説明

プリンタ

【課題】ロール紙が消費されて軽くなっても、ホッパ内で暴れることなく用紙を供給できるようにする。
【解決手段】ロール紙収納部9の近傍に設けられ、長尺紙22を掛け渡して該長尺紙に撓みを形成するように弾性的に付勢されたダンパーと、ロール紙8から長尺紙が送り出されて所定量以下になるのに基づいて該ロール紙を所定位置に保持する保持手段9aとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ロール状のライナーレスラベルを用いて印字するプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタには、ロール状の用紙(以下、ロール紙という)を収納部内に収納し、この収納部から用紙を引き出してサーマルヘッドとプラテンローラとの間に供給し印字するものがある。用紙はプラテンローラの回転によって引き出され、この引き出しにより収納部内のロール紙が回転する。
【0003】
ところで、収納部内にロール紙が新しく装填されると、ロール紙の外径が大きくて重いため、慣性力が大きく、用紙引出時にロール紙が回転しにくくなる。このため、プラテン上での用紙の搬送速度が遅くなり、印字つぶれ等の印字不良が発生する。
【0004】
そこで、ロール紙の引出側にバネ材などにより弾性的に付勢されるダンパーを設け、このダンパーに用紙を掛け渡して該用紙に弛みを持たせている。これにより、用紙の引出時には、ダンパーがバネ材の付勢力に抗して移動して用紙の撓み分を送り出し、プラテン上で用紙遅れが発生しないようにしている。
【0005】
また、ロール紙が消費されてその外径が小さくなって軽くなると、慣性力も小さくなり、プラテン上で用紙遅れは発生せず、ダンパーはバネ材の付勢力により初期位置に復帰する。
【0006】
しかしながら、ロール紙としてライナーレスラベルが用いられた場合には、消費によりその外径が小さくなって軽くなると、用紙引出時にロール紙が暴れて異音を発生するという問題がある。
【0007】
即ち、ライナーレスラベルは、その一面側が印字面で、他面側が糊の塗布面となっているため、ロール紙が消費により軽くなると、用紙引出時には糊の付着力によりダンパーまで持ち上げられてしまう。このようにロール紙が持ち上げられると、ダンパー付近のガイドなどに衝突し、糊が剥がれてホッパ内に落下する。この落下により、ロール紙がホッパの底面や側面に衝突して異音が発生する。
【0008】
特に、印字速度、すなわち、用紙送り速度が高速化されると、ロール紙がホッパ内で何度も上下動して異音の発生回数が増大してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、ロール紙が消費されてその外径が小さくなって軽くなっても、ホッパ内で暴れることなく用紙を供給できるようにしたプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、実施の形態は、プリンタ本体と、このプリンタ本体内に設けられ、長尺紙を巻回してなるロール紙を収納するロール紙収納部と、プラテンとこのプラテンに対向する印字ヘッドを有し、前記ロール紙から引き出される前記長尺紙を前記プラテンに掛け渡し該プラテンの回転により搬送して前記印字ヘッドにより印字する印字手段と、前記ロール紙収納部の近傍に設けられ、前記長尺紙を掛け渡して該長尺紙に撓みを形成するように弾性的に付勢されたダンパーと、前記ロール紙から前記長尺紙が送り出されて所定量以下になるのに基づいて該ロール紙を所定位置に保持する保持手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態であるテーブル設置されたプリンタを示す側断面図。
【図2】図1のプリンタが壁掛け設置された状態を示す図。
【図3】第2の実施形態であるプリンタを示す側断面図。
【図4】第3の実施形態であるプリンタの内部構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態であるプリンタの内部構造を示す側断面図である。
【0014】
このプリンタは、ロール状に巻回された長尺紙に情報を印字するもので、横長又は縦長の設置姿勢の選択が可能なプリンタ本体1を備えている。プリンタ本体1はテーブル上に設置しても、壁面にかけて設置しても自由である。図1は横長の設置姿勢でテーブル上に設置した場合を示す。
【0015】
プリンタ本体1はヒンジ6を中心に開閉可能な開閉カバー7を備え、内部にはロール紙8を収納するロール紙収納部としてのホッパ9と、印字手段としての印字部10とが設けられている。ロール紙8は、巻芯21に長尺紙としてのライナーレスラベル22をロール状に巻回してなるものである。ライナーレスラベル22はその一面側が印字面で、他面側が糊面となっている。
【0016】
印字部10はプラテンモータで回転されるプラテン12と、このプラテン12にヘッドスプリング(図示しない)の付勢力によりライナーレスラベル22を介して圧接される印字ヘッドとしてのサーマルヘッド14とにより構成されている。ライナーレスラベル22はプラテン12の回転により搬送される。
印字部10の下流側には、カッタモータで駆動される図示しないカッタが配設されている。
【0017】
また、ホッパ9と印字部10との間には、ライナーレスラベル22の送出方向に沿って順次、ダンパー16、ガイドローラ17,18が配設され、ホッパ9から引き出されるライナーレスラベル22はダンパー16、ガイドローラ17,18に掛け渡されてプラテン12とサーマルヘッド14との間に供給される。ダンパー16は図示しないバネ材によって上方に弾性的に付勢され、ライナーレスラベル22に撓みを与えている。
【0018】
ところで、上記したホッパ9はロール紙8の下面部と対向する保持手段としての底面部9aを有し、この底面部9aは支軸9bを介して支持され、図示しないバネ材によって上方に向かって全体的に回動するように弾性的に付勢されている。
【0019】
ホッパ9内にロール紙8を収納する場合には、オペレータはプリンタ本体1の開閉カバー7を開放してから、底面部9aをバネ材の付勢力に抗して下方に回動させてホッパ底部に位置させ、その上にロール紙8を載置して収納する。未使用状態のロール紙8は径が大きくて重たいため、ホッパ9の底面部9aは、ホッパ底部に位置したままの状態になる。
【0020】
また、ホッパ9の底面部9aは、ロール紙8が消費により外径が小さくなって所定の重さよりも軽くなると、バネ材の付勢力により上方に回動してロール紙8を押し上げて保持するようになっている。
【0021】
なお、ホッパ9の底面部9a全体を回動自在に設けることなく、底面部9aを櫛歯状に形成してその一部のみを回動自在に支持して、ロール紙8を押し上げるようにしても良い。
【0022】
次に、上記したプリンタの印字動作について説明する。
【0023】
印字動作時には、プラテン12が回転されてライナーレスラベル22が搬送され、このライナーレスラベル22にサーマルヘッド14より印字情報が印字される。この印字されたライナーレスラベル22は所定距離送り出されると、カッタによりカットされて排出される。
【0024】
この印字動作時において、ホッパ9内のロール紙8の外径が大きくて重い場合には、ライナーレスラベル22を引出す際に大きな慣性力が作用し、ロール紙8が回転しにくくなる。これにより、プラテン12上でのライナーレスラベル22の搬送速度が遅くなり、印字つぶれが生じてしまう虞がある。
【0025】
しかしながら、このときには、ダンパー16がバネ材の付勢力に抗して下方に移動して
ライナーレスラベル22の撓み分を送り出してプラテン12上でのライナーレスラベル22の搬送遅くれを解消し、印字つぶれを防止する。
【0026】
また、ライナーレスラベル22の消費によりロール紙8の外径が小さくなって軽くなると、慣性力が小さくなり、ダンパー16はバネ材の付勢力により上昇し、初期位置に復帰する。
【0027】
また、ライナーレスラベル22の消費により、ロール紙8が所定の重さよりも軽くなると、ホッパ9の底面部9aがバネ材の付勢力により支軸9bを中心にして実線で示すように上方に回動してロール紙8を押し上げて保持する。
【0028】
このように、第1の実施の形態によれば、ロール紙8が消費により所定の重さよりも軽くなると、ホッパ9の底面部9aによりロール紙8を押し上げて保持するため、ロール紙8がダンパー19まで引き上げられてダンパー19付近のガイドなどに衝突して糊が剥がれたとしても、従来のように落下してホッパ9の底面や側面に衝突することがなく、異音の発生を確実に防止できる。
【0029】
図2は、プリンタを縦長の設置姿勢で壁掛け設置した場合を示すものである。
【0030】
この場合も、図1で示した場合と同様に、消費によりロール紙8が所定の重さよりも軽くなると、ホッパ9の底面部9aがバネ材の付勢力により支軸9bを中心にして実線で示すように上方に回動してロール紙8を押し上げて保持する。これにより、図1で示した場合と同様に、ロール紙8の落下による異音の発生を防止できる。
【0031】
なお、上記したホッパ9のカバーは図示しないリンク機構などを介してプリンタ本体1の開閉カバー7に接続され、開閉カバー7の開放動作に連動して初期位置に復帰するように回動されるようになっている。
【0032】
従って、ロール紙8の装填時に、プリンタ本体1の開閉カバー7を開放すると、自動的にホッパカバーを初期位置に復帰させることができ、ロール紙8の装填時にホッパカバーが邪魔になることがない。
【0033】
(第2の実施形態)
図3は第2の実施の形態を示すものである。
【0034】
なお、第1の実施の形態で示した部分と同一部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0035】
上記した第1の実施形態では、ホッパ9の底面部9aを回動自在に設けるようにしたが、この第2の実施の形態では、ホッパ9のカバー(保持手段)9cを支軸9dを介して回動自在に支持している。このホッパカバー9cは図示しないバネ材によって矢印で示す方向に回動するように弾性的に付勢されている。
【0036】
この第2の実施の形態では、ホッパカバー9cは、バネ材の付勢力によりロール紙8を常時押圧し、ロール紙8が消費されてその外径が小さくなるのに基づいて回動し、ロール紙8の外径が所定値以下になると、ロール紙8をホッパ9の底部に向かって押圧保持する。
【0037】
この第2の実施の形態によっても、上記した第1の実施の形態と同様にロール紙8の落下による異音の発生を防止できる。
【0038】
なお、上記したホッパカバー9cは図示しないリンク機構などを介してプリンタ本体1の開閉カバー7に接続され、開閉カバー7の開放動作に連動して初期位置に復帰するように回動されるようになっている。
【0039】
従って、ロール紙8の装填時に、プリンタ本体1の開閉カバー7を開放すると、自動的にホッパカバー9cを初期位置に復帰させることができ、ロール紙8の装填時にホッパカバー9cが邪魔になることがない。
【0040】
(第3の実施形態)
図4は第3の実施の形態を示すものである。
【0041】
なお、上記した実施の形態で示した部分と同一部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0042】
上記した第1の実施の形態では、ロール紙8が消費により軽くなると、ホッパの底面部9aによりロール紙8を保持し、第2の実施の形態では、ホッパカバー9cによりロール紙8を保持したが、この第3の実施の形態では、下部側にライナーレスラベル22を掛け渡して撓みを持たせるダンパー(保持手段)24によってロール紙8を保持する。
【0043】
この第3の実施の形態では、ホッパ9内のロール紙8の外径が大きくて重い場合には、プラテン12の回転によりライナーレスラベル22が引っ張られると、ダンパー24がバネ材の付勢力に抗して上方へ移動される。これにより、ライナーレスラベル22の撓み分が送り出され、用紙の搬送遅れを吸収して印字潰れを防止する。
【0044】
また、ホッパ9内のロール紙8が消費されて軽くなると、ダンパー24がバネ材の付勢力により実線で示すように下方へ移動してライナーレスラベル22をガイドする。
【0045】
従って、ロール紙8は、消費により軽くなっても、上方へ持ち上げられることがなく、上記した第1及び第2の実施の形態と同様にロール紙8の落下による異音の発生を防止できる。
【0046】
なお、上記したダンパー24は、プリンタ本体1の開閉カバー7に接続され、開閉カバー7の開閉動作に伴って移動する。
【0047】
従って、ロール紙8を装填してライナーレスラベル22をアイドラローラ25、プラテン12に掛け渡した状態で、開閉カバー7を閉じると、ダンパー24が自動的にライナーレスラベル22を押し下げてダンパー24の下側に位置させることができ、手間取ることがない。
【0048】
また、ライナーレスラベル22の印字面の反対側の面は糊面となっているため、両面印刷を考慮する必要性はない。
【0049】
なお、上記した各実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1…プリンタ本体、7…開閉カバー、8…ロール紙、9…ホッパ(ロール紙収納部)、9a…ロール紙収納部の底面部(保持手段)、9c…ロール紙収納部のカバー(保持手段)、10…印字部(印字手段)、12…プラテン、14…サーマルヘッド(印字ヘッド)、24…ダンパー(保持手段)、22…ライナーレスラベル(長尺紙)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ本体と、
このプリンタ本体内に設けられ、長尺紙を巻回してなるロール紙を収納するロール紙収納部と、
プラテンとこのプラテンに対向する印字ヘッドを有し、前記ロール紙から引き出される前記長尺紙を前記プラテンに掛け渡し該プラテンの回転により搬送して前記印字ヘッドにより印字する印字手段と、
前記ロール紙収納部の近傍に設けられ、前記長尺紙を掛け渡して該長尺紙に撓みを形成するように弾性的に付勢されたダンパーと、
前記ロール紙から前記長尺紙が送り出されて所定量以下になるのに基づいて該ロール紙を所定位置に保持する保持手段と
を具備することを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記保持手段は、前記ロール紙収納部の底面部によって構成され、該底面部を回動させて前記ロール紙を保持することを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記保持手段は、前記ロール紙収納部の底面部の一部によって構成され、該底部の一部を回動させて前記ロール紙を保持することを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項4】
前記保持手段は、前記ロール紙収納部のカバーによって構成され、該カバーを回動させて前記ロール紙を保持することを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項5】
前記プリンタ本体を開閉する開閉カバーを備え、
前記ロール紙収納部のカバーは、前記開閉カバーの開放動作に連動して開放されることを特徴とする請求項4記載のプリンタ。
【請求項6】
前記保持手段は、前記ダンパーによって構成され、該ダンパーによって前記長尺紙を押圧することにより、前記ロール紙を保持することを特徴とする請求項1記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−179860(P2012−179860A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45505(P2011−45505)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】