説明

プレキャスト製バルコニーのスライド工法及びプレキャスト製バルコニースライド用ローラーおよびレール

【課題】クレーンが届かない場所にもプレキャスト製のバルコニーを搬送して取り付けられるようにした工法を提供する。
【解決手段】建造物外壁にほぼ平行にレールを設置する工程と、前記レール上にプレキャスト製バルコニーを載置して前記レールに沿って滑走可能なローラーを設置する工程と、前記ローラー上にプレキャスト製バルコニーを載置する工程と、前記プレキャスト製バルコニーをスライドさせて取り付け場所に搬送する工程と、を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレキャスト工法によって製造したバルコニーを建造物に取り付ける工法およびそれに使用する装置に関する。
【0002】
特に、本発明は、通常はクレーン等のみによってバルコニーの取付位置に搬送可能なプレキャスト製バルコニーを人力によっても搬送できるようにしたプレキャスト製バルコニーのスライド工法およびその搬送装置に関する。
【背景技術】
【0003】
たとえば高層集合住宅のような建造物は、建造物の外壁に多数のバルコニーを取り付けることがよくある。
【0004】
現在では工場で予めコンクリート打設成形したバルコニー(プレキャスト製バルコニー)を建築現場で建造物に取り付けることが広く行われている。
【0005】
従来はプレキャスト製バルコニーは、工場で製造された後に建築現場に搬送され、クレーン等の起重機によって吊り上げられ、建造物の所定のバルコニー取付場所に搬送され、取付場所で細かく位置調整が行われた後に仮に固定されていた。
【0006】
所定の数のプレキャスト製バルコニーが仮固定されると、これらのプレキャスト製バルコニーの基端部は建造物の外壁の一部と一体的にコンクリート打ちされ、建造物と一体化された。
【0007】
従来は通常は上述したように、クレーンによってプレキャスト製バルコニーを吊り上げるようにしていたが、特許第2877148号には、プレキャスト製バルコニーを対象とするものではないが建造物の外部にガイドレールを立設し、このガイドレールに沿って上下に昇降できるすべり架台を設け、架台上にレールを設け、前記レール上に台車を設けた高層建築建設現場内部への重量資材荷揚げ搬入装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2877148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のプレキャスト製バルコニーの取り付け方法は上述したように、クレーンによってプレキャスト製バルコニーを取付場所に吊り上げ、仮固定した後に建造物と一体的にコンクリート打ちする。
【0010】
しかし、従来のプレキャスト製バルコニーの取り付け方法は、クレーンが届く範囲でなら取付が可能であったが、クレーンが届かない所のバルコニーはプレキャスト製バルコニーを取り付けることができなかった。
【0011】
図10に従来のプレキャスト製バルコニーの取り付け方法の問題を示す。
【0012】
図10において、符号30はバルコニーを取り付けようとする新築の建造物を示している。
【0013】
この建造物30の側面と背面には既設の建物31,32が存在するとする。また、建造物30と既設の建物31,32の間には細い路地しかないものとする。
【0014】
この場合に、クレーン33は建造物30の前面と側面の道路に設置する以外に設置することができないので、図9に示すように、バルコニーの取付場所に応じて移動させて設置する。
【0015】
しかし、それでも図に示すように、既設の建物との間の道路から遠い部分はクレーン33のブームが届かない。
【0016】
そのため、従来はこのようなクレーン33のブームが届かない場所のバルコニーは、プレキャスト製のバルコニーを使用できず、現場で型枠を新たに組んでコンクリート打ちしてバルコニーを建設していた。
【0017】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クレーンが届かない場所にもプレキャスト製のバルコニーを搬送して取り付けられるようにした工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、建造物外壁にほぼ平行にレールを設置する工程と、前記レール上に前記レールに沿って滑走可能なローラーを設置する工程と、前記ローラー上にプレキャスト製バルコニーを載置する工程と、前記プレキャスト製バルコニーをスライドさせて取り付け場所に搬送する工程と、を有することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、建造物外壁にほぼ平行に頂部にローラーを有するレールを設置する工程と、前記レール上にプレキャスト製バルコニーを載置する工程と、
前記プレキャスト製バルコニーをスライドさせて取り付け場所に搬送する工程と、有することを特徴とするものである。
【0020】
本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、第1方向のレールと第2方向のレールが互いに交差するコーナー部を設ける工程と、前記第1方向のレールに沿って前記プレキャスト製バルコニーを前記コーナー部に搬送する工程と、前記コーナー部において、前記プレキャスト製バルコニーを昇降手段によって上昇させて前記第1方向のレール上のローラーを取り外し、続いて前記プレキャスト製バルコニーを昇降手段によって下降させて前記第2方向のレール上に設置したローラ上に載置し換える工程をさらに有することができる。
【0021】
また、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、第1方向のレールと第2方向のレールが互いに交差するコーナー部を設ける工程と、前記第1方向のレールに沿って前記プレキャスト製バルコニーを前記コーナー部に搬送する工程と、前記コーナー部において、前記プレキャスト製バルコニーを昇降手段によって上昇させて前記第1方向のレールを取り外し、続いて前記プレキャスト製バルコニーを昇降手段によって下降させて前記第2方向のレール上に載置し換える工程をさらに有することができる。
【0022】
また、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、前記ローラー上または前記頂部にローラーを有するレール上に前記プレキャスト製バルコニーを載置する工程において、プレキャスト製バルコニーは建造物の外壁からの設計された突出距離に合わせてほぼ正確に載置するようにすることができる。
【0023】
また、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、第2方向のローラー上または第2方向のレール上に前記プレキャスト製バルコニーを載置し換える時に、プレキャスト製バルコニーは建造物の外壁からの設計された突出距離に合わせてほぼ正確に載置し換えるようにすることができる。
【0024】
また、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、前記プレキャスト製バルコニーを取付場所に搬送した後に昇降手段によって前記プレキャスト製バルコニーを昇降させて設計高さに設置する工程をさらに有することができる。
【0025】
本発明のプレキャスト製バルコニースライド用ローラーは、円柱状部分を有する複数の転がり部材と、前記各転がり部材の両端から突出した回転軸と、前記各転がり部材の両回転軸の端部を回転可能に支持する一対の枠部材と、前記枠材から前記各転がり部材の外周面に接する面を超えて突設させた少なくとも1対のガイド部材とを有することを特徴とするものである。
【0026】
本発明のプレキャスト製バルコニースライド用のレールは、円柱状部分を有する複数の転がり部材と、前記各転がり部材の両端から突出した回転軸と、前記各転がり部材の両回転軸の端部を回転可能に支持する一対の枠部材とを有するローラーと、前記ローラーの枠部材を保持する保持部材と、前記保持部材を支持する支持部材とを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、建造物外壁にほぼ平行にレールを設置し、もっともクレーンが届きやすい場所を搬入領域としてプレキャスト製バルコニーをレール上に載置し、順次人間の力によってプレキャスト製バルコニーをスライドさせ、クレーンの届き難いバルコニーの取付場所にもプレキャスト製バルコニーを容易に搬送して取り付けることができる。
【0028】
また、建造物の角を迂回するなど、バルコニー取付場所までのバルコニー搬送路がコーナー部を有する場合において、本発明によればコーナー部でレールを互いに交差させ、コーナー部にプレキャスト製バルコニーを搬送し、コーナー部おいてプレキャスト製バルコニーを最初に搬送したレールから他のレールに載置し換えることができ、これによってコーナー部で搬送方向を変えて、従来クレーンでは届かないバルコニー取付場所にプレキャスト製バルコニーを人力によって搬送して取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法の一工程を示した立面図。
【図2】図1を側面から見た側面断面図。
【図3】本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法のための装置の詳細を示した立面図。
【図4】本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法の一工程を示した立面図。
【図5】本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法のための装置の詳細を示した立面図。
【図6】本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法によるレールの敷設例を示した平面図。
【図7】コーナー部の構成を示した平面図。
【図8(a)】本発明のプレキャスト製バルコニースライド用ローラーの側面図。
【図8(b)】本発明のプレキャスト製バルコニースライド用ローラーの正面図。
【図9】本発明のプレキャスト製バルコニースライド用レールの正面図。
【図10】従来の工法の課題を説明した平面図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態によるプレキャスト製バルコニーのスライド工法の一工程を示している。
【0032】
図1において、符号1は建造物を示している。建造物1は、4層建ての建物であり、すでに2階部分と3階部分のバルコニーは取り付けを完了し、バルコニーが建造物と一体的にコンクリート打ちされた状態になっており、現在は4階部分のバルコニーを取り付けているところを示している。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の工法では、階下のバルコニー上に足場2を設け、足場2の両側に間隔をおいて支持部材3を立て、支持部材3の上部に建造物1の外壁と平行にレール4を設けている。そして、クレーン5がアクセスしやすい場所を搬入領域6とし、クレーン5によってプレキャストしたプレキャスト製バルコニー7を吊り上げ、搬入領域6のレール4上に載置する。
【0034】
レール4上に載置したプレキャスト製バルコニー7は順次人力によって図示する矢印の方向にレール4上をスライドさせ、各プレキャスト製バルコニー7を取り付けるべき取付場所に搬送した後に、そこでプレキャスト製バルコニー7を仮固定する。所定数のプレキャスト製バルコニー7を仮固定した後に、プレキャスト製バルコニー7の基端部と建造物1の柱の一部と外壁の一部とにコンクリートを打設し、プレキャスト製バルコニー7と建造物1とを一体化させる。
【0035】
図2は、図1の建造物1を側面から見たところを示している。
【0036】
図2に示すように、建造物1の2階、3階部分のバルコニーはすでに建造物1と一体的に取り付けられている。4階部分のバルコニーを取り付けるために、3階のバルコニーの上に足場2と支持部材3を設け、支持部材3上にレール4を敷設する。レール4は、断面が中空の矩形の鋼材とすることが好ましい。レール4の上にプレキャスト製バルコニー7を載置し、紙面に垂直の方向に人力によってスライドさせて搬送する。
【0037】
なお、最初にプレキャスト製バルコニー7をレール4上に載置する位置は、設計された建造物1の外壁からのプレキャスト製バルコニー7の突出距離に合わせてほぼ正確に載置するのが好ましい。これにより、プレキャスト製バルコニー7をレール4に沿ってスライドさせてバルコニー取付場所に搬送したときに、そのままプレキャスト製バルコニー7を仮固定することができる。この場合には、バルコニー取付場所での時間がかかる位置調整の作業が省かれあるいは少なくとも大幅に簡略化され、工事の作業効率を著しく向上させることができる。
【0038】
なお、図2に示すように、プレキャストされたプレキャスト製バルコニー7は、最終的な完成状態より薄くなっており、基端部は建造物1の外壁より建物内側に入り込むようになっている。建造物1の柱や外壁はプレキャスト製バルコニー7の基端部とともにコンクリート打ちできるように建造物1の4階部分に示すように接合部が空隙になっている。当該4階の部分の点線で示す輪郭はコンクリート打ちをした後の形状を示している。なお一方、建造物1の2,3階部分は、すでにバルコニーと建造物が一体的にコンクリート打ちされた状態を示している。
【0039】
図1と図2から分かるように、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法は、各階のバルコニーに共通したクレーン5がアクセスしやすい場所を搬入領域6とし、下の方の階からバルコニーを取り付けるようにし、2階のバルコニーを取り付ける際は地面に足場2と支持部材3を立て、3階以上の階のバルコニーについては階下のすでに完成したバルコニー上に足場2と支持部材3を立て、さらに立設した支持部材3の上にレール4を敷設し、搬入領域6からプレキャスト製バルコニー7を搬入してはレール4上に載置しては人力によって順次プレキャスト製バルコニー7をレール4に沿ってスライドさせて、奥の方のバルコニー取付場所からプレキャスト製バルコニー7を順次仮固定し、一定の数のプレキャスト製バルコニー7が仮固定された後は、プレキャスト製バルコニー7と建造物1の柱や外壁と一体的にコンクリート打ちする。
【0040】
このようにすることにより、クレーン5がアクセスしやすい場所を搬入領域6と定め、下の方の階のバルコニーから順次プレキャスト製バルコニー7を搬入し、奥の方からプレキャスト製バルコニー7を取り付け、最終的には全階のバルコニーを取り付けることができる。
【0041】
このように本発明はクレーン5がアクセスしやすい搬入領域6の一カ所から搬入して全階のバルコニー取付場所にプレキャスト製バルコニーを搬送して取り付けることができることは特筆すべきことである。
【0042】
次に、本発明による工法の詳細について以下に説明する。
【0043】
図3は本発明による工法・装置を詳細に示している。
【0044】
図3に示すように、本発明の工法によってプレキャスト製バルコニーを取り付けるときは、目的とする階の下の階のバルコニーに足場2と、支持部材3と、必要に応じて昇降手段支柱8とを立設する。支持部材3と昇降手段支柱8は連結部材9を介して足場2に連結して安定化させるのが好ましい。
【0045】
支持部材3の上部にはレール4が取り付けられる。レール4の上部にはレール4に沿って滑走可能なローラー10が配置されている。プレキャスト製バルコニー7は前記ローラー10上に載置される。
【0046】
なお、昇降手段支柱8の上部には受板11が取り付けられており、受板11上に昇降手段の一例としてジャッキ12が設けられている。ここで、昇降手段はジャッキ12に限られず、任意の公知の起重装置あるいはネジとナットを組み合わせた昇降手段を使用してもよい。
【0047】
足場2は、適当な高さのところに作業員の通路となる天板13を設ける。天板13はレール4に沿って紙面の垂直方向に続いており、作業員はその上部を移動できるようになっている。
【0048】
図4に人力によってプレキャスト製バルコニー7をスライドさせて移動させるところを示す。
【0049】
図4において、足場2は下の階のバルコニー上を建造物の外壁に沿って設けられている。レール4は、間隔をおいて立設された支持部材3の上部に、建造物の外壁に沿って平行に設けられている。レール4上にはレール4に沿って滑走可能なローラー10が配置されている。プレキャスト製バルコニー7は前記ローラー10の上に載置されている。
【0050】
天板13は、前述したように、足場2に沿って作業員が通行できる通路を形成している。
【0051】
本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法によれば、プレキャスト製バルコニーの重さが700kgである場合、約22kg程度の水平方向の力によってプレキャスト製バルコニー7をローラー10の上に乗せたままレール4上をスライドさせられることが実証されている。
【0052】
したがって、図4に示すように、本発明のプレキャスト製バルコニーのスライド工法によれば、いったんクレーン等によってプレキャスト製バルコニー7をローラー10の上に載置した後は、作業員がプレキャスト製バルコニー7を押しながら天板13上を移動することにより、プレキャスト製バルコニー7はレール4に沿ってスライドして搬送される。
【0053】
なお、図3のように足場2を使用する代わりに、図5のように足場2を省略して支持部材3や昇降手段支柱8に直接通路を形成することができる。なお、図5において、図3と同一部分については同一の符号を付している。この場合、図5に示すように、支持部材3や昇降手段支柱8に部材26を横に渡し、その上に足場板27をかけて作業員がプレキャスト製バルコニー7を押して移動する通路を形成する。
【0054】
図6にレール4の敷設の方法を示す。
【0055】
図6に例示した建造物1は、建物の表と裏にバルコニーを取り付けるようになっている。この場合に、建造物1の角のクレーンがアクセスしやすいところに搬入領域6を設け、建物の表側には直線な搬送路のレール4を設け、建物の側面と裏側にコーナー部を有する搬送路のレール4を設ける。このようにレール4を設けることにより、搬入領域6から順次プレキャスト製バルコニー7を搬入し、レール4に沿って人力でプレキャスト製バルコニー7を押し、建造物1の表側と裏側の双方において奥の方のバルコニー取付場所からプレキャスト製バルコニー7を取り付けることができる。
【0056】
建造物1の表側のプレキャスト製バルコニー7については、建造物1の表側の搬入領域6でローラー10上にプレキャスト製バルコニー7を載置する際に、プレキャスト製バルコニー7は建造物の外壁からの設計された突出距離に合わせてほぼ正確に載置するようにすれば、バルコニー取付場所に搬送したプレキャスト製バルコニー7をそのまま仮固定することができる。
【0057】
また、建造物1の裏側のプレキャスト製バルコニー7については、コーナー部でプレキャスト製バルコニー7を建造物側面のレール4から建造物裏面のレール4に載置し換える際に、建造物1の裏側の外壁から設計された突出距離に合わせてほぼ正確にプレキャスト製バルコニー7を載置し換えるようにすれば、建造物裏面においてもバルコニー取付場所に搬送したプレキャスト製バルコニー7をそのまま仮固定することができる。
【0058】
また、前述のジャッキ12等によってプレキャスト製バルコニー7をその取付場所に搬送した後に、適宜プレキャスト製バルコニー7を昇降させて設計高さに設置することもできる。
【0059】
図7は、レール4のコーナー部14を詳細に示している。
【0060】
以下の説明では、便宜上コーナー部14にプレキャスト製バルコニー7を搬入する側のレール4を第1方向のレール4と呼び、コーナー部14からプレキャスト製バルコニー7を搬出する側のレール4を第2方向のレール4と呼ぶ。
【0061】
コーナー部14では、第1方向のレール4と第2方向のレール4は互いに90°をなして交差している。なお、第1方向のレール4と第2方向のレール4の交差の角度は90°と異なる場合も以下の説明が同様に当てはまる。
【0062】
レール4同士の交差部は、後述するようにローラー10のガイド部材の通過を妨げないようにレールの一部が途切れて間隙4aを有している。
【0063】
また、コーナー部14の内部では、一時的にプレキャスト製バルコニー7を支承して昇降させる複数のジャッキ12等の昇降手段が設けられている。
【0064】
次に、図7を用いて、コーナー部14でのプレキャスト製バルコニー7の搬送方向の変更方法について説明する。
【0065】
最初に、プレキャスト製バルコニー7を第1方向のレール4に沿ってコーナー部14に搬入する。そして、コーナー部14において、プレキャスト製バルコニー7をジャッキ12によって支承して上昇させて第1方向のレール上のローラー10を取り外す。続いてプレキャスト製バルコニー7の下方の第2方向のレール4の上にローラー10を挿入し、プレキャスト製バルコニー7をジャッキ12によって下降させて第2方向のレール4上に設置したローラ10上に載置し換える。
【0066】
以上の操作により、プレキャスト製バルコニー7は第2方向のレール4の上設置したローラー10に乗ったまま第2方向のレール4に沿って人力によってスライドして移動させられるようになる。
【0067】
図8(a),8(b)は、ローラー10の構成を詳細に示している。
【0068】
図8(a),8(b)に示すように、ローラー10は、円柱状部分を有する複数の転がり部材15と、各転がり部材15の両端から突出した回転軸16と、各回転軸16の両端部を回転可能に支持する一対の枠部材17と、枠材17から各転がり部材15の外周面に接する面を超えて突設させた少なくとも1対のガイド部材18とを有している。
【0069】
図8(b)はローラー10をレール4上に配置した状態を示している。前述のように、ガイド部材18は各転がり部材15の外周面に接する面を超えて突設されているので、ガイド部材18を図8(b)に示すように下方向にレール4の両側に突出するようにローラー10を配置することにより、ローラー10は、転がり部材15がレール4に当接してレール4上で転動し、ガイド部材18によってガイドされてレール4に沿って滑走することができるようになる。滑走においてガイド部材18によってローラー10はレール4から脱落することがない。
【0070】
前述したコーナー部14においては、ガイド部材18がレール4の交差部を通過するときに間隙4aを通るので、ローラー10はプレキャスト製バルコニー7を乗せたままプレキャスト製バルコニー7をコーナー部14に搬入及び搬出することができる。
【0071】
また、コーナー部14において、ジャッキ12等によってプレキャスト製バルコニー7を上昇させれば、第1方向のレール4のローラー10を容易に抜き去ることができ、代わりに第2方向のレール4のローラー10を挿入することもできる。
【0072】
図9は、本発明の他の実施形態によるプレキャスト製バルコニースライド用のレールを示している。
【0073】
このレール19は頂部にローラーを有するものである。
【0074】
図9に示すように、レール19は、円柱状部分を有する複数の転がり部材20と、各転がり部材20の両端から突出した回転軸21と、各転がり部材の両回転軸21の端部を回転可能に支持する一対の枠部材22とを有するローラー23と、ローラー23の枠部材22を支承する受部材24と、受部材24を支持する支持部材25とを有している。
【0075】
本実施形態のレール19によれば、ローラー23はプレキャスト製バルコニーとともに移動はしない。レール19のローラー23の部分は受部材24から着脱可能であることが好ましい。この場合、搬送路にそって支持部材25と受部材24のみを間隔をおいて設置し、プレキャスト製バルコニー7が通過する部分のみにローラー23を設置してレール19を形成し、プレキャスト製バルコニーが通過した後にローラー23を取り外して、次にプレキャスト製バルコニーが通過する所の支持部材25と受部材24の上に設置することができる。
【0076】
また、コーナー部においては、ローラー23のみを取り外しおよび挿入することにより、第1方向のレールから第2方向のレールにプレキャスト製バルコニーを乗せ換えることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 建造物
2 足場
3 支持部材
4 レール
5 クレーン
6 搬入領域
7 プレキャスト製バルコニー
8 昇降手段支柱
9 連結部材
10 ローラー
11 受板
12 ジャッキ
13 天板
14 コーナー部
15 転がり部材
16 回転軸
17 枠部材
18 ガイド部材
19 レール
20 転がり部材
21 回転軸
22 枠部材
23 ローラー
24 受部材
25 支持部材
26 部材
27 足場板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物外壁にほぼ平行にレールを設置する工程と、
前記レール上に、円柱状部分を有する複数の転がり部材と、前記各転がり部材の両端から突出した回転軸と、前記各転がり部材の両回転軸の端部を回転可能に支持する一対の枠部材と、前記枠部材から前記各転がり部材の外周面に接する面を超えて下方向に前記レールの両側に突設させた少なくとも1対のガイド部材とを有し、プレキャスト製バルコニーを載置して前記レールに沿って滑走可能なローラーを設置する工程と、
前記ローラー上にプレキャスト製バルコニーを載置する工程と、
前記プレキャスト製バルコニーをスライドさせて取り付け場所に搬送する工程と、
を有することを特徴とするプレキャスト製バルコニーのスライド工法。
【請求項2】
建造物外壁にほぼ平行に、円柱状部分を有する複数の転がり部材と、前記各転がり部材の両端から突出した回転軸と、前記各転がり部材の両回転軸の端部を回転可能に支持する一対の枠部材とを有するローラーと、前記ローラーの枠部材を支承する受部材と、前記受部材を支持する支持部材とを有し、前記ローラーは前記受部材から着脱可能に構成されているレールを設置する工程と、
前記ローラー上にプレキャスト製バルコニーを載置する工程と、
前記プレキャスト製バルコニーをスライドさせて取り付け場所に搬送する工程と、
を有することを特徴とするプレキャスト製バルコニーのスライド工法。
【請求項3】
前記ローラー上に前記プレキャスト製バルコニーを載置する工程において、プレキャスト製バルコニーは建造物の外壁からの設計された突出距離に合わせてほぼ正確に載置するようにしたことを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャスト製バルコニーのスライド工法。
【請求項4】
前記プレキャスト製バルコニーを取付場所に搬送した後に昇降手段によって前記プレキャスト製バルコニーを昇降させて設計高さに設置する工程をさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャスト製バルコニーのスライド工法。
【請求項5】
円柱状部分を有する複数の転がり部材と、前記各転がり部材の両端から突出した回転軸と、前記各転がり部材の両回転軸の端部を回転可能に支持する一対の枠部材と、前記枠部材から前記各転がり部材の外周面に接する面を超えて下方向にレールの両側に突設させた少なくとも1対のガイド部材とを有し、プレキャスト製バルコニーを載置して前記レールに沿って滑走可能に構成されていることを特徴とするプレキャスト製バルコニースライド用ローラー。
【請求項6】
円柱状部分を有する複数の転がり部材と、前記各転がり部材の両端から突出した回転軸と、前記各転がり部材の両回転軸の端部を回転可能に支持する一対の枠部材とを有するローラーと、前記ローラーの枠部材を支承する受部材と、前記受部材を支持する支持部材とを有し、前記ローラーは前記受部材から着脱可能に構成されていることを特徴とするプレキャスト製バルコニースライド用のレール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8(a)】
image rotate

【図8(b)】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−221843(P2009−221843A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161024(P2009−161024)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【分割の表示】特願2003−375964(P2003−375964)の分割
【原出願日】平成15年11月5日(2003.11.5)
【出願人】(591028108)安藤建設株式会社 (46)
【出願人】(503406295)ナカジマトーケン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】