説明

ホットプレートユニット

【課題】 ヒータ昇温時間が短くてしかも発塵の心配がないホットプレートユニットを提供すること。
【解決手段】 このホットプレートユニット1は、有底状のケーシング2とヒータ3とを備える。ヒータ3は、セラミックからなる板状体9に発熱体10を設けたものであり、ケーシング2の開口部5に配置されている。ケーシング2とヒータ3との間には、輻射熱の反射体4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、有底状のケーシングとヒータとを備えるホットプレートユニットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】半導体製造プロセスにおいては、シリコンウェハ上に感光性樹脂をエッチングレジストとして形成した状態で、エッチャントを用いてそのシリコンウェハをエッチングするという工程が実施される。感光性樹脂のシリコンウェハへの塗布は、スピンコータ等の塗布装置を用いて行われる。その場合、塗布された感光性樹脂は液状かつ未硬化状態であるので、まず乾燥工程を行なってある程度流動性を低下させてから、次の露光・現像工程に付される必要がある。
【0003】塗布工程を経たシリコンウェハを乾燥させるための装置としては、裏面に発熱体が配線されたアルミニウム板からなる金属製ヒータを用いたホットプレートユニットが従来より使用されていた。しかしながら、従来では熱膨張による歪みの発生を防止するために金属製ヒータを肉厚にせざるを得なく、どうしても温度制御性の点で劣っていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】また、ヒータを加熱すると、ヒータの裏面側が発する輻射熱によってケーシングが加熱され、その温度が上昇する。即ち、本来ヒータの加熱に用いられるべき熱エネルギーの一部が結果としてケーシングの加熱にも用いられ、これが熱エネルギーのロスとなるからである。従って、ヒータを設定温度まで昇温させるのに要する時間が長くなることで乾燥工程全体の所要時間も長くなり、これにより生産性の向上が妨げられるおそれがある。加えて、ケーシング用金属材料の耐熱温度を超えて同ケーシングが加熱されることは、好ましい事態であるとはいいがたい。
【0005】上記の問題を解消しうる対策としては、ヒータとケーシングとの間に例えばガラス繊維等の断熱材を充填することで、輻射熱を遮断するという方法が考えられる。しかし、これではケーシングの過度の温度上昇を回避できたとしても、断熱材が塵埃を発生させる原因となり、周囲の環境を汚染する結果となる。従って、高い清浄度が要求される半導体製造分野に適さない装置となってしまう。
【0006】本発明は上記の課題を解決するためなされたものであり、その目的は、ヒータ昇温時間が短くてしかも発塵の心配がないホットプレートユニットを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、有底状のケーシングと、セラミックからなる板状体に発熱体を設けてなりかつ前記ケーシングの開口部に配置されるヒータとを備えるホットプレートユニットであって、前記ケーシングと前記ヒータとの間に輻射熱の反射体が設けられていることを特徴とするホットプレートユニットをその要旨とする。
【0008】請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記板状体は、窒化物セラミックまたは炭化物セラミックからなる円盤状の板状体であるとしている。以下、本発明の「作用」を説明する。
【0009】請求項1に記載の発明によると、ヒータの発した輻射熱は、反射体により反射され、ヒータ側に戻される。従って、熱エネルギーのロスが極めて少なくて済み、ヒータが効率よく昇温する。逆にケーシング側に到達する輻射熱の量は減少するので、ケーシングの過度の温度上昇が回避される。また、反射体とヒータとはじかに接触していないため、伝導熱による反射体の温度上昇も同様に回避される。さらに、ヒータとケーシングとの間に必ずしも輻射熱遮断用の断熱材を充填する必要がなくなるため、塵埃を発生させる心配もなくなる。
【0010】請求項2に記載の発明によると、窒化物セラミックや炭化物セラミックは耐熱性に優れるため、設定温度を高くすることができ、しかもその設定温度に昇温するまでの時間を短縮することができる。また、窒化物セラミックや炭化物セラミックは熱膨張係数が金属よりも小さいため、肉薄にしたときでも、加熱による反りや歪みが生じない。ゆえに、肉薄かつ軽量のヒータを得ることができる。さらに、窒化物セラミックや炭化物セラミックは熱伝導率が高いため、発熱体の温度変化に対してヒータの表面温度が迅速に追従する。即ち、電圧や電流の量を変更して発熱体の温度を変化させることにより、ヒータの表面温度を比較的容易に制御することができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明を具体化した一実施形態のホットプレートユニット1を図1〜図5に基づき詳細に説明する。
【0012】図1に示されるように、このホットプレートユニット1は、ケーシング2、ヒータ3及び板状反射体としてのステンレス板4をその主要な構成要素としている。
【0013】ケーシング2は有底状の金属製部材(ここではアルミニウム製部材)であって、断面円形状の開口部5をその上部側に備えている。このケーシング2の底部2aの中心部には、図示しないウェハ支持ピンを挿通するためのピン挿通孔6が3つ形成されている。ピン挿通孔6に挿通されたウェハ支持ピンを上下させれば、ウェハを搬送機に受け渡したり、ウェハを搬送機から受け取ったりすることができる。また、底部2aの外周部にはリード線引出用孔7がいくつか形成されている。この孔7にはヒータ3に電流を供給するためのリード線8が挿通される。
【0014】本実施形態のヒータ3は、感光性樹脂が塗布されたシリコンウェハを高温(500℃以上)で乾燥させるための高温用ヒータ3である。このヒータ3は、セラミックからなる板状体9に、発熱体としての発熱配線層10を設けることで構成され、ケーシング2の開口部5に配置されるようになっている。
【0015】ヒータ3を構成する板状体9は円形状であって、ケーシング2の開口部5とほぼ同径となるように設計されている。板状体9は多層構造であり、発熱配線層10は各層の層間に埋設されている。即ち、ここでは発熱配線層10はヒータ3の外表面からは全く露出していない。
【0016】板状体9を構成するセラミック材料としては、具体的には窒化物セラミックまたは炭化物セラミックが用いられることが好ましい。その理由は、以下のとおりである。窒化物セラミックや炭化物セラミックは耐熱性に優れるため、設定温度を高くすることができ、しかもその設定温度に昇温するまでの時間を短縮することができるからである。また、窒化物セラミックや炭化物セラミックは熱膨張係数が金属よりも小さいため、肉薄にしたときでも加熱による反りや歪みが生じない。ゆえに、ヒータ3の肉薄化や軽量化に好都合だからである。さらに、窒化物セラミックや炭化物セラミックは熱伝導率が高いため、発熱配線層10の温度変化に対してヒータ3の表面温度が迅速に追従するからである。
【0017】窒化物セラミックとしては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化チタン等のような金属窒化物セラミックが望ましい。炭化物セラミックとしては、例えば、炭化ケイ素、炭化ジルコニウム、炭化チタン、炭化タンタル、炭化タングステン等のような金属炭化物セラミックが望ましい。以上列挙したセラミックの中では、特に窒化アルミニウムが好適である。熱伝導率が180W/m・Kであって最も高いからである。
【0018】ここで、ヒータ3を構成する板状体9の厚さは0.5mm〜5mm程度、さらには1mm〜3mm程度であることがよい。これが薄すぎると破損しやすくなり、厚すぎると大型化や高コスト化につながるおそれがあるからである。
【0019】図1に示されるように、ヒータ3の中心部には、前記ピン挿通孔6に対応する3つの箇所に同じくピン挿通孔11が形成されている。また、ヒータ3の裏側面には2種のピン(端子ピン12及びダミーピン13)がそれぞれ複数本ずつ立設されている。
【0020】発熱配線層10との導通に関与する端子ピン12は、ヒータ3の中心部から外周部に向かって2列配置されている。これらの端子ピン12の基端部は、板状体9の裏面側に形成されたスルーホール14のランドにロウ付け等により接合されている。その結果、端子ピン12と発熱配線層10との電気的な導通が図られている。なお、端子ピン12の基端部はスルーホール14内に直接嵌挿されてもよい。端子ピン12の先端部には、リード線8の金属部分がロウ付け等によって接合されている。従って、リード線8及び端子ピン12を介して発熱配線層10に電流が供給される結果、発熱配線層10の温度が上昇して、ヒータ3が加熱される。なお、端子ピン12は導電性を有している必要があることから、その形成材料としてコバールや42アロイ等の導電金属材料が使用されている。もっとも、本実施形態では導電性の要らないダミーピン13についても同様の材料を用いている。
【0021】発熱配線層10との導通に関与しないダミーピン13は、ヒータ3の外周部における複数の箇所に設けられていて、リード線8とは接続されてはいない。本実施形態の各ダミーピン13は、いずれも各端子ピン12よりも長めに形成されている。本実施形態ではダミーピン13を30mm、端子ピン12を17mmに設定している。従って、ヒータ3をケーシング2の開口部5に設置した場合、各ダミーピン13の先端部のみがケーシング2の底部2aの内面外周部に当接する。即ち、ヒータ3は各ダミーピン13によって水平状態に支持された状態となる。このとき、ヒータ3の裏面側外周部とケーシング2の開口部5上面との間には、ある程度の隙間15が確保されることがよい。このような非接触状態でヒータ3を設置しておけば、ヒータ3からの伝導熱によりケーシング2の温度が上昇してしまうことが回避できるからである。
【0022】なお、上記のヒータ3には、必要に応じて熱電対を埋め込んでおくことも可能である。熱電対によりヒータ3の温度を測定し、そのデータをもとに電圧値や電流値を変えて、ヒータ3の温度を制御することができるからである。
【0023】図2に概略的に示されるように、ヒータ3において層間に形成された発熱配線層10は、略同心円状のパターンになっている。このような形状を採用したのは、ヒータ3の全領域を均一に加熱することで、ヒータ3内の温度差を、ひいては被加熱物であるシリコンウェハの温度差を極力少なくするためである。発熱配線層10は、導電ペースト中に含まれる金属粒子を焼結させることによって形成されたものである。
【0024】発熱配線層10の厚さは1μm 〜20μmであることが望ましく、幅は0.5mm〜5mmであることが望ましい。発熱配線層10の抵抗値は厚さや幅の変更によって変化させることができ、その場合において前記範囲内が最も実用的だからである。
【0025】導電ペーストとしては、金属粒子、樹脂、溶剤、増粘剤などを含むものが一般的に使用される。導電性ペーストに使用される好適な金属粒子としては、例えば、金、銀、白金、パラジウム、鉛、タングステン、ニッケル等が挙げられる。これらの金属は高温に晒されても比較的酸化しにくく、通電により発熱させるにあたって充分な抵抗値を有するからである。金属粒子の粒径は、0.1μm 〜100μmであることが望ましい。金属粒子の粒径が小さすぎると、酸化しやすくなるからである。逆にこれが大きすぎると、焼結しにくくなり抵抗値が大きくなるからである。
【0026】導電ペーストに使用される好適な樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。同様に好適な溶剤としてはイソプロピルアルコールなどがあり、好適な増粘剤としてはセルロースなどがある。
【0027】前記導電ペーストには、金属粒子等に加えて金属酸化物が含有されていることがよい。その理由は、セラミックからなる板状体9と金属からなる発熱配線層10とを確実に密着させ、層間における剥離の発生を防止するためである。
【0028】金属酸化物としては、例えば、酸化鉛、酸化亜鉛、シリカ、酸化ホウ素(B23 )、アルミナ、イットリア、チタニア等が使用されることがよい。これらの酸化物は、発熱体の抵抗値を増大させることなく、金属−セラミック間の密着性を改善することができるからである。
【0029】図1,図3に示されるように、反射体としては、輻射熱の反射面S1 を有する板状円形のステンレス板4が用いられている。このステンレス板4は、ケーシング2の開口部5やヒータ3よりもひとまわり小径となるように設計されている。ステンレス板4の中心部には、前記ピン挿通孔6に対応する3つの箇所に同じくピン挿通孔16が形成されている。また、前記ステンレス板4には、端子ピン12及びダミーピン13を挿通させるためのピン挿通孔17も形成されている。装置の組み付けに際して、各端子ピン12はスリーブ18に挿通された状態でステンレス板4のピン挿通孔17に挿通される。スリーブ18は耐熱性及び絶縁性を有するセラミック材料(例えばアルミナ等)からなるものであって、端子ピン12とステンレス板4との接触を回避する役割を果たしている。
【0030】ステンレス板4は少なくともその片面に輻射熱の反射面S1 を有している必要がある。ここでいう反射面とは、ある方向からの輻射熱が反射される物体表面のことをいい、吸収・透過面に対する概念である。特に本実施形態では、このような反射面S1 をその両面に持つステンレス板4を使用している。
【0031】反射面S1 を有するステンレス板4は、例えば圧延ステンレス鋼の両面を所定の表面粗さとなるように研磨加工(例えばバフ研磨等)をすることにより作製されることができる。
【0032】上記のようなステンレス板4は、ケーシング2とヒータ3との間において同ヒータ3の裏側面と所定間隔L1 を隔てた状態かつ平行状態で配置される。その所定間隔L1 とは3mm〜20mmであることがよく、さらには5mm〜10mmであることがよい。本実施形態ではその間隔L1 を8.5mmに設定している。
【0033】その際、反射面S1 は少なくともヒータ3の裏側面に対面するように配置されている必要がある。その理由は、ヒータ3の発する輻射熱を反射して再びヒータ3に戻すことで、熱エネルギーのロスを低減するためである。両面に反射面S1がある本実施形態はこの条件を満たしている。なお、本実施形態においては、ケーシング2の底部2aの内面とステンレス板4との間にも一定の間隔が確保されている。
【0034】ステンレス板4の上面とヒータ3の裏側面との間には、耐熱性を有するセラミック等の材料からなるスペーサ(図示略)が介在されていてもよい。このようなスペーサがあると、互いに所定間隔L1 を保ちつつステンレス板4とヒータ3とを平行状態に維持できるからである。このようなスペーサは、ステンレス板4及びヒータ3に対して耐熱性接着剤等により接合されていることがよい。
【0035】次に、上記のホットプレートユニット1を製造する手順の一例を説明する。炭化物または窒化物セラミックの粉体に、必要に応じてイットリアなどの焼結助剤やバインダー等を添加してなる混合物を作製し、これを3本ロール等により均一に混練する。この混練物を材料として、シート状かつ略正方形状の生成形体(いわゆるグリーンシート)をドクターブレード装置を用いて作製する。このようなシート成形法のみならず、下記のようなプレス形成法を採用することも可能である。即ち、前記混合物をスプレードライ等の方法により顆粒状にし、得られた顆粒を金型などに入れて加圧することで、板状かつ略正方形状の生成形体を作製してもよい。具体的にいうと本実施形態では、窒化アルミニウム粉末(平均粒径1.1μm)100重量部、イットリア(酸化イットリウムのこと 平均粒径0.4μm)4重量部、アクリルバインダー12重量部及びアルコールからなる混練物を材料としてシート成形を行なった。
【0036】必要な層数の数だけ生成形体を作製した後、その生成形体にパンチングまたはドリリングを行うことにより、スルーホール形成用孔及びピン挿通孔11を形成する。さらに、あらかじめ調製しておいた導電ペーストを印刷してスルーホール形成用孔内に導電ペーストを充填することにより、所定箇所にスルーホールを形成する。この後、生成形体に導電ペーストをスクリーン印刷することにより、後に発熱配線層10となるパターンを形成する。この状態で導電ペーストを乾燥する工程を行なって、ペースト中に含まれている溶剤やバインダ等を除去させることがよい。本実施形態において具体的には、タングステンを含むものを発熱配線層10の形成用の導電ペーストとして使用した。
【0037】次に、印刷工程を経た生成形体を複数枚積層した後、所定温度・所定時間で乾燥、仮焼成及び本焼成の各工程を実施し、生成形体及び導電ペーストを同時にかつ完全に焼結させる。その結果、発熱配線層10を内層に備えるセラミック製の板状体9を得ることができる。焼成工程はHIP装置によって行われることがよく、窒化物セラミックまたは炭化物セラミックを用いた場合にその温度は1500℃〜2500℃程度に設定されることがよい。具体的にいうと、窒化アルミニウム生成形体を用いた本実施形態では、1800℃、圧力230kg/cm2 でHIPを行い、厚さ3mmの焼結体(板状体9)を得ている。
【0038】続いて、前記板状体9を所定径(本実施形態では230mmφ)かつ円形状に切り出した後、バフ研磨装置等を用いて表面研削加工を行う。そして、スルーホール14のランドにピン12,13をはんだ付けを行うことにより、ヒータ3が完成する。
【0039】このようにして得られたヒータ3の各ピン12,13を、あらかじめ作製しておいたステンレス板4の各ピン挿通孔17に挿通させる。各端子ピン12はさらにスリーブ18に挿通され、かつこの状態で先端部にリード線8がはんだ付けされる。そして、裏面側にステンレス板4を備えるヒータ3をケーシング2の開口部5に設置すれば、ホットプレートユニット1の組み付けが完了する。
【0040】次に、このようにして製造されたホットプレートユニット1の性能試験の方法及び結果を説明する。この性能試験は、ヒータ3の加熱時における昇温・降温特性を調査するためになされたものである。試験に際して、ヒータ3の表側面中心部にヒータ側熱電対を設置し、ステンレス板4の裏側面中心部に反射体側熱電対を設置して、それぞれの温度を経時的に測定した。なお、ヒータ3への通電は24分とし、その後はヒータ3の加熱を止めて自然に冷却した。ヒータ3の設定温度は約550℃とし、設定温度でホールドする時間を20分に設定することとした。その結果を図4に示す。
【0041】図4において縦軸は温度(℃)を示し、横軸は経過時間(分)を示している。曲線C1 はヒータ3の表側面の温度変化曲線であり、それよりも下方にある曲線C2 はステンレス板4の裏側面の温度変化曲線である。
【0042】ヒータ3への通電を開始すると、ヒータ3の表側面の温度は急激に上昇して、4〜5分後には設定温度である550℃近くまで到達する。ヒータ3の温度は、開始から24分経過後まではほぼ一定となる。一方、ステンレス板4の裏側面の温度の上昇は比較的緩やかであり、開始から5分経過後の時点ではまだ120℃〜130℃である。この温度は開始から24分が経過した時点においても、約230℃という低い値に抑えられる。従って、両者の温度差はおよそ320℃と極めて大きいものとなる。ヒータ3への通電を停止すると、ヒータ3の表側面の温度は下降し始め、約15分以上経過した後に常温に復帰する。ステンレス板4の裏面側温度も、これと同様の経過を辿る。以上のように本実施形態では、トータル約40分で一連の工程が終了することがわかる。
【0043】以上の結果からすると、ステンレス板4の裏側面の温度でさえ約230℃以下に抑えられることから、ケーシング2についてはそれよりもさらに低い温度に抑えられることがわかる。従って、ステンレス板4の有効性が実証されるものとなった。
【0044】さて、以下に本実施形態において特徴的な作用効果を列挙する。
(イ)この実施形態では、ケーシング2とヒータ3との間に、反射面S1 を有するステンレス板4を同ヒータ3から所定間隔L1 を隔てて設けている。従って、ヒータ3の発した輻射熱は、前記ステンレス板4の反射面S1 により反射され、ヒータ3側に戻される。従って、実質的にヒータ3から逃げる熱エネルギーの量が減少し、熱エネルギーのロスが極めて少なくて済む。ゆえに、反射体を備えていない従来装置に比べ、ヒータ3を効率よく昇温することができる。
【0045】逆にステンレス板4があることにより、ケーシング2側に到達する輻射熱の量は確実に減少するので、ケーシング2の過度の温度上昇を回避することができる。また、ステンレス板4とヒータ3とはじかに接触していないため、伝導熱によるステンレス板4の温度上昇も同様に回避される。
【0046】以上のことからすると、本実施形態によればヒータ昇温時間の短いホットプレートユニット1を実現することができる。これによりウェハ乾燥工程全体の所要時間が短縮化され、半導体の生産性を向上することができる。また、ケーシング用金属材料の耐熱温度を超えてケーシング2が加熱されることも回避できる。
【0047】(ロ)この実施形態によると、ステンレス板4の設置により反射作用が得られることから、ヒータ3とケーシング2との間に必ずしも輻射熱遮断用の断熱材を充填する必要がなくなる。そのため、塵埃を発生させる心配もなくなり、高い清浄度が要求される半導体製造分野での使用に適したホットプレートユニット1とすることができる。
【0048】(ハ)この実施形態のヒータ3は、耐熱性に優れ、熱膨張係数が金属よりも小さく、かつ熱伝導率が高い窒化物セラミックからなる円盤状の板状体9を用いて構成されている。従って、肉薄かつ軽量で温度制御性に優れたものとすることができる。
【0049】なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、例えば次のような形態に変更することが可能である。
◎ 図6に示される別例のホットプレートユニット21のように、板状反射体であるステンレス板4を複数枚(同図では2枚)設けてもよい。このようにすると1枚のみとしたときよりも輻射熱遮断作用が高くなるので、ヒータ昇温時間をより短くすることができる。
【0050】◎ 実施形態にて示したステンレス板4に代えて、反射面S1 を有する銅板やニッケル板等を用いてもよい。
◎ 図7に示される別例のホットプレートユニット31のように、反射体を箔状のもの、例えばアルミホイル32等のような金属箔等に変更してもよい。この場合においても、アルミホイル32の少なくとも片側面には反射面S1 が形成されている必要がある。アルミニウム以外の金属、例えば金、銀、ニッケル等を用いた金属箔であっても勿論よい。なお、実施形態の板状反射体と図7の箔状反射体とを組み合わせて反射を図ってもよい。
【0051】◎ 図8に示される別例のホットプレートユニット41のように、反射体を層状のもの、例えば銅めっき層42等のようなめっき層とし、そのめっき層をケーシング2の内壁面に形成してもよい。かかるめっき層は、銅以外の金属、例えば金、白金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、コバルト等のような金属を用いたものでもよい。この場合においてめっき層の表面粗さは、反射面S1 となるような範囲に設定される必要がある。ただし、輻射熱を遮断する作用については、反射体がケーシング2からも離間している実施形態及び図7の別例の構成のほうが勝っている。
【0052】◎ 本発明は、発熱配線層10がヒータ3の層間に埋設されているもの(いわゆる高温用ヒータ)に限られず、ヒータ3が板状体9の外表面に焼き付けられているもの(いわゆる低温用ヒータ)にも適用されることが可能である。その際において発熱配線層10の表面は、酸化防止のために金属層で被覆されていることが望ましい。
【0053】ここで、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想をその効果とともに以下に列挙する。
(1) 請求項1,2において、前記反射体は前記ヒータの裏側面から所定間隔を隔てた状態で同面と平行関係に配置された板状反射体であるホットプレートユニット。
【0054】(2) 技術的思想1において、前記板状反射体は複数枚設けられているホットプレートユニット。この構成であると、ヒータ昇温時間をより短くできる。
(3) 技術的思想1または2において、前記板状反射体はその両面に前記反射面を備えるホットプレートユニット。
【0055】(4) 請求項1,2において、前記反射体は前記ケーシングの内壁面に形成された層状反射体(例えばめっき層)であるホットプレートユニット。
(5) 請求項,2において、前記反射体は箔状反射体(例えば金属箔等)であるホットプレートユニット。
【0056】(6) 請求項1,2、技術的思想1乃至5のいずれか1つにおいて、前記ケーシングの開口縁上面と前記ヒータの裏側面外周部との間には隙間が確保されるホットプレートユニット。この構成であると、非接触状態となるためヒータからの伝導熱によるケーシング温度の上昇が回避できる。
【0057】(7) 請求項1,2、技術的思想1乃至6のいずれか1つにおいて、前記ヒータは、前記発熱体との導電に関与する複数の端子ピンと、前記端子ピンよりも長くて前記発熱体との導電に関与しない複数のダミーピンとを備えるホットプレートユニット。この構成であると、端子ピンとケーシングとの接触を回避しつつ、ヒータをケーシングの開口部に水平状態で支持させることができる。
【0058】(8) 技術的思想7において、前記端子ピンは耐熱性及び絶縁性を有する材料からなるスリーブに挿通されているホットプレートユニット。この構成であると、端子ピンが保護されるため反射体との接触が回避される。
【0059】(9) 請求項1,2、技術的思想1乃至8のいずれか1つにおいて、前記ヒータは多層構造であり、前記発熱体は層間に埋設されているホットプレートユニット。この構成であると、発熱体が露出しないため高温用のヒータとすることができる。
【0060】
【発明の効果】以上詳述したように、請求項1,2に記載の発明によれば、ヒータ昇温時間が短くてしかも発塵の心配がないホットプレートユニットを提供することができる。
【0061】特に、請求項2に記載の発明によれば、肉薄かつ軽量で温度制御性に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した一実施形態のホットプレートユニットの分解斜視図。
【図2】前記ホットプレートユニットを構成するヒータの発熱配線層のパターン概略図。
【図3】前記ホットプレートユニットを構成するステンレス板の平面図。
【図4】性能試験の結果を示すグラフ。
【図5】前記ホットプレートユニットの部分断面図。
【図6】別例のホットプレートユニットの部分断面図。
【図7】別例のホットプレートユニットの部分断面図。
【図8】別例のホットプレートユニットの部分断面図。
【符号の説明】
1,21,31,41…ホットプレートユニット、2…ケーシング、3…ヒータ、4…(板状)反射体としてのステンレス板、9…板状体、10…発熱体としての発熱配線層、32…(箔状)反射体としてのアルミホイル、42…(層状)反射体としての銅めっき層、S1 …反射面、L1 …間隔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】有底状のケーシングと、セラミックからなる板状体に発熱体を設けてなりかつ前記ケーシングの開口部に配置されるヒータとを備えるホットプレートユニットであって、前記ケーシングと前記ヒータとの間に輻射熱の反射体が設けられていることを特徴とするホットプレートユニット。
【請求項2】前記板状体は、窒化物セラミックまたは炭化物セラミックからなる円盤状の板状体であることを特徴とする請求項1に記載のホットプレートユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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