説明

ベッド用蚊帳

【課題】蚊帳全体をベッドの枠体で保持できて蚊帳の外から無理なくベッドに寝かせた乳幼児の介護が行え、外観上も体裁よく保持できる、簡単な構成のベッド用蚊帳を提供する。
【解決手段】使用するベッドの最大長さ寸法より長い長径とベッドの幅に対応する短径の長円形天井部2と、その天井部2の周囲に縫込まれた高弾性線条(ピアノ線)にてなる保持リング4と、その保持リング4を内包した環状縁部3から全周にわたり垂下するたれ布5と、そのたれ布5の一部を開閉可能にして閉じ合わせるファスナー8およびベッド10上側から覆ってベッドの枠に装着する複数の取付部片7とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてベビーベッドなどの枠体に装着して張架するのを容易にしたベッド用蚊帳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乳幼児を就寝させる時に使用される蚊帳については、一般にろくろによって複数の骨部材を周囲に張って蚊帳を拡張させ、自立するように構成された"ほろ蚊帳"が知られている。この"ほろ蚊帳"を使用すると、簡単に部屋の一部に蚊帳を張って蚊などの害虫から身を守って安全に就寝することができる。ところが、最近の生活環境の変化によって乳幼児を就寝させたりするのに、畳の上に寝具を敷いて就寝させることよりベビーベッドを使用することが多くなり、従来の"ほろ蚊帳"を使用することが非常に少なくなっている。
【0003】
一方、ベッドを使用して就寝する生活環境において蚊帳を使用する必要があるのに対して、部屋内全体に吊るして使用する従来の蚊帳に代えて、ベッド1台につき1つの蚊帳を使用できるようにしたベッド用蚊帳についての提案が特許文献1または特許文献2などによって開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−79843号公報
【特許文献2】特開2004−230100号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1によって知られるベッド用蚊帳は、ベッドの上方(天井)からベッド全体を覆うようにした蚊帳を吊下げて使用するものが提案されている。また、前記特許文献2によって知られるものは、ベッドの側方にスタンドを配置して、このスタンドによってベッド全体を覆うようにした蚊帳を吊下げて使用できるようにしたものが記載されている。これらはいずれもベッドとは別個に支持位置を配して、蚊帳を吊下げて使用するものであるから、前者(特許文献1)によるものは天井に蚊帳を吊下げるフックなど吊下げ支持金具を取付けねばならず、そのためには天井に頑丈な支持部材が存在しないと使用できない。当然、化粧天井の施されている部屋では使用できないほかに、昼間時など不使用時に蚊帳を吊下げておくのは体裁がよくないなどの問題点がある。
【0006】
また、特許文献2によって知られるベッド用蚊帳では、スタンドを使用して吊下げるので、特許文献1に較べて使用時の自由度がある。しかしながら、スタンドを用意しなければならないのでその分高価になるという問題がある。また、スタンドによって蚊帳全体を吊下げ支持する構成となるので、蚊帳の寸法が大きくなると支持状態が不安定になり易く、特に蚊帳内に出入りする際、支持状態が不安定になるという問題点がある。さらに、ベッド脇にスタンドが設置されているので、就寝に際して不都合はないが違和感を抱くという問題もある。
【0007】
また、乳幼児のベッド用蚊帳として適用する場合、吊下げ式の蚊帳では、一般成人のベッドとは異なり、ベッドの外形寸法が小さくて高さ寸法が高いことと保護者がベッド上に寝かせた乳幼児を介護する際に、介護者(保護者)がベッド脇に立って乳幼児の世話をすることになるので、その介護者が蚊帳内に入って不都合のないスペースを確保しなければならず、吊下げ式ではベッドを覆う寸法との関係で、蚊帳の内容積を大きくすると不釣合な形状となり、機能を重視すると不体裁なものになって好ましくないという問題点がある。
【0008】
本発明は、前述のような問題点を解決するためになされたもので、蚊帳全体をベッドの枠体で保持できて蚊帳の外から無理なくベッドに寝かせた乳幼児の介護が行え、外観上も体裁よく保持できる、簡単な構成のベッド用蚊帳を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明によるベッド用蚊帳は、
使用するベッドの最大長さ寸法より長い長径とベッドの幅に対応する短径の長円形天井部と、その天井部の周囲に縫込まれた高弾性線条にてなる保持リングと、その保持リングを内包した環状縁部から全周にわたり垂下するたれ布と、そのたれ布の一部を開閉可能にして閉じ合わせるファスナーおよびベッド上側から覆ってベッドの枠に装着する取付部片とで構成されていることを特徴とするものである(第1発明)。
【0010】
前記発明において、前記取付部片は、前記天井部の環状縁部の内側で複数箇所に装着され、閉じ合わせて前記ベッドの枠に固定できる構成であるのがよい(第2発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蚊帳の天井部が使用するベッドの長さ寸法より大きくてベッド幅に対応する寸法の長円形にされてその周縁部(環状縁)に高弾性線条製の保持リングが内包されて、その環状縁部の全周に蚊帳のたれ布が付された構造にされているので、蚊帳を広げると、前記保持リングが骨格となって天井を備えた円筒形になる。そこで、天井部をベッドの上側に配して取付部片によってベッドの前後側板枠に取付けると、保持リングがベッドの前後両側板枠に引き寄せられて蚊帳の天井部が弓なりに彎曲して盛り上がり、天井部の布が緊張し、その状態でたれ布がベッドの周りを囲って保形される。そのたれ布の一部にはファスナーによって開閉できる個所が設けられているので、そのファスナーを開閉して蚊帳の内部に出入でき、骨格である保持リングが取付部片によってベッドの枠に引き寄せられて固定されるので、たれ布を開閉して蚊帳内に出入しても不安定になることはない。
【0012】
本発明によれば、このように構成されるので、別途支持体を準備しなくともベッドに直接支持させて蚊帳を張ることができるので、特にベビーベッド用の蚊帳として体裁よく、簡単に設置でき、骨格となっている高弾性線条(例えばピアノ線)にてなる保持リングがアーチ状に上向き彎曲して外観的にも美観を奏する。もちろん、使用しない場合には、取付部片による固定を解くと、取り外すことができ、後は保持リングをねじって小さなリング状にすることで嵩低く収納できるという利便性を有する。
【0013】
また、第2発明の構成を採用することにより、高弾性線条で形成される保持リングを内包した環状縁の内側において取付部片でベッドの前後側板枠に前記保持リングを引き寄せるようにして固定すれば、高弾性線条、例えばピアノ線による剛弾性力と蚊帳構成布の変形自由性とを利用して、その保持リングが拘束されて天井部をベッド上に合わせた長円形状で、上向きに反らせた円弧状の天井に形成し、蚊帳全体に張りを与え、出入する位置が高い部分になるようにすることで使用時の利便性を高めることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明によるベッド用蚊帳の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0015】
図1には本実施形態のベッド用蚊帳の全体斜視図が示されている。図2には要部の拡大断面図が、図3には取付部片を示す図が、図4には本実施形態のベッド用蚊帳の使用状態における全体斜視図が、それぞれ示されている。
【0016】
本実施形態のベッド用蚊帳1は、ベビーベッド10に装着して使用されるものについて説明する。このベッド用蚊帳1は、天井部2がメッシュ状に編成された布を所要幅の布地で周囲を縫合して長円形にされ、その周囲を取巻く前記布地にてなる環状縁部3に高弾性線条(例えばピアノ線、熱可塑性樹脂をカーボン繊維やガラス繊維で強化して線条に形成されている繊維強化型樹脂)で形成された無端状の保持リング4が内包されで形成されている。そして、前記天井部2の周囲には、所要高さ寸法(使用状態でベビーベッド10の全高よりも長い寸法)で蚊帳布地によるたれ布5が上端部を前記環状縁部3にバイアステープ6を介在させて前記天井部2の布とともに縫合されている。また、前記天井部2の内側環状縁部3に基端を取付けられて取付部片7が設けられている。なお、この蚊帳1の天井部2は、その長径が使用されるベビーベッド10の最大長さよりも長い寸法にされ、短径の寸法がベビーベッド10の幅寸法よりもやや広い寸法にされている。また、前記天井部2は、環状縁部3に内包される保持リング4を中央部が両端部よりも高くなるように所要寸法で全体的に彎曲形成されている。したがって、たれ布5はその保持リング4の彎曲に伴う寸法差に応じて対応する部分を両端部より長くされている。また、たれ布5の裾にはレース地による飾り布5aが全周にわたり縫着されている。
【0017】
前記たれ布5の一部には、ちょうど前記取付部片7によって後述するようにこの蚊帳1をベビーベッド10に装着する際、ベッドの長手方向の一方の側面部に位置するようにして環状縁部3から下端まで、スライドファスナー8が取付けられ、このスライドファスナー8の部分でたれ布5を開いて蚊帳1の内部に出入できるようにされている。
【0018】
前記取付部片7は、前記環状縁部3の内側で基端を縫着された適宜幅の布テープで、その垂下される一方の布テープ7aの表面には面ファスナーのループ片が形成されたものが用いられ、他方の布テープ7bの裏面(内側の面)には面ファスナーの鈎片が多数形成されたものが用いられてセットになっており、このような取付部片7をベッドの前後側板枠11上部に巻掛けて取付けられるように、二条ずつ対向する位置にそれぞれ設けられている。なお、前記両布テープ7a,7bに関しては、通常の布テープにそれぞれループ付きの面ファスナーと鉤片付きの面ファスナーとを必要な範囲に縫着するようにしてもよい。
【0019】
このように構成される本実施形態のベッド用蚊帳1は、広げた状態で使用するベビーベッド10を上側から覆い被せるようにし、その内側で環状縁部3に付されている各取付部片7をそれぞれベビーベッド10の前後側板枠11,11の上側にそれぞれ二組ずつ巻き付けて、一方のループ片を備える布テープ7aに対して他方の鈎片を備える布テープ7bを重ね合わせて接合し、これら取付部片7で側板枠11に取付ける。こうすると、図4で示されるように、長円形をした天井部2が保持リング4を内包する環状縁部3が取付部片7によってベビーベッド10の前後両側板枠11,11上縁に固定されるので、ベッドの全長寸法よりも長くされて天井部2の環状縁部3に内包の高弾性線条で形成された保持リング4が、予め上向きに彎曲されているのをさらに引き寄せられて、その引き絞りによる反力で天井部2全体を緊張させ、ベッドの上側に側面視アーチ状に形成されて保持される。この際、天井部2はメッシュ地の編成布であるから、皺寄ることなく緊張状態を保って保持リング4に対応する。また、たれ布5は環状縁部3に沿って上端部を縫着されているので、無理なくベッド10を取巻いて周囲に垂下され蚊帳が張架される。
【0020】
こうしてベビーベッド10の周りに吊掛けた蚊帳1は、前述のように保持リング4を骨格としてベッドに直接取付け支持されるので、周囲に支持スタンドや天井からの吊下げなどのように余分な支持部を要することなく使用可能な状態とすることができるのである。そして、蚊帳を張架されたベッド内に乳幼児を寝かせ、その世話をするには、たれ布5の一部に環状縁部3から下端まで縫着されているスライドファスナー8を開閉させて蚊帳1の出入り口とすることで、無理なく出入することができる。もちろんファスナーを閉じると外部と遮断することができるので、蚊などの害虫が内部に侵入するのを阻止できて防虫効果並びに外部からのほこりの侵入を防ぐのに役立つ効果が得られる。また、たれ布5は、保持リング4が長円形彎曲状態になってベッドの外形に近づいて垂下するので、ベッドの側枠に対して全体的に添う状態を呈し、ちょうどベッドに沿って周囲を取巻き、違和感を与えない。また、天井部2が中ほどで上向きにアーチを画いた状態を呈しているのでベッドに寝かせている乳幼児を世話するときも、腰をかがめる程度で天井部2が邪魔にならないという利点もある。
【0021】
この蚊帳1の使用が終わって保管するときには、ベビーベッド10の前後側板枠11,11に取付けていた取付部片7の面ファスナーによる接合を解いて、固着を外すと保持リング4に加えられていた絞縮力が解放されるので天井部2が復元されるので、ベッド上から蚊帳全体を取り除く。次いで、図5に示されるように、保持リング4が高弾性線条で形成されているので、その弾性を利用して長円形の保持リング4を引き絞って捻ることにより、まず図中(a)で示すように、この保持リング4を片寄せて一方に小さな円を作るようにして8の字状に曲げ、次いで、図中(b)で示すようにその小さな円に対する大きな円の部分をさらにもうひとしぼりすることで、それら各円環を重ね合わせると図中(c)で示されるように、三重の環に巻くことができる。こうして保持リング4は嵩低くすることができるので、付随する天井部2並びにたれ布5の全体を絞り込んだ状態で嵩低く畳み、予め用意されている収納袋20に収めることで、縮小された保持リング4を保形してコンパクトにまとめて保管することができる。なお、保管されていた本実施形態の蚊帳を再度使用するときには、収納袋から取り出して保持リングに加えていた拘束力を除くと、その保持リングは自動的に復元するので、前記要領で使用できる。
【0022】
以上の説明においては、蚊帳でベビーベッドを包み込んで張架するに際し、ベッドの前後側板枠に対して保持リング(環状縁部)を固定して装着するのに、その保持リングを内包させた環状縁の内側に取付けて使用する構成であるが、このほかに保持リングを内包させた環状縁を外側からベッドの側板枠体に押付けて固定するような金具を用いることも可能である。このような方式についても、本発明の技術的範囲に属することは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本実施形態のベッド用蚊帳の全体斜視図
【図2】要部の拡大断面図
【図3】取付部片を示す図
【図4】本実施形態のベッド用蚊帳の使用状態における全体斜視図
【図5】本実施形態のベッド用蚊帳の収納時の態様を示すイメージ図
【符号の説明】
【0024】
1 ベッド用蚊帳
2 天井部
3 環状縁部
4 保持リング
5 たれ布
7 取付部片
8 スライドファスナー
10 ベビーベッド
11 前後側板枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用するベッドの最大長さ寸法より長い長径とベッドの幅に対応する短径の長円形天井部と、その天井部の周囲に縫込まれた高弾性線条にてなる保持リングと、その保持リングを内包した環状縁部から全周にわたり垂下するたれ布と、そのたれ布の一部を開閉可能にして閉じ合わせるファスナーおよびベッド上側から覆ってベッドの枠に装着する取付部片とで構成されていることを特徴とするベッド用蚊帳。
【請求項2】
前記取付部片は、前記天井部の環状縁部の内側で複数箇所に装着され、閉じ合わせて前記ベッドの枠に固定できる構成である請求項1に記載のベッド用蚊帳。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−110171(P2006−110171A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301861(P2004−301861)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(591172733)株式会社コジット (10)