説明

ペット飼育空間

【課題】従来の飼育空間では、ペットが室外で活動する際に室内を横切って室外に出なければならず、毛や皮脂(ふけ)及びこれにまつわるダニの糞や死骸を室内全体に広く発散させて同居家族にアレルギー性疾患を発生させる原因となる。
【解決手段】収納棚の下方に設けられ後面と側面とが閉鎖された空間であって、前記側面には表面が耐摩耗性及び耐汚染性に優れたメラミン板等の面材が設けられ、後面には外枠と該外枠に開閉自在に固定した半透明の軟質樹脂の窓材からなるくぐり戸が設けられており、室内を横切ることなくペットが室外に直接移動でき室内を清潔に保持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内でネコや犬等のペットと人が共生でき、収納の下部を使用することで室内空間を有効に活用できるペット飼育空間に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットブームと言われるように、ペットを飼育する家庭が増加し、特にネコや小型犬の室内での飼育が増加している。しかし、マンション等の集合住宅のように広い居住空間が得られない場合は、専用の飼育空間を設けることは難しい。
【0003】
できる限り省スペースを考えた方法として、収納棚とペット飼育空間を合体させて室内空間を無駄なく活用する例が特許文献1に開示されている。特許文献1では、図8に示すように収納棚の下部にペットの飼育空間(居住空間)を設けており、休息ブース、食事ブース、トイレブース等の3つのブースによって小部屋に分割されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4081388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これによって、ペットの基本動作(食事、就寝、排泄)を1箇所にコンパクトにまとめられると共に、各ブースは合成樹脂製のボックスからなり取り外して容易に洗浄することができる。一方で、ペットは一旦ブース外に出ないと別の動作を行うことができないので、実質的に飼育空間は前方にまで広がる。また、ペットが室外で活動する際には部屋の中を横切って室外に出なければならず、毛や皮脂(ふけ)及びこれにまつわるダニの糞や死骸を室内全体に広く発散させて同居家族にアレルギー性疾患を発生させる原因となる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、収納棚の下部を使用し室内空間を有効に活用できると共に飼育空間と屋外を自由に行き来できるペット飼育空間を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を解決するために、請求項1に係るペット飼育空間の発明は、収納棚の下方の少なくとも一部に設けられ後面と側面が閉鎖された空間であって、前記側面には表面が耐摩耗性及び耐汚染性に優れた面材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係るペット飼育空間の発明は、請求項1に記載の面材がメラミン板であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係るペット飼育空間の発明は、請求項1又は2に記載のペット飼育空間の後面には外枠と該外枠に開閉自在に固定した窓材からなるくぐり戸が設けられているいることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係るペット飼育空間の発明は、請求項3に記載の窓材が半透明の軟質樹脂からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明は、収納棚の下方に設けられ後面と側面とが閉鎖された空間であるので、ペットの飼育空間を特別に設けることなく収納棚の設置場所と兼用できるので、マンション等で広い居住空間が得られない場合でも室内空間を有効に活用できる。
【0012】
また、側面に設けられた面材の表面が耐摩耗性及び耐汚染性に優れた面材を用いているので、ペットが爪とぎ等で面材を引っかいても収納棚に傷が付き難く、唾液や排泄物による汚れも簡単に拭き取ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の面材がメラミン板であるので耐摩耗性及び耐汚染性に優れた面材を具体的に提供することができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載のペット飼育空間の後面(具体的には壁面)には外枠と該外枠に開閉自在に固定した窓材からなるくぐり戸が設けられているので、ペットが室内を横切ることなく室外(玄関、廊下、別室等)に直接移動することができ、ペットの毛や皮脂(ふけ)及びこれにまつわるダニの糞や死骸の室内への発散を防止することができるので、室内を清潔に保つことができ、同居家族がアレルギー性疾患を患う等の原因を少なくすることができる。また、外枠が固定できるように壁面に開口部を設けるだけで、簡単にくぐり戸を設けることができる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の窓材が半透明の軟質樹脂からなるので、ペットがくぐり戸に近づいた時の気配がわかりペットと飼い主の双方にとって安心感を与えると共に、部屋が外から丸見えにならないのでプライバシーが保たれ、また、窓材が容易に変形するのでペットが通り抜ける際には引っかかったり怪我をしたりしない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のペット飼育空間を示す参考図。
【図2】本発明のペット飼育空間に設けたくぐり戸が閉じた状態を示す断面図。
【図3】本発明のペット飼育空間に設けたくぐり戸が開いた状態を示す断面図。
【図4】くぐり戸部分を示す正面図。
【図5】くぐり戸の枠部分を示す断面図。
【図6】くぐり戸の解錠状態の正面図。
【図7】くぐり戸の施錠状態の正面図。
【図8】従来技術のペット飼育空間を示す参考図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。もちろん本発明は本実施形態の記載内容に限られるものではない。
【0018】
本発明に係るペット飼育空間Aは、例えば、図1に示すように、収納棚1の中央下部に設けられる。上面5及び左右側面3、後面4が面材によって閉鎖されており、前方にのみ開放した空間であるので、前側から世話をすることができると共に、目が行き届くので、勝手に走り回る多くの子供を飼育する際など側面3や後面4から逃げ出すこともなく、部屋の中で排泄されたりするおそれも少なくなる。また、本実施形態では側面部分は側方収納部11となっているので、ペット用品を飼育空間に隣接して収納できて便利であると共に、ペット飼育空間Aの上部に大きく重い上方収納部12を設けても、両端を側方収納部11で下から支持できるので、地震等の発生した場合に棚が外れるように上方収納部12がペット飼育空間Aに落下するようなおそれも防止できる。
【0019】
後面4には、くぐり戸2が設けられている。くぐり戸2は図2〜7に示すように、透明または半透明の窓材21と上下の上枠22、下枠23と壁面Cの開放部を納める外枠24で構成されている。窓材21は上枠22に設けられた回転軸26aと外枠24に設けられた軸受部26bからなるヒンジ機構により、外枠24に回転自在に固定されており、図3に示すように窓材21が開閉されペットが出入りすることができる。したがって、収納棚1はペット飼育空間Aの後面4は背板のないものが好ましいが、背板を設けた場合はくぐり戸2の設置部分を切断する必要がある。
【0020】
くぐり戸2は必要に応じて施錠がされるので、ペットが窓材21を開けて逃げ出すのを防止することができる。施錠方法の一例を図4〜7を用いて示す。下枠23の中央部分にはロック装置つまみ25があり、図6の解錠状態からつまみ25を横に回すと図7に示すように係止突部27aが押出されて外枠24に設けられている係止凹部27b内に挿入されることにより施錠されるので(内部の構造は省略)、施錠操作がワンタッチで簡単に行える。なお、外枠24の下端には磁石28が設けられ、下枠23の下方側面に挿入されている鉄等の部材(記載を省略)が磁気吸引されて窓材21が風等でぶらぶらと揺れることが無く、ペットが出入りをする時には磁気吸引程度の弱い力なので容易に開閉できる。
【0021】
窓材21はペットがくぐり戸2に近づいた時の気配がわかるように透明または半透明の樹脂からなることが好ましく、部屋が外から丸見えにならずプライバシーが保たれるように半透明であることがさらに好ましい。また、通り抜けるペットが引っかかったり怪我をしないように軟質系樹脂シートが好ましい。例えば、本実施形態ではポリカーボネート樹脂を用いており強度にも優れた材料である。上枠22、下枠23はアルミニウム等の金属やABS樹脂等の高強度の硬質樹脂が好ましい。また、外枠24は合板やMDFからなり表面はオレフィン樹脂等の化粧シートが貼着されている。
【0022】
ペット飼育空間Aの側面3に設けられた面材は、表面が耐摩耗性及び耐汚染性に優れた面材を用いているいるので、ペットが爪とぎ等で面材を引っかいても傷が付き難く、唾液や排泄物による汚れも簡単に拭き取ることができる。なお、最も傷付き易い側面部は必須であるが、必要に応じて後面4(壁面)等に当該面材を用いても良い。
【0023】
前記面材は具体的には、耐摩耗性の点でメラミン板が望ましく、高圧メラミン板が特に望ましい。収納棚側面に高圧メラミン板を直接貼着するか、合板やケイカル板等を介して貼着する。
【0024】
前記高圧メラミン板の耐摩耗性評価はJIS K5600−5−11「塗膜の機械的性質(耐洗浄性)」に準じて行った。100×400mmの試験片を湿潤摩耗試験装置に載置し、500回単位で試験片の表面を摩耗具で擦り、最大2000回終了時までの外観及び光沢の変化を測定する。光沢はグロス計で測定しグロス値の試験前後の変化が5以下となることが必要である。
【0025】
また、前記高圧メラミン板の耐汚染性評価はJIS A1531「家具−常温液体に対する表面抵抗の試験方法」に準じて行った。100×100mmの試験片の中央部にガーゼ又は濾紙を置き、各汚染源・薬品を滴下し、6時間放置後ガーゼ又は濾紙を除去して水又はベンジン(油性のもの)で拭取り、表面の色写り、色残り、シミ、変色、クラック、浮き上がり、膨潤を目視でチェックする。汚染源としては、日常生活で使用する、醤油、コーヒー、サラダ油、油性マジック、口紅やアンモニア、酢酸等が用いられる。
【0026】
前記耐摩耗性評価及び、耐汚染性評価により試験した高圧メラミン板は何れも問題なく使用できることがわかり、ペット飼育空間に用いる面材として最適なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0027】
収納棚の下部を使用することで室内空間を有効に活用できると共に飼育空間と屋外を自由にかつ安全に行き来できるペット飼育空間を提供できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。

【符号の説明】
【0028】
A ペット飼育空間
B 床
C 壁
D 天井
1 収納棚
11 側方収納部
12 上方収納部
2 くぐり戸
21 窓材
22 上枠
23 下枠
24 外枠
25 ロック装置つまみ
26a 回転軸
26b 軸受部
27a 係止突部
27b 係止凹部
28 磁石
3 側面
4 後面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
収納棚の下方に設けられ後面と側面とが閉鎖された空間であって、前記側面には表面が耐摩耗性及び耐汚染性に優れた面材が設けられていることを特徴とするペット飼育空間。
【請求項2】
請求項1に記載の面材がメラミン板であることを特徴とするペット飼育空間。
【請求項3】
後面には外枠と該外枠に開閉自在に固定した窓材からなるくぐり戸が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のペット飼育空間。

【請求項4】
窓材は半透明の軟質樹脂からなることを特徴とする請求項3に記載のペット飼育空間。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−97892(P2011−97892A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255868(P2009−255868)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者名:大建工業株式会社 刊行物名:▲1▼2010 Rシリーズ ドア・収納・造作部材・階段 ▲2▼2010 床・壁・ダイライト・住機製品 発行年月日:2009年10月
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】