説明

プリンタ装置

【課題】 従来のコマンド仕様にも容易に対応できるようプリンタ装置のコマンドパラメータの解釈を変更し、現在のコマンド仕様以外の仕様を容易に受け付けることができるようにする。
【解決手段】 プリンタ言語コマンドを解釈しプリンタエンジンに対し印刷実行を要求するプリンタエミュレーション機能を備えたプリンタ装置であって、プリンタ言語コマンドに含まれるコマンドパラメータの解釈の意味の変更要求を受け付ける受付手段と、受け付けた意味変更要求に基づいてコマンドパラメータの解釈の意味の変更を行う変更手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタエミュレーションの仕様変更に容易に対応可能なプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタエミュレーション機能を備えたプリンタ装置では、プリンタ言語コマンドを解釈し、プリンタエンジンに対し給紙トレイや排紙トレイ等の指定を指示して印刷実行を要求するようになっている。例えば、給紙トレイ指定コマンドは「Esc&1#H」といった形式で表現され、コマンドパラメータ「#」の値を「7」とすると「自動トレイ選択」を指定することとなり、コマンドパラメータ「#」の値を「8」とすると「トレイ1」を指定することとなる。
【0003】
一方、特許文献1には、複雑なパラメータ群から構成される印刷制御用コマンドを、その文法を学習することなく容易に生成できるプリンタ制御用端末装置が開示されている。
【特許文献1】特開平06−176020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、プリンタ市場においては、プリンタエミュレーションの仕様変更によって従来のコマンドでは期待通りのプリント動作を実行しないという問題が発生している。例えば、給紙トレイ指定コマンド「Esc&1#H」の従来の仕様が、コマンドパラメータ「#」の値「4」が「トレイ1」を示していたものが、仕様変更によりコマンドパラメータ「#」の値「8」が「トレイ1」を示すものとなった場合、ユーザーは従来通りの「トレイ1」を指定して印刷を指示したつもりでも、全く異なるトレイから給紙が行われることとなり、意図せぬ結果を招くことになる。
【0005】
一方、前述した特許文献1は、所定のコマンド文法に従ってコマンド文字列を生成するものであり、プリンタエミュレーションの仕様変更に対応できるものではない。
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑み提案されたものであり、その目的とするところは、従来のコマンド仕様にも容易に対応できるようプリンタ装置のコマンドパラメータの解釈を変更し、現在のコマンド仕様以外の仕様を容易に受け付けることができるプリンタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にあっては、請求項1に記載されるように、プリンタ言語コマンドを解釈しプリンタエンジンに対し印刷実行を要求するプリンタエミュレーション機能を備えたプリンタ装置であって、プリンタ言語コマンドに含まれるコマンドパラメータの解釈の意味の変更要求を受け付ける受付手段と、受け付けた意味変更要求に基づいてコマンドパラメータの解釈の意味の変更を行う変更手段とを備えるようにしている。これにより、ユーザーは従来使用していたアプリケーションから印刷実行するときに、アプリケーションの仕様を変更することなくユーザーの期待通りのプリンタの挙動が実現できる。
【0008】
また、請求項2に記載されるように、上記受付手段は、プリンタコントロールパネルを介してコマンドパラメータの解釈の意味の変更を受け付けるものとすることができる。これにより、コマンドパラメータ仕様の変更をプリンタコントローラパネル上のメニュー内に用意することでユーザーが容易にプリンタ装置の挙動を変更することができる。
【0009】
また、請求項3に記載されるように、上記受付手段は、ネットワークを介して接続されるホスト上のアプリケーションを介してコマンドパラメータの解釈の意味の変更要求を受け付けるものとすることができる。これにより、コマンドパラメータ仕様の変更をアプリケーションから設定させることでリモートでの設定を可能とし、またそのアプリケーションの使用者を制限することでプリンタ装置管理者のみがプリンタ装置の挙動を変更可能とすることができる。
【0010】
また、請求項4に記載されるように、受け付けた意味変更要求が不正な値であるか否かを判断する判断手段を備え、意味変更要求が不正な値である場合に現在のコマンドパラメータの解釈の意味の変更を行わないものとすることができる。これにより、不正なコマンドパラメータが送られて来た場合に、不正な値を設定することなくその値を無視することで、プリンタ装置の挙動がおかしくなるようなことのないよう制限することができる。
【0011】
また、請求項5に記載されるように、受け付けた意味変更要求が不正な値であるか否かを判断する判断手段を備え、意味変更要求が不正な値である場合にコマンドパラメータの解釈の意味を工場出荷時のデフォルト設定値に変更するものとすることができる。この場合も、不正なコマンドパラメータが送られて来た場合に、不正な値を設定することなく、プリンタ装置の挙動がおかしくなるようなことのないよう制限することができる。
【0012】
また、請求項6に記載されるように、現在のコマンドパラメータの解釈の意味をネットワークを介して接続されるホスト上のアプリケーションに通知する通知手段を備えるようにすることができる。これにより、ユーザーは現在の設定値を容易に確認、変更可能とすることができる。
【0013】
また、請求項7に記載されるように、上記受付手段は、ひとつの意味合いの機能に対して複数のコマンドパラメータを指定可能とし、上記変更手段は、受け付けた複数のコマンドパラメータを当該機能に対応付けて解釈の意味の変更を行うものとすることができる。これにより、新仕様と旧仕様とを同時に対応可能な仕様を持った設定とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のプリンタ装置にあっては、従来のコマンド仕様にも容易に対応できるようプリンタ装置のコマンドパラメータの解釈を変更し、現在のコマンド仕様以外の仕様を容易に受け付けることができ、ユーザーは従来使用していたアプリケーションから印刷実行するときに、アプリケーションの仕様を変更することなくユーザーの期待通りのプリンタの挙動が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態につき図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態にかかるプリンタ装置の構成例を示す図である。図1において、プリンタ装置1はネットワーク2上にパーソナルコンピュータ等のホスト3(その上でアプリケーション31が実行)とともに接続されており、その内部には、プリンタ装置としての標準的な構成として、用紙へのプリントを行うプリンタエンジン11と、プリンタ言語コマンドを解釈しプリンタエンジン11に対し印刷実行を要求するプリンタエミュレーション部12と、ユーザーにより操作されるコントロールパネル13とを備えている。また、プリンタ言語コマンドに含まれるコマンドパラメータの解釈意味変更にかかる機能部として、プリンタエミュレーション部12には、コントロールパネル13のメニュー内あるいはホスト3のアプリケーション31から意味変更要求を受け付ける変更要求受付部14と、この変更要求受付部14によって受け付けた意味変更要求が不正な値であるか否かの有効性および重複を判断する変更有効性・重複判断部15と、有効性および重複が適正と判断された意味変更要求に基づいてコマンドパラメータの解釈の意味の変更を行う変更部16と、ユーザーの要求等に応じて現在のコマンドパラメータの解釈の意味をネットワーク2を介して接続されるホスト3上のアプリケーション31等に通知する設定値通知部17とを備えている。
【0017】
なお、変更要求受付部14によりホスト3のアプリケーション31から意味変更要求を受け付ける場合、そのアプリケーション31の使用者を制限することで管理者のみがプリンタ装置1の挙動を変更可能とするようにすることができる。また、変更有効性・重複判断部15は、変更要求受付部14がコントロールパネル13から意味変更要求を受け付ける場合には、予め適正なもののみを選択させるようにできることから、省略することが可能である。更に、変更要求受付部14〜設定値通知部17をプリンタエミュレーション部12の内部に配置する場合について図示しているが、変更要求受付部14〜設定値通知部17をプリンタエミュレーション部12とは別に設けてもよい。
【0018】
図2はプリンタエミュレーションの給紙トレイ指定コマンド仕様の例を示す図であり、ここでは、プリンタエミュレーションはEscコマンドシーケンスで示されるコマンドを解釈し、「Esc&l#H」が給紙トレイコマンド指定を示すものとしている。ここでパラメータ「#」によってそれぞれどの給紙トレイを指定するかが決定される。すなわち、「7」が「自動トレイ選択」に対応し、「8」が「トレイ1」に対応し、「1」が「トレイ2」に対応し、「4」が「トレイ3」に対応し、「30」が「トレイ4」に対応し、「23」が「トレイ5」に対応し、「24」が「トレイ6」に対応し、「25」が「トレイ7」に対応し、「2」が「手差しトレイ」に対応し、「5」が「LCT(Large Capacity Trai:オプショントレイ)」に対応している。なお、プリンタエミュレーションでは、各トレイにアサインされるコマンドパラメータの値を不揮発性メモリ(NVRAM)上で保持している。
【0019】
図3はコマンドパラメータの解釈意味変更(コマンドアサイン)の処理例を示すフローチャートであり、以下、このフローチャートに沿って上記の実施形態の動作を説明する。
【0020】
先ず、プリンタエミュレーション部12は、変更要求受付部14によりコントロールパネル13もしくはアプリケーション31からコマンドパラメータ変更要求を受けた場合(ステップS1)、変更有効性・重複判断部15によりそのコマンドパラメータが不正な値でないか否かの有効性のチェックを行う(ステップS2)。
【0021】
このチェック結果にて無効となった場合は、そのコマンドパラメータ変更要求を無視し、工場出荷時のデフォルトのパラメータ値の設定とするか、あるいは設定変更なしとし(ステップS6)、処理を終了する(ステップS7)。
【0022】
また、コマンドパラメータの有効性チェックにて有効となった場合は、現在のパラメータ値の取得を実施し(ステップS3)、変更有効性・重複判断部15によりパラメータのアサイン重複チェックを行う(ステップS4)。ここでいう重複チェックとは、現在の各トレイのコマンドパラメータと新規コマンドパラメータとを全て比較し、同じパラメータが異なるトレイにアサインされていないかどうかのチェックである。
【0023】
ここで無効となった場合は、工場出荷時のパラメータ値の設定、あるいは設定変更なしとし(ステップS6)、有効となった場合は、要求されたパラメータの適用反映を変更部16により行い(ステップS5)、処理を終了する(ステップS7)。
【0024】
図4はプリンタエミュレーションの給紙トレイ指定コマンド仕様の変更の例を示す図であり、例えばユーザーのプリンティングシステム環境において、既存のプリンティングアプリケーションシステムが構築されており、そのアプリケーションシステムからは給紙トレイ1を選択する際に、コマンドパラメータ#=4を使用していたとする。この時、現状のプリンタ仕様ではコマンドパラメータ#=4は給紙トレイ3にアサインされているため、ユーザーの期待と異なる給紙トレイから給紙される動作となってしまう。
【0025】
この場合、ユーザーは、コントロールパネル13あるいはアプリケーション31から、給紙トレイ1に対応するコマンドパラメータ#=4、給紙トレイ3に対応するコマンドパラメータ#=5とする変更を要求し、コマンドパラメータの解釈の意味の変更を行う。これにより、ユーザーのアプリケーション仕様を変更することなく、プリンタ装置1内のコマンドパラメータの解釈を変更することによって問題を解消することができる。
【0026】
図5はプリンタエミュレーションの給紙トレイ指定コマンド仕様の変更の他の例を示す図である。ここでは、ひとつの給紙トレイ1に対して複数のコマンドパラメータ「8」「4」を適用することで、現在の仕様とユーザーの仕様との両方の仕様を同時に満たすことができる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更を加えることができることは明らかである。すなわち、具体例の詳細および添付の図面により本発明が限定されるものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態にかかるプリンタ装置の構成例を示す図である。
【図2】プリンタエミュレーションの給紙トレイ指定コマンド仕様の例を示す図である。
【図3】コマンドパラメータの解釈意味変更の処理例を示すフローチャートである。
【図4】プリンタエミュレーションの給紙トレイ指定コマンド仕様の変更の例を示す図(その1)である。
【図5】プリンタエミュレーションの給紙トレイ指定コマンド仕様の変更の例を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0029】
1 プリンタ装置
11 プリンタエンジン
12 プリンタエミュレーション部
13 コントロールパネル
14 変更要求受付部
15 変更有効性・重複判断部
16 変更部
17 設定値通知部
2 ネットワーク
3 ホスト
31 アプリケーション

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ言語コマンドを解釈しプリンタエンジンに対し印刷実行を要求するプリンタエミュレーション機能を備えたプリンタ装置であって、
プリンタ言語コマンドに含まれるコマンドパラメータの解釈の意味の変更要求を受け付ける受付手段と、
受け付けた意味変更要求に基づいてコマンドパラメータの解釈の意味の変更を行う変更手段とを備えたことを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
上記受付手段は、プリンタコントロールパネルを介してコマンドパラメータの解釈の意味の変更を受け付けることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
上記受付手段は、ネットワークを介して接続されるホスト上のアプリケーションを介してコマンドパラメータの解釈の意味の変更要求を受け付けることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
受け付けた意味変更要求が不正な値であるか否かを判断する判断手段を備え、
意味変更要求が不正な値である場合に現在のコマンドパラメータの解釈の意味の変更を行わないことを特徴とする請求項3に記載のプリンタ装置。
【請求項5】
受け付けた意味変更要求が不正な値であるか否かを判断する判断手段を備え、
意味変更要求が不正な値である場合にコマンドパラメータの解釈の意味を工場出荷時のデフォルト設定値に変更することを特徴とする請求項3に記載のプリンタ装置。
【請求項6】
現在のコマンドパラメータの解釈の意味をネットワークを介して接続されるホスト上のアプリケーションに通知する通知手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のプリンタ装置。
【請求項7】
上記受付手段は、ひとつの意味合いの機能に対して複数のコマンドパラメータを指定可能とし、
上記変更手段は、受け付けた複数のコマンドパラメータを当該機能に対応付けて解釈の意味の変更を行うことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−192663(P2006−192663A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5683(P2005−5683)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】