説明

ペットトレイ

【課題】 ペットの引っ掻き等に起因するシーツの破れ等の発生を可及的に防止しつつも、シーツを常にペットトレイ上に広がった状態に保持し得るペットトレイを提供する。
【解決手段】 トレイ上面22に広げられるシーツ3をクリップ手段41で把持し、クリップ手段を連結紐43を介してリール手段42に接続する。トレイ上面の周囲の堤部21にクリップ手段の収容凹部23を形成し、収容凹部の底面に凹状の受け入れ部24を形成する。連結紐をリール手段の渦巻バネ421で巻取り付勢し、引っ掻き力を受けてクリップ手段がトレイ上面に引き出されることによりシーツのずれを許容する一方、引っ掻き力が無くなれば、巻取り付勢力によりクリップ手段を引き戻して嵌合部414が受け入れ部に内嵌して当て止められた基準位置に自動復帰する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペット用シーツをペットトレイの上面に対し広げた状態に保持し得るようにしたペットトレイに関し、特にペット用シーツの破れ等の損傷発生を可及的に防止し得る保持技術に係る。
【背景技術】
【0002】
従来、ペットトレイは犬や猫等のペットの主としてトイレ場所として提供されている。このようなペットトレイは、一般に、その上面にペット用シーツを広げた状態に保持し得る保持機構を備えている。そして、ペットがペット用シーツの上に載った状態で排便・排尿をすると、その糞尿中の水分がペット用シーツに吸収され、糞尿後、そのペット用シーツをペットトレイから取り外して廃棄する一方、代わりに新しいペット用シーツを装着するようになっている。
【0003】
このような用途に使用されるペット用シーツはその上でペットが動き回ることになるため、ペットトレイの上面でずれないようにしっかりと保持されるようになっている。そのための保持機構としては、従来、トレイ本体に対し係脱可能に組み合わせる押さえ枠を備えたものが提案されている(例えば特許文献1又は特許文献2参照)。このものでは、ペット用シーツをトレイ本体の上に載置した後に、シーツの外周部位を上から押さえ枠で押さえ込んで押さえ枠とトレイ本体との間に挟み付けた状態にすることで、シーツの外周部位を保持するようにしている。このような構造の保持機構においては、シーツの保持力をより強固にして少々引っ掻いたとしてもずれないようにするために、押さえ枠とトレイ本体との間に突起又は凸部を形成し、この突起又は凸部を介在させた状態でシーツを挟み付けるようにしている。
【0004】
又、犬等のペットが足で引っ掻くことによりペット用シーツが引きちぎられたり破損したりすることを防止するために、押さえ部材によりシーツをトレイ本体の上に保持した上に、さらにそのシーツの上を金属製の格子板又はプラスチック製の多孔板で覆うようにしたものも提案されている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−56522号公報
【特許文献2】特開2007−14321号公報
【特許文献3】特開2006−81466号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、犬等のペットが前足や後足で引っ掻くことによるペット用シーツのずれを防止するために、そのシーツの外周囲を強固に保持しようとすると、その保持性能を強固にするほど、シーツに破れ等の損傷が発生し易くなってしまう。すなわち、ペットが引っ掻いても変化がなければペットは余計に引っ掻いてしまい、この結果、ついにはシーツに破れ等の破損を招いてしまうことになる。一方、シーツがずれたら、シーツ上に糞尿が落ちずに他の部位を汚してしまうおそれがあり、シーツは常にペットトレイの上面に広げられた状態に維持させる必要がある。
【0007】
これらの不都合に対処するために、例えば、ペット用シーツの表面強度を破れ等に対抗し得るように高めることは、そのシーツが消耗品・使い捨ての物であること等により無理がある。又、特許文献3で提案されているような多孔板でシーツの上面を覆ってしまうと、シーツの破れ等は防止し得るものの、ペットにとってはトイレ場所としては不快もしくは不適にものとなってしまい、ペットがペットトレイ上での排泄を忌避する事態を招きかねず、ペットトレイでの排泄習慣の定着を図り得ず、本来の使用目的を果たせなくなるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ペットの引っ掻き等の外力に起因する破れ等の損傷発生を可及的に防止しつつも、ペット用シーツを常にペットトレイ上に広がった状態に保持し得る、ペットトレイを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、トレイ本体の上面にペット用のシーツを広げた状態に保持し得るように構成されたペットトレイを対象にして、次の特定事項を備えることとした。すなわち、上記広げた状態のシーツに引張力が作用するとその引張力に対応してシーツの移動を許容する一方、その引張力の解放に伴い上記シーツを元の状態に復元するようシーツの周縁部を把持する保持機構を備えることとする。そして、上記保持機構として、上記トレイ本体とは別体に構成されて上記シーツの端部を着脱可能に把持するためのクリップ手段と、このクリップ手段に一端が結合された連結紐と、上記連結紐の他端が結合された状態で上記トレイ本体に固定されて連結紐の巻き戻し及び巻取りを行うリール手段とを備えたものとする。上記リール手段として、上記連結紐の他端が直接的又は間接的に結合されてその連結紐の巻き戻しに伴い巻取り付勢力として蓄力するバネ部材を備えて構成する。又、上記トレイ本体は内側に向けて開放された凹状の受け入れ部を備える一方、上記クリップ手段は上記受け入れ部に内嵌可能な凸状の嵌合部を備えるものとし、これら嵌合部と受け入れ部とを、上記クリップ手段の嵌合部がトレイ本体の受け入れ部に内嵌することにより上記バネ部材による巻取り側付勢力に抗して上記クリップ手段が基準位置に当て止められる構成とした(請求項1)。
【0010】
この発明の場合、クリップ手段がリール手段のバネ部材からの巻取り付勢力を受けてトレイ本体の基準位置に当て止めされるため、クリップ手段によりペット用シーツの周縁部を把持しておけば、そのシーツはトレイ本体のトレイ上面に広げられた状態に保持される。一方、ペット(例えば犬)が前足でシーツを手前側に引っ掻く、つまりトレイ本体の内側に向けて引っ掻くことによりクリップ手段に対し内側に引張力が作用すると、連結紐がリール手段から巻き戻されてクリップ手段はバネ部材の巻取り付勢力に抗して内側位置に移動することが可能となる。これにより、ペットが引っ掻いたとしても、その引っ掻き力に対応してシーツがクリップ手段により把持されたままずれるため、シーツに破れ等の損傷が発生することが回避される。そして、クリップ手段の移動に伴いバネ部材には巻取り付勢力が蓄力されるため、上記の引っ掻き力が減少もしくは無くなれば、その蓄力された巻取り付勢力がクリップ手段に対し連結紐を介して作用するため、その巻取り付勢力を受けてクリップ手段は元の基準位置まで自動的に戻ることになる。これにより、シーツは元の広げられた状態に復元してその状態に維持されることになる。以上の如き保持機構を備えたことにより、ペットの引っ掻き等の外力に起因する破れ等の損傷発生を可及的に防止しつつも、ペット用シーツを常にペットトレイ上に広がった状態に保持し得ることになる。
【0011】
上記発明における受け入れ部として上記トレイ本体のシーツ載置面であるトレイ上面よりも下側に凹むように形成する一方、上記嵌合部として上記クリップ手段に対し下向きに凸状となるように形成することができる(請求項2)。このようにすることにより、クリップ手段がペットの引っ掻きに起因して内側位置まで引っ張られた後に巻取り付勢力に基づき基準位置まで戻る際に、クリップ手段から下向きに凸状の嵌合部がトレイ上面よりも下側に凹む受け入れ部に対し内嵌して基準位置に当て止めされることになるため、クリップ手段に把持されたシーツをトレイ上面に沿って広げて復元させることが可能となる上に、巻取り付勢力が比較的強くても基準位置への戻りと、基準位置での当て止めとを確実に行い得ることになる。
【0012】
この際に、上記受け入れ部として、外側寄りの内奥面に形成された当て止め面部と、この当て止め面部に対し内側寄りから斜め下り勾配を有する傾斜面として形成された誘導面部とを備えたものとすることもでき(請求項3)、このようにすることにより、トレイ上面に沿って戻り側に移動してきた嵌合部を引き続いて誘導面部により当て止め面部まで確実に誘導して当て止めることが可能となり、上記の基準位置への戻りと、基準位置での当て止めとを、より一層確実に行い得ることになる。又、もちろん、クリップ手段が引き出される際にも、上記誘導面により誘導されるため、スムースに引き出されることになる。
【0013】
又、上記連結紐の一端を上記クリップ本体の下面に結合する共に、上記連結紐の他端を上記受け入れ部の内壁面に貫通させてリール手段に結合することにより、連結紐が巻き戻されてクリップ手段が基準位置から内側位置に移動した際に上記連結紐を介して斜め下向きに巻取り付勢力が作用する構成とすることができる(請求項4)。このようにすることにより、クリップ手段を内側位置から基準位置まで巻取り付勢力により戻り復元する際に、そのクリップ手段に対し斜め下向きへ引き戻されることになるため、クリップ手段を確実にトレイ上面に沿って移動させることが可能となる。これによっても、クリップ手段に把持されたシーツをトレイ上面に沿って広げて復元させることが可能となる上に、巻取り付勢力が比較的強くても基準位置への戻りと、基準位置での当て止めとを確実に行い得ることになり、請求項2の構成との相乗作用を得ることにより、さらに確実化が図られる。
【0014】
さらに、上記トレイ本体として、上記クリップ手段を基準位置に当て止めた状態で収容する収容凹部を備えたものとし、この収容凹部に上記受け入れ部を形成するようにすることができる(請求項5)。このようにすることにより、基準位置に配置されたクリップ手段が収容凹部内に収容されることになるため、シーツが載置されるトレイ上面から障害物の存在を排除してトレイ上面をより広く確保し得ることになる。
【発明の効果】
【0015】
以上、説明したように、請求項1〜請求項5のいずれかのペットトレイによれば、クリップ手段がリール手段のバネ部材からの巻取り付勢力を受けてトレイ本体の基準位置に当て止めされるため、クリップ手段によりペット用シーツの周縁部を把持しておけば、そのシーツをトレイ本体のトレイ上面に広げられた状態に保持することができる。一方、ペットが前足でシーツを手前側に引っ掻いてクリップ手段に対し内側に引張力が作用すると、連結紐がリール手段から巻き戻されてクリップ手段をバネ部材の巻取り付勢力に抗して内側位置に移動させることができる。これにより、ペットが引っ掻いたとしてもシーツが移動してずれるためシーツに破れ等の損傷が発生することを回避することができるようになる。そして、クリップ手段の移動に伴いバネ部材に巻取り付勢力が蓄力されるため、上記の引っ掻き力が減少もしくは無くなれば、その蓄力された巻取り付勢力でクリップ手段を元の基準位置まで自動的に戻させることができるようになる。これにより、シーツは元の広げられた状態に復元してその状態に維持されることになる。以上の如き保持機構を備えたことにより、ペットの引っ掻き等の外力に起因する破れ等の損傷発生を可及的に防止しつつも、ペット用シーツを常にペットトレイ上に広がった状態に保持することができるようになる。
【0016】
特に、請求項2によれば、クリップ手段がペットの引っ掻きに起因して内側位置まで引っ張られた後に巻取り付勢力に基づき基準位置まで戻る際に、クリップ手段から下向きに突出した凸状の嵌合部がトレイ上面よりも下側に凹む受け入れ部に対し内嵌して基準位置に当て止めされることになるため、クリップ手段に把持されたシーツをトレイ上面に沿って広げて復元させることができる上に、巻取り付勢力が比較的強くても基準位置への戻りと、基準位置での当て止めとを確実に行うことができるようになる。
【0017】
請求項3によれば、トレイ上面に沿って戻り側に移動してきた嵌合部を引き続いて誘導面部により当て止め面部まで確実に誘導して当て止めるようにすることができ、上記の基準位置への戻りと、基準位置での当て止めとを、より一層確実に行うことができるようになる。
【0018】
又、請求項4によれば、クリップ手段を内側位置から基準位置まで巻取り付勢力により戻り復元する際に、そのクリップ手段を斜め下向きに引き戻すことができ、これにより、クリップ手段を確実にトレイ上面に沿って移動させることができるようになる。このため、請求項2と同様に、クリップ手段に把持されたシーツをトレイ上面に沿って広げて復元させることができる上に、巻取り付勢力が比較的強くても基準位置への戻りと、基準位置での当て止めとを確実に行うことができるようになる。
【0019】
さらに、請求項5によれば、基準位置に配置されたクリップ手段を収容凹部内に収容することができ、シーツが載置されるトレイ上面から障害物の存在を排除してトレイ上面をより広く確保することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係るペットトレイを示し、2はトレイ本体、3はペット用シーツ、4,4,4,4はそれぞれ保持機構である。このペットトレイは、犬又は猫等のペット(以下、単に「ペット」という)の室内における居場所、寝場所及び/又は排泄場所(トイレ)を提供するものである。
【0022】
トレイ本体2は、例えば合成樹脂成形により形成され、周囲を堤部21で囲まれて区画された内側領域に、平坦面とされてシーツ載置面を構成するトレイ上面22が形成されている。図示のトレイ本体2は、一対の辺が長辺とされ、他の一対の辺が短辺とされた矩形形状を有し、長辺の両側位置であって四隅に近い両位置にそれぞれ収容凹部23が形成されている。この各収容凹部23に上記保持機構4を構成する後述のクリップ手段41が収容された状態で配設されている。この収容された状態の位置が各クリップ手段41の基準位置となる。
【0023】
この収容凹部23は、図2に示すように、クリップ手段41の後述の基台411のトレイ本体2の外側(図2の左側)寄りの端面である基端面411a(図3も併せて参照)の円弧面形状と対応するよう円弧面形状の内壁面231を有し、かつ、平面角度がほぼ90度の範囲でトレイ本体2の内側(図2の右側)に向けて、つまりトレイ上面21に向けて平面視でVの字状に開放されている。そして、各収容凹部23の底面には凹状の受け入れ部24が形成されている。この受け入れ部24は凹状とされてトレイ上面21よりも下側に凹むように形成されている。そして、受け入れ部24(図4(a)も併せて参照)は、当て止め面部241と、誘導面部242とを備えている。当て止め面部241は、トレイ本体2の外側寄りに最も深く窪んで形成されて、クリップ手段41の後述の嵌合部414が内嵌されることによりクリップ手段41を基準位置に位置付けると共に、それ以上外側に移動しないように当て止めるようになっている。又、誘導面部242は、当て止め面部241に対し内側寄りから斜め下り勾配の傾斜面として形成され、上記の嵌合部414を当て止め面部241まで確実に誘導・案内するようになっている。
【0024】
ペット用シーツ3は、寝床用のシーツとしての機能の他に糞尿等の水分吸収機能をも有することが好ましい。このため、単に吸湿機能を有する不織布製等のシートを用いてもよいが、例えば図1に部分断面図にて示すように表面の透水性シート31と、裏面の不透水性シート32との間に吸水材層33を挟み込んだ状態で外周縁部34を溶着して一体の3層構造にしたものを用いることが好ましい。
【0025】
各保持機構4は、図2に示すように、クリップ手段41と、リール手段42と、これら両者を連結する連結紐43とを備えて構成されたものである。クリップ手段41は、トレイ本体2とは別体に構成されたものであり、基台411と、この基台411の先端側との間でシーツ3を挟み付け得るように先端を挟み付け方向に弾性付勢された状態で組み付けられた挟み付け片412とを備えている。図例のものでは、板バネ部材413を基台411と挟み付け片412との両者に架け渡した状態に固定し、この板バネ部材413を介して挟み付け片412を基台411に対し揺動可能に組み付けるようにしている(図2(b)に一点鎖線と実線とで示す挟み付け片412を参照)。これにより、挟み付け片412を一点鎖線の如く揺動させて先端側を開くことでシーツ3の周縁部34を差し込み、この状態で挟み付け片412を離すことで板バネ部材413の弾性復元力によりシーツ3を挟み付けて把持し得るようになっている。
【0026】
又、基台411の下面には、図2(b)及び図4(a)に示すように、下向きに凸状の嵌合部414が突出形成されている。この嵌合部414は、上記収容凹部23の受け入れ部24の内面形状に対応する外面形状を有するように形成されている。すなわち、嵌合部414には、トレイ本体2の外側(図2の左側)寄りに当て止め面部241に対し当て止めるための外壁面部と、この外壁面部からトレイ本体2の内側(図2の右側)寄りにかけて延びる傾斜面部とが形成されている。このような嵌合部414が収容凹部23の受け入れ部24に内嵌すること、あるいは、これに加えて基台411の基端面411aが収容凹部23の内壁面231に当て止めされることにより、クリップ手段41が基準位置に位置付けられることになる。そして、上記嵌合部414に対し連結紐43の一端431(図2(b)参照)が例えば埋め込み等の手段により結合されている。なお、図例では、嵌合部414が収容凹部23の受け入れ部24に内嵌して当て止めされた状態で、同時に基台411の基端面411aが収容凹部23の内壁面231に当て止めされた状態になるように図示しているが、これに限らず、嵌合部414が収容凹部23の受け入れ部24に内嵌して当て止めされた状態で、基台411の基端面411aは収容凹部23の内壁面231との間に僅かな隙間を残した状態に位置付けられるようにしてもよい。
【0027】
リール手段42は、連結紐43の他端が結合された状態でトレイ本体2の堤部21内に固定されて連結紐43の巻き戻し及び自動巻取りを行うようになっている。すなわち、リール手段42は、図2(b)及び図4(b)に示すように、バネ部材として渦巻バネ421を備え、この渦巻バネ421は連結紐43の他端432(図4(b)参照)が直接的又は間接的(例えば回転ドラムを介して間接的)に結合されてその連結紐43の巻き戻しに伴い巻取り付勢力として蓄力するようになっている。具体的には、図4(b)に例示するように、渦巻バネ421の中心側端部がリール42の中心軸422に係止され、外周側端部が連結紐43の他端432に結合されており、クリップ手段41が基準位置にあるときには連結紐43の他端432の側が若干の巻取り側付勢力を発揮した状態の渦巻バネ421に巻き取られる一方、クリップ手段41がトレイ上面22の内側へ引っ張られたときには渦巻バネ421に抗して連結紐43が巻き戻され、この巻き戻しに伴い渦巻バネ421がより巻き込まれる結果、巻取り付勢力を蓄力するようになっている。
【0028】
以上のペットトレイでは、トレイ上面22の上をペット用シーツ3で覆い、このシーツ3の対応する部位を四隅に近い位置にある4つのクリップ手段41,41,…で挟み付けて把持することでシーツ3を広げた状態に保持する。この状態では、各クリップ手段41の嵌合部414が収容凹部23の受け入れ部24に内嵌して当て止めされた状態で、その各クリップ手段41に対し、連結されたリール42の渦巻バネ421から若干の巻取り側付勢力が作用するようになっているため、上記のシーツ3は若干の引張力が作用した状態で広げられることになり、確実にシーツ3を広げた状態に保持することができる。そして、このシーツ3の上にペット(例えば犬)5が載って前足51でシーツ3を引っ掻くと、その引っ掻いた部位35を把持しているクリップ手段41が加えられた外力に対応して基準位置(図2に示す位置)から手前の内側位置(図5に部位35を把持している実線のクリップ手段41により示される位置、又は、図6に示す位置)に引き出されることになる。この引き出しに伴いリール手段42(図4(b)も併せて参照)の渦巻バネ421に巻取り付勢力がより強く蓄力されるため、上記の前足51を上げたり引っ掻きを止めたりすると、渦巻バネ421の巻取り付勢力により連結紐43が巻き取られ、これに伴い上記の引き出されたクリップ手段41は元の基準位置に戻されることになる。すなわち、基台411の基端面411aが収容凹部23の内壁面231に当て止めされると同時に、嵌合部414が受け入れ部24内に内嵌されることになり、これにより、クリップ手段41は基準位置に自動復帰し、シーツ3は元の広げられた状態に自動復帰することになる。
【0029】
この実施形態の場合、ペットがシーツ3を引っ掻くと、その引っ掻き力に対応してシーツ3の引っ掻いた部位35が手前にずれるため、ペットの引っ掻きに起因してシーツ3に対し過大な外力が作用することを回避して破れ等の損傷の発生を確実に回避することができる。しかも、シーツ3がずれても、リール手段42からの巻取り付勢力を受けてクリップ手段41が元の基準位置に自動復帰してシーツ3を元の広げられた状態に自動復帰させることができる。このため、シーツ3を過大な引っ掻き力等の外力が作用しない限り、常時、広げられた状態に保持することができる。
【0030】
<第2実施形態>
図7、図8は本発明の第2実施形態に係るペットトレイを示す。この第2実施形態は保持機構6を矩形形状のトレイ本体2の四隅のそれぞれに配置してペット用シーツ3(図1参照)を放射方向に引っ張って広げた状態に保持するようにしたものである。加えて、基準位置に当て止めル嵌合部と受け入れ部との組み合わせの形態を第1実施形態とは異なるものにしたものである。
【0031】
第2実施形態のトレイ本体2では四隅にそれぞれ対角線上に相対向して開放された収容凹部25を形成し、この収容凹部25が受け入れ部をも兼ねるように構成されている。すなわち、各収容凹部25は、内奥側に円弧面の当て止め面部251と、手面側に当て止め面部251に向けてトレイ上面22の側から斜め下り勾配の傾斜を有する誘導面部252とを備えて構成されている。
【0032】
そして、各保持機構6は、クリップ手段61と、リール手段62と、両者を互いに連結する連結紐63とを備えて構成され、この第2実施形態のクリップ手段61は上記収容凹部25内にほぼ全体が収容された状態で基準位置に位置付けられるようになっている。又、クリップ手段61は基台611と、この基台611に対し回転可能に支持された挟み付け片612と、この挟み付け片612を基台611に対し挟み付け方向に回転付勢する捻りバネ613とを備えて構成され、上記基台611が嵌合部をも兼ねるようになっている。すなわち、基台611は、基端側が分厚く先端側が薄くされ、かつ、平面視で基端側を頂点とする略三角形状に形成され、又、基端側の外壁面614が収容凹部25の当て止め面部251と対応する円弧面に形成され、底面615が上記誘導面部252に合致する外形に形成されている。なお、リール手段62は第1実施形態のリール手段42と同様に渦巻バネ621を備えて構成され、連結紐63も第1実施形態の連結紐43と同様に一端631が基台611に埋め込まれて結合され、他端がリール手段62の渦巻バネ621に直接又は間接に結合されている。
【0033】
以上の第2実施形態においても、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。すなわち、トレイ上面22の上をペット用シーツ3で覆い、このシーツ3の四隅部位36(図8(b)参照)をそれぞれクリップ手段61で挟み付けて把持することでシーツ3を放射方向に引っ張った状態に広げて保持する。つまり、各リール手段62の渦巻バネ621は、これに連結されたクリップ手段61がトレイ本体2の四隅においてそれぞれ基準位置に当て止めされた状態でそのクリップ手段61に対し若干の巻取り付勢力を作用させるように予め設定されているため、トレイ本体2の四隅のクリップ手段61,61,…によって、シーツ3はその四隅部位が放射方向に引っ張られた状態で保持されることになる。これにより、シーツ3を確実に広げた状態に保持することができる。そして、このシーツ3の上にペット5(図5参照)が載って前足51でシーツ3を引っ掻くと、その引っ掻き力に対応してクリップ手段61が基準位置(図8(a)に示す位置)から手前の内側位置(図8(b)に示す位置)に引き出されてシーツ3がずれることになる。この引き出しに伴いリール手段62の渦巻バネ621に巻取り付勢力がより強く蓄力されるため、上記の前足51を上げたり引っ掻きを止めたりすると、渦巻バネ621の巻取り付勢力により連結紐63が巻き取られ、これに伴い上記の引き出されたクリップ手段61は元の基準位置に戻されることになる。すなわち、基台611の底面615がトレイ上面22から誘導面部252に案内されて外壁面614を収容凹部25内に導き、外壁面614が当て止め面部251に当て止めされることになる。つまり、嵌合部としての基台611が受け入れ部としての収容凹部25内に内嵌されることになり、これにより、クリップ手段61は基準位置に自動復帰し、シーツ3は元の広げられた状態に自動復帰することになる。
【0034】
そして、第1実施形態と同様に、ペットがシーツ3を引っ掻くと、その引っ掻き力に対応してシーツ3の引っ掻いた部位が手前にずれるため、ペットの引っ掻きに起因してシーツ3に対し過大な外力が作用することを回避して破れ等の損傷の発生を確実に回避することができる。しかも、シーツ3がずれても、リール手段62からの巻取り付勢力を受けてクリップ手段61が元の基準位置に自動復帰してシーツ3を元の広げられた状態に自動復帰させることができる。このため、シーツ3を過大な引っ掻き力等の外力が作用しない限り、常時、広げられた状態に保持することができる。
【0035】
<他の実施形態>
なお、本発明は上記第1及び第2実施形態に限定されるものではなく、その他種々の実施形態を包含するものである。すなわち、上記各実施形態での保持機構4又は6の数と配置は、実施形態に例示した如く4箇所に配置することが好ましいが、少なくとも1箇所配置するようにしてもよい。この場合、ペットの前足が位置する側の部位に1箇所配置するようにすればよい。後足側は引っ掻き方向が後方、すなわち、トレイ本体の内側から外側に向けた方向となるため、外側から内側へのずれの問題はそもそも生じないため、この部位には本発明の保持機構でなくても従来の固定式の保持機構を設置すればよいからである。
【0036】
嵌合部414又は嵌合部である基台611と、受け入れ部24又は受け入れ部である収容凹部25との組み合わせの各形状は、第1実施形態又は第2実施形態で示したもの以外のものでももちろんよく、内嵌することにより基準位置への当て止めと位置決めとを行い得る嵌合形状であれば他の組み合わせを採用することもできる。
【0037】
特許請求の範囲や実施形態では「下向き」又は「下側」との用語を用いているが、トレイ本体を90度起立させてシーツ載置面であるトレイ上面がほぼ鉛直面を構成するように配置した使用形態にしてもよい。この場合も、特許請求の範囲記載のペットトレイに含まれる。
【0038】
第1実施形態のクリップ手段41を第2実施形態のクリップ手段61と同様の捻りバネで回転付勢させるようにしてもよく、又、逆に第2実施形態のクリップ手段61を第1実施形態のクリップ手段41と同様の板バネ部材で揺動可能に挟み付け方向に付勢させるようにしてもよい。さらに、第1実施形態に対し保持機構4の代わりに第2実施形態の保持機構6を適用してもよいし、逆に、第2実施形態に対し保持機構6の代わりに第1実施形態の保持機構4を適用するようにしてもよい。
【0039】
リール手段42,62のバネ部材としては、渦巻バネ421,621以外でも、巻き戻しにより巻取り付勢力が蓄力される形式ものであれば用いることができる。
【0040】
特許請求の範囲に記載の連結紐とリール手段との組み合わせに代えて、紐状又は帯状の弾性部材(例えばゴム紐又はゴムベルト)を用いることができる。この場合には、その弾性部材をその一端がクリップ手段に結合され、他端がトレイ本体に固定された状態にする。そして、弾性部材を延ばした後の弾性復元力がクリップ手段に作用した状態でクリップ手段の嵌合部がトレイ本体の受け入れ部に内嵌して基準位置に当て止められることになるように構成すればよい。かかる弾性部材によっても本実施形態と略同様の作用効果を得ることができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施形態を斜視図の状態で示す説明図である。
【図2】図2(a)は図1の保持機構の部分を示す部分拡大平面図であり、図2(b)は図2(a)のA−A線断面説明図である。
【図3】図1の保持機構のクリップ手段が内側位置まで引っ張られた状態を斜視図で示す説明図である。
【図4】図4(a)は第1実施形態の嵌合部と受け入れ部とを部分斜視図の状態で示す説明図であり、図4(b)はリール手段の平面方向で切断した拡大断面説明図である。
【図5】ペット用シーツが広げられた上にペットが載った状態を斜視図で示す説明図である。
【図6】図6(a)はクリップ手段が内側位置にあるときの保持機構を示す図2(a)対応図であり、図6(b)は図6(a)のB−B線断面説明図である。
【図7】図7(a)は第2実施形態の平面説明図であり、図7(b)は第2実施形態の保持機構を斜視図の状態で示す説明図である。
【図8】図7(a)のC−C線における部分拡大断面説明図であり、図8(a)はクリップ手段が図7(a)に示す基準位置にあるときの状態を示し、図8(b)はクリップ手段が内側位置に引き出されたときの状態を示す。
【符号の説明】
【0042】
2 トレイ本体
3 ペット用シーツ
4,6 保持機構
5 ペット
22 トレイ上面(シーツ載置面)
23 収容凹部
24 受け入れ部
25 収容凹部(受け入れ部)
41,61 クリップ手段
42,62 リール手段
43,63 連結紐
241,251 当て止め面部
242,252 誘導面部
421,621 渦巻バネ(バネ部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ本体の上面にペット用のシーツを広げた状態に保持し得るように構成されたペットトレイであって、
上記広げた状態のシーツに引張力が作用するとその引張力に対応してシーツの移動を許容する一方、その引張力の解放に伴い上記シーツを元の状態に復元するようシーツの周縁部を把持する保持機構を備え、
上記保持機構は、上記トレイ本体とは別体に構成されて上記シーツの端部を着脱可能に把持するためのクリップ手段と、このクリップ手段に一端が結合された連結紐と、上記連結紐の他端が結合された状態で上記トレイ本体に固定されて連結紐の巻き戻し及び巻取りを行うリール手段とを備え、
上記リール手段は、上記連結紐の他端が直接的又は間接的に結合されてその連結紐の巻き戻しに伴い巻取り付勢力として蓄力するバネ部材を備えて構成され、
上記トレイ本体は内側に向けて開放された凹状の受け入れ部を備える一方、上記クリップ手段は上記受け入れ部に内嵌可能な凸状の嵌合部を備え、これら嵌合部と受け入れ部とは、上記クリップ手段の嵌合部がトレイ本体の受け入れ部に内嵌することにより上記バネ部材による巻取り側付勢力に抗して上記クリップ手段を基準位置に当て止めるように構成されている、
ことを特徴とするペットトレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のペットトレイであって、
上記受け入れ部は、上記トレイ本体のシーツ載置面であるトレイ上面よりも下側に凹むように形成される一方、上記嵌合部は、上記クリップ手段に対し下向きに凸状となるように形成されている、ペットトレイ。
【請求項3】
請求項2に記載のペットトレイであって、
上記受け入れ部は、外側寄りの内奥面に形成された当て止め面部と、この当て止め面部に対し内側寄りから斜め下り勾配を有する傾斜面として形成された誘導面部とを備えている、ペットトレイ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のペットトレイであって、
上記連結紐の一端は上記クリップ本体の下面に結合されると共に、上記連結紐の他端は上記受け入れ部の内壁面を貫通してリール手段に結合されて、連結紐が巻き戻されてクリップ手段が基準位置から内側位置に移動した際に上記連結紐を介して斜め下向きに巻取り付勢力が作用するように構成されている、ペットトレイ
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のペットトレイであって、
上記トレイ本体は、上記クリップ手段を基準位置に当て止めた状態で収容する収容凹部を備え、この収容凹部に上記受け入れ部が形成されている、ペットトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−148466(P2010−148466A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331590(P2008−331590)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(509000965)キョーダ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】