説明

ペースト用樹脂組成物

【課題】高不揮発分濃度としながら低粘度を保ち、優れたチキソトロピー性を発現すると共に、焼成残渣の少ない焼成性を有するペースト用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】有機溶媒と、有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分A、及び少なくとも一部が前記ポリマー構造部分Aに結合又は吸着した有機溶媒可溶性の可溶ポリマーBを含み、有機溶媒中に分散されている非水分散樹脂と、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶媒中に樹脂成分が分散されたペースト用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス粉末、導電性粉末等の無機微粒子などの無機材料と、有機材料(バインダ樹脂を有機溶媒に溶かしたもの)とを混合して調製された無機ペーストは、様々な形状の焼成体を得るために広く用いられている。
【0003】
無機ペーストを用いて焼成体を作製するにあたっては、スクリーン印刷、ドクターブレード等を用いた塗工法、シート状に加工するためのキャスティング法等により所定の形状に加工した後、乾燥、焼成を行なうことで、所望とする焼成体を得ることが可能である。中でも、スクリーン印刷による方法は、特に大量生産に適した方法であり、各種電子部品等の部材形成に適用されている。
【0004】
例えば、PDP(プラズマディスプレイ)の背面ガラス基板上に設けられる隔壁(リブ)は、無機ペーストを用いて形成することができる。具体的な例として、ガラス粉末と白色無機粉末と有機材料とを混合してチキソトロピー指数とずり速度を所定の範囲に調整したガラスペーストを、スクリーン印刷によりガラス基板上に印刷し、乾燥、焼成することで隔壁を形成することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、無機ペーストは、例えば太陽電池の受光面電極の形成にも用いられる。例えば、銀粉末とガラス粉末と所定のエチルセルロースを含むビヒクルとを混合した太陽電池電極用ペースト組成物を用い、スクリーン印刷法で塗布し、乾燥、焼成処理して電極を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
このように、無機ペーストを付与するための方法として、スクリーン印刷法は広く用いられているが、この方法では、一般に1回の塗布厚みが数十μm程度に留まる。そのため、例えばPDP等の隔壁をより高さの高いものにしようとするには、印刷及びその後の乾燥を多数回にわたって繰り返し行なう必要があり、生産性が極めて悪いばかりか、重ね合わせて1つの構造物とするため良好な形状が得られ難いといった問題がある。また、エチルセルロースを用いた組成では、焼成しても残炭が生じやすく、焼成性に劣る。
【0007】
無機ペースト、特にスクリーン印刷に用いられるペーストに求められる特性としては、特に印刷性、保形性、焼成性が重要である。すなわち、
印刷性については、スクリーン印刷を良好に行なうために、無機ペーストには、塗工の際は粘度が低く印刷が容易である一方、版を離す際や印刷後に静置して乾燥させる際は粘度が高く流涎しないという、いわゆるチキソトロピー性が求められる。
また、無機ペーストには、高不揮発分(固形分)を有し、かつ低粘度である性質が求められる。これにより、保形性が発現する。ペーストが低不揮発分であると、焼成時の収縮が大きいため、ある程度の厚さで印刷する必要がある。また、ペーストをただ単に高不揮発分にすると、粘度が高くなり過ぎてしまい、印刷性が悪化する。
さらに、無機ペーストには、バインダーが低温で良好な熱分解性を有し、焼成した後に残渣が残らないという性質(焼成性)が求められる。燃焼性の悪い組成では、不純物として有機成分(炭素)が残ってしまい、より高温で加熱する必要が生じる。
【0008】
上記状況に鑑みて、従来から種々の検討がなされており、例えば、架橋(メタ)アクリル樹脂からなるゲル微粒子、無機微粒子、及び有機溶剤を含有することで、チキソ性に優れ、従ってスクリーン印刷性を有し、低温焼成が可能な無機微粒子分散ペースト組成物(例えば、特許文献3参照)が開示されている。また、所定の(メタ)アクリル樹脂や有機溶剤を含み、スクリーン印刷性に優れる無機微粒子分散ペースト(例えば、特許文献4参照)や、少量で高粘度を付与できて焼成性に優れた焼成型ペースト用アクリル系バインダー樹脂組成物(例えば、特許文献5参照)などが開示されている。
【0009】
また、塗料用ビヒクル用の組成物として、脂肪族炭化水素系溶媒等を主成分とする有機溶媒、有機溶媒に可溶な共重合体、及び有機溶媒に不溶の微粒子等を含有する非水系樹脂組成物が開示されており(例えば、特許文献6参照)、塗膜の耐候性、耐溶剤性及び付着性が著しく改善されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−327371号公報
【特許文献2】特開2009−246277号公報
【特許文献3】特開2008−63457号公報
【特許文献4】特開2009−227731号公報
【特許文献5】特開2002−80675号公報
【特許文献6】特開2000−95917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、PDP用の隔壁(リブ)や太陽電池用の電極等をスクリーン印刷により形成する方法については、従来から種々の検討がなされてはいるものの、印刷性や保形性をそなえて、隔壁や電極等の構造物に求められる厚みや高さ、精細さが充分に達成される技術は未だ確立されるに至っていない。
【0012】
上記従来の技術のうち、架橋(メタ)アクリル樹脂からなるゲル微粒子を用いた無機微粒子分散ペースト組成物では、チキソトロピー性は得られても樹脂が架橋構造を有しているために焼成後の残渣が生じやすい。一方、上記特許文献4〜5のように、樹脂成分に(メタ)アクリル樹脂を用いた組成では焼成性の向上が期待されるが、高不揮発分としたときの増粘が大きく、チキソトロピー性に劣る傾向がある。
また、有機溶媒に可溶の共重合体と有機溶媒に不溶の重合体等の微粒子を有機溶媒中に含有する上記従来の非水系樹脂組成物は、塗料用途であり、スクリーン印刷に用いられるペーストとしての適性は考慮されていない。
【0013】
上記のように、熱収縮を抑えて所望形状が得られるような高不揮発分としながら、印刷性及び形状保持に有利なチキソトロピー性を有し、しかも低温焼成が可能で残渣の懸念がないという性状を有しているペースト材料は未だ提案されていないのが実情であり、このようなペースト材料の提供が求められている。
【0014】
本発明は、上記に鑑みなされたものであり、高不揮発分濃度としながら低粘度を保ち、優れたチキソトロピー性を発現すると共に、焼成残渣の少ない焼成性を有するペースト用樹脂組成物を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 有機溶媒と、有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分A、及び少なくとも一部が前記ポリマー構造部分Aに結合又は吸着した有機溶媒可溶性の可溶ポリマーBを含み、前記有機溶媒中に分散されている非水分散樹脂と、を含むペースト用樹脂組成物である。
【0016】
<2> 前記有機溶媒は、溶解度パラメータ(SP値)が8.0(cal/cm0.5以上10.0(cal/cm0.5以下であり、かつ沸点が180℃以上280℃以下である前記<1>に記載のペースト用樹脂組成物である。
【0017】
<3> 前記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマー及び前記可溶ポリマーBの少なくとも一方は、(メタ)アクリル系樹脂である前記<1>又は前記<2>に記載のペースト用樹脂組成物である。
【0018】
<4> 前記有機溶媒は、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール及びテキサノールの少なくとも一つである前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物である。
【0019】
<5> 前記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーのSP値(SPA)が前記可溶ポリマーBのSP値(SPB)より大きく、前記SPA及び前記SPBが下記式1を満たす前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物である。
SPA−SPB<1.5 ・・・(式1)
【0020】
<6> 前記有機溶媒中における、前記可溶ポリマーBに対する前記ポリマー構造部分Aの比率(A/B;質量比)が、0.5/1以上5/1以下である前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載のペースト用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高不揮発分濃度としながら低粘度を保ち、優れたチキソトロピー性を発現すると共に、焼成残渣の少ない焼成性を有するペースト用樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のペースト用樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明のペースト用樹脂組成物は、有機溶媒、及び、有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分Aと、少なくとも一部がポリマー構造部分Aに結合又は吸着した有機溶媒可溶性の可溶ポリマーBとを含み、有機溶媒中に分散されている非水分散樹脂を用いて構成されている。このペースト用樹脂組成物は、必要に応じて、更に重合開始剤やその他添加剤等の他の成分を用いて構成することができる。
【0023】
従来からスクリーン印刷に用いられる無機ペーストに関する検討はされているものの、構造物をスクリーン印刷により形成する場合に1回の印刷作業で所望の厚みや高さを実現し得るような、焼成時の熱収縮が少ない高不揮発分としつつも、良好なチキソトロピー性を示し、しかも焼成後には残渣(特に残炭)の発生が抑えられた組成は提供されていなかったところ、
本発明においては、有機溶媒中に分散含有される樹脂として、有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分Aに有機溶媒可溶性の可溶ポリマーBが結合又は吸着した樹脂を用い、これを有機溶媒中に分散含有させた組成は、焼成で熱収縮し難い高不揮発分としながら低粘度を維持できる一方で、チキソトロピー性に優れており、スクリーン印刷に適している。
【0024】
なお、本発明において、チキソトロピー性とは、剪断力などの外部応力を加えると結合が破壊されて粘性が低下し、流動性が発現し、静止すると流動性が低下し、再び粘性が回復する性質をいう。
【0025】
以下、本発明のペースト用樹脂組成物を構成する各成分について詳述する。
(有機溶媒)
本発明のペースト用樹脂組成物は、有機溶媒の少なくとも一種を含有する。有機溶媒は、その中に分散される樹脂成分の親疎水性の程度、樹脂成分を分散含有したときのチキソトロピー性、揮発性などを考慮して選択される。
【0026】
有機溶媒の具体例としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、i−オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、2−(4−メチルシクロヘキサ−3−エニル)プロパン−2−オール(ターピネオール(別名:テルピネオール))などのアルコール系有機溶媒;
メチルカルビトール、エチルカルビトール、n−プロピルカルビトール、i−プロピルカルビトール、n−ブチルカルビトール、i−ブチルカルビトール、i−アミルカルビトール、フェニルカルビトール、ベンジルカルビトールジエチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、酢酸カルビトールエステルなどのカルビトール系有機溶媒;
炭酸プロピレン、酢酸2−エチルヘキシル、2−エチルヘキサン酸−エチルヘキシル等のエステル系有機溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコールなどのケトン系有機溶媒;
イソパラフィン等の炭化水素系有機溶媒;
などを挙げることができる。
【0027】
有機溶媒の溶解度パラメータ(以下、SP値と略記する。)は、後述する非水分散樹脂のSP値との関係などから決定されるが、好ましくは、8.0(cal/cm0.5以上10.0(cal/cm0.5以下である。SP値が前記範囲内であることで、高不揮発分に調製したときの粘度を低く維持し、チキソトロピー性に優れる。中でも、有機溶媒のSP値は、上記同様の理由から、8.5(cal/cm0.5以上9.5(cal/cm0.5以下の範囲がより好ましい。
【0028】
本発明におけるSP値(溶解度パラメータ/単位:(cal/cm0.5)とは、分子凝集エネルギーの平方根で表される値であり、Hildebrandの方法により算出されるものである。
【0029】
また、有機溶媒としては、沸点が180℃以上280℃以下の範囲にある有機溶媒が好ましい。沸点が180℃以上であることで、スクリーン印刷に適し、スクリーン印刷に用いられたときの塗工時の塗工作業性が軽減される。また、沸点が280℃以下であることで、レべリング性の点で有利である。
中でも、上記同様の理由から、沸点は200℃以上260℃以下がより好ましい。
【0030】
上記した有機溶媒の中でも、本発明における有機溶媒としては、比較的高沸点で大気中に揮発し難く、チキソトロピー性を良好に維持しやすい点から、アルコール系有機溶媒、カルビトール系有機溶媒が好ましく、更には、より良好なチキソトロピー性が得られる点で、ターピネオール、ブチルカルビトールアセテート(BCA)、テキサノールがより好ましい。その中でも、沸点247℃のブチルカルビトールアセテートが特に好ましい。
【0031】
本発明のペースト用樹脂組成物中における有機溶媒の含有量としては、後述する非水分散樹脂の量に対して、30〜60質量%が好ましく、40〜50質量%がより好ましい。有機溶媒の含有量が前記範囲内であることで、高不揮発分でチキソトロピー性を有する組成物が得られやすく、スクリーン印刷した際に高さ、形状の良好な構造物を形成することができる。
【0032】
(非水分散樹脂)
本発明のペースト用樹脂組成物は、非水分散樹脂の少なくとも一種が前記有機溶媒中に分散含有された非水分散物(非水ディスパージョン)として構成される。非水分散樹脂は、少なくとも、有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分Aと、少なくとも一部がポリマー構造部分Aに結合又は吸着した有機溶媒可溶性の可溶ポリマーBとを有しており、ポリマー構造部分Aは前記有機溶媒中に溶解せず、可溶ポリマーBが有機溶媒に溶解した状態で分散しているポリマー成分である。
【0033】
〜ポリマー構造部分A〜
本発明における非水分散樹脂を構成するポリマー構造部分Aは、有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合して形成された粒子核をなしている。
【0034】
有機溶媒不溶性の不溶ポリマーは、一種のモノマー(単量体)の単独重合体又は二種以上のモノマー(単量体)の共重合体のいずれでもよいが、有機溶媒への溶解性を調節する等の点で、二種以上のモノマーの共重合体が好ましい。
【0035】
不溶ポリマーを形成するモノマーとしては、(メタ)アクリル系モノマー、スチレン系モノマー、ビニル系モノマー、ニトリル系モノマー等から適宜選択することができる。不溶ポリマーを形成するモノマーは、有機溶媒への溶解性、組成物としたときの粘度、チキソトロピー性、及び焼成性を考慮して、その種類及びポリマーに占める割合が選択される。本発明においては、特に、スクリーン印刷後の焼成性の観点から、(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。
【0036】
不溶ポリマーを形成するモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、i−オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、i−ノニルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレートなどの、アクリル酸のアルキル又はアリールエステル(好ましくは、アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数=1〜18、アリール部位の炭素数=6〜8);
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、i−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、i−ノニルメタクリレート、n−ドデシルメタクリレート、i−ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ベンジルメタクリレートなどの、メタクリル酸のアルキル又はアリールエステル(好ましくは、アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数=1〜18、アリール部位の炭素数=6〜8);
スチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼンなどの芳香族ビニル;
などのラジカル重合性不飽和モノマーを挙げることができる。
【0037】
また、前記ラジカル重合性不飽和モノマーと共に、下記の官能基モノマーを共重合することができる。すなわち、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸などの、カルボキシル基含有単量体(好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸);
アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−n−ブトキシメチルアクリルアミドなどのアミド基もしくは置換アミド基含有単量体(好ましくは、アクリルアミド、メタクリルアミド);
2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アリルアルコール、メタリルアルコールなどの水酸基含有単量体(好ましくは2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の、ヒドロキシ低級アルキル(メタ)アクリレート〔好ましくは、低級アルキルの炭素数=1〜4〕);
アミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレートなどのアミノ基もしくは置換アミノ基含有単量体(好ましくは、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタアクリレート等の、N,N−ジ低級アルキルアミノ低級アルキル(メタ)アクリレート〔好ましくは、2つの低級アルキルはいずれも炭素数=1〜4〕);
グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルアリルエーテル、グリシジルメタリルエーテル、グリシジルビニルエーテルなどのエポキシ基含有単量体;
ビニルメルカプタン、アリルメルカプタンなどのメルカプト基含有単量体;
(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン等の、1分子中に2個以上のラジカル重合性不飽和基を有する単量体;などである。
【0038】
上記の官能基モノマーのうち、カルボキシル基含有単量体、アミド基含有単量体、水酸基含有単量体、置換アミノ基含有単量体が好ましく、更に好ましくは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アルキル部位の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキル部位の炭素数1〜4のN,N−ジ−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートである。
【0039】
中でも、不溶ポリマーは、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、アクリル酸のアルキル又はアリールエステル、及びメタクリル酸のアルキル又はアリールエステルから選ばれるモノマーと、カルボキシル基含有単量体、アミド基含有単量体、水酸基含有単量体、及び置換アミノ基含有単量体から選ばれるモノマーとの共重合により形成されるのがより好ましい。
更に好ましくは、不溶ポリマーは、アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アルキル部位の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びアルキル部位の炭素数1〜4のN,N−ジ−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから選ばれるモノマーとの共重合により形成されるのが好ましい。
上記のように、(メタ)アクリル系樹脂を用いることで、スクリーン印刷後に焼成して構造物(焼成体)を得る場合の焼成性が向上し、焼成残渣の軽減が図れる。
【0040】
ポリマー構造部分Aは、疎水性モノマーに由来の疎水性構造単位と親水性モノマーに由来の親水性構造単位とを有する共重合体が好ましく、有機溶媒に不溶性である点から、疎水性構造単位と親水性構造単位との比率(疎水性構造単位/親水性構造単位[質量比])は、60/40〜95/5の範囲が好ましい。
具体的には、「アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数1〜18のメタクリル酸のアルキルエステル(p)」と、「アルキル部位の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(q)」とを含み、その比率(p/q;質量比)が60/40〜95/5である(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0041】
ポリマー構造部分Aの平均分子量は、重量平均分子量で10,000〜300,000が好ましく、より好ましくは100,000〜200,000である。
【0042】
ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーの溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5);以下、SPAと略記することがある。)は、前記有機溶媒のSP値や後述の可溶ポリマーBのSP値との関係などから決定されるが、好ましくは、9.0(cal/cm0.5以上10.0(cal/cm0.5以下である。
SP値の求め方については、既述した通りである。
【0043】
〜可溶ポリマーB〜
本発明における非水分散樹脂を構成する可溶ポリマーBは、有機溶媒に可溶性であり、少なくとも一部が前記ポリマー構造部分Aに結合又は吸着し、その少なくとも一部が有機溶媒に溶解して有機溶媒中での分散安定性を保っている。
【0044】
有機溶媒に可溶性の可溶ポリマーは、一種のモノマー(単量体)の単独重合体又は二種以上のモノマー(単量体)の共重合体のいずれでもよいが、ポリマー構造部分Aとの結合又は吸着に有利な性質と、有機溶媒への溶解性とを兼ねそなえる点から、二種以上のモノマーの共重合体が好ましい。
【0045】
可溶ポリマーを形成するモノマーとしては、上記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーを形成するモノマーと同様のモノマーが挙げられる。可溶ポリマーBを形成するモノマーは、有機溶媒への溶解性、組成物としたときの粘度、チキソトロピー性、及び焼成性を考慮して、その種類及びポリマーに占める割合が選択される。
該モノマーとして、例えば、アクリル酸のアルキル又はアリールエステル、メタクリル酸のアルキル又はアリールエステル、芳香族ビニル単量体等のラジカル重合性不飽和モノマーのほか、カルボキシル基含有単量体、アミド基含有単量体、水酸基含有単量体、及び置換アミノ基含有単量体等の官能基モノマーが好適に挙げられる。これらモノマーの詳細については、既述のポリマー構造部分Aで説明した通りであり、各々の好ましい態様も同様である。
【0046】
中でも、可溶ポリマーBは、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、アクリル酸のアルキル又はアリールエステル、及びメタクリル酸のアルキル又はアリールエステルから選ばれるモノマーと、カルボキシル基含有単量体、アミド基含有単量体、水酸基含有単量体、及び置換アミノ基含有単量体から選ばれるモノマーとの共重合により形成されるポリマーがより好ましい。
更に好ましくは、可溶ポリマーは、アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、アルキル部位の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、及びアルキル部位の炭素数1〜4のN,N−ジ−アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから選ばれるモノマーとの共重合により形成されるのが好ましい。
上記のように、(メタ)アクリル系樹脂を用いることで、上記のように焼成性が向上し、焼成残渣の軽減が図れる。
【0047】
可溶ポリマーBには、疎水性モノマーに由来の疎水性構造単位と親水性モノマーに由来の親水性構造単位とを有する共重合体が好適に用いられ、疎水性構造単位と親水性構造単位との比率(疎水性構造単位/親水性構造単位[質量比])は、90/10以上100/0未満の範囲が好ましく、95/5以上97/3以下の範囲が好ましい。
具体的には、「アルキル部位(シクロアルキルを含む)の炭素数1〜18のメタクリル酸のアルキルエステル(p)」と、「アルキル部位の炭素数1〜4のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(q)」とを含み、その比率(p/q;質量比)が90/10以上100/0未満である(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。また、その比率(p/q;質量比)が95/5以上97/3以下である(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
【0048】
本発明におけるポリマー構造部分Aの不溶ポリマー及び可溶ポリマーBの少なくとも一方は、600℃以下での低温焼成が可能で、焼成残渣も軽減される点で、(メタ)アクリル系樹脂が好ましく、不溶ポリマー及び可溶ポリマーの両方が(メタ)アクリル系樹脂であることがより好ましい。
【0049】
なお、本明細書中において、(メタ)アクリルは、アクリル及びメタクリルの両方を意味するものである。
【0050】
可溶ポリマーBの溶解度パラメータ(SP値、単位:(cal/cm0.5);以下、SPBと略記することがある。)は、前記有機溶媒のSP値や前記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーのSP値との関係などから決定されるが、好ましくは、8.0(cal/cm0.5以上9.5(cal/cm0.5以下である。
SP値の求め方については、既述した通りである。
【0051】
また、前記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーのSP値(SPA)が可溶ポリマーBのSP値(SPB)より大きいことが好ましい。SPAがSPBより大きいと、SPAと前記有機溶媒のSP値との差がある程度得られ、有機溶媒中での分散安定性がより高められる点で有利である。より好ましくは、SPA及びSPBは、下記式1を満たす。
SPA−SPB<1.5 ・・・(式1)
SPAからSPBを減算した差が1.5未満であることは、SPAとSPBの値が比較的近いことを示す。したがって、ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーと可溶ポリマーBとの親和性が高くなり、有機溶媒中に可溶ポリマーBの一部が溶解しているときにも、可溶ポリマーBがポリマー構造部分Aに強固に繋がった状態が保たれるので、安定した分散性及びチキソトロピー性が得られ、安定性の高い非水ディスパージョンが得られる。
中でも、「SPA−SPB」の値は、0.5〜1.0の範囲がより好ましい。
【0052】
有機溶媒中における、可溶ポリマーBに対するポリマー構造部分Aの比率(A/B;質量比)としては、0.5/1以上5/1以下の範囲であることが好ましい。比率A/Bが0.5/1以上であると、レベリング性の点で有利であり、5/1以下であると、分散安定性の点で有利である。
前記比率A/Bは、1/1以上3/1以下の範囲がより好ましい。有機溶媒に可溶な可溶ポリマーBに対する、有機溶媒に不溶性のポリマー構造部分Aの比率が大きいことで、より良好なチキソトロピー性が確保できる。
【0053】
また、本発明のペースト用樹脂組成物は、少なくとも一部の可溶ポリマーBがポリマー構造部分Aに結合又は吸着した非水分散樹脂を分散含有するが、ポリマー構造部分Aに結合又は吸着していない可溶ポリマーBが有機溶媒中に浮遊して存在している態様がより好ましい。このような可溶ポリマーBが有機溶媒中に存在することで、非水分散樹脂と無機材料との混和性や、無機材料の分散性が向上し、レベリング性に優れたペーストを得ることができる。
【0054】
本発明における非水分散樹脂は、有機溶媒中に分散されて非水ディスパージョンを形成する。
この非水分散樹脂は、あらかじめ有機溶媒中に有機溶媒に可溶なポリマーを形成しておき、このポリマーの存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させたものであっても良いし、あらかじめ有機溶媒に可溶なポリマー部分と有機溶媒に不溶性のポリマー部分とがブロック又はグラフトされた重合体を形成しておき、この重合体の存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させたものでもよい。
これらの重合方法のうち、あらかじめ有機溶媒中に有機溶媒に可溶なポリマーを形成しておき、このポリマーの存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させる方法が、簡易に非水分散樹脂を得られる点から、好ましい。
有機溶媒に可溶なポリマー存在下、有機溶媒に不溶なポリマーを形成するモノマーを重合させることにより非水分散樹脂を得る方法において、前記有機溶媒に可溶なポリマーは、有機溶剤中で溶液重合により合成することができる。この可溶ポリマーは、ペースト用樹脂組成物を構成する有機溶媒と同じ有機溶媒中に、モノマー及び必要に応じて重合開始剤や連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で攪拌しながら数時間加熱反応させることにより好適に合成することができる。このとき、有機溶媒、モノマー、重合開始剤及び/又は連鎖移動剤は、その少なくとも一部を逐次添加してもよい。重合温度は、一般に30〜180℃(好ましくは60〜150℃)が好ましい。
続いて、有機溶媒に可溶なポリマーが存在した有機溶媒中で、有機溶媒に不溶性のポリマー部分を与えるモノマーを重合開始剤及び必要に応じて連鎖移動剤とともに窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で攪拌しながら数時間加熱して重合させることにより、有機溶媒に不溶性の不溶ポリマーと、可溶ポリマー部分に不溶ポリマー部分が結合した共重合体が生成する。生成した有機溶媒に不溶性のポリマーが、前記共重合体の不溶ポリマー部分とともに粒子核を形成し、有機溶媒に不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分A、及び少なくとも一部が前記ポリマー構造部分Aに結合又は吸着した可溶ポリマーBを有する分散樹脂粒子を得ることができる。
【0055】
重合に用いる重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、カプロイルパーオキシド、ジ−i−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルペロキシ−2−エチルヘキサネートなどの有機過酸化物;2,2’−アゾビス−i−ブチルニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物などを、各々単独で又は組み合わせて用いることができる。
前記重合開始剤のうち、有機溶媒に可溶なポリマーが存在する有機溶媒中で、有機溶媒に不溶性のポリマー部分Aを与えるモノマーを重合する際は、水素引き抜き能の高い有機過酸化物を使用することが好ましい。水素引き抜き能の高い重合開始剤を使用することで、効率的に可溶ポリマー中の不安定な水素原子が引き抜かれ、ここに不溶性のポリマー部分Aを与えるモノマーが付加する。これにより、可溶ポリマー部分と不溶ポリマー部分とが結合したグラフト又はブロック共重合体が生成し、生成した有機溶媒に不溶性の重合体が前記グラフト又はブロック共重合体の不溶ポリマー部分とともに粒子核を形成することができる。
重合開始剤の使用量は、モノマーの合計100質量部に対して、通常は0.01〜5質量部の範囲であり、好ましくは0.02〜2質量部である。
【0056】
また、連鎖移動剤の例としては、特開2000−095917号公報の段落番号[0051]に記載の化合物を用いることができる。連鎖移動剤を用いる場合、その使用量は、モノマーの合計100質量部に対して、0.005〜3質量部が好ましい。
【0057】
本発明のペースト用樹脂組成物において、前記非水分散樹脂の割合は、前記有機溶媒100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、30〜60質量部がより好ましく、更に好ましくは40〜50質量部である。換言すれば、本発明のペースト用樹脂組成物中の不揮発分量は、30質量%以上が好ましく、30〜60質量%がより好ましく、更に好ましくは40〜50質量%である。
有機溶媒に対する非水分散樹脂の割合が30質量部以上、つまり非水分散樹脂が有機溶媒に対して少な過ぎない範囲であることで、不揮発分量の高い組成物が得られ、これを用いて焼成したときには熱収縮が抑えられる。また、非水分散樹脂の割合が60質量部以下、つまり非水分散樹脂が有機溶媒に対して多過ぎない範囲であることで、低粘度が維持され、良好なチキソトロピー性が発揮される。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明する。但し、本発明は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
<共重合体(B)溶液の調製>
以下に示すようにして、本発明における非水分散樹脂の可溶ポリマーBとして、共重合体(B)を調製した。
【0060】
(製造例1−1)
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、ブチルカルビトールアセテート(BCA;沸点=247℃)630.4質量部、メタノール(MeOH)111.3質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)87.6質量%、イソブチルメタクリレート(iBMA)9.4質量%、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)3.0質量%からなる単量体混合物500質量部を用意し、このうち125質量部を反応器に仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(ABN−V)0.08質量部を添加した。添加後、加熱し、還流温度で20分間保った。この中にさらに、残りの単量体混合物375質量部、BCA70.8質量部、MeOH12.5質量部、及びABN−V1.25質量部からなる混合物を120分間かけて逐次滴下した。更に40分間同温度で保ってから、BCA53.2質量部、MeOH9.3質量部、及びABN−V1.25質量部を30分間かけて逐次滴下した。更に190分間同温度で保ってから、BCAで希釈後冷却し、2EHMA/iBMA/2HEMA(=87.6/9.4/3.0[質量比])共重合体を含む共重合体(B1)溶液を得た。
【0061】
上記で使用した単量体の組成、ガラス転移温度(Tg)、溶解度パラメータ(SP値)、得られた共重合体(B1)溶液の不揮発分、BH型粘度(25℃)、及び重量平均分子量(Mw)を下記表1に示す。
なお、粘度は、BH型粘度計(東機産業社製)にて回転数10rpmにて25℃での粘度を測定した。Mwは、ゲル透過クロマトグラフ(GPC)によりTSK−GEL GMHXL(東ソー製 スチレン系ポリマー充填剤)をカラムとして測定しポリスチレン換算して得られる値である。
【0062】
(製造例1−2〜1−7)
前記製造例1−1において、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−1と同様にして、共重合体(B2)〜(B7)溶液を得た。
【0063】
(製造例1−8)
前記製造例1−1において、ブチルカルビトールアセテート(BCA)をターピネオール(沸点=217〜218℃)に変更すると共に、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−1と同様にして、共重合体(B8)溶液を得た。
【0064】
(製造例1−9)
前記製造例1−1において、ブチルカルビトールアセテート(BCA)をテキサノール(沸点=255℃)に変更すると共に、単量体の組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、製造例1−1と同様にして、共重合体(B9)溶液を得た。
【0065】
(製造例1−10)
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、ブチルカルビトールアセテート(BCA)212.5質量部、及びメタノール(MeOH)37.5質量部を仕込んだ。次いで、別の容器に2−エチルヘキシルメタクリレート(2EHMA)62.0質量%、ブチルアクリレート(BA)20.0質量%、及びメチルメタクリレート(MMA)18.0質量%からなる単量体混合物600質量部を用意し、このうち150質量部を反応器に仕込み、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(ABN−E)0.10質量部を添加した。添加後、加熱し、還流温度で20分間保った。この中にさらに、残りの単量体混合物450質量部、BCA85.0質量部、MeOH15.0質量部、及びABN−E0.5質量部からなる混合物を120分間かけて逐次滴下した。更に40分間同温度で保ってからBCA63.8質量部、MeOH11.2質量部、及びABN−E1.50質量部を30分間かけて逐次滴下した。更に190分間同温度で保ってから、BCAで希釈し、MeOHを抽出し、抽出したものをBCAで希釈した後、冷却して、2EHMA/BA/MMA(=62/20/18[質量比])共重合体を含む共重合体(B10)溶液を得た。
上記で使用した単量体の組成、ガラス転移温度(Tg)、溶解度パラメータ(SP値)、得られた共重合体(B10)溶液の不揮発分、BH型粘度(10rpm、25℃)、及び重量平均分子量(Mw)を下記表1に示す。なお、粘度及びMwは上記同様の方法にて測定した。
【0066】
(製造例1−11)
ブチルカルビトールアセテート(BCA)100.0質量部中に、エチルセルロース17.5質量部を溶解し、共重合体(B11)溶液とした。
【0067】
(実施例1):非水分散樹脂の調製
攪拌機、還流冷却器、逐次滴下装置、及び温度計を備えた反応器に、ブチルカルビトールアセテート(BCA)26.2質量部、メタノール(MeOH)4.7質量部、及び前記製造例1−1で得られた共重合体(B1)溶液509.85質量部を仕込み、還流温度に昇温した。昇温後、これにエチルアクリレート(EA)71.0質量%、メチルメタクリレート(MMA)9.0質量%、及び2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2HEMA)20.0質量%からなる単量体混合物356.9質量部と、BCA102.6質量部と、MeOH49.8質量部と、t−ブチルペロキシ2−エチルヘキサネート(PB−O)2.79質量部とを90分間かけて逐次滴下し、滴下終了後、同温度で60分間保持した。その後、さらにBCA74.3質量部及びPB−O7.43質量部を90分間かけて逐次滴下し、更に90分間同温度で保った。BCAで希釈し、MeOHを抽出し、抽出したものをBCAで希釈した後、冷却した。
【0068】
以上のようにして、2EHMA/iBMA/2HEMA共重合体にEA/MMA/2HEMA共重合体が結合した非水分散樹脂が、有機溶媒であるBCA中に分散された樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)を得た。
得られた樹脂分散溶液の不揮発分濃度は、45.3質量%であった。
【0069】
上記で使用した単量体の組成、ガラス転移温度(Tg)、溶解度パラメータ(SP値)、得られた樹脂分散溶液の不揮発分、BH型粘度(10rpm、25℃)、及び重量平均分子量(Mw)を下記表1に示す。なお、粘度及びMwは上記同様の方法にて測定した。
【0070】
(実施例2〜10)
実施例1において、共重合体(B1)を、下記表1に記載の単量体組成を有する共重合体(B2)〜(B9)に代え、有機溶媒の種類、ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーの単量体組成を下記表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)を得た。各樹脂分散溶液の不揮発分濃度は、下記表1に記載のようにした。
【0071】
(比較例1)
実施例1において、共重合体(B1)を製造例1−10の共重合体(B10)に代え、これを樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)として用いた。不揮発分濃度は、下記表1に記載のようにした。
【0072】
(比較例2)
実施例1において、共重合体(B1)を製造例1−11の共重合体(B11)に代え、これを樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)として用いた。不揮発分濃度は、下記表1に記載のようにした。
【0073】
(評価)
上記の実施例1〜10、比較例1〜2で調製した樹脂分散溶液(ペースト用樹脂組成物)の各々について、下記の評価を行なった。評価結果は、下記表2に示す。
【0074】
−1.粘度比(スクリーン印刷性)−
樹脂分散溶液を25℃の恒温水槽に入れ、25℃に温調後、BH型粘度計(東機産業社製)にて回転数4rpm、20rpmにて粘度を測定した。得られた粘度から4rpm/20rpmで表される粘度比を求め、チキソトロピー性を評価する指標とした。評価は、下記の評価基準にしたがって行なった。なお、粘度比は、高いほどチキソトロピー性が高く、スクリーン印刷性に優れていることを示す。
<評価基準>
A:粘度比が1.4以上であり、1回のスクリーン印刷で高さ、形状の良好な構造物が得られ、優れたスクリーン印刷性を示す。
B:粘度比が1.3以上1.4未満であり、比較的良好な高さ、形状を有する構造物が得られ、良好なスクリーン印刷性を示す。
C:粘度比が1.2以上1.3未満であり、所望の形状が得られ難くスクリーン印刷性にやや劣る。
D:粘度比が1.2未満であり、スクリーン印刷性に劣る。
【0075】
−2.焼成性−
樹脂分散溶液を200℃で約10分間減圧乾燥し、乾燥して得られた樹脂の約10mgをアルミ皿にのせ、熱重量/分析装置(SIIナノテクノロジー社製、EXSTAR6000)を用いて窒素雰囲気下、昇温温度10℃/minで常温から600℃まで昇温した。その後、室温まで冷却し、目視にて残渣の状態を観察し、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
A:アルミ皿に残渣がほとんどない。
B:アルミ皿にやや残渣がある。
C:アルミ皿に残渣が多い。
【0076】
【表1】



【0077】
【表2】



【0078】
前記表2に示すように、実施例では、得られた樹脂溶液(ペースト用樹脂組成物)は、高不揮発分に調製されており、粘度比が高く良好なチキソトロピー性を示すことが分かる。したがって、実施例の樹脂溶液は、スクリーン印刷性に適しており、スクリーン印刷したときには、従来に比べてより高さのある形状の良好な構造物を形成することが可能である。また、焼成後の炭素成分の残存が著しく軽減された。
これに対し、比較例では、チキソトロピー性に劣っており、スクリーン印刷した際には、所望とする高さや形状の構造物を得ることはできない。所望の高さを実現するために、印刷量を増すとダレが生じやすく、結果として、例えば太陽電池用途の電極パターンを形成する際にファインピッチが得られない等、精細なパターンは期待できない。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のペースト用樹脂組成物は、高不揮発分量であると共に低粘度かつ優れたチクソトロピック性を示すため、スクリーン印刷に用いる塗布液として好適であり、また焼成後の残留炭素等の残渣が少ない点から、焼成用ペースト等の用途に好適であり、例えばプラズマディスプレイ(PDP)のリブ形成や太陽電池(PV)の電極形成の用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒と、
有機溶媒不溶性の不溶ポリマーが集合したポリマー構造部分A、及び少なくとも一部が前記ポリマー構造部分Aに結合又は吸着した有機溶媒可溶性の可溶ポリマーBを含み、前記有機溶媒中に分散されている非水分散樹脂と、
を含むペースト用樹脂組成物。
【請求項2】
前記有機溶媒は、溶解度パラメータ(SP値)が8.0(cal/cm0.5以上10.0(cal/cm0.5以下であり、かつ沸点が180℃以上280℃以下である請求項1に記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマー及び前記可溶ポリマーBの少なくとも一方は、(メタ)アクリル系樹脂である請求項1又は請求項2に記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機溶媒は、ブチルカルビトールアセテート、ターピネオール、及びテキサノールの少なくとも一つである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリマー構造部分Aの不溶ポリマーのSP値(SPA)が前記可溶ポリマーBのSP値(SPB)より大きく、前記SPA及び前記SPBが下記式1を満たす請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物。
SPA−SPB<1.5 ・・・(式1)
【請求項6】
前記有機溶媒中における、前記可溶ポリマーBに対する前記ポリマー構造部分Aの比率(A/B;質量比)が、0.5/1以上5/1以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のペースト用樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−82902(P2013−82902A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−209918(P2012−209918)
【出願日】平成24年9月24日(2012.9.24)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】