説明

ヘアケア装置

【課題】吹出口から吹き出されたイオンの量を多くすることができるヘアケア装置を提供する。
【解決手段】制御部21は、イオン量増加モード選択部によってイオン量増加モードが選択されると、吹出口11からの吹出空気の温度が、予め定められたイオン量増加温度範囲に入るように、ヒータ5の出力を制御する。これにより、イオン量増加モード時に、吹出口11から吹き出された正イオンおよび負イオンの量を、多くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、ヘアドライヤやヘアアイロンなどのヘアケア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアケア装置としては、吹出口および吸込口を有するハウジングと、ハウジング内に配置された送風ファンと、ハウジング内に配置されたヒータと、ハウジング内に配置されると共にプラスイオンおよびマイナスイオンを発生するイオン発生器とを備えたものがある(特開2008−49101号公報:特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−49101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のヘアケア装置では、イオン発生器からプラスイオンおよびマイナスイオンを発生させているが、このプラスイオンとマイナスイオンが中和されて消失してしまう、またイオンが自然消失するという問題があった。
【0005】
そこで、この発明の課題は、吹出口から吹き出されたイオンの量をさらに多くすることができるヘアケア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者ら(発明者が複数人)は、同じ数のイオンを放出しても、そのイオンの存在量が、吹出空気の温度を変数とすると、一つの極大値が存在することを、初めて発見した。
【0007】
この理論的な根拠は確かでないが、次の理由が想定される。
【0008】
第1には、雰囲気温度が高すぎると、HのプラスイオンおよびOのマイナスイオンのそれぞれを囲む水分子(HO)の運動エネルギーが非常に高くなって、水分子がHおよびOから離れてしまい、その結果、HとOが中和されて、イオンの量が減少すると考えられる。
【0009】
第2には、雰囲気温度が適度な高温であると、水分子の運動エネルギーが適度に高くなり、その結果、放電による水分子からHおよびOへの変化量が増加すると共に、水分子に囲まれていないHおよびOに水分子が吸着されてHとOとの中和が抑制されると考えられる。
【0010】
この発明のヘアケア装置は、上記発見に基づいてなされたもので、
吹出口および吸込口を有するケーシングと、
上記ケーシング内に配置された送風装置と、
上記ケーシング内に配置されたヒータと、
上記ケーシング内に配置されると共にイオンを発生するイオン発生器と、
上記イオン発生器によって発生されたイオンの量を増加するイオン量増加モードを選択するためのイオン量増加モード選択部を有する操作部と、
上記イオン量増加モード選択部によって上記イオン量増加モードが選択されると、上記吹出口から吹き出された吹出空気の温度が、上記イオン発生器によって発生されたイオンの量が極大値または極大値近傍となる予め定められたイオン量増加温度範囲に入るように、上記ヒータの出力を制御する制御部と
を備えることを特徴としている。
【0011】
この発明のヘアケア装置によれば、上記制御部は、イオン量増加モード選択部によってイオン量増加モードが選択されると、吹出口からの吹出空気の温度が、予め定められたイオン量増加温度範囲に入るように、ヒータの出力を制御するので、イオン量増加モード時に、吹出口から吹き出されたイオンの量を、極大値または極大値近傍とできる。つまり、上記吹出口から吹き出されたイオンの量を、極大値または極大値に近い程度に多くすることができる。この結果、髪に対するイオン効果を最大限に発揮できる。例えば、大量のイオンを髪に供給することにより、髪に帯びた静電気の電荷を中和し静電気を除去して、髪のまとまりをよくすることができる。また、イオンを髪に最大限に供給できるので、イオンに付随する水を髪に十分に供給し、保湿を確保して、キューティクルダメージ等を防止し、髪を保護することができる。
【0012】
上記ヒータの出力の制御は、デューティー制御でも、電圧制御でも、複数のヒータを部分的に駆動するものでもよい。
【0013】
また、一実施形態のヘアケア装置は、上記イオン発生器は、正イオンと負イオンとを発生させる。
【0014】
この実施形態のヘアケア装置によれば、上記イオン発生器は、正イオンと負イオンとを発生させるので、正イオンおよび負イオンの存在量を増大させることができる。
【0015】
また、一実施形態のヘアケア装置は、上記正イオンは、H(HO)(mは任意の自然数)であり、上記負イオンは、O(HO)(nは任意の自然数)である。
【0016】
この実施形態のヘアケア装置によれば、H(HO)である正イオンとO(HO)である負イオンの特有の性質により、放出された正イオンおよび負イオンは比較的長い期間存在するが、この場合においても、さらに、イオンの存在量を増大させることができる。
【0017】
また、一実施形態のヘアケア装置は、ヘアドライヤであり、
上記操作部は、セットモードを選択するためのセットモード選択部と、ドライモードを選択するためのドライモード選択部とを有し、
上記セットモードにおける上記吹出空気の風量は、上記ドライモードにおける上記吹出空気の風量よりも小さく、上記セットモードにおける上記吹出空気の温度は、上記ドライモードにおける上記吹出空気の温度よりも低く、
上記制御部は、上記イオン量増加モード時に、上記セットモードにおける上記ヒータの出力よりも小さな出力となるように、上記ヒータの出力を制御する。
【0018】
この実施形態のヘアケア装置によれば、上記制御部は、イオン量増加モード時に、セットモードにおけるヒータの出力よりも小さな出力となるように、ヒータの出力を制御するので、セットモード時よりも低温の状態で、イオンを髪に最大限に供給できて、髪に十分潤いを与えることができ、セット時等に髪の損傷を防止できる。
【0019】
また、一実施形態のヘアケア装置では、上記イオン量増加温度範囲は、50℃から100℃である。
【0020】
この実施形態のヘアケア装置によれば、上記イオン量増加温度範囲は、50℃から100℃であるので、イオンの量を一層確実に多くすることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明のヘアケア装置によれば、上記制御部は、イオン量増加モード選択部によってイオン量増加モードが選択されると、吹出口からの吹出空気の温度が、予め定められたイオン量増加温度範囲に入るように、ヒータの出力を制御するので、吹出口から吹き出されたイオンの量を確実に多くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の一実施形態のヘアケア装置としてのヘヤドライヤの側面図である。
【図2】ヘヤドライヤの後面図である。
【図3】図2のIII−III線から見たヘヤドライヤの縦断面図である。
【図4】イオン発生器が取り付けられた状態で後部側の吸気フィルタが外されたヘヤドライヤを後方から見たときの斜視図である。
【図5】イオン発生器を前面側(吹出口に対向する側)から見たときの斜視図である。
【図6】ヘヤドライヤのブロック図である。
【図7A】第1の実機で、ターボをオフにした状態で、クールモード、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードのイオン濃度の変化を示す表である。
【図7B】図7Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフである。
【図8A】第1の実機で、ターボをオンにした状態で、クールモード、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードのイオン濃度の変化を示す表である。
【図8B】図8Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフである。
【図9A】第2の実機で、ターボをオフにした状態で、クールモード、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードのイオン濃度の変化を示す表である。
【図9B】図9Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフである。
【図10A】第2の実機で、ターボをオンにした状態で、クールモード、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードのイオン濃度の変化を示す表である。
【図10B】図10Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0024】
図1は、この発明の一実施形態のヘアケア装置を示す側面図である。図1に示すように、ヘアケア装置の一例としてのヘアドライヤは、先細りの略円筒形状のケーシング1と、ケーシング1に回動自在に接続されたハンドル2と、ケーシング1の後部側(図1において右側)に着脱可能に取り付けられた吸気フィルタ3とを備える。
【0025】
上記ケーシング1は、耐熱性に優れたプラスチックからなり、略円筒形状のケーシング1内の風通路P1の下流側(ケーシング1の前面側)に設けられた吹出口11と、風通路P1の上流側(ケーシング1の後面側)の吸気フィルタ3に設けられた吸込口12とを有している。このケーシング1内に配置された送風装置の一例としての送風ファン6(図3参照)により、吸込口12から吸い込まれた空気が風通路P1を介して吹出口11から吹き出すようになっている。
【0026】
上記ハンドル2は、継手構造でケーシング1の下側に接続されて、ケーシング1に対して矢印R1の方向に折りたたみ可能になっている。ハンドル2は、一点鎖線に示すように、ケーシング1に対して折りたたまれた状態で収容される。
【0027】
上記ハンドル2の前面側に、吹出口11から吹き出された吹出空気の風量や温度などを操作する操作部17を配置している。また、ハンドル2の後面側に電源コード4の一端が接続されている。
【0028】
また、上記吸気フィルタ3は、金属またはプラスチックからなっている。この吸気フィルタ3に網目状や格子状の複数の孔を設けることにより吸込口12を形成している。吸気フィルタ3は、埃等大きな異物が入らないようにすると共に、動作中に誤って指が風通路P1内に入って送風ファン6(図3参照)に触れることがないように保護する。
【0029】
図2は、上記ヘヤドライヤの後面図を示している。図2に示すように、上記ケーシング1の後面側の吸気フィルタ3は、上下方向が長い楕円形状をしており、下側が円弧で切り欠かれている。
【0030】
図3は、図2のIII−III線から見たヘヤドライヤの縦断面図を示している。図3に示すように、上記ケーシング1の風通路P1内には、風通路P1内の空気を加熱するヒータ5と、風通路P1に風を送る送風装置の一例としての軸流送風ファン6と、負イオンと正イオンとを発生するイオン発生器7とを、配置している。イオン発生器7と送風ファン6とヒータ5は、吸込口12から吹出口11に向かって、順に、並んでいる。
【0031】
上記ハンドル2内には、制御部21が配置されている。制御部21は、操作部17の操作に応じて、ヒータ5、送風ファン6およびイオン発生器7などを制御する。なお、制御部21をケーシング1内に配置してもよい。
【0032】
図4は、イオン発生器7が取り付けられた状態で後部側の吸気フィルタ3(図1参照)が外されたヘヤドライヤを、後方から、ケーシング1内を見たときの斜視図を示している。なお図4では、ハンドル2を省略している。
【0033】
図4に示すように、上記ケーシング1内には、送風ファン6の上流側(吸込口12側)でかつ下側に、凹部13が設けられている。この凹部13には、イオン発生器7が着脱可能に嵌め込まれている。ケーシング1内の上部には、吸気フィルタ3が係止される係止部14が設けられている。
【0034】
図5は、上記イオン発生器7を前面側(吹出口11に対向する側)から見たときの斜視図を示している。
【0035】
図5に示すように、上記イオン発生器7は、H(HO)(mは任意の自然数)である正イオンとO(HO)(nは任意の自然数)である負イオンとを発生する。これらのイオンは、空気中の浮遊細菌の表面に付着し、化学反応して活性種であるHまたは・OH(水酸基ラジカル)を生成する。Hまたは・OHは、極めて強力な活性を示すため、空気中の浮遊細菌であるカビや雑菌を取り囲んで不活化、除去することができる。
【0036】
具体的に述べると、上記イオン発生器7は、正イオンを発生する正イオン発生部15と、負イオンを発生する負イオン発生部16とを有する。正イオン発生部15と負イオン発生部16は、イオン発生器7の前面側に互いに所定の間隔をあけて設けられている。
【0037】
上記正イオン発生部15は、先端が尖った針形状の針電極15aと、その針電極15aを取り囲むように配置されたドーナツ円板状の誘導電極15bとを有している。針電極15aは、ドーナツ円板状の誘導電極15bの略中心に位置している。針電極15aと誘導電極15bの内周縁との間隔は8mmに設定されている。
【0038】
上記正イオン発生部15では、例えば、針電極15aに実効電圧2kV以上の電圧と、0Vとが切り替わる60Hz(または50Hz)の交流が印加される一方、誘導電極15bには、0Vの直流が印加される。針電極15aに実効電圧2kV以上が印加されているときに、針電極15aと誘導電極15bとの間の電位差によるコロナ放電がおこり、針電極15aの先端部近傍で空気中の水分子が電離して、水素イオンHが生成する。この水素イオンが空気中の水分子と群状態で結合(クラスタリング)し、H(HO)(mは任意の自然数)からなる正イオンが発生する。
【0039】
一方、上記負イオン発生部16も、先端が尖った針形状針電極16aと、その針電極16aを取り囲むように配置されたドーナツ円板状の誘導電極16bとを有している。上記針電極16aは、ドーナツ円板状の誘導電極16bの略中心に位置している。上記誘導電極16bと針電極16aの内周縁との間隔は8mmに設定されている。
【0040】
上記負イオン発生部16では、例えば、針電極16aに実効電圧−2kV以下の電圧と、0Vとが切り替わる60Hz(または50Hz)の交流が印加される一方、誘導電極16bには、0Vの直流が印加されて、空気中の酸素分子または水分子が電離して、酸素イオンOが生成する。この酸素イオンが空気中の水分子と結合(クラスタリング)し、O(HO)(nは任意の自然数)からなる負イオンが発生する。
【0041】
図6は、ヘアドライヤのブロック図を示す。図6に示すように、上記操作部17は、電源オンオフ切換部31とターボオンオフ切換部32とを有する。
【0042】
上記電源オンオフ切換部31では、電源をオフにすることで、制御部21を介して、ヒータ5、送風ファン6およびイオン発生器7を非通電とする一方、電源をオンにすることで、制御部21を介して、ヒータ5、送風ファン6およびイオン発生器7に通電する。
【0043】
上記ターボオンオフ切換部32では、ターボをオフにすることで、制御部21を介して、送風ファン6の吹出空気の風量を通常の風量とする一方、ターボをオンにすることで、制御部21を介して、送風ファン6の吹出空気の風量を通常の風量よりも15%程度多くする。
【0044】
また、上記操作部17は、クールモードを選択するためのクールモード選択部41と、セットモードを選択するためのセットモード選択部42と、セットヘアケアモードを選択するためのセットヘアケアモード選択部43と、ドライモードを選択するためのドライモード選択部44と、ドライヘアケアモードを選択するためのドライヘアケアモード選択部45と、イオン量増加モードを選択するためのイオン量増加モード選択部46とを有する。そして、ヘアドライヤの運転状態において、クールモード、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモード、ドライヘアケアモードおよびイオン量増加モードの何れか一つを選択できる。
【0045】
上記吹出口11からの吹出空気の温度に関しては、低い方から高い方へ、順に、クールモード、セットヘアケアモード、ドライヘアケアモード、セットモード、ドライモードとなる。なお、上記吹出口11からの吹出空気の温度とは、JIS C9613(7.6.1平常温度試験)に規定された方法で測定した温度である。
【0046】
上記吹出口11からの吹出空気の風量に関しては、小さい方から大きい方へ、順に、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモード、ドライヘアケアモード、クールモードとなる。
【0047】
そして、上記制御部21は、各モード選択部41〜45によって選択された各モードに応じて、ヒータ5の出力を制御して吹出空気の温度を調整すると共に、送風ファン6の出力を制御して吹出空気の風量を調整する。
【0048】
ここで、「ヒータ5の出力を制御する」とは、ヒータを1つ設けた場合、例えば、ヒータへの電力を変化するようにし、または、デューティー制御を行うようにする。また、ヒータを複数設けた場合、例えば、複数のヒータのうちの選択したヒータに通電を行うようにしてもよい。むろん複数のヒータでも電力を変化させる等他の方法と併用してもよい。
【0049】
上記イオン量増加モード選択部46によってイオン量増加モードが選択されると、上記制御部21は、吹出口11から吹き出された吹出空気の温度が、予め定められたイオン量増加温度範囲に入るように、ヒータ5の出力を制御する。つまり、制御部21は、イオン量増加モード時に、セットモードにおけるヒータ5の出力よりも小さな出力となるように、ヒータ5の出力を制御する。
【0050】
上記イオン量増加温度範囲は、イオン発生器7によって発生された正イオンおよび負イオンの量の極大値または極大値近傍を含む範囲である。イオン量増加温度範囲の最適な範囲としては、50℃から100℃である。
【0051】
この極大値は、次のような実験により発見された。クールモード、セットモード、セットヘアケアモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおけるイオン濃度の変化を測定した。なお、イオン濃度は、吹出口から外側に3cm離れた所で測定した値である。
【0052】
図7Aでは、第1のテスト機で、ターボをオフにした状態で、上記各モードのイオン濃度の変化を示す。そして、図7Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフを、図7Bに示す。
【0053】
図7Bでは、横軸に、吹出空気の温度を示し、縦軸に、イオン濃度を示す。また、図7Bでは、菱形に、正イオン濃度を示し、四角形に、負イオン濃度を示し、三角形に、正イオン濃度および負イオン濃度の合計のイオン濃度を示す。なお、図7Bでは、同程度の風量のモードについて比較したが、これは、風量が多いほどイオン濃度が大きくなるからである。イオンは発生すると同時に中和で消滅するため、速い風で送風することにより中和する前に取り出すことができ、イオン量が増加する。図7Bから、吹出空気の温度に対する正イオンおよび負イオンの量(イオン濃度)において極大値が存在することが、分かった。
【0054】
同様に、図8Aでは、第1のテスト機で、ターボをオンにした状態で、上記各モードのイオン濃度の変化を示す。そして、図8Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフを、図8Bに示す。
【0055】
図8Bでは、菱形に、正イオン濃度を示し、四角形に、負イオン濃度を示し、三角形に、正イオン濃度および負イオン濃度の合計のイオン濃度を示す。図8Bから、吹出空気の温度に対する正イオンおよび負イオンの量(イオン濃度)において極大値が存在することが、分かった。
【0056】
さらに、図9Aでは、第2のテスト機で、ターボをオフにした状態で、上記各モードのイオン濃度の変化を示す。そして、図9Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフを、図9Bに示す。なお、第1のテスト機と第2のテスト機では異なるイオン発生器7を用いている。
【0057】
図9Bでは、菱形に、正イオン濃度を示し、四角形に、負イオン濃度を示し、三角形に、正イオン濃度および負イオン濃度の合計のイオン濃度を示す。図9Bから、吹出空気の温度に対する正イオンおよび負イオンの量(イオン濃度)において極大値が存在することが、分かった。
【0058】
同様に、図10Aでは、第2のテスト機で、ターボをオンにした状態で、上記各モードのイオン濃度の変化を示す。そして、図10Aをもとに、同程度の風量となるクールモード、ドライモードおよびドライヘアケアモードにおいて、イオン濃度をプロットしたグラフを、図10Bに示す。
【0059】
図10Bでは、菱形に、正イオン濃度を示し、四角形に、負イオン濃度を示し、三角形に、正イオン濃度および負イオン濃度の合計のイオン濃度を示す。図10Bから、吹出空気の温度に対する正イオンおよび負イオンの量(イオン濃度)において極大値が存在することが、分かった。
【0060】
そして、図7B、図8B、図9B、図10Bから、極大値または極大値近傍の範囲となるイオン量増加温度範囲を、50℃から100℃とすれば、イオンの正イオンおよび負イオンの量を確実に多くすることができることが、分かった。
【0061】
このように、本願発明者らは、吹出空気の温度に対する正イオンおよび負イオンの量において一つの極大値が存在するということを、初めて見出し、この極大値または極大値近傍の範囲(50℃〜100℃)を、イオン量増加温度範囲と設定した。
【0062】
なお、極大値が存在することの理論的な根拠は確かでないが、次の理由が考えられる。
【0063】
第1には、雰囲気温度が高すぎると、HのプラスイオンおよびOのマイナスイオンのそれぞれを囲む水分子(HO)の運動エネルギーが非常に高くなって、水分子がHおよびOから離れてしまい、その結果、HとOが中和されて、イオンの量が減少すると考えられる。
【0064】
第2には、雰囲気温度が適度な高温であると、水分子の運動エネルギーが適度に高くなり、その結果、放電による水分子からHおよびOへの変化量が増加すると共に、水分子に囲まれていないHおよびOに水分子が吸着されてHとOとの中和が抑制されると考えられる。
【0065】
上記構成のヘアドライヤは、次のように動作する。
【0066】
上記操作部17の電源オンオフ切換部31で、電源をオンにして、イオン発生器7によって正イオンと負イオンを発生させ、送風ファン6によって吹き出された吹出空気にイオンを放出する。
【0067】
このとき、上記操作部17によって、クールモード選択部41、セットモード選択部42、セットヘアケアモード選択部43、ドライモード選択部44、ドライヘアケアモード選択部45およびイオン量増加モード選択部46の何れか一つを操作して、所望のモードを選択できる。また、操作部17のターボオンオフ切換部32によって、吹出空気の風量を「強」「弱」の2段階に調整することができる。
【0068】
いま、上記イオン量増加モード選択部46によってイオン量増加モードが選択されると、吹出口11からの吹出空気の温度が、予め定められたイオン量増加温度範囲である50℃から100℃に入るように、ヒータ5の出力が制御されるので、イオン量増加モード時に、吹出口11から吹き出された正イオンおよび負イオンの量を、極大値または極大値近傍とできる。つまり、吹出口11から吹き出されたイオンの量を、極大値または極大値に近い程度に多くすることができる。この結果、髪に対するイオン効果を最大限に発揮することができる。例えば、大量の正イオンおよび負イオンを髪に供給することにより、髪に帯びた静電気の電荷を中和し静電気を除去して、髪のまとまりをよくできる。また、イオンを髪に最大限に供給できるので、イオンに付随する水を髪に十分に供給し、保湿を確保して、キューティクルダメージ等を防止し、髪を保護することができる。
【0069】
なお、上記吹出口11から吹き出された正イオンおよび負イオンの量は、吹出口11から外側に3cm離れた所で測定した値である。
【0070】
また、上記イオン発生器7は、H(HO)である正イオンとO(HO)である負イオンとを発生する。これにより、H(HO)である正イオンとO(HO)である負イオンの特有の性質により、放出された正イオンおよび負イオンは比較的長い期間存在するが、この場合においても、さらに、イオンの存在量を増大させることができる。
【0071】
また、上記制御部21は、イオン量増加モード時に、セットモードにおけるヒータ5の出力よりも小さな出力となるように、ヒータ5の出力を制御するので、セットモード時よりも低温の状態で、イオンを髪に最大限に供給できて、髪に十分潤いを与えることができ、セット時等に髪の損傷を防止できる。
【0072】
また、上記イオン量増加温度範囲は、50℃から100℃であるので、正イオンおよび負イオンの量を一層確実に多くすることができる。
【0073】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、クールモード、セットヘアケアモードおよびドライヘアケアモードを省略して、セットモード、ドライモードおよびイオン量増加モードのみとしてもよい。
【0074】
また、操作部の操作により、送風ファンの回転速度を3つ以上の段階に調整して、吹出空気の強さを調節できるようにしてもよい。また、操作部の操作により、ヒータのオフを選択して、冷風を吹き出すようにしてもよい。また、イオン発生器の正イオン発生部と負イオン発生部とを、別体に形成してもよい。
【0075】
また、上記イオン発生器により、H(HO)である正イオンとO(HO)である負イオンとを発生したが、H(HO)以外の正イオンとO(HO)以外の負イオンとを発生するようにしてもよく、この場合においても、イオンの存在量を増大させることができる。また、イオン発生器は、正イオンまたは負イオンの一方を発生させるようにしてもよく、この場合においても、発生したイオンの存在量を増大させることができる。
【0076】
また、上記実施形態では、ヘアケア装置としてヘアドライヤを例に説明を行ったが、本発明のヘアケア装置としては、ヘアドライヤに限らず、例えば、ヘアアイロンやロールブラシであってもよく、また、風を吐出できて、髪のケアに使用できる装置であれば、如何なる装置であってもよい。
【0077】
また、本発明の思想を、ヘアケア装置以外に、空気清浄機や、空気調和機や、温風ヒータや、乾燥機などの送風機に用いてもよい。具体的に述べると、これらの送風機に、上記実施形態の送風ファン、ヒータ、操作部、イオン発生器および制御部を設け、制御部は、イオン量増加モードにおいて、吹出空気の温度が、このイオン量増加温度範囲に入るように、ヒータの出力を制御する。
【符号の説明】
【0078】
1 ケーシング
2 ハンドル
3 吸気フィルタ
5 ヒータ
6 送風ファン(送風装置)
7 イオン発生器
11 吹出口
12 吸込口
15 正イオン発生部
16 負イオン発生部
17 操作部
21 制御部
31 電源オンオフ切換部
32 ターボオンオフ切換部
41 クールモード選択部
42 セットモード選択部
43 セットヘアケアモード選択部
44 ドライモード選択部
45 ドライヘアケアモード選択部
46 イオン量増加モード選択部
P1 風通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吹出口および吸込口を有するケーシングと、
上記ケーシング内に配置された送風装置と、
上記ケーシング内に配置されたヒータと、
上記ケーシング内に配置されると共にイオンを発生するイオン発生器と、
上記イオン発生器によって発生されたイオンの量を増加するイオン量増加モードを選択するためのイオン量増加モード選択部を有する操作部と、
上記イオン量増加モード選択部によって上記イオン量増加モードが選択されると、上記吹出口から吹き出された吹出空気の温度が、上記イオン発生器によって発生されたイオンの量が極大値または極大値近傍となる予め定められたイオン量増加温度範囲に入るように、上記ヒータの出力を制御する制御部と
を備えることを特徴とするヘアケア装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヘアケア装置において、
上記イオン発生器は、正イオンと負イオンとを発生させることを特徴とするヘアケア装置。
【請求項3】
請求項2に記載のヘアケア装置において、
上記正イオンは、H(HO)(mは任意の自然数)であり、上記負イオンは、O(HO)(nは任意の自然数)であることを特徴とするヘアケア装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載のヘアケア装置は、ヘアドライヤであり、
上記操作部は、セットモードを選択するためのセットモード選択部と、ドライモードを選択するためのドライモード選択部とを有し、
上記セットモードにおける上記吹出空気の風量は、上記ドライモードにおける上記吹出空気の風量よりも小さく、上記セットモードにおける上記吹出空気の温度は、上記ドライモードにおける上記吹出空気の温度よりも低く、
上記制御部は、上記イオン量増加モード時に、上記セットモードにおける上記ヒータの出力よりも小さな出力となるように、上記ヒータの出力を制御することを特徴とするヘアケア装置。
【請求項5】
請求項4に記載のヘアケア装置において、
上記イオン量増加温度範囲は、50℃から100℃であることを特徴とするヘアケア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【公開番号】特開2013−102804(P2013−102804A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246413(P2011−246413)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】