説明

ベンゾトリアゾール誘導体の精製方法

【課題】下記一般式(A)または(B)で示される濃色の液状ベンゾトリアゾール誘導体を精製するに際して、1回の減圧蒸留でも化粧品用途として十分合格できる前処理精製法を提供すること及び化粧品用途以外の通常の工業原料であれば、引き続き減圧蒸留などを行うことなく、それだけでも十分使用可能な程度まで精製できる精製方法を提供すること。


【解決手段】酸処理ベントナイト、還元作用を有する有機酸及び吸着剤を混合添加して加熱精製し、その後減圧蒸留を1回行うことで、前記ベンゾトリアゾール誘導体を純化、脱色できる。化粧品用途以外であれば、前記減圧蒸留過程を省略することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンゾトリアゾール誘導体を脱色する精製方法及び該精製されたベンゾトリアゾール誘導体を配合した皮膚外用剤に関する。
【0002】
化粧料には配合成分の紫外光に対する安定性を向上させるために、あるいは人体の皮膚を保護するために、紫外線吸収剤が配合されている。
【0003】
一方、紫外線の波長領域としては、UV−A領域(320〜400nm)、UV−B領域(290〜320nm)UV−C領域(〜290nm)に分けられるが、このうちUV−C領域の紫外線は、通常、地上に達することはない。また、UV−A領域(320〜400nm)の紫外線は皮膚を黒く侵すが、UV−B領域(290〜320nm)の紫外線のようにサンバーンを起こし、皮膚の老化を促進させるものではないと考えられていた。ところが近年になってUV−B領域の紫外線が比較的、皮膚の表面部分にとどまるのに対してUV−A領域の紫外線が、皮膚の深部にまで達し、皮膚の老化はもとより皮膚癌を誘発する原因となることがわかってきた。
【0004】
今日までに使用されてきた化粧料用紫外線吸収剤は、構造面から分類すると、(1)安息香酸誘導体、(2)ケイ皮酸誘導体、(3)ベンゾフェノン誘導体、(4)ジベンゾイルメタン誘導体、(5)サリチル酸誘導体等がある。そして近年は、(2)と(4)の紫外線吸収剤が多用されている。
【0005】
しかしながら、前記にあげた紫外線吸収剤は、実用面から見るとそれぞれに問題がある
。例えば、(1)の安息香酸誘導体では、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシルは、液状、透明であり、扱いやすい長所はあるが、これらの誘導体を含めて安全性の疑いがあり、近年は使用されていない。また、極大吸収波長が290nm付近にあり、UV−B領域のみの紫外線を吸収する。
【0006】
(2)のケイ皮酸誘導体では、現在市販されているサンケア化粧品に最もよく使用されている紫外線吸収剤として、p−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルエステルがある。極大吸収波長は310nm付近にあり、吸収域がUV−A領域には及ばない。また、日光により変質して着色性や紫外線防御効果の持続性に問題がある。
【0007】
(3)のベンゾフェノン誘導体では、例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノンがUV−A,UV−B領域にわたって吸収があり、比較的皮膚外用剤基剤への溶解性も良いが、極大吸収波長がややUV−B領域に近いところにあり、吸光度もあまり大きくない。また近年では基本骨格の構造物(ベンゾフェノン)が環境ホルモンとして指摘されていて、その使用が敬遠されている。
【0008】
(4)のジベンゾイルメタン誘導体では、4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタンがよく皮膚外用剤に使用されている。極大吸収が360nm付近にあり、吸光度も大きく、UV−A領域の紫外線吸収剤として優れている。しかしながら、光安定性に問題があり、皮膚外用剤用の油分に対しての相溶性が悪く、少量しか混合できない。
【0009】
(5)のサリチル酸誘導体では、サリチル酸オクチルが使われている。UV−B領域に極大吸収波長をもち、オイル状であり、パラフィンオイル等の相溶性に優れるが吸光度が低いため、あまり実用化されていない。
【0010】
このため、UV−B領域においては、(2)のp−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシルが、UV−A領域に関しては(4)の4−tert−ブトキシ−4−メトキシジベンゾイルメタンが使用されることが多い。特に近年では、UV−A領域の紫外線吸収に対する要求が高まっているが、皮膚外用剤基剤の油分との相溶性の高い紫外線吸収剤は商品化されるに至っていないのが現状である。
【0011】
ところで、紫外線吸収能を有する化合物としては、ベンゾトリアゾール誘導体があり、例えば特許文献1に、写真フイルム、ラッカー、塗料などの安定化剤として、紫外線吸収剤の利用が開示されている。そして、その製造方法は、o−ニトロアニリンを亜硝酸ソーダ等でジアゾニウム塩とし、フェノールとカップリングしてモノアゾ化合物を合成した後、還元してベンゾトリアゾールとする方法が一般的である。(特許文献2〜7参照)。ベンゾトリアゾール誘導体であれば、油分との相溶性の高い誘導体を製造しやすいと考えられる。
【特許文献1】特開平3−223384号公報
【特許文献2】特開昭52−113973号公報
【特許文献3】特開昭52−113974号公報
【特許文献4】特開平2−134370号公報
【特許文献5】特開平4−59768号公報
【特許文献6】特開平7−18246号公報
【特許文献7】特開2003−26668号公報
【0012】
前記のような合成方法を経て得られるベンゾトリアゾール誘導体の一次回収物は、液状の粗オイル状態である。この点、得られる一次回収物が固体であるならば、再結晶を繰り返し、比較的簡単に精製できる。これに対して液状の粗オイルの場合、その精製工程は固体の場合よりもより複雑になる。粗オイルの精製は、通常、更にシリカゲル、イオン交換樹脂、活性炭などの吸着剤を用いて前処理精製された上で、減圧蒸留やカラムクロマト法を用いて精製が行われるのが一般的である。特に粗オイル状態のベンゾトリアゾール誘導体は、濃黄色〜暗赤色のような濃色に着色しており、前記前処理精製方法のみでは脱色が不十分で工業製品としては出荷できるレベルにない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前記前処理精製の後に、減圧蒸留やカラムクロマト法を行う精製においては、そのための大掛かりな設備、装置が必要となる。また通常減圧蒸留法による精製は、複数回以上繰り返して行う操作であり、時間及び手間がかかるため、最終製品のコスト高の要因となる。
【0014】
特に、紫外線吸収能を有する化合物を化粧品用途として用いる場合には、他の用途以上に高い透明性が求められる。ところが、液状の粗オイル状態で濃黄色〜暗赤色のような濃色に着色している前記ベンゾトリアゾール誘導体では、吸着剤を用いた前記前処理精製では、引き続き行う減圧蒸留を何回も繰り返し行わなければ目的とする透明度の高い精製物は得られなかった。
【0015】
そこで本発明では、濃色のベンゾトリアゾール誘導体を精製するに際して、1回の減圧蒸留でも、化粧品用途として十分合格できる前処理精製法を提供することを課題とする。また、化粧品用途以外の通常の工業原料であれば、引き続き減圧蒸留などを行うことなく、それだけでも十分使用可能な程度まで精製できる精製方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、ベンゾトリアゾール誘導体の精製方法として、下記一般式(A)または(B)で示されるベンゾトリアゾール誘導体に、酸処理ベントナイト及び有機酸を混合添加し、加熱することにより、前記ベンゾトリアゾール誘導体を純化、脱色させることを最も主要な手段とする。
一般式(A)
【化1】

一般式(B)
【化2】

(式(A)中、R1は炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、R2は炭素数1〜7の直鎖または分岐のアルキル基、ただし、R1とR2の炭素数の合計は3以上16未満である。また式(B)中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、ただし、RとRの炭素数の合計は3以上16未満である。
【発明の効果】
【0017】
一般式(A)または(B)の構造を有するベンゾトリアゾール誘導体は、常温では液体であって、UV−A領域に紫外線吸収を有し、かつ各種油油分との相溶性の高い化合物であるが、本発明の精製方法で処理されたことにより、化粧品ほどに高い透明性を求められていない一般の工業製品では、他の精製工程を経ることなく、最終的な製品とすることができる。
【0018】
また、化粧品用途とする場合でも、前記精製方法を前処理精製法として、引き続き減圧蒸留精製を1回行うだけで、十分に不純物が取り除かれ、かつ透明度の高い化粧品用途に合格するベンゾトリアゾール誘導体とすることができる。かかる精製を受けたベンゾトリアゾール誘導体は、前記前処理精製方法を行わずに、減圧蒸留精製を3〜4回繰り返し行ったベンゾトリアゾール誘導体よりも透明度が高いものとすることができるのみならず、複数回の蒸留精製工程が省略できるので、コスト的なメリットも有する。
【0019】
更に、本発明のうち、前記化粧品用途の精製方法によれば、複数回以上減圧蒸留を行った場合に比べても純度が高いので、経時的安定性に優れるベンゾトリアゾール誘導体とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明について詳述する。
【0021】
一般式(A)または(B)で示されるベンゾトリアゾール誘導体は、液状であり、UV−A領域に大きな吸収を有し、かつ耐熱性、蒸散性に優れ、化学的に安定した化合物であり、各種化粧料基材への相溶性が高い化合物である。
【化1】

【化2】

【0022】
式中、R〜Rは、それぞれ独立に任意の置換基を表し、任意の置換基はさらに置換されていても良い。該任意の置換基の例としてR及びRは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基等の置換されても良い炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基を示すことができる。
【0023】
また該任意の置換基の例としてRは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基等の置換されても良い炭素数1〜7の直鎖または分岐のアルキル基等が挙げることができる。
【0024】
また該任意の置換基の例としてRは、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基等の置換されても良い炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基等が挙げることができる。
【0025】
ただし、R1とR2の炭素数の合計は3以上16未満であり、RとRの炭素数の合計は3以上16未満である。
【0026】
本発明で用いるベンゾトリアゾール誘導体の合成には、公知の方法を用いることができる。一例を挙げると、一般式(A)のベンゾトリアゾール誘導体の合成の場合は次式(化7)のような反応を経て合成することができる。また一般式(B)のベンゾトリアゾール誘導体の合成の場合は次式(化8)のような反応を経て合成することができる。メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒やメチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒を使用し、炭酸カリウム、炭酸ソーダにてDMF等の溶媒下、100℃程度の弱い還流下にて6時間程度反応させた後、無機物を水洗にて除去後、脱溶媒することにより、目的の反応物が得られる。
【化7】

【化8】

【0027】
だたし、この段階で得られるベンゾトリアゾール誘導体は、粗オイルであり、濃黄〜赤黒く着色しているものである。本発明では、下記精製工程にて脱色したベンゾトリアゾール誘導体を用いる。
【0028】
(精製方法)
前記粗オイルに対して、少なくとも酸処理ベントナイト及び還元作用を有する有機酸を混合添加し、100〜120℃で約1時間攪拌する(加熱精製工程)。なお、酸処理ベントナイトの代わりに、酸性白土,活性白土を使用することもできる。その後、マイクロフィルターなどを用いて濾過を行う(濾過工程)。濾別した濾液の色は淡黄色透明となり、通常の工業製品としてはそれだけで十分使用可能な程度に脱色されベンゾトリアゾール誘導体となる。なお本発明の精製方法は、前記液状のベンゾトリアゾール誘導体に好適な精製方法であるが、加熱工程を有しているので、液体状のベンゾトリアゾール誘導体の粗オイルに限らず、例えば、プラスチックレンズ用途に用いられる固体のベンゾトリアゾール誘導体の一次回収物に対しても応用できる精製方法である。
【0029】
更に化粧品用途の場合には、前記粗オイルの精製において、前記酸処理ベントナイト及び有機酸の他に、吸着剤を混合添加し、更に前記濾過工程後に減圧蒸留工程を1回以上行うことにより、高度に脱色され、かつ安全性の高いベンゾトリアゾール誘導体にすることができる。すなわち前記粗オイルに対して、少なくとも酸処理ベントナイト、有機酸及び吸着剤を混合添加し、100〜120℃で約1時間攪拌する(前処理加熱精製工程)。その後、マイクロフィルターなどを用いて濾過を行う(濾過工程)。更にその後、減圧蒸留法により、更に精製を行う(減圧蒸留工程)。減圧蒸留工程は、1度で十分化粧品用途に供することのできるレベルに達するが、特に不純物を排除したい場合などでは、減蒸留工程を複数回繰り返し行うこともできる。
【0030】
酸処理ベントナイトとは、主にモンモリロナイト‐バイデライト系のスメクタイトから成り立っている鉱物であるベントナイトに、無機酸などの酸を加えて加熱処理したものである。酸処理ベントナイトは、他の吸着剤と異なり、極性を有する不純物を選択的に吸着するものである。前記ベンゾトリアゾール誘導体の粗オイルを黄色〜赤褐色に着色する着色成分は、主にフェノール系の重合物であるので、極性を有する不純物を選択的に取り除くことのできる酸処理ベントナイトは、前記粗オイルの脱色精製に適している。前記酸処理に用いる酸としては、無機酸が好ましく、なかでも硫酸や塩酸を好適に用いることができる。前記加熱の温度、時間としては、80〜100℃で数時間行うことで、十分な効果を有する酸処理ベントナイトを得ることができる。
【0031】
前記還元作用を有する有機酸としては、例えばシュウ酸、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などを挙げることができる。有機酸以外にも濃度を調整すれば塩酸などでも本発明の脱色を得ることができるが、取扱いやすさや安全性の面から有機酸が好ましい。前記有機酸は単独または混合して使用することができる。
【0032】
このうち、シュウ酸、アスコルビン酸及びクエン酸については、実験的にも本発明の効果を奏することが認められた。なかでも、シュウ酸は、脱色能力が高く好適である。なおシュウ酸を用いても、化粧品用途に使用する際には、引き続き減圧蒸留精製を行うので、残留シュウ酸による安全性については問題がない。ただし、特に厳格な安全性が求められる用途については、有機酸としてアスコルビン酸やクエン酸などを好適に用いることもできる。
【0033】
吸着剤の具体例としては、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、珪酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及びゼオライトを挙げることができる。これら吸着剤は、前記酸処理ベントナイトと異なり、前記粗オイルの脱色にはあまり寄与しないが、前記酸処理ベントナイトでは除去しにくい種類の不純物を取り除くことができるので、化粧品用途などにおいて、精製物の安全性を向上させることができる。なお、前記吸着例のうち、活性炭については、実験的にも本発明の効果を奏することが認められた。
【0034】
酸処理ベントナイト及び還元作用を有する有機酸は、それぞれ別個に作用させても、ある程度の精製効果が得られるが、これら両者を同時に添加し、加熱を行うとことで相乗的な精製効果が得られる。本発明の精製方法による効果的な脱色効果は、この酸処理ベントナイトと有機酸との相乗効果によるところが大きいと考えられる。しかし、精製過程においては、粗オイルから着色成分以外の不純物の同時に取り除かれるほうがより好ましい。この点酸処理ベントナイトだけでも、着色成分以外の成分を取り除く効果をある程度有するが、更に吸着剤を混合添加して加熱する精製方法によれば、着色成分以外の不純物が効率的に除去できるので好ましい。これは前記酸処理ベントナイトと有機酸との相乗効果の他に、吸着剤と有機酸との相乗的効果も同時に発揮されるためであると考えられる。特に精製物を化粧品用途に用いる場合には、酸処理ベントナイト、還元作用を有する有機酸及び吸着剤を全て加えて混合添加して加熱処理を行い、ベンゾトリアゾールの精製を行うべきである。
【0035】
前記加熱工程にて、粗オイルに加える添加物の重量割合は、全体重量に対して酸処理ベントナイトが5〜20%、吸着剤が1〜10%、有機酸が0.1〜5%の範囲にすることが好ましい。
【0036】
(皮膚外用剤)
本発明の化粧品用途の精製方法で精製したベンゾトリアゾール誘導体は、不純物が少なく、かつ透明度が高いので、皮膚外用剤に含有させるなどの方法で、好適に化粧品用途に用いることができる。前記一般式(A)(B)で示されるベンゾトリアゾール誘導体は、油相成分に対する溶解性に優れるので、エマルジョンの皮膚外用剤に添加する場合、該ベンゾトリアゾール誘導体を油相側に含有させて、水相と懸濁させることができる。
【0037】
前記方法で精製されたベンゾトリアゾール誘導体を含有する本発明の皮膚外用剤には、前記ベンゾトリアゾール誘導体に加え、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシルなど他の紫外線吸収剤も併せて含有させることができる。また前記紫外線吸収剤成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、酸化防止剤、油性成分、その他の紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、各種皮膚栄養剤等を必要に応じて適宜配合して常法により製造することができる。例えば配合成分としては次のようなものが挙げられる。
【0038】
アボガド油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、月見草油、ヒマシ油、ヒマワリ油、茶実油、コメヌカ油、ホホバ油、カカオ脂、ヤシ油、スクワレン、牛脂、モクロウ、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン、流動パラフィン、ポリオキシエチレン(8モル)オレイルアルコールエーテル、モノオレイン酸グリセリル、シクロメチコン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサンなどの油分。
【0039】
カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロールなどの高級アルコール。
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸、リノール酸、リノレン酸などの高級脂肪酸。
ポリエチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、ムコ多糖、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、キトサンなどの保湿剤。
メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアガム、ポリビニルアルコールなどの増粘剤。
【0040】
エタノール、1,3−ブチレングリコールなどの有機溶剤。
ブチルヒドロキシトルエン、トコフェロール、フィチン酸などの酸化防止剤。
安息香酸、サリチル酸、ソルビン酸、パラオキシ安息香酸エステル(エチルパラベン、ブチルパラベンなど)、ヘキサクロロフェンなどの抗菌防腐剤。
グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、タウリン、アルギニン、ヒスチジンなどのアミノ酸と塩酸塩。
【0041】
アシルサルコシン酸(例えばラウロイルサルコシンナトリウム)、グルタチオン、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸などの有機酸。
【0042】
ビタミンA及びその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2及びその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15及びその誘導体などのビタミンB類、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル(塩)、アスコルビン酸ジパルミテートなどのビタミンC類、α―トコフェロール、β―トコフェロール、γ―トコフェロール、ビタミンEアセテート、ビタミンEニコチネートなどのビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチンなどのビタミン類。
【0043】
ニコチン酸アミド、ニコチン酸ベンジル、γ―オリザノール、アラントイン、グリチルリチン酸(塩)、グリチルレチン酸及びその誘導体、ヒノキチオール、ムシジン、ビサボロール、ユーカリプトール、チモール、イノシトール、サポニン類(サイコサポニン、ニンジンサポニン、ヘチマサポニン、ムクロジサポニンなど)、パントテニルエチルエーテル、エチニルエストラジオール、トラネキサム酸、セファランチン、プラセンタエキスなどの各種薬剤。
【0044】
ギシギシ、クララ、コウホネ、オレンジ、セージ、タイム、ノコギリソウ、ゼニアオイ、センキュウ、センブリ、トウキ、トウヒ、バーチ、スギナ、ヘチマ、マロニエ、ユキノシタ、アルニカ、ユリ、ヨモギ、シャクヤク、アロエ、クチナシ、サワラなどの有機溶剤、アルコール、多価アルコール、水、水性アルコールなどで抽出した天然エキス。
ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイドなどのカチオン界面活性剤。
【0045】
エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等の金属封鎖剤。
香料、スクラブ剤、精製水など。
【0046】
本発明の皮膚外用剤の特に好ましい基剤は、流動パラフィン、スクワラン、イソオクタン酸セチル、イソオクタン酸トリグリセライド、コハク酸ジ2−エチルヘキシルの油分である。
【0047】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、軟膏、クリーム、乳液、ローション、パック等、その製品形態は問わない。特には日焼け止め化粧料として最適である。またその剤型も特に問わない。
【実施例】
【0048】
以下に実施例により本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0049】
〔ベンゾトリアゾール誘導体(粗オイル)の合成〕
(合成例1)
化合物(a):2−[4−(1−メチルペンチルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの合成
【化3】

常法により合成した6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール
15.9g(0.07モル)を温度計、還流冷却器を備えた200mL四つ口フラスコに入れ、4−メチル−2−ペンタノン 90mL、ジメチルホルムアミド
2.0gを加えて攪拌した。この中によう化カリウム 0.5g、炭酸カリウム 9.7g(0.07モル)、および2-ブロモヘキサン 11.6g(0.07モル)を加えて攪拌しながら還流温度まで加熱した。還流温度を保持しながら14時間攪拌した後、温水50mLで洗浄し、炭酸カリウム、生成した無機物を除去し、その後水洗した。さらに、4−メチル−2−ペンタノンを常圧で回収した。
【0050】
(合成例2)
化合物(b):2−[4−(1−エチルブトキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの合成
【化4】

常法により合成した6−(2H−ベンゾトリアゾール-2-イル)レゾルシノール 13.6g(0.06モル)を温度計、還流冷却器を備えた200mL四つ口フラスコに入れ、4−メチル−2−ペンタノン
90mL、ジメチルホルムアミド 2.0gを加えて攪拌した。この中によう化カリウム 0.5g、炭酸カリウム 8.3g(0.06モル)、および3−ブロモヘキサン
9.9g(0.06モル)を加えて攪拌しながら還流温度まで加熱した。還流温度を保持しながら14時間攪拌した後、温水50mLで洗浄し、炭酸カリウム、生成した無機物を除去し、その後水洗した。さらに、4−メチル−2−ペンタノンを常圧で回収した。
【0051】
(合成例3)
化合物(c):2−[4−(1−メチルヘプチルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの合成
【化5】

【0052】
常法により合成した6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール 13.6g(0.06モル)を温度計、還流冷却器を備えた200mL四つ口フラスコに入れ、4−メチル−2−ペンタノン
90mL、ジメチルホルムアミド 2.0gを加えて攪拌した。この中によう化カリウム 0.5g、炭酸カリウム 8.3g(0.06モル)、および2-プロモオクタン
11.6g(0.06モル)を加えて攪拌しながら還流温度まで加熱した。還流温度を保持しながら17時間攪拌した後、温水50mLで洗浄し、炭酸カリウム、生成した無機物を除去し、その後水洗した。
さらに、4−メチル−2−ペンタノンを常圧で回収した。
【0053】
(合成例4)
化合物(d):[4−(2−エチルヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシフェニル]−2H−ベンゾトリアゾールの合成
【化6】

【0054】
常法により合成した6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)レゾルシノール 45.4g(0.20モル)を温度計、還流冷却器を備えた200mL四つ口フラスコに入れ、4-メチル-2-ペンタノン 50mL、ジメチルホルムアミド
4.0gを加えて攪拌した。この中によう化カリウム 1.0g、炭酸カリウム 16.6g(0.12モル)、および2−エチルヘキシルブロマイド77.2g(0.40モル)を加えて攪拌しながら還流温度まで加熱した。還流温度を保持しながら15時間攪拌した後、メチルイソブチルケトンを常圧で回収して残留したオイルを水洗にて、過剰の炭酸ソーダと生成した無機物を除去した。
【0055】
〔酸処理ベントナイトの調製〕
モンモリロン石を主原料とするSiO/Alが40〜80重量%含まれるベントナイトの粉末80gを乾燥機中60℃で一昼夜乾燥させた後、温度計、攪拌機、玉付きコンデンサーを備えた三つ口フラスコに移し、5%の希硫酸800mlを加えて常圧下、90〜100℃にて5時間加熱、攪拌した。さらにこのスラリー液をオートクレーブで90℃/0.2Mpaの加圧下にて8時間処理した後、ブフナーロートにて濾過し、ロート上に堆積したケーキを得た。このケーキを大量のイオン交換水で充分に洗浄して硫酸を洗い流した後、乾燥機に入れて150〜160℃で24時間乾燥させた。前記工程を経て酸処理ベントナイトの粉末約70gを得た。
【0056】
〔ベンゾトリアゾール誘導体(粗オイル)の精製〕
(精製例1)
前記合成で得られた化合物(a),(b),(c),(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5g、シュウ酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。次に前記ろ過されたオイルから減圧蒸溜し、所定の圧力、温度における留分を精製例1の精製物とした。これらの精製物をそれぞれ(a1),(b1),(c1),(d1)とする。
【0057】
(a1)では、197〜200℃/0.20〜0.25mmHgでの留分を精製化合物とした。前記精製後10.6gの精製物が得られた。この精製化合物は、淡黄色透明色であり、常温域で液状であり、収率は48.6%、λmax346nmのときのεは25500であった。
【0058】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:10A VPシリーズ((株)島津製作所)
使用カラム:SUMPAX ODS A-212 5μm 6mmφx15cm
検出:UV250nm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:水=95:5
流速:1.0mL/分
<測定結果>
HPLC純度 99.5%
【0059】
(b1)では、194〜200℃/0.22〜0.24mmHgでの留分を精製化合物とした。前記精製後7.6gの精製物が得られた。この精製化合物は、常温域で液状であり、収率は39.2%、λmax346nmのときのεは26600であった。
【0060】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:10A VPシリーズ((株)島津製作所)
使用カラム:SUMPAX ODS A-212 5μm 6mmφx15cm
検出:UV250nm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:水=95:5
流速:1.0mL/分
<測定結果>
HPLC純度 97.7%
【0061】
(c1)では、208〜212℃/0.20〜0.23mmHgでの留分を精製化合物とした。前記精製後7.6gの精製物が得られた。この化合物は、常温域で液状であり、収率は46.6%、λmax346nmのときのεは23900であった。
【0062】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:10A VPシリーズ((株)島津製作所)
使用カラム:SUMPAX ODS A-212 5μm 6mmφx15cm
検出:UV250nm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:水=95:5
流速:1.0mL/分
<測定結果>
HPLC純度 97.3%
【0063】
(d1)では、220〜230℃/0.1〜0.2mmHgでの留分を精製化合物とした。前記精製後54.6gの精製物が得られた。この化合物は、常温域で液状であり、収率は、80.5%、λmax346nmの時ε25000であった。
【0064】
また、HPLC分析により、純度を測定した。
<測定条件>
装置:10A VPシリーズ((株)島津製作所)
使用カラム:SUMPAX ODS A-212 5μm 6mmφx15cm
検出:UV250nm
カラム温度:40℃
移動相:メタノール:水=95:5
流速:1.0mL/分
<測定結果>
HPLC純度 99.2%
【0065】
精製例1で精製を行って得られた(a1)(b1)(c1)(d1)の紫外〜可視吸収スペクトルをそれぞれ図1〜4に示す。また(a1)(b1)(c1)については、赤外線吸収測定もおこなった。各精製物の赤外線吸収スペクトルをそれぞれ図5〜7に示す。なお赤外線吸収測定の条件は次のとおりである。
装置:FTIR−8400S((株)島津製作所製)
検体:1/200(KBr)
【0066】
(精製例2)
前記合成で得られた化合物(b),(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5g、シュウ酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例1と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例2の精製物とした。すなわち、精製例1とは、減圧蒸留を経ていない点のみ相違する。これらの精製物をそれぞれ(b2),(d2)とする。
【0067】
(精製例3)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、シュウ酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。引き続き、精製例1と同様の方法で、フィルター工程、減圧蒸留工程を経たものを精製例3の精製物とした。すなわち、精製例1とは、加熱精製において活性炭素を加えていない点が相違する。この精製物を(d3)とする。
【0068】
(精製例4)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、シュウ酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例1と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例4の精製物とした。すなわち、精製例1とは、加熱精製において活性炭素を加えていない点、及び減圧蒸留を経ていない点が相違する。この精製物を(d4)とする。
【0069】
(精製例5)
前記合成で得られた化合物(b),(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例1と同様の方法で、フィルター工程、減圧蒸留工程を経たものを精製例5の精製物とした。すなわち、精製例1とは、加熱精製においてシュウ酸を加えていない点のみ相違する。これらの精製物をそれぞれ(b5),(d5)とする。
【0070】
(精製例6)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例1と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例6の精製物とした。すなわち、精製例1とは、加熱精製においてシュウ酸を加えていない点、及び減圧蒸留を経ていない点が相違する。これらの精製物をそれぞれ(d6)とする。
【0071】
(精製例7)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。引き続き、精製例1と同様の方法で、フィルター工程、減圧蒸留工程を経たものを精製例7の精製物とした。すなわち、精製例1とは、加熱精製においてシュウ酸と活性炭素を加えていない点が相違する。この精製物を(d7)とする。
【0072】
(精製例8)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例1と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例8の精製物とした。すなわち、精製例1とは、加熱精製においてシュウ酸と活性炭素を加えていない点、及び減圧蒸留を経ていない点が相違するが相違する。この精製物を(d8)とする。
【0073】
(精製例9)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルを100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱した。引き続き、精製例1と同様の方法で、フィルター工程を経た後、精製例1記載の減圧蒸留工程を3度繰り返して得られた精製物精製例9の精製物として、この精製物を(d9)とする。
【0074】
以上、化合物(a),(b),(c),(d)について行った精製例1〜9と精製物記号の一覧を表1にまとめた。
【表1】

【0075】
(精製例10)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5g、アスコルビン酸0.7gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。次に前記ろ過されたオイルから減圧蒸溜し、所定の圧力、温度における留分を精製例10の精製物とした。この精製化合物を(d10)とする。
【0076】
(精製例11)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5g、アスコルビン酸0.7gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例10と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例11の精製物とした。すなわち、精製例10とは、減圧蒸留を経ていない点のみ相違する。この精製物を(d11)とする。
【0077】
(精製例12)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、アスコルビン酸0.7gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。引き続き、精製例10と同様の方法で、フィルター工程、減圧蒸留工程を経たものを精製例12の精製物とした。すなわち、精製例10とは、加熱精製において活性炭素を加えていない点が相違する。この精製物を(d12)とする。
【0078】
(精製例13)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、アスコルビン酸0.7gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例10と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例13の精製物とした。すなわち、精製例10とは、加熱精製において活性炭素を加えていない点、及び減圧蒸留を経ていない点が相違する。この精製物を(d13)とする。
【0079】
(精製例14)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5g、クエン酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。次に前記ろ過されたオイルから減圧蒸溜し、所定の圧力、温度における留分を精製例14の精製物とした。この精製物を(d14)とする。
【0080】
(精製例15)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、粉末状の活性炭素0.5g、クエン酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例14と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例15の精製物とした。すなわち、精製例14とは、減圧蒸留を経ていない点のみ相違する。この精製物を(d15)とする。
【0081】
(精製例16)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、クエン酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。次に、前記加熱精製されたオイルを1μmのメンブランフィルターで濾過して瀘滓を取り除いた。引き続き、精製例14と同様の方法で、フィルター工程、減圧蒸留工程を経たものを精製例16の精製物とした。すなわち、精製例14とは、加熱精製において活性炭素を加えていない点が相違する。この精製物を(d16)とする。
【0082】
(精製例17)
前記合成で得られた化合物(d)の粗オイルの中に、酸処理ベントナイト2g、クエン酸0.2gを加えて100〜115℃で0.5時間攪拌し、加熱精製した。引き続き、精製例14と同様方法のフィルター工程を経た後に、窒素雰囲気下で50〜150℃/20〜0.5mmHgにて脱溶媒し、溶媒の含量を0.1%以下まで濃縮したものを精製例17の精製物とした。すなわち、精製例14とは、加熱精製において活性炭素を加えていない点、及び減圧蒸留を経ていない点が相違する。この精製物を(d17)とする。
【0083】
以上、化合物(d)について行った精製例10〜17と精製物記号の一覧を表2にまとめた。
【表2】

【0084】
〔化合物としての評価〕
(1.透明度)
前記精製化合物の430,450,500nmにおけるそれぞれの透過率を測定した。なお測定装置には、(株)島津製作所製 UV−2450を使用した。この結果を表3に示す。
【0085】
【表3】

【0086】
(2.溶解性)
合成例1〜4で合成し、精製例1で精製したベンゾトリアゾール誘導体である(a1)(b1)(c1)について、下記皮膚外用剤汎用油分に溶解させ、その溶解度を測定した。また、比較としてUV−A領域において極大吸収域を持つ4-tert-ブトキシ-4-メトキシベンゾイルメタン(商品名 「parsol1789」)の溶解度も同様に測定した。
【0087】
溶解試験は、次のような手法で行った。まず各試験対象化合物について、下記皮膚外用剤汎用油分に、化粧品含有量として最大限必要とされる20重量%(全体量に対する割合)を溶解させてみて、溶け残りが出ないか確認する。溶け残りが出た場合、完全に溶解する更に油分を少しずつ追加する。完全に溶解した状態において、該溶解物を冷暗所(5℃)にて14日保存する。保存後、添加した試験対象化合物の結晶析出があるか否かを確認し、結晶析出が認められなければ、その時点の濃度を溶解度とする。またこの際、溶解後の臭気、着色についても調べた。(a1)(b1)(c1)はいずれも微黄色透明であり、臭気は感じなかった。各化合物の溶解度について表4に示す。
【0088】
皮膚外用剤汎用油分
パラフィン:カネダ(株)品 ハイコールK-230
スクワラン:スクワテック社品 スーパースクワラン
CIO :日本精化(株)品 イソオクタン酸セチル
IOTG :日本精化(株)品 イソオクタン酸トリグリセライド
【0089】
【表4】

【0090】
(3.安定性)
合成例1〜4で合成し、精製例1で精製したベンゾトリアゾール誘導体である(a1)(b1)(c1)及び4-tert-ブトキシ-4-メトキシベンゾイルメタン(商品名
「parsol1789」)について、200℃で2時間の加熱を行い、加熱終了後各化合物の紫外線のモル吸光係数εにつき測定した。その結果を表5に示す。表5から分かるように、(a1)(b1)(c1)は、高い安定性を示していることがわかった。
【0091】
【表5】

【0092】
〔皮膚外用剤としたときの評価〕
(1.サンスクリーン乳液)
合成例1で合成し、精製例1で精製したベンゾトリアゾール誘導体である(a1)を含有する下記成分の油相と水相をそれぞれ混合溶解させた。次に、前記油相部を二酸化チタンに十分分散させてから前記水相部を加え、ホモジナイザーを用いて乳化を行い、サンスクリーン乳液とした。得られたサンスクリーン乳液は、さっぱりさに優れていた。
A.油相
揮発性環状シリコーン 27.0重量%
二酸化チタン(疎水化処理品)
10.0
酸化亜鉛(疎水化処理品)
10.0
タルク(疎水化処理品)
4.0
ベンゾトリアゾール誘導体精製物(a1)
3.0
オクチルメトキシシンナメート
3.0
4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン
1.0
有機変性モンモリロナイト 0.5
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン
2.0
防腐剤
適 量
香料
適 量
B.水相
ジプロピレングリコール
7.0
精製水
残余
【0093】
(2.保湿用乳液)
化合物d及び化合物cを精製例1及び5の方法で精製した精製物d1、d5、c1、c5について、それぞれの化合物を油相に含有させて、保湿用乳液乳液を製造してそれぞれの外観について評価した。製造方法は次のとおりである。油相に水相を徐々に添加し、添加終了後、攪拌機を用いて乳化粒子が均一になるように調製して製造した、表6、7記載の製剤について、外観の黄色味の評価を目視にて行なった。化合物dについての結果を表6に、化合物cについての結果を表7に示す。なお評価基準は次のとおりである。
◎;黄色味はほとんどない ○;ごくわずかに黄色味がある △;やや黄色味がある ×;黄色い
【0094】
【表6】

【表7】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】化合物(a1)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図2】化合物(b1)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図3】化合物(c1)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図4】化合物(d1)の紫外〜可視吸収スペクトルである。
【図5】化合物(a1)の赤外吸収スペクトルである。
【図6】化合物(b1)の赤外吸収スペクトルである。
【図7】化合物(c1)の赤外吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)または(B)で示されるベンゾトリアゾール誘導体に、酸処理ベントナイト及び還元作用を有する有機酸を少なくとも混合添加し、加熱を行うことにより、前記ベンゾトリアゾール誘導体を純化、脱色させるベンゾトリアゾール誘導体の精製方法。
【化1】

【化2】

(式(A)中、R1は炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、R2は炭素数1〜7の直鎖または分岐のアルキル基、ただし、R1とR2の炭素数の合計は3以上16未満である。また式(B)中、Rは炭素数1〜10の直鎖または分岐のアルキル基、Rは炭素数1〜6の直鎖または分岐のアルキル基、ただし、RとRの炭素数の合計は3以上16未満である。)
【請求項2】
前記ベンゾトリアゾール誘導体が、液状のものである請求項1記載の精製方法。
【請求項3】
前記ベンゾトリアゾール誘導体に、前記酸処理ベントナイト及び有機酸とともに、吸着剤を加えて混合添加し、加熱を行う請求項1または2記載の精製方法。
【請求項4】
前記還元作用を有する有機酸が、シュウ酸、アスコルビン酸及びクエン酸からなる群から選ばれる1種または2種以上の化合物である請求項1〜3記載のいずれかの項に記載の精製方法。
【請求項5】
前記吸着剤が、活性炭である請求項3または4記載の精製方法。
【請求項6】
前記請求項3〜5記載いずれかの項に記載された精製方法による精製の後、更に蒸留精製を行う化粧品用ベンゾトリアゾール誘導体の精製方法。
【請求項7】
請求項6記載の精製方法にて精製された前記ベンゾトリアゾール誘導体を含有する皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−224014(P2007−224014A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−351056(P2006−351056)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(301000675)シプロ化成株式会社 (33)