説明

ベッド装置

【課題】床板体の上面でマットレスが幅方向にずれ動くのを防止したベッド装置を提供することにある。
【解決手段】ベッド本体の上面に設けられる床板体7と、床板体の上面に載置されるマットレス14と、ベッド本体の幅方向の端部に設けられ、マットレスが床板体の上面で幅方向にずれ動くのを阻止するずれ止め手段15を具備し、
ずれ止め手段は、一端部に上面に開口するスリット19が形成された収容部17を有し、収容部をマットレスの幅方向外方に向けて設けられた保持体16と、スリットに通されて収容部に上下方向に移動可能に設けられたずれ防止部材21と、収容部に設けられずれ防止部材の上部がマットレスの幅方向の側面に対向位置するようずれ防止部材を上昇方向に弾性的に付勢したばね24を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は床板体の上面に設けられるマットレスが幅方向にずれ動くのを防止したベッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ベッド装置はベッド本体を有し、このベッド本体には床板体が設けられる。この床板体の上面にはマットレスが載置される。病人や老人などが使用するベッド装置の場合、上記床板体を複数の床部に分割してこれら床部を回動可能に連結する。長手方向中央部に位置する床部はベッド本体に固定し、他の床部は駆動機構によって起伏駆動できるようにした構成の、所謂背上げ式のベッド装置が利用されることが多い。
【0003】
ベッド装置が背上げ式或いはそうでない場合であっても、上記マットレスが上記床板体上で幅方向にずれ動くのを防止するため、上記ベッド本体の幅方向の端部に、上記マットレスの幅方向の側面に係合するずれ防止部材を設けるようにしている。特許文献1にはベッド装置の中央部にマットレスの側面が当接可能なずれ防止部材を設けることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−198352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ベッド本体にずれ防止部材を設ける場合、そのずれ防止部材がマットレスの側面に確実に係合してずれ止め効果を発揮できるよう、その高さ寸法を十分に高くすることが望ましい。
【0006】
しかしながら、ずれ防止部材の高さ寸法を高くすると、利用者がマットレスの幅方向の端部に身体を移動させたり、腰掛けたりすると、マットレスが圧縮変形することで、上記ずれ防止部材が利用者の身体に強く当たることがあり、そのような場合には利用者に不快感を与えるということがあった。
【0007】
この発明は、マットレスがずれ動くのを確実に防止することができるよう、ベッド本体にずれ防止部材を有するずれ止め手段を設けた場合、利用者がマットレスの端部に身体を移動させたり、腰掛けるなどしてマットレスが圧縮変形しても、利用者にずれ防止部材が強く当たって不快感を与えるということがないようにしたベッド装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、ベッド本体と、
このベッド本体の上面に設けられる床板体と、
この床板体の上面に載置されるマットレスと、
上記ベッド本体の幅方向の端部に設けられ、上記マットレスが上記床板体の上面で幅方向にずれ動くのを阻止するずれ止め手段を具備し、
上記ずれ止め手段は、
一端部に上面に開口するスリットが形成された収容部を有し、この収容部を上記マットレスの幅方向外方に向けて設けられた保持体と、
上記スリットに通されて上記収容部に上下方向に移動可能に設けられたずれ防止部材と、
上記収容部に設けられ上記ずれ防止部材の上部が上記マットレスの幅方向の側面に対向位置するよう上記ずれ防止部材を上昇方向に弾性的に付勢した付勢部材と
を具備したことを特徴とするベッド装置にある。
【0009】
上記ベッド本体は、長手方向の端部の幅寸法が中央部の幅寸法よりも大きく設定され、上記床板体の幅寸法は上記ベッド本体の長手方向両端部の幅寸法よりも小さく、かつ中央部の幅寸法よりも大きく設定され、上記マットレスの幅寸法は上記床板体の幅寸法よりも大きく、かつ上記ベッド本体の長手方向両端部の幅寸法よりも小さく設定されていて、
上記ずれ止め手段は、上記保持体の上面によって上記マットレスの長手方向中央部の上記床板体の幅方向の端部から外方へ突出した部分の下面を支持するよう上記ベッド本体の長手方向の中央部に設けられていることが好ましい。
【0010】
上記ベッド本体の長手方向の端部の幅方向の側部には側柵が着脱可能に設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、ベッド本体に設けられるずれ止め手段を、収容部を有する保持体、及び上記収容部の上面に開口して形成されたスリットに上下方向に移動可能かつばねによって上昇方向に弾性的に付勢して設けられ上昇したときにマットレスの側面に対向位置するずれ防止部材によって構成した。
【0012】
そのため、上記マットレスは床板体上で幅方向にずれ動くのが防止され、しかも利用者が身体を移動させたり、マットレスの端部に腰掛けるなどしてマットレスが圧縮され手上記ずれ防止部材が利用者の身体に当たると、このずれ防止部材はばねの付勢力に抗して下方へ弾性的に変位するから、利用者の身体に強く当たって不快感を与えることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施の形態を示すベッド装置の正面図。
【図2】図1に示すベッド装置の平面図。
【図3】ずれ防止手段の保持体を示す正面図。
【図4】上記保持体を示す平面図。
【図5】ずれ止め手段が設けられた固定床部の端部を示す断面図。
【図6】ずれ止め手段のずれ防止部材が下方へ変位した状態を示す固定床部の端部の断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1はベッド装置の正面図であり、図2は平面図である。このベッド装置はベッド本体1を備えている。このベッド本体1は図1に示すように複数の脚体2によって所定の高さで水平に支持されている。このベッド本体1の長手方向一端にはヘッドボード3が設けられ、他端にはフットボード4が設けられている。
【0016】
上記ベッド本体1の長手方向中途部は幅方向内方に凹んだ凹部6に形成されている。それによって、上記ベッド本体1の長手方向の放棄ヘッドボード3側に位置する一端部3aと上記フットボード4側に位置する他端部4aの幅寸法は、幅方向両側に凹部6が形成された中央部の幅寸法よりも大きくなっている。
【0017】
上記ベッド本体1の上面には床板体7が設けられる。この床板体7は複数の床部、この実施の形態では5つの各床部7a〜7eに分割されている。中央に位置する固定床部7cは上記ベッド本体1に固定され、この固定床部7cの上記ヘッドボード3側を向いた一側には腰床部7bと背床部7aが順次回動可能に連結されている。上記固定床部7cの他端には第1の脚床部7dと第2の脚床部7eが順次回動可能に連結されている。
【0018】
上記ベッド本体1の下面側には駆動機構9が設けられている。この駆動機構9は上記背床部7a、腰床部7b、第1の脚床部7d及び第2の脚床部7eを起伏駆動するようになっている。
【0019】
上記床板体7の幅寸法は上記ベッド本体1の長手方向中央部の幅寸法よりも大きく、長手方向一端部3aと他端部4aの幅寸法よりも小さく設定されている。
【0020】
上記ベッド本体1の長手方向一端部3aと他端部4aの幅方向両側上面には、図2に示すように側崎11を着脱可能に支持することができる各一対の取付け孔12が開口形成されている。そして、上記ベッド本体1の4箇所に形成された各一対の取付け孔12のうち、たとえば上記一端部3aの幅方向一側に上記側柵11が着脱可能に取り付けられている。
【0021】
それによって、上記側柵11と、この側柵11が設けられた部位に位置する背床部7aの幅寸法の差によって図2にdで示す隙間が形成される。この隙間dによって可動部材である背床部7aが起上方向に駆動されたとき、背床部7aの幅方向の端部と側柵11内面との間に利用者の身体、たとえば手などが強く挟まるのを防止されるようになっている。
【0022】
なお、側柵11をベッド本体1の一端部3aの幅方向他端部や長手方向他端部4aの側部に設けた場合にも、同様の隙間dが形成されて、側柵11と背床板7aや第2の客部材7eとの間に身体が強く挟まるのが防止されるようになっている。
【0023】
上記背床部7aと腰床部7b、及び第1の脚床部7dと第2の脚床部7eは、上記駆動機構9によって回動駆動される一対の回動レバー9a(図1に背側に位置する一方の回動レバー9aだけを図示)によって起伏駆動される。
【0024】
そのため、上記駆動機構9によって各床部が下降方向に駆動されるとき、その床部の下面或いは床部と側柵11との間などに身体や物などが挟まれても、床部は上昇方向に自由に変位するから、挟み込まれた身体などが強く圧迫されることがない。
【0025】
上記床板体7の上面には、図1と図2に鎖線で示すウレタンやファイバーなどの材料によって折り曲げ可能に構成されたマットレス14が載置される。このマットレス14の幅寸法は、上記床板体7の幅寸法よりも大きく、上記ベッド本体1の一端部及び他端部4aの幅寸法よりも小さく設定されている。
【0026】
上記ベッド本体1の長手方向中央部の幅方向両側にはそれぞれずれ止め手段15が設けられている。このずれ止め手段15は、図3乃至図6に示すように保持体16を有する。この保持体16は前後方向の一端部に中空状の収容部17が形成され、この収容部17の上面からは前後方向の他端部に向かって上記上面と同じ高さで取付け片18が延出されている。図4に示すように、取付け片18は上記収容部17よりも幅寸法が短く設定されている。
【0027】
上記収容部17の上面には幅方向略全長にわたってスリット19が開口形成されているこのスリット19には板状で、上端が凸状の円弧に湾曲したずれ防止部材21が上下方向に移動可能に通されている。上記ずれ防止部材21の上記収容部17内に位置する下端部の幅方向両端部に一側面には、下面が開放した袋状の第1の保持部22が設けられている。
【0028】
一対の第1の保持部22に対向する上記収容部17の内底部には上面が開放した袋状の一対の第2の保持部23(図5と図6に示す)が設けられている。対向する各組の第1、第2の保持部23には付勢部材としてのばね24の両端部が収容保持されている。
【0029】
上記ばね24は、上記ずれ防止部材21を上昇方向に弾性的に付勢している。それによって、上記ずれ防止部材21は上端部を上記スリット19から突出させている。ばね24によって上昇方向に付勢されたずれ防止部材21はマットレス14の側面に対向位置するようになっている。
【0030】
図5に示すように、上記ずれ防止部材21の第1の保持部22が収容部17の上壁内面に設けられたストッパ25に当たる上昇限まで上昇したとき、上記ずれ防止部材21の上端はマットレス14の厚さの約3分の2の高さに位置するようになっている。
【0031】
なお、ずれ防止部材21が上昇限間で上昇したときの上端の高さ位置は、マットレス14の厚さの3分の2に限られず、それ以上或いはそれ以下であってもよいが、マットレス14の上面よりも低い位置にあることが望ましい。
【0032】
また、上記ずれ防止部材21は、上昇限で上記第1の保持部22が上記収容部17の上壁内面に設けられたストッパ25に当たることで、上記スリット19から抜出するのが阻止されている。
【0033】
そして、上記構成のずれ止め手段15の保持体15は、図5と図6に示すように上記取付け片18を上記床板体7の固定床部7cの幅方向端部の上面に図示しないねじなどによって固定されて設けられる。
【0034】
それによって、上記保持体16の上記収容部17は図2に示すように上記ベッド本体1の凹部6に位置し、マットレス14の上記凹部6に位置する部分の下面は、図5と図6に示すように上記保持体16の上面の上記スリット19よりも内方の部分によって支持される。
【0035】
なお、上記ずれ止め手段15の保持体16は、床板体7の固定床部7cの上面に取り付けたが、ベッド本体1の上面、つまり固定床部7cの下面に取り付けるようにしてもよい。要は、上記保持体16はベッド本体1の直接或いは間接的に取り付けるようにすればよい。
【0036】
また、上記収容部17のスリット19から突出したずれ防止部材21は上記マットレス14の上記凹部6に位置する部分の側面に接触或いはわずかな間隔で対向することで、上記マットレス14が上記床板体7の上面で幅方向にずれ動くのを規制している。
【0037】
このような構成のベッド装置によれば、床板体7の上面に載置されたマットレス14は、その長手方向の中央部の幅方向両側面に対向位置する一対のずれ防止部材21によって幅方向にずれ動くのが制限される。
【0038】
したがって、背床部7aと越す床部7b或いは第1、第2の脚床部7d,7eなどを起伏駆動したり、上記マットレス上に利用者が載り降りするなどしても、上記マットレス14が床板体7の上面で幅方向にずれ動くのが防止される。
【0039】
一対のずれ防止部材21はばね24によって上昇方向に弾性的に付勢され、保持体16の収容部17の上面のスリット19から突出している。ずれ防止部材21の突出高さは図5に示すようにマットレス14の上面よりも低い位置にあるものの、マットレス14の幅方向の端部に利用者が身体を移動させたり、その端部に腰掛けたりしてマットレス14の端部が図6に矢印Lで示すように利用者の身体の重さによって圧縮されると、上記ずれ防止部材21が利用者の身体に当たることになる。
【0040】
上記ずれ防止部材21が利用者の身体に当たって押圧されると、このずれ防止部材21はばね24を圧縮させながら下方へ変位する。それによって、上記ずれ防止部材21の上端が利用者の身体を強く押圧するのが防止されるから、利用者に不快感や違和感を与えるのが抑制される。
【0041】
すなわち、上記構成のずれ止め手段15によれば、利用者に不快感を与えることなく、床板体7上に載置されたマットレスが幅方向にずれ動くのを防止することができる。
【0042】
上記ベッド本体1の長手方向中央部の幅方向両側には凹部6が形成されている。この凹部6に介護者が身体を位置させることで、マットレス14上に仰臥した利用者に近付くことができるから、利用者の介護がし易くなるということがある。
【0043】
一方、床板体7の起伏駆動される部分と側柵11との間に身体などが挟み込まれるのを防止するために、マットレス14の幅寸法をベッド本体1の幅寸法よりも大きくしたことで、上記マットレス14の幅方向の両端部が床板体7よりも幅方向外方へ突出している。そのため、マットレス14の突出部分の上面に荷重が加わると、下方へ撓み易いということがある。とくに、ベッド本体1の幅方向中央部の両側は他の部分よりも幅寸法が小さい凹部6に形成されているため、マットレス14の支持状態が確実でないということがある。
【0044】
しかしながら、上記マットレス14の長手方向中央部の幅方向両端部に位置する部分の下面は、上記ずれ止め手段15の収容部17の上面によって支持される。そのため、上記マットレス14の上記凹部6に対応する部分が下方へ撓み難くなるから、利用者が長手奉公の中央部の側部からマットレス14に載り降りしたり、その側部に手を着いたりしたときなどの安定性を向上させることができる。
【0045】
上記一実施の形態では床板体が複数の床部に分割され、駆動機構によって起伏駆動される構成のベッド装置を例に挙げて説明したが、ベッド本体に設けられる床板体が起伏駆動されることのない構造の場合であっても、この発明のずれ防止手段を適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…ベッド本体、6…凹部、7…床板体、7a〜7e…床部、9…駆動機構、11…側柵、14…マットレス、15…ずれ防止部材、24…ばね(付勢手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド本体と、
このベッド本体の上面に設けられる床板体と、
この床板体の上面に載置されるマットレスと、
上記ベッド本体の幅方向の端部に設けられ、上記マットレスが上記床板体の上面で幅方向にずれ動くのを阻止するずれ止め手段を具備し、
上記ずれ止め手段は、
一端部に上面に開口するスリットが形成された収容部を有し、この収容部を上記マットレスの幅方向外方に向けて設けられた保持体と、
上記スリットに通されて上記収容部に上下方向に移動可能に設けられたずれ防止部材と、
上記収容部に設けられ上記ずれ防止部材の上部が上記マットレスの幅方向の側面に対向位置するよう上記ずれ防止部材を上昇方向に弾性的に付勢した付勢部材と
を具備したことを特徴とするベッド装置。
【請求項2】
上記ベッド本体は、長手方向の端部の幅寸法が中央部の幅寸法よりも大きく設定され、上記床板体の幅寸法は上記ベッド本体の長手方向両端部の幅寸法よりも小さく、かつ中央部の幅寸法よりも大きく設定され、上記マットレスの幅寸法は上記床板体の幅寸法よりも大きく、かつ上記ベッド本体の長手方向両端部の幅寸法よりも小さく設定されていて、
上記ずれ止め手段は、上記保持体の上面によって上記マットレスの長手方向中央部の上記床板体の幅方向の端部から外方へ突出した部分の下面を支持するよう上記ベッド本体の長手方向の中央部に設けられていることを特徴とする請求項1記載のベッド装置。
【請求項3】
上記ベッド本体の長手方向の端部の幅方向の側部には側柵が着脱可能に設けられることを特徴とする請求項1記載のベッド装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−194180(P2010−194180A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44438(P2009−44438)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000010032)フランスベッド株式会社 (95)