説明

ヘッドランプ

【課題】重量の軽減を図りつつ、適切な配光パターンを得ることのできるヘッドランプを提供すること。
【解決手段】シェード21とサブリフレクタ31とを一体で回動するようにし、ソレノイド50の作動によりこれらが回動するように形成する。また、シェード21がシェード第1位置に位置し、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第1位置に位置する際にはすれ違い用配光パターンとなり、シェード21がシェード第2位置に位置し、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第2位置に位置する際には走行用配光パターンとなるようにする。さらに、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第2位置に位置した場合には、サブリフレクタ31のサブ反射面32で走行用配光パターンの上部付近を照射できるようにする。これにより、ソレノイド50の小型化を図ることができる。この結果、重量の軽減を図りつつ、適切な配光パターンを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドランプに関するものである。特に、この発明は、可動式シェードを備えたプロジェクタタイプのヘッドランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクタタイプのヘッドランプでは、リフレクタの反射面で反射した光源からの光の一部をシェードで遮蔽することにより、所望の配光パターンを得ている。このため、1つのヘッドランプですれ違い用配光パターンと走行用配光パターンとを照射する場合には、ソレノイド等によってシェードを動かすことにより、配光パターンを変化させている。例えば、特許文献1では、シェードの下方に左右方向に向けて形成された回転軸を設け、この回転軸を回動の中心としてソレノイドによってシェードを回動させている。これにより、すれ違い用ビームを照射する場合には、シェードの上端を、前記反射面の第2焦点付近に位置させ、反射面で反射した光源からの光の一部を遮蔽することによりすれ違い用ビームを照射している。また、走行用ビームを照射する場合には、前記ソレノイドを作動させてシェードを回動させ、シェードの上端を第2焦点から大きく外れた位置に位置させることにより、前記反射面で反射した光の遮蔽を低減させることにより走行用ビームを照射している。これにより、1つのヘッドランプで複数の配光パターンを得ることができる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−257218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような構成のヘッドランプでは、走行用ビームを照射する際に、シェードの上端を第2焦点から確実に外す必要があり、このため、シェードを大きく回動させる必要がある。シェードを大きく回動させるには、ソレノイドのストロークを大きくする必要があり、ソレノイドは大型のものが必要となっていた。また、このような大型のソレノイドは重量も重く形成されており、これらのため、ヘッドランプ全体が大きく、また、重いものとなっていた。一方、軽量化等を鑑みて小型のソレノイドを用いた場合には、ストローク不足でシェードの回動が不十分になる虞があり、この場合、走行用ビームの照射時でもシェードの上端が第2焦点付近に位置してしまうため、カットラインが明確に残る虞があり、走行用ビーム照射時の視認性を低減させる虞があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、重量の軽減を図りつつ、適切な配光パターンを得ることのできるヘッドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明に係るヘッドランプは、光源と、楕円を基調とする反射面を有するリフレクタと、前記反射面で反射した前記光源からの光の一部を遮蔽することにより配光パターンを形成するシェードと、前記反射面で反射した光を所定の方向に照射する集光レンズと、を有するプロジェクタタイプのヘッドランプにおいて、前記シェードは、前記シェードをシェード第1位置とシェード第2位置とに切り替える駆動手段によって作動可能となっており、前記駆動手段は、前記シェードを作動させると共に、前記シェードの作動に伴って作動するサブリフレクタを作動可能に設けられており、前記サブリフレクタは、前記シェードが前記シェード第1位置に位置する際にはサブリフレクタ第1位置に位置し、前記シェードが前記シェード第2位置に位置する際にはサブリフレクタ第2位置に位置するように作動可能に形成され、且つ、前記反射面で反射した前記光源からの光を反射するサブ反射面を有しており、前記配光パターンは、前記シェードが前記シェード第1位置に位置すると共に前記サブリフレクタが前記サブリフレクタ第1位置に位置する際にはすれ違い用配光パターンとなり、前記シェードが前記シェード第2位置に位置すると共に前記サブリフレクタが前記サブリフレクタ第2位置に位置する際には走行用配光パターンとなり、前記すれ違い用配光パターンは、前記光源からの光の一部を前記シェード第1位置に位置する前記シェードが遮蔽することにより形成され、前記走行用配光パターンは、前記反射面で反射した前記光源からの光の一部を前記シェード第2位置に位置する前記シェードが遮蔽すると共に、前記サブリフレクタ第2位置に位置する前記サブリフレクタの前記サブ反射面が前記反射面で反射した前記光源からの光の一部を反射することにより形成されることを特徴とする。
【0007】
この発明では、シェードをシェード第1位置とシェード第2位置とに切り替え可能に形成している。また、このシェードの作動に伴い、サブ反射面を有するサブリフレクタを、サブリフレクタ第1位置とサブリフレクタ第2位置とに切り替え可能に形成している。これらのシェード及びサブリフレクタは駆動手段によって作動可能に形成され、シェードやサブリフレクタの位置を駆動手段で切り替えることにより、すれ違い用配光パターンや走行用配光パターンを形成している。さらに、走行用配光パターンを形成する際には、リフレクタの反射面で反射した光源からの光の一部を前記サブ反射面で反射して形成している。このように、通常は他の方向を照射する光をサブ反射面で反射して走行用配光パターンを形成することにより、シェードの作動量を低減させて場合でも、的確な走行用配光パターンを形成できる。また、配光パターンを犠牲にすることなくシェードの作動量の低減を図ることができるので、駆動手段の作動量も低減できる。これにより、駆動手段の小型化を図ることができ、また、重量の軽減を図ることができる。これらの結果、重量の軽減を図りつつ、適切な配光パターンを得ることができる。
【0008】
また、この発明に係るヘッドランプは、前記サブリフレクタは、前記集光レンズの前記光源側における前記集光レンズ近傍に位置しており、且つ、前記集光レンズの上下方向における下半側に位置しており、前記サブ反射面は、前記集光レンズに面していることを特徴とする。
【0009】
この発明では、サブリフレクタを、集光レンズの上下方向における下半側に位置させることにより、すれ違い用配光パターンでは下側方向に照射する光を、適切な走行用配光パターンを形成する光として使用することができる。即ち、集光レンズの上下方向における下半側にサブリフレクタを位置させて、すれ違い用配光パターンでは当該ヘッドランプを搭載する自動車の手前側に照射する光を上方に向けて照射し、適切な走行用配光パターンを形成する光として使用することができる。この結果、より適切な配光パターンを得ることができ、視認性の向上を図ることができる。
【0010】
また、この発明に係るヘッドランプは、前記シェード及び前記サブリフレクタは、同一の回転軸を中心として回動可能に形成されており、前記シェードは、前記回転軸を中心として回動することにより前記シェード第1位置と前記シェード第2位置とに切り替えられるように形成されており、前記サブリフレクタは、前記回転軸を中心として回動することにより前記サブリフレクタ第1位置と前記サブリフレクタ第2位置とに切り替えられるように形成されていることを特徴とする。
【0011】
この発明では、シェード及びサブリフレクタを、同一の回転軸を中心として回動可能に形成しているので、双方の回動時の相対的な位置精度を向上させることができる。この結果、精度の高い配光パターンを得ることができる。
【0012】
また、この発明に係るヘッドランプは、前記シェードと前記サブリフレクタとは、前記回転軸を中心として回動する付勢部と一体に形成されており、且つ、前記駆動手段が前記付勢部に付勢力を与えることにより前記シェード、前記サブリフレクタ及び前記付勢部は一体となって回動することを特徴とする。
【0013】
この発明では、シェードとサブリフレクタとを回動させる際に、これらと一体に形成された付勢部に対して駆動手段で付勢力を与えることにより回動させている。これにより、シェードやサブリフレクタに対して駆動手段から入力する部分をそれぞれ独立して設ける必要がなくなり、その分、部品点数の低減を図ることができる。この結果、より確実に重量の軽減を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかるヘッドランプは、重量の軽減を図りつつ、適切な配光パターンを得ることができる、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるヘッドランプの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。また、以下の説明は、本発明のヘッドランプを備えた自動車の前方、後方、左側、右側、上側、下側を、ヘッドランプにおいても前方、後方、左側、右側、上側、下側として説明する。またさらに、以下の説明では、左側通行の道路で走行をする自動車に装備されるヘッドランプについて説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の実施例に係るヘッドランプの断面図である。同図に示すヘッドランプ1は、リフレクタ10と、光源としての放電バルブ13と、リフレクタ10の前方に設けられ、リフレクタ10からの反射光を所定の方向に照射する集光レンズ15と、放電バルブ13と集光レンズ15との間に位置するシェード21及びサブリフレクタ31と、これらを一体に固定するフレーム16とから形成されている。また、シェード21とサブリフレクタ31とは連結部41で接続されることにより一体に形成されており、シェード21の下方には駆動手段となるソレノイド50が設けられている。このソレノイド50は、前記フレーム16に形成されるソレノイド固定部17に固定されている。
【0017】
前記リフレクタ10の内面には、アルミ蒸着等によって反射面11が設けられている。また、当該リフレクタ10の後端付近には前記放電バルブ13用の挿通孔12が形成されており、放電バルブ13は挿通孔12より挿通してリフレクタ10に固定する。また、この放電バルブ13には、電源(図示省略)と電気的に接続されているバルブソケット(図示省略)が接続される。
【0018】
前記反射面11の形状は、中心線(光軸)5上に第1焦点F1及び第2焦点F2の2つの焦点を有し、前記中心線5を中心軸とする回転楕円を基調とする形状の一部となっている。前記放電バルブ13の発光部14は、前記第1焦点F1付近に位置する。また、前記シェード21が後述するシェード第1位置に位置している状態では、前記第2焦点F2付近には、当該シェード21の上端付近が位置している。この第1焦点F1及び第2焦点F2は、当該反射面11の形状を決める基準である光学基準点となっている。
【0019】
前記リフレクタ10の前方にはフレーム16が設けられており、その前端、つまり第2焦点F2の前方には集光レンズ15が設けられている。また、集光レンズ15は非球面レンズであって透明の物質、例えばガラス等から形成されている。その形状は、ほぼ円形の凸レンズ状の形状となっており、凸側の面を前方に向けて設けられている。
【0020】
前記シェード21は、前記集光レンズ15側から前記放電バルブ13方向に見た場合、つまり、前記中心線5に沿った方向に見た場合には、略矩形状の形状で形成されている。また、当該シェード21の上端部分には、前後方向における中央付近に左右方向に沿って溝が形成されている。換言すると、シェード21の上端部分は前側部分と後側部分とが上方に突出した形状で形成されている。このシェード21の上端部分は、すれ違い用配光パターンのカットオフラインを形成できる形状で形成されており、これにより、この部分は、すれ違い用エッジ22として形成されている。また、このシェード21の下端部分は前記連結部41が接続されており、連結部41はシェード21の下端部分から前方に向かって設けられている。
【0021】
前記連結部41は、前後方向に向かって形成されており、後端部分、即ち、連結部41における前記放電バルブ13側の部分は前記シェード21に接続されており、前端部分、即ち、連結部41における前記集光レンズ15側の端部は、前記サブリフレクタ31に接続されている。また、当該連結部41の前後方向における中央部付近には、回転軸40が形成されている。この回転軸40は、当該ヘッドランプ1における左右方向に向かって形成されている。また、この回転軸40の下方には、下方に向けて付勢部42が形成されている。この付勢部42は、下方に向けて形成された板状の形状で形成されており、付勢部42の後方側の面は、付勢面43として形成されている。また、前記ソレノイド50は、この付勢部42の後方に位置するように前記ソレノイド固定部17に固定されており、このため、付勢部42の付勢面43は、ソレノイド50に面している。
【0022】
前記連結部41に接続されているサブリフレクタ31は、当該サブリフレクタ31の上端部分が前記連結部41の前端部分に接続されている。このサブリフレクタ31は、略矩形状の板状の形状で形成されており、当該サブリフレクタ31の上端部分から下端部分の方向に向かうに従って、後方から前方に向かうように形成されている。つまり、サブリフレクタ31は、上端部分から下端部分の方向に向かうに従って、前記放電バルブ13側の方向から前記集光レンズ15側の方向に向かうように形成されており、前記中心線5の形成方向、及び当該ヘッドランプ1における上下方向に対して斜め方向に傾いて形成されている。当該サブリフレクタは、このような形状で、前記集光レンズの前記光源バルブ側における集光レンズの近傍に位置しており、且つ、集光レンズの上下方向における下半側に位置している。つまり、サブリフレクタは、前記中心線よりも下側に位置している。
【0023】
このサブリフレクタ31の集光レンズ15側或いは上方に面している側の面には、サブ反射面32が設けられている。このサブ反射面32は、前記リフレクタ10に設けられた反射面11と同様に、アルミ蒸着等によって形成されている。このように、一体に形成されるシェード21、連結部41、サブリフレクタ31及び付勢部42は、全て一体に形成されおり、前記回転軸40を回動の中心として一体となって回動可能に形成されている。
【0024】
前記ソレノイド50には、短いストロークで伸縮可能なプランジャ51が設けられており、当該ソレノイド50は、プランジャ51が前方に向けて突出する向きで前記ソレノイド固定部17に固定されている。このように前方に向けて突出したプランジャ51は、前後方向に伸縮可能となっており、プランジャ51を伸ばす際には、前方に向けて伸びるように形成されている。また、前記付勢部42の付勢面43は、当該ソレノイド50に面しているが、ソレノイド50には前方に向けて突出したプランジャ51が設けられているため、前記付勢面43はプランジャ51に面している。
【0025】
また、付勢部42とソレノイド50との間にはスプリング52が設けられており、スプリング52の前端部分は付勢部42に接続され、スプリング52の後端部分はソレノイド50に接続されている。このスプリング52は、付勢部42とソレノイド50に対して引っ張り力、即ち、付勢部42とソレノイド50との間隔を縮める方向に付勢力を与えている。この方向に付勢力を与えられている付勢部42は、上述したように前記回転軸40を中心として回動可能に形成されているため、当該付勢部42の付勢面43は、ソレノイド50から前方に向けて突出した前記プランジャ51の先端部分に当接している。
【0026】
この実施例にかかるヘッドランプ1は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。前記ソレノイド50のプランジャ51を縮めると、付勢部42は前記回転軸40を中心として回動可能に形成され、また、付勢部42にはスプリング52によってソレノイド50との間隔が縮まる方向に付勢力が与えられているため、付勢面43とプランジャ51との当接が維持される。この状態では、当該付勢部42と一体に回動可能に形成されている前記シェード21のすれ違い用エッジ22は、第2焦点F2近傍に位置する。シェード21のこの位置は、シェード第1位置となっている。
【0027】
また、上記にようにソレノイド50のプランジャ51を縮めた状態では、前記付勢部42と一体に回動可能に形成されているサブリフレクタ31は、第2焦点F2から、ほぼ円形の形状で形成された前記集光レンズ15の外周部分付近に位置し、発光部14で発光した光が外部に向けて出射可能な部分の最外周部分である出射最外部18までの仮想の線である光路境界線55よりも、後方、或いは、前記中心線5を中心とした外側部分に位置している。このため、前記サブ反射面32も、光路境界線55よりも後方、或いは中心線5を中心とした外側部分に位置している。サブリフレクタ31のこの位置は、サブリフレクタ第1位置となっている。また、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第1位置の状態では、サブ反射面32は、光路境界線55とほぼ平行に形成されている。なお、サブ反射面32は、光路境界線55に対して必ずしも平行である必要はないが、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第1位置に位置している場合のサブ反射面32の光路境界線55に対する傾きは、±15°以内の傾きとなって形成されているのが好ましい。
【0028】
図2は、プランジャを伸ばした状態を示す図である。前記ソレノイド50のプランジャ51を伸ばすと、当該プランジャ51は前方に向けて伸びる。このようにプランジャ51が伸びると、当該プランジャ51に付勢面43が当接している付勢部42は、プランジャ51によって前方に向けて付勢力が与えられ、前記回転軸40を中心として前方に回動するが、プランジャ51は短いストロークで伸縮可能に形成されているため、プランジャ51が伸びた場合でも伸びは小さく、このため、付勢部42は若干前方に回動する。この付勢部42の回動によって、当該付勢部42と一体となって回動可能に形成されているシェード21も回動するが、付勢部42は回転軸40よりも下方に設けられており、シェード21は回転軸40よりも上方に設けられているため、シェード21は後方に傾くように回動する。シェード21がシェード第1位置から後方に傾くように回動すると、すれ違い用エッジ22は第2焦点F2よりも後方で、且つ、下方に位置し、第2焦点よりも離れる。その際に、付勢部42の回動が小さいためシェード21の回動も小さく、シェード21は小さい回動角で回動するため、すれ違い用エッジ22は第2焦点F2よりも若干後方で、且つ、若干下方に位置する。シェード21のこの位置は、シェード第2位置となっている。
【0029】
このように付勢部42がこのように回動すると、回転軸40よりも前方に位置しているサブリフレクタ31は、前方、或いは上方に向けて回動する。サブリフレクタ31がこの方向に回動すると、サブリフレクタ31は、部分的に、特に、サブリフレクタ31の下端部分側が前記光路境界線55よりも集光レンズ15側に位置して光路境界線55よりも中心線5寄りに位置することになる。このため、前記サブ反射面32も部分的に光路境界線55よりも集光レンズ15側に位置し、光路境界線55よりも中心線5寄りに位置する。サブリフレクタ31のこの位置は、サブリフレクタ第2位置となっている。
【0030】
図3は、すれ違い用ビーム照射時の状態を示す図である。前記ヘッドランプ1ですれ違い用ビームを照射する際には、プランジャ51が縮むようにソレノイド50を作動させる。プランジャ51が縮んでいる状態では、シェード21はシェード第1位置に位置し、サブリフレクタ31はサブリフレクタ第1位置に位置する。シェード21がシェード第1位置に位置していると、シェード21の上端部分に位置するすれ違い用エッジ22は、第2焦点F2近傍に位置する。
【0031】
この状態で当該ヘッドランプ1を点灯すると、まず、前記放電バルブ13内の発光部14が点灯をする。発光部14が点灯をすると、発光部14からの光のうちの一部の光は前記リフレクタ10の反射面11方向に向かい、当該反射面11によって反射される。反射面11の形状は、第1焦点F1と第2焦点F2とを光学基準点とする回転楕円を基調とした形状の一部で形成されているため、第1焦点F1付近に位置している前記発光部14からの光が反射面11で反射した場合には、反射したこの光は第2焦点F2の方向に向かう。
【0032】
また、反射面11は上記のように回転楕円を基調として形成されているため、反射面11で反射した光は、第2焦点F2で交差する。例えば、反射面11の上半側の部分で反射した光は下部方向に向けて反射され、反射面11の下半側の部分で反射した光は上部方向に向けて反射されるため、これらの光のうち反射後に第2焦点F2の方向に向かう光は、第2焦点F2を通過する際に交差する。これにより、第2焦点F2通過後は、反射面11の上半側の部分で反射した光は下部の方向に進み、反射面11の下半側の部分で反射した光は上部の方向に進む。
【0033】
ここで、第2焦点F2近傍にはシェード21が設けられている。また、シェード21には上端部分にすれ違い用エッジ22が設けられており、このすれ違い用エッジ22が第2焦点F2付近に位置しているため、シェード21の大部分は第2焦点F2の下方に位置している。このため、反射面11の下半側の部分で反射した光は、このシェード21で遮られる。このように反射面11で反射した光のうちの一部をシェード21で遮る際には、第2焦点F2付近に前記すれ違い用エッジ22が形成されているため、光が遮られる部分との境界部はすれ違い用エッジ22の形状に沿った形状となって遮られる。また、すれ違い用エッジ22は、シェードの上端部分の前側部分と後側部分とが上方に突出した形状で形成されている。これにより、当該シェードでの遮光は、色消しの作用を有する。このため、シェード21で遮光した光の境界部への着色が抑制される。
【0034】
前記反射面11で反射した光はこのように遮られた後、前記集光レンズ15の方向に向かう。前記反射面11で反射した光は、前記第2焦点F2までは集光しながら当該第2焦点F2まで進み、第2焦点F2を通過後は拡散しながら前記集光レンズ15の方向に進む。その際に、第2焦点F2よりも集光レンズ15側に位置しているサブリフレクタ31は、サブリフレクタ第1位置の状態では、サブ反射面32を含む全ての部分が光路境界線55よりも後方、或いは、前記中心線5を中心とした外側部分に位置している。前記第2焦点F2を通過後、拡散しながら集光レンズ15の方向に進む光は、光路境界線55よりも内側、即ち、光路境界線55よりも中心線5寄りを通って集光レンズ15の方向に向かうため、前記第2焦点F2を通過した光は、サブ反射面32で反射されることなく集光レンズ15の方向に向かう。そして集光レンズ15に到達し、集光レンズ15を透過する際にこれらの光は向きを変えられ、略平行な光となって前方を照射する。
【0035】
図4は、すれ違い用ビームの配光パターンを示す図である。なお、同図に示す配光パターンの内側の線は等光度曲線であり、内側に方向に向かうに従って光度が高くなっている。前記反射面11で照射した光は、前記シェード21が無い部分のみの光が前記集光レンズ15に向かい、集光レンズ15から前方に照射されるため、この前方に照射される照射光は、シェード21の形状と逆の形状で照射される。また、この照射光は、上記のようにすれ違い用エッジ22の形状で遮光されているため、照射光はシェード21の形状の逆の形状で照射される。即ち、照射光は自動車前方の上下方向の中心であるH−H線よりも概ね下方を照射するので、配光パターンはH−H線よりも概ね下方となり、自動車の左側、即ち、走行車線側のみ、H−H線よりも若干上方を照射する。照射光がこの範囲に照射されることにより、当該ヘッドランプ1の照射光はすれ違い用ビームとなるので、配光パターンはすれ違い用配光パターン60となる。
【0036】
このすれ違い用配光パターン60の上部の形状、つまりカットオフライン61は、カットオフライン61の右側部分が、カットオフライン61の左側部分よりも低く形成されている。また、カットオフライン61の左側部分は、H−H線よりも若干上方に位置している。このように上下方向の段差を有するカットオフライン61は、左右方向における中央部付近、つまり、自動車前方の左右方向の中心であるV−V線上付近で、傾斜を有しつつ左側部分と右側部分とが接続されている。
【0037】
前記ヘッドランプ1ですれ違い用ビームを照射する場合には、ソレノイド50のプランジャ51を縮め、シェード21をシェード第1位置に位置させ、サブリフレクタ31をサブリフレクタ第1位置に位置させることにより、配光パターンは上記のようなすれ違い用配光パターン60となる。また、このすれ違い用配光パターン60のカットオフライン61は、すれ違い用エッジ22によって色消しがなされているので、カットオフライン61への着色は抑制されている。
【0038】
このようなすれ違い用配光パターン60では、V−V線よりも左側がH−H線よりも若干上方を照射し、右側はH−H線よりも若干下方側に離れているので、V−V線よりも右側のH−H線付近にはすれ違い用ビームが照射されない。右側レーンが対向車線であった場合でも、すれ違い用配光パターン60では、上下方向における中央付近の対向車線側には、このようにすれ違い用ビームは照射されないので、右側レーンを走行する対向車の運転席付近には照射せず、対向車に対して眩光とはならない。また、すれ違い用配光パターン60は、カットオフライン61の左側部分のみがH−H線よりも若干上方を照射しているため、先行車のドアミラーを照射することがなく、すれ違い用ビームは先行車に対して眩光とはならない。
【0039】
図5は、走行用ビーム照射時の状態を示す図である。前記ヘッドランプ1で走行用ビームを照射する際には、プランジャ51が伸びるようにソレノイド50を作動させる。プランジャ51が伸びている状態では、シェード21はシェード第2位置に位置し、サブリフレクタ31はサブリフレクタ第2位置に位置する。このようにシェード21がシェード第2位置に位置していると、シェード21の上端部分に位置するすれ違い用エッジ22は、第2焦点F2よりも若干後方で、且つ、若干下方に位置する。また、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第2位置に位置していると、サブ反射面32が部分的に光路境界線55よりも集光レンズ15側に位置し、光路境界線55よりも中心線5寄りに位置する。
【0040】
この状態で当該ヘッドランプ1を点灯すると、すれ違い用ビーム照射時と同様に前記放電バルブ13が点灯し、発光部14で照射された光は、前記反射面11で反射して第2焦点F2の方向に向かう。これらの光のうち、前記反射面11の下半側の部分で反射した光は、すれ違い用ビーム照射時と同様にシェード21で遮られるが、走行用ビーム照射時には、第1シェード21は、前記すれ違い用エッジ22が第2焦点F2よりも若干下方に位置している。このため、シェード21で遮る光の量は、すれ違い用ビーム照射時よりも少なくなる。このように、すれ違い用ビーム照射時にはシェード21で遮蔽される光の一部が第2焦点F2よりも前方に向かうため、すれ違い用ビーム照射時よりも多くの光が第2焦点F2よりも前方に向かう。また、このように反射面11で反射した光のうちの一部をシェード21で遮る際には、第2焦点F2付近に前記すれ違い用エッジ22が形成されているため、光が遮られる部分との境界部はすれ違い用ビーム照射時と同様にすれ違い用エッジ22の形状に沿った形状となって遮られる。
【0041】
このように、反射面11で反射した光は、その一部がシェード21で遮蔽され、残りの光は集光レンズ15の方向に向かう。この集光レンズ15の方向に向かう光は、第2焦点F2を通過後は拡散しながら集光レンズ15の方向に進む。その際に、第2焦点F2よりも集光レンズ15側に位置しているサブリフレクタ31は、サブリフレクタ第2位置の状態では、サブ反射面32の一部が光路境界線55よりも中心線5寄りに位置している。このため、拡散しながら集光レンズ15の方向に向かう光のうち、光路境界線55付近を進む光は、このサブ反射面32に当たり、サブ反射面32で中心線5寄りの方向に反射する。即ち、光路境界線55付近を進む光は、集光レンズ15の方向に向かう光のうち、下方寄りの方向に向かう光であるが、この光がサブ反射面32で反射することにより、サブ反射面32での反射前の方向よりも上方寄りの方向に進行方向が変えられる。これらの光は、集光レンズ15に到達し、集光レンズ15を透過する際にこれらの光は、さらに向きを変えられて前方を照射する。その際に、サブ反射面32で反射した光は、この光がサブ反射面32で反射しなかった場合と比較して、上方寄りの方向に向かって前方を照射する。
【0042】
図6は、シェードがシェード第2位置に位置している場合の配光パターンを示す図である。なお、同図に示す配光パターンの内側の線は等光度曲線であり、内側に方向に向かうに従って光度が高くなっている。シェード21がシェード第2位置に位置している場合には、すれ違い用エッジ22が第2焦点F2よりも若干下方に位置しており、前方に照射される照射光は、シェード21の形状と逆の形状で照射される。前記サブリフレクタ31が仮に無いものとすると、この状態の配光パターン、即ち、シェード第2位置時配光パターン70は、カットオフライン71が、すれ違い用配光パターン60のカットオフライン61と同様に中央部付近から左側部分が、中央部付近から右側部分よりも上方に位置した状態となる。
【0043】
さらに、シェード第2位置のシェード21は、シェード第1位置のシェード21よりもすれ違い用エッジ22が下方に位置しているため、配光パターンのカットオフライン71はこれとは逆に高くなり、シェード第2位置時配光パターン70のカットオフライン71は、すれ違い用配光パターン60のカットオフライン61よりも上方に位置する。これらにより、シェード第2位置時配光パターン70のカットオフライン71は、すれ違い用配光パターン60のカットオフライン61と同様に、中央部付近よりも左側部分の方が右側部分よりも上方に位置し、且つ、カットオフライン71が全体的にすれ違い用配光パターン60のカットオフライン61よりも上方に位置する。
【0044】
図7は、サブリフレクタがサブリフレクタ第2位置に位置している場合の配光パターンを示す図である。サブリフレクタ31がサブリフレクタ第2位置に位置している場合には、第2焦点F2を通過後の光のうち、下方寄りの方向に向かう光は、サブ反射面32で反射する。このサブ反射面32で反射した光は、反射時に上方寄りの方向に向かって反射し、反射した光が集光レンズ15を透過する際にはさらに向きを変え、さらに上方寄りの方向の向きとなって前方を照射する。このため、サブリフレクタ第2位置に位置している状態のサブリフレクタ31のサブ反射面32で反射し、集光レンズ15を透過して前方を照射する光は、大部分がH−H線よりも上方を照射する。このように、サブリフレクタ第2位置に位置した状態のサブリフレクタ31のサブ反射面32で反射した光の配光パターンであるサブリフレクタ配光パターン75は、自動車の正面、即ち、V−V線とH−H線とが交差する部分を含んだ上方寄りの部分を照射する配光パターンとなる。
【0045】
図8は、走行用ビームの配光パターンを示す図である。なお、同図に示す配光パターンの内側の線は等光度曲線であり、内側に方向に向かうに従って光度が高くなっている。前記ヘッドランプ1で走行用ビームを照射すると、シェード21がシェード第2位置に位置することにより多くなった第2焦点F2通過後の光のうち、サブ反射面32で反射した光が上方寄りの方向に照射される。このため、走行用ビームの照射時の配光パターンである走行用配光パターン80は、前記シェード第2位置時配光パターン70と前記サブリフレクタ配光パターン75とが合わさったような配光パターンとなる。つまり、シェード第2位置時配光パターン70は、主にH−H線よりも下方を照射し、H−H線よりも上方に位置するカットオフライン71は、すれ違い用配光パターン60のカットオフライン61に似た形状ですれ違い用配光パターン60のカットオフライン61よりも若干上方に位置するような状態となるが、走行用配光パターン80では、このシェード第2位置時配光パターン70にサブリフレクタ配光パターン75が加わることにより、H−H線よりも上方を照射する部分が多くなる。このため、左右方向はすれ違い用配光パターン60とほぼ同じような広がりで、上下方向は、すれ違い用配光パターン60よりも上方に多く照射された状態となる。これにより、H−H線よりも上方と下方の双方に、多くの光が照射される。
【0046】
また、シェード第2位置時配光パターン70のカットオフライン71上にサブリフレクタ配光パターン75が位置するような状態となるので、H−H線よりも上側部分において、光が照射されている部分と光が照射されていない部分との境界が不明瞭になる。また、このようにサブ反射面32で反射することによって上方寄りの部分を照射する光は、サブリフレクタ31が設けられていなければ、配光パターンの下方寄りの部分を照射する光であるため、この光がサブ反射面32で反射してH−H線よりも上方を照射することにより、配光パターンの下方寄りに部分の光度は低下する。つまり、走行用配光パターン80の下方付近、即ち、当該ヘッドランプ1備えた自動車の手前側の部分は、すれ違い用配光パターン60における同一部分よりも光度が低下する。
【0047】
すれ違い用ビームでは、前記反射面11で反射した光の一部はシェード21で遮光していたため、前方を照射する照射光は、ほとんど自動車前方の下半側のみであるが、走行用ビームでは、シェード21で遮光する光を減らすと共に、第2焦点F2を通過した光の一部をサブ反射面32で上位寄りの方向に反射する。このため、照射光は、自動車前方の下半側のみでなく、上半側も照射する。これにより、配光パターンは、すれ違い用配光パターン60に、H−H線の上側も照射範囲として追加した形態となる。配光パターンがこのように形成されることにより、シェード21をシェード第2位置に位置させ、サブリフレクタ31をサブリフレクタ第2位置に位置させた場合の配光パターンは、走行用配光パターン80となる。
【0048】
即ち、前記ヘッドランプ1で走行用ビームを照射する場合には、ソレノイド50のプランジャ51を伸ばすことにより、シェード21をシェード第2位置に位置させ、サブリフレクタ31をサブリフレクタ第2位置に位置させる。これにより、配光パターンは上記のような走行用配光パターン80となる。このような走行用配光パターン80では、H−H線よりも上方を照射しているため、走行用ビームは遠方まで照射することができる。これにより、遠方が視認し易くなる。
【0049】
以上のヘッドランプ1は、回動可能なシェード21とサブリフレクタ31とを一体に形成し、シェード21の回動に伴ってサブリフレクタ31を回動可能に形成している。さらに、これらのシェード21及びサブリフレクタ31を、ソレノイド50を作動させて回動させることにより、配光パターンを切り替えている。即ち、シェード21をシェード第1位置に位置させ、サブリフレクタ31をサブリフレクタ第1位置に位置させることによりすれ違い用ビームを照射し、シェード21をシェード第2位置に位置させ、サブリフレクタ31をサブリフレクタ第2位置に位置させることにより走行用ビームを照射している。このうち、走行用ビームを照射する際には、サブリフレクタ31が有するサブ反射面32で、走行用ビームの照射には重要ではない部分の光を、走行用ビームの照射に必要な部分の方向に向けて反射している。
【0050】
シェード21の回動が小さい場合、即ち、シェード第1位置とシェード第2位置との位置の差が小さい場合には、配光パターンを切り替えた際に、配光パターンの差が小さくなり、適切な配光パターンを得ることが困難になるが、サブ反射面32の反射によって、配光パターンの形成を補うことができる。具体的には、すれ違い用配光パターン60から走行用配光パターン80に切り替える際に、シェード第1位置とシェード第2位置との位置の差が小さいと走行用配光パターン80は形成し難いが、リフレクタ10の反射面11で反射した放電バルブ13からの光をサブ反射面32で反射することにより、走行用ビーム照射時の照射光を補い、適切な走行用配光パターン80を形成することができる。このように、シェード21の回動が小さくても適切な配光パターンを得ることができるので、ソレノイド50のプランジャ51のストロークを小さくすることができ、これによりソレノイド50の小型化を図ることができる。このため、ソレノイド50の重量を軽減でき、これに伴いヘッドランプ1全体の重量を軽減できる。これらの結果、重量の軽減を図りつつ、適切な配光パターンを得ることができる。
【0051】
また、サブリフレクタ31を、集光レンズ15の上下方向における下半側に位置させることにより、すれ違い用ビーム照射時に下側方向へ向かう光を、走行用ビーム照射時では上方に向けて照射できる。すれ違い用ビーム照射時に下側方向へ向かう光は、すれ違い用配光パターン60においては、当該ヘッドランプ1を備える自動車の手前側付近を照射する光であるが、サブリフレクタ31を上記の位置に位置させることにより、この光を走行用配光パターン80における上部方向の光にすることができる。走行用配光パターン80では、自動車の手前側付近の照度はあまり重要ではなく、場合によっては暗めの方が遠方を見易い場合がある。すれ違い用配光パターン60ではこの部分を照射する光を、走行用配光パターン80における上部方向の光として用いることにより、照射光の無駄がなく、適切な走行用配光パターン80を得ることができる。この結果、より適切な配光パターンを得ることができ、また、走行用配光パターン80の手前側を暗めにして遠方を明るくすることにより、視認性の向上を図ることができる。
【0052】
また、シェード21とサブリフレクタ31とは、上述したように双方共に回動可能に形成されているが、これらを同一の回転軸40を中心として回動させることにより、双方の回動時の相対的な位置精度の向上を図ることができる。この結果、精度の高い配光パターンを得ることができる。また、このように精度の高い配光パターンで自動車の前方を照射することにより、夜間等周囲が暗い状況での視認性の向上を図ることができる。この結果、当該ヘッドランプ1を備えた自動車の走行時の安全性の向上を図ることができる。
【0053】
また、シェード21、サブリフレクタ31及び付勢部42を一体にし、これらを一体で回動可能に形成しているため、シェード21及びサブリフレクタ31を回動させる際には、ソレノイド50で付勢部42に対して付勢力を与えることにより、双方を回動させることができる。これにより、シェード21及びサブリフレクタ31に対してソレノイド50からの付勢力を与える部分を、それぞれ独立して設ける必要がなくなる。このため、構造が簡素化され、部品点数を減らすことができる。この結果、より確実に重量の軽減を図ることができる。
【0054】
なお、前記実施例では、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第1位置の状態では、サブ反射面32は光路境界線55とほぼ平行に形成されているが、サブ反射面32は光路境界線55に対して必ずしも平行である必要はなく、上述したように光路境界線55に対して±15°以内や、それ以外の角度で傾いていてもよい。サブ反射面32が光路境界線55に対して傾いている場合でも、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第1位置に位置している場合にはサブ反射面32では光を反射せず、サブリフレクタ31がサブリフレクタ第2位置に位置している場合にはサブ反射面32で走行用配光パターン80における上部付近を照射できるように形成されていれば、その傾きの角度は問わない。
【0055】
また、駆動手段としては、ソレノイド50以外のものを用いてもよい。例えば、ステッピングモータを用いてシェード21及びサブリフレクタ31を回動させてもよい。これらを回動させる際に、シェード21とサブリフレクタ31とを同時に回動させることのできる構造であれば、適切な配光パターンを得ることができるので、シェード21及びサブリフレクタ31を回動させることのできるものであれば、駆動手段の種類は問わない。
【0056】
また、実施例のヘッドランプ1は、光源として放電バルブ13を使用しているが、光源はハロゲン電球、白熱電球など、放電バルブ13以外のものを用いてもよい。放電バルブ13以外の光源を用いた場合でも、光源の発光部を第1焦点F1付近に位置させることにより、光源からの光をシェード21で遮蔽する、或いはサブ反射面32で反射させることができ、上記の効果を得ることができる。
【0057】
また、上記の説明では、左側通行の道路で走行をする自動車に装備されるヘッドランプ1ついて説明しているが、右側通行の道路を走行する自動車に装備する自動車に本発明のヘッドランプ1を装備する際には、シェードのすれ違い用エッジ22の形状を、左右逆の形状にするとよい。これにより、配光パターンのカットオフラインの形状が左右逆となるので、右側走行に適した配光パターンとなり、右側走行の道路を走行する場合でも、上記の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明にかかるヘッドランプは、シェードを有するプロジェクタタイプのヘッドランプに有用であり、特に、複数の配光パターンを切替えて照射する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例に係るヘッドランプの断面図である。
【図2】プランジャを伸ばした状態を示す図である。
【図3】すれ違い用ビーム照射時の状態を示す図である。
【図4】すれ違い用ビームの配光パターンを示す図である。
【図5】走行用ビーム照射時の状態を示す図である。
【図6】シェードがシェード第2位置に位置している場合の配光パターンを示す図である。
【図7】サブリフレクタがサブリフレクタ第2位置に位置している場合の配光パターンを示す図である。
【図8】走行用ビームの配光パターンを示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ヘッドランプ
5 中心線
10 リフレクタ
11 反射面
12 挿通孔
13 放電バルブ
14 発光部
15 集光レンズ
16 フレーム
17 ソレノイド固定部
18 出射最外部
21 シェード
22 すれ違い用エッジ
31 サブリフレクタ
32 サブ反射面
40 回転軸
41 連結部
42 付勢部
43 付勢面
50 ソレノイド
51 プランジャ
52 スプリング
55 光路境界線
60 すれ違い用配光パターン
61 カットオフライン
70 シェード第2位置時配光パターン
71 カットオフライン
75 サブリフレクタ配光パターン
80 走行用配光パターン
81 カットオフライン
F1 第1焦点
F2 第2焦点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、楕円を基調とする反射面を有するリフレクタと、前記反射面で反射した前記光源からの光の一部を遮蔽することにより配光パターンを形成するシェードと、前記反射面で反射した光を所定の方向に照射する集光レンズと、を有するプロジェクタタイプのヘッドランプにおいて、
前記シェードは、前記シェードをシェード第1位置とシェード第2位置とに切り替える駆動手段によって作動可能となっており、
前記駆動手段は、前記シェードを作動させると共に、前記シェードの作動に伴って作動するサブリフレクタを作動可能に設けられており、
前記サブリフレクタは、前記シェードが前記シェード第1位置に位置する際にはサブリフレクタ第1位置に位置し、前記シェードが前記シェード第2位置に位置する際にはサブリフレクタ第2位置に位置するように作動可能に形成され、且つ、前記反射面で反射した前記光源からの光を反射するサブ反射面を有しており、
前記配光パターンは、前記シェードが前記シェード第1位置に位置すると共に前記サブリフレクタが前記サブリフレクタ第1位置に位置する際にはすれ違い用配光パターンとなり、前記シェードが前記シェード第2位置に位置すると共に前記サブリフレクタが前記サブリフレクタ第2位置に位置する際には走行用配光パターンとなり、
前記すれ違い用配光パターンは、前記光源からの光の一部を前記シェード第1位置に位置する前記シェードが遮蔽することにより形成され、
前記走行用配光パターンは、前記反射面で反射した前記光源からの光の一部を前記シェード第2位置に位置する前記シェードが遮蔽すると共に、前記サブリフレクタ第2位置に位置する前記サブリフレクタの前記サブ反射面が前記反射面で反射した前記光源からの光の一部を反射することにより形成されることを特徴とするヘッドランプ。
【請求項2】
前記サブリフレクタは、前記集光レンズの前記光源側における前記集光レンズ近傍に位置しており、且つ、前記集光レンズの上下方向における下半側に位置しており、
前記サブ反射面は、前記集光レンズに面していることを特徴とする請求項1に記載のヘッドランプ。
【請求項3】
前記シェード及び前記サブリフレクタは、同一の回転軸を中心として回動可能に形成されており、
前記シェードは、前記回転軸を中心として回動することにより前記シェード第1位置と前記シェード第2位置とに切り替えられるように形成されており、
前記サブリフレクタは、前記回転軸を中心として回動することにより前記サブリフレクタ第1位置と前記サブリフレクタ第2位置とに切り替えられるように形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のヘッドランプ。
【請求項4】
前記シェードと前記サブリフレクタとは、前記回転軸を中心として回動する付勢部と一体に形成されており、且つ、前記駆動手段が前記付勢部に付勢力を与えることにより前記シェード、前記サブリフレクタ及び前記付勢部は一体となって回動することを特徴とする請求項3に記載のヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−164688(P2006−164688A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352872(P2004−352872)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】