説明

ボールペン用インキ

【課題】 ボテを極力少なくしながら滑らかな書き味を損なわず、ペン先からのインキの漏れ出し防止とペン先のインキ詰まり防止可能なボールペン用油性インキを提供する。
【解決手段】 平均粒子径40〜100nmシリカ微粒子0.01〜1.0重量%とポリビニルピロリドン0.01〜10.0重量%を併用し、角周波数ωrad/secが1rad/sec≦ω≦10rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′1と、0.1rad/sec≦ω≦1rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′2との間に、ΔG′2/ΔG′1≦0.6の関係が成り立つレオロジーを有するボールペン用油性インキ組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記部材としてインキを紙面等の被筆記面に転写するボールと、このボールを先端開口部から一部臨出させて回転自在に抱持するボールホルダーとから少なくともなるボールペンチップをペン先としたボールペンに収容されたボールペン用油性インキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の25℃における粘度が5000〜20000mPa・sの油性インキを充填した油性ボールペンでは、油性ボールペンを下向きに長期放置していると、ペン先からインキが漏れ出してくることがあった。また、25℃における粘度が1000mPa・s以下の低粘度の油性インキを充填した油性ボールペンにおいては、インキ漏れの傾向は顕著であった。インキ漏れを防止する目的でインキの乾燥性を高めると、書き味の低下や初筆カスレの発生、経時安定性の低下などの課題が残った。(特許文献1、2)
特開2001−192595号公報(特許文献3)では、黒色顔料としてアルコール系高沸点有機溶剤中で良好な分散安定性を示すカーボンブラックを選択することで、顔料が経時安定性に優れたインキを提示している。特開平8−239616号公報(特許文献4)では、ポリビニルピロリドンなどのような曳糸性付与樹脂を添加することによって、チップ先端に付着した余剰インキが紙面に付着するボテ減少を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭63−309571号公報
【特許文献2】特開平8−157765号公報
【特許文献3】特開2001−192595号公報
【特許文献4】特開平8−239616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献4に記載されているようなポリビニルピロリドンなどの曳糸性付与樹脂を添加したインキでは、低剪断速度領域における貯蔵弾性率が低下し、インキ漏れなどの不具合が生じることがあった。また、曳糸性樹脂の添加は、インキの粘度が高くなり書き味を損なう原因ともなり得る。
本発明の目的は、滑らかな書き味を損なわずに、ペン先からのインキの漏れ出しを抑制したボールペン用油性インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
即ち、本発明は、角周波数ωrad/secが1rad/sec≦ω≦10rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′1と、0.1rad/sec≦ω≦1rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′2との間に、ΔG′2/ΔG′1≦0.6の関係が成り立つことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物を要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
角周波数ωが1rad/sec≦ω≦10rad/secにおける貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′1と、0.1rad/sec≦ω≦1rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′2との間にΔG′2/ΔG′1≦0.6の関係が成り立つということは、高角周波数側から低角周波数側になるに従って貯蔵弾性率の傾きが小さくなっているということであり、角周波数の減少に比例して貯蔵弾性率が低下せず、貯蔵弾性率の傾きが小さくなったことから静止時に構造体を形成していると推測でき、それがインキ漏れ抑制効果を生み出していると推察される。
このようなインキのレオロジー的特性は、インキ中に特定の樹脂や微粒子などの固形分を溶解させたり分散させたりすることなどで得られるが、物質によっては、配合材料の添加順序や攪拌の状態や温度管理などの影響を受けることもある。特に、平均粒子径40〜100nmのシリカ微粒子0.01〜1.0重量%をインキに添加すると、インキ中に分散したシリカ微粒子間の分子間相互作用により構造体を形成すると考えられ、ΔG′2との間にΔG′2/ΔG′1≦0.6の関係が成り立つインキを容易に得ることができる。このインキのレオロジー測定の結果、角周波数0.1rad/sec付近からより低角周波数領域にかけて急激に貯蔵弾性率の低下が穏やかになっていることから、このシリカ微粒子は角周波数0.1rad/sec以下の超低剪断領域でのみ構造体を形成すると考えられる。その結果、静止時に近い状態になると、インキ全体の流動性を急激に低下させることができ、インキ漏れを抑制できる。0.1rad/sec付近に貯蔵弾性率の変曲点があり、0.01rad/sec以下になると傾きは0に近似してくる。このことから、ΔG′2/ΔG′1≦0.6の条件を満たすインキは静止時の漏れ現象を抑制できることが示唆される。
尚、このシリカ微粒子構造体は0.1s−1程度の超低剪断力で崩壊するため、筆記時に抵抗なく筆記できて書き味を損なうこともない。
更に、インキ中に、ポリビニルピロリドンを添加した場合、ポリビニルピロリドンは一般的に平均分子量が10000〜3000000と大きく、溶媒中では完全に溶解している訳ではなく膨潤している状態である。この膨潤したポリビニルピロリドン分子同士が複雑に絡まり合った状態がインキ組成物全体の曳糸性を発揮し、筆記面に付着したインキが小口に残ったインキを引っ張って紙面に移動させるのでいわゆるボテを抑制していると考えられている。しかし、この曳糸性は、小口に残ったインキが紙面と小口の間を引っ張って小口に戻すようにも作用すると考えられ、小口にインキが残ることも否めず、少しずつ溜まったインキはいずれボテとして紙面に落ちることとなる。
このインキ組成物に平均粒子径40〜100nmのシリカ微粒子を添加すると、膨潤したポリビニルピロリドン分子塊状物の内部にシリカ微粒子が入り込み、ポリビニルピロリドン分子内部にシリカ微粒子が点在するが、ポリビニルピロリドンの局地的な溶解状態の違いからシリカ微粒子がポリビニルピロリドン中で偏在して高密度部分と低密度部分が存在するようになる。
この構造体を形成していると考えられるシリカ微粒子の高濃度領域では、局部的に弾性が高い領域が存在することとなりインキ組成物全体の流動性が低下しており、シリカ微粒子のみ添加インキよりもさらにインキ漏れを抑制していると推察される。
尚、シリカ微粒子の高濃度領域では静止時に形成されていると推測される構造体が、1rad/sec≦ω領域では、与えられる剪断力≧0.1s−1により構造を保持できないものであり、一般的な油性ボールペン筆記時にインキにかかる剪断力(3000〜10000s−1)ではシリカ微粒子の構造体は容易に破壊されており、抵抗無く筆記でき書き味を損なうことはない。
また、シリカ微粒子の高密度部分ではシリカ微粒子がより強固な構造体を形成し、筆記時には、シリカ微粒子とポリビニルピロリドンとの界面でポリビニルピロリドン同士の絡まり合いが弱くなっていて、その結果、曳糸性をあまり強く発揮させないよう作用し、適度な状態を維持できる。シリカ微粒子とポリビニルピロリドンの界面で界面破壊が起こることでインキが容易に分離されて小口に溜まることなく紙面に落下するので、いわゆるボテの抑制効果が維持される。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、角周波数ωが1rad/sec≦ω≦10rad/secにおける貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′1と、0.1rad/sec≦ω≦1rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′2との間にΔG′2/ΔG′1≦0.6の関係が成り立つボールペン用油性インキ組成物であることによって、インキ漏れ抑制効果が得られるものであるが、このようなインキ組成物の物性は、特定の配合材料を選択することや、顔料粉砕微工程、顔料分散温度、顔料分散時間、インキ撹拌速度、インキ撹拌時間、エージング温度、エージング時間などを調整によって得ることができる。
【0008】
中でも、平均粒子径40〜100nmのシリカ微粒子0.01〜1.0重量%をインキに添加することで、角周波数0.1rad/sec付近からより低角周波数領域にかけて急激に貯蔵弾性率の低下が穏やかになり上記の物性のインキ組成物を得ることが可能である。平均粒子径が40〜100nmのシリカ微粒子を使用する場合には、その含有量は組成物全体に対して0.01重量%未満では漏れ出し防止効果が十分ではなく、1.0重量%を超えた場合は効果に変化は見られず経済的ではなく、更にボールペン用油性インキ組成物として経時安定性などの他の性能が損なわれる場合がある。シリカ微粒子の平均粒子径が40nm未満では本発明の効果が認められず、また平均粒子径が100nmを超えた場合にも本発明の効果が認められない。
【0009】
シリカ微粒子は、有機溶媒分散されていて高純度で細やかな微粒子のものであればかまわない。具体的なものとしては、日産化学工業株式会社製のIPA−ST−L(分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%)、MEK−ST−L(分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%)、MEK−AC−4101(分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径40〜50nm、表面処理タイプ、固形分:30%)、EG−ST−XL30(分散媒:エチレングリコール、平均粒子径40〜60nm、固形分:30%)、IPA−ST−ZL(分散媒:イソプロパノール、平均粒子径70〜100nm、固形分:30%)、EG−ST−ZL(分散媒:エチレングリコール、平均粒子径70〜100nm、固形分:20%)、MEK−ST−ZL(分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径70〜100nm、固形分:30%)などが挙げられる。
【0010】
ポリビニルピロリドンは、具体的なものとしては、ISPジャパン製のPVP K−15、同 K−30、同 K−90、同 K−10などが挙げられる。これらの増粘剤の使用量はボールペン用油性インキ全量に対し0.1重量%以上10.0重量%以下が好適に使用でき、0.5重量%以上5.0重量%以下がより好ましい。使用量が0.1重量%より少ないと粘度が低くてインキが漏れる不具合を生じやすくなる。また、10.0重量%より多いと経時的な増粘による筆記不能やボールペン用油性インキ中の固形分の増加により書き味が重くなる不具合を生じやすくなる。
【0011】
有機溶剤は通常ボールペン用油性インキに使用される溶剤であれば使用可能である。
具体例を挙げると、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノノルマルブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、フェニルセロソルブ、ベンジルアルコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、イソブチルジグリコール、フェニルジグリコール、フェニルトリグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、ベンジルトリグリコール等がある。
【0012】
着色剤は通常一般的に使用されている染料、顔料が使用可能である。染料の一例を挙げると、SPILON BLACK GMH SPECIAL、SPILON RED C−GH、SPILON RED C−BH、SPILON BLUE C−RH、SPILON BLUE BPNH、SPILON YELLOW C−2GH、SPILON VIOLET C−RH、S.P.T. ORANGE6、S.P.T. BLUE111(保土ヶ谷化学工業(株)製)などのアイゼンスピロンカラー、アイゼンSOT染料、ORIENT SPRIT BLACK AB、VALIFAST BLACK 3804、VALIFAST RED 1320、VALIFAST RED 1360、VALIFAST ORANGE 2210、VALIFAST BLUE 1605、VALIFAST VIOLET 1701、VALIFAST BLUE 1601、VALIFAST BLUE 1603、VALIFAST BLUE 1621、VALIFAST BLUE 2601、VALIFAST YELLOW 1110、VALIFAST YELLOW 3104、VALIFAST YELLOW 3105、VALIFAST YELLOW 1109(オリエント化学工業(株)製)などのバリファストカラー、オリエントオイルカラー、ローダミンBベース、ソルダンレッド3R、メチルバイオレット2Bベース、ビクトリアブルーF4R等や、ネオスーパーブルーC−555(中央合成化学(株)製)が挙げられる。
【0013】
顔料は通常一般的に使用されているものは使用することが可能である。一例を挙げると、カーボンブラックや不溶性アゾ顔料、アゾレーキ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、アントラキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、ペリノン、ペリレン系顔料等有機顔料などの従来公知の一般的な顔料が使用可能である。これらは単独で用いてもよいし、2種以上組合せ調色して用いてもよい。
【0014】
黒色顔料としてはカーボンブラックが使用できる。その一例を挙げると、プリンテックス3、同25、同30、同35、同40、同45、同55、同60、同75、同80、同85、同90、同95、同300、スペシャルブラック4、同5、同100、同250、同550(以上、デグサヒュルスジャパン(株)製)。三菱カーボンブラック#2700、同#2650、同#2600、同#2400、同#2350、同#2300、同#2200、同#1000、同#990、同#980、同#970、同#960、同#950、同#900、同#850、同#750、同#650、同#52、同#50、同#47、同#45、同#45L、同#44、同#40、同#33、同#32、同#30、同#25、同#20、同#10、同#5、同#95、同#260、同CF9、同MCF88、同MA600、同MA77、同MA7、同MA11、同MA100、同MA100R、同MA100S、同MA220、同MA230(以上、三菱化学(株)製)、トーカブラック#8500/F、同#8300/F、同#7550SB/F、同#7400、同#7360SB/F、同#7350/F、同#7270SB、同#7100/F、同#7050(以上、東海カーボン(株)製)等が挙げられる。
青色顔料としては例えばC.I.Pigment Blue 2、同9、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同28、同29、同36、同60、同68、同76、同80等が使用できる。
赤色の顔料としてはC.I.Pigment Red 2、同3、同5、同8、同14、同17、同22、同23、同31、同48:1、同48:2、同48:3、同48:4、同53:1、同53:2、同57:1、同112、同122、同144、同146、同149、同166、同170、同175、同176、同177、同179、同184、同185、同187、同188、同202、同207、同208、同209、同210、同211、同213、同214、同242、同253、同254、同255、同256、同257、同264、同266、同268、同270、同272等が使用できる。
黄色の顔料としてはC.I.Pigment Yellow 1、同3、同12、同13、同14、同16、同17、同55、同73、同74、同79、同81、同83、同93、同94、同95、同97、同109、同110、同111、同120、同128、同133、同136、同138、同139、同147、同151、同154、同155、同167、同173、同174、同175、同176、同180、同185、同191、同194、同213等が使用できる。
橙色の顔料としてはC.I.Pigment Orange5、同13、同16、同34、同36、同38、同43、同62、同68、同72、同74等がある。
緑色の顔料としてはC.I.Pigment Green7、同36、同37等が使用できる。
紫色の顔料としてはC.I.Pigment Violet19、同23等が使用できる。
また、ロイコ染料と顕色剤、消色剤をカプセルなどで組み合わせることによって、圧力や熱の付与によって顕色−消色や変色するインキとすることもできる。
これらの染料および顔料の使用量はボールペン用油性インキ全量に対し1重量%以上40重量%以下が好適に使用でき、1重量%以上30重量%以下がより好ましい。使用量が1重量%より少ないと筆跡が薄すぎて判読が難くなる。また、40重量%より多いと経時的な沈降による目詰まりによる筆記不能やボールペン用油性インキ中の固形分の増加により書き味が重くなる不具合を生じやすくなる。
【0015】
顔料を分散するには通常一般的な方法で可能である。
例えば、顔料と、エチレングリコールモノメチルエーテルと、分散剤とを混合し、プロペラ撹拌機等で均一に撹拌した後、分散機で顔料を分散する。ロールミル、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、ホモジナイザー等の分散機はインキの溶剤量や、顔料濃度によって適宜選択する。
【0016】
筆跡の筆記面への定着性を付与するために樹脂をインキ組成物中に併用して添加することも可能である。具体例としては、例えば、フェノール樹脂、ケトン樹脂、ロジン樹脂などのインキ組成物用樹脂が挙げられる。
インキ組成物用樹脂の具体例としては、フェノール樹脂として、タマノル100S、同510(以上、荒川化学工業(株)製)、ヒタノール1501、同2501(以上、日立化成工業(株)製)、YP−90、YP−90L、YSポリスターS145、同#2100、同#2115、同#2130、同T80、同T100、同T115、同T130、同T145、マイティエースG125、同150(以上、ヤスハラケミカル(株)製)などが、ケトン樹脂として、ハイラック110H、同111、同222、同901(以上、日立化成工業(株)製)、ハロン110H(本州化学製)、レジンSK(ヒュルス社製)など、ロジン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂として、ハーコリンD、ペンタリン255、同261、同269、同830(以上、理化ハーキュレス(株)製)、ハリエスターNL、同L、同MT、同MSR−4、ハリマック135G、同T−80、同FX−25、同AS−5、同AS−9、ネオトールC、ガムロジンX(以上、ハリマ化成(株)製)、ガムロジンWW(中国産)、エステルガムH、マルキード#30A、同#31、同#32、同#33、同#34(荒川化学工業(株)製)などが挙げられる。
これらの樹脂の使用量は、インキ組成物全量に対し0.5〜20.0重量%以下が好ましい。0.5重量%未満では筆記面に対する筆跡の定着性が不十分となる場合があり、20.0重量%を超えるとインキの粘度が高くなりペン先からのインキ吐出が悪くなる不具合が発生する可能性がある。
【0017】
以上の成分の他に更に必要に応じて、従来インキ組成物に使用されている界面活性剤、防錆剤などの各種添加剤を適宜使用できる。界面活性剤の一例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸などが挙げられる。防錆剤の一例を挙げると、ベンゾトリアゾール、シクロヘキシルアンモニウムクロライド、2−メルカプトベンゾトリアゾール、ベンゾイルアミノカプロン酸、硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0018】
インキを製造するには、染料や上記で分散した顔料とシリカ粒子をホモミキサー等の撹拌機にて充分に混合攪拌した後、他の成分、例えば粘度調整剤や溶剤、色調調整のための油性染料、潤滑剤等を混合し、更に均一になるまで溶解・混合することで得られるが、場合によって混合したインキをさらに分散機にて分散したり、得られたインキを濾過や遠心分離機に掛けて粗大粒子や不溶解成分を除いたりすることは何ら差し支えない。
【0019】
また、本発明のボールペン用油性インキ組成物を使用するボールペンは、従来知られている構造を際限なく使用することができる。例えば、ボールホルダーから一部臨出した状態でボールホルダーに抱持される筆記用ボールは、タングステンカーバイドやシリコンカーバイドなどの焼結体や金属製のボールを使用することができ、その直径も0.1ミリメートル程度の小径ボールから、0.5、0.7、1.0、1.5、2.0、2.5ミリメートルを超える大径のボールを使用することもできるし、ボールを抱持するボールホルダーとして、ステンレスや洋白、黄銅などの合金や、ポリオキシメチレン樹脂などの耐摩耗性の高い樹脂製のものとすることもできる。インキを収容する部材は、アルミニウム合金やステンレスなどの合金や、透明性を有するポリプロピレン樹脂やポリエーテルケトン樹脂などの合成樹脂の押し出し又は射出成型パイプとすることもできる。また、インキタンク内にインキの後方移動や漏れを抑制する、シリコンオイルやポリブテン、α−オレフィンなどを使用した高粘度流体をインキ界面に接触させてインキ界面の移動に伴って移動するよう配置することもできる。
【実施例】
【0020】
以下、実施例及び比較例に基づき更に詳細に説明する。尚、各実施例中単に「部」とあるのは「重量部」を表す。
【0021】
(実施例1)
エチレングリコールモノプロピルエーテル 5.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 23.36部
エチレンングリコールモノフェニルエーテル 20.0部
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルズジャパン(株)製) 5.5部
SPILON BLUE C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 5.0部
VALIFAST YELLOW 1109(油性染料、オリエント化学工業(株)製)
7.0部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 5.0部
VALIFAST BLUE #1605(油性染料、オリエント化学工業(株)製)
5.0部
ハイラック 901(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 15.0部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISP ジャパン製) 0.3部
エスレック BL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 3.0部
ヒタノール1501(フェノール樹脂、日立化成工業(株)製) 1.5部
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 2.69部
IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製) 1.65部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で撹拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからプリンテックス35の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライス製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い、10回通しを行い黒色のペーストを得た。
ついでこのペーストに残りの添加物の全量を加え、70℃で3時間撹拌、混合した後室温まで放冷し黒色のボールペン用インキを得た。
【0022】
(実施例2)
エチレングリコールモノプロピルエーテル 15.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 5.0部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 34.77部
Pigment Red 2(赤顔料) 5.5部
SPILON RED C−BH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 3.0部
VALIFAST YELLOW 1109(油性染料、オリエント化学工業(株)製)
5.0部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 10.0部
ハイラック 111(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 10.0部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン製) 0.6部
エスレック BL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 3.3部
エスレック BH−3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 1.5部
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 3.5部
ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸 2.5部
EG−ST−XL30(オルガノシリカゾル、分散媒:エチレングリコール、平均粒子径40〜60nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製) 0.33部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で撹拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからPigment Red 2の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライス製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い、10回通しを行い赤色のペーストを得た。
ついでこのペーストに残りの添加物の全量を加え、70℃で3時間撹拌、混合した後室温まで放冷し赤色のボールペン用インキを得た。
【0023】
(実施例3)
エチレングリコールモノプロピルエーテル 10.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 18.85部
エチレングリコールモノフェニルエーテル 15.0部
Pigment Blue 9(青顔料) 5.5部
SPILON BLUE C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 15.0部
OIL BLUE 613(油性染料、オリエント化学工業(株)製) 10.0部
ケトンレジン Kー90(ケトン樹脂、荒川化学工業(株)製) 13.0部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン製) 0.5部
エスレック BL−1(ポリビニルブチラール、分散剤、積水化学工業(株)製)
3.5部
エスレック BH−3(ポリビニルブチラール、粘度調整剤、積水化学工業(株)製)
1.0部
ポリオキシエチレンアルキルエーテル 2.5部
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 3.5部
MEK−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径40
〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製) 1.65部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量と、エスレックBL−1の全量を70℃で撹拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷してからPigment Blue 9の全量を加えダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライス製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い、10回通しを行い青色のペーストを得た。
ついでこのペーストに残りの添加物の全量を加え、70℃で3時間撹拌、混合した後室温まで放冷し青色のボールペン用インキを得た。
【0024】
(実施例4)
実施例2よりエチレングリコールモノフェニルエーテルを0.693部減らし、EG−ST−XL30(オルガノシリカゾル、分散媒:エチレングリコール、平均粒子径40〜60nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)0.033部を加えた以外は同様に為し、赤色のボールペン用油性インキを得た。
【0025】
(実施例5)
実施例1よりエチレングリコールモノプロピルエーテルを1.645部添加し、PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン製)を0.295部減らし、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を3.3部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0026】
(実施例6)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを5.66部減らし、エチレングリコールモノフェニルエーテルを5.0部減らし、ハイラック 901(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製)を5.69部減らし、PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン製)を14.7部添加し、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を3.3部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0027】
(実施例7)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを3.36部減らし、エチレングリコールモノフェニルエーテルを3.49部減らし、ハイラック 901(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製)を10.0部減らし、PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISPジャパン製)を8.2部添加し、エスレック BH−3(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製)を7.0部添加し、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を3.3部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0028】
(実施例8)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、IPA−ST−ZL(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径70〜100nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0029】
(実施例9)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを0.85部減らし、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、EG−ST−ZL(オルガノシリカゾル、分散媒:エチレングリコール、平均粒子径70〜100nm、固形分:20%、日産化学工業(株)製)を2.5部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0030】
(実施例10)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、MEK−ST−ZL(オルガノシリカゾル、分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径70〜100nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0031】
(実施例11)
エチレングリコールモノプロピルエーテル 5.0部
ジエチレングリコールモノメチルエーテル 25.01部
エチレンングリコールモノフェニルエーテル 20.0部
プリンテックス35(カーボンブラック、デグサヒュルズジャパン(株)製) 5.5部
SPILON BLUE C−RH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 5.0部
VALIFAST YELLOW 1109(油性染料、オリエント化学工業(株)製)
7.0部
SPILON RED C−GH(油性染料、保土谷化学工業(株)製) 5.0部
VALIFAST BLUE #1605(油性染料、オリエント化学工業(株)製)
5.0部
ハイラック 901(ケトン樹脂、日立化成工業(株)製) 15.0部
PVP K−90(ポリビニルピロリドン、ISP ジャパン製) 0.3部
エスレック BL−1(ポリビニルブチラール、積水化学工業(株)製) 3.0部
ヒタノール1501(フェノール樹脂、日立化成工業(株)製) 1.5部
ポリオキシエチレン硬化ひまし油 2.69部
上記成分のうち、ジエチレングリコールモノメチルエーテルの全量とプリンテックス35の全量を加えて湿式ジェットミル(アルティマイザー HJP−25005、スギノマシン製)で250MPaの高圧で1分間に1回顔料ベースが循環するように設定し、1回循環することを1パスとして、40パス行った。その後、エスレックBL−1の全量を加えて70℃で撹拌、混合溶解した後、これを室温まで放冷し、ダイノーミル(ビーズミル、(株)シンマルエンタープライス製)で直径0.3mmのジルコニアビーズを用い、30回通しを行い黒色のペーストを得た。
ついでこのペーストに残りの添加物の全量を加え、ホモジナイザーを用いて回転数3000rpmで撹拌温度70℃に調整して3時間撹拌、混合した後40℃で2週間エージングした後、これを室温まで放冷し、黒色のボールペン用インキを得た。
【0032】
(実施例12)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを3.3部減らし、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を4.95部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0033】
(実施例13)
実施例11よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを1.65部減らし、TOL−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:トルエン、平均粒子径10〜15nm、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0034】
(比較例1)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.633部添加し、ジエチレングリコールモノメチルエーテルを0.0165部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0035】
(比較例2)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、メタノールシリカゾル(オルガノシリカゾル、分散媒:メタノール、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0036】
(比較例3)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを0.4部添加し、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、MA−ST−M(オルガノシリカゾル、分散媒:メタノール、平均粒子径18〜23nm、固形分:40%、日産化学工業(株)製)を1.25部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0037】
(比較例4)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、IPA−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0038】
(比較例5)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを1.68部減らし、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、IPA−ST−UP(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径9〜15nm(鎖状)、固形分:15%、日産化学工業(株)製)を3.33部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0039】
(比較例6)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを0.85部減らし、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、EG−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:エチレングリコール、平均粒子径10〜15nm、固形分:20%、日産化学工業(株)製)を2.5部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0040】
(比較例7)
実施例1よりジエチレングリコールモノメチルエーテルを0.85部減らし、IPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、DMAC−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:ジメチルアセトアミド、平均粒子径10〜15nm、固形分:20%、日産化学工業(株)製)を2.5部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0041】
(比較例8)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、NPC−ST−30(オルガノシリカゾル、分散媒:エチレングリコール−モノn−プロピルエーテル、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0042】
(比較例9)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、PMG−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0043】
(比較例10)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、MIBK−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:メチルイソブチルケトン、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0044】
(比較例11)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、PMA−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0045】
(比較例12)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、EAC−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:酢酸エチル、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0046】
(比較例13)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、NBAC−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:酢酸ブチル、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0047】
(比較例14)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、XBA−ST(オルガノシリカゾル、分散媒:キシレン/n−ブタノール、平均粒子径10〜15nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0048】
(比較例15)
実施例1よりIPA−ST−L(オルガノシリカゾル、分散媒:イソプロパノール、平均粒子径40〜50nm、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を抜き、MEK−AC−2101(オルガノシリカゾル、分散媒:メチルエチルケトン、平均粒子径10〜15nm(表面処理タイプ)、固形分:30%、日産化学工業(株)製)を1.65部添加した以外は同様に為し、黒色のボールペン用油性インキを得た。
【0049】
(粘度測定)
実施例1〜13及び比較例1〜15で得たボールペン用油性インキ組成物を、Physica MCR301(Anton Paar社製)で温度25℃、ひずみ1%、ローターC50−1、角周波数100rad/s〜0.01rad/sの範囲で貯蔵弾性率を測定して貯蔵弾性率曲線を作製した。測定条件として、角周波数100rad/s〜0.01rad/sの範囲で測定点を17点とし、測定点が角周波数の対数軸に対して等間隔になるように角周波数を設定した。
【0050】
(試験用油性ボールペンの作製)
上記実施例1〜13及び比較例1〜15で得たボールペン用油性インキを市販の油性ボールペン(VICUNA、製品符号 BX157、ぺんてる(株)製(ボール径φ0.7))と同構造の筆記具に0.2g充填し、遠心機にて遠心力(1000rpm、5分間)を加えてインキ中の気泡を脱気して、試験用ボールペンを作製した。
【0051】
(ボテ試験)
400字詰め原稿用紙((株)コクヨ製、品番:ケ−10)1枚にひらがな50音を繰り返し筆記したときに紙面に発生したボテの数を数えた。結果を表1に示す。
【0052】
(筆記抵抗値の測定)
上記実施例、比較例のインキを収容した試験用のボールペンを、n=3本ずつ(株)トリニティーラボ製のTribo−master(Type:TL201Sa)にて、試験用のボールペン作成後未筆記の筆記抵抗値を測定した。筆記抵抗値を測定した際の筆記角度は、70°にて筆記させ、その他の条件としては、筆記荷重150g、筆記速度7cm/secとした。
筆記抵抗値の測定については、測定周波数200Hz(1秒間に200プロット測定)にて2.5秒間測定を行ったデータの0.5〜2.0秒後までの1.5秒間の各プロットにおける値の総和を総プロット数(300プロット/1.5秒間)で割って平均値とし、検体に対する平均筆記抵抗値を算出した。更に、3本の検体に対する各平均筆記抵抗値からn=3本の平均値を算出して各実施例、比較例を使用した試験用のボールペンの筆記抵抗値とした。結果を表1に示す。
【0053】
(インキ漏れ試験)
上記実施例、比較例のインキを収容した試験用ボールペンを10本ずつ作成し、それぞれ10cm直線筆記をした直後に、ペン先を下向きに室温で3日間静置した。その時のボールホルダーの開口部先端から、ボールペンチップの外面にインキが付着している部分の、軸心長手方向の最大長さをインキ漏れ長さとした。試験結果は平均値で評価し、結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1〜4ではシリカ微粒子の平均粒子径と添加量、ポリビニルピロリドンの添加量、インキ組成物の粘度のいずれも範囲内であり、ポリビニルピロリドン分子内部へ効率よくシリカ微粒子が分散することでインキ漏れ抑制やボテ防止効果が現れている。
【0056】
実施例5〜10では低粘度化または高粘度化しても、平均粒子径40〜100nmシリカ微粒子を範囲内で添加することで静止時のインキの流動性を低下させ、チップ付着量を低減させることができたと考えられる。実施例12はシリカ微粒子の量が範囲を超えたため、ボールとチップ受座との間で引っかかりが大きくなり、筆記抵抗値がやや上昇したと考えられる。実施例11、13はインキ製造方法を調整することでインキ洩れ抑制やボテ防止効果を得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角周波数ωrad/secが1rad/sec≦ω≦10rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′1と、0.1rad/sec≦ω≦1rad/sec時の貯蔵弾性率の線形近似の傾きΔG′2との間に、ΔG′2/ΔG′1≦0.6の関係が成り立つことを特徴とするボールペン用油性インキ組成物。
【請求項2】
平均粒子径40〜100nmシリカ微粒子を0.01〜1.0重量%含有する請求項1記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項3】
ポリビニルピロリドンを0.01〜10.0重量%含有する請求項2記載のボールペン用油性インキ組成物。
【請求項4】
25℃で剪断速度100s−1時の粘度が1000mPa・s以下である請求項2又は3に記載のボールペン用油性インキ組成物。

【公開番号】特開2013−32511(P2013−32511A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145999(P2012−145999)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【Fターム(参考)】