説明

ベルトスリーブ材の幅切断装置

【課題】比較的簡単な装置構成でベルトスリーブ材を正確な位置で切断することが可能であり、さらに、Vリブが周方向の一部にのみ形成された特殊形状のベルトスリーブ材を所定の幅寸法で切断することも可能な、ベルトスリーブ材の幅切断装置を提供する。
【解決手段】ベルトスリーブ材の幅切断装置は、ベルトスリーブ材10を挟んでカッター33と対向する駆動ロール22と、駆動ロール22との間でベルトスリーブ材10が懸架されるテンションロール24とを備えており、駆動ロール22とテンションロール24の外周面に、ベルトスリーブ材10の内周面のVリブと係合する溝22a,24aがそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のベルトスリーブ材を所定の幅寸法に切断して複数のベルトを製造する、ベルトスリーブ材の幅切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、Vリブドベルト等の伝動ベルトは、円筒状のベルトスリーブ材を所定の幅寸法に切断することにより製造される。特許文献1には、周方向に延びる断面V字状の複数のリブ(以下、Vリブという)を有するベルトスリーブ材をカッターにより全周にわたって切断して、複数のVリブドベルトを製造する、ベルトスリーブ材の幅切断装置が開示されている。このベルトスリーブ材の幅切断装置は、Vリブを外周側に位置させた状態でベルトスリーブ材を周回移動させながら外側からカッターを押し付けて、Vリブの間に位置する溝部の中心線に沿ってベルトスリーブ材を全周にわたって切断するように構成されている。
【0003】
さらに、この特許文献1のベルトスリーブ材の幅切断装置は、CCDカメラ等の撮像手段によりベルトスリーブ材のVリブ形状(溝部形状)を撮像し、その画像に基づいてベルトスリーブ材の幅方向に関するカッターの位置を補正するように構成されており、ベルトスリーブ材を溝部の中心線に沿って正確に切断することが可能である。
【0004】
【特許文献1】特許第3022387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した特許文献1に記載のベルトスリーブ材の幅切断装置においては、ベルトスリーブ材のVリブ形状を撮像するCCDカメラ等の撮像手段や、撮像された画像を処理する画像処理装置等、カッターの位置ずれを検出して補正するための特別な装置が必要になり、装置の製造コストが高くなってしまう。
【0006】
また、前述したベルトスリーブ材の幅切断装置においては、ベルトスリーブ材が周回移動しているときに、カッターの位置ずれを検出してそのずれを補正するためには、外周側に位置するVリブの形状が撮像手段により任意のタイミングで撮像される必要があるが、Vリブが周方向の一部にのみ存在する特殊形状のベルト(例えば、周方向に延びるVリブと幅方向に延びる歯部とが周方向に関して混在している伝動ベルト:実施形態の図5参照)を製造する場合には、撮像タイミングによってはVリブ間の溝部の位置を検出できないことから、カッターの位置ずれを補正することができなくなる。このような場合には、作業者が目視で直接、あるいは、投影機を用いてカッターとベルトスリーブ材の溝部の位置を確認して、カッターの位置を微調整しながら切断する必要があるが、その微調整は熟練した作業者であっても困難であり、切断の精度が低くなる虞があった。
【0007】
本発明の目的は、比較的簡単な装置構成でベルトスリーブ材を正確な位置で切断することが可能であり、さらに、Vリブが周方向の一部にのみ形成された特殊形状のベルトスリーブ材を所定の幅寸法で精度よく切断することも可能な、ベルトスリーブ材の幅切断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0008】
第1の発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、一方の周面の少なくとも一部に周方向に延びるVリブが形成されたベルトスリーブ材を、前記Vリブを内周側に位置させた状態で周回移動させるベルトスリーブ材周回移動手段と、前記ベルトスリーブ材周回移動手段により周回移動される前記ベルトスリーブ材に対向して配置されたカッターと、周回移動している前記ベルトスリーブ材に前記カッターを押し当てて、このベルトスリーブ材を全周にわたって切断するカッター押圧手段と、前記カッターを前記ベルトスリーブ材の幅方向に移動させるカッタースライド手段とを備えており、前記ベルトスリーブ材周回移動手段は、前記ベルトスリーブ材を挟んで前記カッターと対向する駆動ロールと、前記駆動ロールとの間で前記ベルトスリーブ材が懸架されるテンションロールとを有し、少なくとも前記駆動ロールの外周面に、前記ベルトスリーブ材のVリブと係合する第1の溝が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
このベルトスリーブ材の幅切断装置は、内周面の少なくとも一部に周方向に延びるVリブが形成されたベルトスリーブ材を全周にわたって切断して、所定の幅寸法のベルトを製造するものである。まず、ベルトスリーブ材周回移動手段の駆動ロールとテンションロールとの間に、Vリブが内周側に位置した状態でベルトスリーブ材が懸架されて周回移動される。その一方で、カッタースライド手段によりカッターがベルトスリーブ材の幅方向の所定位置に移動される。そして、カッター押圧手段により、周回移動するベルトスリーブ材にカッターが押し当てられることにより、ベルトスリーブ材が全周にわたって切断される。
【0010】
ここで、少なくとも駆動ロールの外周面には、ベルトスリーブ材の内周面に形成されたVリブと係合する第1の溝が形成されている。そのため、ベルトスリーブ材は、そのVリブが第1の溝に係合した状態で、幅方向の同じ位置を周回移動することになる。従って、駆動ロールに形成された第1の溝という、比較的簡単な構成のみで切断位置が幅方向に関して常に固定されることになり、ベルトスリーブ材を正確な位置で切断することが可能になる。また、カッターの位置ずれを検出して補正するための、カメラ等の撮像手段や画像処理装置等の特別な装置が不要になり、装置の製造コストを低減することができる。さらに、この幅切断装置によれば、内周面の周方向の一部にのみVリブが形成されている特殊形状のベルトスリーブ材を切断する場合でも、第1の溝により、ベルトスリーブ材の幅方向位置を同じ位置に保つことが可能になるため、ベルトスリーブ材を正確な位置で切断できる。
【0011】
第2の発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、前記第1の発明において、前記テンションロールの外周面に、前記ベルトスリーブ材のVリブと嵌合する第2の溝が形成されていることを特徴とするものである。この構成によれば、ベルトスリーブ材の内周面に形成されたVリブは、駆動ロールに形成された第1の溝とテンションロールに形成された第2の溝に係合した状態で周回移動するため、駆動ロールにのみ溝が形成されている場合と比べて、ベルトスリーブ材の幅方向位置がずれにくくなる。
【0012】
第3の発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、前記第1又は第2の発明において、周回移動時における前記ベルトスリーブ材の幅方向の移動を規制する移動規制手段を備えていることを特徴とするものである。この構成によれば、移動規制手段により、周回移動中にベルトスリーブ材が幅方向にずれてVリブが第1の溝から外れるのが防止される。
【0013】
第4の発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、前記第3の発明において、前記移動規制手段は、前記駆動ロールの端部において前記第1の溝よりも深く形成され、前記ベルトスリーブ材の幅方向端部に形成された凸部と係合するガイド溝であることを特徴とするものである。この構成によれば、ベルトスリーブ材は、その幅方向端部に形成された凸部が、駆動ロールの端部に形成された、第1の溝よりも深いガイド溝に係合した状態で周回移動するため、周回移動中にベルトスリーブ材の幅方向移動が規制されて、Vリブが第1の溝から外れるのが確実に防止される。
【0014】
第5の発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、前記第3の発明において、前記移動規制手段は、少なくとも前記ベルトスリーブ材の幅方向一端側に設けられ、周回移動する前記ベルトスリーブ材の前記一端に接触しながら従動回転可能なガイドロールであることを特徴とするものである。この構成によれば、ガイドロールにより、周回移動中にベルトスリーブ材の幅方向移動が規制されて、Vリブが第1の溝から外れるのが確実に防止される。
【0015】
第6の発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、前記第1〜第5の何れかの発明において、前記駆動ロールの外周面に、前記ベルトスリーブ材の切断時に前記カッターの刃先を逃すための逃し溝が形成されていることを特徴とするものである。この構成によれば、ベルトスリーブ材の切断時にカッターの刃先が逃し溝により逃されて、駆動ロールに接触しないため、カッターや駆動ロールの破損が防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1、図2に示す本実施形態のベルトスリーブ材の幅切断装置1は、円筒状のベルトスリーブ材10(図3、図4参照)を所定の幅寸法に切断して、複数の伝動ベルト11(図5参照)を製造するものである。
【0017】
ベルトスリーブ材の幅切断装置1の説明を行う前に、この幅切断装置1により切断されるベルトスリーブ材10について簡単に説明しておく。ベルトスリーブ材10は、ゴムやウレタン等からなるベルト本体と、このベルト本体に埋設された高張力低伸度の複数の心線等からなる。図3、図4に示すように、このベルトスリーブ材10の一方の周面(内周面)の半分には、周方向に延びる断面V字状の複数のリブ(Vリブ)10aが幅方向(図3の紙面垂直方向)に等間隔空けて形成され、残りの半分には、幅方向に延びる複数の歯部10bが周方向に等間隔空けて形成されている。また、図4に示すように、ベルトスリーブ材10の幅方向一端部には、Vリブ10aよりも突出量の大きい、断面矩形状の凸部10cが全周にわたって形成されている。そして、このベルトスリーブ材10が、次述のベルトスリーブ材の幅切断装置1により、Vリブ10aの間に位置する溝部10dの中心線に沿って切断されることにより、図5に示すような、同一周面にVリブ10aと歯部10bの両方を備えた所定幅の伝動ベルト11が製造される。
【0018】
次に、本実施形態のベルトスリーブ材の幅切断装置1について詳細に説明する。図1、図2に示すように、ベルトスリーブ材の幅切断装置1は、Vリブ10aを外周側に位置させた状態で周回移動させるベルトスリーブ材周回移動機構20(ベルトスリーブ材周回移動手段)と、周回移動するベルトスリーブ材10に対向して配置されたカッター33と、このカッター33を周回移動しているベルトスリーブ材10に押し当てる1対のエアシリンダ51(カッター押圧手段)と、周回移動しているベルトスリーブ材10の幅方向に沿ってカッター33をエアシリンダ51とともに移動させるカッタースライド機構40(カッタースライド手段)とを有する。
【0019】
ベルトスリーブ材周回移動機構20は、架台31上にそれぞれ水平に配置された駆動ロール22及びテンションロール24と、駆動ロール22を回転駆動するモータ23などを備えている。駆動ロール22及びテンションロール24は、水平な片持状態で架台31上に回転可能に支持されている。また、テンションロール24は、駆動ロール22と水平方向に適当な間隔をあけて配置されている。
【0020】
ベルトスリーブ材10は、Vリブ10a及び歯部10bが内周側に位置した状態で、駆動ロール22とテンションロール24との間に懸架される。駆動ロール22は、架台31上に配設されたモータ23とベルト25で連結されている。そして、駆動ロール22が、モータ23によりベルト25を介して所定方向に回転駆動されることによって、駆動ロール22とテンションロール24との間に懸架されたベルトスリーブ材10が周回移動される。
【0021】
ここで、駆動ロール22は架台31に固設されているが、テンションロール24は水平方向に移動可能に構成されており、2つのロール22,24の間隔を調整できるようになっている。従って、ベルトスリーブ材10の装着時や切断後のベルト11の取り外し時には間隔を狭めることにより、ベルトスリーブ材10や切断後に得られたベルト11を弛ませて容易に着脱ができるようになっている。その一方で、両ロール22,24間にベルトスリーブ材10が懸架された状態で、テンションロール24を駆動ロール22から離間させることによって、周回移動させるのに必要なテンションをベルトスリーブ材10に付与することができる。
【0022】
図6は、ベルトスリーブ材10が懸架された状態における、駆動ロール22及びテンションロール24の平面図であり、図7は図6のVII-VII線断面図である。図6、図7に示すように、駆動ロール22の外周面には、ベルトスリーブ材10が駆動ロール22とテンションロール24の間に懸架された状態で、ベルトスリーブ材10の複数のVリブ10aがそれぞれ係合する複数の溝22a(第1の溝)が、長手方向(ベルトスリーブ材10の幅方向)に等間隔空けて全周にわたって形成されている。また、駆動ロール22の基端部(図6における左端部)の外周面には、溝22aよりも深いガイド溝22bが全周にわたって形成されており、このガイド溝22bはベルトスリーブ材10の凸部10cに係合する。
【0023】
一方、テンションロール24の外周面にも、ベルトスリーブ材10の複数のVリブ10aがそれぞれ係合する複数の溝24a(第2の溝)が、長手方向に等間隔空けて全周にわたって形成されている。さらに、テンションロール24の基端部(図6における左端部)の外周面には、溝24aよりも深いガイド溝24bが全周にわたって形成されており、このガイド溝24bはベルトスリーブ材10の凸部10cに係合する。
【0024】
そして、ベルトスリーブ材10は、その内周面の半分に形成された複数のVリブ10aが、駆動ロール22とテンションロール24にそれぞれ形成された溝22a,24aに係合した状態で周回移動する。従って、ベルトスリーブ材10は、幅方向にずれることなく、同じ位置を周回移動することになる。尚、駆動ロール22とテンションロール24の両方にVリブ10aと係合する溝22a,24aが形成されているため、このような溝が片方のロールにのみ形成されている場合と比べて、ベルトスリーブ材10の幅方向位置はより一層ずれにくくなる。
【0025】
さらに、ベルトスリーブ材10の凸部10cが、駆動ロール22とテンションロール24にそれぞれ形成された、溝22a,24aよりも深いガイド溝22b,24bにそれぞれ係合していることから、これらガイド溝22b,24bによりベルトスリーブ材10が幅方向に移動するのが規制され、Vリブ10aが溝22a,24aから外れてしまうのが防止される。
【0026】
尚、図6、図7に示すように、駆動ロール22の外周面には、ベルトスリーブ材10の切断時に、後述するカッター33がベルトスリーブ材10に押し当てられたときに、このカッター33の刃先を逃す複数の逃し溝22cが、3つの溝22a毎に、隣接する溝22aの間の位置において全周にわたって形成されている。
【0027】
図1に示すように、架台31上には、片持状態になった駆動ロール22の先端面に対向して、センター押し26が、駆動ロール22とは同心状態で配置されている。このセンター押し26は、駆動ロール22の端面に圧接されるように軸心方向にスライド可能になっており、駆動ロール22の端面に圧接されることによって、駆動ロール22の回転時における振動を防止する。
【0028】
図2に示すように、駆動ロール22の近傍には、周回移動するベルトスリーブ材10を切断するカッター33が、ベルトスリーブ材10を挟んで駆動ロール22の外周面に対向した状態で配置されている。このカッター33は、1対のエアシリンダ51の先端部に取り付けられており、さらに、1対のエアシリンダ51は、カッタースライド機構40の一部を構成するスライド台42の上部に取り付けられている。
【0029】
カッタースライド機構40は、スライド台42と、このスライド台42をスライド移動させるサーボモータ44とを備えている。架台31の上面には、駆動ロール22の軸心方向と平行に延びる1対のガイドレール41が設けられており、スライド台42は、この1対のガイドレール41に沿ってスライド可能に配設されている。スライド台42の下部には、ガイドレール41と平行に延びるボールネジ43が、ネジ結合された状態で挿通している。ボールネジ43の一方の端部は、架台31上に設けられた正逆回転可能なサーボモータ44に連結されている。従って、サーボモータ44によってボールネジ43が回転駆動されると、スライド台42が、1対のガイドレール41に沿って駆動ロール22の軸心方向、即ち、ベルトスリーブ材10の幅方向(図1の左右方向)にスライド駆動される。
【0030】
スライド台42の上部に設けられた1対のエアシリンダ51は、駆動ロール22の軸心方向と直交するように配置されており、この1対のエアシリンダ51のピストンロッドの先端部間に、駆動ロール22と対向するようにカッター33が取り付けられている。このカッター33の刃先は駆動ロール22の外周面に垂直であり、さらに、カッター33は、1対のエアシリンダ51により駆動されて、駆動ロール22の外周面に接近および離隔する方向に移動する。また、1対のエアシリンダ51のピストンロッドは、同期して進退駆動されるようになっている。従って、両方のピストンロッドが駆動ロール22側へ進出駆動されると、ピストンロッドの先端部に取り付けられたカッター33の刃先が、ベルトスリーブ材10に対して外側から押し当てられる。尚、カッター33をベルトスリーブ材10に押し当てるカッター押圧手段としては、前述した1対のエアシリンダ51の代わりにサーボモータなどの他の駆動手段を用いることもできる。
【0031】
次に、ベルトスリーブ材の幅切断装置1の作用について説明する。まず、ベルトスリーブ材10が、Vリブ10aが内周側に位置する状態で、駆動ロール22とテンションロール24との間に懸架される。この状態で、モータ23により駆動ロール22を回転駆動して、ベルトスリーブ材10を周回移動させる。
【0032】
一方で、カッタースライド機構40により、カッター33をスライド台42とともにベルトスリーブ材10の幅方向に移動させ、カッター33の刃先を、周回移動しているベルトスリーブ材10を挟んで駆動ロール22の逃し溝22cと対向させる。この状態で、1対のエアシリンダ51によりカッター33をベルトスリーブ材10に押し当てることによって、周回移動するベルトスリーブ材10をカッター33により全周にわたって切断する。このとき、カッター33の刃先は逃し溝22cにより逃されるため、カッター33と駆動ロール22が接触してこれらが破損することはない。
【0033】
続いて、1対のエアシリンダ51によりカッター33を一旦後退させた後、カッタースライド機構40により、カッター33をベルトスリーブ材10の幅方向に移動させ、その刃先を隣接する別の逃し溝22cと対向させる。そして、再び、1対のエアシリンダ51によりカッター33をベルトスリーブ材10に押し当てて、ベルトスリーブ材10を全周にわたって切断することにより、所定幅のベルト11(図5参照)を得る。
【0034】
ここで、ベルトスリーブ材10の複数のVリブ10aは、駆動ロール22とテンションロール24にそれぞれ形成された溝22a,24aに係合していることから、ベルトスリーブ材10は、幅方向に関して同じ位置を周回移動する。そのため、カッター33が逃し溝22cと対向している状態で、このカッター33の刃先をベルトスリーブ材10に押し当てると、カッター33は、常に、Vリブ10aの間に位置する溝部10dの中心線においてベルトスリーブ材10を切断することになる。そのため、ベルトスリーブ材10を常に正確な位置(溝部10dの中心線)で切断することができ、3本のVリブ10aを含む所定の幅寸法(隣接する2つの逃し溝22cの間隔に等しい寸法)のベルト11が得られる。
【0035】
従って、カッター33の切断位置の微調整を行う必要がないため、熟練の作業者でなくても容易にベルトスリーブ材10を所定の幅寸法で切断することができる。また、ロール22,24に形成された溝22a,24aといった比較的簡単な構成のみで切断位置が常に固定され、Vリブ10aや溝部10dの位置を検出して正確な切断位置を把握するための、カメラ等の撮像手段や画像処理装置等の特別な装置が不要になることから、装置の製造コストを低減できる。さらに、本実施形態のように、内周面の周方向の一部にのみVリブ10aが形成されている特殊形状のベルトスリーブ材10を切断して、Vリブ10aと歯部10bの両方を有する伝動ベルト11を製造する場合でも、ロール22,24に形成された溝22a,24aによりベルトスリーブ材10の幅方向位置を常に同じ位置に保って、ベルトスリーブ材10を正確な位置で切断することができる。
【0036】
さらに、ベルトスリーブ材10の凸部10cが、駆動ロール22とテンションロール24にそれぞれ形成されたガイド溝22b,24bに係合していることから、ベルトスリーブ材10の幅方向への移動が確実に規制されて、ベルトスリーブ材10の周回移動中にVリブ10aが溝から外れてしまうのが確実に防止される。
【0037】
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0038】
1]前記実施形態においては、駆動ロール22とテンションロール24の両方にVリブ10aと係合する溝22a,24aが形成されているが、これら2つのロール22,24のうち、駆動ロール22にのみ溝が形成され、テンションロール24には溝が形成されていなくてもよい。この構成でも、ベルトスリーブ材10の内周面におけるVリブ10aの長さが極端に短くない限り、周回移動中にベルトスリーブ材10の幅方向位置を同じ位置に保つことは十分可能である。
【0039】
2]周回移動中におけるベルトスリーブ材10の幅方向移動を規制するためのガイド溝も、2つのロール22,24のうちの駆動ロール22にのみ形成されていてもよい。
【0040】
さらに、ベルトスリーブ材10の幅方向に関する移動を規制する手段は、このようなガイド溝に限られるものではなく、種々の形状、構造のものを採用できる。例えば、図8に示すように、駆動ロール22とテンションロール24の間に懸架されたベルトスリーブ材10の幅方向一端側に、周回移動するベルトスリーブ材10の一端に接触しながら従動回転可能なガイドロール60が立設されていてもよい。この構成では、ガイドロール60により、周回移動中にベルトスリーブ材10の幅方向移動が規制されて、Vリブ10aが溝22a,24aから外れるのが確実に防止される。また、ガイドロール60はベルトスリーブ材10の周回移動に応じて従動回転することから、ベルトスリーブ材10の周回移動を妨げることもない。尚、ガイドロール60は、ベルトスリーブ材10の一端側に複数本並べて設けられていてもよい。また、ガイドロール60が、ベルトスリーブ材10の両端側にそれぞれ設けられていてもよい。
【0041】
3]駆動ロール22の外周面の、カッター33の刃先を逃すための逃し溝22cは必ずしも必要ではない。例えば、駆動ロール22がウレタン等の軟質材料で構成される場合には、逃し溝22cを省略できる。
【0042】
4]前記実施形態は、Vリブ10aが周方向の一部にのみ設けられているベルトスリーブ材10を切断する場合の一例であるが、本発明のベルトスリーブ材の幅切断装置は、Vリブが全周にわたって設けられているベルトスリーブ材を切断して、複数のVリブドベルトを製造する場合にも当然ながら適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係るベルトスリーブ材の幅切断装置の正面図である。
【図2】ベルトスリーブ材の幅切断装置の右側面図である。
【図3】ベルトスリーブ材の側面図である。
【図4】図3のIV-IV線断面図である。
【図5】ベルトスリーブ材を切断して得られる伝動ベルトの一部拡大斜視図である。
【図6】ベルトスリーブ材が懸架された状態の駆動ロール及びテンションロールの平面図である。
【図7】図6のVII-VII線断面図である。
【図8】変更形態の駆動ロール及びテンションロールの平面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 ベルトスリーブ材の幅切断装置
10 ベルトスリーブ材
10a Vリブ
10c 凸部
20 ベルトスリーブ材周回移動機構
22 駆動ロール
22a 溝(第1の溝)
22b ガイド溝
22c 逃し溝
23 モータ
24 テンションロール
24a 溝(第2の溝)
24b ガイド溝
33 カッター
40 カッタースライド機構
41 ガイドレール
42 スライド台
43 ボールネジ
44 サーボモータ
51 エアシリンダ
60 ガイドロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の周面の少なくとも一部に周方向に延びるVリブが形成されたベルトスリーブ材を、前記Vリブを内周側に位置させた状態で周回移動させるベルトスリーブ材周回移動手段と、
前記ベルトスリーブ材周回移動手段により周回移動される前記ベルトスリーブ材に対向して配置されたカッターと、
周回移動している前記ベルトスリーブ材に前記カッターを押し当てて、このベルトスリーブ材を全周にわたって切断するカッター押圧手段と、
前記カッターを前記ベルトスリーブ材の幅方向に移動させるカッタースライド手段と、
を備えており、
前記ベルトスリーブ材周回移動手段は、前記ベルトスリーブ材を挟んで前記カッターと対向する駆動ロールと、前記駆動ロールとの間で前記ベルトスリーブ材が懸架されるテンションロールとを有し、
少なくとも前記駆動ロールの外周面に、前記ベルトスリーブ材のVリブと係合する第1の溝が形成されていることを特徴とするベルトスリーブ材の幅切断装置。
【請求項2】
前記テンションロールの外周面に、前記ベルトスリーブ材のVリブと嵌合する第2の溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のベルトスリーブ材の幅切断装置。
【請求項3】
周回移動時における前記ベルトスリーブ材の幅方向の移動を規制する移動規制手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のベルトスリーブ材の幅切断装置。
【請求項4】
前記移動規制手段は、前記駆動ロールの端部において前記第1の溝よりも深く形成され、前記ベルトスリーブ材の幅方向端部に形成された凸部と係合するガイド溝であることを特徴とする請求項3に記載のベルトスリーブ材の幅切断装置。
【請求項5】
前記移動規制手段は、少なくとも前記ベルトスリーブ材の幅方向一端側に設けられ、周回移動する前記ベルトスリーブ材の前記一端に接触しながら従動回転可能なガイドロールであることを特徴とする請求項3に記載のベルトスリーブ材の幅切断装置。
【請求項6】
前記駆動ロールの外周面に、前記ベルトスリーブ材の切断時に前記カッターの刃先を逃すための逃し溝が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載のベルトスリーブ材の幅切断装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−313606(P2007−313606A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146067(P2006−146067)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】