説明

プレス機械のスライド下死点検出装置

【課題】センサ位置の変化が少なく、製作が容易で、コストパフォーマンスに優れた下死点検出装置を提供する。
【解決手段】検出センサ15aと、被検出センサ15bと、前記検出センサまたは被検出センサのうち少なくとも一方をスライド12またはボルスタ5に取り付ける取付部材16とを備えており、その取付部材は第1部材17と、その第1部材の一端に連結され、前記第1部材と同方向に平行に延びる第2部材19とを備え、前記第1部材の長さを第2部材の長さに比べ長くし、前記第1部材の線膨張係数を第2部材の線膨張係数に比べ小さくし、前記第1部材および第2部材のそれぞれの熱膨張による長さ変化をほぼ同じにしている、プレス機械のスライド下死点検出装置14。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス機械のスライド下死点検出装置に関する。さらに詳しくは、スライドの下死点位置の変化を検出するスライド下死点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス機械の運転による摺動熱により、スライドを駆動させる部材やそれを懸架する部材は熱膨張する。これによりそれらの部品長は伸び、スライドの下死点を変化させる(以下、熱変位という)。またプレス機械の運転速度の増減により、スライドや上型に加わる慣性力は変化する。これによりスライドなどを懸架する部材は弾性変形し、スライドの下死点を変化させる(以下、spm変位という)。このためプレス機械にはスライドの下死点の補正を行う下死点補正装置が設けられる。その装置は、スライドの下死点を検出するセンサから得た検出値と設定値とのずれを制御装置により算出し、そのずれをゼロにするようにスライドの高さ位置を調整する。
【0003】
また位置検出センサをプレス機械に取り付けている部材も、プレス機械や金型の発熱、周囲の温度変化の影響を受け熱膨張する。このため、その取付部材に、ニレジストやノビナイト(登録商標)等の低熱膨張材を使用したものがある。さらに熱膨張がほぼ0であるスーパーインバー材を使用したものもある。
【0004】
特許文献1には、スライド位置検出手段およびそれの取付部材の周囲温度の影響を、ダイハイトの補正に取り入れるダイハイト補正装置が開示されている。このダイハイト補正装置はダイハイトを調節する駆動装置と、その駆動装置に駆動量の指令値を指令するNC装置と、そのNC装置に送るためのダイハイトの位置情報を検出するスライド位置検出手段と、それをプレス機械に取り付ける補助フレームとを備える。その補助フレームはプレス機械の本体のフレームの側面に下端が枢着され、倒れ止め手段で直立状態に保持される。その補助フレームの上端は伸縮が拘束されない自由端にされ、そこに前記スライド位置検出手段のセンサヘッドが設けられる。一方、スライドにはスライド位置検出手段のセンサロッドが設けられ、スライド下死点におけるセンサロッドの位置が前記センサヘッドにより検出される。その検出値により前記NC装置が駆動装置に指令する指令値を算出する。また前記補助フレームとセンサヘッドにはそれぞれ温度検出手段が設けられる。それら温度信号はNC装置に取り込まれ、そこで補助フレームの伸縮量とスライド位置検出手段の温度ドリフトの量が算出され、その算出された値が前記指令値に加減される。これにより前記指令値が補正され、その補正された指令値が駆動装置に指令される。
【0005】
また特許文献2には、スライドの位置検出手段と、その位置検出手段が設けられた取付部材を断熱性シートで覆ったり、それら部材を断熱性部材で形成する技術が開示されている。これらの断熱シートにより位置検出手段およびそれの取付部材の温度変化を低減し、熱膨張による長さ変化が少なくされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−15699号公報
【特許文献2】特開2005−319489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は温度変化を考慮してダイハイト量を補正するため制御が複雑である。特許
文献2のように位置検出手段などを断熱性シートで覆ったり、あるいは位置検出手段などに低熱膨張材を使用しても、熱膨張をほぼ0にすることはできない。低熱膨張材のスーパーインバー材を用いると熱膨張率をほぼ0にできるが、このものは成分にNiを多く含む難加工材であり、さらに成分にCoを含むため高価である。
【0008】
そこで本発明はセンサ位置の変化が少なく、製作が容易で、コストパフォーマンスに優れたスライド下死点検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のスライド下死点検出装置(請求項1)は、スライドまたはボルスタのうち一方に取り付けられる検出センサと、他方に取り付けられる被検出センサと、前記検出センサまたは被検出センサのうち少なくとも一方を所定の高さでスライドまたはボルスタに取り付ける取付部材とを備えており、その取付部材は上下方向に配置される第1部材と、一端がその第1部材の一端に連結され、前記第1部材の他端に向かって平行に延びる第2部材とを備え、前記第1部材または第2部材のうち一方の他端がスライドまたはボルスタに取り付けられ、他方の他端に前記検出センサまたは被検出センサが取り付けられ、前記第1部材の長さを第2部材の長さに比べ長くし、前記第1部材の線膨張係数を第2部材の線膨張係数に比べ小さくし、それら第1部材の長さL1、第2部材の長さL2、第1部材の線膨張係数α1および第2部材の線膨張係数α2が、式1を満たしている、ことを特徴としている。
|α1L1−α2L2|<α1(L1−L2) (式1)
【0010】
このようなスライド下死点検出装置において、前記第1部材および第2部材のそれぞれの熱膨張による長さ変化を略同一にしているものが好ましい(請求項2)。前記第1部材と第2部材の熱容量を略同一にしているものが好ましい(請求項3)。また前記取付部材とスライドあるいはボルスタとの間に断熱部材が設けられているものが好ましい(請求項4)。さらに前記検出センサあるいは被検出センサのうち一方が取付部材に取り付けられ、他方が前記スライドあるいはボルスタとの間に断熱材を介して取り付けられているものが好ましい(請求項5)。また前記第1部材が2本の柱状の部材で、それら第1部材の間に第2部材が配置されているものが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスライド下死点検出装置(請求項1)において、第1部材と第2部材は同じ側の端部(連結端)同士が連結される。このためプレス機械またはその周囲の温度変化により、一方の部材が熱膨張または熱収縮すると、他方の部材は反対向きに熱膨張または熱収縮する。それら両部材(第1部材および第2部材)の熱膨張または熱収縮による長さ変化の差が、式1を満たす範囲にあれば、線膨張係数の小さな部材のみを用いるのに比べ、検出センサあるいは被検出センサのスライドまたはボルスタに対する相対的な位置変化を小さくできる。このため一方の部材の他端に検出センサまたは被検出センサを取り付け、他方の部材の他端をスライドまたはボルスタに固定すると、検出センサあるいは被検出センサがスライドまたはボルスタに対して相対的に移動するのを小さくすることができる。このため温度が変化してもスライドの正確な下死点を検出でき、その検出値に基づいてスライドの高さを調節できるので、プレス加工の精度が向上する。
【0012】
また第1部材が第2部材より長く、第2部材の線膨張係数は第1部材のそれより大きい。このため第1部材の長さと第2部材の長さとの差を、検出センサを配置する高さとして用いることができる。
【0013】
このようなスライド下死点検出装置において、前記第1部材および第2部材のそれぞれの熱膨張による長さ変化を略同一にしている場合は(請求項2)、両部材(第1部材およ
び第2部材)のそれぞれの熱膨張または熱収縮による長さ変化は防止され、両部材の他端同士の相対的な位置変化がない。このためスライドの正確な下死点を検出でき、その検出値に基づいてスライドの高さを調節し、プレス加工の精度を向上させることができる。
【0014】
また前記第1部材と第2部材の熱容量が略同一にされている場合は(請求項3)、熱膨張および熱収縮による長さ変化の速度をほぼ同じにすることができるので、一層正確なスライドの下死点検出を行うことができる。
【0015】
さらに前記取付部材とスライドあるいはボルスタとの間に断熱部材が設けられている場合は(請求項4)、取付部材への伝熱を抑制し、熱膨張および熱収縮を防止するので、一層正確なスライドの下死点検出を行うことができる。また前記検出センサあるいは被検出センサのうち一方が取付部材に取り付けられ、他方が前記スライドあるいはボルスタとの間に断熱材を介して取り付けられている場合は(請求項5)、センサ自体が熱による影響を受けにくいので、一層正確なスライドの下死点検出を行うことができる。さらに前記第1部材が2本の柱状の部材で、それら第1部材の間に第2部材が配置されている場合は(請求項6)、第2部材の支持が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明のスライド下死点検出装置を用いたプレス機械の一実施形態を示す模式図である。
【図2】図2は図1に示すスライド下死点検出装置の拡大図である。
【図3】図3は図2の側面図である。
【図4】図4a、図4bおよび図4cはそれぞれスライド下死点検出装置の他の実施形態を示す拡大図である。
【図5】図5a、図5b、図5cおよび図5dはそれぞれ取付部材をスライドに取り付けたスライド下死点検出装置の実施形態を示す拡大図である。
【図6】図6aおよび図6bは取付部材をスライドとボルスタにそれぞれ取り付けた実施形態を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
始めに図1を用いて本発明のスライド下死点検出装置(以下、下死点検出装置という)を備えるプレス機械を説明する。図1に示すプレス機械1は、ベッド2と、そのベッドの前後左右4箇所から立ち上がるコラム3と、それらのコラムの上端に設けられるクラウン4とから構成されるフレームを備えている。そして前記ベッド2の上部にボルスタ5が配置されている。
【0018】
図1に示すように、前記クラウン4の上面にプレス駆動用のモータ6が配置されている。そのモータ6の駆動軸にプーリ6aが取り付けられている。またクラウン4の側面に図示しない軸受を設け、その軸受にクランク軸7の両端が回転自在に支持されている。そのクランク軸7の一端(図では右側の端部)にはフライホイール8が取り付けられており、そのフライホイール8と前記プーリ6aとの間にベルト9が掛けられている。そのベルト9はモータ6からフライホイール8へ回転力を伝達する。またフライホイール8はその内部にクラッチ・ブレーキ8aを備えており、これがクランク軸7の回転駆動を入り切りする。
【0019】
前記クランク軸7の中央付近には、直列に2つの偏心部7a、7aが設けられている。それら偏心部7a、7aにそれぞれコンロッド10、10が連結されている。それらコンロッド10、10の小端部にボールジョイント10aを介してサスペンション11が連結されている。そのサスペンション11の下端にスライド12が取り付けられている。
【0020】
前記サスペンション11は、その長さを伸縮することにより、前記ボルスタ5に対するスライド12の下死点の位置を調整する。それらサスペンション11、11はオネジ部材13の回転運動を伸縮運動に変換するボルト−ナット機構(図示しない)をそれぞれ備える。前記オネジ部材13の端部(図では右端)にスライド調整用サーボモータ13aが設けられており、それがオネジ部材13を回転駆動させる。その回転運動は前記ボルト−ナット機構のボルト部材を回転させる。そのボルト部材はコンロッド10の下端付近に設けられる。一方、ナット部材はスライド12側に設けられ、回転しないようにされる。このためボルト部材を回転させるとナット部材がボルト部材に対して移動する。これによりスライド12の高さが調整される。これらオネジ部材13およびスライド調整用サーボモータ13aはクラウン4の下面に固定されている。このサスペンション11の伸縮により、前記spm変位、熱変位に基づくスライドの変位が補正される。
【0021】
前記プレス駆動モータ6の回転力はベルト9を介してフライホイール8に伝達され、クランク軸7を回転させる。これにより偏心部7aはクランク軸7の軸心周りに回転する。前記コンロッド10の大端部は偏心部7aの周面と摺動しながら上下動する。一方、コンロッド10の小端部は、クラウン4の下面に設けられた図示しないプランジャガイドによりガイドされ、上下運動する。これによりスライド12はコラム3に設けられた図示しないスライドギブによりガイドされ、昇降する。
【0022】
前記ボルスタ5とスライド12とには、前記スライド12の下死点を検出する下死点検出装置14が設けられている。図1では下死点検出装置14をボルスタ5の両側に設けており、左右の下死点検出装置14、14から得られる検出値を平均してスライド12の中心部の下死点を算出している。これによりスライド12に対し均等に荷重が作用せず、スライド12に左右や前後に傾きが発生している場合でも、スライド12の中心部の下死点を正確に検出することができる。なお下死点検出装置14はスライド12の中央部の1ヶ所に設けるだけでもよい。
図2に示すように、下死点検出装置14は、ボルスタ5に取り付けられる検出センサ15aと、スライド12に取り付けられる被検出センサ15bと、前記検出センサ15aをボルスタ5に対し所定の高さで固定する取付部材16とを備えている。その取付部材16は下端をボルスタ5の上面に取り付け、上方に延びる第1部材17と、その第1部材の上端に連結される連結部材(上部ステー)18と、その上部ステー18に上端が連結され、第1部材17と平行に、かつ、下方に延びる第2部材19とを備えている。その第2部材19の自由端(図では下端)に、前記検出センサ15aが取り付けられている。そして第1部材17は第2部材19より長く、検出センサ15aはその差だけボルスタ5の上面より高い位置に保持されている。
【0023】
なお前記上部ステー18を用いないで、第1部材17と第2部材19とを直接連結してもよい。例えば第1部材17および第2部材19の両部材の上部に、あるいはどちらか一方の部材の上部に段部を形成し、その段部で両部材をボルトなどで締結し、第2部材19の自由端が第1部材17に接触しないようにする。また第1部材17および第2部材19の一方に凹部を設け、他方に凸部を設け、それらを組み合わせて連結してもよい。さらに第1部材17および第2部材19の一方に連結片を設け、他方に連結片を嵌合する嵌合穴を形成し、それらを嵌合させて両部材を連結してもよい。
【0024】
前記スライド12の下死点を検出する検出センサ15aとは、検出の基準となる部材(ボルスタ5)に取り付けられるもので、本実施形態ではセンサヘッドである。一方、検出される側(スライド12)に取り付けられるのは被検出センサ15bであり、本実施形態ではセンサロッドである。前記センサヘッド15aは磁力を検出する磁気ヘッドである。これらセンサロッドとセンサヘッドとしては、センサロッドに設けられる所定の周期の磁気パターンを検出することによりセンサロッドの位置を検出するマグネスケール(登録商
標)などがある。なおスライド12の高さを検出する検出センサ15aにより直接スライド12の下面の位置を検出する場合には、下面自体が被検出センサ15bとなる。なお、マグネスケール(登録商標)の他、超音波、レーザあるいは静電容量を用いたもの、さらには接触式のセンサを用いてもよい。
【0025】
本発明は前記第1部材17と第2部材19のそれぞれの線膨張係数および長さの組み合わせに特徴がある。すなわち線膨張係数(1/℃)をαとし、部材長さをL(図3参照)とすると、各部材17、19のそれぞれの熱膨張による長さ変化はαLとなる。ここで前記第1部材17の線膨張係数α1は第2部材19の線膨張係数α2より小さい(α1<α2)。なお添え字1、2はそれぞれ第1部材および第2部材を示す。また第1部材17の長さL1は第2部材19の長さL2より長い(L1>L2)。その上で第1部材17と第2部材19は、それぞれの熱膨張による長さ変化をほぼ同じにしている(α1L1=α2L2)。そのため第1部材17の温度がt℃上昇して、tα1L1だけ伸びたとき、上部ステー18がその分だけ上方に移動しても、第2部材19もt℃上昇してtα2L2だけ伸びる。したがって両者の伸びが相殺され、検出センサ15aのボルスタ5の上面に対する高さは変化しない。それによりスライド12の下死点位置を正確に検出できる。
【0026】
前記第1部材17と第2部材19の、それぞれの熱膨張による長さ変化が同じであると、両部材17、19の他端同士の相対的な位置変化がない。このため検出センサ15aがボルスタ5に対して相対的に移動するのを防止することができる。このため温度が変化してもスライド12の正確な下死点を検出でき、その検出値に基づいてスライド12の高さを調節できるので、プレス加工の精度が向上する。
【0027】
また両部材17、19のそれぞれの熱膨張または熱収縮による長さ変化が同じでない場合でも、それら両部材17、19の熱膨張または熱収縮による長さ変化の差が、式1を満たす範囲にあれば、線膨張係数α1の小さな部材のみを用いるのに比べ、検出センサ15aのボルスタ5に対する相対的な移動を小さくできる。これによりスライド12の正確な下死点を検出でき、その検出値に基づいてスライド12の高さを調節し、プレス加工の精度を向上させることができる。
例えば、第1部材17および第2部材18からなる取付部材16を1つの部材と見なした際の、その取付部材16の見かけの線膨張係数αaは、|(α1L1−α2L2)/(
L1−L2)|となる。この見かけの線膨張係数αaが、小さい方の線膨張係数α1より
もさらに小さくなるように、すなわち、|(α1L1−α2L2)/(L1−L2)|<α1を満たすように、各パラメータを設定する。これにより前述の式1が導かれる。
【0028】
また前記第1部材17と第2部材19の熱容量(J/℃)を略同一にするのが好ましい。第1部材17および第2部材19のそれぞれが受ける時間当たりの熱量がほぼ同じであるなら、第1部材17と第2部材19の熱容量が略同一になるように質量を調整することにより、両部材の温度変化の程度をほぼ同じにすることができ、それら部材の熱膨張による長さ変化の速度をほぼ同じにすることができるからである。これによりスライド12の一層正確な下死点検出を行うことができる。
【0029】
前記第1部材17の材質はニレジスト、ノビナイト(登録商標)などであり、ニレジストを用いるのが好ましい。また線膨張係数(1/℃)としては2×10−6〜7×10−6である。前記第1部材17は角柱状の部材で、断面は正方形である。なお第1部材17を板状部材にしたり、断面を円形状や矩形状にした棒状にしてもよい。
【0030】
前記第2部材19の材質はステンレス、鉄あるいはアルミ合金などである。そしてそれらの線膨張係数(1/℃)は11×10−6(鉄)〜22×10−6(アルミ合金)である。前記第2部材19の形状は板状である。板状であるので、長さL2をそのままにして
、長さL2と直角な方向(横方向)の寸法を長くし、熱容量を増加させるのが容易である。なお第1部材17と同様な形状にしてもよい。
【0031】
上記部材の種類等を特定することにより、第1部材17の長さL1に対する第2部材19の長さL2の比を0.2〜0.3程度にするのがよい。
【0032】
図3に示すように、前記第1部材17は2本であり、それらの間に、板状の第2部材19が配置されている。それら第1部材17、17および第2部材19の上端同士は上部ステー18により連結されている(連結端)。一方、前記第1部材17、17の下端同士は下部ステー20により連結され、その下部ステー20が前記ボルスタ5に固定されている。また前記第2部材19の下端(自由端)にはセンサヘッド取付部材21が設けられ、それに前記センサヘッド15aが取り付けられている。センサヘッド取付部材21は、板状の部材で、その一端が第2部材19の下端に連結される。その他端側は内向きに延び、その内向きに延びた部位にセンサロッド15bを通す貫通孔(図示せず)あるいはU字状に切り欠いた部位が形成される。また前記スライド12の側面にはセンサロッド取付部材22が取り付けられ、そのセンサロッド取付部材22にセンサロッド15bが取り付けられている。
【0033】
なおセンサヘッド15aをスライド12に取り付け、センサロッド15bを取付部材16を介してボルスタ5に取り付けてもよい(図4a参照)。その際、センサヘッド15aはセンサヘッド取付部材21を介してスライド12に固定され、前記センサロッド15bはセンサロッド取付部材22を介して取付部材16に固定される。
【0034】
前記上部ステー18、下部ステー20は2本の第1部材17、17の上端同士および下端同士をそれぞれ連結している。このため2本の第1部材17、17をボルスタ5に安定して固定できる。なお前記上部ステー18はステンレス、鉄あるいはアルミ合金などの鋼材が用いられる。
【0035】
前記第2部材19の長辺側の側面は、隣接する第1部材17、17に接触しないように、配置されている。すなわち、それら部材17、19は線膨張係数が異なるので、隙間をあけて互いに熱膨張を妨げないようにしている。
【0036】
本実施形態では第1部材17は2本であるが、1本でもよいし、3本以上設けもよい。3本以上の場合には2本のときと同じようにそれらの両端部をそれぞれ前述したステー18、20で連結してもよい。
【0037】
さらに前記第1部材17とボルスタ5との間に断熱材23を設けるのが好ましい。これにより第1部材17の熱膨張を小さくできる。また前記センサロッド取付部材22とスライド12との間にも断熱材23が設けるのが好ましい。これによりセンサロッド15bが熱による影響を受けにくいので、一層正確な下死点検出を行うことができる。
【0038】
前記センサヘッド15aにより検出されたスライド12の高さ検出値は制御装置24に送信される。その制御装置24は検出値に基づいて、サスペンション11の伸縮量を算出し、その伸縮量を達成するスライド調整用サーボモータ13aの駆動量を算出し、その算出された駆動量をスライド調整用サーボモータ13aに指令する。ここで前記取付部材16により、センサヘッド15aの熱による位置変化は防止されるので、制御装置24の側ではセンサヘッド15aから送信された検出値に取付部材16の熱膨張の変化を加減する必要がない。
【0039】
図2の下死点補正装置14では第1部材17をボルスタ5の上面に固定し、第2部材1
9の下端にセンサヘッド15aを設けている。しかし図4bに示すように第2部材19を第2部材ブラケット26を介してボルスタ5に固定し、下向きに延ばし、その下端に第1部材17の下端を連結し、上向きに延ばし、その第1部材17の上端にセンサヘッド15aを取り付けてもよい。さらに図4cに示すように、図4bにおける実施形態のセンサヘッド15aをスライド12に取り付け、センサロッド15bを第1部材17に取り付けてもよい。前記第2部材ブラケット26は板状部材を折り曲げて形成されたL字形状のブラケットであり、一方の板がボルスタ5の上面に断熱材23を介して固定されている。また他方の板は第2部材19を固定している。そして前記第2部材ブラケット26は、後述するように第2部材19をスライド12に固定するのに用いてもよい。
【0040】
前記実施形態では、取付部材16をボルスタ5などの下死点検出の基準となる部材に取り付けているが、図5a〜5dに示すように取付部材16をスライド12に取り付けてもよい。図5aに示す下死点補正装置14では第1部材17をスライド12に取り付けている。そして第2部材19にセンサヘッド15aを取り付け、ボルスタ5にセンサロッド15bを取り付けている。前記第1部材ブラケット25は板状部材を折り曲げて形成されたL字形状のブラケットである。なおその第1部材ブラケット25は、後述するように第1部材17をボルスタ5に固定するのに用いてもよい。また図5bに示すように、図5aにおけるセンサヘッド15aとセンサロッド15bの取付位置を互いに取り替えてもよい。さらに図5cに示すように、第2部材19をスライド12に固定し、上方に延ばし、その上端に第1部材17の上端を連結し、その下端にセンサヘッド15aを取り付けてもよい。また図5dに示すように、図5cにおけるセンサヘッド15aとセンサロッド15bの取付位置を互いに取り替えてもよい。
【0041】
図6a、図6bに示すように、センサヘッド15aとセンサロッド15bをそれぞれ取付部材16を介してボルスタ5とスライド12に取り付けてもよい。図6aではそれぞれの取付部材16は第1部材17をスライド12およびボルスタ5に取り付けており、第2部材19にセンサヘッド15a、センサロッド15bを取り付けている。また図6bに示すように第2部材19を第2部材ブラケット26を介してボルスタ5およびスライダ12にそれぞれ取り付けてもよい。なお図6aおよび図6bのそれぞれの実施形態において、センサヘッド15aとセンサロッド15bの取付位置を互いに取り替えてもよい。また図6aの上側の取付部材16と図6bの下側の取付部材16を組み合わせてもよく、逆に図6aの下側の取付部材16と図6bの上側の取付部材16を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 プレス機械
2 ベッド
3 コラム
4 クラウン
5 ボルスタ
6 モータ
7 クランク軸
7a 偏心部
8 フライホイール
8a クラッチ・ブレーキ
9 ベルト
10 コンロッド
10a ボールジョイント
11 サスペンション
12 スライド
13 オネジ部材
13a スライド調整用サーボモータ
14 スライド下死点検出装置(下死点検出装置)
15a センサヘッド(検出センサ)
15b センサロッド(被検出センサ)
16 取付部材
17 第1部材
18 上部ステー(連結部材)
19 第2部材
20 下部ステー
21 センサヘッド取付部材
22 センサロッド取付部材
23 断熱材
24 制御装置
25 第1部材ブラケット
26 第2部材ブラケット
α1 第1部材の線膨張係数
α2 第1部材の線膨張係数
αa 見かけの線膨張係数
L1 第1部材の長さ
L2 第2部材の長さ
t 温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドまたはボルスタのうち一方に取り付けられる検出センサと、
他方に取り付けられる被検出センサと、
前記検出センサまたは被検出センサのうち少なくとも一方を所定の高さでスライドまたはボルスタに取り付ける取付部材とを備えており、
その取付部材は上下方向に配置される第1部材と、一端がその第1部材の一端に連結され、前記第1部材の他端に向かって平行に延びる第2部材とを備え、
前記第1部材または第2部材のうち一方の他端がスライドまたはボルスタに取り付けられ、他方の他端に前記検出センサまたは被検出センサが取り付けられ、
前記第1部材の長さを第2部材の長さに比べ長くし、
前記第1部材の線膨張係数を第2部材の線膨張係数に比べ小さくし、
それら第1部材の長さL1、第2部材の長さL2、第1部材の線膨張係数α1および第2部材の線膨張係数α2が、式1を満たしている、プレス機械のスライド下死点検出装置。
|α1L1−α2L2|<α1(L1−L2) (式1)
【請求項2】
前記第1部材および第2部材のそれぞれの熱膨張による長さ変化を略同一にしている請求項1記載のプレス機械のスライド下死点検出装置。
【請求項3】
前記第1部材と第2部材の熱容量を略同一にしている請求項1または2に記載のプレス機械のスライド下死点検出装置。
【請求項4】
前記取付部材とスライドあるいはボルスタとの間に断熱部材が設けられている請求項1、2または3のいずれかに記載のプレス機械のスライド下死点検出装置。
【請求項5】
前記検出センサあるいは被検出センサのうち一方が取付部材に取り付けられ、
他方が前記スライドあるいはボルスタとの間に断熱材を介して取り付けられている請求項1〜4のいずれかに記載のプレス機械のスライド下死点検出装置。
【請求項6】
前記第1部材が2本の柱状の部材で、それら第1部材の間に第2部材が配置されている請求項1〜5のいずれかに記載のプレス機械のスライド下死点検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−66895(P2013−66895A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205179(P2011−205179)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】