説明

ホスホリパーゼを使用するケーキの製造方法

ケーキ品質はレシピ中の卵の量を減らすと低下しうる。この品質の低下はケーキバッターにホスホリパーゼを添加することによって相殺されうる。ケーキ体積及び貯蔵後のケーキ特性、例えばまとまり性、ばね性及び弾性はホスホリパーゼとともに非卵蛋白質を添加することによって元のケーキのレベルまで改良されうる。従って、ケーキは非ホスホリパーゼ処理卵レシチン及びホスホリパーゼを含むケーキバッター成分を混合することによってケーキバッターを製造し、ケーキバッターを焼成してケーキを作る方法によって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーキの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基本的なケーキ成分は通常、小麦粉、砂糖、脂肪(動物又は植物起源からのもの)、卵及び膨張剤である。追加の成分は例えば牛乳又は乳汁成分、香味料又は塩であってもよい(Pyler,E.J.,1988,Baking Science and Technology,Sosland Publishing,pp.979−981)。卵は一般的に様々なケーキの製造に使用される。良好なケーキ品質を得るためには特定量の卵が一般に要求されるが、卵は高価な成分である。従って、卵の量を減らしながら、満足のいくケーキ品質を達成することが望ましい。
【0003】
JP 63−258528 Aは、ホスホリパーゼで処理された卵液を使用することによってスポンジケーキを製造するための方法に向けられている。
【0004】
JP 10−191871 Aは、焼成前にホスホリパーゼで混合物を処理することによって焼き菓子類を製造するための方法に向けられている。
【0005】
EP 0426211 A1は、乾燥リゾホスホリポ蛋白質又は乾燥リゾホスホリポ蛋白質含有材料を含有する食品の製造方法に向けられている。この発明では、卵黄は54℃で4.5時間処理され、変性された卵黄は噴霧乾燥され、乾燥リゾホスホリポ蛋白質は乾燥ケーキミックスに添加され、それは水での再構成及び焼成の後、開放しかつ湿った組織を生じる。
【0006】
US 2003/0175383 A1は小麦粉生地の製造方法に向けられ、前記方法は、生地条件下で糖脂質及びリン脂質を加水分解することができる酵素を生地成分に添加し(但し、前記酵素はトリグリセリド及び/又は1−モノグリセリド、又は前記酵素を含む成分を加水分解することができないか又は実質的にできない)、生地成分を混合して生地を得て、パン及び他の焼成製品のボリュームのある柔らかいフワフワした構造、及び生地の強度及び機械加工性を改良することを含む。
【0007】
US 2003/0124647 A1はホエー蛋白質を水溶液中でホスホリパーゼで処理することによってホエー蛋白質を変性する方向に向けられている。変性されたホエー蛋白質は、ホスホリパーゼで処理されていないホエー蛋白質調製物と比較して、ホイップ時の改良された発泡オーバーラン(foaming overrun)及び泡安定性を持つことを示す。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、ケーキの体積及び特性がケーキレシピ中の卵の量を減少するときに低下する傾向があることを確認した。
【0009】
彼らは、この低下が、増大したケーキ体積及び改良したケーキ特性[(新鮮なケーキ及び貯蔵後のケーキの)特性、例えば増大したまとまり性、増大したばね性及び増大した弾性を含む]によって見ると、ケーキバッターにホスホリパーゼを添加することによって相殺されうることを見出した。
【0010】
彼らは、ケーキ品質(これらのパラメータによって測定されるもの)がホスホリパーゼとともに非卵蛋白質を添加することによって元のケーキのレベルまでさらに改良されうることを見出した。
【0011】
従って、第一の側面では、本発明はケーキの製造方法を提供し、前記方法は、非ホスホリパーゼ処理された卵レシチン及びホスホリパーゼを含むケーキバッター成分を混合することによってケーキバッターを製造し、ケーキバッターを焼成してケーキを作成することを含む。
【0012】
従って、本発明は、以下のことを含む、ケーキの製造方法を提供する:
a)卵黄レシチンを含むケーキバッターを製造する;
b)ホスホリパーゼをケーキバッターに添加する;
c)ケーキバッターを焼成してケーキを作成する。
【0013】
方法は、非卵蛋白質をケーキバッターに添加することをさらに含んでもよい。
【0014】
本発明の別の実施形態では、ホスホリパーゼは乾燥成分のミックスに添加され、それは液体卵、油、及び水のような他の成分とさらに混合されてバッターを製造する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ホスホリパーゼ
ホスホリパーゼは、リン脂質からの脂肪アシル基の放出を触媒する酵素である。それはホスホリパーゼA2(PLA2,EC 3.1.1.4)又はホスホリパーゼA1(EC 3.1.1.32)であってもよい。それはトリアシルグリセロールリパーゼ(EC 3.1.1.3)及び/又はガラクトリパーゼ(EC 3.1.1.26)のような他の活性を持っていても持っていなくてもよい。
【0016】
ホスホリパーゼは哺乳類又は微生物源から誘導された天然酵素であってもよい。
【0017】
哺乳類のホスホリパーゼの例は膵臓PLA2、例えばウシ又はブタのPLA2、例えば商業的製品Lecitase(登録商標)10L(ブタPLA2,Novozymes A/Sの製品)である。
【0018】
微生物のホスホリパーゼはフザリウム(Fusarium)、例えばF.オキシスポルム(F.oxysporum)ホスホリパーゼA1(WO 1998/026057)、F.ベネナタム(F.venenatum)ホスホリパーゼA1(FvPLA2と称されるホスホリパーゼA2としてWO 2004/097012に記載)から、チューバ(Tuber)、例えばT.ボルチイ(T.borchii)ホスホリパーゼA2(TbPLA2と称される、WO 2004/097012)から誘導されてもよい。
【0019】
ホスホリパーゼはまた、例えばWO 2000/032758又はWO 2003/060112に記載されたように、ホスホリパーゼ活性を有する脂肪分解酵素の変異体であってもよい。
【0020】
ホスホリパーゼはバッターの1kgあたり500〜20000ユニット(LEU)、例えば1kgあたり1000〜10000ユニット(LEU)の量で添加されてもよい。
【0021】
ホスホリパーゼはまた、バッターに存在する他の脂質、特にホエー脂質からの脂肪アシル基の放出を触媒してもよい。従って、ホスホリパーゼはトリアシルグリセロールリパーゼ活性(EC 3.1.1.3)及び/又はガラクトリパーゼ活性(EC 3.1.1.26)を持ってもよい。
【0022】
蛋白質
通常のケーキレシピと比較すると、卵蛋白質の量は減らされてもよく、非卵蛋白質によって置換されてもよい。例えば、通常のケーキレシピと比較すると、卵白蛋白質の量は減らされてもよく、非卵蛋白質によって置換されてもよい。
【0023】
従って、本発明に使用されるバッターは0.5〜3.0重量%の卵蛋白質を含有してもよく、0.1〜6重量%(特に0.5〜2重量%)の非卵蛋白質を含有してもよい。例えば、本発明に使用されるバッターは0.5〜2.5重量%の卵白蛋白質を含有してもよく、0.1〜6重量%(特に0.5〜2重量%)の非卵蛋白質を含有してもよい。
【0024】
非卵蛋白質は特に水溶性の球状蛋白質であってもよい。非卵蛋白質は特に部分的に又は完全に精製又は単離された蛋白質、例えば水溶性の球状蛋白質であってもよい。非卵蛋白質は変性されてもよく、それは、卵黄レシチンに対するホスホリパーゼの作用によって形成されたリゾレシチンの相互作用下で棒形状又は可撓性の分子に部分的に展開するものであってもよい。
【0025】
リゾホスホレシチンの存在下で良好な水結合、乳化及びゲル化特性を有する蛋白質源は特に好適であると考えられる。
【0026】
非卵蛋白質の例は小麦蛋白質である。非卵蛋白質のさらなる例はカゼイン、ホエー蛋白質、小麦グルテン、マメ科蛋白質(例えば大豆、エンドウ豆又はルピナスからのもの)である。
【0027】
非卵蛋白質は制限された加水分解、例えば酵素加水分解から0〜6%の加水分解を受けてもよい。酵素加水分解はアミノ酸特異的プロテアーゼ、例えばWO 91/13554に記載されたプロテアーゼのようなArg,Lys,Glu,Asp及び/又はProに対して特異的であるもので実施されてもよい。
【0028】
変性は、例えばWO 2003/13266に記載されているように剪断処理及び酸性又はアルカリ性pH、蛋白質アシド分解を部分的に又は完全に変性するための温度の上昇の工程、及び遠心分離、デカント法及び超遠心分離法を含む分離工程を含んでもよい。
【0029】
蛋白質(又は加水分解された)蛋白質は例えばトランスグルタミナーゼのような架橋酵素又は蛋白質−グルタミナーゼのような別の蛋白質変性酵素で酵素的に変性されてもよい。さらに、蛋白質は例えば変性及びアシド分解を通して物理的に又は化学的に変性されてもよい。
【0030】
卵黄レシチン
ケーキバッターは例えば全卵、卵黄、又は卵粉の形で卵黄レシチンを含む。
【0031】
本発明は、卵材料の量を例えば通常のケーキの約半分まで減らすことを可能にする。従って、バッターは0.3〜1.5重量%の卵レシチン又は5〜25重量%(特に7〜20又は8〜15重量%)の全卵を含んでもよい。
【0032】
有利には、バッターは0.1〜1.5重量%、例えば0.1〜1.2重量%、又は0.1〜0.9重量%、又は0.2〜1.5重量%、又は0.2〜1.2重量%、又は0.2〜0.9重量%、又は0.3〜1.5重量%、又は0.3〜1.2重量%、又は0.3〜0.9重量%の卵レシチン、又は5〜25重量%(特に7〜20又は8〜15重量%)の全卵を含んでもよい。
【0033】
他の成分
ケーキバッターは他の従来の成分を一般的には以下の量(バッターに対する重量%)で含んでもよい:
− 小麦粉(未処理、熱処理、塩素化):15〜30%
− 澱粉(変性、天然):0〜10%
− 砂糖:15〜25%
− 乳化剤(脂肪酸のモノ及びジグリセリド、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドの乳酸エステル、ナトリウムステアロイル−2−ラクチレート):0.1〜1%
− ベーキングパウダー(ナトリウム及び酸又は酸性塩を含有):0.5〜1%
− 親水コロイド(ローカストビーンガム、グアーガム、タラガム、キサンタンガム、カラギーナン、アカシアガム、セルロース、変性セルロース、ペクチン):0〜1%
− 植物性脂肪(例えば油、マーガリン、ショートニング、脂肪ペースト、粉末脂肪):5〜30%
− 水:100%まで添加
【0034】
バッターは有利には脂肪の一部又は全てを置換してもよい。
【0035】
ケーキの一例は、卵−砂糖−小麦粉−植物性油−澱粉−ベーキングパウダー:重炭酸ナトリウム(E500ii)、酸性ピロリン酸ナトリウム(E450i)−乳化剤:脂肪酸のモノ及びジグリセリド(E471)、脂肪酸のモノ及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b)、ナトリウムステアロイル−2−ラクチレート(E481)−親水コロイド:キサンタンガムで製造されたケーキである。
【0036】
ケーキの別の例は、卵−砂糖−小麦粉−澱粉−マーガリン−ベーキングパウダー:重炭酸ナトリウム(E500ii)、酸性ピロリン酸ナトリウム(E450i)−乳化剤:脂肪酸のモノ及びジグリセリド(E471)−脂肪酸のプロピレングリコールエステル(E477)−脂肪酸のモノ及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b)、ナトリウムステアロイル−2−ラクチレート(E481)−親水コロイド:カラギーナンで製造されたケーキである。
【0037】
ケーキのさらなる例は、卵−砂糖−小麦粉−澱粉−マーガリン−ベーキングパウダー:重炭酸ナトリウム(E500ii)、酸性ピロリン酸ナトリウム(E450i)−乳化剤:脂肪酸のモノ及びジグリセリド(E471)−脂肪酸のプロピレングリコールエステル(E477)−脂肪酸のモノ及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b)、−親水コロイド:カラギーナンで製造されたケーキである。
【0038】
分析方法
ホスホリパーゼ活性(LEU)
レシチンは一定のpH及び温度下で加水分解され、ホスホリパーゼ活性は遊離脂肪酸の中和時の滴定剤(0.1N NaOH)の消費の割合として測定される。基質は大豆レシチン(L−α−ホスホチジル−コリン)であり、条件はpH8.00,40℃、反応時間2分である。方法はさらに、DK 99/00664(Novo Nordisk A/S、デンマーク)に記載されている。ブタの膵臓からのホスホリパーゼは510LEU/mgの活性を有し、標準としてとられる。
【0039】
まとまり性及びばね性の測定のための組織プロファイル分析(TPA)
製品の初期高さの50%の最大変形を有する円柱形プローブ(φ=100mm)で実施された円柱形小片試料(φ=45mm)の二つの連続的変形は2mm/秒の変形速度及び3秒の連続変形間の待ち時間で実施される。力は時間の関数として記録される。
【0040】
まとまり性(cohesiveness)は、第二変形曲線(下方+上方)下の表面積と第一変形曲線(下方+上方)下の表面積の間の比率(パーセントで表示)として計算される。
【0041】
ばね性(springiness)は、第一変形及び3秒の待ち時間後の試料の高さと製品の初期高さの間の比率として計算される。
【0042】
弾性の変形のための針入度試験
ターゲット変形を20秒間一定に保ちながら2mm/秒の変形速度で試料の初期高さの25%の全変形までの円柱形プローブ(φ25mm)でのケーキ小片の針入度。力は時間の関数として記録される。弾性は、一定変形での20秒後に測定された力とターゲット変形を得るために適用される力の間の比率(パーセントで表示)である。
【実施例】
【0043】
実施例1:ホスホリパーゼの効果
ケーキは典型的なバッターケーキのレシピを使用して作られた。15〜25%卵、20〜30%小麦粉、0〜10%澱粉、15〜20%植物性脂肪、20〜25%砂糖、0.1〜1%乳化剤(脂肪酸のモノ及びジグリセリド、脂肪酸のプロピレングリコールエステル、脂肪酸のモノ及びジグリセリドの乳酸エステル、ナトリウムステアロイル−2−ラクチレート)、0.8%ベーキングパウダー(ナトリウム及びSAPP(酸性ピロリン酸ナトリウム))、0〜1%親水コロイド、0〜1%蛋白質及び100%まで添加される水が、Hobartミキサーでスピード2(低)で2分間及びスピード5(中)で2分間混合された。
【0044】
ホスホリパーゼはドライミックスに直接添加され、最後に卵及び油及び水が添加されてバッターを形成した。全部で1.875kgのケーキバッターが試験ごとに製造された。300gのケーキバッターがアルミニウムパンに秤量された。
【0045】
ケーキは180℃の温度で45分間焼成された。1.66kgの全重量を持つ6つのケーキが各バッターから作られた。その後、ケーキは冷却され、プラスチック袋に充填された。
【0046】
組織特性は上記方法を使用して焼成した後に1日目及び14日目に測定された。ケーキのまとまり性、ばね性及び弾性並びに体積が評価された。
【0047】
第一例では、1500LEU/kg又は3750LEU/kgを、50%の卵(バッターの7.5〜12.5重量%に相当)が小麦粉及び水によって置換されるバッターに添加した。コントロールは100%卵(バッターの15〜25重量%に相当)で作られた;体積及び組織特性は100%としてとられた。
【0048】
以下の結果は、50%卵を減少させたケーキの体積及び組織に対するホスホリパーゼの効果、及び微生物のホスホリパーゼと膵臓ホスホリパーゼの間の比較を示す(表1)。

【0049】
結果は、小麦粉によって置換された50%卵に対して、ケーキの体積は90%にすぎず、14日目のまとまり性は70%にすぎず、14日目の弾性はコントロールに比較して90%であったことを示す。
【0050】
TbPLA2,Lecitase 10L、及びFvPLA2の添加によって、50%卵ケーキの体積は4〜7%改良された。7%の体積の増加は3750LEU/kgバッターLecitase 10Lに対して達成された。
【0051】
14日目のまとまり性は12〜28%改良された。まとまり性の最も高い増加は3750LEU/kgバッターLecitase 10Lによって達成された
【0052】
得られたケーキの弾性は14日目で2〜10%増加された。最高の増加はLecitase 10L(1500LEU/kgバッター及び3750LEU/kgバッター),FvPLA2(3750LEU/kgバッター)及びTbPLA2(1500LEU/kgバッター)に対して測定された。
【0053】
ケーキ組織及びケーキ体積は全ての3つのホスホリパーゼによって改良された。Lecitase 10Lは、100%卵のコントロールケーキに匹敵する14日目の弾性及びまとまり性、3%だけの差の体積を与えた。
【0054】
実施例2:ホスホリパーゼ及び非卵蛋白質の組み合わせの効果
ケーキは実施例1のように製造されたが、ホスホリパーゼ(Lecitase 10L)及び様々な非卵蛋白質を用いた。
【0055】
以下の結果は、50%卵を減少させて製造されたケーキの体積及び組織に対するホスホリパーゼ及び非卵蛋白質の組み合わせの効果を示す。Provabisは大豆蛋白質であり、他の試験された蛋白質は全てホエー蛋白質である。
【0056】
バッターの添加される蛋白質(乾燥材料)の量(重量%)は大豆蛋白質に対して1.87〜2.35%(代替卵の全ての乾燥材料に相当)であり、他の蛋白質に対して0.935〜1.175%(代替卵の乾燥材料の50%に相当)であった。
【0057】
非卵蛋白質は以下の供給者からの商業的製品であった:
− Foamalac,Probake M,Carbelac 80 UHG:Carberry Group,Cork,Ireland
− Hiprotal 45:Borculo Domo Ingredients,The Netherlands
− Lacprodan,Nutrilac BE−7602,Nutrilac BK−8310:Arla Foods Ingredients,Denmark
− Provabis:Cargill NV,Belgium
− Hygel 8293,Hyfoama DSN:Kerry Bio−Science,The Netherlands

【0058】
結果(表2)は、50%の卵を代替し、非卵蛋白質をホスホリパーゼと一緒に添加することによって、コントロールと同じケーキ体積及び/又は同じレベルの14日後のまとまり性及び/又は弾性に到達することができた。
【0059】
50%卵を小麦粉によって代替することはコントロールと比較して15%の体積損失をもたらした。
【0060】
Lecitase 10Lの添加によって体積は再び9%増加された。非卵蛋白質の幾つかで50%卵ケーキの体積はコントロールケーキの体積以上に改良され、一方、他の蛋白質はまた、体積の増加を示したが、コントロールのレベルまでは示さなかった。
【0061】
まとまり性及び弾性は一般にコントロールに匹敵するか又はコントロールに対して測定された値以上ですらあった。
【0062】
ばね性は非卵蛋白質によって改良されたが、14日目のコントロールに対して測定された値以下のままであった。
【0063】
従って、ホスホリパーゼとともに非卵蛋白質を添加することは、50%卵ケーキの体積、弾性及びまとまり性を改良し、それをコントロールに匹敵させることができる。
【0064】
実施例3:ホスホリパーゼと非卵蛋白質の組み合わせの効果
ケーキは実施例1のように製造されたが、ホスホリパーゼと非卵蛋白質を単独で又は組み合わせて添加した(表3)。

【0065】
非卵蛋白質の効果は、非卵蛋白質の単独及びホスホリパーゼとの組み合わせの添加が卵を小麦粉に置換した50%卵ケーキ及び100%卵ケーキ(=コントロール)と比較されるデータに示されている。
【0066】
非卵蛋白質の単独は体積についてわずかな改良しか与えないが、Lecitase 10Lと組み合わされるとき体積はコントロールより優れることが明らかにわかる。
【0067】
ここで、まとまり性及び弾性もまた、14日目のコントロールについて測定された値に匹敵するか又はそれより上の値であった。
【0068】
ばね性は14日目のコントロールより下であった。
【0069】
実施例4:ホスホリパーゼと非卵蛋白質の組み合わせの効果:小麦蛋白質
ケーキは実施例1のように製造されたが、ホスホリパーゼ(Lecitase 10L)及び様々な非卵蛋白質(即ち、小麦蛋白質)を用いた(表4a〜4d)。小麦蛋白質の量が小麦粉に元々存在する量と比較して少なくとも30%増大されるように実質量の小麦蛋白質を添加した。
【0070】
以下の結果は、50%卵を減少させて製造したケーキの体積及び組織についてのホスホリパーゼと非卵蛋白質の組み合わせの効果を示す。バッターに添加される蛋白質(乾燥材料)の量(重量%)は0.9067%及び1.813%であった(それらはそれぞれ代替卵の乾燥材料の50%及び100%に対応する)。
【0071】
非卵蛋白質は以下の供給者からの市販製品であった:
− Prolite100 and Prolite200,ADM Speciality Food Ingredients,Keokuk,USA
− Meripro420,Tate&Lyle Europe N.V.,Belgium
− Gemtec2170,Manildra Group,Auburn,Australia
− HWG2009,Loryma,Zwingenberg,Germany
− Arise5000,Midwest Grain Proteins,Atchison,Kansas,USA
− Amygluten110,Tate&Lyle Europe N.V.,Belgium
− Super Gluten75 and Super Gluten80,ADM
− Glutastar EC75 and Glutastar EC80,Fiske Food Ingredients




【0072】
非卵蛋白質の効果は表4a〜4dに与えられたデータに示され、そこでは非卵蛋白質の単独又はホスホリパーゼとの組み合わせの添加が、卵を小麦粉に置換した50%卵配合物及び100%卵ケーキ(=コントロール)と比較される。
【0073】
表4a。50%未満の卵で製造されたケーキにおいて小麦蛋白質とホスホリパーゼ(Lecitase 10L)を組み合わせると、100%卵で製造されたケーキの体積が完全に回復されることができる。50%卵配合物にホスホリパーゼと組み合わせてProlite100又はProlite200を添加するとき、焼成後14日目の小片のまとまり性及び弾性は回復されるか又は増大されることができ、ばね性が改良される。
【0074】
表4b。Meripro420は、単独で添加するとき、50%未満の卵で製造されたケーキの体積にわずかにプラスの効果を持つにすぎない。100%卵で製造されたケーキの体積はホスホリパーゼとMeripro420の組み合わせを50%卵配合物に添加することによって完全に回復されることができる。まとまり性は、ホスホリパーゼとMeripro420の両方を添加するときに高度に改良される。
【0075】
表4c。試験された小麦蛋白質は、単独で添加するとき、体積についてわずかにプラスの効果を持つにすぎない。HWG2009は体積についてプラスの効果を持つが、50%卵及びホスホリパーゼで製造されたケーキの組織特性について効果はない。Gemtec2170は50%卵及びホスホリパーゼで製造されたケーキの体積について効果を持たないが、焼成後14日目のまとまり性及び焼成後1及び14日目のばね性についてプラスの効果を持つ。Arise5000はホスホリパーゼと組み合わせると50%卵ケーキの体積及びまとまり性についてプラスの効果を持つ。
【0076】
表4d。小麦蛋白質:Meripro420,Super Gluten75,Super Gluten80,Glutastar EC75又はGlutastar EC80をLecitase 10Lを含有する50%卵ケーキレシピに添加するとき、焼成後7日目に測定されたまとまり性及び弾性は、Lecitase 10Lのみを含有する50%卵ケーキについての焼成後7日目に測定されたこれらのパラメータを比較すると有意に増大される(7〜9%)。
【0077】
実施例5:ホスホリパーゼと非卵蛋白質の組み合わせの効果:感覚分析
ケーキは実施例1のように製造されたが、親水コロイドを用いず、ホスホリパーゼ(Lecitase 10L)及び二つの異なる非卵蛋白質:Prolite100(ADM Speciality Food Ingredients,Keokuk,USA)及びMeripro420(Tate&Lyle Europe N.V.,Aalst,Belgium)を用いた。
【0078】
五つの異なるケーキ試料が29人の被験者によって感覚分析に供された。
1.100%卵を有する参照ケーキ。
2.50%卵と残りの卵の小麦粉と水での置換を有する参照ケーキ。
3.50%卵と残りの卵の3750LEU Lecitase 10L/kgバッター+9g/kgバッターMeripro420+9g/kgバッターの小麦粉+水での置換を有する参照ケーキ。
4.50%卵と残りの卵の3750LEU Lecitase 10L/kgバッター+9g/kgバッターProlite100+9g/kgバッターの小麦粉+水での置換を有する参照ケーキ。
5.50%卵と残りの卵の3750LEU Lecitase 10L/kgバッター+18g/kgバッターMeripro420での置換を有する参照ケーキ。
【0079】
被験者は、最高の評価のケーキに対して最高の数値を付け、劣った評価のケーキに対して最低の数値を付けるような基準に従って様々なケーキをランク付けするように依頼された。

【0080】
ランク付けの合計は、50%卵だけで製造されたケーキが劣った評価であり、他の四つの種類のケーキが等しく評価されることを示す。
【0081】
実施例6:ホスホリパーゼと非卵蛋白質の組み合わせの効果:異なる種類のケーキ
ケーキは、二つの異なる種類のPuratos(Brussels,Belgium)からの市販ドライミックス:Tegral Satin Cream Cake及びTegral Allegro Cakeを用い、ホスホリパーゼ(Lecitase 10L)及びMeripro420(Tate&Lyle Europe N.V.,Aalst,Belgium)を用いて製造された。添加されたマーガリンはAristo Cake(Puratos,Brussels,Belgium)である。添加された油はナタネ油である。実施例1に記載のようにバッターは製造され、ケーキは焼成される。バッターの通常の組成は表6に与えられる。

【0082】
以下の結果は、50%卵を減少させて製造されたケーキの体積及び組織についてのホスホリパーゼ及び非卵蛋白質の組み合わせの効果を示す(表7)。

【0083】
ケーキ体積及び組織は非卵蛋白質及びホスホリパーゼの組み合わせの使用によって50%卵を減少させたレシピで改良された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のことを含む、ケーキの製造方法:
a)卵レシチンを含むケーキバッターを製造する;
b)ホスホリパーゼをケーキバッターに添加する;及び
c)ケーキバッターを焼成してケーキを作成する。
【請求項2】
以下のことを含む、ケーキの製造方法:
a)非ホスホリパーゼ処理卵レシチン及びホスホリパーゼを含むケーキバッター成分を混合することによってケーキバッターを製造する;及び
b)ケーキバッターを焼成してケーキを作成する。
【請求項3】
ホスホリパーゼはホスホリパーゼA2、特に哺乳類の膵臓ホスホリパーゼである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ホスホリパーゼがバッター1kgあたり500〜20000LEUの量で添加される、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
卵レシチンはバッターの0.3〜1.5%の量で存在する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ケーキバッターは全卵を、特にバッターの5〜25重量%の量で含む、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
単離された非卵蛋白質がケーキバッターに、特にバッターの0.1〜6重量%の量で添加される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
非卵蛋白質はホエー蛋白質、小麦蛋白質又は大豆蛋白質を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
蛋白質は変性蛋白質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
バッターは乳化剤を、特にバッターの0.1〜1%の量でさらに含む、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ケーキバッターは小麦粉(特に15〜30重量%の量)、砂糖(特に15〜25重量%の量)、植物性脂肪(特に5〜30重量%の量)及び乳化剤(0.1〜1%)をさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2010−501195(P2010−501195A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526037(P2009−526037)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058418
【国際公開番号】WO2008/025674
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(505090469)
【Fターム(参考)】