説明

ボトムエントリー用の接触ピンガイド板

【課題】接触ピンが植設されているコネクターと実装基板とをボトムエントリーで電気的に接続される際には、接触ピンを実装基板の挿入孔に差し込む際の位置合わせが難しく、特に接触ピンが変形している場合などは、接触ピンを実装基板の挿入孔に差し込むには大変な手間がかかっていた。
【手段】
電気絶縁性を有する合成樹脂を素材とした板状をなした本体に、接続対象であるボトムエントリー用コネクターから植設されている接触ピン及びこれに対応する実装基板の挿入孔とそれぞれ同じピッチで、表面側に向って漏斗状に拡径したガイド孔を、その表裏を貫通して形成すると共に、本体の対向した一対の側部に、前記実装基板のランドに半田付けする為の固定金具を取り付け、実装基板の挿入孔とガイド孔とが一致する様に、実装基板に重畳して固定する様にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクターと実装基板とを電気的に接続する際に用いる治具、詳しくはコネクターと実装基板とをボトムエントリーで接続する際に、コネクターに植設されている接触ピンを誘い込むガイド板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車や各種産業機器類などにおいては、電子制御が著しい勢いで増加しており、これに伴い各種電子部品を実装した実装基板の使用枚数も増加しており、その接続形態も多様化している。接続形態の一つとして、実装基板のパターン側からコネクターの接触ピンを挿入して両者の電気的接続を行うボトムエントリーという手法が存在しており、装着スペースや信頼性等の点から自動車用電装品などに多く用いられている。
【特許文献1】特開平7−335339号公報
【非特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このボトムエントリーおいては、コネクターから植設されている接触ピンを、その上方に位置した実装基板の対応した位置に形成されている挿入孔にパタ−ン側から差し込み、両者を電気的に接続する様にしているが、接触ピンを実装基板の対応した挿入孔に差し込む際には、上方から目視して両者の位置合わせを正確に行う必要があった。しかし、製造の際の公差や取扱中の変形などによって接触ピンの先端部と実装基板の挿入孔の位置とが一致しないことが往々にしてあり、接触ピンの挿入孔への差し込みがスムーズに行えない場合があった。
【0004】
特に、接触ピンの数が多いほど実装基板との接続作業は難しくなり、位置合わせの為に大変な手間がかかっていたのが実情である。ちなみに、実装基板の挿入孔を大きくすれば、接触ピンの差し込みが容易になり、作業性は向上するが、実装基板上に必要以上に大きな孔が開くことは、配線等に影響が及ぶ為に好ましくなく、又、半田付けされた後の強度が低下する点においても、同様に好ましくなかった。
【0005】
近年は、コスト低減の為、生産性向上の要求が益々厳しくなっており、このボトムエントリーでの結合作業も迅速化が求められており、この接触ピンと挿入孔の位置のずれは大きな問題であった。本発明者は、ボトムエントリーの際の作業性の改善を実現すべく鋭意研究を行った結果、コネクターの接触ピンを実装基板の挿入孔へ容易に差し込むことが出来る便利な治具を開発することに成功し、本発明としてここに提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
電気絶縁性を有する合成樹脂を素材とした板状をなした本体に、接続対象であるボトムエントリー用コネクターから植設されている接触ピン及びこれに対応する実装基板の挿入孔とそれぞれ同じピッチで、表面側に向って漏斗状に拡径したガイド孔を、その表裏を貫通して形成すると共に、本体の対向した一対の側部に、前記実装基板のランドに半田付けする為の固定金具を取り付け、実装基板の挿入孔とガイド孔とが一致する様に、実装基板に重畳して固定する様にして、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0007】
図1に示す様に、本体1の裏面側に形成されている位置決め用ボス7を実装基板2の位置決め用透孔8に嵌め込み、実装基板2のパターン側に重畳し、固定金具5を実装基板2のランド6に半田付けすることにより、実装基板2に固定する。この状態において、各ガイド孔4と実装基板2の挿入孔3とは、それぞれ連通している。
そして、この様に、実装基板2のパターン側に本体1が重畳された状態で、この実装基板2と電気的に接続しようとするコネクター10の接触ピン11の上方から、実装基板2の挿入孔3に連通したガイド孔4を、接触ピン11に向かって移動させ、接触ピン11を漏斗状に拡径したガイド孔4に誘い込み、接触ピン11の先端側をガイド孔4を通過させて実装基板2の挿入孔3に挿入した後、この部分を半田付けし、コネクター10と実装基板2との電気的接続を行う。
【0008】
この際、ガイド孔4は漏斗状に拡径しており、接触ピン11の位置が公差などによって多少ずれていたり、変形していても、接触ピン11の先端はガイド孔4の漏斗状の斜面によって挿入孔3に向かってスムーズに誘い込まれ、従来の様に、目視によって位置合わせを行いながら、接触ピン11を挿入孔3に差し込む必要はなく、従来の場合に比べ、はるかに確実かつ迅速に両者の結合作業を行うことが出来る。
【0009】
又、この本体1はコネクター10と実装基板2とを結合した後は、そのまま残置されるが、絶縁性を有する素材からなっているので、隣接した接触ピン11,11間の沿面距離をより大きく取れる様になり、このガイド板を介在させずにコネクター10を実装基板2に結合する場合に比べ、絶縁性が向上している。
【0010】
更に、本体1の上面には自動実装作業の際の吸着面となる平滑部9が形成されているので、実装基板2への固定作業を自動化することが出来、生産性が著しく向上している。
【0011】
又、実装基板2には何ら特別な改造を加える必要がないので、汎用性にすぐれ、しかも実装基板2の挿入孔3の径も従来のままで良いので、強度面での信頼性も損なわれず、極めて高い実用性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
実装基板2とコネクター10との間に介在させるガイド板に、表面側に向かって漏斗状に拡径したガイド孔4を形成した点に最大の特徴が存する。
【実施例1】
【0013】
図1はこの発明に係るボトムエントリー用接触ピンガイド板の実施例1の斜視図、図2はその裏面側から見た斜視図である。図中1は板状をなした本体であり、絶縁性を有する合成樹脂を素材としており、その表面側には、自動実装作業の際の吸着面となる平滑部9が形成されていると共に、実装基板2に形成されている挿入孔3,3間の間隔と同じ間隔a1で、その表裏を貫いてガイド孔4…が形成されている。つまり、ガイド孔4…の形成位置は、対象となる実装基板2の挿入孔3…の配置に対応していることになる。又、このガイド孔4,4間の間隔a1は、コネクター10の接触ピン11,11間の間隔a2とも一致している。
そして、このガイド孔4は、図4に示す様に、表面側に向かって漏斗状に拡径している。なお、ガイド孔4の下部の径は挿入孔3の内径とほぼ同じである。
【0014】
又、本体1の対向した一対の側部には、側方に張り出す様に略コ字形の平面形状をなした固定金具5が取り付けられており、実装基板2に形成されているランド6に半田付けできる様になっている。更に、本体1の裏面の適当位置からは位置決め用ボス7が下方に向かって突設されており、実装基板2の対応した位置に設けられている位置決め用透孔8に嵌め込むことが出来る様になっている。
【0015】
この実施例1は上記の通りの構成を有するものであり、図1に示す様に、本体1の裏面側に形成されている位置決め用ボス7を実装基板2の位置決め用透孔8に嵌め込み、実装基板2のパターン側に重畳し、固定金具5を実装基板2のランド6に半田付けすることにより、実装基板2に固定する。この状態において、各ガイド孔4と実装基板2の挿入孔3とは、それぞれ連通している。
そして、この様に、実装基板2のパターン側に本体1が重畳された状態で、この実装基板2と電気的に接続しようとするコネクター10の接触ピン11の上方から、実装基板2の挿入孔3に連通したガイド孔4を、接触ピン11に向かって移動させ、接触ピン11を漏斗状に拡径したガイド孔4に誘い込み、接触ピン11の先端側をガイド孔4を通過させて実装基板2の挿入孔3に挿入した後、この部分を半田付けし、コネクター10と実装基板2との電気的接続を行う。
【0016】
この際、ガイド孔4は漏斗状に拡径しており、接触ピン11の位置が公差などによって多少ずれていたり、変形していても、接触ピン11の先端はガイド孔4の漏斗状の斜面によって挿入孔3に向かってスムーズに誘い込まれ、従来の様に、目視によって位置合わせを行いながら、接触ピン11を挿入孔3に差し込む必要はなく、従来の場合に比べ、はるかに確実かつ迅速に両者の結合作業を行うことが出来る。
【0017】
又、この本体1はコネクター10と実装基板2とを結合した後は、そのまま残置されるが、絶縁性を有する素材からなっているので、隣接した接触ピン11,11間の沿面距離をより大きく取れる様になり、このガイド板を介在させずにコネクター10を実装基板2に結合する場合に比べ、絶縁性が向上している。
【0018】
更に、本体1の上面には自動実装作業の際の吸着面となる平滑部9が形成されているので、実装基板2への固定作業を自動化することが出来、生産性が著しく向上している。
【0019】
又、実装基板2には何ら特別な改造を加える必要がないので、汎用性にすぐれ、しかも実装基板2の挿入孔3の径も従来のままで良いので、強度面での信頼性も損なわれず、極めて高い実用性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0020】
自動車をはじめ各種産業機器において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明に係るボトムエントリー用の接触ピンガイド板の実施例1の斜視図。
【図2】同じく、その裏面側から見た斜視図。
【図3】同じく、実装基板に装着した状態の斜視図。
【図4】同じく、実装基板に装着した状態の拡大部分断面図。
【図5】この発明に係るボトムエントリー用の接触ピンガイド板を装着した実装基板をコネクターに結合しようとする前の状態の斜視図。
【図6】図5に示した状態の拡大部分断面図。
【図7】同じく実装基板とコネクターとが結合された状態の拡大部分断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 本体
2 実装基板
3 挿入孔
4 ガイド孔
5 固定金具
6 ランド
7 位置決め用ボス
8 位置決め用透孔
9 平滑部
10 コネクター
11 接触ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性を有する合成樹脂を素材とした板状をなした本体(1)に、接続対象であるボトムエントリー用コネクター(10)から植設されている接触ピン(1)及びこれに対応する実装基板(2)の挿入孔(3)とそれぞれ同じピッチで、表面側に向って漏斗状に拡径したガイド孔(4)を、その表裏を貫通して形成すると共に、本体(1)の対向した一対の側部に、前記実装基板(2)のランド(6)に半田付けする為の固定金具(5)を取り付け、実装基板(2)の挿入孔(3)とガイド孔(4)とが一致する様に、実装基板(2)に重畳して固定する様にしたことを特徴とするボトムエントリー用の接触ピンガイド板。
【請求項2】
本体1の上面に、自動実装作業の際の吸着面となる平滑部(9)が形成されていることを特徴とする請求項1記載のボトムエントリー用の接触ピンガイド板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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