ボルト締付装置
【課題】ボルトの頭部における上面に加工誤差がある場合であってもボルトの締付不良の発生を防止できるボルト締付装置及びボルト締付方法を提供する。
【解決手段】ボルト締付装置1は、モータ11と回転主軸12とソケット13とソケットガイド14とを備えている。ソケットガイド14を下降させるガイド下降手段33と、ガイド穴162を有するボルトガイド16とを備えている。ボルトガイド16は、ガイド部161を合わせてガイド穴162を形成している。複数のガイド部161は、ソケットガイド14に保持されたボルト7の頭部71を受ける。ソケットガイド14の下端によってテーパ内壁面163が押されてガイド穴162を拡径させるよう構成してある。
【解決手段】ボルト締付装置1は、モータ11と回転主軸12とソケット13とソケットガイド14とを備えている。ソケットガイド14を下降させるガイド下降手段33と、ガイド穴162を有するボルトガイド16とを備えている。ボルトガイド16は、ガイド部161を合わせてガイド穴162を形成している。複数のガイド部161は、ソケットガイド14に保持されたボルト7の頭部71を受ける。ソケットガイド14の下端によってテーパ内壁面163が押されてガイド穴162を拡径させるよう構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの締付不良の発生を防止することのできるボルト締付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品等のボルト締付穴にボルトを締め付けるためのボルト締付装置としては、ボルトの頭部に係合するソケットと、このソケットの先端側に配されたボルトチャックとを有するものが知られている。このようなボルト締付装置において、供給装置から供給されたボルトは、ボルトチャックにて一端保持される。次いで、このボルトを、先端側に前進させるソケットによって吸着する。そして、ボルトチャックを開放し、ソケットをさらに下降させた後、回転させて、ボルトの締付けを行っている。
【0003】
特許文献1には、ソケットが、マグネットの吸着力によりボルトを吸着するボルト締付装置が示されている。
また、特許文献2には、ボルトを垂直に立てるボルトチャックと、エア吸引装置の吸引力によりボルトを吸着するソケットとを有するボルト締付装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−302482号公報
【特許文献2】特開2000−52164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボルトの頭部における上面は、その製造時の成形誤差により、軸部に対して垂直に形成されていないことがある。そのため、特許文献1において、上記マグネットでボルトの頭部における上面を吸着したとき、ソケットに対してボルトが垂直に吸着されないことがある。この場合、ボルト締付穴に対してボルトが傾いた状態で締め付けられることになり、ボルトの締付不良を生じるおそれがある。
この問題は、特許文献2においてエア吸引装置の吸引力によってボルトを吸着する場合にも同様に生じる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ボルトの頭部における上面の精度が低い場合であってもボルトの締付不良の発生を防止できるボルト締付装置及びボルト締付方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、モータによって回転する回転主軸と、
該回転主軸に装着され、ボルトの頭部に嵌合しボルトを保持する嵌合凹部を下端部に有するソケットと、
該ソケットをその軸方向に下降させるソケット下降手段と、
上記ソケットを挿通可能な円筒形状を有するソケットガイドと、
該ソケットガイドを上記ソケットの軸方向に下降させるガイド下降手段と、
下方に向けて縮径するガイド穴を有するボルトガイドとを備えており、
上記ソケットの上記嵌合凹部には、ボルトを保持するためのボルト保持手段を有しており、
上記ボルトガイドは、複数のガイド部を合わせて上記ガイド穴を形成しており、
上記複数のガイド部は、上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ボルト保持手段により上記嵌合凹部に保持されたボルトの頭部を受け、上記ガイド下降手段によって下降させる上記ソケットガイドの下端によって上記テーパ内壁面が押されて上記ガイド穴を拡径させるよう構成してあることを特徴とするボルト締付装置にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に記載のボルト締付装置を用いて、ボルト締付対象におけるボルト締付穴へボルトを締め付ける方法であって、
上記ボルトガイドにおける上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ソケットガイド内に配置されたボルトの頭部を受ける動作と、
上記シリンダによって上記ソケットガイドを下降させ、該ソケットガイドの下端によって上記ガイド穴のテーパ内壁面を押すことによって、該ガイド穴を拡径する動作と、
上記ソケット下降手段によって上記ボルト締付装置及び上記ソケットを下降させるとともに、上記モータによる上記回転主軸の回転によって上記ソケットを回転させ、該ソケットの上記嵌合凹部にボルトの頭部を嵌合させて、該ボルトを上記ボルト締付穴へ締め付ける動作とを行うことを特徴とするボルト締付方法にある(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
ボルト締付穴へのボルトの締付を行う際には、ボルトガイドをボルト締付対象の表面に配置する。このとき、ボルトガイドのガイド穴をボルト締付穴の真上に位置させておく。そして、ソケット下降手段によって、ボルト締付装置をボルト締付位置へ移動させると共に、ボルト締付装置へボルトを供給する。こうして、ボルトは、ソケットのボルト保持手段によって保持され、このソケットの嵌合凹部に頭部を嵌合されて回転主軸の回転によって、ボルト締付穴へ締め付けられる。
【0010】
ところで、ボルトの頭部における上面が成形誤差等によって、その軸部に対して垂直に形成されていない場合、この頭部の上面がソケットの嵌合凹部のボルト保持手段に保持されたとき、ボルトはソケット及びボルト締付穴に対して斜めに傾くことになる。これに対し、本発明においては、斜めに傾いたボルトは、ソケットによって上方から押されるときに、その頭部の底面をボルトガイドのテーパ内壁面に当接させる。このとき、斜めに傾いたボルトは、頭部の底面を基準にして、ガイド穴のテーパ内壁面及びボルト締付穴に対して垂直に立てられる。これにより、ボルトの頭部における上面がその軸部に対して垂直でない場合においても、ボルト締付穴に対するボルトの締付不良の発生を防止することができる。
【0011】
また、ボルトガイドは、ソケットガイドの下端によってテーパ内壁面が押されてガイド穴を拡径させる。これにより、テーパ内壁面にボルトを押し付けないようにすることができる。そのため、ボルトの座面に傷が付くことを防止し、これによってもボルトの締付不良の発生を防止することができる。更にソケットの外周或いは、ボルトがフランジ付きボルトの場合フランジ部の外周が、締付中にテーパ内壁面と擦れ合うことが無い。そのため、正確な締付を行うことが出来る。
【0012】
第2の発明のボルト締付方法によれば、第1の発明のボルト締付装置を用いて、ボルトの締付不良の発生を防止することができる。
【0013】
このように、本発明によれば、ボルトの頭部における上面の加工精度が低い場合であってもボルトの締付不良の発生を防止できるボルト締付装置及びボルト締付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、ボルト締付装置を示す説明図。
【図2】実施例1における、ボルト締付装置を示す要部拡大図。
【図3】実施例1における、ソケットを示す要部拡大図。
【図4】実施例1における、閉状態のボルトガイドを示す説明図。
【図5】実施例1における、開状態のボルトガイドを示す説明図。
【図6】図4のA−A線矢視における要部拡大図。
【図7】実施例1における、ボルト締付装置にボルトを供給した状態を示す要部拡大図。
【図8】実施例1における、ソケットによりボルトを吸着した状態を示す要部拡大図。
【図9】実施例1における、閉状態のボルトチャックを示す要部拡大図。
【図10】実施例1における、開状態のボルトチャックを示す要部拡大図。
【図11】実施例1における、ボルトをボルトガイドによって受けた状態を示す要部拡大図。
【図12】実施例1における、ソケットとマグネットに吸着されたボルトを示す説明図。
【図13】図12のボルトをボルトガイドによって受けた状態を示す説明図。
【図14】実施例1における、ボルトとソケットが嵌合した状態を示す要部拡大図。
【図15】実施例1における、ソケットガイドによりボルトガイドを押し開いた状態を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明において、上記ソケットガイドの上方には、ボルト供給パイプから供給されるボルトを、その軸部を下方に向けて保持するボルトチャックが、上記ソケットガイドと同心上に配設してあり、
上記ボルト保持手段は、上記ソケットの上記嵌合凹部内においてバネを圧縮変形させて上記嵌合凹部内へ退避可能に配されたマグネットからなり、
上記ボルトチャックは、該ボルトチャックに保持するボルトの頭部を、上記移動装置によって上方から下降する上記ソケットの上記マグネットに吸着させ、上記ボルトを吸着した状態の上記ソケットを挿通させるよう構成してあることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記ボルト供給パイプから供給されたボルトを上記ボルトチャックによって一旦保持することで、ボルトが上記ソケットガイド内に落下することを防止できる。そして、ソケットは、上記ボルトチャックに保持されたボルトの頭部を上記マグネットに吸着し、上記ボルトチャックを通って下降する。これにより、上記ソケットの上記マグネットへのボルトの吸着を安定させることができる。
また、上記ボルト保持手段に上記のごとくマグネットを用いることにより、シンプルな構成で、かつ設備費用の増大を抑えることができる。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるボルト締付装置1及びボルト締付方法について、図1〜図15を用いて説明する。
本例のボルト締付装置1は、図1に示すごとく、モータ11によって回転する回転主軸12と、
該回転主軸12に装着され、ボルト7の頭部71に嵌合しボルト7を保持する嵌合凹部131を下端部に有するソケット13と、該ソケット13をその軸方向に下降させるソケット下降手段2とを有している。また、ボルト締付装置1は、ソケット13を挿通可能な円筒形状を有するソケットガイド14と、上記ソケットガイド14を上記ソケット13の軸方向に下降させるガイド下降手段3と、下方に向けて縮径するガイド穴162を有するボルトガイド16とを備えている。
【0017】
ソケット13の上記嵌合凹部131には、ボルト7を保持するためのボルト保持手段を有している。また、ボルトガイド16は、複数のガイド部161を合わせて上記ガイド穴162を形成している。
上記複数のガイド部161は、上記ガイド穴162のテーパ内壁面163に、上記ボルト保持手段により上記嵌合凹部131に保持されたボルト7の頭部71を受け、上記ガイド下降手段3によって下降させる上記ソケットガイド14の下端によって上記テーパ内壁面163が押されて上記ガイド穴162を拡径させるよう構成してある。
【0018】
以下、本例に示すボルト締付装置1について、詳細に説明する。
本例においては、ボルト締付対象8が配された側を下方とし、その反対側を上方とする。また、ソケット13において、ボルト締付対象8に対向する側を先端とし、その反対側を基端とする。
また、図2に示すごとく、本例のボルト締付対象8は、ボルト締付穴81に隣り合う位置に、ボルト締付装置1側に向かって突出した突出部82が形成されている。
【0019】
ボルト締付装置1は、3次元に移動可能な移動装置(図示略)に取り付けられている。ボルト締付装置1は、図1に示すごとく、モータ11によって回転する回転主軸12と、該回転主軸12に装着され、下端部にボルト7の頭部71に嵌合する嵌合凹部131を有するソケット13と、ソケット13をその軸方向に移動させるソケット下降手段2とを備えている。また、ボルト締付装置1は、ソケット13の下方に配されるボルト供給パイプ143と、ボルト供給パイプ143の下方に配されたボルトチャック15と、ボルトチャック15の下方に配されたソケットガイド14と、該ソケットガイド14の下方でボルト締付対象8の表面に配されたボルトガイド16とを備えている。
【0020】
モータ11の先端部には、回転主軸12を配してあり、モータ11と回転主軸との間は、カップリング部121と、フローティング部122とを介して連結してある。カップリング部121は、モータ11の軸線とボルト締付穴81の軸線との間の心ずれを吸収し、回転主軸12及びソケット13の損傷を防止するものである。また、フローティング部122は、回転主軸12を下方に向かって付勢するスプリング123を有しており、該スプリング123を縮めながら収縮させることで、ソケット13とボルト7頭部71との嵌合におけるソケット13の推力を発生するよう構成されている。
【0021】
回転主軸12の先端部には、図2及び図3に示すごとく、棒形状を有するソケット13を設けてあり、該ソケット13の先端部には、ボルト7の頭部71の六角形形状に嵌合する六角柱状の嵌合凹部131が形成してある。該嵌合凹部131には、ボルト7を保持するためのボルト保持手段を設けてある。本例におけるボルト保持手段は、嵌合凹部131の下端近傍に吸着面を位置させたマグネット133により構成されている。該マグネット133は、バネ132を圧縮変形させて嵌合凹部131内へ退避することができる。該マグネット133は、マグネットホルダー134を介してソケット13に保持されており、ソケット13は、マグネット133によりボルト7を吸着することができる。
【0022】
モータ11、回転主軸12及びソケット13は一体に連結されており、保持金具24を介してソケット下降手段2の垂直スライド部21に連結されている。
ソケット下降手段2は、図1に示すごとく、回転主軸12の軸線方向と平行に配された垂直レール23と、該垂直レール23上を移動可能に構成された垂直スライド部21と、該垂直スライド部21を移動させる垂直駆動源22とからなる。本例における垂直スライド部21の垂直駆動源22には、エアシリンダを用いており、垂直スライド部21に固定されたモータ11、回転主軸12及びソケット13を、垂直レール23上において往復移動可能に構成してある。尚、垂直駆動源22に用いられる駆動源は、エアシリンダに限られるものではなく、サーボモータや液圧シリンダ等の種々のものを用いることができる。
【0023】
図1に示すごとく、ソケット13の下方には、ボルト供給装置(図示略)から送出されたボルト7を、後述するボルトチャック15に供給するボルト供給パイプ143を配してある。該ボルト供給パイプ143は、図7に示すごとく、ボルトチャック15のチャック保持部152に対してパイプ回動軸144を介して回動可能に配設してある。ボルト供給パイプ143は、その先端がボルトチャック15の上方に位置するように、スプリング145より付勢されており、下降するソケット13に押されることによりスプリング145の付勢力に抗して、ボルト供給パイプ143を回動させてボルト供給パイプ143の先端をボルトチャック15の外側に移動させるよう構成されている。
【0024】
図1に示すごとく、ボルト供給パイプ143の下方には、ボルト供給パイプ143から供給されたボルト7の軸部72を下方に向けて保持するボルトチャック15を配してある。該ボルトチャック15は、後述するソケットガイド14の上方に、ソケットガイド14と同心上に配設してある。ボルトチャック15は、図9及び図10に示すごとく、一対のチャック爪151と、該チャック爪151を保持するチャック保持部152とを有しており、一対のチャック爪151は、それぞれチャック回動軸を介してチャック保持部152に回動可能に保持されている。
【0025】
ボルトチャック15は、一対のチャック爪151を閉じ合せた状態において、先端側に向かって縮径しており、先端にボルト7の軸部72を挿通する軸部挿通穴153が形成される保持状態(図9)と、チャック爪151が開きボルト7を保持しない開放状態(図10)とに切換え可能に構成されている。チャック爪151は、通常保持状態となるようにスプリング154により付勢されている。このスプリング154は、一対のチャック爪151を閉状態としボルト7を保持するためのものである。したがって、スプリング154の付勢力は、後述するボルトガイドにエアシリンダにより付与される付勢力に比べて小さく、チャック爪151を容易に開状態とすることができる。
【0026】
図1及び図2に示すごとく、ボルトチャック15の下方には、ソケット13を挿通するソケットガイド14を配してある。ソケットガイド14は、円筒形状を有するソケット挿通部141と、該ソケット挿通部141の上端から上方に延びるソケットガイド固定部142とからなる。ソケットガイド14は、ソケットガイド固定部142によりチャック保持部152に保持されている。
【0027】
上記のごとく、ボルト供給パイプ143とソケットガイド14は、ボルトチャック15のチャック保持部152に固定されており、チャック保持部152は、保持金具34を介して、ガイド下降手段3の下降スライド部31と連結されている。すなわち、ボルト供給パイプ143と、ソケットガイド14と、ボルトチャック15は一体に固定されると共に、ガイド下降手段3により移動可能に配されている。
【0028】
ガイド下降手段3は、図2に示すごとく、ソケット13の移動方向と平行に配された下降レール32と、該下降レール32上を移動可能に構成された下降スライド部31と、該下降スライド部31を移動させる下降駆動源33とからなる。本例における下降駆動源33は、空気圧によって構成されたエアシリンダを用いており、下降スライド部31に一体に固定されたボルト供給パイプ143と、ソケットガイド14と、ボルトチャック15とを、下降レール32上において往復移動可能に構成してある。尚、下降駆動源33は、エアシリンダに限られるものではなく、サーボモータや液圧シリンダ等の種々のものを用いることができる。
【0029】
図1に示すごとく、ソケットガイド14の下方には、ボルトガイド16を配してある。ボルトガイド16は、図4〜図6に示すごとく、下方に向かって縮径するテーパ内壁面163を形成したガイド穴162を有しており、該ガイド穴162は、一対のガイド部161を合わせることで形成される。すなわち、一対のガイド部161には、それぞれ、ガイド穴162を中心軸を含む平面によって半分に分割した形状の凹部を形成してあり、一対のガイド部161を合わせることで1つのガイド穴162が形成されるよう構成してある。
【0030】
ボルトガイド16は、図2に示すごとく、ガイド穴162がボルト締付穴81の真上に位置するようにボルト締付対象8の表面に配置される。一対のガイド部161には、エアシリンダ164からなる付勢手段を設けてあり、一対のガイド部161を合わせる方向に付勢している。エアシリンダ164により一対のガイド部161にかかる付勢力は、上述したフローティング部122のスプリング123の付勢力がテーパ内壁面163に加わった場合においても、一対のガイド部161を合わせた状態とする大きさに設定してある。尚、付勢手段は、エアシリンダに限られるものではなく、ガスダンパやスプリング等、種々の付勢手段を用いることができる。
【0031】
上記のごとく構成されたボルト締付装置1におけるボルト締付方法について説明する。
ボルト締付装置1は、上記の3次元移動装置により、ボルト締付穴81の上方へと配置される。そして、図7に示すごとく、ボルト供給装置からボルト供給パイプ143を介して、ボルトチャック15の内側にボルト7が供給される。このとき、ボルトチャック15は、図9に示すごとく、一対のチャック爪151が閉じた保持状態にあり、先端に形成された軸部挿通穴153にボルト7の軸部72が挿通され、該軸部72を下方に向けてボルト7を保持する。次いで、図8に示すごとく、ソケット下降手段2によりソケット13の先端がボルトチャック15の内側に位置するように下降させ、ソケット13先端の嵌合凹部131に配したマグネット133によりボルト7を吸着保持する。このとき、ボルトチャック15の上方に配されたボルト供給パイプ143は、下降するソケット13に押され、付勢力に抗してパイプ回動軸144において回動し、ボルト供給パイプ143の先端がボルトチャック15の外側の位置に配される。
【0032】
図10に示すごとく、ボルト7を吸着保持したソケット13は、ソケット下降手段2によって下降し、ボルトチャック15にかかるスプリング154の付勢力に抗してチャック爪151を押し広げ、ボルトチャック15を開放状態とすると共に、ボルトチャック15の内側へ挿通される。そして、ソケット13は、ボルトチャック15の下方に配されたソケットガイド14のソケット挿通部141の内側に挿通される。このとき、図12に示すごとく、ボルト7の頭部における上面が軸部72に対して傾いて形成されている場合、ボルトは、ソケット13のマグネット133に傾いて吸着される。
【0033】
次いで、図11に示すごとく、ボルト7の頭部71をボルトガイド16のガイド穴162におけるテーパ内壁面163に受けられる位置までソケット13が下降させる。ボルト7は、頭部71をテーパ内壁面163によって受けることによって、ボルト7の頭部における底面を基準として姿勢が矯正され、ボルト7が垂直に配される。また、図13に示すごとく、ボルト7の頭部における上面が軸部72に対して傾いて形成された場合においても、ボルトガイド16によりボルト7を垂直に配することができる。
【0034】
そして、ソケット13は、嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合する位置までソケット下降手段2によって下降される。このとき、ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合していない場合には、上述したフローティング部122が収縮する。そして、フローティング部122が収縮した状態で、モータ11によってソケット13を回転させると、ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合する位置でフローティング部122が伸張し、図14に示すごとく、ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合する。このとき、ボルト7の頭部71に押されたマグネット133はバネ132を圧縮させて、嵌合凹部131の内側へと退避する。
【0035】
次いで、図15に示すごとく、ガイド下降手段3によってソケットガイド14を下降させ、該ソケットガイド14の下端によってガイド穴162のテーパ内壁面163を押して、該ガイド穴162を拡径する。ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合することにより、ソケット13の回転がボルト7へと伝達され、ボルト7はボルト締付穴81へと締め付けられる。
【0036】
次に、本例のボルト締付装置1及び締付方法の作用効果について説明する。
ボルト締付穴81へのボルト7の締付を行う際には、ボルトガイド16をボルト締付対象8の表面に配置する。このとき、ボルトガイド16のガイド穴162をボルト締付穴81の真上に位置させておく。そして、上記移動装置によって、ボルト締付装置1をボルト締付位置へ移動させると共に、ボルト締付装置1へボルト7を供給する。こうして、ボルト7は、ソケット13のマグネット133に吸着し、このソケット13の嵌合凹部131に頭部を嵌合されて回転主軸12の回転によって、ボルト締付穴81へ締め付けられる。
【0037】
ところで、ボルト7の頭部における上面が成形誤差等によって、その軸部72に対して垂直に形成されていない場合、この頭部の上面がソケット13の嵌合凹部131内のマグネット133に吸着されたとき、ボルト7はソケット13及びボルト締付穴81に対して斜めに傾くことになる。これに対し、本発明においては、斜めに傾いたボルト7は、ソケット13によって上方から押されるときに、その頭部の底面をボルトガイド16のテーパ内壁面163に当接させる。このとき、斜めに傾いたボルト7は、頭部の底面を基準にして、ガイド穴162のテーパ内壁面163及びボルト締付穴81に対して垂直に立てられる。これにより、ボルト7の頭部における上面がその軸部72に対して垂直でない場合においても、ボルト締付穴81に対するボルト7の締付不良の発生を防止することができる。
【0038】
また、ボルトガイド16は、ソケットガイド14の下端によってテーパ内壁面163が押されてガイド穴162を拡径させる。これにより、テーパ内壁面163にボルト7を押し付けないようにすることができる。その為、ボルト7の座面に傷が付くことを防止し、これによってもボルト7の締付不良の発生を防止することができる。
【0039】
また、ソケットガイド14の上方には、ボルト供給パイプ143から供給されるボルト7を、その軸部72を下方に向けて保持するボルトチャック15が、ソケットガイド14と同心上に配設してあり、ボルトチャック15は、該ボルトチャック15に保持するボルト7の頭部を、上記移動装置によって上方から下降するソケットのマグネット133に吸着させ、ボルト7を吸着した状態のソケットを挿通させるよう構成してある。
【0040】
そのため、ボルト供給パイプ143から供給されたボルト7をボルトチャック15によって一旦保持することで、ボルト7がソケットガイド14内に落下することを防止できる。そして、ソケットは、ボルトチャック15に保持されたボルト7の頭部をマグネット133に吸着し、ボルトチャック15を通って下降する。これにより、ソケットのマグネット133へのボルト7の吸着を安定させることができる。
また、上記ボルト保持手段に上記のごとくマグネット133を用いることにより、シンプルな構成で、かつ設備費用の増大を抑えることができる。
【0041】
このように、本例によれば、ボルト7の頭部における上面の精度が低い場合であってもボルト7の締付不良の発生を防止できるボルト締付装置1及びボルト締付方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ボルト締付装置
11 モータ
12 回転主軸
13 ソケット
131 嵌合凹部
132 バネ
133 マグネット
14 ソケットガイド
141 ソケット挿通部
16 ボルトガイド
161 ガイド部
162 ガイド穴
163 テーパ内壁面
2 ソケット下降手段
3 ガイド下降手段
7 ボルト
71 頭部
8 ボルト締付対象
81 ボルト締付穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトの締付不良の発生を防止することのできるボルト締付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品等のボルト締付穴にボルトを締め付けるためのボルト締付装置としては、ボルトの頭部に係合するソケットと、このソケットの先端側に配されたボルトチャックとを有するものが知られている。このようなボルト締付装置において、供給装置から供給されたボルトは、ボルトチャックにて一端保持される。次いで、このボルトを、先端側に前進させるソケットによって吸着する。そして、ボルトチャックを開放し、ソケットをさらに下降させた後、回転させて、ボルトの締付けを行っている。
【0003】
特許文献1には、ソケットが、マグネットの吸着力によりボルトを吸着するボルト締付装置が示されている。
また、特許文献2には、ボルトを垂直に立てるボルトチャックと、エア吸引装置の吸引力によりボルトを吸着するソケットとを有するボルト締付装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−302482号公報
【特許文献2】特開2000−52164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボルトの頭部における上面は、その製造時の成形誤差により、軸部に対して垂直に形成されていないことがある。そのため、特許文献1において、上記マグネットでボルトの頭部における上面を吸着したとき、ソケットに対してボルトが垂直に吸着されないことがある。この場合、ボルト締付穴に対してボルトが傾いた状態で締め付けられることになり、ボルトの締付不良を生じるおそれがある。
この問題は、特許文献2においてエア吸引装置の吸引力によってボルトを吸着する場合にも同様に生じる。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ボルトの頭部における上面の精度が低い場合であってもボルトの締付不良の発生を防止できるボルト締付装置及びボルト締付方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、モータによって回転する回転主軸と、
該回転主軸に装着され、ボルトの頭部に嵌合しボルトを保持する嵌合凹部を下端部に有するソケットと、
該ソケットをその軸方向に下降させるソケット下降手段と、
上記ソケットを挿通可能な円筒形状を有するソケットガイドと、
該ソケットガイドを上記ソケットの軸方向に下降させるガイド下降手段と、
下方に向けて縮径するガイド穴を有するボルトガイドとを備えており、
上記ソケットの上記嵌合凹部には、ボルトを保持するためのボルト保持手段を有しており、
上記ボルトガイドは、複数のガイド部を合わせて上記ガイド穴を形成しており、
上記複数のガイド部は、上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ボルト保持手段により上記嵌合凹部に保持されたボルトの頭部を受け、上記ガイド下降手段によって下降させる上記ソケットガイドの下端によって上記テーパ内壁面が押されて上記ガイド穴を拡径させるよう構成してあることを特徴とするボルト締付装置にある(請求項1)。
【0008】
第2の発明は、第1の発明に記載のボルト締付装置を用いて、ボルト締付対象におけるボルト締付穴へボルトを締め付ける方法であって、
上記ボルトガイドにおける上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ソケットガイド内に配置されたボルトの頭部を受ける動作と、
上記シリンダによって上記ソケットガイドを下降させ、該ソケットガイドの下端によって上記ガイド穴のテーパ内壁面を押すことによって、該ガイド穴を拡径する動作と、
上記ソケット下降手段によって上記ボルト締付装置及び上記ソケットを下降させるとともに、上記モータによる上記回転主軸の回転によって上記ソケットを回転させ、該ソケットの上記嵌合凹部にボルトの頭部を嵌合させて、該ボルトを上記ボルト締付穴へ締め付ける動作とを行うことを特徴とするボルト締付方法にある(請求項3)。
【発明の効果】
【0009】
ボルト締付穴へのボルトの締付を行う際には、ボルトガイドをボルト締付対象の表面に配置する。このとき、ボルトガイドのガイド穴をボルト締付穴の真上に位置させておく。そして、ソケット下降手段によって、ボルト締付装置をボルト締付位置へ移動させると共に、ボルト締付装置へボルトを供給する。こうして、ボルトは、ソケットのボルト保持手段によって保持され、このソケットの嵌合凹部に頭部を嵌合されて回転主軸の回転によって、ボルト締付穴へ締め付けられる。
【0010】
ところで、ボルトの頭部における上面が成形誤差等によって、その軸部に対して垂直に形成されていない場合、この頭部の上面がソケットの嵌合凹部のボルト保持手段に保持されたとき、ボルトはソケット及びボルト締付穴に対して斜めに傾くことになる。これに対し、本発明においては、斜めに傾いたボルトは、ソケットによって上方から押されるときに、その頭部の底面をボルトガイドのテーパ内壁面に当接させる。このとき、斜めに傾いたボルトは、頭部の底面を基準にして、ガイド穴のテーパ内壁面及びボルト締付穴に対して垂直に立てられる。これにより、ボルトの頭部における上面がその軸部に対して垂直でない場合においても、ボルト締付穴に対するボルトの締付不良の発生を防止することができる。
【0011】
また、ボルトガイドは、ソケットガイドの下端によってテーパ内壁面が押されてガイド穴を拡径させる。これにより、テーパ内壁面にボルトを押し付けないようにすることができる。そのため、ボルトの座面に傷が付くことを防止し、これによってもボルトの締付不良の発生を防止することができる。更にソケットの外周或いは、ボルトがフランジ付きボルトの場合フランジ部の外周が、締付中にテーパ内壁面と擦れ合うことが無い。そのため、正確な締付を行うことが出来る。
【0012】
第2の発明のボルト締付方法によれば、第1の発明のボルト締付装置を用いて、ボルトの締付不良の発生を防止することができる。
【0013】
このように、本発明によれば、ボルトの頭部における上面の加工精度が低い場合であってもボルトの締付不良の発生を防止できるボルト締付装置及びボルト締付方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1における、ボルト締付装置を示す説明図。
【図2】実施例1における、ボルト締付装置を示す要部拡大図。
【図3】実施例1における、ソケットを示す要部拡大図。
【図4】実施例1における、閉状態のボルトガイドを示す説明図。
【図5】実施例1における、開状態のボルトガイドを示す説明図。
【図6】図4のA−A線矢視における要部拡大図。
【図7】実施例1における、ボルト締付装置にボルトを供給した状態を示す要部拡大図。
【図8】実施例1における、ソケットによりボルトを吸着した状態を示す要部拡大図。
【図9】実施例1における、閉状態のボルトチャックを示す要部拡大図。
【図10】実施例1における、開状態のボルトチャックを示す要部拡大図。
【図11】実施例1における、ボルトをボルトガイドによって受けた状態を示す要部拡大図。
【図12】実施例1における、ソケットとマグネットに吸着されたボルトを示す説明図。
【図13】図12のボルトをボルトガイドによって受けた状態を示す説明図。
【図14】実施例1における、ボルトとソケットが嵌合した状態を示す要部拡大図。
【図15】実施例1における、ソケットガイドによりボルトガイドを押し開いた状態を示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
第1の発明において、上記ソケットガイドの上方には、ボルト供給パイプから供給されるボルトを、その軸部を下方に向けて保持するボルトチャックが、上記ソケットガイドと同心上に配設してあり、
上記ボルト保持手段は、上記ソケットの上記嵌合凹部内においてバネを圧縮変形させて上記嵌合凹部内へ退避可能に配されたマグネットからなり、
上記ボルトチャックは、該ボルトチャックに保持するボルトの頭部を、上記移動装置によって上方から下降する上記ソケットの上記マグネットに吸着させ、上記ボルトを吸着した状態の上記ソケットを挿通させるよう構成してあることが好ましい(請求項2)。この場合には、上記ボルト供給パイプから供給されたボルトを上記ボルトチャックによって一旦保持することで、ボルトが上記ソケットガイド内に落下することを防止できる。そして、ソケットは、上記ボルトチャックに保持されたボルトの頭部を上記マグネットに吸着し、上記ボルトチャックを通って下降する。これにより、上記ソケットの上記マグネットへのボルトの吸着を安定させることができる。
また、上記ボルト保持手段に上記のごとくマグネットを用いることにより、シンプルな構成で、かつ設備費用の増大を抑えることができる。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるボルト締付装置1及びボルト締付方法について、図1〜図15を用いて説明する。
本例のボルト締付装置1は、図1に示すごとく、モータ11によって回転する回転主軸12と、
該回転主軸12に装着され、ボルト7の頭部71に嵌合しボルト7を保持する嵌合凹部131を下端部に有するソケット13と、該ソケット13をその軸方向に下降させるソケット下降手段2とを有している。また、ボルト締付装置1は、ソケット13を挿通可能な円筒形状を有するソケットガイド14と、上記ソケットガイド14を上記ソケット13の軸方向に下降させるガイド下降手段3と、下方に向けて縮径するガイド穴162を有するボルトガイド16とを備えている。
【0017】
ソケット13の上記嵌合凹部131には、ボルト7を保持するためのボルト保持手段を有している。また、ボルトガイド16は、複数のガイド部161を合わせて上記ガイド穴162を形成している。
上記複数のガイド部161は、上記ガイド穴162のテーパ内壁面163に、上記ボルト保持手段により上記嵌合凹部131に保持されたボルト7の頭部71を受け、上記ガイド下降手段3によって下降させる上記ソケットガイド14の下端によって上記テーパ内壁面163が押されて上記ガイド穴162を拡径させるよう構成してある。
【0018】
以下、本例に示すボルト締付装置1について、詳細に説明する。
本例においては、ボルト締付対象8が配された側を下方とし、その反対側を上方とする。また、ソケット13において、ボルト締付対象8に対向する側を先端とし、その反対側を基端とする。
また、図2に示すごとく、本例のボルト締付対象8は、ボルト締付穴81に隣り合う位置に、ボルト締付装置1側に向かって突出した突出部82が形成されている。
【0019】
ボルト締付装置1は、3次元に移動可能な移動装置(図示略)に取り付けられている。ボルト締付装置1は、図1に示すごとく、モータ11によって回転する回転主軸12と、該回転主軸12に装着され、下端部にボルト7の頭部71に嵌合する嵌合凹部131を有するソケット13と、ソケット13をその軸方向に移動させるソケット下降手段2とを備えている。また、ボルト締付装置1は、ソケット13の下方に配されるボルト供給パイプ143と、ボルト供給パイプ143の下方に配されたボルトチャック15と、ボルトチャック15の下方に配されたソケットガイド14と、該ソケットガイド14の下方でボルト締付対象8の表面に配されたボルトガイド16とを備えている。
【0020】
モータ11の先端部には、回転主軸12を配してあり、モータ11と回転主軸との間は、カップリング部121と、フローティング部122とを介して連結してある。カップリング部121は、モータ11の軸線とボルト締付穴81の軸線との間の心ずれを吸収し、回転主軸12及びソケット13の損傷を防止するものである。また、フローティング部122は、回転主軸12を下方に向かって付勢するスプリング123を有しており、該スプリング123を縮めながら収縮させることで、ソケット13とボルト7頭部71との嵌合におけるソケット13の推力を発生するよう構成されている。
【0021】
回転主軸12の先端部には、図2及び図3に示すごとく、棒形状を有するソケット13を設けてあり、該ソケット13の先端部には、ボルト7の頭部71の六角形形状に嵌合する六角柱状の嵌合凹部131が形成してある。該嵌合凹部131には、ボルト7を保持するためのボルト保持手段を設けてある。本例におけるボルト保持手段は、嵌合凹部131の下端近傍に吸着面を位置させたマグネット133により構成されている。該マグネット133は、バネ132を圧縮変形させて嵌合凹部131内へ退避することができる。該マグネット133は、マグネットホルダー134を介してソケット13に保持されており、ソケット13は、マグネット133によりボルト7を吸着することができる。
【0022】
モータ11、回転主軸12及びソケット13は一体に連結されており、保持金具24を介してソケット下降手段2の垂直スライド部21に連結されている。
ソケット下降手段2は、図1に示すごとく、回転主軸12の軸線方向と平行に配された垂直レール23と、該垂直レール23上を移動可能に構成された垂直スライド部21と、該垂直スライド部21を移動させる垂直駆動源22とからなる。本例における垂直スライド部21の垂直駆動源22には、エアシリンダを用いており、垂直スライド部21に固定されたモータ11、回転主軸12及びソケット13を、垂直レール23上において往復移動可能に構成してある。尚、垂直駆動源22に用いられる駆動源は、エアシリンダに限られるものではなく、サーボモータや液圧シリンダ等の種々のものを用いることができる。
【0023】
図1に示すごとく、ソケット13の下方には、ボルト供給装置(図示略)から送出されたボルト7を、後述するボルトチャック15に供給するボルト供給パイプ143を配してある。該ボルト供給パイプ143は、図7に示すごとく、ボルトチャック15のチャック保持部152に対してパイプ回動軸144を介して回動可能に配設してある。ボルト供給パイプ143は、その先端がボルトチャック15の上方に位置するように、スプリング145より付勢されており、下降するソケット13に押されることによりスプリング145の付勢力に抗して、ボルト供給パイプ143を回動させてボルト供給パイプ143の先端をボルトチャック15の外側に移動させるよう構成されている。
【0024】
図1に示すごとく、ボルト供給パイプ143の下方には、ボルト供給パイプ143から供給されたボルト7の軸部72を下方に向けて保持するボルトチャック15を配してある。該ボルトチャック15は、後述するソケットガイド14の上方に、ソケットガイド14と同心上に配設してある。ボルトチャック15は、図9及び図10に示すごとく、一対のチャック爪151と、該チャック爪151を保持するチャック保持部152とを有しており、一対のチャック爪151は、それぞれチャック回動軸を介してチャック保持部152に回動可能に保持されている。
【0025】
ボルトチャック15は、一対のチャック爪151を閉じ合せた状態において、先端側に向かって縮径しており、先端にボルト7の軸部72を挿通する軸部挿通穴153が形成される保持状態(図9)と、チャック爪151が開きボルト7を保持しない開放状態(図10)とに切換え可能に構成されている。チャック爪151は、通常保持状態となるようにスプリング154により付勢されている。このスプリング154は、一対のチャック爪151を閉状態としボルト7を保持するためのものである。したがって、スプリング154の付勢力は、後述するボルトガイドにエアシリンダにより付与される付勢力に比べて小さく、チャック爪151を容易に開状態とすることができる。
【0026】
図1及び図2に示すごとく、ボルトチャック15の下方には、ソケット13を挿通するソケットガイド14を配してある。ソケットガイド14は、円筒形状を有するソケット挿通部141と、該ソケット挿通部141の上端から上方に延びるソケットガイド固定部142とからなる。ソケットガイド14は、ソケットガイド固定部142によりチャック保持部152に保持されている。
【0027】
上記のごとく、ボルト供給パイプ143とソケットガイド14は、ボルトチャック15のチャック保持部152に固定されており、チャック保持部152は、保持金具34を介して、ガイド下降手段3の下降スライド部31と連結されている。すなわち、ボルト供給パイプ143と、ソケットガイド14と、ボルトチャック15は一体に固定されると共に、ガイド下降手段3により移動可能に配されている。
【0028】
ガイド下降手段3は、図2に示すごとく、ソケット13の移動方向と平行に配された下降レール32と、該下降レール32上を移動可能に構成された下降スライド部31と、該下降スライド部31を移動させる下降駆動源33とからなる。本例における下降駆動源33は、空気圧によって構成されたエアシリンダを用いており、下降スライド部31に一体に固定されたボルト供給パイプ143と、ソケットガイド14と、ボルトチャック15とを、下降レール32上において往復移動可能に構成してある。尚、下降駆動源33は、エアシリンダに限られるものではなく、サーボモータや液圧シリンダ等の種々のものを用いることができる。
【0029】
図1に示すごとく、ソケットガイド14の下方には、ボルトガイド16を配してある。ボルトガイド16は、図4〜図6に示すごとく、下方に向かって縮径するテーパ内壁面163を形成したガイド穴162を有しており、該ガイド穴162は、一対のガイド部161を合わせることで形成される。すなわち、一対のガイド部161には、それぞれ、ガイド穴162を中心軸を含む平面によって半分に分割した形状の凹部を形成してあり、一対のガイド部161を合わせることで1つのガイド穴162が形成されるよう構成してある。
【0030】
ボルトガイド16は、図2に示すごとく、ガイド穴162がボルト締付穴81の真上に位置するようにボルト締付対象8の表面に配置される。一対のガイド部161には、エアシリンダ164からなる付勢手段を設けてあり、一対のガイド部161を合わせる方向に付勢している。エアシリンダ164により一対のガイド部161にかかる付勢力は、上述したフローティング部122のスプリング123の付勢力がテーパ内壁面163に加わった場合においても、一対のガイド部161を合わせた状態とする大きさに設定してある。尚、付勢手段は、エアシリンダに限られるものではなく、ガスダンパやスプリング等、種々の付勢手段を用いることができる。
【0031】
上記のごとく構成されたボルト締付装置1におけるボルト締付方法について説明する。
ボルト締付装置1は、上記の3次元移動装置により、ボルト締付穴81の上方へと配置される。そして、図7に示すごとく、ボルト供給装置からボルト供給パイプ143を介して、ボルトチャック15の内側にボルト7が供給される。このとき、ボルトチャック15は、図9に示すごとく、一対のチャック爪151が閉じた保持状態にあり、先端に形成された軸部挿通穴153にボルト7の軸部72が挿通され、該軸部72を下方に向けてボルト7を保持する。次いで、図8に示すごとく、ソケット下降手段2によりソケット13の先端がボルトチャック15の内側に位置するように下降させ、ソケット13先端の嵌合凹部131に配したマグネット133によりボルト7を吸着保持する。このとき、ボルトチャック15の上方に配されたボルト供給パイプ143は、下降するソケット13に押され、付勢力に抗してパイプ回動軸144において回動し、ボルト供給パイプ143の先端がボルトチャック15の外側の位置に配される。
【0032】
図10に示すごとく、ボルト7を吸着保持したソケット13は、ソケット下降手段2によって下降し、ボルトチャック15にかかるスプリング154の付勢力に抗してチャック爪151を押し広げ、ボルトチャック15を開放状態とすると共に、ボルトチャック15の内側へ挿通される。そして、ソケット13は、ボルトチャック15の下方に配されたソケットガイド14のソケット挿通部141の内側に挿通される。このとき、図12に示すごとく、ボルト7の頭部における上面が軸部72に対して傾いて形成されている場合、ボルトは、ソケット13のマグネット133に傾いて吸着される。
【0033】
次いで、図11に示すごとく、ボルト7の頭部71をボルトガイド16のガイド穴162におけるテーパ内壁面163に受けられる位置までソケット13が下降させる。ボルト7は、頭部71をテーパ内壁面163によって受けることによって、ボルト7の頭部における底面を基準として姿勢が矯正され、ボルト7が垂直に配される。また、図13に示すごとく、ボルト7の頭部における上面が軸部72に対して傾いて形成された場合においても、ボルトガイド16によりボルト7を垂直に配することができる。
【0034】
そして、ソケット13は、嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合する位置までソケット下降手段2によって下降される。このとき、ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合していない場合には、上述したフローティング部122が収縮する。そして、フローティング部122が収縮した状態で、モータ11によってソケット13を回転させると、ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合する位置でフローティング部122が伸張し、図14に示すごとく、ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合する。このとき、ボルト7の頭部71に押されたマグネット133はバネ132を圧縮させて、嵌合凹部131の内側へと退避する。
【0035】
次いで、図15に示すごとく、ガイド下降手段3によってソケットガイド14を下降させ、該ソケットガイド14の下端によってガイド穴162のテーパ内壁面163を押して、該ガイド穴162を拡径する。ソケット13の嵌合凹部131とボルト7の頭部71とが嵌合することにより、ソケット13の回転がボルト7へと伝達され、ボルト7はボルト締付穴81へと締め付けられる。
【0036】
次に、本例のボルト締付装置1及び締付方法の作用効果について説明する。
ボルト締付穴81へのボルト7の締付を行う際には、ボルトガイド16をボルト締付対象8の表面に配置する。このとき、ボルトガイド16のガイド穴162をボルト締付穴81の真上に位置させておく。そして、上記移動装置によって、ボルト締付装置1をボルト締付位置へ移動させると共に、ボルト締付装置1へボルト7を供給する。こうして、ボルト7は、ソケット13のマグネット133に吸着し、このソケット13の嵌合凹部131に頭部を嵌合されて回転主軸12の回転によって、ボルト締付穴81へ締め付けられる。
【0037】
ところで、ボルト7の頭部における上面が成形誤差等によって、その軸部72に対して垂直に形成されていない場合、この頭部の上面がソケット13の嵌合凹部131内のマグネット133に吸着されたとき、ボルト7はソケット13及びボルト締付穴81に対して斜めに傾くことになる。これに対し、本発明においては、斜めに傾いたボルト7は、ソケット13によって上方から押されるときに、その頭部の底面をボルトガイド16のテーパ内壁面163に当接させる。このとき、斜めに傾いたボルト7は、頭部の底面を基準にして、ガイド穴162のテーパ内壁面163及びボルト締付穴81に対して垂直に立てられる。これにより、ボルト7の頭部における上面がその軸部72に対して垂直でない場合においても、ボルト締付穴81に対するボルト7の締付不良の発生を防止することができる。
【0038】
また、ボルトガイド16は、ソケットガイド14の下端によってテーパ内壁面163が押されてガイド穴162を拡径させる。これにより、テーパ内壁面163にボルト7を押し付けないようにすることができる。その為、ボルト7の座面に傷が付くことを防止し、これによってもボルト7の締付不良の発生を防止することができる。
【0039】
また、ソケットガイド14の上方には、ボルト供給パイプ143から供給されるボルト7を、その軸部72を下方に向けて保持するボルトチャック15が、ソケットガイド14と同心上に配設してあり、ボルトチャック15は、該ボルトチャック15に保持するボルト7の頭部を、上記移動装置によって上方から下降するソケットのマグネット133に吸着させ、ボルト7を吸着した状態のソケットを挿通させるよう構成してある。
【0040】
そのため、ボルト供給パイプ143から供給されたボルト7をボルトチャック15によって一旦保持することで、ボルト7がソケットガイド14内に落下することを防止できる。そして、ソケットは、ボルトチャック15に保持されたボルト7の頭部をマグネット133に吸着し、ボルトチャック15を通って下降する。これにより、ソケットのマグネット133へのボルト7の吸着を安定させることができる。
また、上記ボルト保持手段に上記のごとくマグネット133を用いることにより、シンプルな構成で、かつ設備費用の増大を抑えることができる。
【0041】
このように、本例によれば、ボルト7の頭部における上面の精度が低い場合であってもボルト7の締付不良の発生を防止できるボルト締付装置1及びボルト締付方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ボルト締付装置
11 モータ
12 回転主軸
13 ソケット
131 嵌合凹部
132 バネ
133 マグネット
14 ソケットガイド
141 ソケット挿通部
16 ボルトガイド
161 ガイド部
162 ガイド穴
163 テーパ内壁面
2 ソケット下降手段
3 ガイド下降手段
7 ボルト
71 頭部
8 ボルト締付対象
81 ボルト締付穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータによって回転する回転主軸と、
該回転主軸に装着され、ボルトの頭部に嵌合しボルトを保持する嵌合凹部を下端部に有するソケットと、
該ソケットをその軸方向に下降させるソケット下降手段と、
上記ソケットを挿通可能な円筒形状を有するソケットガイドと、
該ソケットガイドを上記ソケットの軸方向に下降させるガイド下降手段と、
下方に向けて縮径するガイド穴を有するボルトガイドとを備えており、
上記ソケットの上記嵌合凹部には、ボルトを保持するためのボルト保持手段を有しており、
上記ボルトガイドは、複数のガイド部を合わせて上記ガイド穴を形成しており、
上記複数のガイド部は、上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ボルト保持手段により上記嵌合凹部に保持されたボルトの頭部を受け、上記ガイド下降手段によって下降させる上記ソケットガイドの下端によって上記テーパ内壁面が押されて上記ガイド穴を拡径させるよう構成してあることを特徴とするボルト締付装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボルト締付装置において、上記ソケットガイドの上方には、ボルト供給パイプから供給されるボルトを、その軸部を下方に向けて保持するボルトチャックが、上記ソケットガイドと同心上に配設してあり、
上記ボルト保持手段は、上記ソケットの上記嵌合凹部内においてバネを圧縮変形させて上記嵌合凹部内へ退避可能に配されたマグネットからなり、
上記ボルトチャックは、該ボルトチャックに保持するボルトの頭部を、上記移動装置によって上方から下降する上記ソケットの上記マグネットに吸着させ、上記ボルトを吸着した状態の上記ソケットを挿通させるよう構成してあることを特徴とするボルト締付装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボルト締付装置を用いて、ボルト締付対象におけるボルト締付穴へボルトを締め付ける方法であって、
上記ボルトガイドにおける上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ソケットガイド内に配置されたボルトの頭部を受ける動作と、
上記シリンダによって上記ソケットガイドを下降させ、該ソケットガイドの下端によって上記ガイド穴のテーパ内壁面を押すことによって、該ガイド穴を拡径する動作と、
上記ソケット下降手段によって上記ボルト締付装置及び上記ソケットを下降させるとともに、上記モータによる上記回転主軸の回転によって上記ソケットを回転させ、該ソケットの上記嵌合凹部にボルトの頭部を嵌合させて、該ボルトを上記ボルト締付穴へ締め付ける動作とを行うことを特徴とするボルト締付方法。
【請求項1】
モータによって回転する回転主軸と、
該回転主軸に装着され、ボルトの頭部に嵌合しボルトを保持する嵌合凹部を下端部に有するソケットと、
該ソケットをその軸方向に下降させるソケット下降手段と、
上記ソケットを挿通可能な円筒形状を有するソケットガイドと、
該ソケットガイドを上記ソケットの軸方向に下降させるガイド下降手段と、
下方に向けて縮径するガイド穴を有するボルトガイドとを備えており、
上記ソケットの上記嵌合凹部には、ボルトを保持するためのボルト保持手段を有しており、
上記ボルトガイドは、複数のガイド部を合わせて上記ガイド穴を形成しており、
上記複数のガイド部は、上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ボルト保持手段により上記嵌合凹部に保持されたボルトの頭部を受け、上記ガイド下降手段によって下降させる上記ソケットガイドの下端によって上記テーパ内壁面が押されて上記ガイド穴を拡径させるよう構成してあることを特徴とするボルト締付装置。
【請求項2】
請求項1に記載のボルト締付装置において、上記ソケットガイドの上方には、ボルト供給パイプから供給されるボルトを、その軸部を下方に向けて保持するボルトチャックが、上記ソケットガイドと同心上に配設してあり、
上記ボルト保持手段は、上記ソケットの上記嵌合凹部内においてバネを圧縮変形させて上記嵌合凹部内へ退避可能に配されたマグネットからなり、
上記ボルトチャックは、該ボルトチャックに保持するボルトの頭部を、上記移動装置によって上方から下降する上記ソケットの上記マグネットに吸着させ、上記ボルトを吸着した状態の上記ソケットを挿通させるよう構成してあることを特徴とするボルト締付装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のボルト締付装置を用いて、ボルト締付対象におけるボルト締付穴へボルトを締め付ける方法であって、
上記ボルトガイドにおける上記ガイド穴のテーパ内壁面に、上記ソケットガイド内に配置されたボルトの頭部を受ける動作と、
上記シリンダによって上記ソケットガイドを下降させ、該ソケットガイドの下端によって上記ガイド穴のテーパ内壁面を押すことによって、該ガイド穴を拡径する動作と、
上記ソケット下降手段によって上記ボルト締付装置及び上記ソケットを下降させるとともに、上記モータによる上記回転主軸の回転によって上記ソケットを回転させ、該ソケットの上記嵌合凹部にボルトの頭部を嵌合させて、該ボルトを上記ボルト締付穴へ締め付ける動作とを行うことを特徴とするボルト締付方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−210678(P2012−210678A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77308(P2011−77308)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000158976)技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000158976)技研工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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