説明

ボールペン用水性顔料インキ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、インキ収容室に直接インキを充填する型のボールペンに用いる、酸化チタンと、樹脂粒子とを含むインキであって、特に黒画用紙のような目の粗い暗色紙への筆記を良好にしたボールペン用水性顔料インキに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、白色顔料を着色剤として用いたインキとしては、特開平4−258677号公報に記載されたインキがある。このインキは酸化チタンなどの隠蔽材と、樹脂エマルジョンなどの結合剤と水とより少なくともなり、粘度が数10〜数100センチポイズであって、修正液やマーキングペンに使用できる。上記インキは、着色剤として比重の大きな酸化チタンを使用しているために、短期間で酸化チタンが沈降してしまうので、使用前に撹拌して、沈降した酸化チタンを再分散してから使用するものである。
【0003】上記のインキに対し、使用前の撹拌による酸化チタンの再分散を不要とした水性白色顔料インキも提案されている。例えば、特開昭59−217776号公報は、(A)酸化チタン100重量部当りケイ酸アルミニウム系顔料5〜100重量部を配合した混合顔料と、(B)炭素−炭素二重結合を有する不飽和化合物モノマーと不飽和カルボン酸モノマーとの共重合体であって酸価30〜500を有するものとを、(A)成分と(B)成分との重量比が20:1ないし1:2になる割合で含有する水性分散液からなる水性顔料組成物を要旨とするものであるが、発明の詳細な説明の中に、ポリアクリル酸ソーダを使用して粘度を10000センチポイズとしたインキが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記、特開平4−258677号公報に記載されているようなインキをボールペンに使用した場合、使用前に撹拌して沈降した酸化チタンを再分散することが出来ないので筆記が不能になってしまう。特に、インキ粘度が数10〜数100センチポイズであると、酸化チタンの沈降物は再分散不可能なハードケーキ化し易いため実用化がほとんど不可能である。
【0005】また、特開昭59−217776号公報に記載されているポリアクリル酸ソーダを使用して粘度を10000センチポイズとしたインキであっても、ポリアクリル酸ソーダのような増粘剤を使用しただけでは酸化チタンの沈降を遅くすることは出来ても、防止することは出来ない。更に、このインキではインキ中の固形分(酸化チタン及びケイ酸アルミニウム系顔料などのように水に対して不溶解なもの)が低い(12体積%)ため、黒画用紙の様な目の粗い暗色紙に筆記した場合、紙の中に顔料が浸透してしまい筆跡が薄くなってしまうという問題が発生する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、酸化チタンと、樹脂粒子と、増粘性水溶性樹脂と、結合剤と、水とを少なくとも含み、粘度が6000〜50000センチポイズ(E型粘度計、stローター、25℃)であり、インキ中の固形分比率が15〜30体積%であるボールペン用水性顔料インキを要旨とする。
【0007】以下、詳細に説明する。酸化チタンは、着色剤または隠蔽材として使用するものであり、ルチル型、アナターゼ型などの各種の酸化チタンが使用できる。市販の酸化チタンとしては、タイトーンSR−1、同R−650、同R−3L、同A−110、同A−150、同R−5N(以上、堺化学工業(株)製)、タイペークR−580、同R−930、同A−100、同A−220、同CR−58(以上、石原産業(株)製)、クロノスKR−310、同KR−380、同KR−480、同KA−10、同KA−20、同KA−30(以上、チタン工業(株)製)、タイピュアR−900、同R−931(デュポン・ジャパン・リミテッド社製)、チタニックスJR−300、同JR−600A、同JR−800、同JR−801(以上、テイカ(株)製)等が挙げられる。
【0008】樹脂粒子は、インキ中の固形分の平均比重を小さくし、酸化チタンの沈降を防止するとともに、酸化チタンの紙への浸透を防止するために使用するものであって、材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリメタクリレート、ベンゾグアナミン、ナイロン等が挙げられ、形状としては球状のもの、異形のものや中空のものなどが挙げられる。また、染料などで着色したものも使用できる。市販の樹脂粒子としては、MP−1000(ポリメチルメタクリレート、綜研化学(株)製)、エポスターS(メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、日本触媒化学工業(株)製)ナイロンSP(ナイロン、東レ(株)製)、塩化ビニル#121(塩化ビニル、日本ゼオン(株)製)などが挙げられる。中空の樹脂粒子としては、MH5055(固形分30%)(日本ゼオン(株)製)、SX863(A)(固形分20%)、SX864(B)(固形分40%)、SX865(B)(固形分48%)(以上、日本合成ゴム(株)製)、ローペイクOP−62(固形分42.5%)、同OP−84J(固形分37.5%)、同OP−91(固形分27.5%)(以上、ローム・アンド・ハース・ジャパン(株)製)などが挙げられる。染料などで着色した樹脂粒子としては、SW−11(レッド・オレンジ、色調、以下同じ)、SW−12(グリーン)、SW−13(レッド)、SW−14(オレンジ)、SW−15(レモン・イエロー)、SW−16(オレンジ・イエロー)、SW−17(ピンク)、SW−27(ローズ)、SW−37(ルビン)、SW−47(バイオレット)、SW−18(ブルー)(以上、シンロイヒ(株)製)、LUMIKOL NKW−2101(レッドオレンジ)、同NKW−2102(グリーン)、同NKW−2103(レッド)、同NKW−2104(オレンジ)、同NKW−2108(ブルー)、同NKW−2117(ピンク)、同NKW−2127(ローズ)、同NKW−2137(ルビン)、同NKW−2167(バイオレット)(以上、不揮発分51〜54%)(以上、日本蛍光化学(株)製)などが挙げられる。上記、樹脂粒子は1種又は2種以上混合して使用可能である。
【0009】増粘性水溶性樹脂は、インキの粘度を調整するために使用するもので、少量の添加量で効果を発現するものである。具体的には、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸塩、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体といった合成系(共)重合物や、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース系高分子や、グァーガム、キサンタンガム、ウエランガム、ラムザンガム、ローカストビーンガム等の天然系高分子の外、水添ヒマシ油、ポリカルボン酸アミド等のゲル化剤といったものが挙げられる。これらの増粘性水溶性樹脂は1種又は2種以上混合しても使用できる。その使用量は、本ボールペン用水性顔料インキが適切な粘度(6000〜50000センチポイズ)を示すように設定されるが、ボールペン用水性顔料インキ全量に対し0.1〜2.0重量%が好ましい。
【0010】結合材は、インキの塗膜を紙面に定着させるために使用するものである。具体的には、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩、α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩、スチレン−アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体のアルカリ金属塩、アミン塩、アンモニウム塩の外、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合物などの水不溶性樹脂などが挙げられる。尚、水不溶性樹脂は、当然、水性エマルジョンの形態で使用する。その使用量はボールペン用水性顔料インキ全量に対し3〜20重量%が好ましい。
【0011】本発明のボールペン用水性顔料インキは、6000〜50000センチポイズであることが必要である。これはボールペン用インキとして書き易さに優れ、インキ吐出が良好であり、十分な筆跡濃度を保証するためである。インキ粘度が6000センチポイズより低い場合、顔料の沈降分離が大きくなり、特に、上向きに放置された場合の筆跡濃度が極端に低くなり、50000センチポイズより高い場合、インキの吐出性が低く、書き難くなる。
【0012】更に、インキ中の固形分比率は15〜30体積%であることが必要である。これは目の粗い黒画用紙のようなものに筆記した場合にでも、十分な筆跡濃度を保証するためである。固形分比率が15体積%以下では、目の粗い黒画用紙のような浸透しやすい紙に筆記した場合、顔料が紙中に浸透し筆跡が薄くなってしまい、30体積%以上では、インキがボールペンチップに目詰まりしやすく、筆記不能になり易い。本発明でいう固形分とは、酸化チタン及び樹脂粒子のような水に不溶解性物質を指し、後述する着色顔料や体質顔料を使用する場合には、これらも含まれる。但し、上記、水性エマルジョンの形態で使用する、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合物などの水不溶性樹脂は含まない。固形分中において、酸化チタンは40体積%以上が好ましい。なお、固形分比率は式1により算出するが、固形分の体積は、インキに使用した水不溶解性物質各々の和であり、水不溶解性物質各々の体積の値は、使用量(重量)を比重で割った値である。
固形分比率=固形分の体積/インキの体積 (式1)
【0013】上記成分以外、筆記具用水性インキに用いられる種々の添加剤を適宜必要に応じて使用することもできる。例えば、インキの蒸発防止のためにエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の水溶性有機溶剤及びソルビット、キシリット等の糖アルコールや、防腐剤や、筆記感を向上するためにポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等の潤滑剤や、無機顔料、有機顔料といった着色材や、体質顔料などが挙げられる。
【0014】本発明のボールペン用水性顔料インキを製造するに際しては、種々の方法が採用できるが、例えば上記各成分を配合し、これをボールミル、サンドグラインダー、スピードラインミル、三本ロールミル等の分散機により混合分散すれば容易に得られる。
【0015】
【作用】水不溶解物が酸化チタンのみであるボールペン用インキは、酸化チタンの沈降を完全には防止することが困難であり、沈降によって生じる凝集体がボールペンのボールの回転により破壊されない強固なものになるため、インキに経時的に分離が発生したり、筆記不能となったりする。本発明のボールペン用水性顔料インキは、比重が酸化チタンの1/3〜1/5の樹脂粒子を併用することにより、インキ中の固形分の全体の比重が下がり、酸化チタンの沈降の抑制効果が大きく、また、樹脂粒子が酸化チタンと共に沈降することにより凝集体の中に取り込まれ、強固な凝集体の生成を防止する。しかも、本発明のボールペン用水性顔料インキは、粘度が6000〜50000センチポイズであるので、顔料が紙中に浸透しにくく、更に、固形分比率を15〜30体積%としたので、たとえ紙中に固形分が少量浸透しても筆跡濃度の低下は少ない。その為、黒画用紙のような目の粗い暗色紙に筆記しても鮮明な筆跡が得られる。
【0016】
【実施例】
実施例1 タイピュアR900(酸化チタン) 100重量部 MP−1000(樹脂粒子) 30重量部 ジャガーHP60(ガーガム誘導体、三晶(株)製)の3重量%水溶液 25重量部 ジョンクリルJ61J(スチレン−アクリル共重合体アンモニウム塩、固形分30.6%、ジョンソンポリマー(株)製) 10重量部 エチレングリコール 10重量部 グリセリン 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤、日光ケミカルズ(株)製) 2重量部 水 160重量部上記各成分中、ジャガーHP60の3重量%水溶液以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、ジャガーHP60の3重量%水溶液を加えて1時間撹拌を行い、粘度8000センチポイズ、固形分16.6体積%(酸化チタン9.0体積%、樹脂粒子7.6体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0017】実施例2 クロノスKR380(酸化チタン) 100重量部 LUMIKOL NKW2108(樹脂粒子、固形分53重量%) 40重量部 ケルザンAR(キサンタンガム)の6重量%水溶液 25重量部 ジョンクリルJ61J(スチレンーアクリル共重合体アンモニウム塩) 20重量部 エチレングリコール 10重量部 グリセリン 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤) 3重量部 水 132重量部上記各成分中、LUMIKOL NKW2108、ケルザンARの6重量%水溶液以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、LUMIKOL NKW2108、ケルザンARの6重量%水溶液を加えて1時間撹拌を行い、粘度20000センチポイズ、固形分15.7体積%(酸化チタン9.3体積%、樹脂粒子6.4体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0018】実施例3 タイピュアR900(酸化チタン) 100重量部 MP−1000(樹脂粒子) 8重量部 ケルザンAR(キサンタンガム)の6重量%水溶液 45重量部 ジョンクリルJ711 (アクリル系エマルジョン、固形分42%、ジョンソンポリマー(株)製) 14重量部 PO20(糖アルコール、固形分75% 東和化成工業(株)製)) 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤、前述) 2重量部 水 81重量部上記各成分中、ケルザンARの6重量%水溶液以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、ケルザンARの6重量%水溶液を加えて1時間撹拌を行い、粘度40000センチポイズ、固形分16.5体積%(酸化チタン13.2体積%、樹脂粒子3.0体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0019】実施例4 タイピュアR931(酸化チタン) 85重量部 エポスターS(樹脂粒子) 46重量部 ケルザンT(キサンタンガム、三晶(株)製)の3重量%水溶液10重量部 ジョンクリルJ711(前述) 14重量部 エチレングリコール 10重量部 グリセリン 10重量部 PO20(糖アルコール、前述) 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤、前述) 2重量部 水 167重量部上記各成分中、ケルザンTの3重量%水溶液以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、ケルザンTの3重量%水溶液を加えて1時間撹拌を行い、粘度8000センチポイズ、固形分19.3体積%(酸化チタン8.7体積%、樹脂粒子10.6体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0020】実施例5 タイピュアR900(酸化チタン) 100重量部 LUMIKOL NKW2108(樹脂粒子、固形分53%) 40重量部 ケルザンAR(キサンタンガム)の6重量%水溶液 22重量部 ジョンクリルJ711(アクリル系エマルジョン、前述) 14重量部 エチレングリコール 10重量部 グリセリン 10重量部 PO20(糖アルコール、前述) 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤、前述) 2重量部 水 70重量部上記各成分中、LUMIKOL NKW2108、ケルザンAR以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、LUMIKOL NKW2108、ケルザンARを加えて1時間撹拌を行い、粘度20000センチポイズ、固形分20.7体積%(酸化チタン12.3体積%、樹脂粒子8.4体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0021】実施例6 タイピュアR900(酸化チタン) 100重量部 SX863(P)(中空樹脂粒子、固形分20%、日本合成ゴム(株)製) 27重量部 ジャガーHP60(ガーガム誘導体)の3重量%水溶液 15重量部 ジョンクリルJ61J(アクリルースチレン共重合体アンモニウム塩、固形分30.6%、前述) 20重量部 エチレングリコール 10重量部 グリセリン 10重量部 PO20(糖アルコール、前述) 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤、前述) 2重量部 水 86重量部上記各成分中、ジャガーHP60の3重量%水溶液以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、ジャガーHP60の3重量%水溶液を加えて1時間撹拌を行い、粘度10000センチポイズ、固形分28.1体積%(酸化チタン11.4体積%、樹脂粒子16.9体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0022】実施例7 タイピュアR900(酸化チタン) 100重量部 SX863(P)(中空樹脂粒子、固形分20%) 12重量部 ケルザンAR(キサンタンガム)の6重量%水溶液 15重量部 ジョンクリルJ61J(アクリルースチレン共重合体アンモニウム塩、固形分30.6%、前述) 20重量部 PO20(糖アルコール、前述) 10重量部 TL10(非イオン系界面活性剤、前述) 2重量部 水 50重量部上記各成分中、ケルザンARの6重量%水溶液以外の各成分を混合し、ボールミルで24時間分散処理を行った後、ケルザンARの6重量%水溶液を加えて1時間撹拌を行い、粘度10000センチポイズ、固形分29.1体積%(酸化チタン17.5体積%、樹脂粒子11.6体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0023】比較例1実施例1においてジャガーHP60の3重量%水溶液を20重量部にし、水を155重量部にした他は実施例1と同様になして、粘度4500センチポイズ、固形分16.6体積%(酸化チタン9.0体積%、樹脂粒子7.6体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0024】比較例2実施例2においてケルザンAR6%水溶液を30重量部にし、水を170重量部にした他は実施例2と同様になして、粘度20000センチポイズ、固形分13.5体積%(酸化チタン8.0体積%、樹脂粒子5.5体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0025】比較例3実施例3においてケルザンARの6重量%水溶液を50重量部、水を86重量部にした他は実施例3と同様になして、粘度54000センチポイズ、固形分16.2重量%(酸化チタン13.2体積%、樹脂粒子3.0体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0026】比較例4実施例6において、水を56重量部にした他は実施例1と同様になして粘度13000センチポイズ固形分33.1重量%(酸化チタン13.3体積%、樹脂粒子19.8体積%)のボールペン用顔料インキを得た。
【0027】比較例5実施例2においてLUMIKOL NKW2108を除き、KR380(酸化チタン)を168重量部、水を150重量部にした他は実施例2と同様なして粘度20000センチポイズ、固形分15.7体積%のボールペン用顔料インキを得た。
【0028】実施例1〜7及び比較例1〜5で得られたボールペン用顔料インキを、直径0.8mmのボール(材質:超硬)を用いたボールペンチップをポリプロピレン製筒体の一端に嵌め込んだボールペンの筒体に充填し、筒体のもう一端にインキ逆流防止体を充填してボールペンを作製した。まず、このボールペンで黒画用紙(リンテック(株)、ニューカラー カラーNo.418)に手書きで筆記し、筆記線の鮮明さを観た。次に、このボールペンを上向き及び下向きの状態で50℃、湿度30%の条件下で4週間放置し、上向き放置のボールペンでは筆記性を、下向き放置のボールペンでは上澄みの有無を評価した。
【0029】筆記線の鮮明さ◎:白い紙に筆記したときと同様の鮮明さ○:筆跡が若干黒ずむ△:筆跡がかなり黒ずむ
【0030】筆記性評価螺旋筆記型筆記試験機にて100m筆記に要したインキの体積を測定した。
筆記速度:5cm/sec筆記荷重:100g測定単位:cc/100m
【0031】上澄み有無評価ボールペンの筒体を目視判定し、インキ逆流防止体の下(インキの部分)の上澄みの有無を観察した。結果を表1に示す。
【0032】
【表1】


【0033】比較例1は、酸化チタンの沈降が発生したため、筆記性の評価において、初めは透明なインキ(上澄み)が吐出した。
【0034】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によるボールペン用顔料インキは、目の粗い黒画用紙に筆記しても筆記線が鮮明で、長期間保管した後においてもインキの吐出が良好であり、顔料の経時的分離もなく良好なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸化チタンと、樹脂粒子と、増粘性水溶性樹脂と、結合剤と、水とを少なくとも含み、粘度が6000〜50000センチポイズ(E型粘度計、stローター、25℃)であり、インキ中の固形分比率が15〜30体積%であるボールペン用水性顔料インキ。

【特許番号】特許第3334435号(P3334435)
【登録日】平成14年8月2日(2002.8.2)
【発行日】平成14年10月15日(2002.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−156819
【出願日】平成7年5月31日(1995.5.31)
【公開番号】特開平8−325503
【公開日】平成8年12月10日(1996.12.10)
【審査請求日】平成13年1月24日(2001.1.24)
【出願人】(000005511)ぺんてる株式会社 (899)
【参考文献】
【文献】特開 平6−287499(JP,A)
【文献】特開 昭61−60768(JP,A)
【文献】特開 平5−339534(JP,A)
【文献】特開 平8−12916(JP,A)