説明

ポケット布の折込み装置

【課題】ポケット布を様々なポケット形状に折り分けるための調整が容易なポケット布の折込み装置を実現する。
【解決手段】折込み装置100における折り刃ユニット10を、型板1及び押え板2を囲う第1ベース部材4の長穴4aに沿って進退させながら、折り刃14が配設されたシリンダ13部分を回動させる調整を行うことで、型板1及び押え板2に対するシリンダ13の距離に関する配置調整と、シリンダ13の向き(角度)に関する配置の調整を並行して行うことで、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整を容易に且つ速やかに行うことを可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポケット布の折込み装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身生地にポケットを縫い付けるための縫製装置としてポケットセッターが知られている。ポケットセッターには、ポケット布の縁周りを内側に折り込む折込み装置と、この折込み装置によって折り込まれた状態のポケット布を身生地に縫い付けるミシンが設けられている。
ポケット布の折込み装置は、型板上に載置されたポケット布を押え板で挟み込み、次いで、シリンダによって駆動される折り刃を型板の下に前進させて、ポケット布の縁周りを型板の下側へ折り込むようになっている。
そして、型板に対するシリンダ(特許文献1ではモジュールと称する)の向きや配置を任意に調整することで、様々なポケット形状にポケット布を折り分けることが可能な折込み装置を備えたミシンが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−300879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の場合、シリンダは、シリンダが有するリブタイプの保持フランジに形成され、シリンダロッド伸縮方向に形成された長穴と、モジュールが固定されるフレームに形成され、シリンダロッド伸縮方向と直交する方向に形成された長穴とに連通するネジの締結によって、フレームに取り付けられているので、型板に対するシリンダの向きや配置を調整する作業は、2方向を組み合わせて調整するため煩雑であった。
例えば、ネジの締結位置を調整する際、一方の長穴に対する調整の後に、他方の長穴に対する調整を行うと、先に調整したシリンダの向きや配置にずれが生じてしまうので、双方の長穴に対して同時にシリンダの向きや配置の調整を行わなければならず、その調整に手間取ってしまうことがあった。
つまり、型板に対して折り刃を進退させるシリンダの向きと、型板に対して折り刃を適切な距離に配するシリンダの配置を、それぞれ独立に調整することが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ポケット布を様々なポケット形状に折り分けるための調整が容易なポケット布の折込み装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
形成するポケットに応じた外縁形状を有し、その上面にポケット布が載置される型板と、
前記型板との間で前記ポケット布を挟持する押え板と、
前記型板及び前記押え板の周囲に配置され、前記型板に向かって移動することで、前記型板と前記押え板との間からはみ出した前記ポケット布の周縁部を前記型板の下面側へ折り込む折込み部材と、
前記折込み部材を所定方向に移動させる折込み駆動部と、
を備えたポケット布の折込み装置であって、
前記押え板を支持するとともに、上下方向に移動可能な第1ベース部材と、
前記第1ベース部材に進退可能に備えられ、前記型板及び前記押え板に対して接離する方向に移動する第2ベース部材と、を備え、
前記折込み駆動部は、前記型板の前記上面に対し直交方向に沿う軸を中心に回動可能に前記第2ベース部材に備えられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のポケット布の折込み装置において、
前記折込み駆動部を支持するとともに、前記直交方向に沿う軸を中心に前記第2ベース部材に軸支されている旋回ベースを備えていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のポケット布の折込み装置において、
前記旋回ベースから突設された支持軸と、
前記第2ベース部材に形成され、前記支持軸を回動可能に支持する支持孔を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載のポケット布の折込み装置において、
前記折込み部材は、前記所定方向と直交する方向であって前記型板の前記上面と平行な方向に、その配置をスライド移動可能に前記折込み駆動部に備えられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載のポケット布の折込み装置において、
前記折込み部材は、前記所定方向と直交する方向であって前記型板の前記上面に対し直交方向に、その配置をスライド移動可能に前記折込み駆動部に備えられていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載のポケット布の折込み装置において、
前記折込み部材は、交換可能に前記折込み駆動部に備えられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1〜3に記載の発明によれば、第1ベース部材に進退可能に備えられている第2ベース部材を型板及び押え板に対して接離する方向に移動させることと、第2ベース部材に備えられている折込み駆動部を型板の上面に対し直交方向に沿う軸を中心に回動させることを、それぞれ独立して行うことができるので、ポケット布の折込み装置における型板と押え板が、被縫製物のポケット形状に応じて付け替えられた場合、型板及び押え板に対する折込み駆動部の距離に関する配置の調整と、型板及び押え板に対する折込み駆動部の向き(角度)に関する配置の調整を並行して行うことができる。
こうして、折込み部材を所定方向に移動させる折込み駆動部の型板及び押え板に対する配置調整を容易に且つ速やかに行うことが可能になり、ポケット布を様々なポケット形状に折り分けるための調整を容易に行うことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、折込み駆動部が折込み部材を移動させる所定方向と直交する方向であって型板の上面と平行な方向に、折込み部材の配置をスライド移動させる配置調整を行うことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、折込み駆動部が折込み部材を移動させる所定方向に直交する方向であって型板の上面に対する直交(垂直)方向に、折込み部材の配置をスライド移動させる配置調整を行うことができる。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、型板や押え板の大きさなどに応じて折込み部材を交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ポケット布の折込み装置を示す平面図である。
【図2】ポケット布の折込み装置の第1ベース部材を透視して、第1ベース部材の下面側に取り付けられている折り刃ユニットを示す平面図である。
【図3】折り刃ユニットを拡大して示す平面図である。
【図4】折り刃ユニットを示す斜視図である。
【図5】ポケット布の折込み装置がポケット布を折り分ける、様々なポケット形状の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0018】
図1は本実施の形態に係るポケット布の折込み装置100(以下、折込み装置100)を示す平面図である。図2は、その折込み装置100の第1ベース部材4を透視して、第1ベース部材4の下面側に取り付けられている折り刃ユニット10を示す平面図である。
【0019】
折込み装置100は、図1〜図4に示すように、形成するポケットに応じた外縁形状を有し、上面にポケット布が載置される型板1(図4参照)と、型板1の上面に配置され、型板1との間でポケット布を挟持する押え板2と、押え板2が固定されている支持板3と、支持板3に固定されている第1ベース部材4と、第1ベース部材4の下面側に取り付けられている4つの折り刃ユニット10(10a〜10d)等を備えている。
型板1は、例えば、ポケットセッターの作業台上に設けられている。そして、支持板3を介して一体に組み付けられている押え板2と第1ベース部材4と折り刃ユニット10(10a〜10d)が、型板1に覆い被さるようにセットされた際に、型板1と押え板2とが重なるようになっている。
そして、不図示アクチュエータとしてのシリンダやモータ等により、押え板2と支持板3と第1ベース部材4は、上下方向に移動または揺動して、型板1に対して、接近したり離間したりする。すなわち、第1ベース部材4は、支持板3を介して押え板2を支持するとともに、不図示アクチュエータにより上下方向に移動可能となっている。
【0020】
型板1は、形成するポケットに応じた外縁形状を有しており、例えば平面視して略五角形形状を呈する板状部材である。
押え板2は、例えば平面視して略五角形形状を呈し、型板1と略同一の外縁形状を有する板状部材である。押え板2が型板1に重なった際、押え板2と型板1の外縁が揃うようになっている。
この型板1と押え板2(特に型板1)は、ポケットの形状を決める薄板であり、被縫製物のポケット形状に応じて付け替えられるようになっている。
【0021】
第1ベース部材4は、例えば平面視して略「U」字形状を呈する枠状部材であり、押え板2を囲うように支持板3に固定されている。また、梁部材5の一端が支持板3に、他端が第1ベース部材4に固定されており、この梁部材5が支持板3と第1ベース部材4の連結構造を補強している。
第1ベース部材4は、型板1との間でポケット布を挟持するように押え板2を型板1に重ねた際に、型板1及び押え板2の周囲に折り刃ユニット10を配置するように、4つの折り刃ユニット10(10a〜10d)が取り付けられている。例えば、押え板2の外縁辺2aに対向する位置に折り刃ユニット10a、押え板2の外縁辺2bに対向する位置に折り刃ユニット10b、押え板2の外縁辺2cに対向する位置に折り刃ユニット10c、押え板2の外縁辺2dに対向する位置に折り刃ユニット10dが配されるようになっている。
この第1ベース部材4には、折り刃ユニット10を取り付けるための長穴4aが設けられている。この長穴4aは、第1ベース部材4に取り付ける折り刃ユニット10を型板1及び押え板2に対し接離させる方向に沿って形成されている。
【0022】
折り刃ユニット10(10a〜10d)は、第1ベース部材4に進退可能に備えられ、型板1及び押え板2に対して接離する方向に移動する第2ベース部材11と、第2ベース部材11に軸支され、型板1の上面に対し略垂直な方向に沿う軸を中心に回動可能な旋回ベース12と、旋回ベース12に固定されて回動可能とされた折込み駆動部としてのシリンダ13と、シリンダ13のシリンダヘッド13aに取り付けられた折込み部材としての折り刃14等を備えている。
【0023】
第2ベース部材11は、第1ベース部材4の長穴4aを通じて締結されたネジNによって、第1ベース部材4に取り付けられている。
第2ベース部材11は、その長穴4aに沿って第1ベース部材4に対する配置を切り替えることができる。
この第2ベース部材11には、旋回ベース12を取り付けるための円弧状の長穴11aが設けられている。
【0024】
旋回ベース12は、型板1の上面に対し略垂直な方向に沿う支持軸12aを中心に回動可能に第2ベース部材11に軸支されており、第2ベース部材11の円弧状の長穴11aを通じて締結されたネジNによって、第2ベース部材11に取り付けられている。
旋回ベース12が支持軸12aを中心に回動する際、その円弧状の長穴11aに挿通されて旋回ベース12に螺号しているネジNが円弧状の長穴11aに案内されるようになっており、旋回ベース12は第2ベース部材11に対する配置や角度を切り替えることができる。
このように折込み装置100は、旋回ベース12から突設された支持軸12aと、第2ベース部材11に形成され、支持軸12aを回動可能に支持する支持孔11bを備えている。この支持孔11bは支持軸12aを挿通させる長孔状を有している。そして、後述する折り刃14を型板1に対して接離する方向に移動する際など、支持軸12aは支持孔11b内を摺動する。すなわち、折り刃14とシリンダ13は支持軸12aを介して垂直軸線を中心に第2ベース部材11に軸支されている。
【0025】
シリンダ13は、旋回ベース12に固定されており、その旋回ベース12と一体に、型板1の上面に対し略垂直な方向に沿う支持軸12aを中心に回動可能に備えられている。つまり、シリンダ13は、旋回ベース12を介して第2ベース部材11に回動可能に備えられている。
このシリンダ13は、例えば、空気圧の作用で作動する周知のエアシリンダであり、シリンダヘッド13aを所定方向に進退させることで、シリンダヘッド13aに取り付けられている折り刃14を所定方向に移動させる。
なお、シリンダヘッド13aには、その断面が略「L」字形状を呈する折り刃支持部材34が取り付けられており、その折り刃支持部材34を介して折り刃14がシリンダヘッド13aに取り付けられている。
【0026】
折り刃14(折込み部材とも称する)は、型板1との間でポケット布を挟持するように押え板2を型板1に重ねた際に、シリンダ13とともに型板1及び押え板2の周囲に配置され、その折り刃14は押え板2の外縁辺(2a〜2d)に対向するように配される。
この折り刃14は、シリンダヘッド13aが進退する所定方向に沿って延出し、型板1と略平行な先端片を有している。そして、折り刃14は、シリンダ13(折込み駆動部とも称する)の駆動によってシリンダヘッド13aとともに型板1に向かって移動することで、型板1と押え板2との間からはみ出したポケット布の周縁部を型板1の下面側へ折り込む作用を奏する。すなわち、折り刃14は、型板1及び押え板2の周囲に配置され、型板1に向かって移動することで、型板1と押え板2との間からはみ出したポケット布の周縁部を型板1の下面側へ折り込む。また、シリンダ13は、折り刃14を所定方向に移動させる。
この折り刃14には、シリンダヘッド13aの進退方向(所定方向)と略直交する左右方向に延在する長穴14aが設けられており、その長穴14aを通じて折り刃支持部材34に締結されたネジNによって、折り刃14はシリンダヘッド13aに交換可能に取り付けられている。そして、折り刃14は、その長穴14aに沿ってシリンダ13(シリンダヘッド13a)に対する左右方向の配置を切り替えることができる。なお、ここでの左右方向とは、型板1(の上面)に対し略平行な一方向である。すなわち、折り刃14は、長穴14aとネジNにより、所定方向と直交する方向であって型板1の上面と平行な方向に、その配置をスライド移動可能にシリンダ13に備えられている。
また、折り刃支持部材34には、上下方向に延在する長穴34a(図4参照)が設けられており、その長穴34aを通じてシリンダヘッド13aに締結されたネジNによって、折り刃14および折り刃支持部材34はシリンダヘッド13aに取り付けられている。そして、折り刃14は、折り刃支持部材34と一体に折り刃支持部材34の長穴34aに沿ってシリンダ13(シリンダヘッド13a)に対する上下方向の配置を切り替えることができる。すなわち、折り刃14は、長穴34aにより、シリンダヘッド13aの進退方向(所定方向とも称する)と直交する方向であって、型板1の上面に対し垂直な方向(直交方向)に、その配置をスライド移動可能にシリンダ13に備えられている。また、シリンダ13は、型板1の上面に対し垂直な方向に沿う支持軸12aを中心に回動可能に第2ベース部材11に備えられている。また、折込み装置100は、旋回ベース12から突設された支持軸12aと、第2ベース部材11に形成され、支持軸12aを回動可能に支持する支持孔11bを備えている。そして、旋回ベース12は、シリンダ13を支持するとともに、垂直な方向に沿う支持軸12aを中心に回動可能に第2ベース部材11に軸支されている。また、折り刃14は、交換可能にシリンダ13に備えられている。
【0027】
次に、折込み装置100における型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整について説明する。
折込み装置100において、被縫製物のポケット形状に応じて型板1と押え板2が付け替えられた場合、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整を行う。
【0028】
この折り刃ユニット10の配置調整に際して、第1ベース部材4の長穴4aに通されたネジNを緩め、また、第2ベース部材11の長穴11aに通されたネジNを緩めておき、それぞれのネジNが各長穴に沿って移動可能となるようにしておくことが好ましい。
【0029】
例えば、第2ベース部材11を第1ベース部材4の長穴4aに沿って移動させる調整を行い、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の距離に関する配置の調整を行う。
具体的には、例えば、型板1及び押え板2が大きなポケットに対応する大きなサイズのものに付け替えられた場合、第2ベース部材11を型板1及び押え板2から離間させる方向にスライド移動させて、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置を後退させる。また、型板1及び押え板2が小さなポケットに対応する小さなサイズのものに付け替えられた場合、第2ベース部材11を型板1及び押え板2に近接させる方向にスライド移動させて、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置を前進させる。
このとき、旋回ベース12の回動中心である支持軸12aを通り、シリンダ13のシリンダヘッド13aが進退する所定方向に沿う仮想線L(図3参照)が折り刃14の先端縁と交差する点を基準とするようにして、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の距離を調整すると、その配置調整を行い易い。
そして、押え板2と折り刃14の距離が定まり、第1ベース部材4における第2ベース部材11の位置が定まった際に、第1ベース部材4の長穴4aに通されたネジNを締めて、第2ベース部材11を第1ベース部材4に固定して、折り刃ユニット10を第1ベース部材4に据え付ける。
【0030】
また、例えば、支持軸12aを中心に旋回ベース12を回動させて、旋回ベース12と一体のシリンダ13を回動させる調整を行い、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の向き(角度)に関する配置の調整を行う。
具体的には、押え板2の外縁辺(2a〜2d)と折り刃14の先端縁とが平行となるように、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の向き(角度)を調整する。
そして、型板1及び押え板2に対する折り刃14の向きや位置が定まった際に、第2ベース部材11の長穴11aに通されたネジNを締めて、旋回ベース12及びシリンダ13を第2ベース部材11に固定して、第2ベース部材11が固定されている第1ベース部材4に対してシリンダ13と折り刃14を固定する。
【0031】
ここで、折り刃ユニット10を第1ベース部材4の長穴4aに沿って型板1及び押え板2に対して進退するように移動させる配置調整と、折り刃ユニット10におけるシリンダ13部分を支持軸12aを中心に回動させる配置調整は、それぞれ独立した調整であるので、各配置調整を同時に行うことができる。
つまり、第2ベース部材11を第1ベース部材4の長穴4aに沿って移動させながら、旋回ベース12と一体のシリンダ13を回動させる調整を行うことで、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の距離に関する配置調整と、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の向き(角度)に関する配置調整を、並行して行うことができるので、折り刃ユニット10の配置調整を容易に且つ速やかに行うことができる。
【0032】
上記したような、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の距離に関する配置調整と、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の向き(角度)に関する配置調整を、4つの折り刃ユニット10(10a〜10d)のそれぞれに行う。
また更に、折り刃ユニット10の距離に関する配置の微調整や、折り刃ユニット10の向き(角度)に関する配置の微調整を適宜行うようにしてもよい。
【0033】
また、押え板2の外縁辺(2a〜2d)に対して平行に配された折り刃14を、シリンダヘッド13aの進退方向(所定方向)と略直交する左右方向に延在する長穴14aに沿ってスライド移動させることによって、型板1及び押え板2に対する折り刃14の配置を左右方向に調整するようにしてもよい。
例えば、隣接する折り刃ユニット10(10a〜10d)の折り刃14の配置を適切に調整して折り刃14同士の間隔を適正にすることによって、隣り合う折り刃14がそれぞれ良好にポケット布の周縁部を型板1の下面側へ折り込むことが可能になる。その結果、その折り刃14間に相当するポケットの角を所望する角度やしわの無い状態に形成でき、高品質なポケット形状を形成することが可能になる。
【0034】
さらに、付け替えられた型板1や押え板2の外縁辺(2a〜2d)の長さが大幅に変わるような場合には、その型板1や押え板2のサイズに応じた適切な長さを有する折り刃14に付け替えることが好ましい。
例えば、この折込み装置100では、折り刃ユニット10a、10dの折り刃14は、折り刃ユニット10b、10cの折り刃14よりも長いサイズのものが用いられている。
【0035】
また、押え板2の外縁辺(2a〜2d)に対して平行に配された折り刃14を、上下方向に延在する折り刃支持部材34の長穴34a(図4参照)に沿って、折り刃支持部材34と一体にスライド移動させることによって、型板1及び押え板2に対する折り刃14の配置を上下方向に調整するようにしてもよい。
例えば、ポケット布が厚い生地の場合、型板1に対して折り刃14を下げるように折り刃14の高さを適切に調整して、型板1の下面と折り刃14との上下方向の間隔を適正にすることによって、ポケット布の周縁部を型板1の下面側へ良好に折り込むことが可能になる。型板1の下面と折り刃14との上下方向の間隔がポケット布の厚さよりも狭い場合、型板1と折り刃14の間にポケット布が食い込むように詰まってしまい、ポケット布の周縁部を型板1の下面側に折り込むことができない場合があるので、その際に折り刃14
の上下調整を行う。
【0036】
このように、被縫製物のポケット形状に応じて型板1と押え板2が付け替えられた場合に、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整を行うことで、折込み装置100はポケット布を、例えば図5に示すような、様々なポケット形状に折り分けることが可能になる。
【0037】
以上のように、折込み装置100は、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整を行う際、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の距離に関する配置の調整と、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の向き(角度)に関する配置の調整を、それぞれ独立して行うことができる。
つまり、折り刃ユニット10を型板1及び押え板2に対して進退させる配置調整と、折り刃ユニット10におけるシリンダ13部分を支持軸12aを中心に回動させる配置調整は、それぞれ独立した調整であるため、各配置調整を同時に行うことができる。
具体的には、折り刃ユニット10を第1ベース部材4の長穴4aに沿って進退させながら、折り刃14が配設されたシリンダ13部分を回動させる調整を行うことで、型板1及び押え板2に対するシリンダ13の距離に関する配置調整と、シリンダ13の向き(角度)に関する配置の調整を並行して行うことができ、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整を容易に且つ速やかに行うことが可能になる。
そして、従来技術のように、2方向の長穴に対して同時にシリンダの配置を調整するような手法に比べて、本発明の折込み装置100における折り刃ユニット10の配置調整は容易であるといえる。
【0038】
また、被縫製物のポケット形状に応じて型板1と押え板2が付け替えられた場合に、型板1及び押え板2に対する折り刃ユニット10の配置調整を容易に行うことができるので、折込み装置100は、ポケット布を様々なポケット形状に折り分けることができる。そして、ポケット形状が変更される度に折込み装置を全て交換するように、ポケット形状毎に折込み装置を保有する必要はないので、ランニングコストを抑えることができる。
【0039】
なお、本発明の適用は上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 型板
2 押え板
3 支持板
4 第1ベース部材
4a 長穴
10(10a〜10d) 折り刃ユニット
11 第2ベース部材
11a 長穴
12 旋回ベース
12a 支持軸
13 シリンダ(折込み駆動部)
13a シリンダヘッド
34 折り刃支持部材
34a 長穴
14 折り刃(折込み部材)
14a 長穴
100 折込み装置(ポケット布の折込み装置)
N ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成するポケットに応じた外縁形状を有し、その上面にポケット布が載置される型板と、
前記型板との間で前記ポケット布を挟持する押え板と、
前記型板及び前記押え板の周囲に配置され、前記型板に向かって移動することで、前記型板と前記押え板との間からはみ出した前記ポケット布の周縁部を前記型板の下面側へ折り込む折込み部材と、
前記折込み部材を所定方向に移動させる折込み駆動部と、
を備えたポケット布の折込み装置であって、
前記押え板を支持するとともに、上下方向に移動可能な第1ベース部材と、
前記第1ベース部材に進退可能に備えられ、前記型板及び前記押え板に対して接離する方向に移動する第2ベース部材と、を備え、
前記折込み駆動部は、前記型板の前記上面に対し直交方向に沿う軸を中心に回動可能に前記第2ベース部材に備えられていることを特徴とするポケット布の折込み装置。
【請求項2】
前記折込み駆動部を支持するとともに、前記直交方向に沿う軸を中心に前記第2ベース部材に軸支されている旋回ベースを備えていることを特徴とする請求項1に記載のポケット布の折込み装置。
【請求項3】
前記旋回ベースから突設された支持軸と、
前記第2ベース部材に形成され、前記支持軸を回動可能に支持する支持孔を備えていることを特徴とする請求項2に記載のポケット布の折込み装置。
【請求項4】
前記折込み部材は、前記所定方向と直交する方向であって前記型板の前記上面と平行な方向に、その配置をスライド移動可能に前記折込み駆動部に備えられていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載のポケット布の折込み装置。
【請求項5】
前記折込み部材は、前記所定方向と直交する方向であって前記型板の前記上面に対し直交方向に、その配置をスライド移動可能に前記折込み駆動部に備えられていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載のポケット布の折込み装置。
【請求項6】
前記折込み部材は、交換可能に前記折込み駆動部に備えられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載のポケット布の折込み装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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