用を説明するための図である。
【図6】プリント機構の構成を概略的に示した平面断面図である。
【図7】高圧状態のプリント機構を示した正面図である。
【図8】低圧状態のプリント機構を示した正面図である。
【図9】プリント機構を搭載したプリンタ一体型カメラを示した概略図である。
【図10】プリント機構を搭載したプリンタ一体型カメラを示した概略図である.
【図11】第二実施形態におけるプリンタ一体型カメラを示した斜視図である。
【図12】第三実施形態におけるプリンタ一体型カメラを示した斜視図である。
【図13】第四実施形態におけるプリンタ一体型カメラを示した斜視図である。
【図14】プリントされた写真の姿勢を説明した図である。
【図15】第五実施形態におけるプリンタ一体型カメラを示した平面断面図であり、(a)は記録シートの搬送経路における往路の状態を示し、(b)は記録シートの搬送経路における復路の状態を示している。
【符号の説明】
【0094】
1A、1B、1C、1D、1E プリンタ一体型カメラ
10 カメラ本体
11 液晶画面 11a 枠体
12 シャッターボタン 13 フラッシュ
14 ファインダ 15 コピーボタン
20 レンズ
23 高温発色カプセル
27 低温発色カプセル
28 低温発色抑制カプセル
30 プリント機構 31 排出口
32 プラテンローラ 33 サーマルヘッド
33a ヘッド部 33b 低圧バネ支持部
33c 第二低圧バネ支持部 33d 上部
34 バネ
35a、35b 搬送補助ローラ
36 シート送りローラ 37 第一待機スペース
40 記録シート 41 基材
43 高温発色層 45 混防止層
47 低温発色層 49 保護層
50 シート収容ケース 50B 着脱式シート収容ケース
51 制御部
60 第二待機スペース
70 圧力機構 71 回転軸
72 低圧バネ
72a、73a 一端 72b、73b 他端
73 高圧バネ 76 回転カム
76a 切り欠き部 78 L字梃子
78a 当接部 78b 高圧バネ支持部
78c 第二高圧バネ支持部 78d 他端


【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像データをシート状媒体にプリントするプリント機構を内蔵したカメラであって、
箱状の本体と、
その本体に固定され、対象被写体を取り込むレンズと、
前記本体において前記レンズとは反対側に、前記プリント機構がプリントしたシート状媒体の排出口と、を備え、
プリント済みのシート状媒体は、前記本体がなす範囲に収まるように前記排出口から排出されることとしたプリンタ一体型カメラ。
【請求項2】
前記排出口から排出されるプリント済みのシート状媒体は、撮像データがプリントされた面が前記レンズとは反対側に位置するとともに、前記プリント機構は、対象被写体がレンズに入る画像パターンにて、対象被写体の姿勢通りにプリントすることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項3】
前記本体には、前記レンズが取り込むデータを出力する液晶画面を備えるとともに、
その液晶画面は、前記排出口から排出されるプリント済みのシート状媒体に重なる位置へ配置したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項4】
複数枚のシート状媒体を収納するシート収容ケースを、前記本体とは着脱自在の別体にて形成し、
そのシート収容ケースは、前記本体における前記排出口に隣接させて装着するように形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項5】
前記レンズが取り込む画像を目視可能なファインダを前記本体に備え、
そのファインダは、前記排出口から排出されるプリント済みのシート状媒体に隣接するように形成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項6】
前記プリント機構は、プリントされるシート状媒体よりもレンズ側に位置するプラテンローラと、当該シート状媒体よりもレンズと反対側に位置するサーマルヘッドとを備えたことを特徴とする請求項2から請求項5のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項7】
撮像された最新の撮像データを更に追加して複製するプリントコピーボタンを備えたことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項8】
複数の撮像データを記録可能な記憶手段を備え、その記憶手段に記録された撮像データのうち、選択された撮像データをプリントするコピーボタンを備えたことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項9】
前記プリント機構は、収納位置にあるシート状媒体に対する摩擦力でそのシート状媒体を相対的に送り出す用紙送り機構と、
前記シート状媒体における面に対して局所的な加熱が可能なサーマルヘッドと、
前記シート状媒体の面に対して局所的にかける圧力を制御する圧力機構と、
その圧力機構から出されたシート状媒体を待機させる第一待機スペースと、
その第一待機スペースから前記圧力機構および前記サーマルヘッドを再び通過させる回転自在な搬送補助ローラと、その搬送補助ローラから搬送されたシート状媒体を排出する排出口と、
を備えたことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載のプリンタ一体型カメラ。
【請求項10】
前記搬送補助ローラは、前記サーマルヘッドから搬送されてきたシート状媒体を加圧する加圧ローラとしても機能させることとした請求項9記載のプリンタ一体型カメラ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−300339(P2007−300339A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125922(P2006−125922)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(503118332)IPトレーディング・ジャパン株式会社 (10)
【Fターム(参考)】