説明

プリント装置

【課題】 プリント装置内部の種々の発熱源の影響がプリント部に及ぶことを抑制する。
【解決手段】 第1筐体の内部において、シートの乾燥部や加湿気体の生成部等の発熱源とプリント部との間にエアカーテンを形成する。別の発熱源である制御部は第1筐体とは別の第2筐体に収容されている。エアカーテンを形成した気体は、制御部の冷却のために第2筐体に導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクジェット方式のプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式のプリント装置において、とくにプリントヘッドを含むプリント部は、装置内の発熱源が発する熱の影響を受けやすい。プリントヘッドが熱を受けるとインク吐出ノズルのインクが乾燥して吐出不能になる場合がある。また、プリント部においてシートを搬送する搬送機構も、熱によって部品のクリアランス等が変化してシートの搬送状態が本来の状態から変化し、プリント品位を低下させる可能性がある。
【0003】
この課題に対して、特許文献1に開示されるプリント装置では、プリント部と定着部をそれぞれケースで囲い、プリント部にはダクトから外気を取り込むとともに、定着部には装置外部に熱を排出するダクトを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−175645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成では、定着部で発生する熱をケースの壁で遮断している。しかし、発熱源の発熱量が大きい場合には、これだけでは熱の遮断が不足でプリント部に影響が及んでしまう場合がある。特許文献1には、具体的な記載がないものの、プリント装置の内部には他にも種々の発熱源が存在し得る。例えば、制御用の制御基板や電源は大きな発熱源である。これらプリント装置の種々の発熱源で発生した熱がプリント部に影響を及ぼすことは抑制しなければならない。
【0006】
本発明は上述の課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、プリント装置の種々の発熱源の影響がプリント部に及ぶことを抑制したプリント装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント装置は、インクジェット方式のプリントヘッドを含み搬送されるシートにプリントするプリント部と、ヒータを含みプリントされたシートを乾燥させる乾燥部と、ヒータを含み加湿気体を生成する生成部と、前記プリント部に前記加湿気体を供給する供給部と、前記プリント部、前記乾燥部、前記生成部および前記供給部が収容される第1筐体と、装置の制御を司る制御部と、前記制御部が収容される、前記第1筐体とは別の第2筐体と、前記第1筐体の内部において、前記乾燥部と前記生成部の少なくとの一方と前記プリント部との間の空間にエアカーテンを形成する手段と、を備え、前記第1筐体から排出される前記エアカーテンを形成した気体は前記制御部の冷却のために前記第2筐体に導入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の目的は、プリント装置の種々の発熱源の影響がプリント部に及ぶことを抑制したプリント装置が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】エアカーテンシステムの動作を説明するための斜視図
【図3】エアカーテンシステムの動作を説明するための横断面図
【図4】エアカーテンシステムの動作を説明するための上断面図
【図5】制御部のブロック図
【図6】装置可動時間に伴うプリント部の温度変化を示すグラフ図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、ロール状に巻かれた連続シートを使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリント装置である。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。本発明はプリント装置、プリント装置複合機、複写機、ファクシミリ装置などのプリント装置に適用可能である。また、本発明はプリント装置に限らず、ユーザが装置稼働時刻を指定し且つ起動時の初期化動作に大きな時間を要する工場等で使用される産業機器(各種デバイスの製造装置、検査装置など)等の各種装置にも広く適用可能である。
【0011】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の裏面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、加湿生成部20、冷却部30、制御部200の各ユニットを備える。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。
【0012】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。
【0013】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。デカール部2の駆動ローラにはヒータが内蔵され、シートを加熱した状態でデカール力を作用させることでカール低減効果を高めている。
【0014】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0015】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するユニットである。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラを備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0016】
プリント部4において、プリントヘッド14のノズルが露出する空間には、加湿された高湿の加湿気体が供給され、ノズルの乾燥を抑制する。詳細については後述する。
【0017】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0018】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。
【0019】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。
【0020】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0021】
反転部9は両面プリントを行う際に表(おもて)面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるための、シート巻き取りユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートはデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。
【0022】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。
【0023】
加湿生成部20は加湿気体(空気)を生成して、プリント前のシートに供給するとともに、プリント部4のプリントヘッド14とシートの間の空間に供給して気流を生成するためのユニットである。加湿生成部20による加湿により、プリントヘッド14のノズルのインク乾燥が抑制される。
【0024】
加湿生成部20の加湿方式は、気化式、水噴霧式、蒸気式などの方式が採用される。気化式には、本実施形態の回転式の他に、透湿膜式、滴下浸透式、毛細管式などがある。水噴霧式には、超音波式、遠心式、高圧スプレー式、2流体噴霧式などがある。蒸気式には、蒸気配管式、電熱式、電極式などがある。
【0025】
加湿生成部20はシートに加湿気体を生成する。プリントヘッド14の手前には、シートの水分含有量を高めるために加湿気体をプリント前のシートに供給するための第1供給口21と、プリントヘッド14とシートの間の空間に加湿気体を供給するための第2供給口22が設けられている。加湿生成部20と、加湿気体の供給部である第1供給口21および第2供給口22とは、ダクト24によって接続されている。さらに加湿生成部20と乾燥部8はダクト23で接続されている。
【0026】
乾燥部8ではシートを乾燥させる際に多湿且つ高温の気体が生成される。この気体(熱)の一部はダクト23を通して加湿生成部20に導入され、加湿生成部20での加湿気体生成の補助エネルギとして利用される。加湿生成部20で生成された加湿気体の一部は、第1供給口21を通して、プリントヘッド14の手前においてシート表面に向けて供給される。また、加湿生成部20で生成された加湿気体の一部は、第2供給口22を通してプリントヘッド14直下の空間に上流側から導入され、上流から下流に向けての加湿気体の流れが形成される。
【0027】
制御部200は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部200は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ(制御部)を有する。さらに、外部インターフェース205、およびユーザが入出力を行なう操作部206が設けられている。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置211からの指令に基づいて制御される。
【0028】
図5は制御部200の概念を示すブロック図である。制御部200(破線で囲まれる範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。
【0029】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208はさらにプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、加湿生成部20の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラ群である。個別制御部209はさらに、後述するエアカーテンシステムのファンの出力も制御する。CPU201による指令に基づいて個別制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置211に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0030】
プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントと両面プリントとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0031】
片面プリントでは、シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3で処理されたシートは、プリント部4において表面のプリントがなされる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10、ソータ部11を経由して、排出部12に順次排出され積載されていく。
【0032】
両面プリントでは、表面プリントシーケンスに次いで裏面プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6ではカット動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路ではなく、反転部9の側の経路にシートが導入される。導入されたシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取ドラムに巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端がカットされる。カット位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(カット位置)まで全て巻き取られる。一方、カット位置よりも搬送方向上流側の連続シートは、シート先端(カット位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻される。
【0033】
以上の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取ドラムが巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)はデカール部2に送り込まれる。デカール部2では先とは逆向きのカール矯正がなされる。これは、巻取ドラムに巻かれたシートは、シート供給部1でのロールとは表裏反転して巻かれ、逆向きのカールとなっているためである。その後、斜行矯正部3を経て、プリント部4で連続シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎にカットされる。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは一枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10、ソータ部11を経由して、排出部12に順次排出され積載されていく。
【0034】
プリント装置を構成する各ユニットは、複数の筐体B1,B2,B3に分けて収容される。第2筐体B2には制御部の少なくとも一部(一部または全部)を構成する制御基板300および電源310が収容される。第3筐体B3には、ソータ部11と排出部12が収容される。第1筐体B1には、その他のユニットが収容される。第1筐体B1の内部における大きな発熱源は、乾燥部8のヒータと加湿生成部20のヒータである。第2筐体B2の内部における大きな発熱源は制御基板300と電源310である。なお、ソータ部11と排出部12を第3筐体B3として別にしたのは、シートをソーティングして排出する際にジャムが発生しやすく、ジャム復帰のためのメンテナンスを容易にするためである。
【0035】
第1筐体B1の内部では、プリント部4の下方に、大きな熱発生部である乾燥部8と加湿生成部20が配置されている。そのため、プリント部4は、発熱源から対流により上昇してくる熱の影響を受けやすい。プリントヘッドが熱を受けるとインク吐出ノズルのインクが乾燥して吐出不能になる場合がある。また、プリント部4においてシートを搬送する搬送機構も、熱によって部品のクリアランス等が変化してシートの搬送状態が本来の状態から変化し、プリント品位を低下させる可能性がある。
【0036】
そのような問題を未然に防ぐために、本実施形態のプリント装置には、発熱源とプリント部との間に、空気の層流(エアカーテン)を形成し断熱を行うためのエアカーテンシステムが設けられている。
【0037】
図2(斜視図)、図3(横断面図)、図4(上断面図)は、エアカーテンシステムの動作を説明するための図である。第1筐体B1の前面の導入部100から導入された外気が、第1筐体B1の背面の排出部110から排出されるように流れ、図中の矢印ACに示すようなエアカーテンが形成される。導入部100は、筐体の壁面に設けられた開口に合わせて、ゴミや粉塵のトラップを目的としたフィルタ100Aと、外気吸入の気流を発生させるファン100Bが設けられている。排出部110は、筐体の壁面に設けられた開口に合わせて、ゴミや粉塵のトラップを目的としたフィルタ110Aと、排気の気流を発生させるファン110Bが設けられている。
【0038】
図3に示すように、エアカーテン(矢印AC)は、Z方向において、熱発生部である乾燥部8および加湿生成部20と、プリント部4との間の空間に形成される。乾燥部8および加湿生成部20から上昇する高温の空気はエアカーテンによって遮断され、エアカーテンの気流とともに筐体外に排出されるので、プリント部4には熱が伝わりにくい。その結果、プリント部4では安定した高品位のプリントを継続することができる。
【0039】
図4に示すように、プリント部4において加湿気体はプリントヘッドの直下をエアフロー(矢印AF)として、シートが搬送される方向(X方向)に沿って流れる。これに対して、エアカーテン(矢印AC)は加湿気体の流れを阻害しないようにZ方向において分離した位置を、加湿気体の流れと交差(直交)する方向(Y方向)に流れる。
【0040】
プリント部4の下部には、温度を検知する検知器として温度センサ120が設けられており、温度センサ120の検知に応じてエアカーテンの流れが調整される。具体的には、個別制御部209は温度センサ120で検出された温度に基づいて、ファン110Aとファン110Bの送風量を制御する。検出温度が閾値を上回ったらファン110Aとファン110Bの出力(時間あたりの回転数)を最大とし、閾値以下であればファン110Aとファン110Bの出力を最大よりも低下させる。閾値を複数用意して、温度が高くなるほどファンの出力が大きくなるよう、複数段階に制御するようにしてもよい。
【0041】
第1筐体B1の背面から排出されるエアカーテンを形成した気体は、第1筐体B1の背面側に配置された第2筐体B2に、制御部200の冷却のために導入される。第2筐体B2の、第1筐体B1と対向する壁面には導入のための開口320が設けられている。
【0042】
第2筐体B2の内部には、上述した制御部200を構成する1つ以上の制御基板300、および1つ以上の電源310が配置されている。制御基板、電源いずれも大きな発熱源である。また、第2筐体の排出口には、筐体内の熱を排気するファン321が設けられている。開口320から導入された空気は、制御基板300の表面に吹き付けられ基板表面を冷却する。第2筐体B2の内部において、制御基板300および電源310で発生して上昇する熱は、ファン321によって排気される。第1筐体から排出され第2筐体B2に導入される空気は雰囲気温度よりは高いが、非常に高温になる制御基板や電源を冷却するには十分である。
【0043】
本実施形態によれば、プリント装置の種々の発熱源の影響がプリント部に及ぶことを抑制して継続的に安定した高品位のプリント実現するものである。第1筐体B1の内部における大きな熱発生部は乾燥部8と加湿生成部20であり、これら熱がプリント部4に伝わることをエアカーテンにより抑制している。また、プリント装置の別の大きな熱発生部である制御部200と電源は、第1筐体B1とは別の第2筐体に収容するとともに、エアカーテンの気流を利用して第2筐体の内部の冷却することで、プリント部4に熱が伝わることを抑制している。
【0044】
なお、第1筐体B1の背面、もしくは第2筐体の全面は必ずしも筐体の壁面でなくてもよく、壁面が省略された形態であってもよい。第1筐体B1の背面と第2筐体B2の前面の壁面の少なくとも一方が存在すれば、2つの筐体の間の仕切りになって制御部の熱がプリント部に伝わることを軽減することができるからである。
【0045】
また、乾燥部8と加湿生成部20の両方ではなく、これら少なくとも一方とプリント部4との間をエアカーテンで遮断するようにしても効果は得られる。また、乾燥部8と加湿生成部20の他にも熱発生部があれば、それとプリント部4の間をエアカーテンで遮断するようにしてもよい。
【0046】
エアカーテンシステムを設けたことの優位性を説明する。図6は、プリント部4の雰囲気温度(温度センサ120の検出出力)を、装置の連続稼働時間に伴ってプロットしたグラフ図である。グラフの破線はエアカーテンを形成しない場合の温度変化の推移を示す。稼働時間に伴って温度が上昇し続けて、プリント部4の許容温度を超えてしまう。これに対して、グラフの実線はエアカーテンを形成した場合の温度変化であり、稼働開始からある時間を過ぎてからはほぼ一定の温度に維持される。つまり、エアカーテンシステムを設けることにより、稼働時間が長くなっても安定して高品位のプリントが可能となったことが判る。
【符号の説明】
【0047】
4 プリント部
8 乾燥部(熱発生部)
14 プリントヘッド
20 加湿生成部(熱発生部)
100 導入部
110 排出部
120 温度センサ
200 制御部
300 制御基板
310 電源
320 開口
321 ファン
AC エアカーテン
AF 加湿気体の流れ
B1 第1筐体
B2 第2筐体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット方式のプリントヘッドを含み、搬送されるシートにプリントするプリント部と、
ヒータを含み、プリントされたシートを乾燥させる乾燥部と、
ヒータを含み、加湿気体を生成する生成部と、
前記プリント部に前記加湿気体を供給する供給部と、
前記プリント部、前記乾燥部、前記生成部および前記供給部が収容される第1筐体と、
装置の制御を司る制御部と、
前記制御部の少なくとも一部が収容される、前記第1筐体とは別の第2筐体と、
前記第1筐体の内部において、前記乾燥部と前記生成部の少なくとの一方と、前記プリント部との間の空間にエアカーテンを形成する手段と、
を備え、前記第1筐体から排出される前記エアカーテンを形成した気体は、前記制御部の冷却のために前記第2筐体に導入される
ことを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
前記第1筐体の内部において、前記乾燥部および前記生成部は前記プリント部の下方に配置されており、前記エアカーテンが流れる方向は前記シートが搬送される方向と交差する方向であることを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
前記加湿気体は前記シートが搬送される方向に沿って前記空間を流れ、前記エアカーテンは前記加湿気体の流れを阻害しないように流れることを特徴とする、請求項1または2に記載のプリント装置。
【請求項4】
前記エアカーテンを形成する手段は、前記第1筐体の前面に設けられた開口から外気を導入するファンを有し、前記エアカーテンは前記第1筐体の前面から背面に向けて気体が流れることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載のプリント装置。
【請求項5】
前記プリント部において温度を検知する検知器と、前記検知器の検知に応じて前記エアカーテンの流れを調整する手段とを更に有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載のプリント装置。
【請求項6】
インクジェット方式のプリントヘッドを含み、搬送されるシートにプリントするプリント部と、
ヒータを含む熱発生部と、
前記プリント部と前記熱発生部が収容される第1筐体と、
装置の制御を司る制御部と、
前記制御部の少なくとも一部が収容される、前記第1筐体とは別の第2筐体と、
前記第1筐体の内部において、前記熱発生部と前記プリント部との間の空間にエアカーテンを形成する手段と、
を備え、前記エアカーテンを形成した気体は、前記制御部の冷却のために前記第2筐体に導入される
ことを特徴とするプリント装置。
【請求項7】
インクジェット方式のプリントヘッドを含み、搬送されるシートにプリントするプリント部と、
ヒータを含み、加湿気体を生成する生成部と、
前記プリント部に前記加湿気体を供給する供給部と、
前記プリント部、前記生成部および前記供給部が収容される筐体と、
前記筐体の内部において、前記生成部と前記プリント部との間の空間にエアカーテンを形成する手段と、
を備えることを特徴とするプリント装置。
【請求項8】
インクジェット方式のプリントヘッドを含み、搬送されるシートにプリントするプリント部と、
ヒータを含み、プリントされたシートを乾燥させる乾燥部と、
前記プリント部と前記乾燥部が収容される筐体と、
前記筐体の内部において、前記乾燥部と前記プリント部との間の空間にエアカーテンを形成する手段と、
を備えることを特徴とするプリント装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86477(P2013−86477A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232043(P2011−232043)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】