説明

ボイラ給水システム

【課題】 給水タンクへの給水を用いて圧縮機の圧縮熱を回収して、ボイラへの給水の昇温ならびに圧縮機の潤滑油の冷却を図る。
【解決手段】 補給水タンク21の水は、第一給水路27と第二給水路28とを介して、給水タンク7へ供給される。第一給水路27を介しては、給水タンク7との水頭圧差により給水タンク7へ給水されるが、逆止弁29により給水タンク7からの逆流は防止される。第二給水路28には、熱交給水ポンプ30と熱交換器22とが設けられる。熱交換器22において、第二給水路28を通る水で、圧縮機5の圧縮空気および潤滑油が冷却される。潤滑油の液温を一定に維持するように、熱交給水ポンプ30をインバータ制御して、熱交換器22へ供給する水量が調整される。補給水タンク21の水は、比較的低温であるから、圧縮機5の潤滑油を有効に冷却できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボイラへの給水システムに関するものである。典型的には、給水タンクへの給水を利用して圧縮機の圧縮熱を回収して、ボイラへの給水の昇温と、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却とを図ることのできるボイラ給水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、蒸気を用いて動力を起こすスクリュ型膨張機(1)と、このスクリュ型膨張機(1)により駆動される空気圧縮機(2)とを備える蒸気システムが開示されている。
【特許文献1】特開昭63−45403号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
圧縮機は、動作中、圧縮熱を生じる。油潤滑式の圧縮機の場合、潤滑油の温度が高すぎると、潤滑油の粘度が下がることで膜切れを起こしたり、空気が膨張して圧縮するのに不都合を来したりする。一方、潤滑油の温度が低すぎると、潤滑油の粘度が上がることで、圧縮機の駆動に動力を要することになる。さらに、ドレンの発生を防ぐためには圧縮空気の露点以下にならないようにする。そのため、潤滑油の温度を所望に維持する必要が生じる。
【0004】
前記特許出願1に開示される発明のように、スクリュ型膨張機と空気圧縮機とを備えた蒸気システムの場合、スクリュ型膨張機への蒸気供給のために、さらにボイラを備えることが想定される。その場合、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却を図るために、ボイラへの給水を利用することも考えられる。しかしながら、ボイラへの給水は断続的になされるので、単にボイラへの給水を用いるだけでは、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却を有効に図ることができないおそれがある。
【0005】
仮に、給水タンクの貯留水と、圧縮機の圧縮空気および潤滑油とを、それぞれ熱交換器に通して間接熱交換するとしても、それだけでは圧縮空気および潤滑油の温度を所望に維持することはできない。しかも、スクリュ型膨張機などの蒸気利用機器からのドレンを給水タンクに回収して省エネルギーを図ろうとする場合、給水タンク内の水は昇温するため、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却水には適さない温度となるおそれもある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、給水タンクへの給水を用いて被冷却流体の冷却を有効に図ることにある。典型的には油潤滑式の圧縮機と共に用いられ、蒸気利用機器からのドレンを給水タンクに回収してボイラへの給水の昇温を図りつつも、給水タンクへの給水を用いて圧縮機の圧縮熱を回収して、ボイラへの給水の昇温と、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却とを図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、ボイラへの給水を貯留する給水タンクと、設定範囲に水位が維持されるよう水が補給可能とされ、第一給水路と第二給水路とを介して前記給水タンクへ給水可能な一方、前記給水タンクからの逆流は防止される補給水タンクと、前記第二給水路に設けられ、前記補給水タンクからの水が通される一方、この水と間接熱交換させて冷却しようとする被冷却流体が通される熱交換器と、この熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき、前記補給水タンクから前記熱交換器へ供給する水量を調整する熱交給水量調整手段とを備えることを特徴とするボイラ給水システムである。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、給水タンクとは別に補給水タンクを設け、この補給水タンクの水で被冷却流体の冷却を図ることができる。給水タンクとは別に補給水タンクを設けることで、給水タンクにドレンを回収しても、それによって補給水タンクの水を昇温させることはなく、補給水タンクの水で被冷却流体の冷却を有効に図ることができる。また、被冷却流体の温度に基づき、熱交換器へ供給する水量を調整することで、被冷却流体を所望温度にすることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記補給水タンクから前記給水タンクへは水頭圧差により給水可能とされる一方、前記給水タンクから前記補給水タンクへは逆止弁により逆流不能とされ、前記熱交給水量調整手段は、前記熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき、回転数をインバータにより制御される熱交給水ポンプとされることを特徴とする請求項1に記載のボイラ給水システムである。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき、熱交給水ポンプをインバータ制御することで、簡易に被冷却流体を所望温度にすることができる。さらに、被冷却流体との熱交換器を介した給水だけでは給水タンク内の水量が不足する場合には、水頭圧差により給水タンクに自動的に給水される。水頭圧差を利用して補給水タンクから給水タンクへ給水することで、水位制御は補給水タンクのみで足りる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、前記熱交換器は、前記補給水タンクからの水が通される一方、油潤滑式の圧縮機から前記被冷却流体としての潤滑油および/または圧縮空気が通され、潤滑油または圧縮空気の温度に基づき、前記熱交給水量調整手段により前記熱交換器への給水量を調整することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ給水システムである。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、油潤滑式の圧縮機と共に用いられ、ボイラへの給水の昇温を図ると共に、給水タンクへの給水を用いて圧縮機の圧縮熱を回収して、ボイラへの給水の昇温と、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却とを図ることができる。しかも、圧縮機の負荷変動に合わせて、熱交換器への給水量を調整して、圧縮機の圧縮空気または潤滑油を所望温度に維持することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記給水タンクへのドレンの回収路を介して、前記熱交換器を通過後の水が前記給水タンクへ供給されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボイラ給水システムである。
【0014】
高温のドレンを直接に給水タンクに回収した場合、蒸気の吹き上げを生じる。従って、その分だけ、熱の回収率が下がることになる。これに対し、請求項4に記載の発明によれば、ドレンの回収路の中途に、熱交換器からの水が混入される。これにより、大気中へ逃げる蒸気量が軽減され、結果として、熱の回収率を向上することができる。しかも、蒸気利用機器から給水タンクへのドレン回収路と、熱交換器から給水タンクへの給水路とは、少なくとも一部において配管が共通化されるので、構成の簡素化とコストの低減とを図ることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記補給水タンクには、軟水が脱酸素装置を介して供給可能とされ、この脱酸素装置は、中空糸膜によって構成される脱気モジュールを備え、前記補給水タンク内の水位に基づき、前記脱気モジュールへの給水を切り替えることで、前記補給水タンク内の水位は設定範囲に維持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラ給水システムである。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、中空糸膜を用いた脱気モジュールからの水は、常に一旦、補給水タンクに解放される。これにより、脱気モジュールにその耐圧を超える圧力が生じることを防止できる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、前記給水タンクと前記補給水タンクとは、一つの共通タンクとして構成され、この共通タンクは、ボイラへの給水を貯留すると共に、ボイラからの蒸気のドレンが回収され、イオン交換樹脂を用いた軟水装置からの水が、補給水弁を介して前記共通タンクへ供給可能とされると共に、熱交給水ポンプおよび前記熱交換器を介して前記共通タンクへ供給可能とされ、前記共通タンク内の水位に基づき前記補給水弁を制御して、前記共通タンク内の水位は設定範囲に維持されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラ給水システムである。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、給水タンクと補給水タンクとが統一されて、一つの共通タンクから構成される。これにより、構成の簡素化を図ることができる。
【0019】
さらに、請求項7に記載の発明は、前記熱交給水量調整手段は、前記熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき開度調整される電動弁とされ、この電動弁は、前記熱交給水ポンプに代えて設けられることを特徴とする請求項6に記載のボイラ給水システムである。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、熱交給水ポンプをインバータ制御することに代えて、電動弁の開度を調整するだけでよく、原水圧を利用して、簡易な構成で給水タンクへの給水を制御することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明のボイラ給水システムによれば、給水タンクへの給水を用いて被冷却流体の冷却を有効に図ることができる。たとえば、油潤滑式の圧縮機と共に用い、蒸気利用機器からのドレンを給水タンクに回収してボイラへの給水の昇温を図りつつも、給水タンクへの給水を用いて圧縮機の圧縮熱を回収して、ボイラへの給水の昇温と、圧縮機の圧縮空気および潤滑油の冷却とを図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明のボイラ給水システムについて、実施例に基づきさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明のボイラ給水システムの実施例1を備える蒸気システムの一例を示す概略図である。この蒸気システム1において、ボイラ2への給水系統に本発明が適用されている。そのため、まず、蒸気システム1の概略について説明し、その後、そのボイラ2への給水系統である本実施例のボイラ給水システム3について説明する。
【0024】
図1に示される蒸気システム1は、ボイラ2と、このボイラ2からの蒸気を用いて動力を起こすスチームモータ4と、このスチームモータ4により駆動される圧縮機5とを備える。スチームモータ4と圧縮機5とは、図1において二点鎖線で示されるように、一つのユニット6として構成されてもよい。
【0025】
ボイラ2は、蒸気ボイラであれば、その構成を特に問わない。ボイラ2へは、給水タンク7から水が供給される。ボイラ2への給水系統には軟水装置10と脱酸素装置11とが備えられるので、脱気された軟水がボイラ2へ供給される。ボイラ2へ供給された水は、ボイラ2で蒸気化される。ボイラ2からの蒸気は、第一蒸気ヘッダ12へ供給され、この第一蒸気ヘッダ12の蒸気が、一または複数の各種の蒸気利用機器13へ供給される。
【0026】
この種の蒸気利用機器13の一つとして、スチームモータ4がある。スチームモータ4へは、第一蒸気ヘッダ12から蒸気が、給蒸路14を介して供給される。第一蒸気ヘッダ12からスチームモータ4への給蒸路14には、給蒸弁15が設けられる。この給蒸弁15の開閉または開度を調整することで、スチームモータ4の作動の有無または出力を調整できる。
【0027】
スチームモータ4は、供給される蒸気により回転駆動力を得る装置であるが、スチームモータ4において蒸気は膨張して減圧される。従って、スチームモータ4は、圧縮機5の駆動源としてだけでなく、減圧弁としても機能する。これにより、スチームモータ4にて使用後の蒸気は、減圧弁通過後の蒸気として、各種の蒸気利用機器(図示省略)において、そのまま利用することもできる。そのために、スチームモータ4にて使用後の蒸気は、排蒸路16を介して第二蒸気ヘッダ17へ供給され、この第二蒸気ヘッダ17の蒸気が、一または複数の各種の蒸気利用機器へ供給される。排蒸路16には、スチームモータ4への蒸気の逆流を防止する逆止弁18が設けられる。
【0028】
第一蒸気ヘッダ12と第二蒸気ヘッダ17とは、バイパス路19を介しても接続される。具体的には、第一蒸気ヘッダ12から給蒸弁15への給蒸路14と、逆止弁18から第二蒸気ヘッダ17への排蒸路16とが、バイパス路19で接続される。このバイパス路19には、バイパス弁20が設けられる。バイパス弁20は、好適には自力式の減圧弁とされ、第二蒸気ヘッダ17内の蒸気圧を所定に維持するように、機械的に自力で開度調整される。このようなバイパス路19を設けておけば、第二蒸気ヘッダ17の蒸気利用機器へ安定して蒸気を供給することができる。たとえば、給蒸弁15を閉じてスチームモータ4を停止した状態でも、第二蒸気ヘッダ17の蒸気利用機器へ蒸気を供給することができる。
【0029】
スチームモータ4は、好適にはスクリュ式スチームモータとされる。スクリュ式スチームモータは、互いにかみ合うスクリュロータ間に蒸気が導入され、その蒸気によりスクリュロータを回転させつつ蒸気を膨張して減圧し、その際のスクリュロータの回転により動力を得る装置である。
【0030】
圧縮機5は、油潤滑式であれば、その構成を特に問わないが、ここではスクリュ式の空気圧縮機である。スクリュ式圧縮機は、互いにかみ合って回転するスクリュロータ間に気体を吸入して、スクリュロータの回転により圧縮して吐出する装置である。この場合、ケーシング内で互いにかみ合って回転するスクリュロータの潤滑と、圧縮空気を作り出す空間の形成のために、ケーシング内に潤滑油が存在する。この潤滑油は、所望温度に水冷されることで、圧縮機5に発生する圧縮熱の冷却の役目も担うものである。潤滑油が水冷されて所望温度に維持されることで、圧縮しようとする空気が膨張する不都合も回避される。また、通常、潤滑油だけでなく、得られる圧縮空気も水冷される。
【0031】
圧縮機5は、スチームモータ4により駆動される。具体的には、スクリュ式スチームモータのスクリュロータの回転駆動力を用いて、スクリュ式圧縮機のスクリュロータが回転される。このように、圧縮機5は、基本的にはスチームモータ4で駆動されるが、電動機(図示省略)でも補助駆動可能とされてもよい。
【0032】
次に、ボイラ給水システム3について説明する。本実施例のボイラ給水システム3は、ボイラ2への給水を貯留する給水タンク7と、この給水タンク7への給水を貯留する補給水タンク21と、この補給水タンク21から給水タンク7への給水を用いて圧縮機5の冷却を図る熱交換器22とを主要部として備える。なお、熱交換器22は、図1において二点鎖線で示されるように、通常、前記ユニット6の一部(より具体的には前記圧縮機5の一部)として構成される。
【0033】
給水タンク7は、ボイラ2への給水を貯留すると共に、蒸気利用機器13などからドレンが回収される。図1では、第一蒸気ヘッダ12の蒸気の利用機器13(スチームモータ4を含む)と、第二蒸気ヘッダ17の蒸気の利用機器(図示省略)からのドレンが、ドレン回収路23を介して給水タンク7に回収される。そして、給水タンク7の水は、ボイラ2へ供給可能とされる。
【0034】
補給水タンク21は、給水タンク7への給水を貯留すると共に、軟水装置10および脱酸素装置11を介して補給水路24から水が供給可能とされる。軟水装置10は、本実施例ではイオン交換樹脂を用いて、原水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度分を除去する装置である。具体的には、イオン交換樹脂が充填された樹脂筒(図示省略)を備え、この樹脂筒に原水が通されることで、原水中に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの硬度分を除去する装置である。
【0035】
一方、脱酸素装置11は、本実施例では中空糸膜を用いて、水中の酸素を除去する装置である。具体的には、中空糸膜によって構成される脱気モジュール(図示省略)を備え、膜の内外の一方に水が通され、他方が真空状態とされることで、水中の酸素を除去する装置である。
【0036】
原水は、軟水装置10と脱酸素装置11とを介することで、脱気された軟水として、補給水タンク21へ供給される。脱酸素装置11を制御することで、補給水タンク21への給水の有無が切り替えられる。具体的には、脱酸素装置11の入口に備えられる電磁弁(図示省略)を開閉することで、脱気モジュールへの給水の有無を切り替えて、補給水タンク21への給水の有無が切り替えられる。この際、前記電磁弁を並列して設けておき、その内の一方を開けるか双方を開けるかにより、流量を調整可能としてもよい。なお、脱気された軟水が空気と接触することで、再び酸素が溶け込むのを防止するために、給水タンクおよび補給水タンクの水面には、ビーズ25,25,…が一面に浮かべられる。
【0037】
補給水タンク21には、水位検出器26が設けられる。この水位検出器26による検出信号に基づき脱酸素装置11を制御することで、補給水タンク21内の水位は設定範囲に維持される。水位検出器26は、その構成を特に問わないが、本実施例では、水位に比例した出力を得ることができる静電容量式の水位検出器とされる。そして、補給水タンク21内の水が下限水位を下回ると、脱酸素装置11から給水する一方、補給水タンク21内の水が上限水位を上回ると、脱酸素装置11からの給水を停止する。
【0038】
なお、脱酸素装置11からの給水時の流量が前述したように変更可能な場合、特定水位までは高流量で給水し、それ以後は低流量で給水するようにしてもよい。また、前記下限水位よりも下方に設定した所定水位まで万一下がると、低水位として警報を出す一方、前記上限水位よりも上方に設定した所定水位まで万一上がると、高水位として警報を出すのが好ましい。
【0039】
補給水タンク21の水は、第一給水路27と第二給水路28とを介して、給水タンク7へ給水可能とされる。まず、第一給水路27を介した給水について説明する。補給水タンク21と給水タンク7とは、逆止弁29を備えた第一給水路27を介して接続される。第一給水路27の逆止弁29は、補給水タンク21から給水タンク7への給水は許容するが、給水タンク7から補給水タンク21への逆流は防止する。補給水タンク21から第一給水路27を介した給水タンク7への給水は、補給水タンク21と給水タンク7との水頭圧差により行われる。その一方、給水タンク7内の水は、第一給水路27に設けた逆止弁29により、補給水タンク21への逆流を防止される。
【0040】
次に、第二給水路28を介した給水について説明する。補給水タンク21と給水タンク7とは、熱交給水ポンプ30と熱交換器22とを順に備えた第二給水路28を介して接続される。熱交換器22は、補給水タンク21からの水が通される一方、この水と間接熱交換させて冷却しようとする被冷却流体が通される。この被冷却流体は、本実施例では、油潤滑式の空気圧縮機5の潤滑油と圧縮空気とされる。そのために、本実施例の熱交換器22は、油冷却部31と空気冷却部32とを備える。
【0041】
補給水タンク21の水は、第二給水路28の中途に設けられた熱交換器22の空気冷却部32と油冷却部31とを順に通され、給水タンク7へ供給される。熱交換器22の油冷却部31には、補給水タンク21から給水タンク7への給水が通される一方、この水と間接熱交換して冷却を図るために圧縮機5の潤滑油が通される。具体的には、熱交換器22の油冷却部31は、圧縮機5から給油路33を介して潤滑油が供給され、その潤滑油は排油路34を介して圧縮機5へ戻される。このようにして、圧縮機5と熱交換器22との間で潤滑油が循環される。この際、潤滑油の循環は、圧縮機5の油分離器(図示省略)の内圧などにより自然に行われるが、場合により給油路33に循環ポンプを設けて強制的に行ってもよい。ところで、圧縮機5から熱交換器22への給油路33には、温度センサ35が設けられる。
【0042】
一方、熱交換器22の空気冷却部32には、補給水タンク21から給水タンク7への給水が通される一方、この水と間接熱交換して冷却を図るために圧縮機5からの圧縮空気が通される。具体的には、熱交換器22の空気冷却部32は、圧縮機5から給気路36を介して圧縮空気が供給され、その空気は排気路37を介してエアドライヤ(図示省略)へ供給される。このようにして、圧縮機5からの圧縮空気は、熱交換器22にて冷却され、エアドライヤにて水分除去され、各種の圧縮空気利用機器(図示省略)へ送られる。
【0043】
補給水タンク21から熱交換器22への給水量は、補給水タンク21から第二給水路28を介した給水タンク7への給水量でもあるが、この給水量は、熱交給水量調整手段としてのインバータポンプにより変更可能とされる。具体的には、補給水タンク21から熱交換器22への第二給水路28に設けられた熱交給水ポンプ30は、インバータ38により回転数を制御可能とされており、回転数を変更されることで熱交換器22への給水量が調整される。
【0044】
補給水タンク21から熱交換器22への給水量は、熱交換器22に通される被冷却流体の温度に基づき調整される。本実施例では、熱交給水ポンプ30は、熱交換器22に通される潤滑油の液温に基づき、インバータ38により回転数を制御される。具体的には、圧縮機5から熱交換器22へ供給される潤滑油を設定温度に維持するように、前記温度センサ35による検出温度に基づき、インバータ38により熱交給水ポンプ30が制御されて、補給水タンク21から熱交換器22へ供給される水量が調整される。
【0045】
ところで、給水タンク7および補給水タンク21には、それぞれ、所定以上の水を外部へあふれさせるためのオーバフロー路39,39が設けられている。
【0046】
本実施例のボイラ給水システム3によれば、補給水タンク21には、その水位に応じて、軟水装置10と脱酸素装置11とを介した水が供給される。これにより、補給水タンク21の水位は、設定範囲に維持される。そして、補給水タンク21の水は、第一給水路27と第二給水路28とを介して、給水タンク7へ供給可能とされる。
【0047】
第二給水路28に設けた熱交換器22では、補給水タンク21から給水タンク7への給水により、圧縮機5の潤滑油と圧縮空気との冷却が図られる。その際、潤滑油を設定温度に維持するように、熱交給水ポンプ30の回転数がインバータ38で制御され、熱交換器22への給水量が調整される。これにより、圧縮機5の負荷変動にあわせて、冷却水量を調節することができる。これと同様に、圧縮機5からの圧縮空気の温度に基づき、熱交給水ポンプ30をインバータ制御してもよい。たとえば、熱交換器22からの排気路37に温度センサを設け、この温度センサの検出温度に基づき、熱交給水ポンプ30をインバータ制御してもよい。このような圧縮空気の温度に基づく制御は、前述した潤滑油の温度に基づく制御に代えて行ってもよいし、前述した潤滑油の温度に基づく制御に加えて行ってもよい。後者の場合、第二給水路28を二系統設け、一方の第二給水路28は第一の熱交給水ポンプ30と油冷却部31とを介して給水タンク7に配管され、他方の第二給水路28は第二の熱交給水ポンプ30と空気冷却部32とを介して給水タンク7に配管される。そして、第一の熱交給水ポンプ30は、潤滑油の温度に基づき制御され、第二の熱交給水ポンプ30は、圧縮空気の温度に基づき制御される。
【0048】
ところで、このような第二給水路28を介した給水タンク7への給水だけでは、熱交換器22への給水量によっては給水タンク7の貯留水が不足するおそれもあるが、補給水タンク21から給水タンク7へは第一給水路27を介して水頭圧差により自動で給水される。しかも、補給水タンク21の水位は、設定範囲に維持される上、給水タンク7にはドレンも回収される。従って、給水タンク7の水位は、補給水タンク21の水位以上に維持される。このように、補給水タンク21のみ水位制御を行うだけでも、給水タンク7内には所望の水位を確保できる。なお、給水タンク7の水位が補給水タンク21よりも高くなっても、第二給水路28に設けた逆止弁29により、給水タンク7の水が補給水タンク21へ流入することはない。
【0049】
本実施例の構成の場合、補給水タンク21には、比較的低温の原水のみが供給される。つまり、ドレンや、熱交換器22を通過後の水は、補給水タンク21ではなく給水タンク7へ供給されるので、補給水タンク21の水温を上昇させることはない。このような比較的低温の水を熱交換器22において被冷却流体の冷却水として用いることで、冷却水量を最小限に抑えることができる。また、ドレンの回収率が比較的高い場合にも、圧縮機5の廃熱を給水タンク7への補給水で効果的に回収することができる。
【0050】
また、給水タンク7と補給水タンク21との二つのタンクを備えるにも拘らず、水位制御は補給水タンク21側のみでよくなり、水位制御が容易である。しかも、補給水タンク21から第一給水路27を介した給水タンク7への給水は、水頭圧差を利用して行うので、第二給水路28には送水のためのポンプが不要である。
【実施例2】
【0051】
図2は、本発明のボイラ給水システム3の実施例2を備える蒸気システム1の一例を示す概略図である。本実施例2のボイラ給水システム3と、これを備える蒸気システム1とは、基本的に前記実施例1と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0052】
本実施例2は、前記実施例1における給水タンク7と補給水タンク21とを統一して、一つの共通タンク40として構成される。給水タンク7と補給水タンク21とを統一したことから、前記実施例1における第一給水路27と逆止弁29とは、設置が省略される。その一方、本実施例2では、第二給水路28は、軟水装置10から共通タンク40への補給水路24の中途から分岐して、熱交給水ポンプ30および熱交換器22を介して共通タンク40へ配管される。
【0053】
以下、本実施例2のボイラ給水システム3について、さらに具体的に説明する。本実施例2では、共通タンク40は、ボイラ2への給水を貯留すると共に、蒸気利用機器13などからドレンがドレン回収路23を介して供給される。共通タンク40の水は、ボイラ2へ供給可能とされる。
【0054】
共通タンク40は、軟水装置10からの水が、補給水路24を介して供給可能とされる。補給水路24に設けた補給水弁41により、共通タンク40への給水が制御される。本実施例では、補給水弁41は電磁弁から構成され、開閉を制御されることで、共通タンク40への給水の有無が切り替えられる。
【0055】
軟水装置10から補給水弁41への補給水路24からは、第二給水路28が分岐して設けられる。この第二給水路28は、軟水装置10からの水を共通タンク40へ供給する。第二給水路28の中途には、前記実施例1と同様に、熱交給水ポンプ30と熱交換器22とが設けられる。このようにして、軟水装置10からの水は、補給水弁41を備える補給水路24を介して共通タンク40へ供給可能とされる一方、熱交給水ポンプ30と熱交換器22とを備える第二給水路28を介して共通タンク40へ供給可能とされる。
【0056】
熱交給水ポンプ30は、前記実施例1と同様に、熱交換器22に循環される潤滑油の温度に基づき、インバータ38により回転数を制御される。また、共通タンク40には、前記実施例1と同様に、水位検出器26が設けられる。この水位検出器26による検出信号に基づき補給水弁41の開閉を制御することで、共通タンク40内の水位は設定範囲に維持される。
【0057】
ところで、本実施例2の場合、軟水装置10への給水弁(図示省略)は常に開放していても、補給水弁41と熱交給水ポンプ30とにより、共通タンク40への給水を制御することができる。そのような制御を行っても、前記実施例1で述べたような中空糸膜を用いた脱酸素装置11を設置しなければ、その脱気モジュールの耐圧を気にすることなく構成することができる。
【0058】
本実施例2の場合、給水タンク7と補給水タンク21とが統一されて、一つの共通タンク40から構成されるので、構成を簡易なものとすることができる。給水タンク7と補給水タンク21とを共通化しても、熱交換器22への冷却水は、共通タンク40を介することなく、軟水装置10から直接に供給されるので、比較的低温の水で効率よく被冷却流体を冷却することができる。その他の構成および効果は、前記実施例1と同様のため、説明は省略する。
【実施例3】
【0059】
図3は、本発明のボイラ給水システム3の実施例3を備える蒸気システム1の一例を示す概略図である。本実施例3のボイラ給水システム3と、これを備える蒸気システム1とは、基本的に前記実施例2と同様である。そこで、以下では、両者の異なる点を中心に説明し、対応する箇所には同一の符号を付して説明する。
【0060】
本実施例3は、潤滑油の液温に基づく熱交換器22への冷却水量の調整方法において、前記実施例2と異なる。すなわち、前記実施例2では、温度センサ35の検出温度に基づき、熱交給水ポンプ30をインバータ制御したが、本実施例3では、以下に述べるように構成され制御される。
【0061】
本実施例3では、熱交給水ポンプ30をインバータ制御する代わりに、電動弁42の開度を調節器43で調整する。具体的には、熱交給水ポンプ30を設置する代わりに、第二給水路28には電動弁42が設置される。そして、この電動弁42は、温度センサ35の検出温度に基づき、開度を調整される。電動弁42の開度を調整することで、熱交換器22への給水量を調整して、圧縮機5の潤滑油を所望温度に維持することができる。
【0062】
本実施例3では、熱交給水ポンプ30を設置しないので、軟水装置10から補給水路24および第二給水路28への給水に、ある程度の原水圧がある場合に用いられる。すなわち、熱交給水ポンプ30を用いなくても、原水圧にて共通タンク40へ給水可能な場合に用いられる。その他の構成および効果は、前記実施例2と同様であるため、説明は省略する。
【0063】
本発明のボイラ給水システム3は、前記各実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、ボイラ2への給水を用いて、各種流体の冷却を図る構成であれば足り、蒸気システム1の構成は、前記各実施例に限定されない。
【0064】
また、前記各実施例では、スチームモータ4により駆動される圧縮機5の冷却について説明したが、従来公知の電気により駆動される通常の圧縮機に対しても同様に適用できる。
【0065】
また、前記各実施例では、熱交換器22に圧縮機5の潤滑油を循環させて、圧縮機5の冷却を図る場合について説明したが、本発明のボイラ給水システム3は、圧縮機5の冷却に限らず、それ以外の用途にも幅広く対応可能である。その場合、熱交換器22には、潤滑油に代えて、冷却を図ろうとする各種流体(液体または気体)を通せばよい。
【0066】
さらに、前記各実施例において、熱交換器22を通過後の水は、ドレン回収路23を介して給水タンク7へ供給してもよい。すなわち、仮に、高温のドレンを直接に給水タンク7に回収した場合、蒸気の吹き上げを生じ、その分だけ熱の回収率が下がることになる。これに対し、ドレン回収路23の中途に、熱交換器22からの水を混入すれば、大気中へ逃げる蒸気量が軽減され、熱の回収率を向上することができる。しかも、ドレン回収路23と第二給水路28とは、少なくとも一部において配管が共通化されるので、構成の簡素化とコストの低減とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明のボイラ給水システムの実施例1を備える蒸気システムの一例を示す概略図である。
【図2】本発明のボイラ給水システムの実施例2を備える蒸気システムの一例を示す概略図である。
【図3】本発明のボイラ給水システムの実施例3を備える蒸気システムの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
1 蒸気システム
2 ボイラ
3 ボイラ給水システム
4 スチームモータ
5 圧縮機
7 給水タンク
10 軟水装置
11 脱酸素装置
21 補給水タンク
22 熱交換器
23 ドレン回収路
26 水位検出器
27 第一給水路
28 第二給水路
29 逆止弁
30 熱交給水ポンプ
31 油冷却部
32 空気冷却部
35 温度センサ
38 インバータ
40 共通タンク
41 補給水弁
42 電動弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへの給水を貯留する給水タンクと、
設定範囲に水位が維持されるよう水が補給可能とされ、第一給水路と第二給水路とを介して前記給水タンクへ給水可能な一方、前記給水タンクからの逆流は防止される補給水タンクと、
前記第二給水路に設けられ、前記補給水タンクからの水が通される一方、この水と間接熱交換させて冷却しようとする被冷却流体が通される熱交換器と、
この熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき、前記補給水タンクから前記熱交換器へ供給する水量を調整する熱交給水量調整手段と
を備えることを特徴とするボイラ給水システム。
【請求項2】
前記補給水タンクから前記給水タンクへは水頭圧差により給水可能とされる一方、前記給水タンクから前記補給水タンクへは逆止弁により逆流不能とされ、
前記熱交給水量調整手段は、前記熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき、回転数をインバータにより制御される熱交給水ポンプとされる
ことを特徴とする請求項1に記載のボイラ給水システム。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記補給水タンクからの水が通される一方、油潤滑式の圧縮機から前記被冷却流体としての潤滑油および/または圧縮空気が通され、
潤滑油または圧縮空気の温度に基づき、前記熱交給水量調整手段により前記熱交換器への給水量を調整する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のボイラ給水システム。
【請求項4】
前記給水タンクへのドレンの回収路を介して、前記熱交換器を通過後の水が前記給水タンクへ供給される
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のボイラ給水システム。
【請求項5】
前記補給水タンクには、軟水が脱酸素装置を介して供給可能とされ、
この脱酸素装置は、中空糸膜によって構成される脱気モジュールを備え、
前記補給水タンク内の水位に基づき、前記脱気モジュールへの給水を切り替えることで、前記補給水タンク内の水位は設定範囲に維持される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラ給水システム。
【請求項6】
前記給水タンクと前記補給水タンクとは、一つの共通タンクとして構成され、
この共通タンクは、ボイラへの給水を貯留すると共に、ボイラからの蒸気のドレンが回収され、
イオン交換樹脂を用いた軟水装置からの水が、補給水弁を介して前記共通タンクへ供給可能とされると共に、熱交給水ポンプおよび前記熱交換器を介して前記共通タンクへ供給可能とされ、
前記共通タンク内の水位に基づき前記補給水弁を制御して、前記共通タンク内の水位は設定範囲に維持される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のボイラ給水システム。
【請求項7】
前記熱交給水量調整手段は、前記熱交換器に通される被冷却流体の温度に基づき開度調整される電動弁とされ、
この電動弁は、前記熱交給水ポンプに代えて設けられる
ことを特徴とする請求項6に記載のボイラ給水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−38385(P2010−38385A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198532(P2008−198532)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】