説明

ベビーカー

【課題】展開状態から折り畳み状態へ折り畳み可能なベビーカーの剛性を改善する。
【解決手段】ベビーカー10は、アームレスト28と、アームレストに回動可能に連結された前脚22および後脚24と、アームレストに回動可能に連結された第1リンク40と、前脚および第1リンクにそれぞれ回動可能に連結された第2リンク45と、後脚24および第1リンク40にそれぞれ回動可能に連結された第3リンク50と、を有する。展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、第3リンクは、第1リンクとの連結箇所Paと後脚との連結箇所Pbとの間において、後方に突出する屈曲した形状となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開状態から折り畳み状態へ折り畳み可能な折り畳み式ベビーカーに係り、とりわけ高剛性のベビーカーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乳幼児を乗車させるベビーカーが公知である。特許文献1に開示されているように、今日使用されているベビーカーのほとんどは、構成要素間が回動可能に連結されるとともにリンク材を適宜組み込まれ、展開状態から折り畳み状態へと折り畳むことが可能に構成されている。特許文献1に開示されたベビーカーでは、側面視において前脚とハンドルとが接近するように折り畳むことが可能となっており、折り畳むことによってベビーカーの前後方向における寸法を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−063097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ベビーカーの構成要素間を回動可能に連結すると、ベビーカーを保管等に適したサイズに折り畳みことが可能となるが、ベビーカーの剛性が低下してしまう。ベビーカーの剛性が低下すると、走行中や折り畳み操作中のベビーカーに歪みが生じてしまう。走行中のベビーカーに歪みが生じると、ベビーカーの操縦性が悪化し、同様に、折り畳み操作中のベビーカーに歪みが生じると、ベビーカーの折り畳みを円滑に行うことができなくなる。
【0005】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、折り畳み可能なベビーカーの剛性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるベビーカーは、
展開状態から折り畳み状態へ折り畳み可能なベビーカーであって、
アームレストと、
前記アームレストに、その上方部分を回動可能に連結された前脚および後脚と、
前記アームレストの後方部分に回動可能に連結された第1リンクと、
前記前脚の中間部分および前記第1リンクの下方部分にそれぞれ回動可能に連結された第2リンクと、
前記後脚の中間部分および前記第1リンクの下方部分にそれぞれ回動可能に連結された第3リンクと、を備え、
展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクは、前記第1リンクとの連結箇所と前記後脚との連結箇所との間において、後方に突出する屈曲した形状となっている。
【0007】
本発明によるベビーカーにおいて、展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクは、前記第1リンクとの連結箇所から後方に延び出て、その後屈曲して、前記後脚との連結箇所まで下方に延びるようにしてもよい。
【0008】
本発明によるベビーカーにおいて、展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクおよび前記後脚によって囲まれる隙間が形成されていてもよい。
【0009】
本発明によるベビーカーにおいて、展開状態において、第1リンクが後脚に当接し、展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、第1リンクと第3リンクとの連結箇所から前記第3リンクと前記後脚との連結箇所までの前記第1リンクおよび前駆後脚と、第1リンクと第3リンクとの連結箇所から前記第3リンクと前記後脚との連結箇所までの第3リンクと、の間に隙間が形成されるようにしてもよい。
【0010】
本発明によるベビーカーにおいて、前記第3リンクは、前記第1リンクに枢着されたリンク本体部と、前記リンク本体部と前記後脚との間をベビーカーの幅方向に延びるボス部と、を有し、前記第3リンクは、前記ボス部にて前記後脚に枢着されていてもよい。このような本発明によるベビーカーにおいて、前記第1リンクへの連結箇所におけるベビーカーの幅方向に沿った前記リンク本体部の厚みは、ベビーカーの幅方向に沿った前記ボス部の長さと、前記ボス部が設けられている箇所におけるベビーカーの幅方向に沿った前記リンク本体部の厚みと、の合計と略同一となるようにしてもよい。
【0011】
本発明によるベビーカーが、前記第1リンクに揺動可能に連結されたハンドルを、さらに備え、前記第3リンクは、ベビーカーの幅方向において前記第1リンクと前記ハンドルとの間に配置されており、前記第1リンクへの連結箇所におけるベビーカーの幅方向に沿った前記第3リンクの厚みは、ベビーカーの幅方向に沿った前記第1リンクと前記ハンドルとの間の隙間の幅と略同一となるようにしてもよい。
【0012】
本発明によるベビーカーにおいて、折り畳み状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクの屈曲した箇所から前記後脚への連結箇所までの部分は、前記後脚に沿って延びるようにしてもよい。
【0013】
本発明によるベビーカーが、前記第1リンクに揺動可能に連結されたハンドルをさらに備えるようにしてもよい。或いは、本発明によるベビーカーにおいて、前記第1リンクが上方に延び出てハンドルを構成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ベビーカーの折り畳み操作を可能にするためのリンク材として機能する第3リンクによって、ベビーカーの剛性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態を説明するための図であって、展開状態にあるベビーカーを示す斜視図である。
【図2】図2は、ハンドルが後方位置(背面押し位置)に配置された展開状態にあるベビーカーを示す側面図である。
【図3】図3は、折り畳み状態にあるベビーカーを示す側面図である。
【図4】図4は、ハンドルが前方位置(対面押し位置)に配置された展開状態にあるベビーカーを示す部分側面図である。
【図5】図5は、ハンドルが後方位置(背面押し位置)に配置された展開状態にあるベビーカーを示す部分斜視図である。
【図6】図6は、折り畳み状態にあるベビーカーを示す部分斜視図である。
【図7】図7は、図1に対応する図であって、ベビーカーの一変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜図6は本発明によるベビーカーの一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1〜図3には、ベビーカーの全体構成が示されている。ベビーカー10は、広く普及しているように(例えば、特開2005−082082号公報や特開2006−117012号公報)折り畳み可能に構成されており、図1および図2に示された展開状態から図3に示された折り畳み状態へ折り畳むことができ、また、折り畳み状態から展開状態へと展開することができる。加えて、本実施の形態のベビーカー10においては、ハンドル15をベビーカー10の本体フレーム12に対して揺動させることにより、操作者(保護者)が乳幼児の背面側からハンドル15を把持してベビーカー10を操縦し、乳幼児が進行方向の前方を向くようにしてベビーカー10を走行させること、並びに、操作者が乳幼児に対面する前脚側の位置からハンドル15を把持してベビーカー10を操縦し、ベビーカー10の後脚側が進行方向の前方となるようにしてベビーカー10を走行させること、の両方が可能となっている。
【0017】
ここで、本明細書中において、ベビーカーに対する「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」の用語は、特に指示がない場合、展開状態にあるベビーカー10に乗車する乳幼児を基準とした「前」、「後」、「上」、「下」、「前後方向」、および「上下方向」を意味する。さらに詳しくは、ベビーカー10の「前後方向」とは、図1における紙面の左下と右上とを結ぶ方向であって、図2における紙面の左右の方向に相当する。そして、特に指示がない限り、「前」とは、乗車した乳幼児が向く側であり、図1における紙面の左下側並びに図2における紙面の左側がベビーカー10の前側となる。一方、ベビーカー10の「上下方向」とは前後方向に直交するとともに接地面に直交する方向である。したがって、接地面が水平面である場合、「上下方向」とは垂直方向をさす。また、「幅方向」とは横方向であって、「前後方向」および「上下方向」のいずれにも直交する方向である。
【0018】
まず、ベビーカーの全体構成から説明する。図1に示すように、本実施の形態におけるベビーカー10は、全体的に、前後方向に沿った幅方向中心面を中心として概ね対称な構成となっている。図1および図2に示すように、ベビーカー10は、フレームを構成するベビーカー本体11と、ベビーカー本体11に装着されたシート90、かご93および幌95と、を有している。ベビーカー本体11は、本体フレーム12と、本体フレーム12に揺動可能に取り付けられたハンドル15と、を有している。本体フレーム12は、それぞれ左右に配置された一対の前脚22と、それぞれ左右に配置された一対の後脚24と、それぞれ左右に配置された一対のアームレスト28と、それぞれ左右に配置された一対の第1〜3リンク40,45,50と、を有している。前脚22の下端には、前輪23が設けられ、後脚24の下端には、後輪25が設けられている。
【0019】
前脚22の上端部分は、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト28の前方部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。同様に、後脚24の上端部分が、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト28の前方部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。また、第1リンク40の上方部分、とりわけ図示する例では上方部分のうちの上端部分が、対応する側(左側または右側)に配置されたアームレスト28の後端部分に回動可能(揺動可能)に接続されている。
【0020】
左側の第2リンク45は、左側の前脚22と左側の第1リンク40とを連結し、右側の第2リンク45は、右側の前脚22と右側の第1リンク40とを連結している。各第2リンク45は、その前方部分を前脚22の中間部分に回動可能に接続され、その後方部分を第1リンク40の下方部分、とりわけ図示する例では下方部分のうちの下端部分に回動可能に接続されている。なお、図示する例において、第2リンク45は、金属製の本体バー46aと、本体バー46aの後端に設けられた板状取り付け部材46bと、本体バー46aの前端に設けられたカバー部材46cと、を有している。この第2リンク45は、板状取り付け部材46bにおいて第1リンク50と回動可能に連結され、カバー部材46cにおいて前脚22と回動可能に連結されている。
【0021】
また、左側の第3リンク50は、左側の後脚24と左側の第1リンク40とを連結し、右側の第3リンク50は、右側の後脚24と右側の第1リンク40とを連結している。各第3リンク50は、その一部分において後脚24の中間部分に回動可能(揺動可能)に接続され、他の部分において第1リンク40の下方部分、とりわけ図示する例では下方部分のうちの下端部分に回動可能に接続されている。図2および図4によく示されているように、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50は、第1リンク40との連結箇所Paと後脚24との連結箇所Pbとの間において、後方に突出する屈曲した形状を有している。第3リンク50については、後に詳述する。
【0022】
さらに、本実施の形態におけるベビーカー10の本体フレーム12は、幅方向に延びる構成要素として、一対の前脚22間を連結するフットレスト(前側連結バー)32と、一対の第2リンク45を連結する上側連結バー(図示せず)と、一対の後脚24間を連結する後側連結バー34と、を有している。また、一対のアームレスト28間に屈曲可能なガード部材36が取り外し可能に設けられている。
【0023】
以上のような構成からなるベビーカー本体11の本体フレーム12に対し、ハンドル15が揺動可能に接続されている。図1に示すように、本実施の形態において、ハンドル15は、互いに略平行に延びる略直線状の一対の直線部16aと、一対の直線部16a間を連結する中間部16bと、を含み、全体として略U字状の形状を有している。ハンドル15は、U字の両端部分を対応する側の第1リンク40に対して回動可能(揺動可能)に連結されている。
【0024】
なお、図示された本実施の形態では、一本の軸部材39が、ハンドル15および第1リンク40を貫通して、これらを回動可能に保持している。また、この軸部材39は、第2リンク45の板状取り付け部材46bおよび第3リンク50をも貫通して、第2リンク45および第3リンク50を回動可能に保持している。すなわち、図示された本実施の形態においては、ハンドル15の第1リンク50に対する回動軸線(揺動中心)は、第3リンク50と第1リンク40との回動軸線、および、第1リンク40と第2リンク45との回動軸線と一致しており、ベビーカーの幅方向(横方向)に延びている。このような構成により、図2および図3に示すように、ハンドル15が、フレーム本体12に対して揺動し、ハンドル15の直線部16aはアームレスト28の側方をアームレスト28に沿って移動するようになる。
【0025】
アームレスト28の側方を移動可能なハンドル15の一対の直線部16a上には、直線部16aに対して摺動可能な摺動部材19が、それぞれ設けられている。各摺動部材19は、ハンドル15の対応する直線部16a上において、直線部16a内に設けられたバネ(図示せず)により、下方(U字の端部の方)に向けて付勢されている。一方、図2に示すように、ベビーカー10には、一対の摺動部材19とそれぞれ係合してハンドル15の回動を規制する一対の第1係合部(第1係合突起)26aおよび一対の第2係合部(第2係合突起)26bが、設けられている。前方に設けられた第1係合突起26aと摺動部材19とが係合し互いに係止されることにより、図2に二点鎖線で示すように、ハンドル15が前方位置(対面押し位置)に固定される。一方、後方に設けられた係合突起26bと摺動部材19とが係合し互いに係止されることにより、図2に実線で示すように、ハンドル15が後方位置(背面押し位置)に固定される。図示された例において、第1係合突起26aはアームレスト28に設けられ、第2係合突起26bは第1リンク40に設けられている。
【0026】
また、ハンドル15は、その直線部16a上に摺動可能に設けられた操作部材18と、その中間部16a上に設けられ摺動部材18の摺動を遠隔操作可能な遠隔操作装置18aと、を有している。展開状態にあるベビーカー10においてハンドル15が後方位置(背面位置)に配置されると、ハンドル15上の摺動部材18は、第1リンク40上に摺動可能に設けられたロック部材41に下方から当接するようになる。各ロック部材41は、第1リンク40上において、第1リンク40内に設けられたバネ(図示せず)により、下方(U字の端部の方)に向けて、言い換えると、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所に向けて、付勢されている。そして、ベビーカーが展開状態または折り畳み状態にある場合に、ロック部材41は第3リンク50と係合して、第3リンク50と第1リンク40との相対的な回動を拘束する。これにより、ベビーカー10が、展開状態または折り畳み状態に保持されるようになる。
【0027】
以上のような構成からなるベビーカー10のベビーカー本体11には、図1および図2に示すように、座部91aおよび背部91bを有したシート90が装着されている。シート90の座部91aは、例えば第2リンク45や一対の第2リンク45の間を延びる上側連結バー(図示せず)によって、支持される。一方、シート90の背部91bは、例えば第2リンク45の板状取り付け部材46bに回動可能に連結された背枠(図示せず)によって、支持される。また、図1および図2に示すように、ベビーカー本体11には、かご93および幌95がさらに設けられている。かご93は、例えば第2リンク45によって支持され、幌95は、第1リンク40の上方部分に取り付けられる。なお、シート90、かご93および幌95は、図1および図2のみにおいて示されており、その他の図面では省略されている。
【0028】
以上のような全体構成を有したベビーカー10(ベビーカー本体11)は、以下のようにして、各構成部材を互いに回動させることにより、折り畳むことができる。
【0029】
ハンドル15が前方位置(図2の二点鎖線の位置)に配置されている場合には、まず、ハンドル15をベビーカー本体11の本体フレーム12に対して揺動させて、ハンドル15を後方位置(図2の実線の位置)へ移動させる。そして、後方位置に配置されたハンドル15上の摺動部材19とベビーカー本体11の第1リンク40上の第2係合部26bとの係合により、ハンドル15をベビーカー10に対して固定する。このとき、その下端部分において第1リンク40に揺動可能に接続されたハンドル15は、摺動部材19と第2係合部26bとの係合によって、第1リンク40に対して固定されるようになる。そして、以下の折り畳み操作中、側面視において、すなわち、ベビーカー10の幅方向から観察した場合、ハンドル15の下方部分は、第1リンク40と同一の動作を行うようになる。
【0030】
次に、遠隔操作装置18aを操作することによって、第1リンク40と第2リンク45とのロック部材41を介した係合を解除する。具体的には、遠隔操作装置18aによって摺動部材18を動作させ、同時に、摺動部材18を介して第1リンク40上のロック部材41を動作させ、第1リンク40の第3リンク50に対する固定、さらには、第1リンク40の他の構成要素に対する固定を解除する。なおこのとき、ベビーカー10は展開状態にあり、第1リンク40および第3リンク50の少なくとも一方が、後脚24に当接している。図示された例では、第1リンク45の下端部分が後脚24の中間部分に当接している。
【0031】
この状態から、後方位置に配置されたハンドル15をいったん後上方に引き上げ、その後、下方に押し下げる。この際、上述したように、第1リンク40は、ハンドル15とともに動作する。これにより、第1リンク40および第3リンク45が後脚24から離間し、第3リンク50は、後脚24に対し図2において時計回り方向に回動する。この操作にともなって、アームレスト28および第2リンク45は第1リンク40に対し図2において時計回り方向に回動する。このような操作により、ベビーカーの幅方向から観察した場合(側面視において)、ハンドル15が前脚22との略平行な関係を保ちながら前脚22に接近するように移動し、前後方向におけるベビーカー10の寸法が小型化される。また、図3に示すように、ベビーカー10を前後方向へ折り畳むと、ハンドル15と前脚22とが略平行に保たれたまま、ハンドル15の配置位置が下げられるようになる。この結果、ベビーカー10の前後方向における寸法だけでなく、ベビーカー10の上下方向における寸法も小型化することができる。
【0032】
一方、ベビーカー10(ベビーカー本体11)を折り畳み状態から展開するには、上述した折り畳み操作と逆の操作を行えばよい。
【0033】
ところで、構成要素間が回動可能に連結されたベビーカーにおいては、剛性が低下し、走行中、折り畳み操作中、展開操作中等に外力が加えられると、歪みが生じ得る。とりわけ、ベビーカーを走行させる際、操作者(保護者)はハンドルを把持してベビーカーを操縦し、ベビーカーを折り畳む際や展開する際も、操作者はハンドルを把持してベビーカー10を操作する。したがって、ハンドルと他の構成要素との連結箇所近傍に、ハンドルを介して操作者からの力が加えられやすくなる。そして、ハンドルと他の構成要素との連結箇所近傍では、本実施の形態で説明したベビーカーもそうであるように、多くの構成要素(リンク材)が連結される傾向があり、ベビーカーの全体的な歪みの原因となる構成要素間のずれやねじれ等が生じやすくなる。ベビーカーに歪みが生じると、ベビーカーの操縦性が悪化し、ベビーカーの折り畳みおよび展開を円滑に行うこともできなくなる。
【0034】
その一方で、ここで説明するベビーカーにおいては、第3リンク50が次に説明するように構成されており、ベビーカー10の剛性を向上させ、ベビーカー10に歪みが生じてしまうことを効果的に抑制することができる。
【0035】
まず、図4によく示されているように、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50は、第1リンク40との連結箇所Paと後脚24との連結箇所Pbとの間において、後方に突出する屈曲した形状となっている。言い換えると、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50が、屈曲箇所53を含むL字状に形成されており、屈曲箇所53を挟んで配置された第1部分51および第2部分52から構成されている。そして、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50の屈曲箇所53が、第3リンク50および第1リンク40の連結箇所Paと第3リンク50および後脚24の連結箇所Pbとを結ぶ線分よりも、後方に位置している。
【0036】
このような構成によれば、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paに加えられる力を、後脚24によって前方から受けることができるとともに第3リンク50によって後方から受けることもできる。とりわけ、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paに加えられる力の向きによらず、後脚24および第3リンク50の一方が圧縮力を受け他方が引っ張り力を受けることになる。すなわち、力を分散して受けることが可能となるだけでなく力を安定して受けることも可能となり、これにより、ベビーカー10の走行時やベビーカー10の折り畳み又は展開操作時にベビーカー10に種々の力が加えられたとしても、ベビーカー10への歪みの発生を効果的に抑制することができる。このようにベビーカー10の剛性が向上すると、ベビーカー10を押して走行させる際の操縦性が向上し、同様に、ベビーカー10を折り畳む際および展開する際の操作性が向上する。
【0037】
ここで、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paには、操作者からハンドル15を介してベビーカー10に加えられる力、例えば、ベビーカー10を走行させる際にベビーカー10に加えられる力やベビーカー10を折り畳む際にベビーカー10に加えられる力が、集中的に加えられやすい箇所である。とりわけ、本実施の形態にように、第1リンク40および第3リンク50を枢着するための軸部材39によって、ハンドル15が第1リンク40および第3リンク50に連結されている場合には、ハンドル15を介した力は、まずは、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paに集中的に付加されることになる。したがって、第3リンク50によれば、ハンドル15を介して付加される力に起因したベビーカー10の歪みの発生を効果的に抑制することができ、ベビーカー10の操作者は直接的に操縦性や操作性の向上を感じ取ることができる。
【0038】
なお、特許文献1に開示されているように、従来、展開状態において後脚に沿って延びるリンク材は存在したが、このような従来のリンク材を用いた場合、ハンドルに加えられる力の向きに応じて、大きな歪みがベビーカーに生じていた。そして、ここで説明した本実施の形態によるベビーカー10によれば、従来のベビーカーと比較して、剛性を大幅に向上させることができ、ベビーカー10の操縦性や操作性を著しく改善することができる。
【0039】
また、図4に示すように、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50は、第3リンク50は、第1リンク40との連結箇所Paから後方に延び出て、その後屈曲して、後脚24との連結箇所Pbまで下方に延びている。言い換えると、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paを含む第3リンク50の第1部分51が、当該連結箇所Paから後方に延びており、第3リンク50と後脚24との連結箇所Pbを含む第3リンク50の第2部分52が、当該連結箇所Pbから上方に延び出ている。このような構成によれば、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paに後方へ向けて加えられる力を、第3リンク50によってより安定して受けることができ、このような力に起因した歪みの発生を効果的に防止することができる。
【0040】
さらに、図4に示すように、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50と後脚24との間に隙間Sが形成されている。図4に示すように、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合、この隙間Sは、第3リンク50と後脚24とによって囲まれている。このような構成によれば、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paに加えられる力を、より効果的に分散させて受けることが可能となる。結果として、ベビーカー10への歪みの発生を極めて効果的に防止し、ベビーカー10の剛性を向上させることできる。
【0041】
とりわけ、本実施の形態では、展開状態において、第1リンク40の下端領域が後脚24に当接するようになる。そして、より厳密に説明すると、展開状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、この隙間Sは、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paから第3リンク50と後脚24との連結箇所Pbまでの第1リンク40および後脚24と、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paから第3リンク50と後脚24との連結箇所Pbまでの第3リンク50と、の間に形成されている。このような構成によれば、第1リンク40と第3リンク50との連結箇所Paに加えられる力を、より確実に分散させて受けることが可能となり、ベビーカー10の剛性を向上させる上で非常に都合が良い。
【0042】
さらに、図5および図6によく示されているように、第3リンク50は、第1リンク40に枢着されたリンク本体部50と、リンク本体部55と後脚24との間をベビーカーの幅方向に延びるボス部(突出部)59と、を有している。そして、第3リンク50は、ボス部59にて後脚24に枢着されており、ボス部59は、第3リンク50の後脚24に対する回動軸線と平行に延びている。すなわち、第3リンク50が、ベビーカー10の幅方向に延びるボス部59を介して後脚24に連結しているため、第3リンク50のリンク本体部55は、ベビーカー10の幅方向に沿って後脚24から離間している。このような構成によれば、第3リンク50の後脚24に対する回動軸線が傾いてしまうことや、ベビーカー10の幅方向への歪みの発生を、効果的に防止することができる。すなわち、ベビーカー10の幅方向への外力に対する優れた剛性がベビーカー10に付与されることになる。
【0043】
そしてさらに、図5および図6に示すように、第1リンク40への連結箇所Paにおけるベビーカー10の幅方向に沿ったリンク本体部55の厚みは、ベビーカー10の幅方向に沿ったボス部59の長さと、ボス部59が設けられている箇所におけるベビーカー10の幅方向に沿ったリンク本体部55の厚みと、の合計と略同一である。このような構成によれば、ハンドル15から加えられる外力に起因したベビーカー10の幅方向への歪みの発生を極めて効果的に防止することができる。
【0044】
加えて、本実施の形態では、上述したように、ハンドル50が、第1リンク40に揺動可能に連結されており、且つ、第3リンク50は、ベビーカー10の幅方向において第1リンク40とハンドル50との間に配置されている。そして、第1リンク40への連結箇所Paにおけるベビーカー10の幅方向に沿った第3リンク50の厚みは、ベビーカー10の幅方向に沿った第1リンク40とハンドル15との間の隙間の幅と略同一となっている。このような構成によれば、ベビーカー10の剛性の向上に寄与し得る第3リンク50が、第1リンク40および後脚24の両方に対して円滑に回動することが可能となる。また、ハンドル15が第1リンク40から傾斜するようにベビーカー10が歪んでしまうことを効果的に防止することできる。
【0045】
さらに、図6に示すように、折り畳み状態にあるベビーカー10を幅方向から観察した場合に、第3リンク50の屈曲した箇所から後脚24への連結箇所Pbまでの部分、すなわち、第3リンク50の第2部分52は、後脚24に沿って延びている。このような構成によれば、折り畳み状態にあるベビーカー10から、当該ベビーカーの剛性に向上に寄与し得る第3リンク50が突出してしまうこと防止することができる。すなわち、第3リンク50のために折り畳まれたベビーカー10の寸法が大型化することを防止することができるとともに、折り畳まれたベビーカー10に第3リンク50を調和させることができ、意匠性にも優れる。
【0046】
以上のように本実施の形態によれば、第3リンク50によって、ベビーカー10の剛性を向上させることができる。この第3リンク50は、ベビーカー10の折り畳みを可能とするためのリンク材として機能する部材である。すなわち、本実施の形態によれば、ベビーカー10の部品点数を増加させることなく、ベビーカー10の剛性を効果的に向上させることができる。
【0047】
なお、上述した実施の形態に関し、本発明の要旨の範囲内で種々の変更が可能である。以下、変更の一例について説明する。
【0048】
例えば、上述した実施の形態において説明したベビーカー10の全体構成は、単なる例に過ぎない。例えば、ベビーカー10の幅方向に延びる部材(例えば、フットレスト32や後側連結バー34)が、前後方向に折り畳まれた状態(図3の状態)にて一直線上に並ぶ位置に、屈曲可能なヒンジを含むようにしてもよい。このような変形例によれば、前後方向に折り畳まれた状態のベビーカー10を、さらに、ヒンジで屈曲させて折り畳むことにより、ベビーカー10の幅方向の寸法も小型化することができる。
【0049】
また、上述した実施の形態において、ハンドル15が第1リンク40とは別途に設けられ、ハンドル15がベビーカー10のフレーム本体12に対して揺動可能に構成されている例を示したが、これに限られない。例えば、図7に示すように、ハンドル15が後方位置に固定され、後方位置から揺動不可能に構成されていてもよい。図7に示す例においては、U字状からなるハンドル15のU字の端部部分に相当する部分によって、一対の第1リンク40が構成されている。言い換えると、第1リンク40が、アームレスト28との連結箇所を越えてさらに延び、ハンドル15の一部分を構成するようになっている。このようなベビーカー10においても、後脚24とハンドル15を構成する第1リンク40とのそれぞれ回動可能に連結された第3リンク50が、上述した実施の形態の第3リンクと同様に構成されることによって、上述した実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。なお、図7に示された例においては、ロック部材41が、第1リンク40に摺動可能に設けられており、ハンドル15の遠隔操作装置18aによって、このロック部材41を遠隔操作することができるようになっている。
【0050】
さらに、上述した実施の形態では、第3リンク50、第1リンク40および第2リンク45が、ベビーカー10の幅方向に沿ってこの順番で幅方向外側から配置されている例を示したがこれに限られず、例えば、第1リンク40、第3リンク50、第2リンク45の順番で幅方向外側から配置されていてもよいし、第1リンク40、第2リンク45、第3リンク50の順番で幅方向外側から配置されていてもよい。
【0051】
さらに、上述した実施の形態において、第3リンク50と第1リンク40との間での回動軸線が、第1リンク40と第2リンク45との間での回動軸線、第2リンク45と第3リンク50との間での回動軸線、および、ハンドル15の本体フレーム12に対する回動軸線と一直線上に揃っている例を示したが、これに限られない。第3リンク50と第1リンク40との間での回動軸線が、第1リンク40と第2リンク45との間での回動軸線、第2リンク45と第3リンク50との間での回動軸線、および、ハンドル15の本体フレーム12に対する回動軸線のいずれか少なくとも一つと、一直線上に揃っていなくてもよいし、さらには、いずれか少なくとも一つと非平行となっていてもよい。
【0052】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0053】
10 ベビーカー
12 本体フレーム
15 ハンドル
22 前脚
24 後脚
28 アームレスト
40 第1リンク
45 第2リンク
50 第3リンク
51 第1部分
52 第2部分
53 屈曲箇所
55 リンク本体部
59 ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開状態から折り畳み状態へ折り畳み可能なベビーカーであって、
アームレストと、
前記アームレストに、その上方部分を回動可能に連結された前脚および後脚と、
前記アームレストの後方部分に回動可能に連結された第1リンクと、
前記前脚の中間部分および前記第1リンクの下方部分にそれぞれ回動可能に連結された第2リンクと、
前記後脚の中間部分および前記第1リンクの下方部分にそれぞれ回動可能に連結された第3リンクと、を備え、
展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクは、前記第1リンクとの連結箇所と前記後脚との連結箇所との間において、後方に突出する屈曲した形状となっている、ベビーカー。
【請求項2】
展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクは、前記第1リンクとの連結箇所から後方に延び出て、その後屈曲して、前記後脚との連結箇所まで下方に延びている、請求項1に記載のベビーカー。
【請求項3】
展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクおよび前記後脚によって囲まれる隙間が形成されている、請求項1または2に記載のベビーカー。
【請求項4】
展開状態において、第1リンクが後脚に当接し、
展開状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、第1リンクと第3リンクとの連結箇所から前記第3リンクと前記後脚との連結箇所までの前記第1リンクおよび前駆後脚と、第1リンクと第3リンクとの連結箇所から前記第3リンクと前記後脚との連結箇所までの第3リンクと、の間に隙間が形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載のベビーカー。
【請求項5】
前記第3リンクは、前記第1リンクに枢着されたリンク本体部と、前記リンク本体部と前記後脚との間をベビーカーの幅方向に延びるボス部と、を有し、
前記第3リンクは、前記ボス部にて前記後脚に枢着されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載のベビーカー。
【請求項6】
前記第1リンクへの連結箇所におけるベビーカーの幅方向に沿った前記リンク本体部の厚みは、ベビーカーの幅方向に沿った前記ボス部の長さと、前記ボス部が設けられている箇所におけるベビーカーの幅方向に沿った前記リンク本体部の厚みと、の合計と略同一である、請求項5に記載のベビーカー。
【請求項7】
前記第1リンクに揺動可能に連結されたハンドルを、さらに備え、
前記第3リンクは、ベビーカーの幅方向において前記第1リンクと前記ハンドルとの間に配置されており、
前記第1リンクへの連結箇所におけるベビーカーの幅方向に沿った前記第3リンクの厚みは、ベビーカーの幅方向に沿った前記第1リンクと前記ハンドルとの間の隙間の幅と略同一である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のベビーカー。
【請求項8】
折り畳み状態にあるベビーカーを幅方向から観察した場合に、前記第3リンクの屈曲した箇所から前記後脚への連結箇所までの部分は、前記後脚に沿って延びる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のベビーカー。
【請求項9】
前記第1リンクに揺動可能に連結されたハンドルをさらに備える、或いは、前記第1リンクが上方に延び出てハンドルを構成する、請求項1〜6および8のいずれか一項に記載のベビーカー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−99971(P2013−99971A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243417(P2011−243417)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(391003912)コンビ株式会社 (165)
【Fターム(参考)】