プリンタ
【課題】電動モータの大型化の抑制と、ロール紙の弛みの抑制との両立ができるプリンタを提供する。
【解決手段】ロール紙Pが巻回されたロール50の外周面52と接触し、ロール50の直径の減少に対応して鉛直下方にロール50を移動させるロール支持部25(支持手段)を備え、ロール50を回転運動させてロール紙Pを引き出し印刷するサーマルプリンタ1であって、ロール50の外面に接触し、ロール50の回転運動に対して負荷を付与する負荷付与部材30(負荷付与手段)を備え、負荷付与部材30は、ロール50の径が小さくなるに従い、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して負荷が増加するように形成されていることを特徴とする。
【解決手段】ロール紙Pが巻回されたロール50の外周面52と接触し、ロール50の直径の減少に対応して鉛直下方にロール50を移動させるロール支持部25(支持手段)を備え、ロール50を回転運動させてロール紙Pを引き出し印刷するサーマルプリンタ1であって、ロール50の外面に接触し、ロール50の回転運動に対して負荷を付与する負荷付与部材30(負荷付与手段)を備え、負荷付与部材30は、ロール50の径が小さくなるに従い、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して負荷が増加するように形成されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタとして、例えば、熱を加えると変色する感熱記録紙に、発熱したサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタがある。
サーマルプリンタは、ロール紙が巻回されたロールを支持する支持手段と、多数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間にロール紙を挟むプラテンローラと、歯車を介してプラテンローラを回転させ、ロールからロール紙を引き出す電動モータとを備えている。
ロールの支持手段としては、収容部内にロールを落とし込こんで収容部の底部に載置した状態で支持するドロップイン式や、ロールの中空孔にシャフトを挿通させて回転自在に支持する軸支式が採用されている。
【0003】
印刷開始時は、電動モータを駆動させることでプラテンローラが回転する。ロールは、ロール紙がプラテンローラの回転により引っ張られることで回転する。これにより、サーマルヘッド側へのロール紙の搬送が開始し、サーマルヘッド側へ連続的に引き出される。
また、印刷停止時は、電動モータを停止させることでプラテンローラの回転が停止する。ロールは、プラテンローラの回転の停止により収容部内で回転が停止する。これにより、サーマルヘッド側へのロール紙の搬送も停止する。
【0004】
ここで、プラテンローラの回転を停止させた後でも、ロールが慣性力により少しだけ回転するため、プラテンローラと収容部との間でロール紙の弛みが発生するおそれがある。この状態で電動モータを再駆動して印刷を再開し、プラテンローラによりロール紙を引っ張ると、ロール紙の弛みが解消した瞬間にロールの重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、電動モータが脱調するおそれがある。このため、プラテンローラは安定してロール紙を搬送できず、印刷精度が低下するおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するために、ロール紙受け台に載置したロール紙の一方の側面を押圧して、ロール紙の他方の側面をロール紙受け台の側壁に押圧する板ばねを備えたプリンタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1によれば、ロールの回転運動に対して常に負荷を付与できるので、印刷停止時におけるロールの慣性力による回転が抑制されると考えられる。これにより、ロールから引き出されたロール紙の弛みをある程度抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−217294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ロール紙の使用量、すなわちロール径の大小に関わらず、板ばねの押圧力が常に一定の圧力でロール側を押圧するように設定されている。特に、特許文献1に記載のプリンタは、ドロップイン式であるため、ロール紙の使用量、すなわちロール径の大きさによりロールの重量が変化し、収容部の底部とロールの外周面との間の摩擦力が変化する。したがって、以下のような問題が発生する。
【0009】
ロール紙の弛みを抑制するために押圧力が大きい板ばねを採用した場合には、ロール紙の慣性力による回転は抑制できる。
しかしながら、電動モータには、使用開始直後は、大径の重いロールからロール紙を引き出すのに必要とされるトルクに加え、板ばねの押圧力による負荷に対応したトルクが更に必要とされる。したがって、電動モータが大型化するおそれがある。
【0010】
これに対して、電動モータの大型化を抑制するために押圧力が小さい板バネを採用した場合には、ロール紙の搬送に必要とされるトルクを低くできる。
しかしながら、押圧力が小さい板ばねは、ロールの回転運動に対する負荷が不足し、ロールが小さく軽くなり、ロールの回転が速くなったときのロールの慣性力による回転を抑制しきれなくなり、ロール紙の弛みを抑制できないおそれがある。
【0011】
そこで本発明は、電動モータの大型化の抑制と、ロール紙の弛みの抑制との両立ができるプリンタの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のプリンタは、ロール紙が巻回されたロールの外周面と接触し、前記ロールの直径の減少に対応して鉛直下方に前記ロールを移動させる支持手段を備え、前記ロールを回転運動させて前記ロール紙を引き出し印刷するプリンタであって、前記ロールの外面に接触し、前記ロールの前記回転運動に対して負荷を付与する負荷付与手段を備え、前記負荷付与手段は、前記ロール径が小さくなるに従い、前記ロールの鉛直下方への移動量に対応して前記負荷が増加するように形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、ロール紙の使用開始直後は、ロールの鉛直下方への移動量が少ないので、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が付与されていないか、もしくは小さな負荷が付与されている。これにより、ロール紙の使用量が少ないためロールが重く支持手段とロールの外周面との摩擦力が大きいとき、すなわち、ロール自重が重くロールが回転し難いときに、負荷付与手段によりロールの回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与手段を備えても、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙の使用を継続すると、ロール径が徐々に小さくなり、この結果、ロールが鉛直下方へ移動する量が次第に大きくなる。そして、ロール紙の使用量の増加に対応して、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙の使用量が増加してロールが軽くなり支持手段とロールの外周面との摩擦力が小さいとき、すなわちロール自重が軽く慣性力により回転し易いときに、ロールの回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【0014】
また、前記負荷付与手段は、前記ロールの鉛直下方において前記ロールの側面周縁部を跨ぐように配置され、軸方向外側より軸方向内側が鉛直下方となる傾斜面を有する当接部と、前記当接部を前記ロールの軸方向内側に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの側面周縁部と前記当接部の前記傾斜面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの軸方向外側に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、ロール紙の使用量が少なくロールの鉛直下方への移動量が第一所定値未満のときは、ロールが重く支持手段とロールの外周面との摩擦力が大きいため、ロールが回転しにくく、負荷がなくてもロール紙の弛みは発生しない。このとき、ロールの側面周縁部と当接部の傾斜面とが当接していないので、負荷付与手段によりロールの回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与手段を備えても、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙の使用量が増加してロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上となったときには、ロールの側面周縁部と当接部の傾斜面とが当接した状態で、ロールの鉛直下方への移動に対応して当接部が軸方向外側に移動する。そして、ロールが鉛直下方へ移動するとともに当接部の軸方向外側への移動量が増加するので、ロール紙の使用量の増加に対応して付勢部の弾性力を増加させて、当接部をロールの軸方向内側に付勢できる。したがって、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
さらに、付勢部と当接部とにより簡単な構造で低コストに負荷付与手段を形成できる。
【0016】
また、前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第一所定値よりも大きい第二所定値以上のとき、前記当接部の前記傾斜面の下端部が前記ロールの側面に当接することを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、傾斜面の下端部がロールの側面に当接すると、当接部のロールの軸方向外側への移動が終了する。したがって、ロールの鉛直下方への移動量が第二所定値以上のときに、負荷付与手段によるロールの軸方向内側への付勢力を一定とすることができる。このとき、負荷付与手段の付勢力が一定になることでロールは慣性力により回転しやすくなるが、ロール紙の弛みが発生しても、ロールが軽いのでモータの脱調は発生しない。したがって、ロール紙の残量が少なくなったときでも、モータの脱調を抑制できるとともに、負荷付与手段の当接部との当接により、ロール紙の感熱面が損傷するのを防止できる。
【0018】
また、前記傾斜面の下端部には、前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第二所定値以上のときに、前記ロールの側面と面接触する平坦部が形成され、前記平坦部は、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって、前記ロールの側面との接触面積が増加するように形成されていることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、ロール紙の使用量に対応して平坦部とロール紙の側面との接触面積を増加できる。したがって、ロール紙の使用量の増加に対応して、付勢部の付勢力に加えて平坦部とロール紙の側面との摩擦力により、ロールの回転運動に対する負荷を付与できる。これにより、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを確実に抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
また、負荷付与手段は平坦面を備えているので、ロールの側面を損傷することなく軸方向内側に押圧して、ロールの回転運動に対する負荷を付与できる。
【0020】
また、前記第二所定値は、前記ロールの直径が、未使用時における前記ロールの直径の50パーセントとなったときの移動量であることを特徴としている。
【0021】
一般に、ロールの直径が未使用時におけるロールの直径の50パーセント以上のときは、ロールの重量が重いため、ロール紙の弛みが解消した瞬間に、ロールの重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、電動モータが脱調しやすいことが知られている。
ここで、本発明では、ロール紙の使用開始後、未使用時のロールの直径の50パーセントとなったときの移動量を第二所定値に設定している。このため、ロールの重量が重くロール紙の弛みにより電動モータが脱調しやすい領域と、ロールの鉛直下方の移動量が第二所定値に達するまでの領域とが対応している。
本発明によれば、ロールの重量が重くロール紙の弛みにより電動モータが脱調しやすい領域で、ロール紙の使用量の増加に対応して付勢部の弾性力を増加させて当接部をロールの軸方向内側に付勢できる。これにより、ロールの重量が重くロール紙の弛みに起因して電動モータが脱調しやすい領域で、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを確実に抑制でき、脱調の原因となる印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。したがって、電動モータの脱調を確実に防止できる。
【0022】
また、前記負荷付与手段は、前記ロールの鉛直下方に配置され、前記ロールの外周面に当接可能な接触面を有する当接部と、前記当接部を鉛直上方に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの外周面と前記当接部の前記接触面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの鉛直下方に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴としている。
【0023】
本発明によれば、負荷付与手段の付勢部をロールの鉛直下方に配置しているので、ロールの鉛直下方への移動量に対応して、精度良く付勢部を弾性変形させることができる。したがって、ロールの回転運動に対する負荷を精度良く付与できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ロール紙の使用開始直後は、ロールの鉛直下方への移動量が少ないので、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が付与されていないか、もしくは小さな負荷が付与されている。これにより、ロール紙の使用量が少ないためロールが重く支持手段とロールの外周面との摩擦力が大きいとき、すなわち、ロール自重が重くロールが回転し難いときに、負荷付与手段によりロールの回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与手段を備えても、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙の使用を継続すると、ロール径が徐々に小さくなり、この結果、ロールが鉛直下方へ移動する量が次第に大きくなる。そして、ロール紙の使用量の増加に対応して、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙の使用量が増加してロールが軽くなり支持手段とロールの外周面との摩擦力が小さいとき、すなわちロール自重が軽く慣性力により回転し易いときに、ロールの回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プリンタカバーを開けたときのサーマルプリンタの斜視図である。
【図2】プリンタカバーを閉めたときのサーマルプリンタの平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】ロールが鉛直下方へ移動するときの説明図である。
【図5】図4のB−B線に沿った断面図である。
【図6】負荷付与部材の斜視図である。
【図7】ロールの径方向から見たときのロールおよび負荷付与部材の模式図である。
【図8】横軸をロールの鉛直下方への移動量とし、縦軸を負荷付与部材の付勢力としたときのグラフである。
【図9】ロールの径方向から見たときのロールおよび負荷付与部材の模式図である。
【図10】ロールの径方向から見たときのロールおよび負荷付与部材の模式図である。
【図11】第一実施形態の第一変形例の説明図である。
【図12】第一実施形態の第二変形例の説明図である。
【図13】第二実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。
【図14】パーテーションプレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
以下に、本発明に係るプリンタの第一実施形態について、図面を参照して説明をする。なお、本実施形態では、プリンタの一例として、サーマルプリンタを例に挙げて説明する。
図1は、プリンタカバー3を開けたときのサーマルプリンタ1の斜視図である。
図2は、プリンタカバー3を閉めたときのサーマルプリンタ1の平面図である。
図3は、図2のA−A線に沿った断面図である。
図1に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ1は、ケーシング2と、プリンタカバー3とを備えている。
なお、サーマルプリンタ1は、図1における上下方向が重力方向であり、床面Gに載置して使用されるものである。
【0027】
図1に示すように、ケーシング2は、プラスチックや金属材料等により、上方に開口部2aを有し、下方に底部2bを有する略箱状に形成されている。ケーシング2の内部にはロール収容部20が形成されている。ロール紙Pが巻回されたロール50(図3参照)は、ケーシング2の開口部2aから投入され、ロール収容部20に収容される。すなわち、サーマルプリンタ1は、いわゆるドロップイン方式のプリンタである。ロール収容部20の詳細については後述する。
【0028】
図3に示すように、ケーシング2の開口部2aの一側(図3における左側)には、サーマルヘッド4が組み込まれている。
サーマルヘッド4は、ロール50から引き出されるロール紙Pに印字を行う部材であり、開口部2aの縁部に沿って不図示の発熱素子が並んで配置されている。サーマルヘッド4が並んで配置される方向(図3における紙面表裏方向)は、ロール50の軸方向と一致している。
サーマルヘッド4は、ヘッド支持体16に固定されている。さらに、ヘッド支持体16は、コイルバネ等の付勢部材16aによって後述するプラテンローラ5側に付勢されており、サーマルヘッド4がプラテンローラ5に圧接されている。
【0029】
サーマルヘッド4の上方には、固定刃11aが設けられている。固定刃11aは、平板状に形成されており、開口部2aの縁部に沿って配置されている。固定刃11aの刃先はケーシング2の内側に向いている。固定刃11aは、後述のプリンタカバー3に設けられた可動刃11bとともにカッターユニット11を形成している。
【0030】
図1に示すように、サーマルヘッド4の一端側(図1における紙面手前側)における開口部2aの縁部には、不図示のステッピングモータによって回転する歯車列18が設けられている。歯車列18は、後述するプラテンローラ5に連結された従動歯車13に回転力を伝達し、プラテンローラ5を回転させている。
【0031】
ケーシング2には、開口部2aを閉塞するプリンタカバー3が設けられている。プリンタカバー3は、サーマルヘッド4とは反対側の開口部2aの縁部に、ヒンジ部7を介して取り付けられている。プリンタカバー3は、ヒンジ部7のヒンジ軸7a周りに回動し、ケーシング2に対して開閉自在になっている。
【0032】
プリンタカバー3には、不図示のロック機構が設けられている。プリンタカバー3を閉じたとき、ロック機構によってプリンタカバー3とケーシング2とがロックされる。プリンタカバー3とケーシング2とがロックされた後は、ロック機構を解除しないとプリンタカバー3を開けることができないようになっている。
図2に示すように、プリンタカバー3の先端側の角部には、開閉レバー8が設けられている。開閉レバー8を操作することにより、サーマルプリンタ1の外側からワンタッチでロック機構が解除され、プリンタカバー3を開けることができる。
【0033】
プリンタカバー3の先端側には、プリンタカバー3の縁部に沿ってプラテンローラ5が設けられている。プラテンローラ5は、ゴム等の弾性体により略円筒状に形成されており、プラテンローラ5の軸方向は、ロール50の軸方向と一致している。プラテンローラ5の軸方向の一端側(図1における紙面手前側)には従動歯車13が固定されており、ケーシング2に設けられた歯車列18に噛合するようになっている。これにより、プラテンローラ5は、不図示のステッピングモータからの回転駆動力によって回転するようになっており、ロール紙P(図3参照)をロール50から引き出し、排出口6側に向かって送り出すことができる。なお、ステッピングモータは、不図示の制御部の信号を受けて回転する。
【0034】
図3に示すように、上下方向におけるプリンタカバー3の先端側の内面とプラテンローラ5との間には、固定刃11aと対向する位置に可動刃11bが設けられている。可動刃11bは、平板状に形成されており、プリンタカバー3の先端側の縁部に沿って配置されている。可動刃11bの刃先は、プリンタカバー3の先端側に向いている。
可動刃11bは、制御部からの信号に基づいて駆動する電動モータ(いずれも不図示)によって、固定刃11a側に向かってスライド移動可能に設けられている。印刷ユニット10での印刷作業が終了すると、制御部から切断信号を受信して可動刃11bがスライド移動し、ロール紙Pが切断されるようになっている。
【0035】
プリンタカバー3を閉じたとき、ヒンジ部7とは反対側(図1における左側)の一側であって、ケーシング2の周縁とプリンタカバー3の周縁との間には、ロール紙Pを排出するための排出口6が形成される。また、このとき、ケーシング2の内側には、排出口6に対応する箇所に印刷ユニット10およびカッターユニット11が形成される。
【0036】
印刷ユニット10は、排出口6の下方において、プラテンローラ5とサーマルヘッド4とが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。この際、上述したように、付勢部材16aによる付勢力によって、サーマルヘッド4がプラテンローラ5に圧接される。また、プラテンローラ5は、ロール紙Pをサーマルヘッド4に圧接しながら搬送し、排出口6から外部に送り出している。
【0037】
カッターユニット11は、印刷ユニット10と排出口6との間において、ケーシング2側に設けられた固定刃11aと、プリンタカバー3側に設けられた可動刃11bとが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。
【0038】
(ロール収容部)
図1に示すように、ケーシング2の内側には、ロール50(図3参照)を収容するロール収容部20が設けられている。
ロール収容部20は、収容されるロール50(図3参照)の軸方向両端部に配置される一対の側壁21,22と、ロール50の外周面52(図3参照)と接するロール支持部25(請求項の「支持手段」に相当。)とにより形成されている。
【0039】
一対の側壁21,22は平坦に形成されており、ロール50の軸方向において略平行に配置されている。一対の側壁21,22の離間距離は、ロール50の幅よりも若干広く形成されている。一方の側壁21における下方には、ロール50の軸方向に沿って側壁21を貫通する貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aを形成することで、後述する負荷付与部材30(負荷付与手段)の当接部35および先端部37(いずれも図5参照)が、貫通孔21aから出没自在となっている。
【0040】
図3に示すように、一対の側壁21,22には、印刷ユニット10の下方にテンションローラ9が設けられている。
テンションローラ9は、略円筒状に形成されており、一対の側壁21,22の間に渡し掛けられている。テンションローラ9は不図示のバネ等によりロール50から引き出されたロール紙P側に付勢されており、テンションローラ9の外周面はロール紙Pと常に接している。テンションローラ9の付勢力により、引き出されたロール紙Pには、ロール50の直径に関わらずテンションが付与される。したがって、ロール紙Pは、弛みが生じにくい状態でロール50から引き出されて搬送され、サーマルヘッド4とプラテンローラ5との間に導入される。
【0041】
(ロール支持部)
一対の側壁21,22の間には、ロール支持部25が設けられている。図3に示すように、ロール支持部25は、ロール50の軸方向に直交する断面形状が略V字形状に形成されており、ロール紙Pの搬送方向の下流側に設けられた第一摺接面26と、ロール紙Pの搬送方向の上流側に設けられた第二摺接面27と、第一摺接面26と第二摺接面27との間に設けられた底部28とにより形成されている。
【0042】
第一摺接面26は平坦に形成されており、ロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側(図3における左側から右側)に向かって、ケーシング2の下方に所定角度で傾斜するように配置されている。第一摺接面26の所定位置には、ロール50側に突出した第一突条部26aが、ロール50の軸方向に沿って形成されている。
第二摺接面27は平坦に形成されており、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側(図3における右側から左側)に向かって、ケーシング2の下方に所定角度で傾斜するように配置されている。第二摺接面27の所定位置には、ロール50側に突出した第二突条部27aが、ロール50の軸方向に沿って形成されている。
底部28は、第一摺接面26の下端縁部と第二摺接面27の下端縁部とを所定の曲率で滑らかに接続することで形成されている。
【0043】
図4は、ロール50が鉛直下方へ移動するときの説明図である。なお、図4では、分かりやすくするために、ケーシング2およびプリンタカバー3の図示を省略している。また、図4は、図3の紙面裏側から見た図となっている。
ロール支持部25は、ロール紙Pが使用されてロール50の直径が減少するに従い、ロール50が鉛直下方に移動するように構成されている。具体的には、ロール50は、以下のように鉛直下方に移動する。
図4に示すように、直径R1を有する未使用のロール50がケーシング2の開口部2aからロール収容部20に投入されると、ロール50は、ロール支持部25に支持される。このとき、ロール50は、第一摺接面26の第一突条部26aと第二摺接面27の第二突条部27aとにより挟み込まれた状態でロール支持部25に支持されており、底部28から離間した状態となっている。
【0044】
印刷が開始されると、ロール50からロール紙Pが引き出され、ロール50は回転運動しながら直径が漸次縮小する。そして、ロール50は、外周面が第一摺接面26および第二摺接面27に当接しながら、ロール50の自重により第一摺接面26と第二摺接面27との間に落ち込むように鉛直下方に移動する。図4では、ロール紙Pの使用により、ロール50の直径R1が直径R2まで縮小したときを図示している。このとき、直径R2を有するロール50は、第一突条部26aよりも下方の第一摺接面26と、第二突条部27aよりも下方の第二摺接面27とにより挟み込まれて支持されている。
【0045】
印刷が継続されると、ロール紙Pはロール50から引き出されて、ロール50の直径はさらに縮小し、ロール50はさらに鉛直下方に移動する。図4では、ロール紙Pの使用により、ロール50の直径が、湾曲形成された底部28の曲率における直径よりも小さいR3まで縮小したときを図示している。このとき、直径R3を有するロール50は、外周面52がロール支持部25の底部28に接して支持される。ロール50の外周面52が底部28に接した時点で、ロール50の鉛直下方への移動が終了する。
【0046】
図5は、図4のB−B線に沿った断面図である。なお、図5では、直径R1を有する未使用のロール50が収容されている場合を図示している。
図5に示すように、ロール収容部20の一方の側壁21の外側面には、段差部41が形成されている。段差部41には、後述する負荷付与部材30が取り付けられている。
段差部41は、軸方向外側に所定の高さを有して形成された取付面41aと、軸方向に沿って設けられた締結孔41bと、取付面41aから軸方向外側に突出形成された突起部41cとを備えている。
取付面41aは、一方の側壁21よりも軸方向外側において、一方の側壁21と略平行に形成されている。締結孔41bは、軸方向外側に開口しており、内周面には雌ネジが形成されている。締結孔41bには、負荷付与部材30を取り付けるためのネジ42が締結されている。突起部41cは、締結孔41bを挟んで上下方向の両側に設けられており、負荷付与部材30の位置決めを行っている。
【0047】
(負荷付与部材)
図6は、負荷付与部材30の斜視図である。
図6に示すように、負荷付与部材30は、ステンレスや銅等の金属からなる長尺板部材であり、例えばプレス加工により形成される。負荷付与部材30は、上下方向に長手方向を有しており、上方から下方に向かって取付部31、付勢部33、当接部35、先端部37の順に一体形成されている。
【0048】
取付部31は、平板状に形成されており、負荷付与部材30の厚み方向に貫通する貫通孔31aと、貫通孔31aを挟んで上下方向の両側に形成された位置決め孔31b,31bとを有している。貫通孔31aは、段差部41の締結孔41bに対応した位置に形成されている。位置決め孔31b,31bは、段差部41の突起部41cに対応した位置に形成されている。
図5に示すように、取付部31の貫通孔31aには、ネジ42が挿通されている。ネジ42を段差部41の締結孔41bに締結することで、負荷付与部材30が段差部41に取り付けられている。また、取付部31の位置決め孔31b,31b内には、段差部41の突起部41cが配置されている。これにより、負荷付与部材30は、ロール50の径方向および周方向の位置決めがされる。
【0049】
取付部31の下方には、付勢部33が形成されている。付勢部33は、取付部31と連続して平板状に形成されている。詳細は負荷付与部材30の作用で説明するが、付勢部33は、取付部31を支点とし、後述する当接部35を作用点として、ロール50の軸方向外側(図5における右側)に撓んで弾性変形することにより板バネとして機能する。これにより、付勢部33は、当接部35をロール50の軸方向内側(図5における左側)に向かって付勢している。
【0050】
図6に示すように、付勢部33の下方には、当接部35が形成されている。当接部35は、ロール50の中心軸O(図5参照)に対して、直角以外の所定角度で交差する傾斜面35aを有している。本実施形態の傾斜面35aは、軸方向外側から軸方向内側に向かって下方に傾斜しており、ロール50の下方においてロール50側に面している(図5参照)。
【0051】
図5に示すように、傾斜面35aの下端部35bと、取付部31との軸方向における離間距離は、段差部41の取付面41aの高さよりも大きく形成されている。さらに、傾斜面35aの下端部35bと取付部31との軸方向における離間距離は、未使用のロール50の外周面52と底部28との間において、ロール50の側面周縁部54よりも軸方向内側に、傾斜面35aの下端部35bを配置可能なように形成されている。このように形成された当接部35は、側壁21に形成された貫通孔21aを介して、下端部35bがロール50の側面周縁部54よりも軸方向内側に配置されている。すなわち、当接部35は、ロール50の鉛直下方においてロール50の側面周縁部54を跨ぐように配置されている。これにより、ロール紙Pの使用によりロール50が鉛直下方に移動したとき、当接部35の傾斜面35aとロール50の側面周縁部54とが当接可能となっている。
【0052】
傾斜面35aの下端部35bは、軸方向内側から軸方向外側に向かって所定の曲率で湾曲形成されている(図5参照)。これにより、ロール50が鉛直下方に移動して、傾斜面35aの下端部35bとロール50の側面53とが接触したときに、ロール50の側面53と傾斜面35aの下端部35bとが面接触できる。したがって、ロール50の側面53が傾斜面35aの下端部35bにより損傷するのを防止できる。
【0053】
当接部35の下方には、傾斜面35aの下端部35bから連続して先端部37が形成されている。先端部37は、ロール50の軸方向外側に向かって形成されている(図5参照)。これにより、先端部37のエッジがロール50の側面53に接触するのを確実に防止でき、ロール50の側面53が先端部37により損傷するのを防止できる。
【0054】
(作用)
次に、図面を用いて、サーマルプリンタ1によりロール紙Pに印字したときの、負荷付与部材30の作用について説明をする。
図1に示すように、まず、プリンタカバー3を開き、ロール収容部20に未使用のロール50(図3参照)を配置する。これにより、図3に示すように、ロール50は、ロール支持部25の第一摺接面26の第一突条部26aと、第二摺接面27の第二突条部27aとの間に挟まれた状態で支持される。以上で、ロール50のセットが完了する。
続いて、ロール50からロール紙Pを引き出し、印刷ユニット10へと引き込む。これにより、プラテンローラ5とサーマルヘッド4との間にロール紙Pが配置されて、ロール紙Pへの印刷準備が完了する。
【0055】
図5に示すように、直径R1を有する未使用のロール50をロール収容部20内に配置したとき、ロール支持部25の底部28から、ロール50の外周面52が離間した状態で配置されている。また、負荷付与部材30の傾斜面35aは、下端部35bがロール50の側面周縁部54よりも軸方向内側に配置されており、当接部35がロール50の鉛直下方においてロール50の側面周縁部54を跨ぐように配置されている。
【0056】
図7は、ロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図7では、未使用時のロール50を配置したときのロール50と負荷付与部材30との位置を図示している。また、分かり易くするために、ロール50および負荷付与部材30以外の部品の図示を省略している。
図8は、横軸をロール50の鉛直下方への移動量とし、縦軸を負荷付与部材30の付勢力Fとしたときのグラフである。
また、図7に示すように、未使用のロール50をロール収容部20内に配置したとき、ロール50の側面周縁部54と負荷付与部材30の当接部35とは、第一所定値L1だけ離間している。このとき、ロール50の鉛直下方への移動量Lは0であり、負荷付与部材30の付勢部33は弾性変形することがない。したがって、図8に示すように、付勢部33には、当接部35を軸方向内側へ付勢する付勢力Fは発生していない。
【0057】
続いて、図3に示すように、ロール紙Pへの印刷を開始すると、不図示のステッピングモータが回転し、プラテンローラ5が回転する。また、これと共に、ロール紙Pに印刷するために必要な情報に基づいてサーマルヘッド4の発熱素子を発熱させる。これにより、ロール紙Pの印刷面には、サーマルヘッド4を通過する際に、発熱素子によって所望の文字や図形等が印刷される。このとき、プラテンローラ5の回転に伴ってロール紙Pが排出口6に向かって送り出されることにより、ロール50が回転運動する。また、プラテンローラ5によってさらに送り出されたロール紙Pは、カッターユニット11により所望の長さで切断される。
【0058】
ここで、例えば、印刷が終了したロール紙Pを切断するにあたって、プラテンローラ5の回転が停止すると、ロール紙Pの送り出しが停止する。このとき、ロール50の回転も停止するが、ロール紙Pの送り出し停止後にロール50は、その慣性力により更に回転しようとする。
しかしながら、ロール紙Pの使用量が少なく、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1未満のときは、ロール50の重量が十分重い。このため、ロール50の外周面52と、ロール支持部25との摩擦力により、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制できる。したがって、ロール紙Pの使用量が少なく、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1未満のときは、ロール50と印刷ユニット10との間でロール紙Pが弛むことがほとんどない。
【0059】
また、ロール紙Pの使用量が少なく、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1未満のときは、ロール50の側面周縁部54との当接部35の傾斜面35aとが当接しないので、負荷付与部材30によりロール50の回転運動を妨げることがない。したがって、ロール50からロール紙Pを引き出すのに必要とされるトルクに加え、ロール50の回転運動に対する負荷に対応したトルクが余計に必要とされることがないので、負荷付与部材30を備えても、ロール紙Pを搬送するステッピングモータの大型化が抑制される。
【0060】
図9は、ロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図9では、ロール紙P(図3参照)が使用されて、ロール50が鉛直下方に第一所定値L1以上移動し、ロール50の側面周縁部54と負荷付与部材30の当接部35とが当接している状態を示しいている。
【0061】
ロール紙Pの使用によりロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1となると、ロール50の側面周縁部54と、当接部35の傾斜面35aとが当接する。これにより、当接部35がロール50の側面周縁部54によって、ロール50の軸方向外側に押し出される。このとき、負荷付与部材30の取付部31は段差部41(図5参照)に固定されているため、負荷付与部材30の取付部31が支点となり、当接部35が作用点となって、付勢部33がロール50の軸方向外側に撓み始める。したがって、図8に示すように、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1となったとき、付勢部33には当接部35を軸方向内側へ付勢する付勢力Fが発生し始める。
【0062】
続いて、図9に示すように、ロール50の鉛直下方への移動量Lがさらに増加すると、ロール50の側面周縁部54と、負荷付与部材30の傾斜面35aとが当接した状態で、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して当接部35が軸方向外側に移動する。これにより、付勢部33の弾性力は、当接部35の軸方向外側への移動量に比例して増加する。したがって、図8に示すように、ロール紙Pの使用量の増加によるロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して、付勢力Fを増加させて当接部35をロール50の軸方向内側に付勢できる。
【0063】
このように、ロール紙Pの使用を継続すると、ロール50の鉛直下方への移動量Lが多くなるので、ロール紙Pの使用量の増加に対応してロール50の回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙Pの使用量が増加してロール50が軽くなりロール支持部25とロール50の外周面52との摩擦力が小さいとき、すなわちロール50が軽く慣性力により回転し易いときに、ロール50の回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロール50が軽くなり慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0064】
図10は、ロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図10では、ロール紙P(図3参照)が使用されてロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2になり、ロール50の側面周縁部54に、傾斜面35aの下端部35bが当接し始めた状態を示している。
【0065】
ここで、一般に、ロール50の直径が未使用時におけるロール50の直径R1の50パーセント以上のときは、ロール50の重量が重い。このため、ロール紙Pの弛みが解消した瞬間に、ロール50の重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、ステッピングモータが脱調しやすいことが知られている。
【0066】
このため、本実施形態では、未使用時のロール50の直径の50パーセントとなったときの移動量Lを第二所定値L2に設定している。これにより、ロール50の重量が重くロール紙Pの弛みによりステッピングモータが脱調しやすい領域と、ロール50の鉛直下方の移動量Lが第二所定値L2に達するまでの領域とが対応している。
したがって、ロール50の重量が重くロール紙の弛みによりステッピングモータが脱調しやすい領域で、ロール紙Pの使用量の増加に対応して付勢部33の弾性力を増加させて当接部35をロール50の軸方向内側に付勢できる。これにより、ロール50の重量が重くロール紙Pの弛みに起因してステッピングモータが脱調しやすい領域で、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを確実に抑制でき、脱調の原因となる印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。したがって、ステッピングモータの脱調を確実に防止できる。
【0067】
また、ロール50の側面53は、鉛直方向に沿って平坦に形成されている。したがって、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2からさらに増加しても、当接部35が軸方向外側に移動することがない。このため、ロール50の鉛直下方の移動量Lが第二所定値L2に達し、傾斜面35aの下端部35bがロール50の側面周縁部54に当接した時点で、当接部35の軸方向外側への移動が終了する。したがって、図8に示すように、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2以上のとき、ロール50の軸方向内側への付勢力Fが一定となっている。
【0068】
ここで、ロール50の鉛直下方の移動量Lが第二所定値L2に達した後、ロール紙Pの使用量がさらに増加してロール50の直径がR2よりも小さくなり、付勢力Fを増加させることなく一定とすることができる。
このとき、付勢力Fが一定になることでロール50は慣性力により回転しやすくなるが、ロール紙Pの弛みが発生しても、ロール50が軽いのでステッピングモータの脱調は発生しない。したがって、ロール紙Pの残量が少なくなったときでも、ステッピングモータの脱調を抑制できるとともに、負荷付与部材30の当接部35との当接により、ロール紙Pの感熱面が損傷するのを防止できる。
【0069】
印刷が継続されると、ロール50の直径は縮小し、ロール50はさらに鉛直下方に移動する。図4に示すように、ロール50の直径がR3となり、ロール50の外周面が底部28に接した時点で、ロール50の鉛直下方への移動が終了する。そして、ロール50の直径が所定値以下になると不図示の光センサ等により検知し、不図示の表示部にロール50の残量が少ない旨を警告表示するとともに、ロール紙Pへの印刷動作が停止する。
【0070】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、ロール紙Pの使用開始直後は、ロール50の鉛直下方への移動量Lが少ないので、負荷付与部材30からロール50の回転運動に対する負荷が付与されていないか、もしくは小さな負荷が付与されている。これにより、ロール紙Pの使用量が少ないためロール50が重くロール支持部25とロール50の外周面52との摩擦力が大きいとき、すなわち、ロール50の自重が重くロール50が回転し難いときに、負荷付与部材30によりロール50の回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与部材30を備えても、ロール紙Pを搬送するステッピングモータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙Pの使用を継続すると、ロール径が徐々に小さくなり、この結果、ロール50の鉛直下方へ移動量Lが次第に大きくなる。そして、ロール紙Pの使用量の増加に対応して、負荷付与部材30からロール50の回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙Pの使用量が増加してロール50が軽くなりロール支持部25とロール50の外周面52との摩擦力が小さいとき、すなわちロール50の自重が軽く慣性力により回転し易いときに、ロール50の回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロール50が軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、傾斜面35aの下端部35bがロール50の側面53に当接すると、当接部35のロール50の軸方向外側への移動が終了する。したがって、ロール50の鉛直下方への移動量が第二所定値L2以上のときに、負荷付与部材30によるロール50の軸方向内側への付勢力Fを一定とすることができる。このとき、付勢力Fが一定になることでロール50は慣性力により回転しやすくなるが、ロール紙Pの弛みが発生しても、ロール50が軽いのでステッピングモータの脱調は発生しない。したがって、ロール紙Pの残量が少なくなったときでも、ステッピングモータの脱調を抑制できるとともに、負荷付与部材30の当接部35との当接により、ロール紙Pの感熱面が損傷するのを防止できる。
【0072】
(第一実施形態の第一変形例)
図11は、第一実施形態の第一変形例におけるロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図11では、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2になり、ロール50の側面周縁部54に、負荷付与部材30の傾斜面35aの下端部35bが当接し始めた状態を示しいている。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、傾斜面35aの下端部35bが所定の曲率で湾曲形成されていた(図6参照)。
これに対して、第一変形例のサーマルプリンタ1は、傾斜面35aの下端部35bに平坦部35cが形成されている点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0073】
図11に示すように、第一変形例の負荷付与部材30は、傾斜面35aの下端部35bに平坦部35cが形成されている。平坦部35cは、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2以上になったとき、ロール50の側面53と面接触できるように形成されている。また、平坦部35cは、鉛直方向の長さがL3に形成されている。これにより、ロール50の鉛直下方への移動量LがL2以上L2+L3以下の範囲において、平坦部35cとロール50の側面53との接触面積が増加するように形成されている。
【0074】
(第一実施形態の第一変形例の効果)
本実施形態の第一変形例によれば、ロール紙Pの使用量に対応して平坦部35cとロール紙Pの側面53との接触面積を増加できる。したがって、ロール紙Pの使用量の増加に対応して、付勢部33の付勢力に加えて平坦部35cとロール紙Pの側面53との摩擦力により、ロール50の回転運動に対する負荷を付与できる。これにより、ロール50が軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを確実に抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
また、負荷付与部材30は平坦部35cを備えているので、ロール50の側面53を損傷することなくロール50の軸方向内側に押圧して、ロール50の回転運動に対する負荷を付与できる。
【0075】
(第一実施形態の第二変形例)
図12は、第一実施形態の第二変形例のサーマルプリンタ1であって、ロール50の軸方向から見たときのロール50および負荷付与部材300の模式図である。なお、図12では、分かり易くするために、ロール50および負荷付与部材300以外の部品の図示を省略している。また、ロール50の鉛直下方における右側がロール紙Pの搬送方向の上流側となっており、左側がロール紙Pの搬送方向の下流側となっている。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、負荷付与部材30の付勢部33がロール50の軸方向外側に配置されており、当接部35がロール50の側面53に付勢していた。
これに対して、第二変形例のサーマルプリンタ1は、負荷付与部材300の付勢部330がロール50の鉛直下方に配置されており、鉛直下方に撓んで弾性変形することにより当接部350がロール50の外周面52に当接している点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、第二変形例の負荷付与部材300は、ロール50の鉛直下方に設けられている。負荷付与部材300は、ロール50の周方向に沿うように長手方向を有しており、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側(図12における右側から左側)に向かって、取付部310、付勢部330、当接部350、先端部370の順に一体形成されている。
【0077】
取付部310は平坦に形成されており、例えばロール支持部25の底部28(図3参照)に不図示のネジ等により固定される。
付勢部330は、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向かって、ロール50に接近するように形成されている。付勢部330は、取付部310に対して傾斜して形成されており、取付部310を支点とし、後述する当接部350を作用点として、鉛直下方に撓んで弾性変形することにより板バネとして機能する。
【0078】
当接部350は、ロール50の中心軸Oの鉛直下方に設けられており、取付部310よりも上方に配置されている。当接部350の上面は、ロール50の外周面52と接触する接触面350aとなっており、平坦に形成されている。これにより、ロール50が鉛直下方に移動して、接触面350aとロール50の外周面52とが接触したときに負荷を付与できる。
先端部370は、下方に向かって形成されている。これにより、先端部370のエッジがロール50の外周面52に接触するのを確実に防止し、ロール50の外周面52が先端部370により損傷するのを防止できる。
なお、当接部350は、ロール50の外周面52における軸方向端部に配置されるのが望ましい。これにより、当接部350は、ロールの外周面の軸方向端部に当接するので、印字面の損傷(発色)を防止できる。
【0079】
ロール紙Pの使用によりロール50の鉛直下方への移動量が第一所定値L1となると、ロール50の外周面52と、当接部350の接触面350aとが当接する。負荷付与部材300の取付部310は、ロール支持部25の底部28に固定されているため、負荷付与部材300の取付部310が支点となり、当接部350が作用点となって、付勢部330が鉛直下方に撓み始める。したがって、第一実施形態と同様に、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1となったときに、付勢部330には当接部350をロール50の外周面52に付勢する付勢力Fが発生し始める(図8参照)。
【0080】
続いて、ロール50の鉛直下方への移動量Lが、第一所定値L1から増加すると、ロール50の外周面52と、負荷付与部材300の接触面350aとが当接した状態で、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して当接部350が鉛直下方に移動する(図12における二点鎖線で示した負荷付与部材300参照)。これにより、付勢部330の弾性力は、当接部350の鉛直下方への移動量に比例して増加する。したがって、第一実施形態と同様に、ロール紙Pの使用量の増加によるロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して、付勢部330の付勢力Fを増加させて当接部350をロール50の外周面52に付勢できる(図8参照)。
【0081】
(第一実施形態の第二変形例の効果)
本実施形態の第二変形例によれば、負荷付与部材300の付勢部330をロール50の鉛直下方に配置しているので、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して、精度良く付勢部330を弾性変形させることができる。したがって、第一実施形態の効果に加えて、ロール50の回転運動に対する負荷を精度良く付与できる。
【0082】
(第二実施形態)
図13は、第二実施形態のサーマルプリンタ1の斜視図である。
図14は、パーテーションプレート60の斜視図である。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、負荷付与部材30がロール収容部20の一方の側壁21の外側面に取り付けられていた。
これに対して、第二変形例のサーマルプリンタ1は、パーテーションプレート60が設けられており、パーテーションプレート60に負荷付与部材30が取り付けられている点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0083】
図13に示すように、ロール収容部20内にはパーテーションプレート60が設けられている。パーテーションプレート60は、ロール収容部20の一対の側壁21,22の間に配置される。パーテーションプレート60は、一対の側壁21,22の離間距離よりも極端に軸長の短いロール(不図示、以下「短軸長ロール」という。)を収容する際に、ロール収容部20内における短軸長ロールの軸方向の位置を規制する部材である。
【0084】
図14に示すように、パーテーションプレート60は、ロール収容部20の一対の側壁21,22の間に配置される仕切壁61を有している。仕切壁61の外周面は、ロール収容部20に対応した形状に形成されている。仕切壁61の上部には、軸方向外側に向かって張り出す位置規制片63が形成されている。位置規制片63をケーシング2の内壁に突き当ててパーテーションプレート60を配置することで、ロール収容部20内における仕切壁61の軸方向位置が決定される。
仕切壁61は、ロール収容部20内に一対の側壁21,22と略平行に配置されている(図13参照)。また、仕切壁61は、仕切壁61とロール収容部20の側壁22との離間距離が、短軸長ロールの軸長よりも若干広くなるように配置される。
【0085】
仕切壁61の軸方向外側面には、段差部65が設けられている。段差部65には、負荷付与部材30が取り付けられている。段差部65は、第一実施形態の段差部41と同一形状に形成されている。
段差部65の下方には、開口61aが設けられている。開口61aからは、負荷付与部材30の当接部35および先端部37が出没自在となっている。これにより、第一実施形態と同様に、負荷付与部材30の当接部35は、未使用の短軸長ロールをロール収容部20内に収容したとき、短軸長ロールの鉛直下方において短軸長ロールの側面周縁部を跨ぐように配置される。また、ロール紙の使用により短軸長ロールが鉛直下方に移動したとき、当接部35と短軸長ロールの側面周縁部とが当接できる。
【0086】
(第二実施形態の効果)
本実施形態によれば、異なる軸長を有する短軸長ロールに対応してロール収容部20内にパーテーションプレート60を設けた場合であっても、パーテーションプレート60に負荷付与部材30を設けることができる。したがって、ロール収容部20内に短軸長ロールが収容されても、パーテーションプレート60に負荷付与部材30を設けることで、第一実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0087】
なお、この発明の技術範囲は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0088】
各実施形態では、プリンタの一例としてサーマルプリンタ1を例に挙げて説明したが、これに限定されることはない。例えば、インク滴を利用してロール紙に印刷するインクジェットプリンタ等、サーマルプリンタ1以外のプリンタにも本発明を適用できる。
【0089】
各実施形態では、ケーシング2の開口部2aの縁部に沿って印刷ユニット10が配置され、印刷ユニット10の上方にカッターユニット11が配置されていた。しかし、印刷ユニット10およびカッターユニット11の位置は実施形態に限定されることはない。またカッターユニット11は、必ずしも備える必要はない。
【0090】
各実施形態では、負荷付与部材30の付勢部33は板バネとなっており、当接部35と一体形成されていた。しかし、負荷付与部材30の付勢部33を、例えばコイルバネとし、当接部35と別体形成してもよい。ただし、平板部材からプレス加工により当接部35と付勢部33とを一体形成でき、簡単かつ低コストに負荷付与部材30を形成できる点で、各実施形態に優位性がある。
【0091】
各実施形態では、ロール紙Pの使用によりロール50が小径となったとき、ロール50が鉛直下方に移動する場合を例に説明をしたが、ロール50の移動方向は鉛直下方に限定されることはない。例えば、斜め下方にロール50が移動する場合であっても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・サーマルプリンタ(プリンタ) 25・・・ロール支持部(支持手段) 30,300・・・負荷付与部材(負荷付与手段) 33,330・・・付勢部 35,350・・・当接部 35a・・・傾斜面 35b・・・下端部 35c・・・平坦部 50・・・ロール 52・・・外周面 53・・・側面 54・・・側面周縁部 350a・・・接触面 L・・・鉛直下方への移動量 L1・・・第一所定値 L2・・・第二所定値 P・・・ロール紙
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタとして、例えば、熱を加えると変色する感熱記録紙に、発熱したサーマルヘッドを押し付けることで印刷を行うサーマルプリンタがある。
サーマルプリンタは、ロール紙が巻回されたロールを支持する支持手段と、多数の発熱素子を有するサーマルヘッドと、サーマルヘッドとの間にロール紙を挟むプラテンローラと、歯車を介してプラテンローラを回転させ、ロールからロール紙を引き出す電動モータとを備えている。
ロールの支持手段としては、収容部内にロールを落とし込こんで収容部の底部に載置した状態で支持するドロップイン式や、ロールの中空孔にシャフトを挿通させて回転自在に支持する軸支式が採用されている。
【0003】
印刷開始時は、電動モータを駆動させることでプラテンローラが回転する。ロールは、ロール紙がプラテンローラの回転により引っ張られることで回転する。これにより、サーマルヘッド側へのロール紙の搬送が開始し、サーマルヘッド側へ連続的に引き出される。
また、印刷停止時は、電動モータを停止させることでプラテンローラの回転が停止する。ロールは、プラテンローラの回転の停止により収容部内で回転が停止する。これにより、サーマルヘッド側へのロール紙の搬送も停止する。
【0004】
ここで、プラテンローラの回転を停止させた後でも、ロールが慣性力により少しだけ回転するため、プラテンローラと収容部との間でロール紙の弛みが発生するおそれがある。この状態で電動モータを再駆動して印刷を再開し、プラテンローラによりロール紙を引っ張ると、ロール紙の弛みが解消した瞬間にロールの重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、電動モータが脱調するおそれがある。このため、プラテンローラは安定してロール紙を搬送できず、印刷精度が低下するおそれがある。
【0005】
このような問題を解決するために、ロール紙受け台に載置したロール紙の一方の側面を押圧して、ロール紙の他方の側面をロール紙受け台の側壁に押圧する板ばねを備えたプリンタが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1によれば、ロールの回転運動に対して常に負荷を付与できるので、印刷停止時におけるロールの慣性力による回転が抑制されると考えられる。これにより、ロールから引き出されたロール紙の弛みをある程度抑制できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−217294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ロール紙の使用量、すなわちロール径の大小に関わらず、板ばねの押圧力が常に一定の圧力でロール側を押圧するように設定されている。特に、特許文献1に記載のプリンタは、ドロップイン式であるため、ロール紙の使用量、すなわちロール径の大きさによりロールの重量が変化し、収容部の底部とロールの外周面との間の摩擦力が変化する。したがって、以下のような問題が発生する。
【0009】
ロール紙の弛みを抑制するために押圧力が大きい板ばねを採用した場合には、ロール紙の慣性力による回転は抑制できる。
しかしながら、電動モータには、使用開始直後は、大径の重いロールからロール紙を引き出すのに必要とされるトルクに加え、板ばねの押圧力による負荷に対応したトルクが更に必要とされる。したがって、電動モータが大型化するおそれがある。
【0010】
これに対して、電動モータの大型化を抑制するために押圧力が小さい板バネを採用した場合には、ロール紙の搬送に必要とされるトルクを低くできる。
しかしながら、押圧力が小さい板ばねは、ロールの回転運動に対する負荷が不足し、ロールが小さく軽くなり、ロールの回転が速くなったときのロールの慣性力による回転を抑制しきれなくなり、ロール紙の弛みを抑制できないおそれがある。
【0011】
そこで本発明は、電動モータの大型化の抑制と、ロール紙の弛みの抑制との両立ができるプリンタの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明のプリンタは、ロール紙が巻回されたロールの外周面と接触し、前記ロールの直径の減少に対応して鉛直下方に前記ロールを移動させる支持手段を備え、前記ロールを回転運動させて前記ロール紙を引き出し印刷するプリンタであって、前記ロールの外面に接触し、前記ロールの前記回転運動に対して負荷を付与する負荷付与手段を備え、前記負荷付与手段は、前記ロール径が小さくなるに従い、前記ロールの鉛直下方への移動量に対応して前記負荷が増加するように形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明によれば、ロール紙の使用開始直後は、ロールの鉛直下方への移動量が少ないので、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が付与されていないか、もしくは小さな負荷が付与されている。これにより、ロール紙の使用量が少ないためロールが重く支持手段とロールの外周面との摩擦力が大きいとき、すなわち、ロール自重が重くロールが回転し難いときに、負荷付与手段によりロールの回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与手段を備えても、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙の使用を継続すると、ロール径が徐々に小さくなり、この結果、ロールが鉛直下方へ移動する量が次第に大きくなる。そして、ロール紙の使用量の増加に対応して、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙の使用量が増加してロールが軽くなり支持手段とロールの外周面との摩擦力が小さいとき、すなわちロール自重が軽く慣性力により回転し易いときに、ロールの回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【0014】
また、前記負荷付与手段は、前記ロールの鉛直下方において前記ロールの側面周縁部を跨ぐように配置され、軸方向外側より軸方向内側が鉛直下方となる傾斜面を有する当接部と、前記当接部を前記ロールの軸方向内側に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの側面周縁部と前記当接部の前記傾斜面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの軸方向外側に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴としている。
【0015】
本発明によれば、ロール紙の使用量が少なくロールの鉛直下方への移動量が第一所定値未満のときは、ロールが重く支持手段とロールの外周面との摩擦力が大きいため、ロールが回転しにくく、負荷がなくてもロール紙の弛みは発生しない。このとき、ロールの側面周縁部と当接部の傾斜面とが当接していないので、負荷付与手段によりロールの回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与手段を備えても、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙の使用量が増加してロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上となったときには、ロールの側面周縁部と当接部の傾斜面とが当接した状態で、ロールの鉛直下方への移動に対応して当接部が軸方向外側に移動する。そして、ロールが鉛直下方へ移動するとともに当接部の軸方向外側への移動量が増加するので、ロール紙の使用量の増加に対応して付勢部の弾性力を増加させて、当接部をロールの軸方向内側に付勢できる。したがって、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
さらに、付勢部と当接部とにより簡単な構造で低コストに負荷付与手段を形成できる。
【0016】
また、前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第一所定値よりも大きい第二所定値以上のとき、前記当接部の前記傾斜面の下端部が前記ロールの側面に当接することを特徴としている。
【0017】
本発明によれば、傾斜面の下端部がロールの側面に当接すると、当接部のロールの軸方向外側への移動が終了する。したがって、ロールの鉛直下方への移動量が第二所定値以上のときに、負荷付与手段によるロールの軸方向内側への付勢力を一定とすることができる。このとき、負荷付与手段の付勢力が一定になることでロールは慣性力により回転しやすくなるが、ロール紙の弛みが発生しても、ロールが軽いのでモータの脱調は発生しない。したがって、ロール紙の残量が少なくなったときでも、モータの脱調を抑制できるとともに、負荷付与手段の当接部との当接により、ロール紙の感熱面が損傷するのを防止できる。
【0018】
また、前記傾斜面の下端部には、前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第二所定値以上のときに、前記ロールの側面と面接触する平坦部が形成され、前記平坦部は、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって、前記ロールの側面との接触面積が増加するように形成されていることを特徴としている。
【0019】
本発明によれば、ロール紙の使用量に対応して平坦部とロール紙の側面との接触面積を増加できる。したがって、ロール紙の使用量の増加に対応して、付勢部の付勢力に加えて平坦部とロール紙の側面との摩擦力により、ロールの回転運動に対する負荷を付与できる。これにより、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを確実に抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
また、負荷付与手段は平坦面を備えているので、ロールの側面を損傷することなく軸方向内側に押圧して、ロールの回転運動に対する負荷を付与できる。
【0020】
また、前記第二所定値は、前記ロールの直径が、未使用時における前記ロールの直径の50パーセントとなったときの移動量であることを特徴としている。
【0021】
一般に、ロールの直径が未使用時におけるロールの直径の50パーセント以上のときは、ロールの重量が重いため、ロール紙の弛みが解消した瞬間に、ロールの重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、電動モータが脱調しやすいことが知られている。
ここで、本発明では、ロール紙の使用開始後、未使用時のロールの直径の50パーセントとなったときの移動量を第二所定値に設定している。このため、ロールの重量が重くロール紙の弛みにより電動モータが脱調しやすい領域と、ロールの鉛直下方の移動量が第二所定値に達するまでの領域とが対応している。
本発明によれば、ロールの重量が重くロール紙の弛みにより電動モータが脱調しやすい領域で、ロール紙の使用量の増加に対応して付勢部の弾性力を増加させて当接部をロールの軸方向内側に付勢できる。これにより、ロールの重量が重くロール紙の弛みに起因して電動モータが脱調しやすい領域で、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを確実に抑制でき、脱調の原因となる印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。したがって、電動モータの脱調を確実に防止できる。
【0022】
また、前記負荷付与手段は、前記ロールの鉛直下方に配置され、前記ロールの外周面に当接可能な接触面を有する当接部と、前記当接部を鉛直上方に向かって付勢する付勢部と、を備え、前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの外周面と前記当接部の前記接触面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの鉛直下方に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴としている。
【0023】
本発明によれば、負荷付与手段の付勢部をロールの鉛直下方に配置しているので、ロールの鉛直下方への移動量に対応して、精度良く付勢部を弾性変形させることができる。したがって、ロールの回転運動に対する負荷を精度良く付与できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ロール紙の使用開始直後は、ロールの鉛直下方への移動量が少ないので、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が付与されていないか、もしくは小さな負荷が付与されている。これにより、ロール紙の使用量が少ないためロールが重く支持手段とロールの外周面との摩擦力が大きいとき、すなわち、ロール自重が重くロールが回転し難いときに、負荷付与手段によりロールの回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与手段を備えても、ロール紙を搬送する電動モータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙の使用を継続すると、ロール径が徐々に小さくなり、この結果、ロールが鉛直下方へ移動する量が次第に大きくなる。そして、ロール紙の使用量の増加に対応して、負荷付与手段からロールの回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙の使用量が増加してロールが軽くなり支持手段とロールの外周面との摩擦力が小さいとき、すなわちロール自重が軽く慣性力により回転し易いときに、ロールの回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロールが軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロールが慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙の弛みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】プリンタカバーを開けたときのサーマルプリンタの斜視図である。
【図2】プリンタカバーを閉めたときのサーマルプリンタの平面図である。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図である。
【図4】ロールが鉛直下方へ移動するときの説明図である。
【図5】図4のB−B線に沿った断面図である。
【図6】負荷付与部材の斜視図である。
【図7】ロールの径方向から見たときのロールおよび負荷付与部材の模式図である。
【図8】横軸をロールの鉛直下方への移動量とし、縦軸を負荷付与部材の付勢力としたときのグラフである。
【図9】ロールの径方向から見たときのロールおよび負荷付与部材の模式図である。
【図10】ロールの径方向から見たときのロールおよび負荷付与部材の模式図である。
【図11】第一実施形態の第一変形例の説明図である。
【図12】第一実施形態の第二変形例の説明図である。
【図13】第二実施形態のサーマルプリンタの斜視図である。
【図14】パーテーションプレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第一実施形態)
以下に、本発明に係るプリンタの第一実施形態について、図面を参照して説明をする。なお、本実施形態では、プリンタの一例として、サーマルプリンタを例に挙げて説明する。
図1は、プリンタカバー3を開けたときのサーマルプリンタ1の斜視図である。
図2は、プリンタカバー3を閉めたときのサーマルプリンタ1の平面図である。
図3は、図2のA−A線に沿った断面図である。
図1に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ1は、ケーシング2と、プリンタカバー3とを備えている。
なお、サーマルプリンタ1は、図1における上下方向が重力方向であり、床面Gに載置して使用されるものである。
【0027】
図1に示すように、ケーシング2は、プラスチックや金属材料等により、上方に開口部2aを有し、下方に底部2bを有する略箱状に形成されている。ケーシング2の内部にはロール収容部20が形成されている。ロール紙Pが巻回されたロール50(図3参照)は、ケーシング2の開口部2aから投入され、ロール収容部20に収容される。すなわち、サーマルプリンタ1は、いわゆるドロップイン方式のプリンタである。ロール収容部20の詳細については後述する。
【0028】
図3に示すように、ケーシング2の開口部2aの一側(図3における左側)には、サーマルヘッド4が組み込まれている。
サーマルヘッド4は、ロール50から引き出されるロール紙Pに印字を行う部材であり、開口部2aの縁部に沿って不図示の発熱素子が並んで配置されている。サーマルヘッド4が並んで配置される方向(図3における紙面表裏方向)は、ロール50の軸方向と一致している。
サーマルヘッド4は、ヘッド支持体16に固定されている。さらに、ヘッド支持体16は、コイルバネ等の付勢部材16aによって後述するプラテンローラ5側に付勢されており、サーマルヘッド4がプラテンローラ5に圧接されている。
【0029】
サーマルヘッド4の上方には、固定刃11aが設けられている。固定刃11aは、平板状に形成されており、開口部2aの縁部に沿って配置されている。固定刃11aの刃先はケーシング2の内側に向いている。固定刃11aは、後述のプリンタカバー3に設けられた可動刃11bとともにカッターユニット11を形成している。
【0030】
図1に示すように、サーマルヘッド4の一端側(図1における紙面手前側)における開口部2aの縁部には、不図示のステッピングモータによって回転する歯車列18が設けられている。歯車列18は、後述するプラテンローラ5に連結された従動歯車13に回転力を伝達し、プラテンローラ5を回転させている。
【0031】
ケーシング2には、開口部2aを閉塞するプリンタカバー3が設けられている。プリンタカバー3は、サーマルヘッド4とは反対側の開口部2aの縁部に、ヒンジ部7を介して取り付けられている。プリンタカバー3は、ヒンジ部7のヒンジ軸7a周りに回動し、ケーシング2に対して開閉自在になっている。
【0032】
プリンタカバー3には、不図示のロック機構が設けられている。プリンタカバー3を閉じたとき、ロック機構によってプリンタカバー3とケーシング2とがロックされる。プリンタカバー3とケーシング2とがロックされた後は、ロック機構を解除しないとプリンタカバー3を開けることができないようになっている。
図2に示すように、プリンタカバー3の先端側の角部には、開閉レバー8が設けられている。開閉レバー8を操作することにより、サーマルプリンタ1の外側からワンタッチでロック機構が解除され、プリンタカバー3を開けることができる。
【0033】
プリンタカバー3の先端側には、プリンタカバー3の縁部に沿ってプラテンローラ5が設けられている。プラテンローラ5は、ゴム等の弾性体により略円筒状に形成されており、プラテンローラ5の軸方向は、ロール50の軸方向と一致している。プラテンローラ5の軸方向の一端側(図1における紙面手前側)には従動歯車13が固定されており、ケーシング2に設けられた歯車列18に噛合するようになっている。これにより、プラテンローラ5は、不図示のステッピングモータからの回転駆動力によって回転するようになっており、ロール紙P(図3参照)をロール50から引き出し、排出口6側に向かって送り出すことができる。なお、ステッピングモータは、不図示の制御部の信号を受けて回転する。
【0034】
図3に示すように、上下方向におけるプリンタカバー3の先端側の内面とプラテンローラ5との間には、固定刃11aと対向する位置に可動刃11bが設けられている。可動刃11bは、平板状に形成されており、プリンタカバー3の先端側の縁部に沿って配置されている。可動刃11bの刃先は、プリンタカバー3の先端側に向いている。
可動刃11bは、制御部からの信号に基づいて駆動する電動モータ(いずれも不図示)によって、固定刃11a側に向かってスライド移動可能に設けられている。印刷ユニット10での印刷作業が終了すると、制御部から切断信号を受信して可動刃11bがスライド移動し、ロール紙Pが切断されるようになっている。
【0035】
プリンタカバー3を閉じたとき、ヒンジ部7とは反対側(図1における左側)の一側であって、ケーシング2の周縁とプリンタカバー3の周縁との間には、ロール紙Pを排出するための排出口6が形成される。また、このとき、ケーシング2の内側には、排出口6に対応する箇所に印刷ユニット10およびカッターユニット11が形成される。
【0036】
印刷ユニット10は、排出口6の下方において、プラテンローラ5とサーマルヘッド4とが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。この際、上述したように、付勢部材16aによる付勢力によって、サーマルヘッド4がプラテンローラ5に圧接される。また、プラテンローラ5は、ロール紙Pをサーマルヘッド4に圧接しながら搬送し、排出口6から外部に送り出している。
【0037】
カッターユニット11は、印刷ユニット10と排出口6との間において、ケーシング2側に設けられた固定刃11aと、プリンタカバー3側に設けられた可動刃11bとが、ロール紙Pを挟んだ状態で対向配置されて形成される。
【0038】
(ロール収容部)
図1に示すように、ケーシング2の内側には、ロール50(図3参照)を収容するロール収容部20が設けられている。
ロール収容部20は、収容されるロール50(図3参照)の軸方向両端部に配置される一対の側壁21,22と、ロール50の外周面52(図3参照)と接するロール支持部25(請求項の「支持手段」に相当。)とにより形成されている。
【0039】
一対の側壁21,22は平坦に形成されており、ロール50の軸方向において略平行に配置されている。一対の側壁21,22の離間距離は、ロール50の幅よりも若干広く形成されている。一方の側壁21における下方には、ロール50の軸方向に沿って側壁21を貫通する貫通孔21aが形成されている。貫通孔21aを形成することで、後述する負荷付与部材30(負荷付与手段)の当接部35および先端部37(いずれも図5参照)が、貫通孔21aから出没自在となっている。
【0040】
図3に示すように、一対の側壁21,22には、印刷ユニット10の下方にテンションローラ9が設けられている。
テンションローラ9は、略円筒状に形成されており、一対の側壁21,22の間に渡し掛けられている。テンションローラ9は不図示のバネ等によりロール50から引き出されたロール紙P側に付勢されており、テンションローラ9の外周面はロール紙Pと常に接している。テンションローラ9の付勢力により、引き出されたロール紙Pには、ロール50の直径に関わらずテンションが付与される。したがって、ロール紙Pは、弛みが生じにくい状態でロール50から引き出されて搬送され、サーマルヘッド4とプラテンローラ5との間に導入される。
【0041】
(ロール支持部)
一対の側壁21,22の間には、ロール支持部25が設けられている。図3に示すように、ロール支持部25は、ロール50の軸方向に直交する断面形状が略V字形状に形成されており、ロール紙Pの搬送方向の下流側に設けられた第一摺接面26と、ロール紙Pの搬送方向の上流側に設けられた第二摺接面27と、第一摺接面26と第二摺接面27との間に設けられた底部28とにより形成されている。
【0042】
第一摺接面26は平坦に形成されており、ロール紙Pの搬送方向の下流側から上流側(図3における左側から右側)に向かって、ケーシング2の下方に所定角度で傾斜するように配置されている。第一摺接面26の所定位置には、ロール50側に突出した第一突条部26aが、ロール50の軸方向に沿って形成されている。
第二摺接面27は平坦に形成されており、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側(図3における右側から左側)に向かって、ケーシング2の下方に所定角度で傾斜するように配置されている。第二摺接面27の所定位置には、ロール50側に突出した第二突条部27aが、ロール50の軸方向に沿って形成されている。
底部28は、第一摺接面26の下端縁部と第二摺接面27の下端縁部とを所定の曲率で滑らかに接続することで形成されている。
【0043】
図4は、ロール50が鉛直下方へ移動するときの説明図である。なお、図4では、分かりやすくするために、ケーシング2およびプリンタカバー3の図示を省略している。また、図4は、図3の紙面裏側から見た図となっている。
ロール支持部25は、ロール紙Pが使用されてロール50の直径が減少するに従い、ロール50が鉛直下方に移動するように構成されている。具体的には、ロール50は、以下のように鉛直下方に移動する。
図4に示すように、直径R1を有する未使用のロール50がケーシング2の開口部2aからロール収容部20に投入されると、ロール50は、ロール支持部25に支持される。このとき、ロール50は、第一摺接面26の第一突条部26aと第二摺接面27の第二突条部27aとにより挟み込まれた状態でロール支持部25に支持されており、底部28から離間した状態となっている。
【0044】
印刷が開始されると、ロール50からロール紙Pが引き出され、ロール50は回転運動しながら直径が漸次縮小する。そして、ロール50は、外周面が第一摺接面26および第二摺接面27に当接しながら、ロール50の自重により第一摺接面26と第二摺接面27との間に落ち込むように鉛直下方に移動する。図4では、ロール紙Pの使用により、ロール50の直径R1が直径R2まで縮小したときを図示している。このとき、直径R2を有するロール50は、第一突条部26aよりも下方の第一摺接面26と、第二突条部27aよりも下方の第二摺接面27とにより挟み込まれて支持されている。
【0045】
印刷が継続されると、ロール紙Pはロール50から引き出されて、ロール50の直径はさらに縮小し、ロール50はさらに鉛直下方に移動する。図4では、ロール紙Pの使用により、ロール50の直径が、湾曲形成された底部28の曲率における直径よりも小さいR3まで縮小したときを図示している。このとき、直径R3を有するロール50は、外周面52がロール支持部25の底部28に接して支持される。ロール50の外周面52が底部28に接した時点で、ロール50の鉛直下方への移動が終了する。
【0046】
図5は、図4のB−B線に沿った断面図である。なお、図5では、直径R1を有する未使用のロール50が収容されている場合を図示している。
図5に示すように、ロール収容部20の一方の側壁21の外側面には、段差部41が形成されている。段差部41には、後述する負荷付与部材30が取り付けられている。
段差部41は、軸方向外側に所定の高さを有して形成された取付面41aと、軸方向に沿って設けられた締結孔41bと、取付面41aから軸方向外側に突出形成された突起部41cとを備えている。
取付面41aは、一方の側壁21よりも軸方向外側において、一方の側壁21と略平行に形成されている。締結孔41bは、軸方向外側に開口しており、内周面には雌ネジが形成されている。締結孔41bには、負荷付与部材30を取り付けるためのネジ42が締結されている。突起部41cは、締結孔41bを挟んで上下方向の両側に設けられており、負荷付与部材30の位置決めを行っている。
【0047】
(負荷付与部材)
図6は、負荷付与部材30の斜視図である。
図6に示すように、負荷付与部材30は、ステンレスや銅等の金属からなる長尺板部材であり、例えばプレス加工により形成される。負荷付与部材30は、上下方向に長手方向を有しており、上方から下方に向かって取付部31、付勢部33、当接部35、先端部37の順に一体形成されている。
【0048】
取付部31は、平板状に形成されており、負荷付与部材30の厚み方向に貫通する貫通孔31aと、貫通孔31aを挟んで上下方向の両側に形成された位置決め孔31b,31bとを有している。貫通孔31aは、段差部41の締結孔41bに対応した位置に形成されている。位置決め孔31b,31bは、段差部41の突起部41cに対応した位置に形成されている。
図5に示すように、取付部31の貫通孔31aには、ネジ42が挿通されている。ネジ42を段差部41の締結孔41bに締結することで、負荷付与部材30が段差部41に取り付けられている。また、取付部31の位置決め孔31b,31b内には、段差部41の突起部41cが配置されている。これにより、負荷付与部材30は、ロール50の径方向および周方向の位置決めがされる。
【0049】
取付部31の下方には、付勢部33が形成されている。付勢部33は、取付部31と連続して平板状に形成されている。詳細は負荷付与部材30の作用で説明するが、付勢部33は、取付部31を支点とし、後述する当接部35を作用点として、ロール50の軸方向外側(図5における右側)に撓んで弾性変形することにより板バネとして機能する。これにより、付勢部33は、当接部35をロール50の軸方向内側(図5における左側)に向かって付勢している。
【0050】
図6に示すように、付勢部33の下方には、当接部35が形成されている。当接部35は、ロール50の中心軸O(図5参照)に対して、直角以外の所定角度で交差する傾斜面35aを有している。本実施形態の傾斜面35aは、軸方向外側から軸方向内側に向かって下方に傾斜しており、ロール50の下方においてロール50側に面している(図5参照)。
【0051】
図5に示すように、傾斜面35aの下端部35bと、取付部31との軸方向における離間距離は、段差部41の取付面41aの高さよりも大きく形成されている。さらに、傾斜面35aの下端部35bと取付部31との軸方向における離間距離は、未使用のロール50の外周面52と底部28との間において、ロール50の側面周縁部54よりも軸方向内側に、傾斜面35aの下端部35bを配置可能なように形成されている。このように形成された当接部35は、側壁21に形成された貫通孔21aを介して、下端部35bがロール50の側面周縁部54よりも軸方向内側に配置されている。すなわち、当接部35は、ロール50の鉛直下方においてロール50の側面周縁部54を跨ぐように配置されている。これにより、ロール紙Pの使用によりロール50が鉛直下方に移動したとき、当接部35の傾斜面35aとロール50の側面周縁部54とが当接可能となっている。
【0052】
傾斜面35aの下端部35bは、軸方向内側から軸方向外側に向かって所定の曲率で湾曲形成されている(図5参照)。これにより、ロール50が鉛直下方に移動して、傾斜面35aの下端部35bとロール50の側面53とが接触したときに、ロール50の側面53と傾斜面35aの下端部35bとが面接触できる。したがって、ロール50の側面53が傾斜面35aの下端部35bにより損傷するのを防止できる。
【0053】
当接部35の下方には、傾斜面35aの下端部35bから連続して先端部37が形成されている。先端部37は、ロール50の軸方向外側に向かって形成されている(図5参照)。これにより、先端部37のエッジがロール50の側面53に接触するのを確実に防止でき、ロール50の側面53が先端部37により損傷するのを防止できる。
【0054】
(作用)
次に、図面を用いて、サーマルプリンタ1によりロール紙Pに印字したときの、負荷付与部材30の作用について説明をする。
図1に示すように、まず、プリンタカバー3を開き、ロール収容部20に未使用のロール50(図3参照)を配置する。これにより、図3に示すように、ロール50は、ロール支持部25の第一摺接面26の第一突条部26aと、第二摺接面27の第二突条部27aとの間に挟まれた状態で支持される。以上で、ロール50のセットが完了する。
続いて、ロール50からロール紙Pを引き出し、印刷ユニット10へと引き込む。これにより、プラテンローラ5とサーマルヘッド4との間にロール紙Pが配置されて、ロール紙Pへの印刷準備が完了する。
【0055】
図5に示すように、直径R1を有する未使用のロール50をロール収容部20内に配置したとき、ロール支持部25の底部28から、ロール50の外周面52が離間した状態で配置されている。また、負荷付与部材30の傾斜面35aは、下端部35bがロール50の側面周縁部54よりも軸方向内側に配置されており、当接部35がロール50の鉛直下方においてロール50の側面周縁部54を跨ぐように配置されている。
【0056】
図7は、ロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図7では、未使用時のロール50を配置したときのロール50と負荷付与部材30との位置を図示している。また、分かり易くするために、ロール50および負荷付与部材30以外の部品の図示を省略している。
図8は、横軸をロール50の鉛直下方への移動量とし、縦軸を負荷付与部材30の付勢力Fとしたときのグラフである。
また、図7に示すように、未使用のロール50をロール収容部20内に配置したとき、ロール50の側面周縁部54と負荷付与部材30の当接部35とは、第一所定値L1だけ離間している。このとき、ロール50の鉛直下方への移動量Lは0であり、負荷付与部材30の付勢部33は弾性変形することがない。したがって、図8に示すように、付勢部33には、当接部35を軸方向内側へ付勢する付勢力Fは発生していない。
【0057】
続いて、図3に示すように、ロール紙Pへの印刷を開始すると、不図示のステッピングモータが回転し、プラテンローラ5が回転する。また、これと共に、ロール紙Pに印刷するために必要な情報に基づいてサーマルヘッド4の発熱素子を発熱させる。これにより、ロール紙Pの印刷面には、サーマルヘッド4を通過する際に、発熱素子によって所望の文字や図形等が印刷される。このとき、プラテンローラ5の回転に伴ってロール紙Pが排出口6に向かって送り出されることにより、ロール50が回転運動する。また、プラテンローラ5によってさらに送り出されたロール紙Pは、カッターユニット11により所望の長さで切断される。
【0058】
ここで、例えば、印刷が終了したロール紙Pを切断するにあたって、プラテンローラ5の回転が停止すると、ロール紙Pの送り出しが停止する。このとき、ロール50の回転も停止するが、ロール紙Pの送り出し停止後にロール50は、その慣性力により更に回転しようとする。
しかしながら、ロール紙Pの使用量が少なく、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1未満のときは、ロール50の重量が十分重い。このため、ロール50の外周面52と、ロール支持部25との摩擦力により、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制できる。したがって、ロール紙Pの使用量が少なく、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1未満のときは、ロール50と印刷ユニット10との間でロール紙Pが弛むことがほとんどない。
【0059】
また、ロール紙Pの使用量が少なく、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1未満のときは、ロール50の側面周縁部54との当接部35の傾斜面35aとが当接しないので、負荷付与部材30によりロール50の回転運動を妨げることがない。したがって、ロール50からロール紙Pを引き出すのに必要とされるトルクに加え、ロール50の回転運動に対する負荷に対応したトルクが余計に必要とされることがないので、負荷付与部材30を備えても、ロール紙Pを搬送するステッピングモータの大型化が抑制される。
【0060】
図9は、ロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図9では、ロール紙P(図3参照)が使用されて、ロール50が鉛直下方に第一所定値L1以上移動し、ロール50の側面周縁部54と負荷付与部材30の当接部35とが当接している状態を示しいている。
【0061】
ロール紙Pの使用によりロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1となると、ロール50の側面周縁部54と、当接部35の傾斜面35aとが当接する。これにより、当接部35がロール50の側面周縁部54によって、ロール50の軸方向外側に押し出される。このとき、負荷付与部材30の取付部31は段差部41(図5参照)に固定されているため、負荷付与部材30の取付部31が支点となり、当接部35が作用点となって、付勢部33がロール50の軸方向外側に撓み始める。したがって、図8に示すように、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1となったとき、付勢部33には当接部35を軸方向内側へ付勢する付勢力Fが発生し始める。
【0062】
続いて、図9に示すように、ロール50の鉛直下方への移動量Lがさらに増加すると、ロール50の側面周縁部54と、負荷付与部材30の傾斜面35aとが当接した状態で、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して当接部35が軸方向外側に移動する。これにより、付勢部33の弾性力は、当接部35の軸方向外側への移動量に比例して増加する。したがって、図8に示すように、ロール紙Pの使用量の増加によるロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して、付勢力Fを増加させて当接部35をロール50の軸方向内側に付勢できる。
【0063】
このように、ロール紙Pの使用を継続すると、ロール50の鉛直下方への移動量Lが多くなるので、ロール紙Pの使用量の増加に対応してロール50の回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙Pの使用量が増加してロール50が軽くなりロール支持部25とロール50の外周面52との摩擦力が小さいとき、すなわちロール50が軽く慣性力により回転し易いときに、ロール50の回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロール50が軽くなり慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0064】
図10は、ロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図10では、ロール紙P(図3参照)が使用されてロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2になり、ロール50の側面周縁部54に、傾斜面35aの下端部35bが当接し始めた状態を示している。
【0065】
ここで、一般に、ロール50の直径が未使用時におけるロール50の直径R1の50パーセント以上のときは、ロール50の重量が重い。このため、ロール紙Pの弛みが解消した瞬間に、ロール50の重量に起因して搬送時のトルクが急激に上昇し、ステッピングモータが脱調しやすいことが知られている。
【0066】
このため、本実施形態では、未使用時のロール50の直径の50パーセントとなったときの移動量Lを第二所定値L2に設定している。これにより、ロール50の重量が重くロール紙Pの弛みによりステッピングモータが脱調しやすい領域と、ロール50の鉛直下方の移動量Lが第二所定値L2に達するまでの領域とが対応している。
したがって、ロール50の重量が重くロール紙の弛みによりステッピングモータが脱調しやすい領域で、ロール紙Pの使用量の増加に対応して付勢部33の弾性力を増加させて当接部35をロール50の軸方向内側に付勢できる。これにより、ロール50の重量が重くロール紙Pの弛みに起因してステッピングモータが脱調しやすい領域で、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを確実に抑制でき、脱調の原因となる印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。したがって、ステッピングモータの脱調を確実に防止できる。
【0067】
また、ロール50の側面53は、鉛直方向に沿って平坦に形成されている。したがって、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2からさらに増加しても、当接部35が軸方向外側に移動することがない。このため、ロール50の鉛直下方の移動量Lが第二所定値L2に達し、傾斜面35aの下端部35bがロール50の側面周縁部54に当接した時点で、当接部35の軸方向外側への移動が終了する。したがって、図8に示すように、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2以上のとき、ロール50の軸方向内側への付勢力Fが一定となっている。
【0068】
ここで、ロール50の鉛直下方の移動量Lが第二所定値L2に達した後、ロール紙Pの使用量がさらに増加してロール50の直径がR2よりも小さくなり、付勢力Fを増加させることなく一定とすることができる。
このとき、付勢力Fが一定になることでロール50は慣性力により回転しやすくなるが、ロール紙Pの弛みが発生しても、ロール50が軽いのでステッピングモータの脱調は発生しない。したがって、ロール紙Pの残量が少なくなったときでも、ステッピングモータの脱調を抑制できるとともに、負荷付与部材30の当接部35との当接により、ロール紙Pの感熱面が損傷するのを防止できる。
【0069】
印刷が継続されると、ロール50の直径は縮小し、ロール50はさらに鉛直下方に移動する。図4に示すように、ロール50の直径がR3となり、ロール50の外周面が底部28に接した時点で、ロール50の鉛直下方への移動が終了する。そして、ロール50の直径が所定値以下になると不図示の光センサ等により検知し、不図示の表示部にロール50の残量が少ない旨を警告表示するとともに、ロール紙Pへの印刷動作が停止する。
【0070】
(第一実施形態の効果)
本実施形態によれば、ロール紙Pの使用開始直後は、ロール50の鉛直下方への移動量Lが少ないので、負荷付与部材30からロール50の回転運動に対する負荷が付与されていないか、もしくは小さな負荷が付与されている。これにより、ロール紙Pの使用量が少ないためロール50が重くロール支持部25とロール50の外周面52との摩擦力が大きいとき、すなわち、ロール50の自重が重くロール50が回転し難いときに、負荷付与部材30によりロール50の回転運動を妨げることがない。したがって、負荷付与部材30を備えても、ロール紙Pを搬送するステッピングモータの大型化を抑制できる。
また、ロール紙Pの使用を継続すると、ロール径が徐々に小さくなり、この結果、ロール50の鉛直下方へ移動量Lが次第に大きくなる。そして、ロール紙Pの使用量の増加に対応して、負荷付与部材30からロール50の回転運動に対する負荷が増加する。これにより、ロール紙Pの使用量が増加してロール50が軽くなりロール支持部25とロール50の外周面52との摩擦力が小さいとき、すなわちロール50の自重が軽く慣性力により回転し易いときに、ロール50の回転運動を抑制する大きな負荷を付与できる。したがって、ロール50が軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
【0071】
また、本実施形態によれば、傾斜面35aの下端部35bがロール50の側面53に当接すると、当接部35のロール50の軸方向外側への移動が終了する。したがって、ロール50の鉛直下方への移動量が第二所定値L2以上のときに、負荷付与部材30によるロール50の軸方向内側への付勢力Fを一定とすることができる。このとき、付勢力Fが一定になることでロール50は慣性力により回転しやすくなるが、ロール紙Pの弛みが発生しても、ロール50が軽いのでステッピングモータの脱調は発生しない。したがって、ロール紙Pの残量が少なくなったときでも、ステッピングモータの脱調を抑制できるとともに、負荷付与部材30の当接部35との当接により、ロール紙Pの感熱面が損傷するのを防止できる。
【0072】
(第一実施形態の第一変形例)
図11は、第一実施形態の第一変形例におけるロール50の径方向から見たときのロール50および負荷付与部材30の模式図である。なお、図11では、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2になり、ロール50の側面周縁部54に、負荷付与部材30の傾斜面35aの下端部35bが当接し始めた状態を示しいている。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、傾斜面35aの下端部35bが所定の曲率で湾曲形成されていた(図6参照)。
これに対して、第一変形例のサーマルプリンタ1は、傾斜面35aの下端部35bに平坦部35cが形成されている点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0073】
図11に示すように、第一変形例の負荷付与部材30は、傾斜面35aの下端部35bに平坦部35cが形成されている。平坦部35cは、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第二所定値L2以上になったとき、ロール50の側面53と面接触できるように形成されている。また、平坦部35cは、鉛直方向の長さがL3に形成されている。これにより、ロール50の鉛直下方への移動量LがL2以上L2+L3以下の範囲において、平坦部35cとロール50の側面53との接触面積が増加するように形成されている。
【0074】
(第一実施形態の第一変形例の効果)
本実施形態の第一変形例によれば、ロール紙Pの使用量に対応して平坦部35cとロール紙Pの側面53との接触面積を増加できる。したがって、ロール紙Pの使用量の増加に対応して、付勢部33の付勢力に加えて平坦部35cとロール紙Pの側面53との摩擦力により、ロール50の回転運動に対する負荷を付与できる。これにより、ロール50が軽く慣性力により回転し易いときでも、印刷停止時にロール50が慣性力により回転するのを確実に抑制でき、印刷停止時のロール紙Pの弛みを防止できる。
また、負荷付与部材30は平坦部35cを備えているので、ロール50の側面53を損傷することなくロール50の軸方向内側に押圧して、ロール50の回転運動に対する負荷を付与できる。
【0075】
(第一実施形態の第二変形例)
図12は、第一実施形態の第二変形例のサーマルプリンタ1であって、ロール50の軸方向から見たときのロール50および負荷付与部材300の模式図である。なお、図12では、分かり易くするために、ロール50および負荷付与部材300以外の部品の図示を省略している。また、ロール50の鉛直下方における右側がロール紙Pの搬送方向の上流側となっており、左側がロール紙Pの搬送方向の下流側となっている。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、負荷付与部材30の付勢部33がロール50の軸方向外側に配置されており、当接部35がロール50の側面53に付勢していた。
これに対して、第二変形例のサーマルプリンタ1は、負荷付与部材300の付勢部330がロール50の鉛直下方に配置されており、鉛直下方に撓んで弾性変形することにより当接部350がロール50の外周面52に当接している点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0076】
図12に示すように、第二変形例の負荷付与部材300は、ロール50の鉛直下方に設けられている。負荷付与部材300は、ロール50の周方向に沿うように長手方向を有しており、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側(図12における右側から左側)に向かって、取付部310、付勢部330、当接部350、先端部370の順に一体形成されている。
【0077】
取付部310は平坦に形成されており、例えばロール支持部25の底部28(図3参照)に不図示のネジ等により固定される。
付勢部330は、ロール紙Pの搬送方向の上流側から下流側に向かって、ロール50に接近するように形成されている。付勢部330は、取付部310に対して傾斜して形成されており、取付部310を支点とし、後述する当接部350を作用点として、鉛直下方に撓んで弾性変形することにより板バネとして機能する。
【0078】
当接部350は、ロール50の中心軸Oの鉛直下方に設けられており、取付部310よりも上方に配置されている。当接部350の上面は、ロール50の外周面52と接触する接触面350aとなっており、平坦に形成されている。これにより、ロール50が鉛直下方に移動して、接触面350aとロール50の外周面52とが接触したときに負荷を付与できる。
先端部370は、下方に向かって形成されている。これにより、先端部370のエッジがロール50の外周面52に接触するのを確実に防止し、ロール50の外周面52が先端部370により損傷するのを防止できる。
なお、当接部350は、ロール50の外周面52における軸方向端部に配置されるのが望ましい。これにより、当接部350は、ロールの外周面の軸方向端部に当接するので、印字面の損傷(発色)を防止できる。
【0079】
ロール紙Pの使用によりロール50の鉛直下方への移動量が第一所定値L1となると、ロール50の外周面52と、当接部350の接触面350aとが当接する。負荷付与部材300の取付部310は、ロール支持部25の底部28に固定されているため、負荷付与部材300の取付部310が支点となり、当接部350が作用点となって、付勢部330が鉛直下方に撓み始める。したがって、第一実施形態と同様に、ロール50の鉛直下方への移動量Lが第一所定値L1となったときに、付勢部330には当接部350をロール50の外周面52に付勢する付勢力Fが発生し始める(図8参照)。
【0080】
続いて、ロール50の鉛直下方への移動量Lが、第一所定値L1から増加すると、ロール50の外周面52と、負荷付与部材300の接触面350aとが当接した状態で、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して当接部350が鉛直下方に移動する(図12における二点鎖線で示した負荷付与部材300参照)。これにより、付勢部330の弾性力は、当接部350の鉛直下方への移動量に比例して増加する。したがって、第一実施形態と同様に、ロール紙Pの使用量の増加によるロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して、付勢部330の付勢力Fを増加させて当接部350をロール50の外周面52に付勢できる(図8参照)。
【0081】
(第一実施形態の第二変形例の効果)
本実施形態の第二変形例によれば、負荷付与部材300の付勢部330をロール50の鉛直下方に配置しているので、ロール50の鉛直下方への移動量Lに対応して、精度良く付勢部330を弾性変形させることができる。したがって、第一実施形態の効果に加えて、ロール50の回転運動に対する負荷を精度良く付与できる。
【0082】
(第二実施形態)
図13は、第二実施形態のサーマルプリンタ1の斜視図である。
図14は、パーテーションプレート60の斜視図である。
第一実施形態のサーマルプリンタ1は、負荷付与部材30がロール収容部20の一方の側壁21の外側面に取り付けられていた。
これに対して、第二変形例のサーマルプリンタ1は、パーテーションプレート60が設けられており、パーテーションプレート60に負荷付与部材30が取り付けられている点で、第一実施形態のサーマルプリンタ1とは異なっている。なお、第一実施形態と同様の構成の部分については、詳細な説明を省略する。
【0083】
図13に示すように、ロール収容部20内にはパーテーションプレート60が設けられている。パーテーションプレート60は、ロール収容部20の一対の側壁21,22の間に配置される。パーテーションプレート60は、一対の側壁21,22の離間距離よりも極端に軸長の短いロール(不図示、以下「短軸長ロール」という。)を収容する際に、ロール収容部20内における短軸長ロールの軸方向の位置を規制する部材である。
【0084】
図14に示すように、パーテーションプレート60は、ロール収容部20の一対の側壁21,22の間に配置される仕切壁61を有している。仕切壁61の外周面は、ロール収容部20に対応した形状に形成されている。仕切壁61の上部には、軸方向外側に向かって張り出す位置規制片63が形成されている。位置規制片63をケーシング2の内壁に突き当ててパーテーションプレート60を配置することで、ロール収容部20内における仕切壁61の軸方向位置が決定される。
仕切壁61は、ロール収容部20内に一対の側壁21,22と略平行に配置されている(図13参照)。また、仕切壁61は、仕切壁61とロール収容部20の側壁22との離間距離が、短軸長ロールの軸長よりも若干広くなるように配置される。
【0085】
仕切壁61の軸方向外側面には、段差部65が設けられている。段差部65には、負荷付与部材30が取り付けられている。段差部65は、第一実施形態の段差部41と同一形状に形成されている。
段差部65の下方には、開口61aが設けられている。開口61aからは、負荷付与部材30の当接部35および先端部37が出没自在となっている。これにより、第一実施形態と同様に、負荷付与部材30の当接部35は、未使用の短軸長ロールをロール収容部20内に収容したとき、短軸長ロールの鉛直下方において短軸長ロールの側面周縁部を跨ぐように配置される。また、ロール紙の使用により短軸長ロールが鉛直下方に移動したとき、当接部35と短軸長ロールの側面周縁部とが当接できる。
【0086】
(第二実施形態の効果)
本実施形態によれば、異なる軸長を有する短軸長ロールに対応してロール収容部20内にパーテーションプレート60を設けた場合であっても、パーテーションプレート60に負荷付与部材30を設けることができる。したがって、ロール収容部20内に短軸長ロールが収容されても、パーテーションプレート60に負荷付与部材30を設けることで、第一実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0087】
なお、この発明の技術範囲は上記実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0088】
各実施形態では、プリンタの一例としてサーマルプリンタ1を例に挙げて説明したが、これに限定されることはない。例えば、インク滴を利用してロール紙に印刷するインクジェットプリンタ等、サーマルプリンタ1以外のプリンタにも本発明を適用できる。
【0089】
各実施形態では、ケーシング2の開口部2aの縁部に沿って印刷ユニット10が配置され、印刷ユニット10の上方にカッターユニット11が配置されていた。しかし、印刷ユニット10およびカッターユニット11の位置は実施形態に限定されることはない。またカッターユニット11は、必ずしも備える必要はない。
【0090】
各実施形態では、負荷付与部材30の付勢部33は板バネとなっており、当接部35と一体形成されていた。しかし、負荷付与部材30の付勢部33を、例えばコイルバネとし、当接部35と別体形成してもよい。ただし、平板部材からプレス加工により当接部35と付勢部33とを一体形成でき、簡単かつ低コストに負荷付与部材30を形成できる点で、各実施形態に優位性がある。
【0091】
各実施形態では、ロール紙Pの使用によりロール50が小径となったとき、ロール50が鉛直下方に移動する場合を例に説明をしたが、ロール50の移動方向は鉛直下方に限定されることはない。例えば、斜め下方にロール50が移動する場合であっても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0092】
1・・・サーマルプリンタ(プリンタ) 25・・・ロール支持部(支持手段) 30,300・・・負荷付与部材(負荷付与手段) 33,330・・・付勢部 35,350・・・当接部 35a・・・傾斜面 35b・・・下端部 35c・・・平坦部 50・・・ロール 52・・・外周面 53・・・側面 54・・・側面周縁部 350a・・・接触面 L・・・鉛直下方への移動量 L1・・・第一所定値 L2・・・第二所定値 P・・・ロール紙
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙が巻回されたロールの外周面と接触し、前記ロールの直径の減少に対応して鉛直下方に前記ロールを移動させる支持手段を備え、前記ロールを回転運動させて前記ロール紙を引き出し印刷するプリンタであって、
前記ロールの外面に接触し、前記ロールの前記回転運動に対して負荷を付与する負荷付与手段を備え、
前記負荷付与手段は、前記ロール径が小さくなるに従い、前記ロールの鉛直下方への移動量に対応して前記負荷が増加するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記負荷付与手段は、
前記ロールの鉛直下方において前記ロールの側面周縁部を跨ぐように配置され、軸方 向外側より軸方向内側が鉛直下方となる傾斜面を有する当接部と、
前記当接部を前記ロールの軸方向内側に向かって付勢する付勢部と、
を備え、
前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの側面周縁部と前記当接部の前記傾斜面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの軸方向外側に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプリンタであって、
前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第一所定値よりも大きい第二所定値以上のとき、前記当接部の前記傾斜面の下端部が前記ロールの側面に当接することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリンタであって、
前記傾斜面の下端部には、前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第二所定値以上のときに、前記ロールの側面と面接触する平坦部が形成され、
前記平坦部は、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって、前記ロールの側面との接触面積が増加するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のプリンタであって、
前記第二所定値は、前記ロールの直径が、未使用時における前記ロールの直径の50パーセントとなったときの移動量であることを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記負荷付与手段は、
前記ロールの鉛直下方に配置され、前記ロールの外周面に当接可能な接触面を有する 当接部と、
前記当接部を鉛直上方に向かって付勢する付勢部と、
を備え、
前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの外周面と前記当接部の前記接触面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの鉛直下方に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴とするプリンタ。
【請求項1】
ロール紙が巻回されたロールの外周面と接触し、前記ロールの直径の減少に対応して鉛直下方に前記ロールを移動させる支持手段を備え、前記ロールを回転運動させて前記ロール紙を引き出し印刷するプリンタであって、
前記ロールの外面に接触し、前記ロールの前記回転運動に対して負荷を付与する負荷付与手段を備え、
前記負荷付与手段は、前記ロール径が小さくなるに従い、前記ロールの鉛直下方への移動量に対応して前記負荷が増加するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記負荷付与手段は、
前記ロールの鉛直下方において前記ロールの側面周縁部を跨ぐように配置され、軸方 向外側より軸方向内側が鉛直下方となる傾斜面を有する当接部と、
前記当接部を前記ロールの軸方向内側に向かって付勢する付勢部と、
を備え、
前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの側面周縁部と前記当接部の前記傾斜面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの軸方向外側に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプリンタであって、
前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第一所定値よりも大きい第二所定値以上のとき、前記当接部の前記傾斜面の下端部が前記ロールの側面に当接することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプリンタであって、
前記傾斜面の下端部には、前記ロールの鉛直下方への移動量が前記第二所定値以上のときに、前記ロールの側面と面接触する平坦部が形成され、
前記平坦部は、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって、前記ロールの側面との接触面積が増加するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項3または4に記載のプリンタであって、
前記第二所定値は、前記ロールの直径が、未使用時における前記ロールの直径の50パーセントとなったときの移動量であることを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項1に記載のプリンタであって、
前記負荷付与手段は、
前記ロールの鉛直下方に配置され、前記ロールの外周面に当接可能な接触面を有する 当接部と、
前記当接部を鉛直上方に向かって付勢する付勢部と、
を備え、
前記ロールの鉛直下方への移動量が第一所定値以上のとき、前記ロールの外周面と前記当接部の前記接触面とが当接することで前記負荷を付与し、前記ロールが鉛直下方に移動するにしたがって前記当接部が前記ロールの鉛直下方に移動しつつ前記負荷を増加させることを特徴とするプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−95046(P2013−95046A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239415(P2011−239415)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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