説明

ベルト伝動装置の張力調整装置

【課題】調整装置全体の省スペース化を図りつつ、幅広いテンション調整代が得られるベルト伝動装置の張力調整装置を得ること。
【解決手段】
フレームにアジャスターブラケットの脚片を固着し、該脚片に、フレーム固着面に対して一定の調整操作用間隙を有し、吊設される螺着部を設け、該螺着部内にテンションネジを進退させて張力調整させるべく構成すると共に、各脚片は、先開き状の開脚角度を持ってフレーム面に固着され、前記フレームには前記テンションネジが嵌入する嵌入孔が形成され、フレーム面よりも内方まで、前記テンションネジが嵌入し得る構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト伝動装置の張力調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、伝動ベルトに張力を付与するためのテンションアームを張力付与方向に作動附勢するテンションバネを設け、このテンションバネの張力を変更する張力調整装置を設けてあるベルト伝動装置の張力調整装置は公知である。
【0003】
そして、支持部材上にテンションの張力を調節する調節部材を設ける事も公知である。
【特許文献1】特開2000−135932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したベルト伝動装置の張力調整装置では、ネジロッド208がステー201に対して位置調節可能とされているものの、ネジロッド208全体が露出し、調整装置全体がコンパクトに纏まらない、という不具合がある。
そして、このような不具合は、ベルト張力の調整代を大きく取ろうとすると、ますますコンパクトに纏まらない傾向があった。
【0005】
また、ステー201はL字状に折曲されたプレートで形成されている為、強度面でも劣るものであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は、伝動ベルトに張力を付与するためのテンションアームを張力付与方向に作動附勢するテンションバネを設け、このテンションバネの張力を変更する張力調整装置を設けてあるベルト伝動装置の張力調整装置において、フレームにアジャスターブラケットの脚片を固着し、該脚片に、フレーム固着面に対して一定の調整操作用間隙を有し、吊設される螺着部を設け、該螺着部内にテンションネジを進退させて張力調整させるべく構成すると共に、各脚片は、先開き状の開脚角度を持ってフレーム面に固着され、前記フレームには前記テンションネジが嵌入する嵌入孔が形成され、フレーム面よりも内方まで、前記テンションネジが嵌入し得る構成とした。
【0007】
また、上記のベルト伝動装置の張力調整装置において、前記脚片に調整操作用工具挿通孔を形設した。
【0008】
また、上記段落0006記載のベルト伝動装置の張力調整装置において、前記フレームを、下向きコ字状部材で構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明のベルト伝動装置の張力調整装置は、上記のようにテンションネジが嵌入孔より、フレーム内に嵌入するので、調整装置全体の省スペース化を図りつつ、幅広いテンション調整代が得られるものである。
また、前記調整操作用間隙を、極力小さく、例えば、スパナ幅プラス多少の遊びとする事で、アジャスターブラケットの高さを抑えることができ、コンパクトに構成できるものである。
【0010】
また、本発明のベルト伝動装置の張力調整装置は、前記脚片に調整操作用工具挿通孔を形設したことにより、装置全体としてコンパクトに纏めつつ、スパナ等の調整用工具をアジャスターブラケットの脚片に干渉することなく、スムーズに調整操作できるものである。
【0011】
また、本発明のベルト伝動装置の張力調整装置は、前記フレームを、下向きコ字状部材で構成したことにより、下向きコ字状のフレームの上面に、アジャスターブラケットの脚片が固着され、開脚角度と相俟って、脚片が強固に固着され、その為、開脚角度を比較的小さく設定でき、それ故に、調整操作の際、スパナ等の工具を回すスペースを広く取れ、且つ、フレーム上面にて、スパナ等の工具やナットをガイドでき、調整操作がし易い利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
すなわち、本発明に係る作業機は、基本的構造として、伝動ベルトに張力を付与するためのテンションアームを張力付与方向に作動附勢するテンションバネを設け、このテンションバネの張力を変更する張力調整装置を設けてあるベルト伝動装置の張力調整装置を具備している。
【0014】
そして、特徴的構造として、フレームにアジャスターブラケットの脚片を固着し、該脚片に、フレーム固着面に対して一定の調整操作用間隙を有し、吊設される螺着部を設け、該螺着部内にテンションネジを進退させて張力調整させるべく構成すると共に、各脚片は、先開き状の開脚角度を持ってフレーム面に固着され、前記フレームには前記テンションネジが嵌入する嵌入孔が形成され、フレーム面よりも内方まで、前記テンションネジが嵌入し得る構成としている。
【0015】
このようにして、調整装置全体の省スペース化を図りつつ、幅広いテンション調整代が得られ、アジャスターブラケットの高さを抑えることができ、コンパクトに構成できるものである。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は乗用四輪作業車(乗用管理機)の左側面図、図2は本発明の一部破断要部側面図、図3は本発明の一部破断要部平面図、図4は本発明の要部斜視説明図、図5は本発明の一部平面図、図6は本発明の一部側面図である。
【0018】
図1において、乗用管理機は、車体フレ−ム1の前方寄り部分に運転部2を設けると共に、車体フレ−ム1の後部にエンジン3を搭載し、かつ、エンジン3より前方の車体の略中央部分にトランスミッション部4を配設して構成され、側面視で前記運転部2の座席より下方の空間部において前車軸体(フロントアクスル5)に支持される左右一対の操向前車輪6,6と、車体フレ−ム1の後部においてリヤアクスルケ−ス7,7に支持される左右一対の後車輪8,8とを備えている。
【0019】
そして、左右一対の操向前車輪6,6を、前記エンジン3からトランスミッション部4に伝達され、同ミッション部4から前輪伝動部9を経て前車軸体5に伝達される動力によって駆動するようになっており、又、操向前車輪(6)(6)は前記運転部(2)の操縦コラム10に設けられているステアリングホイル11で転向動作させる操舵機構によって左右転向できるように構成されている。
【0020】
また、左右の後車輪8,8は、トランスミッション部4から後輪駆動軸12,12を経て左右のリヤアクスルケ−ス7,7に伝達される動力によって同期回転駆動されるようになっている。つまり、前輪操向・前後輪駆動の乗用四輪作業車に構成されている。
【0021】
また、車体フレ−ム1の後端部には、油圧シリンダなど適宜の昇降作動手段(図示省略)によって昇降調節される三点ヒッチや二点ヒッチ等の作業機連結装置13と、その作業機連結装置13にロ−タリ耕耘部等の駆動作業機を着装した場合に、その着装作業機に向けてエンジン3からの動力を伝達するPTO伝動装置14を備える。
【0022】
車体フレ−ム1は、上部外周フレ−ム15と、下部フレ−ム16と、必要数の横向き連結部材17等で枠組みされて剛性の高い枠体に組成され、その枠体の所要部位に前述した運転部2・エンジン3・トランスミッション部4・前車軸体5・リヤアクスルケ−ス7,7等々の諸装置を装設するものとなっている。
また、車体フレ−ム1には、前記操向前車輪6,6、後車輪8,8の上方を覆蓋する前後のフェンダ部と、座席載設部18cと、エンジン3等を収容する機械室部とが一体的に形成された覆蓋体18が装着される。
【0023】
車体フレ−ム1の上部外周フレ−ム15は、平面視(図示省略)において後方開放のコ字状を呈し、側面視においては、前端部分が操向前車輪6,6よりやや前上方の低位置に在って少し前上がりに傾斜し、前上がり傾斜部分の後端から斜め後上方の高位置に向けて屈曲延伸してその後上端に連なる後方部分が前記運転部2の座席の左右脇部位から車体後端にかけての部分に略水平に位置するものになっている。
【0024】
そして、上部外周フレ−ム15の前部に床張りして搭乗フロアを形成し、搭乗フロアの前端左右方向中央部に前記操縦コラム10を立設して、運転部2の座席19に着席するオペレ−タがステアリングホイル11を転向操作し、かつ、座席19の近傍に配設されている変速レバ−20や操縦コラム10部に設けられているアクセルレバ−21・PTOクラッチレバ−22、ブレ−キペダル23等の各種操作具類を操作して運転を行えるようになっている。
【0025】
前記トランスミッション部4とリヤアクスルケ−ス7,7との間にエンジン3を配設して、同エンジン3にトランスミッション部4を第1伝動機構Bを介して連動連結している。
【0026】
前記第1伝動機構Bは、エンジン3側の出力プーリ30とトランスミッション部4側の入力プーリ31との間に掛張される走行駆動用の伝動ベルト32と、該伝動ベルト32に、テンションローラ33を介して適正な張力を付与するため、テンションアーム34を張力付与方向に作動附勢するテンションバネ35を有する張力調整装置Cとで構成されている。
また、前記テンションバネ35は、一方をテンションアーム34に、他方をテンションネジ36に係止され、該テンションネジ36はアジャスターブラケット37の螺着部38にナット44,45にて進退調節可能に螺着されている。
前記アジャスターブラケット37は、フレーム39の上面に、平面視先開き状の開脚角度β,βを持って立設固定される脚片40a,40b,40cと、中央脚片40bに前記フレーム39固着面39aに対して一定の調整操作用間隙41を有し吊設される前記螺着部38とで構成されるものである。
また、前記脚片40bにはフレーム39上面との間にスパナ等の調整操作用工具挿通孔42が形設され、前記フレーム39には前記テンションネジ36の下端が嵌入する嵌入孔43が形成され、フレーム39上面より下方までテンションネジ36が嵌入し得るものである。
前記フレーム39は、下向きコ字状中空部材で構成されている。
【0027】
このような構成で、ブレーキペダル23を踏むと、ブレーキワイヤを介してテンションアーム34が移動し、走行駆動用の伝動ベルト32を押圧していたテンションローラ33の押圧力が弛み、動力の伝達が断たれる。
同時に、ブレーキロッド、トランスミッション部4内の左右カムシャフトを介して左右のサイドブレーキが同時にかかる。
【0028】
上記走行駆動の伝動ベルト32の伝動に必要なベルトテンション力を得るために、テンションアーム34の調整をするにあたっては、前記ブレーキペダル23を解除してテンションローラ33を伝動ベルト32に当て、該伝動ベルト32の中途部を指で軽く押して、たわみが10〜15mmになるようにテンションネジ36を、螺着部38内を進退させ、ナット44,45で調節固定する。
この際、ナット45を締めるにあたっては、スパナ等の工具をフレーム39の上面に沿わせ、螺着部38との間に形成される空間部内で締めつけ固定する。スパナ等の工具は、脚片40bに形設される調整操作用工具挿通孔42により、アジャスターブラケット37に干渉することなくスムーズに操作できるものである。
また、前記フレーム39には前記テンションネジ36の下端が嵌入する嵌入孔43が形成され、フレーム39上面より下方までテンションネジ36が嵌入し、コンパクトな構成で且つ大幅な調整が可能となる。
【0029】
なお、前記フレームを、下向きコ字状部材で構成し、且つ下向きコ字状のフレームの上面を平滑平面にて構成すると、アジャスターブラケットの脚片が更に強固に固着され、開脚角度を比較的小さく設定でき、平滑なフレーム上面にて、スパナ等の工具やナットをガイドでき、調整操作が一層し易くなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】乗用四輪作業車の左側面図。
【図2】本発明の一部破断要部側面図。
【図3】本発明の一部破断要部平面図。
【図4】本発明の要部斜視説明図。
【図5】本発明の一部平面図。
【図6】本発明の一部側面図。
【符号の説明】
【0031】
A 乗用四輪作業車
B 第一伝動機構
C 張力調整装置
32 伝動ベルト
33 テンションローラ
34 テンションアーム
35 テンションバネ
37 アジャスターブラケット
38 螺着部
39 フレーム
40a,40b,40c 脚片







【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝動ベルトに張力を付与するためのテンションアームを張力付与方向に作動附勢するテンションバネを設け、このテンションバネの張力を変更する張力調整装置を設けてあるベルト伝動装置の張力調整装置において、フレーム39にアジャスターブラケット37の脚片40a,40b,40cを固着し、該脚片40bに、フレーム39固着面に対して一定の調整操作用間隙41を有し、吊設される螺着部38を設け、該螺着部38内にテンションネジ36を進退させて張力調整させるべく構成すると共に、各脚片40a,40b,40cは、先開き状の開脚角度β,βを持ってフレーム固着面39aに固着され、前記フレーム39には前記テンションネジ36が嵌入する嵌入孔43が形成され、フレーム固着面39aよりも内方まで、前記テンションネジ36が嵌入し得る構成としたことを特徴とするベルト伝動装置の張力調整装置。
【請求項2】
前記脚片40bに調整操作用工具挿通孔42を形設したことを特徴とする請求項1記載のベルト伝動装置の張力調整装置。
【請求項3】
前記フレーム39を、下向きコ字状部材で構成した請求項1記載のベルト伝動装置の張力調整装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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