説明

ホログラフィック記録用組成物及びその製造方法、並びに光記録媒体

【課題】記録の熱に対する保存性に優れたホログラフィック光記録媒体を製造できるホログラフィック記録用組成物及び該ホログラフィック記録用組成物の製造方法並びに該光記録媒用組成物を用いた光記録媒体の提供。
【解決手段】少なくとも下記構造式(1)で表されるモノマーを含有するホログラフィック記録用組成物である。Xが(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミノ基及びスチリル基のいずれかである態様、Zがオキシラン基及びオキセタン基のいずれかである態様、Yが少なくとも1つのベンゼン骨格を含む2価以上の有機連結基である態様などが好ましい。


前記構造式(1)中、Xはラジカル重合可能な有機基を表す。Yは2価以上の有機連結基を表す。Zは開環重合可能な有機基を表す。n及びmは1以上の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光を用いて情報の記録及び再生が可能であり、特に、記録層の厚みが厚いボリュームホログラフィック光記録媒体の作製に適したホログラフィック記録用組成物及び該ホログラフィック記録用組成物の製造方法、並びに該ホログラフィック記録用組成物を用いた光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホログラフの原理を用いたホログラフィック光記録媒体の開発が進められている。このようなホログラフィック光記録媒体は、情報の記録時は、イメージ情報を含んだ情報光と参照光とを感光性組成物からなる記録層中で重ね合わせ、そのときにできる干渉縞を記録層に書き込むことによって行われる。一方、記録された情報の再生時は、記録層に所定の角度で参照光を入射させることにより、形成された干渉縞による参照光の光回折が起こり、情報光が再生される。
【0003】
近年、超高密度光記録が可能なボリュームホログラフィ、特にデジタルボリュームホログラフィが実用レベルで開発され、注目を集めている。ボリュームホログラフィとは、光記録媒体の厚み方向も積極的に活用して、三次元的に干渉縞を書き込む方式であり、厚みを増すことで回折効率を高め、多重記録によって記録容量の増大を図れるという特長がある。また、デジタルボリュームホログラフィとは、ボリュームホログラフィと同様の記録媒体と記録方式を用いつつも、記録するイメージ情報は2値化したデジタルパターンに限定した、コンピュータ指向のホログラフィック記録方式である。このようなデジタルボリュームホログラフィでは、例えば、アナログ的な絵のような画像情報も、一旦デジタイズして、二次元デジタルパターン情報に展開し、これをイメージ情報として記録する。再生時は、このデジタルパターン情報を読み出してデコードすることで、元の画像情報に戻して表示する。これにより、再生時にS/N比(信号対雑音比)が多少悪くても、微分検出を行ったり、2値化データをコード化しエラー訂正を行ったりすることで、極めて忠実に元の情報を再現することが可能になる(特許文献1参照)。
【0004】
前記ボリュームホログラフィック光記録媒体においては、様々なマトリックスやモノマーを用いることが提案されている(特許文献2及び3参照)。また、ホログラフィック光記録媒体は、CDやDVDなどの従来のピット(マーク)形式で情報を記録する光記録媒体と異なり、ある体積内に干渉縞を屈折率像の形で書き込むため、外部温度の変化による記録層材料の体積収縮及び体積膨張によって、容易に屈折率像の形状が変化し、再生されるべき信号が正しく再生できないことがあり、熱に対する記録の保持を図ることが極めて重大な課題である。しかし、上記先行技術では、記録の熱に対する保存性が充分ではなく、更なる改良、開発が望まれているのが現状である。
【0005】
【特許文献1】特開平11−311936号公報
【特許文献2】特表2005−502918号公報
【特許文献3】特許第2873126号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、記録の熱に対する保存性が高いホログラフィック光記録媒体を製造することができるホログラフィック記録用組成物及び該ホログラフィック記録用組成物の製造方法、並びに該ホログラフィック記録用組成物を用いた光記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも下記構造式(1)で表されるモノマーを含有することを特徴とするホログラフィック記録用組成物である。
【化3】

ただし、前記構造式(1)中、Xはラジカル重合可能な有機基を表す。Yは2価以上の有機連結基を表す。Zは開環重合可能な有機基を表す。n及びmは、それぞれ1以上の整数を表す。
<2> 構造式(1)におけるXが、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミノ基及びスチリル基のいずれかである前記<1>に記載のホログラフィック記録用組成物である。
<3> 構造式(1)におけるZが、オキシラン基及びオキセタン基のいずれかである前記<1>から<2>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物である。
<4> 構造式(1)におけるYが、少なくとも1つのベンゼン骨格を含む2価以上の有機連結基である前記<1>から<3>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物である。
<5> 更にマトリックス及び光重合開始剤を含有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物である。
<6> マトリックスが、構造式(1)で表されるモノマーのX及びZのいずれかと反応して結合可能な有機基を有する前記<5>に記載のホログラフィック記録用組成物である。
<7> マトリックスにおける結合可能な有機基が、ラジカル重合可能な有機基及びカチオン重合可能な有機基のいずれかである前記<6>に記載のホログラフィック記録用組成物である。
<8> 光重合開始剤が2種以上の光重合開始剤の混合物からなり、該混合物が少なくとも1種のラジカル重合開始剤と、少なくとも1種の開環重合開始剤とを含む前記<5>から<7>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物である。
<9> 構造式(1)で表されるモノマーのホログラフィック記録用組成物における含有量が、1〜50質量%である前記<1>から<8>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物である。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物を製造する方法であって、
マトリックスを形成するマトリックス形成工程と、
得られたマトリックス及び下記構造式(1)で表されるモノマーに光を照射してラジカル重合及び開環重合させることにより、情報の記録及び記録の定着を行う記録定着工程とを含むことを特徴とするホログラフィック記録用組成物の製造方法である。
【化4】

ただし、前記構造式(1)中、Xはラジカル重合可能な有機基を表す。Yは2価以上の有機連結基を表す。Zは開環重合可能な有機基を表す。n及びmは、それぞれ1以上の整数を表す。
<11> 前記<1>から<9>のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物からなるホログラフィック記録層を有することを特徴とする光記録媒体である。
<12> 下側基板と、フィルタ層と、ホログラフィック記録層と、上側基板とを有する前記<11>に記載の光記録媒体である。
【0008】
本発明のホログラフィック記録用組成物は、上記記構造式(1)で表されるモノマーを含有してなり、好ましくはマトリックス、光重合開始剤を含有しているので、記録された情報を定着することができ、熱に対する保存性が向上した光記録媒体を効率よく製造できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、記録の熱に対する保存性が高いホログラフィック光記録媒体を製造することができるホログラフィック記録用組成物及び該ホログラフィック記録用組成物の製造方法、並びに該光記録媒用組成物を用いた光記録媒体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(ホログラフィック記録用組成物)
本発明のホログラフィック記録用組成物は、少なくとも下記構造式(1)で表されるモノマーを含有してなり、マトリックス、光重合開始剤、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【化5】

ただし、前記構造式(1)中、Xはラジカル重合可能な有機基を表す。Yは2価以上の有機連結基を表す。Zは開環重合可能な有機基を表す。n及びmは、それぞれ1以上の整数を表す。
【0011】
<構造式(1)で表されるモノマー>
前記構造式(1)において、Xで表されるラジカル重合可能な有機基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、スチリル基、α−置換スチリル基、ビニル基、アリル基、マレイン酸基、無水マレイン酸基、マレイン酸アミド基などが挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、スチリル基、ビニル基、アリル基が好ましく、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、スチリル基がより好ましく、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基が特に好ましい。
【0012】
前記構造式(1)において、Zで表される開環重合可能な置換基としては、例えば、オキシラン基、オキシラニルメチルオキシ基、オキシラニルエチルオキシオキシ基、2,3−エポキシプロピルカルボニルオキシ基、オキセタン基、2−オキセタニルメチルオキシ基、3−オキセタニルメチルオキシ基、3−オキセタニルエチルオキシ基、プロピレンカーボネート基、1,3−ジオキソラン−2−オンメトキシ基、ブチルカーボネート基、γ−ブチロラクトン基、γ−ブチロラクタム基などが挙げられる。これらの中でも、オキシラン基、オキシラニルメチルオキシ基、オキシラニルエチルオキシオキシ基、オキセタン基、プロピレンカーボネート基、ブチルカーボネート基、γ−ブチロラクトン基が好ましく、オキシラン基、オキセタン基、オキシラニルメチルオキシ基、プロピレンカーボネート基がより好ましく、オキシラン基、オキセタン基が特に好ましい。このような開環重合可能な置換基の具体例を下記に挙げる。
【化6】

【0013】
前記構造式(1)において、n及びmは、それぞれ1以上の整数を表す。n+mは2〜6が好ましく、2〜4がより好ましく、2〜3が特に好ましい。
【0014】
前記構造式(1)において、Yで表される2価以上の有機連結基としてはXとZとを連結することができれば特に制限はなく、また、有機連結基の構造中には、エーテル結合、エステル結合、アミノ結合、アミド結合、カーバメート結合などの連結構造が入っていてもよい。
Yで表される2価以上の有機連結基として、2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アリーレン基が好ましく、アリーレン基が特に好ましい。また、3価の有機基としては、例えば、アルカントリイル基、アレーントリイル基が好ましく、アレーントリイル基が特に好ましい。また、4価の有機基としては、例えば、アルカンテトライル基、アレーンテトライル基が好ましく、アレーンテトライル基が特に好ましい。
Yで表される2価以上の有機連結基としては、少なくともベンゼン骨格を含むものがより好ましい。
【0015】
前記アルキレン基は、分岐を有していてもよく、また、置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜30が好ましく、炭素原子数1〜20がより好ましい。前記置換基としてはハロゲン原子、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が好ましく、これらの中でも、ハロゲン原子、アリール基が特に好ましい。また、アルキレン鎖中に2価の官能基を互いに隣り合わないようにして有してもよく、このような2価の官能基としては、−O−、−S−、−COO−、−O−CO−が好ましく、−O−が特に好ましい。また、アルキレン鎖中及びアルキレン鎖の片末端の少なくともいずれかにアリーレン基又はアルケニレン基を有していてもよく、アリーレン基が特に好ましい。このようなアルキレン基の具体例を下記に挙げる。
【化7】

ただし、前記式中、Meはメチル基を表す。
【0016】
前記アリーレン基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数6〜30が好ましく、特に炭素原子数6〜20が好ましい。前記置換基としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。これらの中でもハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、アリーレン鎖中に2価の官能基を互いに隣り合わないようにして有してもよく、このような2価の官能基としては、−O−、−S−、−COO−、−O−CO−が好ましく、−O−が特に好ましい。このようなアリーレン基の具体例を下記に挙げる。
【化8】

ただし、前記式中、Meはメチル基を表す。
【0017】
前記アルカントリイル基は、分岐を有していてもよく、また置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜30が好ましく、特に炭素原子数1〜20が好ましい。前記置換基としてはハロゲン原子、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が好ましく、これらの中でも、ハロゲン原子、アリール基が特に好ましい。また、アルカントリイル基中に2価の官能基を互いに隣り合わないようにして有していてもよく、このような2価の官能基としては、−O−、−S−、−COO−、−O−CO−が好ましく、−O−が特に好ましい。また、アルカントリイル基中及びアルカントリイル基の片末端の少なくともいずれかにアリーレン基又はアルケニレン基を有していてもよく、アリーレン基が特に好ましい。このようなアルカントリイル基の例を下記に挙げる。
【化9】

【0018】
前記アレーントリイル基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数6〜30が好ましく、炭素原子数6〜20が特に好ましい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基が挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、アレーントリイル基中に2価の官能基を互いに隣り合わないようにして有していてもよく、このような2価の官能基としては、−O−、−S−、−COO−、−O−CO−が好ましく、−O−が特に好ましい。このようなアレーントリイル基の具体例を下記に挙げる。
【化10】

【0019】
前記アルカンテトライル基は、分岐を有していてもよく、また、置換基を有していてもよく、炭素原子数1〜30が好ましく、炭素原子数1〜20が特に好ましい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、アリール基が特に好ましい。また、アルカンテトライル基中に2価の官能基を互いに隣り合わないようにして有していてもよく、このような2価の官能基としては、−O−、−S−、−COO−、−O−CO−が好ましく、−O−が特に好ましい。また、アルカンテトライル基中及びアルカンテトライル基の片末端の少なくともいずれかにアリーレン基又はアルケニレン基を有していてもよく、アリーレン基が特に好ましい。このようなアルカンテトライル基の具体例を下記に挙げる。
【化11】

ただし、前記式中、Meはメチル基を表す。
【0020】
前記アレーンテトライル基は、置換基を有していてもよく、炭素原子数6〜30が好ましく、炭素原子数6〜20が特に好ましい。前記置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられ、これらの中でも、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基が特に好ましい。また、アレーンテトライル基中に2価の官能基を互いに隣り合わないようにして有していてもよく、このような2価の官能基としては、−O−、−S−、−COO−、−O−CO−が好ましく、−O−が特に好ましい。このようなアレーンテトライル基の具体例を下記に挙げる。
【化12】

ただし、前記式中、Meはメチル基を表す。
【0021】
以下に、前記構造式(1)で表されるモノマーの具体例を示すが、これらに限定されるものではない。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してよい。
【化13】

【化14】

ただし、前記式中、Meはメチル基を表す。
【0022】
−構造式(1)で表されるモノマーの合成方法−
前記構造式(1)で表されるモノマーとしての上記M−1で表わされる化合物は、下記反応式に示すように、p−アミノフェノール(東京化成株式会社製)にN,N−ジメチルアセトアミド(東京化成株式会社製)を溶媒としてアクロイルクロライド(東京化成株式会社製)を作用させる。その化合物に対してエピクロロヒドリン(東京化成株式会社製)を水酸化ナトリウム(東京化成株式会社製)の水−エタノール混合溶媒中で作用させることにより合成することができる。
【化15】

【0023】
前記構造式(1)で表されるモノマーは、必要に応じてその他のモノマーと併用してもよい。該その他のモノマーとしては、例えば、アクリル基やメタクリル基のような不飽和結合を有するラジカル重合型のモノマーやエポキシ化合物やオキセタン化合物などの開環重合型のモノマーなどが挙げられる。これらその他のモノマーは、単官能であっても多官能であってもよい。
【0024】
前記ラジカル重合型のモノマーとしては、例えば、アクリロイルモルホリン、フェノキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールPO変性ジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、2−ナフト−1−オキシエチルアクリレート、2−カルバゾイル−9−イルエチルアクリレート、(トリメチルシリルオキシ)ジメチルシリルプロピルアクリレート、ビニル−1−ナフトエート、N−ビニルカルバゾール、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、ペンタブロムアクリレート、フェニルチオエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、などが挙げられる。
【0025】
前記開環重合型のモノマーとしては、例えば、2,3−エポキシ−1−プロパン、3,4−エポキシ−1−ブタン、1,6−ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートジグリシジルエーテル、グリセロールプロポキシレートジグリシジルエーテル、グリシジル4-ヒドロキシフェニルエーテル、グリシジルフェニルエーテル、1,2−エポキシエチルベンゼン、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラ(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、3−エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトンなどが挙げられる。
【0026】
前記モノマーの前記ホログラフィック記録用組成物における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。前記含有量が50質量%を超えると、安定な干渉像が得られないことがあり、1質量%未満であると、回折効率の点で望ましい性能が得られないことがある。
【0027】
−構造式(1)で表されるモノマーの分析方法−
構造式(1)で表されるモノマーの分析方法としては、本発明の前記ホログラフィック記録用組成物からなる記録層を有する光記録媒体(例えば、後述する実施例1)の記録層部分をテトラヒドロフラン(THF)又はジオキサンを用いて抽出して、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析することが可能である。
【0028】
<マトリックス>
前記マトリックスは、記録や保存に関わるモノマーや光重合開始剤を保持するためのポリマーである。
前記マトリックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、溶媒によりキャストして形成させることもできる。また、反応により形成させるものとしては光硬化性マトリックス、酸(塩基)硬化性マトリックス、熱硬化性マトリックスなどが挙げられる。これらの中でも、熱硬化性マトリックスは光記録媒体を製造するのに適している。
【0029】
前記マトリックスとしては、例えば、イソシアネート化合物とアルコール化合物とから形成されるポリウレタン化合物、オキシラン化合物とオキセタン化合物とから形成されるポリエーテル化合物、アルコール化合物とアルコールとから形成されるポリエステル化合物、(メタ)アクリル酸などの不飽和酸のエステル化合物とアミド化合物とを重合して得られるポリオレフィン化合物などが挙げられる。
【0030】
前記マトリックスは、上記構造式(1)で表されるモノマーのX及びZのいずれかと反応して結合可能な有機基を有することが好ましい。
前記反応とは、共有結合を形成することを示し、重合反応、付加反応、置換反応が好ましく、重合反応、付加反応がより好ましい。例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸のエステル化合物やアミド化合物のラジカル重合反応、エポキシ化合物やオキセタン化合物などの開環重合反応、エポキシ化合物に対するカルボン酸の付加反応、酸無水物の付加反応、アミン化合物の付加反応、水酸基の付加反応などが挙げられる。
このような結合可能な有機基としては、例えば、Xと結合できるラジカル重合可能な有機基としては、例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、スチリル基、α−置換スチリル基、ビニル基、アリル基、マレイン酸基、無水マレイン酸基、マレイン酸アミド基、などが挙げられる。これらの中でも、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルアミノ基、メタクリロイルアミノ基、スチリル基、ビニル基、アリル基が特に好ましい。
Zと結合できるカチオン重合可能な有機基としては、例えば、オキシラン基、オキセタン基、プロピレンカーボネート基、ブチルカーボネート基、γ−ブチロラクトン基、γ−ブチロラクタム基、カルボン酸基、酸無水物、水酸基などが挙げられる。これらの中でも、オキシラン基、オキセタン基が特に好ましい。
【0031】
上記X及びZのいずれかと反応して結合可能な有機基を有するマトリックスを形成させる方法としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、マトリックスがポリウレタン化合物の場合は、アルコール化合物とイソシアネート化合物に水酸基、酸無水物、アミノ基、イソシアネート基を有するラジカル重合性化合物、或いは水酸基、酸無水物、イソシアネート基を有する開環重合可能な化合物を添加することで、上記のマトリックスを得ることができる。またマトリックスがポリエーテル化合物の場合は、オキシラン化合物にラジカル重合性基を有するオキシラン化合物を共存させた状態で開環重合させることにより、上記のマトリックスを得ることができる。また、ポリオレフィン化合物である場合は、多官能モノマーを用いて一部の重合性部位を残した状態で重合を止めることにより、重合性基を含有した不飽和酸のエステル化合物の重合体化合物を得ることができ、またオキシランなどの開環重合性可能な不飽和酸のエステル化合物の共重合体を形成させることにより、オキシラン部位を有するポリオレフィン化合物を形成させることができる。
【0032】
前記マトリックスの前記ホログラフィック記録用組成物における含有量は、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。前記含有量が10質量%未満であると、安定な干渉像が得られないことがあり、95質量%を超えると、回折効率の点で望ましい性能が得られないことがある。
【0033】
<光重合開始剤>
前記光重合開始剤としては、光によって化学反応を起こす開始種になりうるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ラジカル重合開始剤及び開環重合開始剤のいずれかもしくは両方を含むことが好ましい。この場合、前記光重合開始剤が、2種以上の光重合性開始剤の混合物からなり、該混合物が少なくとも1種のラジカル重合開始剤と、少なくとも1種の開環重合開始剤とを含むことがより好ましい。
【0034】
前記ラジカル重合開始剤としては、記録光に感度を有するものであれば特に制限はなく、光照射によりラジカル重合を引き起こす材料などが挙げられる。
前記ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ベンゾイン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−2−オン、ベンゾフェノン、チオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルアシルホスフィンオキシド、トリフェニルブチルボレートテトラエチルアンモニウム、ビス(η−5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)、ビス〔2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)フェニルチタニウム〕、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、照射する光の波長に合わせて後述する増感色素を併用してもよい。
【0035】
前記開環重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4,4’−ジ−t−ブチルジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−ジエチルアミノフェニルベンゼンジアゾニウムヘキサフルオロホスフェート、ジフェニル−4−フェニルチオフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、照射する光の波長に合わせて後述する増感色素を併用してもよい。
【0036】
前記光重合開始剤の前記ホログラフィック記録用組成物における含有量は、0.01〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましい。
【0037】
前記ホログラフィック記録用組成物には、必要に応じて増感色素を添加することもできる。該増感色素としては、「Research Disclosure,Vol.200,1980年12月、Item 20036」や「増感剤」(p.160〜p.163、講談社;徳丸克己・大河原信/編、1987年)等に記載された公知の化合物を使用することができる。
前記増感色素としては、具体的には、特開昭58−15603号公報に記載の3−ケトクマリン化合物、特開昭58−40302号公報に記載のチオピリリウム塩、特公昭59−28328号公報、同60−53300号公報に記載のナフトチアゾールメロシアニン化合物、特公昭61−9621号公報、同62−3842号公報、特開昭59−89303号公報、同60−60104号公報に記載のメロシアニン化合物が挙げられる。
また、「機能性色素の化学」(1981年、CMC出版社、p.393〜p.416)や「色材」(60〔4〕212−224(1987))等に記載された色素も挙げることができる。具体的には、カチオン性メチン色素、カチオン性カルボニウム色素、カチオン性キノンイミン色素、カチオン性インドリン色素、カチオン性スチリル色素が挙げられる。
更に、クマリン(ケトクマリン又はスルホノクマリンも含まれる)色素、メロスチリル色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等のケト色素;非ケトポリメチン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アントラセン色素、ローダミン色素、アクリジン色素、アニリン色素、アゾ色素等の非ケト色素;アゾメチン色素、シアニン色素、カルボシアニン色素、ジカルボシアニン色素、トリカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素等の非ケトポリメチン色素;アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、キノリン色素、チアゾール色素等のキノンイミン色素、などが挙げられる。
前記増感色素は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
前記その他の成分としては、ホログラフィック記録用組成物の貯蔵安定性を改良する目的で重合禁止剤や酸化防止剤を加えてもよい。
前記重合禁止剤又は酸化防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ターシヤリ−ブチルフェノール)、トリフェルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト,フェノチアジン、N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
前記重合禁止剤又は酸化防止剤の添加量は、前記記録モノマーの全量に対して3質量%以下が好ましい。前記添加量が3質量%を超えると、重合が遅くなるか、著しい場合は重合しなくなることがある。
【0039】
前記ホログラフィック記録用組成物には、該ホログラフィック記録用組成物からなる記録層の感度を向上させる目的で光熱変換材料を含有させることもできる。
前記光熱変換材料としては、特に制限はなく、目的とする機能や性能に応じて適宜選択することができ、例えば、フォトポリマーとともに記録層へ添加する際の簡便さや、入射光の散乱などを引き起こさないといった特性から、有機染料色素が好ましく、また、記録に用いる光源の光を吸収、散乱しないといった点において、赤外線吸収色素が好ましい。
前記赤外線吸収色素は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カチオン性色素、錯塩形成色素、キノン系中性色素などが好適である。また、前記赤外線吸収色素の極大吸収波長としては、600〜1,000nmの範囲が好ましく、700〜900nmの範囲がより好ましい。
前記赤外線吸収色素の含有量は、作製した記録材料において、赤外領域で最も吸光度が高い波長の吸光度で決定され。該吸光度としては、0.1〜2.5の範囲が好ましく、0.2〜2.0の範囲がより好ましい。
なお、前記ホログラフィック記録用組成物には、更に必要に応じて、重合時の体積変化を緩和するため、重合成分とは逆方向へ拡散する成分を添加してもよく、或いは、酸開裂構造を有する化合物を重合体のほかに別途添加してもよい。
【0040】
(ホログラフィック記録用組成物の製造方法)
本発明のログラフィック記録用組成物の製造方法は、マトリックスを形成するマトリックス形成工程と、該マトリックス及び上記構造式(1)で表されるモノマーに光を照射してラジカル重合及び開環重合させることにより、情報の記録及び記録の定着を行う記録定着工程とを含んでなり、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0041】
前記マトリックスの形成工程では、それぞれの化合物を一度に添加しても、順次添加してもよいが、作製方法の簡便さから一度に添加することが好ましい。
前記記録定着工程では、前記ホログラフィック記録用組成物は情報の記録定着方法として2つの段階を経る。一つは情報の記録であり、もう一つは記録の定着である。ここでの定着とは、上記構想式(1)で表されるモノマーを重合させること、或いは記録した際にできるポリマーをマトリックスと結合させることを意味する。これにより、更なる情報の記録がなされることが防止され、記録された情報の保存性が向上する。例えば、長波の光でラジカルを発生するラジカル重合で情報の記録を行い、短波な光による開環重合で定着することができる。或いは逆に長波の光による開環重合で情報の記録を行い、短波な光によるラジカル重合で定着することができる。
【0042】
本発明のホログラフィック記録用組成物は、情報を含んだ光の照射によって該情報の記録を行える各種のホログラフィック記録用組成物に利用可能であって、特に、ボリュームホログラフィック記録用組成物が好ましい。
なお、ホログラフィック記録用組成物が十分低い粘度ならばキャスティングすることによって記録層を形成することができる。一方、キャスティングできないような高粘度である場合には、ディスペンサーを用いて下側基板に記録層を盛りつけ、この記録層上に上側基板で蓋をするように押し付けて、全面に広げて光記録媒体を形成することができる。
【0043】
(光記録媒体)
本発明の光記録媒体は、本発明の前記ホログラフィック記録用組成物からなるホログラフィック記録層を有し、好ましくは下側基板と、フィルタ層と、ホログラフィック記録層と、上側基板とを有してなり、反射膜、第1ギャップ層、第2ギャップ層、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
前記光記録媒体は、ホログラムの原理を利用して記録再生可能なものであれば特に制限はなく、二次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラムであってもよく、透過型及び反射型のいずれであってもよい。また、ホログラムの記録方式もいずれであってもよく、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなどでもよい。これらの中でも、体積ホログラフィック記録領域における情報の記録が、情報光及び参照光を同軸光束として体積ホログラフィック記録領域に照射し、前記情報光と前記参照光との干渉による干渉パターンによって情報を記録する、いわゆるコリニア方式が特に好ましい。
【0044】
−基板−
前記基板は、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられ、光記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものを選定する必要がある。また、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記基板材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性、コストの点から、樹脂が特に好適である。
前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が特に好ましい。
前記基板は、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基板には、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間がデータエリアになっている。アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。なお、光記録媒体がカード形状の場合には、サーボピットパターンは無くても構わない。
前記基板の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の質量が大きくなってドライブモーターに過剰な負荷をかけることがある。
【0045】
−記録層−
前記記録層は、ホログラフィを利用して情報が記録され得るものであり、本発明の前記ホログラフィック記録用組成物からなる。
前記記録層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜1,000μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。
前記記録層の厚みが、前記好ましい数値範囲であると、10〜300多重のシフト多重を行っても十分なS/N比を得ることができ、前記より好ましい数値範囲であるとそれが顕著である点で有利である。
【0046】
−反射膜−
前記反射膜は、前記基板のサーボピットパターン表面に形成される。
前記反射膜の材料としては、記録光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などを使用することが好ましい。使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などを使用することが好ましい。
なお、前記反射膜として、光を反射すると共に、追記及び消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用い、ホログラムをどのエリアまで記録したかとか、いつ書き換えたかとか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったかなどのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記及び書き換えすることも可能となる。
前記反射膜の形成は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等の点で優れている。
前記反射膜の厚みは、十分な反射率を実現し得るように、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0047】
−第1ギャップ層−
前記第1ギャップ層は、必要に応じて前記フィルタ層と前記反射膜との間に設けられ、下側基板表面を平滑化する目的で形成される。また、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するのにも有効である。即ち、前記記録層は、記録用参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、前記記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
前記第1ギャップ層は、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成したものを使用する場合には、該透明基材が第1ギャップ層としても働くことになる。
前記第1ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0048】
−フィルタ層−
前記フィルタ層は、前記基板のサーボピット上、前記反射層上又は第一ギャップ層上に設けられる。
前記フィルタ層は、複数種の光線の中から特定の波長の光のみを反射する、波長選択反射機能を有し、第一の光を透過し、第二の光を反射する。特に、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能もあり、前記光記録媒体に前記フィルタ層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録が得られる。
前記フィルタ層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ダイクロイックミラー層、色材含有層、誘電体蒸着層、単層又は2層以上のコレステリック層及び必要に応じて適宜選択したその他の層の少なくともいずれかを積層した積層体により形成される。
前記フィルタ層は、直接記録層など共に、前記基板上に塗布などにより積層してもよく、フィルム等の基材上に積層してフィルタ層を作製し、これを基板上に積層してもよい。
【0049】
−第2ギャップ層−
前記第2ギャップ層は、必要に応じて記録層とフィルタ層との間に設けられる。
前記第2ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、又は、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものが好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、及び商品名ゼオノアが特に好ましい。
前記第2ギャップ層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0050】
ここで、本発明の光記録媒体について、図面を参照して更に詳しく説明する。
<第一の実施形態>
図1は、本発明の第一の実施形態における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この第一の実施形態に係る光記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂製基板又はガラス基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図1では下側基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1750Å(175nm)であり、基板を始め他の層の厚みに比べて充分に小さいものである。
第1ギャップ層8は、紫外線硬化樹脂等の材料を下側基板1の反射膜2上にスピンコート等により塗布して形成される。第1ギャップ層8は、反射膜2を保護すると共に、記録層4内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。つまり、記録層4において記録用参照光と情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるため、記録層4とサーボピットパターン3との間にギャップを設けると有効である。
第1ギャップ層8上にはフィルタ層6が設けられ、該フィルタ層6と上側基板5(ポリカーボネート樹脂基板やガラス基板)によって記録層4を挟むことによって光記録媒体21が構成される。
図1において、フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録及び再生用参照光は緑色又は青色の光であるので、フィルタ層6を透過せず、反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層した多層蒸着膜である。
この多層蒸着膜からなるフィルタ層6は、第1ギャップ層8上に真空蒸着により直接形成してもよいし、基材上に多層蒸着膜を形成したフィルムを光記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。
本実施形態における光記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。カード形状の場合にはサーボピットパターンは無くてもよい。また、この光記録媒体21では、下側基板1は0.6mm、第1ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は2〜3μm、記録層4は0.6mm、上側基板5は0.6mmの厚みであって、合計厚みは約1.9mmとなっている。
【0051】
次に、図3を参照して、光記録媒体21周辺での光学的動作を説明する。まず、サーボ用レーザーから出射した光(赤色光)は、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、対物レンズ12を通過する。対物レンズ12によってサーボ用光は反射膜2上で焦点を結ぶように光記録媒体21に対して照射される。つまり、ダイクロイックミラー13は緑色や青色の波長の光を透過し、赤色の波長の光をほぼ100%反射させるようになっている。光記録媒体21の光の入出射面Aから入射したサーボ用光は、上側基板5、記録層4、フィルタ層6、及び第1ギャップ層8を通過し、反射膜2で反射され、再度、第1ギャップ層8、フィルタ層6、記録層4、及び上側基板5を透過して入出射面Aから出射する。出射した戻り光は、対物レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、サーボ情報検出器(不図示)でサーボ情報が検出される。検出されたサーボ情報は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スライドサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。また、サーボ用光の反射膜2による戻り光は、ダイクロイックミラー13によってほぼ100%反射するようになっているので、サーボ用光が再生像検出のためのCMOSセンサ又はCCD14で検出されることはなく、再生光に対してノイズとなることもない。
また、記録用/再生用レーザーから生成された情報光及び記録用参照光は、偏光板16を通過して線偏光となり、ハーフミラー17を通過して1/4波長板15を通った時点で円偏光になる。ダイクロイックミラー13を透過し、対物レンズ12によって情報光と記録用参照光が記録層4内で干渉パターンを生成するように光記録媒体21に照射される。情報光及び記録用参照光は入出射面Aから入射し、記録層4で干渉し合って干渉パターンをそこに生成する。その後、情報光及び記録用参照光は、記録層4を通過し、フィルタ層6に入射するが、該フィルタ層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。つまり、情報光と記録用参照光は反射膜2までは到達しない。フィルタ層6は高屈折率層と低屈折率層とを交互に複数積層した多層蒸着層であり、赤色光のみを透過する性質を有するからである。
【0052】
<第二の実施形態>
図2は、本発明の第二の実施形態における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この第二の実施形態に係る光記録媒体22では、ポリカーボネート樹脂又はガラス基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3表面にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1750Å(175nm)である点については、第一の実施形態と同様である。
第二の実施形態と第一の実施形態の構造の差異は、第二の実施形態に係る光記録媒体22では、フィルタ層6と記録層4との間に第2ギャップ層7が設けられていることである。この第2ギャップ層7は、情報光及び再生光がフォーカシングするポイントが存在する。このエリアをフォトポリマーで埋めていると過剰露光によるモノマーの過剰消費が起こり多重記録能が下がってしまう。そこで、無反応で透明な第2ギャップ層を設けることが有効となる。
高屈折率層と低屈折率層とを交互に複数積層した多層蒸着膜であるフィルタ層6は、第1ギャップ層8を形成した後、該第1ギャップ層8上に形成され、前記第一実施形態と同様のものを用いることができる。
また、第二実施形態の光記録媒体22では、下側基板1は1.0mm、第1ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は3〜5μm、第2ギャップ層7は70μm、記録層4は0.6mm、上側基板5は0.4mmの厚みであって、合計厚みは約2.2mmとなっている。
【0053】
次に、情報の記録又は再生を行う場合、上記のような構造を有する第二実施形態の光記録媒体22に対して、赤色のサーボ用光及び緑色の情報光並びに記録及び再生用参照光が照射される。サーボ用光は、入出射面Aから入射し、記録層4、第2ギャップ層7、フィルタ層6、及び第1ギャップ層8を通過して反射膜2で反射して戻り光となる。この戻り光は、再度、第1ギャップ層8、フィルタ層6、第2ギャップ層7、記録層4及び上側基板5をこの順序で通過して、入出射面Aより出射する。出射した戻り光は、フォーカスサーボやトラッキングサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。緑色の情報光等は、入出射面Aから入射し、記録層4、第2ギャップ層7を通過して、フィルタ層6で反射して戻り光となる。この戻り光は、再度、第2ギャップ層7、記録層4及び上側基板5をこの順序で通過して、入出射面Aより出射する。また、再生時についても再生用参照光はもちろん、再生用参照光を記録層4に照射することによって発生する再生光も反射膜2に到達せずに入出射面Aから出射する。なお、光記録媒体22周辺(図3における対物レンズ12、フィルタ層6、検出器としてのCMOSセンサ又はCCD14)での光学的動作は、第一の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0054】
(光記録媒体の記録方法及び光記録媒体の再生方法)
本発明の光記録媒体の記録方法は、可干渉性を有する情報光及び参照光を本発明の前記光記録媒体に照射し、前記情報光と前記参照光とにより干渉像を形成し、該干渉像を前記光記録媒体の記録層に記録する。
この場合、情報光の光軸と参照光の光軸とが同軸となるように、光記録媒体に前記情報光及び前記参照光を照射し、該情報光と該参照光との干渉により生成される干渉像を前記光記録媒体の記録層に記録する。
本発明の光記録媒体の再生方法は、本発明の前記光記録媒体の記録方法により記録層に記録された干渉パターンに参照光を照射して情報を再生する。
【0055】
本発明の光記録媒体の記録方法及び光記録媒体の再生方法では、上述したように、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉パターンを利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。一方、書き込んだ情報を読み出す(再生する)際には、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光として記録層から出射される。
本発明の光記録媒体の記録方法及び再生方法は、以下に説明する本発明の光記録再生装置を用いて好適に行われる。
【0056】
本発明の光記録媒体の記録方法及び再生方法に使用される光記録再生装置について、図4を参照して説明する。
この光記録再生装置100は、光記録媒体20が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体20の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。
また、光記録再生装置100は、光記録媒体20に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録すると共に、光記録媒体20に対して再生用参照光を照射し、再生光を検出して、光記録媒体20に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
光記録再生装置100は、ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を光記録媒体20の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体20の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0057】
光記録再生装置100は、更に、ピックアップ31内の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、光記録媒体20のデータエリアに記録されたデータを再生したり、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して種々の指示を与える操作部91とを備えている。コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、及びスライドサーボ回路88等を制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現するようになっている。
【0058】
本発明の光記録媒体の記録方法及び再生方法に使用される光記録再生装置は、本発明の前記光記録媒体を用いているので、記録の熱に対する保存性に優れ、高密度記録を実現することができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
(実施例1)
−ホログラフィック記録用組成物の調製−
ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート(東京化成株式会社製)31.5g、ポリプロピレンオキサイドトリオール(分子量1,000)61.2g、2,3−エポキシ−1−プロパノール(和光純薬株式会社製)2.5g、下記構造式で表されるモノマー(M−1)3.1g、ラジカル重合開始剤(チバ・スペシャルケミカル社製、イルガキュア784)0.69g、ジブチルジラウレートスズ(和光純薬株式会社製)1.01g、及び開環重合開始剤(チバ・スペシャルケミカル社製、イルガキュア250、75質量%プロピルカーボネート溶液)0.43gを窒素気流下で混合し、ホログラフィック記録用組成物を調製した。
【化16】

【0061】
(実施例2)
−ホログラフィック記録用組成物の調製−
実施例1において、モノマー(M−1)の代わりに下記構造式で表されるモノマー(M−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ホログラフィック記録用組成物を調製した。
【化17】

【0062】
(実施例3)
−ホログラフィック記録用組成物の調製−
実施例1において、モノマー(M−1)の代わりに下記構造式で表されるモノマー(M−18)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ホログラフィック記録用組成物を調製した。
【化18】

【0063】
(実施例4)
−ホログラフィック記録用組成物の調製−
実施例1において、モノマー(M−1)の代わりに下記構造式で表されるモノマー(M−15)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ホログラフィック記録用組成物を調製した。
【化19】

【0064】
(実施例5)
−ホログラフィック記録用組成物の調製−
実施例1において、モノマー(M−1)の代わりに下記構造式で表されるモノマー(M−4)を用いた以外は、実施例1と同様にして、ホログラフィック記録用組成物を調製した。
【化20】

【0065】
(比較例1)
−ホログラフィック記録用組成物の調製−
ビスシクロヘキシルメタンジイソシアネート(東京化成株式会社製)31.5g、ポリプロピレンオキサイドトリオール(分子量1,000)61.2g、テトラメチレングリコール2.5g、モノマーとしての2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート3.1g、光重合開始剤(チバ・スペシャルケミカル社製、イルガキュア784)0.69g、及びジブチルジラウレートスズ(和光純薬株式会社製)1.01gを窒素気流下で混合して、ホログラフィック記録用組成物を調製した。
【0066】
(実施例6〜10及び比較例2)
−光記録媒体の作製−
厚み0.5mmのガラスの片面に532nmの波長に対して垂直な入射光による反射率が0.1%となるように反射防止処理を施して、第一基板を作製した。
厚み0.5mmのガラスの片面に532nmの波長に対して垂直な入射光による反射率が90%となるようにアルミニウム蒸着処理を施して、第二基板を作製した。
次に、第一基板の反射防止処理を施していない側の面に、厚み500μmの透明ポリエチレンテレフタレートシートをスぺーサーとして設けた。
次いで、実施例1〜5及び比較例1の各ホログラフィック記録用組成物を、それぞれ第一基板上に盛り付け、第二基板のアルミニウム蒸着した面をホログラフィック記録用組成物上に空気を巻き込まないように重ね合わせ、スぺーサーを介して第一基板と第二基板と貼合させた。その後、45℃にて24時間放置して、実施例6〜10及び比較例2の各光記録媒体を作製した。
【0067】
<記録及び評価>
作製した各光記録媒体について、コリニアホログラム記録再生試験機(パルステック工業株式会社製、SHOT−1000)を用い、記録ホログラムの焦点位置における記録スポットの大きさ(直径200μm)でホログラムを書き込み、UV照射機(ウシオ株式会社製、HB−25103BY型)によって記録の定着(熱線カットフィルターHA50、露光時間10分、光強度1.5mJ/cm)を行った。その後、以下のようにして、記録保存性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
−記録保存性の評価−
ホログラムを書き込んだ各光記録媒体を85℃のオーブンに24時間放置し、再び、コリニアホログラム記録再生試験機(パルステック工業株式会社製、SHOT−1000)にて記録の明るさを評価した。初期の明るさをμON0h、24時間後のμON24hとすると、記録の保存性は、下記数式1で示す残存率として表される。
<数式1>
残存率(%)=(μON24h/μON24h)×100
【0069】
【表1】

表1の結果から、実施例1〜5のホログラフィック記録用組成物を用いた実施例6〜10の各光記録媒体は、比較例1のホログラフィック記録用組成物を用いた比較例2の光記録媒体に比べて、より記録の熱に対する保存性が高いことが認められる。
ここで、記録光の読み取り許容な閾値は記録データの正確性を考慮すると、残存率70%が実用レベルの限界であると考えられるため、比較例2は残存率が60%であり、記録の保存性が低いものである。これに対し、実施例6〜10は残存率が85%以上であり、閾値を大きく超えているので記録の保存性が高いことが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の光記録用組成物は、熱に対する保存安定性に優れ、高密度画像記録が可能なボリュームホログラム型の各種光記録媒体に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、本発明による第一の実施形態に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明による第二の実施形態に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明による光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図4】図4は、本発明の光記録媒体を搭載した光記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0072】
1 下側基板
2 反射膜
3 サーボビットパターン
4 記録層
5 上側基板
6 フィルタ層
7 第2ギャップ層
8 第1ギャップ層
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 検出器
15 1/4波長板
16 偏光板
17 ハーフミラー
20 光記録媒体
21 光記録媒体
22 光記録媒体
31 ピックアップ
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカスサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記構造式(1)で表されるモノマーを含有することを特徴とするホログラフィック記録用組成物。
【化1】

ただし、前記構造式(1)中、Xはラジカル重合可能な有機基を表す。Yは2価以上の有機連結基を表す。Zは開環重合可能な有機基を表す。n及びmは、それぞれ1以上の整数を表す。
【請求項2】
構造式(1)におけるXが、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミノ基及びスチリル基のいずれかである請求項1に記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項3】
構造式(1)におけるZが、オキシラン基及びオキセタン基のいずれかである請求項1から2のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項4】
構造式(1)におけるYが、少なくとも1つのベンゼン骨格を含む2価以上の有機連結基である請求項1から3のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項5】
更にマトリックス及び光重合開始剤を含有する請求項1から4のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項6】
マトリックスが、構造式(1)で表されるモノマーのX及びZのいずれかと反応して結合可能な有機基を有する請求項5に記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項7】
マトリックスにおける結合可能な有機基が、ラジカル重合可能な有機基及びカチオン重合可能な有機基のいずれかである請求項6に記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項8】
光重合開始剤が2種以上の光重合開始剤の混合物からなり、該混合物が少なくとも1種のラジカル重合開始剤と、少なくとも1種の開環重合開始剤とを含む請求項5から7のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項9】
構造式(1)で表されるモノマーのホログラフィック記録用組成物における含有量が1〜50質量%である請求項1から8のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物を製造する方法であって、
マトリックスを形成するマトリックス形成工程と、
得られたマトリックス及び下記構造式(1)で表されるモノマーに光を照射してラジカル重合及び開環重合させることにより、情報の記録及び記録の定着を行う記録定着工程とを含むことを特徴とするホログラフィック記録用組成物の製造方法。
【化2】

ただし、前記構造式(1)中、Xはラジカル重合可能な有機基を表す。Yは2価以上の有機連結基を表す。Zは開環重合可能な有機基を表す。n及びmは、それぞれ1以上の整数を表す。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載のホログラフィック記録用組成物からなるホログラフィック記録層を有することを特徴とする光記録媒体。
【請求項12】
下側基板と、フィルタ層と、ホログラフィック記録層と、上側基板とを有する請求項11に記載の光記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図4】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−187968(P2007−187968A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−7168(P2006−7168)
【出願日】平成18年1月16日(2006.1.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】