説明

プロジェクタ及びプロジェクタ製造方法

【課題】製造工程において一度行った光学性能の調整が無駄となることのないプロジェクタ及びプロジェクタ製造方法を提供する。
【解決手段】光学ユニット1は、土台となる金属製のベース8の上面にそれぞれの光学部品を対応する位置に組み付けて一体的に構成されている光学性能の調整が完了した光学ユニット1は、螺子によりベース8の螺子穴8cを介してプロジェクタのケース底部へ固定することで、ケースに取り付けられる。ここで、ベース8は金属で形成しているため、例えば、それぞれの固定部12の寸法にばらつきがある場合であっても、ベース8は取り付け時にかかる応力によって歪むことはないので、光学ユニット1の光学性能を劣化させることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産効率を向上するためのプロジェクタ及びプロジェクタ製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコンなどから入力された画像信号を画像光としてスクリーンに投射するプロジェクタでは、光源、投射レンズ、プリズム、ミラーなどの光学部品の取り付け位置精度が光学性能に大きな影響を与える。特許文献1では、ランプケースに設けた3つの位置決めボスに対応するように、キャスティングに抜け止め部材付きの円筒形状部を設けることで、位置ずれによるランプ光の輝度低下を抑制するプロジェクタが提案されている。また、特許文献2では、ライトガイドの一方に、レンズを他方のライトガイドに向かって付勢する部材を一体形成することで位置決め固定を容易にしたプロジェクタが提案されている。
【特許文献1】特開2005−43603号公報
【特許文献2】特開2002−350978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、光学部品を正確な位置決めにより取り付けているにも関わらず、組立工程において最終的に光学性能が劣化する場合がある。図6に示す一般的なプロジェクタの製造工程では、図5のように、まず、ランプユニット25、投射レンズユニット22、プリズムユニット(図示せず)、ダイクロイックミラーなどを含む色分解系及びリレー光学系からなる本体ユニット23、ロッドインテグレーターなどを有する導光ユニット24などの光学部品を個別に組立てる(st1)。次に、取り付け部材35、36を用いて本体ユニット23に、ランプユニット25、投射レンズユニット22、プリズムユニット、導光ユニット24などを組み付けて一体的に光学ユニット21として構成する(st2)。ここで、光学部品のばらつきなどにより光学性能に問題がある場合は、部品の加工などの位置調整を行って光学性能を調整する(st3)。その後、調整済みの光学ユニット21をプロジェクタ11本体のケース31の底部に取り付ける(st4)。ここで、光学ユニット21は、取り付け部材35、36とケース31に設けた固定部32とを螺子止めすることで固定される。
【0004】
この時、各光学部品にはプラスチックで成形した部品が多数使用され、さらにケース31もプラスチックで成形されているため、取り付け部材35、36、もしくは固定部32の寸法のばらつきが大きい場合は、取り付け時にかかる応力で部品に歪みが生じてしまい本来の取り付け位置からずれてしまうことがある。例えば、図6のように、取り付け部材36の寸法の精度が悪いと、投射レンズユニット22が下方に向かって歪んでしまう(図6の点線を参照)。このような場合、再度、光学性能の調整(st5)が必要となるので、プロジェクタ20の生産効率を低下させる要因となる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、製造工程において一度行った光学性能の調整が無駄にならないプロジェクタ及びプロジェクタ製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のプロジェクタは、ケース内部に光源、投射レンズ、プリズム、ミラーを含む光学部品を備えており、前記光学部品を金属製のベースの上面に組み付けて一体的に構成した光学ユニットを、前記ケースの底部に前記ベースを固定することで取り付ける。
【0007】
また、本発明のプロジェクタ製造方法は、光源、投射レンズ、プリズム、ミラーを含む光学部品をそれぞれ組立てる光学部品組立工程と、前記光学部品を金属製のベースの上面に組み付けて一体的に光学ユニットを構成する光学ユニット組立工程と、前記光学ユニットの光学性能を調整する性能調整工程と、前記ベースを前記ケースの底部に固定して前記光学ユニットを取り付ける光学ユニット取り付け工程とを有する。
【発明の効果】
【0008】
光学部品を金属製のベースの上面に組み付けて光学ユニットを構成したので、プロジェクタのケースへの取り付けの際に歪むことはなく、調整済みの光学性能を維持することができる。したがって、光学性能の再調整の必要がなくなるため、プロジェクタの生産効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1及び図2のように、本発明の光学ユニット1は、土台となるベース8の上面にそれぞれの光学部品を対応する位置に組み付けて一体的に構成されている。ベース8は、アルミなどの金属を加工して、光学部品及び取り付ける本体ケースに合わせた形状に形成したものである。ベース8には、光学部品を組み付けるための螺子穴8aと位置決め用のボス8bが設けられており、さらに、本体ケースの底部に取り付けるための螺子穴8cも適宜設けられている。
【0010】
ランプユニット5は、光源であるランプとランプの照明光を導光ユニット4に向けて反射するためのリフレクタとからなる。ランプとしては、一般的に水銀ランプやメタルハライドランプなどの充分な輝度を有するものが用いられる。なお、ランプユニット5の下部にはベース8の対応する位置に螺子で取り付けるための螺子穴5aと位置決め用のボス穴5bが設けられている。
【0011】
導光ユニット4は、小型のレンズ群により入射した照明光を均一化して本体ユニット3へ照射するロッドインテグレーターである。導光ユニット4の下部にはベース8の対応する位置に螺子で取り付けるための螺子穴4aが設けられている。
【0012】
本体ユニット3は、導光ユニット4からの照明光の入射口に設けられた偏光変換素子を備えており、これを透過した照明光はS偏光に変換される。さらに、照明光は、本体ユニット3内部の光路に沿って設けられた複数のダイクロイックミラーによって赤・緑・青の3色の光に分離されて、内側の側面にある各々の対応する照射口からプリズムユニット6へと入射する。なお、本体ユニット3の下部にはベース8の対応する位置に螺子で取り付けるための螺子穴3aと位置決め用のボス穴3bが設けられている。
【0013】
プリズムユニット6は、3色に分離された照明光の入射口に液晶パネルを備えており、照明光はそれぞれの色に応じた画像情報を付与される。ここで、液晶パネルには外部から入力された画像信号を3色に分離した信号が入力される。さらに、プリズムユニット6には、3つの液晶パネルで囲まれた内部に複数個のプリズムが設けられており、分離した3色の光はこれを透過することで1つの画像光として照射口から投射レンズユニット2へと入射する。なお、プリズムユニット6は、投射レンズユニット2と高さ位置を合わせるためにベース8の前方に設けられた設置用台座8dに取り付けられる。ここで、プリズムユニット6の下部には設置用台座8dの対応する位置に螺子で取り付けるための螺子穴6aと位置決め用のボス穴6bが設けられている。
【0014】
投射レンズユニット2は、プロジェクタの前方に設置したスクリーンへと画像光を拡大投影する。投射レンズユニット2は、金属で形成した略コ字形状のレンズマウント7を介してベース8の前方に取り付けられる。投射レンズユニット2の両側部には、レンズマウント7に設けた螺子穴7aに対応する螺子穴2aが設けられている。また、レンズマウント7の両側部にはベース8の対応する位置に螺子で取り付けるための螺子穴7bと位置決め用のボス穴7cが設けられている。なお、レンズマウント7はベース8と一体的に形成しても良い。
【0015】
このように構成された光学ユニット1は、組立後にその光学性能を検査され、光学部品の寸法のばらつきや取り付け不具合などにより基準の性能を満たさなかった場合、光学性能の調整が施される。この調整の手段としては、例えば、光学部品の位置の調整や、加工などが挙げられる。
【0016】
光学性能の調整が完了した光学ユニット1は、図3における図2の線分Vに沿った断面部分に示すように、螺子13によりベース8の螺子穴8cを介してケース11底部に設けられた、対応する固定部12へ固定されることで、ケース11に取り付けられる。ここで、ベース8は金属で形成しているため、例えば、それぞれの固定部12の寸法にばらつきがある場合であっても、ベース8は取り付け時にかかる応力によって歪むことはない。したがって、光学ユニット1は、その光学性能を劣化させることなくケース11へと取り付けることが可能である。
【0017】
このような光学ユニット1を備えたプロジェクタ10の製造工程は、おおよそ図4のようになる。まず、投射レンズユニット2や本体ユニット3などの光学部品が個別に組立てられる(st1)。次に、各光学部品をベース8に螺子により組み付ける(st2)。こうしてできた光学ユニット1に、前述したように必要に応じて光学調整を施す(st3)。最後に、ベース8をケース11に螺子止めすることで光学ユニット1のケース11への取り付けが完了し、プロジェクタ10が完成する(st4)。このようなプロジェクタ10の製造方法により、光学ユニット1の最終的な取り付け時にその光学性能を劣化することがないので、以前に行った光学性能の調整が無駄にならず、プロジェクタの生産効率を向上することができる。なお、本実施形態に示した光学部品の構成及び形態は、これに限られるものではなく、設計に応じて適宜決定するものである。また、ベース8の形状や螺子穴8a及びボス8bの数や位置についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の光学ユニットの一例を示す分解斜視図である。
【図2】本発明の光学ユニットの一例を示す上面図である。
【図3】本発明のプロジェクタの一例を示す側方の断面図である。
【図4】本発明のプロジェクタ製造方法を示すフローである。
【図5】従来のプロジェクタ製造方法を示すフローである。
【図6】従来のプロジェクタの一例を示す側方の断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1,21 光学ユニット
2,22 投射レンズユニット
3,23 本体ユニット
4,24 導光ユニット
5,25 ランプユニット
6 プリズムユニット
7 レンズマウント
8 ベース
10 プロジェクタ
11 ケース
12,32 固定部
35,36 取り付け部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内部に光源、投射レンズ、プリズム、ミラーを含む光学部品を備えるプロジェクタにおいて、
前記光学部品を金属製のベースの上面に組み付けて一体的に構成した光学ユニットを、前記ケースの底部に前記ベースを固定することで取り付けたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
光源、投射レンズ、プリズム、ミラーを含む光学部品をそれぞれ組立てる光学部品組立工程と、
前記光学部品を金属製のベースの上面に組み付けて一体的に光学ユニットを構成する光学ユニット組立工程と、
前記光学ユニットの光学性能を調整する性能調整工程と、
前記ベースを前記ケースの底部に固定して前記光学ユニットを取り付ける光学ユニット取り付け工程とを有することを特徴とするプロジェクタ製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−176097(P2008−176097A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9951(P2007−9951)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】