説明

ホイールローダのバケット

【課題】ホイールローダのリフトアームの先端に取り付けたバケットによって土砂などの積込作業を行なう場合に、リフトアームとバケットの連結部分と、バケットを前後傾させる機構との相対高さ位置を、運転席の運転者が容易に視認できるようにする。
【解決手段】バケットの背面のヒンジピン中心の近傍に取り付けたガイド部材を備え、このガイド部材が、バケットの背面からヒンジピン中心の後方に向けて延び、かつ先端部がバケットの底面をバケット後方側に延長した面に対しヒンジピン中心の上方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイールローダのバケット、さらに詳しくは、土砂などをトラックの荷台などに積込む作業に有効なバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
周知のホイールローダ(例えば、特許文献1参照)は、車体の前部に上下方向に揺動作動を自在に取り付けたリフトアームを備え、バケットがその先端に前後方向に傾動作動を自在に取り付けられている。トラックの荷台などへの土砂などの積込作業は、車体、リフトアーム、そしてバケットを適宜に作動操作することにより遂行される。
【0003】
バケットを装備したホイールローダの側面図である図4を参照して、具体的に説明する。全体を番号2で示すホイールローダは、前車体6に上下方向に揺動自在に取り付けた左右一対のリフトアーム10、10を備え、リフトアーム10、10はその間に一体に差し渡したクロスバー12によって連結されている。バケット36は、リフトアーム10、10の先端にそれぞれヒンジピン24によって前後方向に傾動自在に取り付けられている。リフトアーム10、10と前車体6の間にそれぞれリフトシリンダ14が備えられている。
【0004】
バケット36を傾動作動させるZバーリンク機構26を備えている。Zバーリンク機構26は、クロスバー12の長手方向の中央に立設したブラケット13に揺動自在に取り付けたチルトレバー28と、チルトレバー28の一端(下端)およびバケット36それぞれに回動自在に取り付けたチルトロッド32と、チルトレバー28の他端(上端)と前車体6の間に取り付けたチルトシリンダ34を備えている。
【0005】
リフトシリンダ14を伸縮させることによりリフトアーム10が揺動作動され、チルトシリンダ34を伸縮させることによりバケット36がZバーリンク機構26を介してヒンジピン24を中心に傾動作動される。リフトアーム10の上下動、バケット36の前後傾動およびホイールローダ2の前後進走行を適宜に組み合わせ、バケット36の位置および傾きを操作することにより、土砂などの積込作業を行なう。
【0006】
トラックの荷台44への土砂の積込作業は、図4に示すように、土砂Cを一杯にすくい込み後傾させたバケット36を、リフトアーム10を上げ、車体を前進走行させ、荷台44の上方に位置付け、この状態で前傾させ、土砂Cを荷台44の中に放出し積込む。
【特許文献1】特開2005−133492号公報(第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したとおりのホイールローダには、次のとおりの解決すべき課題がある。
【0008】
すなわち、図4に示すように、土砂Cを収容したバケット36を、リフトアーム10を上げ、車体を前進させ、トラックの荷台44の上方に位置付け、前傾させ、土砂Cを荷台44の中に放出する場合、運転者は、その視点Pから、リフトアーム10の先端とバケット36のヒンジピン24による連結部分Eと、荷台44の縁部の部分とが、衝突・干渉しないように、視認しながらバケット36の位置を操作する。
【0009】
この場合、図4に示すように、特にリフトアーム10を略水平にして比較的低い荷台44に積込作業を行なう場合には、Zバーリンク機構26の特性として、図4から容易に理解されるように、チルトレバー28とチルトロッド32の連結部分Dが、リフトアーム10とバケット36の連結部分Eよりも下方に位置することがある。また、連結部分Dは、左右のリフトアーム10、10の間に位置しているので、運転者の視点Pからはチルトシリンダ34が邪魔をして視認するのが難しい。
【0010】
ホイールローダ2による荷台44などへの土砂などの積込作業は、作業を迅速に行うために、また放出時に埃などが発生しないようにするために、さらに荷台44に土砂Cなどを放出したときに大きな衝撃を与えないようにするために、バケット36の上げ高さはできるだけ低くして行なわれる。
【0011】
したがって、運転者は専ら、バケット36とリフトアーム10の連結部分Eが荷台44の縁部をわずかに越えるように注意して運転操作をしているので、車体を前進させ土砂Cを荷台44の奥の方(図4の右方)に積み込もうとする場合には、視認の難しいチルトレバー28とチルトロッド32の連結部分Dを不用意に荷台44の縁部に衝突させてしまうことがある。そこで運転者は、衝突を回避するように、予めバケット36を、衝突させない高さを想定して上るが、運転操作が煩わしいものになり、運転者の疲労も増加する。衝突しないように十分に余裕をみてバケット36を上方にすると、上方にするために時間を要し迅速な積込作業ができなくなり、また土砂放出時に埃、衝撃などを発生させやすい。
【0012】
本発明は上記事実に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、ホイールローダのリフトアームの先端に取り付けたバケットによって土砂などの積込作業を行なう場合に、リフトアームとバケットの連結部分と、バケットを前後傾させる機構との相対高さ位置を、運転席の運転者が容易に視認することができるようにした、ホイールローダのバケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば上記技術的課題を解決するために、ホイールローダのリフトアームの先端にヒンジピンにより前後方向に揺動作動を自在に取り付けられるバケットであって、上記バケットが、バケットの背面のヒンジピン中心の近傍に取り付けたガイド部材を備え、このガイド部材が、バケットの背面からヒンジピン中心の後方に向けて延び、かつ先端部がバケットの底面をバケット後方側に延長した面に対しヒンジピン中心の上方に位置している、ことを特徴とするホイールローダのバケットが提供される。
【0014】
好適には、ガイド部材は、ヒンジピンが取り付けられる、バケットの背面に備えたヒンジプレートに取り付けられている。また、ガイド部材は、ヒンジピン中心の軸線に対して直交方向に延びる平板により形成されている。さらにガイド部材は、着脱を自在に取り付けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従って構成されたホイールローダのバケットは、バケットの背面のヒンジピン中心の近傍に取り付けた、ヒンジピン中心の後方に向けて延び、かつ先端部がバケットの底面の延長面に対しヒンジピン中心の上方に位置したガイド部材を備えている。そして、バケットをヒンジピン中心で後傾させ底面を上方に向けてバケットに土砂などを収容した状態にすると、ガイド部材の先端部はヒンジピン中心の下方に突出する。したがって、この突出する量をバケットの前後傾機構の高さと関連させて規定することにより、リフトアームとバケットの連結部分と、バケットを前後傾させる機構との相対高さ位置を、運転席の運転者はガイド部材を目視して容易に認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に従って構成されたホイールローダのバケットについて、好適実施形態を図示している添付図面を参照して、さらに詳細に説明する。なお、図1〜図3において、図4と実質上同一の部分は同一の符号で示されている。
【0017】
先ず、バケットを装備したホイールローダについて、その側面図である図3を参照して説明する。ホイールローダ2は、左右幅方向(図3の紙面に垂直の方向)にそれぞれ一対の車輪4、4を有した前車体6および後車体8が、屈折自在に連結された屈折操向式の車体を備えている。
【0018】
前車体6には、上下方向に揺動自在に取り付けた左右一対の、厚鋼板を成形して形成したリフトアーム10、10を備え、リフトアーム10、10はその間に一体に差し渡した、鋼管により形成したクロスバー12により連結されている。リフトアーム10、10それぞれと前車体6の間に、一対のリフトシリンダ14、14を備えている。
【0019】
後車体8には、運転席16を有した運転室18、およびその後方にエンジン、油圧源などの動力源を収容したエンジン室20を備えている。
【0020】
リフトアーム10、10の先端にバケット22がヒンジピン24、24によって前後方向(図3の右左方向)に傾動自在に取り付けられている。
【0021】
バケット22を傾動作動させるZバーリンク機構26を備えている。Zバーリンク機構26は、クロスバー12の長手方向(車体の左右幅方向)の中央に立設したブラケット13に揺動自在に取り付けたチルトレバー28、チルトレバー28の一端(下端)とバケット22の背面のチルトピン30とを連結するチルトロッド32、およびチルトレバー28の他端(上端)と前車体6の間に取り付けたチルトシリンダ34を備えている。
【0022】
バケット22について、図1および図2を参照して説明する。バケット22は、バケット本体であるバケット36の背面の左右幅方向の一側(右側)のヒンジピン中心Xの近傍に取り付けたガイド部材38備えている。ガイド部材38は、バケット36の背面からヒンジピン中心Xの後方(図1(a)の左方)に向けて延び、かつ先端部がバケットの底面をバケット36後方側に延長した面Sに対しヒンジピン中心Xの上方に位置している。
【0023】
バケット36そのものは、本発明の新規特徴を構成するものではなく周知のものである。したがって詳細な説明は省略するが、バケット36は、断面U字形状に曲げられた左右幅方向に延びる底板36aと、底板36aの両側部の開口を閉じる一対の側板36b、36bと、バケット36の背面すなわち底板36aの外面に立設した左右一対のヒンジピン取付部36c、36c、ならびに左右幅方向の中央に立設したチルトピン取付部36dを備えている。
【0024】
ヒンジピン取付部36cは、バケット36の上下方向に延び、リフトアーム10(図3)の先端部が挿入される所定の間隔で配設された一対のヒンジプレート36e、36eを備え、それぞれの下端部に備えたボスにヒンジピン取付孔36fが軸線Xを中心に形成されている。
【0025】
チルトピン取付部36dは、バケット36の上下方向に延び、チルトロッド32(図3)の先端部が挿入される所定の間隔で配設された一対のチルトプレート36g、36gを備え、それぞれの上下方向の略中央に備えたボスにチルトピン取付孔36hが形成されている。
【0026】
ガイド部材38は、ヒンジピン中心Xの軸線に対して直交方向に延びた平板である鋼板によって形成され、ヒンジピン取付部36cの、バケット36の幅方向外側のヒンジプレート36eの外側面に、それぞれに設けたボルト孔にボルト40を通しナット42によって着脱自在に取り付けられている。ガイド部材38の先端部の輪郭は、半径Rの半円状に形成されている。
【0027】
図1〜図3を参照して説明を続ける。ガイド部材38の突出する大きさは、図1に示すように土砂Cを収容した状態のバケット22を、Zバーリンケージ26の操作によって、ヒンジピン24を中心に後方(反時計方向)に回動させ後傾し、リフトアーム10を上げた状態において、ガイド部材38の先端部の地面Gからの高さH1が、荷台44の高さを越え、かつZバーリンケージ26のチルトレバー28とチルトロッド32の連結部分Dの地面Gからの高さH2と同じか、わずかに下方になるように設定する。
【0028】
上述のように構成されたバケット22を装備したホイールローダ2により、荷台44に土砂Cを積込む場合は、運転席16の運転者は、図3に示すように、その視点Pからバケット22のガイド部材38の先端部の位置を見て、ガイド部材38の先端部が荷台44の縁部を越えるようにバケット22を上げホイールローダ2を荷台44に近づける。このように運転操作することにより、Zバーリンケージ26のチルトレバー28とチルトロッド32の連結部分Dを荷台44に衝突させることなしに積込作業を行うことができる。
【0029】
上述したとおりのホイールローダのバケットの作用・効果について説明する。
【0030】
本発明に従って構成されたホイールローダのバケット22は、バケット22の背面のヒンジピン24の近傍に取り付けた、ヒンジピン中心Xの後方に向けて延び、かつ先端部がバケット22の底面の延長面Sに対しヒンジピン中心Xの上方に位置したガイド部材38を備えている。そして、バケット22をヒンジピン中心Xで後傾させ底面を上方に向けバケット22に土砂Cなどを収容した状態(図3の状態)にすると、ガイド部材38の先端部はヒンジピン中心Xの下方に突出する。したがって、この突出する量をバケット22の前後傾機構26の高さと関連させて規定することにより、バケット22を前後傾させる機構26との相対高さ位置を、運転席の運転者はガイド部材38を目視して容易に認識することができる。
【0031】
ガイド部材38の形状、そして先端部までの突出量は、土砂などを積込む高さと、バケット22の前後傾機構26の高さとを関連させて、適宜に設定すればよい。
【0032】
ガイド部材38は、バケット36の背面からヒンジピン中心Xの後方に向けて延び、かつ先端部がバケットの底面をバケット36後方側に延長した面Sに対しヒンジピン中心Xの上方に位置しているので、図1(a)のようにバケット36の底面を水平にして土砂などをバケット22の中にすくい込むときに邪魔にならない。
【0033】
ガイド部材38は、ヒンジピン24が取り付けられる、バケットの背面に備えたヒンジプレート36eに取り付けられている。したがって、既存のバケット36に容易に設置することができるとともに、ヒンジピン中心Xとの関係を容易に位置決めできる。またこの部位は、運転席16の運転者の視点Pから容易に視認することができる。
【0034】
ガイド部材38は、ヒンジピン中心Xの軸線に対して直交方向に延びる平板によって形成されている。したがって、平板のガイド部材38はホイールローダ2の前後方向に延びているので、前後進走行しての作業において、土砂などに触れても抵抗にならない。
【0035】
ガイド部材38は、着脱を自在に取り付けられている。したがって、汎用的に用いられる作業車両であるホイールローダ2においては、積込作業に専ら用いられるときにガイド部材38を取り付け、必要のないときには取り外してもよい。
【0036】
以上、本発明を実施例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記の実施例に限定されるものではなく、例えば下記のように、本発明の範囲内においてさまざまな変形あるいは修正ができるものである。
【0037】
本発明の実施の形態においてガイド部材38は、バケットの左右幅方向の一側(右側)にのみ取り付けられているが、他側にも、すなわち左右両側に取り付けてもよい。
【0038】
本発明の実施の形態においてガイド部材38は、バケットの前後傾機構26の高さとの関連において設置されているが、例えばリフトアームの形状、リフトシリンダの設置位置などによって、それらとの関連において必要な場合には、それらと関連させて設置してもよい。
【0039】
本発明の実施の形態においてガイド部材38は、鋼板によって形成されているが、硬質ゴム板、強化プラスチック板などによって形成してもよい。さらに、ガイド部材38は平板によって形成されているが、必ずしも平板でなく棒状に形成してもよい。
【0040】
本発明の実施の形態においてガイド部材38は、バケットの背面のヒンジプレート36eに着脱自在に取り付けられているが、例えばヒンジプレートに溶接によって一体になど、バケットの背面に一体に取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に従って構成されたホイールローダのバケットの(a)側面図、(b)図(a)をA−A矢印方向に見た背面図。
【図2】図1(a)のB−B矢印方向に見た拡大断面図。
【図3】図1に示す本発明に係るバケットを装備したホイールローダの側面図。
【図4】従来のバケットを装備したホイールローダの側面図。
【符号の説明】
【0042】
2:ホイールローダ
10:リフトアーム
22:バケット
24:ヒンジピン
36:バケット
36e:ヒンジプレート
38:ガイド部材
X:ヒンジピン中心
S:底面を延長した面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールローダのリフトアームの先端にヒンジピンにより前後方向に揺動作動を自在に取り付けられるバケットであって、
上記バケットが、
バケットの背面のヒンジピン中心の近傍に取り付けたガイド部材を備え、
このガイド部材が、
バケットの背面からヒンジピン中心の後方に向けて延び、かつ先端部がバケットの底面をバケット後方側に延長した面に対しヒンジピン中心の上方に位置している、
ことを特徴とするホイールローダのバケット。
【請求項2】
ガイド部材が、
ヒンジピンが取り付けられる、バケットの背面に備えたヒンジプレートに取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1記載のホイールローダのバケット。
【請求項3】
ガイド部材が、
ヒンジピン中心の軸線に対し直交方向に延びる平板により形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のホイールローダのバケット。
【請求項4】
ガイド部材が、
着脱を自在に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載のホイールローダのバケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−146547(P2007−146547A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344150(P2005−344150)
【出願日】平成17年11月29日(2005.11.29)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】