説明

ホワイトバランス調整装置

【課題】 画像信号の記録媒体への記録動作が開始されるまでの時間を短縮するとともに、記録媒体に記録される画像信号に対応したホワイトバランス調整を行なう。
【解決手段】 レリーズ半押しスイッチがオン状態に定められたとき(ステップ101)、測光動作を行ない、測光データを得る(ステップ102)。測光データに基いて絞りの開度とCCDの電荷蓄積時間を決定する(ステップ103)。レリーズ半押しスイッチがオン状態に維持され(ステップ104)、かつレリーズ全押しスイッチがオン状態に切換えられたと判定したとき(ステップ105)、CCDを所定のシャッタ時間だけ露光して画像信号を生成し、フィールドメモリに格納する(ステップ106)。画像信号をフィールドメモリから読み出し、この画像信号に基いてホワイトバランス調整の係数(ゲイン)を求める(ステップ107)。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はデジタルカメラに関し、特に撮影動作によって得られたカラー画像に対してホワイトバランス調整を行なうための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来デジタルカメラでは、撮像素子によって得られたカラー画像に対応した画像信号は、レリーズボタンを半押しした状態で、信号処理回路において画像処理され、これによりホワイトバランス調整のためのデータが測定されてホワイトバランス調整の係数(ゲイン)が求められる。このようにホワイトバランス調整の係数は、レリーズボタンが全押しされる前、すなわち動画モニタを行なっている間に求められる。その後、レリーズボタンが全押しされると、そのとき撮像素子を介して得られた画像信号が一旦フィールドメモリに格納される。そして、この画像信号はフィールドメモリから読み出され、信号処理回路において、係数を乗じられることによりホワイトバランス調整が施される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このように従来、シャッターボタンを全押しする前にホワイトバランス調整の係数が演算されるため、画像信号の記録媒体への記録動作が開始されるまでの時間が長くなり、所望の被写体像が記録できないことがあった。また記録媒体に記録された画像信号に乗じられるホワイトバランス調整の係数は、その画像信号よりも数フィールド分だけ前に撮像素子において生じたカラー画像に基いて得られたものであるため、ホワイトバランス調整の係数が、記録された画像信号に正確には対応していないという問題があった。
【0004】本発明は、画像信号の記録媒体への記録動作が開始されるまでの時間を短縮するとともに、記録媒体に記録される画像信号に対応したホワイトバランス調整を行なうことができるホワイトバランス調整装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1のホワイトバランス調整装置は、撮影動作によって得られたカラー画像に対応した画像信号を生成する撮像素子と、画像信号を第1のメモリに記録する第1の記録手段と、第1のメモリから画像信号を読み出し、この画像信号に基いてホワイトバランス調整を行なうとともに、ホワイトバランス調整された画像信号を第2のメモリに記録する第2の記録手段とを備えたことを特徴としている。
【0006】第1および第2の記録手段による画像信号の記録動作は例えば、シャッターボタンの1回の全押しによって実行される。
【0007】第1のメモリは例えば、1画像分の画像信号を格納可能なフィールドメモリであり、第2のメモリは例えば、画像信号を圧縮して格納することができる容量を有するフラッシュメモリである。
【0008】本発明に係る第2のホワイトバランス調整装置は、撮影動作によって得られたカラー画像に対応した画像信号を生成する撮像素子と、シャッターボタンを全押しすることによって、撮像素子から画像信号を読み出して第1のメモリに記録した後、この第1のメモリから画像信号を読み出すとともにホワイトバランス調整を行なって第2のメモリに記録する画像信号記録手段とを備えたことを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態を適用したデジタルカメラの外観を示している。
【0010】カメラ本体10の上面にはシャッターボタン11が設けられ、また前面には、撮影レンズ12とストロボ13と測光窓14が設けられている。測光窓14の背面すなわちカメラ本体10の中には、測光センサ(図示せず)が設けられている。
【0011】図2はカメラ本体10内に設けられる電気回路等の構成を示すブロック図である。このカメラの動作はマイクロコンピュータを備えた制御回路20によって制御される。
【0012】撮影レンズ12の後側には絞り21が配設され、絞り21の後側には撮像素子(CCD)22が設けられている。絞り21の開度とCCD22の電荷蓄積時間は、測光センサ41によって得られた測光データに基いて決定される。絞り21の開度は絞り駆動回路23によって調整され、CCD22の電荷蓄積時間はCCD駆動回路24によって制御される。これによりCCD22の受光面における受光量が制御される。
【0013】CCD22において発生した被写体像のカラー画像信号は、CCD駆動回路24の制御に基いてCCD22から読み出される。この画像信号は相関二重サンプリング(CDS)回路25において相関二重サンプリング等の処理を施され、A/D変換器26においてデジタル信号に変換される。CCD駆動回路24、CDS回路25およびA/D変換器26の動作はタイミングジェネレータ27から出力されるパルス信号に従って制御される。タイミングジェネレータ27と絞り駆動回路23は、制御回路20によって制御される。
【0014】デジタル信号に変換された画像信号は一旦フィールドメモリ31に格納される。すなわちフィールドメモリ31は、少なくとも1画像分(1フィールド分)の画像信号を格納可能な容量を有している。
【0015】画像信号はフィールドメモリ31から読み出され、信号処理回路32において、ホワイトバランス調整を施されるとともに、例えば輝度信号と色差信号に変換される。そしてこの画像信号は、制御回路20において圧縮され、フラッシュメモリ33に格納される。すなわちフラッシュメモリ33は、圧縮された画像信号を格納するのに十分な容量を有している。
【0016】画像信号のフィールドメモリ31に対する書き込みと読み出しの制御は、フィールドメモリコントローラ34によって行なわれ、フィールドメモリコントローラ34の動作はタイミングジェネレータ27と制御回路20によって行なわれる。また圧縮画像信号のフラッシュメモリ33に対する書き込みと読み出しの制御は、フラッシュメモリコントローラ35によって行なわれ、フラッシュメモリコントローラ35の動作は制御回路20によって制御される。
【0017】圧縮画像信号はフラッシュメモリ33から読み出され、制御回路20において伸張されて一旦フィールドメモリ31に格納される。伸張された画像信号(すなわち静止画像信号)は、フィールドメモリ31から読み出され、信号処理回路32においてコンポジット信号に変換される。このコンポジット信号はD/A変換器36においてアナログ信号に変換され、ビデオアンプ37において増幅されてビデオ信号として外部のビデオ装置(図示せず)に出力される。
【0018】一方、CCD22から読み出されてCDS回路25において処理され、A/D変換器26から出力された画像信号は、信号処理回路32において信号処理を施された後、D/A変換器36とビデオアンプ37を介してビデオ装置に出力可能であり、これにより動画がビデオ装置によって表示される。
【0019】制御回路20には、上述した各回路の他、ストロボ回路38と測光回路39が接続されている。ストロボ13の発光動作はストロボ回路38によって制御される。測光センサ41の測光動作は測光回路39によって制御され、測光センサ41からの出力信号は制御回路20に転送される。
【0020】また制御回路20には、表示部42と電源回路43が接続されている。表示部42は、このカメラの種々の状態、例えば撮影可能な画像の枚数、セルフタイマの動作状態、ストロボ13の動作モード等を表示するために設けられている。電源回路43は上述した各回路に所定の電圧を印加するために設けられている。
【0021】さらに制御回路20には、パワースイッチ44とレリーズ全押しスイッチ45とレリーズ半押しスイッチ46が接続されている。パワースイッチ44は図示しない電源ボタンを押下することによってオン状態になり、これにより電源回路43に電力が供給される。レリーズ全押しスイッチ45とレリーズ半押しスイッチ46はシャッターボタン11(図1)をそれぞれ全押し、半押しすることによってオン状態に定められる。
【0022】さて被写体に対する照明光の色温度に応じて、撮影により得られる画像の色合いが変化し、色温度が高くなるほど画像は青味がかり、色温度が低くなるほど画像は赤味がかる。本実施形態では、次に述べるように、フィールドメモリ31から読み出された画像信号に含まれる色差信号の大きさに基いて、ホワイトバランス調整を行なった後、圧縮画像信号をフラッシュメモリ33に格納している。
【0023】図3および図4は,撮影によって得られた画像信号をフラッシュメモリ33(図1参照)に記録する動作を実行するプログラムのフローチャートである。図5は、撮影によって得られた画像を示す図である。図2〜図5を参照して、本実施形態による撮影動作説明する。
【0024】このプログラムは、パワースイッチ44がオン状態に切換えられることにより開始する。ステップ101では、レリーズ半押しスイッチ46がオン状態に定められたか否かが判定される。レリーズ半押しスイッチ46がオフ状態であるとき、ステップ101は繰り返し実行され、レリーズ半押しスイッチ46がオン状態に切り換えられたとき、ステップ102へ進む。
【0025】ステップ102では、測光センサ41による測光動作が行なわれ、測光データが得られる。ステップ103では、測光データに基いて絞り21の開度とCCD22の電荷蓄積時間(すなわちシャッタースピード)が決定される。ステップ104では、再びレリーズ半押しスイッチ46がオン状態に維持されているか否かが判定される。ステップ104においてレリーズ半押しスイッチ46がオフ状態に切り換えられたと判定されたとき、ステップ101へ戻るが、レリーズ半押しスイッチ46がオン状態を維持していると判定されたとき、ステップ105へ進む。
【0026】ステップ105はレリーズ全押しスイッチ45がオン状態になるまで繰り返し実行される。レリーズ全押しスイッチ45がオン状態に切換えられると、ステップ106が実行される。すなわち、CCD22が所定のシャッタ時間だけ露光されて画像信号が生成され、この画像信号はCDS回路25およびA/D変換器26において処理されてフィールドメモリ31に格納される。
【0027】ステップ107では、ホワイトバランス調整のサブルーチンが実行される。すなわち画像信号がフィールドメモリ31から読み出され、この画像信号に基いてホワイトバランス調整の係数(ゲイン)が求められる。なお、この処理については、図6を参照して後述する。
【0028】ステップ112では、カウンタNが1に設定される。図5に示されるように、画像は水平線によってM個の領域に等分割されており、ステップ113〜118では第N領域の画像信号が処理される。
【0029】ステップ113では、第N領域の画像信号がフィールドメモリ31から読み出され、ステップ114において信号処理回路32へ入力される。ステップ115では、第N領域の画像信号は信号処理回路32において信号処理され、ホワイトバランス調整の係数が乗じられるとともに、輝度信号と色差信号に変換される。この信号処理の後、第N領域の画像信号はステップ116において制御回路20に入力され、ステップ117において圧縮処理を施される。圧縮された第N領域の画像信号は、ステップ118においてフラッシュメモリ33に記録される。
【0030】ステップ120では、カウンタNの値が全領域数Mに等しいか否か、すなわち全ての領域の画像信号がフラッシュメモリ33に記録されたか否かが判定される。カウンタNの値が全領域数Mに達していないとき、ステップ119においてカウンタNが1だけインクリメントされ、ステップ113へ戻る。これに対し、カウンタNの値が全領域数Mに達しているとき、このプログラムは終了する。
【0031】図6はホワイトバランス調整の係数(ゲイン)を求めるサブルーチンのフローチャートである。なお、このサブルーチンが開始される前、赤色成分(R)に関するホワイトバランス調整のゲイン(以下、Rのゲインという)と、青色成分(B)に関するホワイトバランス調整のゲイン(以下、Bのゲインという)は、共に初期値に設定されている。
【0032】ステップ201では、画像信号がフィールドメモリ31から読み出され、信号処理回路32に転送される。この場合、1画像の全ての画像信号を信号処理回路32に転送してもよく、また1画像の一部の画像信号を信号処理回路32に転送してもよい。ステップ202では、信号処理回路32において、画像信号の全てに関して色差信号(R−Y)の積分値が求められるとともに、制御回路20に転送される。ステップ203でも同様に、色差信号(B−Y)の積分値が求められて制御回路20に転送される。
【0033】ステップ204では、色差信号(R−Y)、(B−Y)の積分値が共に、所定の基準範囲内にあるか否かが判定される。これらの積分値が共に基準範囲内にあるとき、RのゲインとBのゲインはこれ以上修正する必要がないので、このサブルーチンは直ちに終了する。これに対して、これらの積分値が共に基準範囲内にないとき、ステップ205以下が実行されてRとBのゲインが調整される。
【0034】色差信号(R−Y)の積分値と色差信号(B−Y)の積分値が共に0以上であるとき、ステップ205、206の順に実行されてステップ207へ移り、色差信号(R−Y)の積分値の絶対値が色差信号(B−Y)の積分値の絶対値以上であるか否かが判定される。色差信号(R−Y)の積分値の絶対値が色差信号(B−Y)の積分値の絶対値以上であるとき、すなわち、ホワイトバランス調整に供される画像の赤味が相対的に強いとき、ステップ208において、Rのゲインが小さくされるとともにBのゲインが大きくされる。これに対し、色差信号(R−Y)の積分値の絶対値が色差信号(B−Y)の積分値の絶対値よりも小さいとき、すなわちホワイトバランス調整に供される画像の青味が相対的に強いとき、ステップ209において、Rのゲインが大きくされるとともにBのゲインが小さくされる。
【0035】ステップ208または209の実行の後、ステップ201へ戻り、上述した処理が繰り返される。そしてステップ204において、色差信号(R−Y)、(B−Y)の積分値が共に、所定の基準範囲内にあるか否かが判定され、これらの積分値が共に基準範囲内にあるとき、このサブルーチンは直ちに終了し、これらの積分値が共に基準範囲内にないとき、ステップ205以下が再び実行される。
【0036】ステップ205において色差信号(R−Y)の積分値が負であると判定されたとき、ステップ210が実行され、色差信号(B−Y)の積分値が0以上であるか否かが判定される。色差信号(B−Y)の積分値が0以上であるとき、ステップ209が実行される。これに対し、ステップ210において色差信号(B−Y)の積分値が負であると判定されたとき、すなわち色差信号(R−Y)、(B−Y)の積分値が共に負であるとき、ステップ211が実行される。すなわち、色差信号(R−Y)、(B−Y)の積分値の絶対値が比較され、色差信号(R−Y)の積分値の絶対値が色差信号(B−Y)の積分値の絶対値以上であるとき、ステップ208が実行され、色差信号(R−Y)の積分値の絶対値が色差信号(B−Y)の積分値の絶対値よりも小さいとき、ステップ209が実行される。
【0037】このようにして、ステップ204において、色差信号(R−Y)、(B−Y)の積分値が共に、所定の基準範囲内にあると判定されるまでステップ208または209が実行され、最適なRとBのゲインが求められる。
【0038】以上のように本実施形態では、フィールドメモリ31から読み出された画像信号を用いてホワイトバランス調整を行ない、この画像信号を圧縮してフラッシュメモリ33に記録している。すなわち、フラッシュメモリ33にはホワイトバランス調整が正確に施された画像信号が記録され、その後、この画像信号を再生するとできるだけ良好にホワイトバランス調整されたカラー画像を得ることができる。また本実施形態では、シャッターボタンの1回の全押しによって、ホワイトバランス調整と、画像信号のフィールドメモリ31およびフラッシュメモリ33への記録動作とが行なわれる。したがって従来装置と比べて、シャッターボタンを押してから画像信号のフラッシュメモリ33への記録動作の開始までの時間が短くなり、常に所望の被写体像を記録することが可能になる。
【0039】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、画像信号の記録媒体への記録動作が開始されるまでの時間を短縮するとともに、記録媒体に記録される画像信号に対応したホワイトバランス調整を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を適用したデジタルカメラの外観を示す斜視図である。
【図2】カメラ本体内に設けられる電気回路等の構成を示すブロック図である。
【図3】撮影動作によって得られた画像信号をフラッシュメモリに記録する動作を実行するプログラムのフローチャートの前半部分である。
【図4】図4に示すプログラムのフローチャートの後半部分である。
【図5】撮影によって得られた画像を示す図である。
【図6】ホワイトバランス調整を行なうサブルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
22 撮像素子
31 フィールドメモリ(第1のメモリ)
33 フラッシュメモリ(第2のメモリ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影動作によって得られたカラー画像に対応した画像信号を生成する撮像素子と、前記画像信号を第1のメモリに記録する第1の記録手段と、前記第1のメモリから画像信号を読み出し、この画像信号に基いてホワイトバランス調整を行なうとともに、ホワイトバランス調整された画像信号を第2のメモリに記録する第2の記録手段とを備えたことを特徴とするホワイトバランス調整装置。
【請求項2】 前記第1および第2の記録手段による画像信号の記録動作が、シャッターボタンの1回の全押しによって実行されることを特徴とする請求項1に記載のホワイトバランス調整装置。
【請求項3】 前記第1のメモリが1画像分の画像信号を格納可能なフィールドメモリであり、前記第2のメモリが前記画像信号を圧縮して格納することができる容量を有するフラッシュメモリであることを特徴とする請求項1に記載のホワイトバランス調整装置。
【請求項4】 撮影動作によって得られたカラー画像に対応した画像信号を生成する撮像素子と、シャッターボタンを全押しすることによって、前記撮像素子から画像信号を読み出して第1のメモリに記録した後、この第1のメモリから画像信号を読み出すとともにホワイトバランス調整を行なって第2のメモリに記録する画像信号記録手段とを備えたことを特徴とするデジタルカメラのホワイトバランス調整装置。

【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図2】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開平11−285011
【公開日】平成11年(1999)10月15日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−100486
【出願日】平成10年(1998)3月27日
【出願人】(000000527)旭光学工業株式会社 (1,878)