説明

ベルト付きバックル及びヘルメット

【課題】バックルはベルトの係合と保持が確実で不用意に弛緩することがない。
【解決手段】バックルは、雌バックルと雄バックル18を嵌合する。雄バックル18には、基部25の嵌合凸部24側の端部に、第一挿通孔28を挟んで係止部26を設けた。係止部26に対して第一挿通孔28と反対側に第二挿通孔29を挟んで引掛け部27を設けた。引掛け部27で巻回したベルト13の自由端部13aが第二挿通孔29を通って基端部側部分13bと重ねられて第一挿通孔28を通って係止部26を巻く。嵌合凸部24の端部24cには、二重のベルト13に当接可能な突出部30を形成した。係止部26を巻回された二重のベルト13の基端側部分13bに下方や横方向に引っ張る力が加わっても、押圧力Fが二重のベルト13から係止部26に生じるので緩まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば学童やサイクリスト等が頭部を保護するために用いられるヘルメット、及びこのヘルメットの顎紐等を含む各種のベルトに取り付けたベルト付きバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヘルメットを例えば幼児用や児童用として使用する場合、顎の下にバックルが位置すると、着脱操作を行う親等が目視しづらく手間がかかる上に顎の皮膚をバックルに挟むおそれがあった。そのため、ヘルメットを幼児らに装着して顎ベルトを締結する際、バックルが顔の側部に位置するように顎ベルトの長さとバックルの取付位置が調節されている。
【0003】
このようなヘルメットとして例えば特許文献1に記載されたものが提案されている。このヘルメットは、帽体の内周面に一対の耳紐が形成され、一方の耳紐に連結された顎紐と、この顎紐及び他方の耳紐を連結するバックルとで構成されている。バックルは、他方の耳紐に連結された雌型バックルに顎紐の端部に取り付けた雄型バックルが嵌合可能とされている。
また、雌型バックルには耳紐をV字状に巻き付けて取り付けるためのガイド溝が表裏両面に形成されている。雄型バックルにはブリッジを挟んで前後に二つの長孔が形成されており、顎紐の自由端部を雄型バックルの嵌合部側の第一の長孔に通してブリッジに巻回して第二の長孔に通すことで顎紐を緩まないように係止すると共に長さ調整可能としている。
【0004】
この種のバックルの雄型バックルの一例として、図9に示すものがある。この雄型バックル1は、雌型バックルに嵌合する嵌合爪部2の基部3にブリッジ4を挟んで第一長孔5と第二長孔6が形成されており、顎ベルト8の自由端部8aを第一長孔5に通してブリッジ4に巻回し、第二長孔6を通して顎ベルト8の基端側部分8bに自由端部8aを重ねて基部3の端部3aに接触させた状態にする。
【0005】
図9(a)において、ヘルメットを装着した児童等の顔の側部に接触している顎ベルト8の部分について例えば下方向(矢印A方向)に力が加わると、顎ベルト8の基端側部分8bに矢印C方向の押圧力が加わるためにベルト8は移動しない。また、顎ベルト8の自由端部8aを下方向(矢印B方向)に引っ張ると、押圧力Cが働かないために移動可能となる。
一方、図9(b)において、顎ベルト8の基端側部分8bに斜め下方向(矢印A′方向)の力が加わると、矢印C方向の押圧力が小さいために、顎ベルト8は基端側部分8b側と自由端部8a側のいずれも移動可能となり、弛緩してしまうという欠点がある。
【0006】
一方、特許文献2に記載されたバックルでは、上述のように雄バックル1のブリッジ4に顎ベルト8を巻回して形成させた構成において、雌型バックルに押圧片を突出形成している。そして、雄型バックルと雌型バックルを嵌合させた際、雌型バックルに設けた押圧片でブリッジ4に巻回された顎ベルト8を押圧し、顎ベルト8の延びる方向の角度に関わらず係止するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−52349号公報
【特許文献2】特開2002−65315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した特許文献2に記載されたバックルでは、雌型バックルから押圧片が突出しているために、幼児や児童向けのヘルメットでは着脱操作の際に手に押圧片が接触するおそれがあるため好ましくない。しかも、雄型バックルと雌型バックルを分離した状態では、押圧片による顎ベルトの係止をできないために、顎ベルトに不用意に斜め下方や横方向に力が加わると雄型バックルから顎ベルトが移動したり弛緩したりするおそれがあり、好ましくなかった。また、押圧片によって部品点数が増加して製造が煩雑になるという欠点もあった。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みて、ベルトの係合と保持が確実で不用意に弛緩することのない安全なベルト付きバックルとこのバックルを備えたヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるベルト付きバックルは、雌バックルと雄バックルを嵌合可能なバックルにおいて、雌バックルと雄バックルの一方には、バックルの嵌合部分側の端部に対して第一挿通孔を挟んで係止部が設けられ、係止部に対して第一挿通孔と反対側に形成された第二挿通孔を挟んで引掛け部が設けられており、引掛け部で巻回されたベルトの一方が第二挿通孔を通ってベルトの他方と重なって第一挿通孔を通って係止部を巻いて装着されていることを特徴とする。
本発明によるベルト付きバックルによれば、ベルトを装着してなる雌バックルまたは雄バックルにおいて、嵌合部分側から離間した引掛け部で巻回されたベルトの一方が第二挿通孔を通ってベルトの他方と重なって二重のベルトとして第一挿通孔を通って係止部を巻いて装着されているため、係止部を巻回された二重のベルトの他方にバックルの嵌合部分側と反対側へ引っ張る力が加わったり、その方向に略直交する方向に力が加わったりしても、二重のベルトを係止部に押圧する方向に押圧力がかかるため、ベルトが緩んだりすることがなく係止状態に保持され、バックルにおけるベルトの弛緩を防止できる。また、二重のベルトの係止部側に位置するベルトの一方に引っ張る力が加わるとベルトが移動可能になる。
なお、本発明において、ベルトの一方とはベルトの自由端部側の部分であり、他方とは基端側部分であることが好ましい。
【0011】
本発明によるヘルメットは、帽体と、該帽体の内周面に両端部を連結された一対の耳ベルトと、一方の耳ベルトに連結されたベルトと、このベルトと他方の耳ベルトまたは他方の耳ベルトに連結された別のベルトとを着脱可能に連結するための上述したいずれかのベルト付きバックルと、を備えたことを特徴とする。
本発明によるヘルメットによれば、帽体を装着者の頭に装着してベルトと耳ベルトまたは別のベルトとをバックルで締結するとバックルは顔の側部に位置することになり、バックルのベルトを装着した雌バックルまたは雄バックルにおいて、係止部を巻回された二重のベルトの他方にバックルの嵌合部分側と反対側である例えば下方に引っ張る力が加わったり、その方向に略直交する例えば横方向に力が加わったりしても、ベルトが緩んだりすることがなく係止状態に保持されベルトの弛緩を防止できる。また、二重のベルトの係止部側に位置するベルトの一方に引っ張る力が加わるとベルトが移動可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係わるベルト付きバックルとヘルメットによれば、ヘルメットの側部等に設けたバックルについて、引掛け部で巻回されたベルトの一方と他方が重なって第一挿通孔を通って係止部を巻いた構成であるため、バックルの嵌合部分側と反対方向、例えば下方向や斜め下方向や、上記反対方向に直交する方向、例えば横方向にベルトの他方を引っ張る力が加わった場合でも、二重のベルトを係止部に押圧する方向に押圧力がかかるため、ベルトが移動したり緩んだりせず弛緩防止ができる。しかも、バックルの他方の部材に押圧片等のベルトを押圧する別の部材を設けなくてもベルトの移動や弛みを防止できるため、部品点数が少なく構造を簡単にできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例によるヘルメットを装着者が装着した状態の斜視図である。
【図2】バックルの雌バックルの平面図である。
【図3】雄バックルの平面図である。
【図4】ヘルメットのバックルを示す要部斜視図であり、(a)は雄バックルと雌バックルを分離した状態の図、(b)は雄バックルと雌バックルを締結した状態の図である。
【図5】ヘルメットのバックルを締結した状態の要部斜視図であり、(a)はベルトを締め込んだ状態の図、(b)はベルトを緩めた状態の図である。
【図6】バックルの雄バックルにベルトを取り付けた状態で、下方向に力を加えた状態の図である。
【図7】バックルの雄バックルにベルトを取り付けた状態で、横方向に力を加えた状態の図である。
【図8】バックルの雄バックルにベルトを取り付けた状態で、斜め上方向に力を加えた状態の図である。
【図9】従来のバックルに顎ベルトを装着した状態を示す図であって、(a)は下方向に力を加えた状態の図、(b)は斜め下方向に力を加えた状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明によるベルト付きバックルは、嵌合部分側の端部に、係止部を巻く二重のベルトに当接可能な突出部が第一挿通孔に突出して形成されていることが好ましい。
係止部を巻く二重のベルトに対して、嵌合部分側の端部から突出部が第一挿通孔に突出して形成されているため、二重のベルトのうちの外側のベルトが移動したり弛緩しそうになったとしても突出部によってベルトの移動を阻止させることができる。
しかも、本発明によるバックルによれば、突出部を雌バックルまたは雄バックルで一体成形できるから、部品点数が増加しない。
【0015】
また、係止部と引掛け部は、雌バックルまたは雄バックルの本体の延在方向に直交する両側に互いにずれて配設されていてもよい。
係止部と引掛け部の位置を雌バックルまたは雄バックルの本体の延在方向に対して直交する両側に互いにずらすことでベルトの移動や弛緩のずれを抑制できる。
なお、係止部は突出部に対向する部分が平面部とされていてもよく、この場合には、ベルトに引っ張り方向の力が加わった際、突出部と係止部の平面部との間でベルトは突出部の係止力と平面部との摩擦で弛緩や移動を抑制する。
【0016】
本発明によるヘルメットは、ベルト付きバックルが帽体の装着状態で装着者の顔の側部に位置するようにしたから、バックルの着脱操作が容易である。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例によるバックルとこのバックルを備えたヘルメットを図1乃至図8により説明する。
図1に示すように、本実施例によるヘルメット10は、例えば幼児や学童等が使用するものである。このヘルメット10は、略半球状または凸曲面形状をなす例えば合成樹脂製の帽体11と、帽体11の内面に対向して取り付けられた略三角形状をなす一対の耳ベルト12と、一方の耳ベルト12に三角カン(図示せず)を介して連結された顎ベルト13とを備えている。また、帽体11内には図示しないクッションパッドとサイズアジャスタ14とが取り付けられている。
そして、顎ベルト13と他方の耳ベルト12には、両者を着脱可能に締結するバックル16が備えられている。
【0018】
図2及び図3に示すバックル16は、雌バックル17と雄バックル18とを備えている。図2に示す雌バックル17は例えば耳ベルト12に装着されており、雄バックル18を嵌合させる嵌合凹部19と、略扇形のベルト係合部20とを備えている。ベルト係合部20は支持部21を挟んで前後に第一長孔22aと第二長孔22bを有している。図4及び図5に示すように、略V字状に折り曲げた耳ベルト12は支持部21で折り曲げて第一長孔22aと第二長孔22bにその両側のベルト部分を反対側からそれぞれ通すことでベルト係合部20を取り付けている。
【0019】
図3に示す雄バックル18は、一対の弾性爪部24aとその間に設けたガイド軸24bとを備えていて嵌合凹部19に嵌合可能な嵌合凸部24と、顎ベルト13を係止するための基部25とを有している。基部25は、略四角形の枠部25aを二つに区切る係止部26と、枠部25aの一部として嵌合凸部24と反対側端部に設けられた引掛け部27とを備えており、係止部26と嵌合凸部24の間に第一挿通孔28,係止部26と引掛け部27との間に第二挿通孔29がそれぞれ形成されている。
そして、図6に示す雄バックル18の中央縦断面図では、引掛け部27は例えば略涙滴形状とされ、係止部26は略レモン形状とされている。また、雄バックル18の延在方向(長手方向)に対して直交する方向の両側にずれた位置に係止部26と引掛け部27が形成されている。
【0020】
次に、雄バックル18に形成した基部25へ顎ベルト13を取り付けた構成について図5及び図6により説明する。なお、顎ベルト13は、図6に示す基部25に取り付けて引掛け部27に巻回された状態で、引掛け部27に対して端部側のベルト部分を自由端部13aとし、基端側のベルト部分を基端側部分13bとした。そして、顎ベルト13は、自由端部13aと基端側部分13bの境界をループ状に巻回して自由端部13aと基端側部分13bを二重に重ねるものである。
顎ベルト13の装着に際して、自由端部13aは基部25における嵌合凸部24側の第一挿通孔28を貫通して引掛け部27を外側から巻回して第二挿通孔29を貫通することで引掛け部27をループ状に囲む。そして、顎ベルト13の自由端部13aは基端側部分13bと積層状態に重ねられ、二層に重なった状態で係止部26を巻回して下方に延びるように装着されている。
【0021】
また、図6に示すように、係合凸部24の第一挿通孔28を形成する端面24cには、例えばその厚み方向中央部に断面略J字状に湾曲した突出部30が突出している。この突出部30の先端は自由端部13aと基端側部分13bが二重に積層された顎ベルト13の基端側部分13bに当接するか僅かに離間する程度の位置にあるものとする。しかも、この突出部30は顎ベルト13を引掛け部27から係止部26方向に引っ張る方向に湾曲させられており、当該方向への顎ベルト13の移動を許容可能とすると共に、逆方向への移動に抵抗することになる。
そして、係止部26の突出部30に対向する領域は例えば平面部26aとされていてもよく、この平面部26aと突出部30との間隔は、顎ベルト13の積層された二枚の厚みdとほぼ同一に設定されている。
【0022】
本実施例によるバックル16は、顎ベルト13の長さを調整できる。例えば、雄バックル18の基部25に取り付けた顎ベルト13の自由端部13aを手で緩めて基端側部分13bを引っ張れば顎ベルト13の長さを長くできて、比較的大きな顔の装着者に適合させて顎ベルト13を締め込むことができる。また、これとは逆に基端側部分13bを係止部26及び引掛け部27から緩めて自由端部13aを引っ張れば比較的小さな顔の装着者に適合させて顎ベルト13を締め込むことができる。
なお、本実施例において、一例として、雌バックル17及び雄バックル18からなるバックル16の材質は例えばポリアセタールまたはナイロンであり、顎ベルト13及び耳ベルト12の材質は例えばポリプロピレン、ナイロンまたはポリエステルである。しかも、顎ベルト13の厚みは例えば1.2mm程度である。
【0023】
本実施例によるヘルメット10及びそのバックル16は上述の構成を備えているから、図1に示すように、児童や幼児等の装着者がヘルメット20を被って、一方の耳ベルト12の略三角状の頂部に設けたバックル16の雌バックル17の嵌合凹部19に、他方の耳ベルト12に連結された顎ベルト13の端部に取り付けた雄バックル18の嵌合凸部24を嵌合させる。
この状態で、バックル16の雄バックル18に設けた顎ベルト13は、例えば図6に示すように、基部25において、引掛け部27をループ状に囲う顎ベルト13の自由端部13aと基端側部分13bが重ねられた状態で第一挿通孔28を通って係止部26で折り曲げられて下方に延びているものとする。
【0024】
そして、ヘルメット10のバックル16に上方向(矢印E方向)へ荷重が加わると共に、装着者の顎を固定する顎ベルト13の基端側部分13bに下方向(矢印A方向)へ力が加わった場合、顎ベルト13の基端側部分13bを矢印A方向に引っ張る相対的な力が働く。すると、顎ベルト13の基端側部分13bは積層された自由端部13aを介して係止部26へ相対的に押圧され、突出部30の近傍で基端側部分13bに係止部26へ向けて押す押圧力Fが働き、摩擦力により顎ベルト13の基端側部分13bが係止部26に対して移動したり緩んだりすることを阻止する。
これに対し、基端側部分13bの下側に位置する顎ベルト13の自由端部13aに下方向(矢印B方向)に力が加わった場合、基端側部分13bに荷重が加わらなければ、押圧力Fは働かないか小さいため、自由端部13aは下方向(矢印B方向)に可動となり、顎ベルト13の基端側部分13bを装着者の顎に締め込むことができる。
【0025】
また、図7に示すように、ヘルメット10のバックル16に上方向(矢印E方向)へ力が加わると共に、装着者の顎を固定する顎ベルト13の基端側部分13bに横方向(矢印A方向)へ力が加わった場合、基端側部分13bを矢印A方向に引っ張る相対的な力が働く。すると、顎ベルト13の基端側部分13bには積層された自由端部13aを介して係止部26を押圧する押圧力Fが働き、摩擦力により顎ベルト13が係止部26に対して移動したり緩んだりすることを阻止する。
そのため、顎ベルト13が、下方向だけでなく斜め下方向や横方向(水平方向)に引っ張られるようなことがあっても緩むことを防止できる。
これに対し、基端側部分13bの下側に位置する顎ベルト13の自由端部13aに下方向(矢印B方向)に荷重が加わった場合、基端側部分13bに荷重が加わらなければ、押圧力Fは働かないか小さいため、自由端部13aは基端側部分13bに対して下方向(矢印B方向)に可動となり、顎ベルト13を装着者の顎に締め込んだりすることができる。
【0026】
また、図8に示すように、装着者の顎を固定する顎ベルト13の基端側部分13bに斜め上方向(矢印A方向)へ力が加わった場合、顎ベルト13の基端側部分13bは積層された自由端部13aや係止部26を押圧することなく、押圧力Fが基端側部分13bに働かないから、顎ベルト13の基端側部分13bが自由端部13aや突出部30に対して矢印A方向に移動可能であり、顎ベルト13を緩めたりすることができる。
これに対し、基端側部分13bの下側に位置する顎ベルト13の自由端部13aに下方向(矢印B方向)に力が加わった場合、同様に押圧力Fは働かないため、自由端部13aは基端側部分13bに対して下方向(矢印B方向)に可動となり、顎ベルト13を装着者の顎に締め込んだりすることができる。
【0027】
上述のように本実施例によるバックル16及びヘルメット10によれば、ヘルメット10の側部に設けた顎ベルト13のバックル16について、下方向だけでなく斜め下方向や横方向(水平方向)に顎ベルト13の基端側部分13bを引っ張った場合でも顎ベルト13は移動したり緩んだりしない。また、突出部30を設けたことで、係止部26で折り曲げられた二重の顎ベルト13が緩むことを防止できる。しかも、バックル16の雌バックル17に押圧片等の顎ベルト13を押圧する部材を設けなくても顎ベルト13の移動や弛みを防止できる。
また、本実施例によるバックル16によれば、突出部30を雄バックル18で一体成形できるから、部品点数が増加しない上に製造が容易である。
【0028】
なお、本発明は上述の実施例によるバックル16に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない限り種々の変更を行うことができる。次に本発明の実施例の変形例について説明する。
上述の実施例によるバックル16では、雄バックル18の基部25における嵌合凸部24側の第一挿通孔28を形成する端面24cに略板状の突出部30を突出して形成したが、突出部30は必ずしも断面J字状に湾曲して形成されていなくてもよく、直線状等でもよく、逆方向に湾曲していてもよく、先端部にR状の面取りが施されていても良い。
また、突出部30は板状である必要はなく、ドット状や凸曲面など適宜形状の突出部を採用できる。また、端面24cに突出部を形成しなくてもよく、係止部26との間隙がd程度であれば同様な効果を発揮できる。
【0029】
また、上述した実施例では、三角ベルト12に雌バックル17を取り付け、雄バックル18の基部25に顎ベルト13を巻き付けて固定するようにしたが、これに代えて、三角ベルト12に雄バックル18を取り付け、顎ベルト13に雌バックル17を取り付けて、雌バックル17に基部25を設けて、基部25に顎ベルト13を巻き付けて固定するようにしてもよい。
また、三角ベルト12に別のベルトを取り付け、この別のベルトに雌バックル17または雄バックル18を固定するようにしてもよい。
また、本実施例によるヘルメット10について、幼児や学童用としたが、本発明はこのような用途に限定されることなく工事用等、適宜の用途に使用できる。ヘルメット10に取り付けたバックル16についても顔の側部に位置する構成に限定されない。また、ベルト付きバックル16についても、ヘルメット用に限定されることなく、バック、カバン、リュックサック、カメラやそのケース等任意の用途に用いることができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0030】
10 ヘルメット
13 顎ベルト
13a 自由端部
13b 基端側部分
16 バックル
17 雌バックル
18 雄バックル
19 嵌合凹部
24 嵌合凸部
24c 端面
25 基部
26 係止部
27 引掛け部
28 第一挿通孔
29 第二挿通孔
30 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌バックルと雄バックルを嵌合可能なベルト付きバックルにおいて、
前記雌バックルと雄バックルの一方には、前記バックルの嵌合部分側の端部に対して第一挿通孔を挟んで係止部が設けられ、該係止部に対して前記第一挿通孔と反対側に形成された第二挿通孔を挟んで引掛け部が設けられており、
前記引掛け部で巻回されたベルトの一方が前記第二挿通孔を通ってベルトの他方と重なって前記第一挿通孔を通って前記係止部を巻いて装着されていることを特徴とするベルト付きバックル。
【請求項2】
前記嵌合部分側の端部には、前記係止部を巻く二重のベルトに当接可能な突出部が前記第一挿通孔に突出して形成されている請求項1に記載されたベルト付きバックル。
【請求項3】
前記係止部と引掛け部は、前記雌バックルまたは雄バックルの延在方向に直交する両側に互いにずれて配設されている請求項1または2に記載されたベルト付きバックル。
【請求項4】
帽体と、該帽体の内周面に両端部を連結された一対の耳ベルトと、一方の耳ベルトに連結されたベルトと、該ベルトと他方の耳ベルトまたは該他方の耳ベルトに連結された別のベルトとを着脱可能に連結するための請求項1乃至3のいずれか1項に記載された前記バックルと、を備えたことを特徴とするベルト付きヘルメット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−13492(P2013−13492A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147251(P2011−147251)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(500272347)DICプラスチック株式会社 (27)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】