説明

ポリイミドフィルムおよびその製造方法

【課題】 可撓性プリント配線板のベースフィルムに用いられるポリイミドフィルムにおいて、フィルムの外観を損なうことなく高温高湿の環境に対する接着強度の耐久性を改善したポリイミドフィルムを提供する。
【解決手段】 部分的に硬化または部分的に乾燥したイミド化率50%以上のポリアミド酸フィルム表面に有機チタン化合物の溶液を塗布するまたは部分的に硬化または部分的に乾燥したイミド化率50%以上のポリアミド酸フィルムを有機チタン化合物の溶液に浸漬し、その後、ポリアミド酸をポリイミドに転化し、かつこのフィルムを乾燥する。これにより、ポリイミドフィルムの表面にエックス線光電子分光法で測定した原子数濃度が0.01%以上10%以下の濃度でチタン原子が導入され、フィルムの外観を損なうことなく高温高湿の環境に対する接着強度の耐久性を改善したポリイミドフィルムとなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は接着性に優れたポリイミドフィルム、更に詳しくは常態での接着性に併せて高温または高温高湿の環境に暴露した後の接着強度の保持率が高く、たとえば高温または高温高湿の環境でも良好に機能するフレキシブルプリント配線板のベースフィルムとして好適なポリイミドフィルム及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリイミドフィルムはその優れた耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、機械的強度等の特性に優れていることが知られている。このようなポリイミドフィルムはフレキシブルプリント配線板のベースフィルムとして広く使用されている。このような用途においてポリイミドフィルムはアクリルまたはエポキシ接着剤によって銅箔に接合される。あるいは蒸着、スパッタ等の乾式、または無電解メッキなどの湿式のメタライズ技術によりポリイミドフィルム上に直接銅を形成する。これらの用途において接着性は重要な特性の一つである。
【0003】また、近年、機器の小型化が進み可撓性プリント配線板の用途が拡大するに従って、より高温、高湿などの厳しい環境下で使用される様になってきた。したがってポリイミドフィルムについてもその機械的特性や電気特性など高温、高湿の環境に耐えることが要求されてきている。中でもポリイミドフィルムの接着性がこれらの環境に耐えることが特に強く求められている。
【0004】これまでもポリイミドフィルムの接着性改善について数多くの技術が開示されている。(特許第1948445号、特開平06−73209)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】特許第1948445号には、ポリイミドフィルムにチタン系の有機化合物を添加することで接着性を改善する技術が開示されている。しかしこの技術では、フィルムが著しく着色することや、フィルムの内部にもチタン原子が高濃度で存在するためにフィルムの脆性が低下するなどの問題があった。
【0006】特開平06−73209にはSn、Cu、Zn、Fe、Co、MnまたはPdからなる金属塩によってコートされた表面接着力の改善されたポリイミドを開示している。本発明では使用する金属はチタンであり、Sn、Cu、Zn、Fe、Co、MnまたはPdからなる金属塩を利用しない。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の一つの目的は接着性の優れたポリイミドフィルムおよびその製造方法を提供することである。すなわち、片方の面および/または両方の面の表面にエックス線光電子分光法で測定した原子数濃度が0.01%以上10%以下の濃度でチタン原子が存在するポリイミドフィルムである。(請求項1)
また、部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムの表面に有機チタン化合物の溶液を塗布しその後ポリアミド酸をポリイミドに転化し、かつこのフィルムを乾燥することを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項2)。
【0008】部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムを有機チタン化合物の溶液に浸漬し、その後ポリアミド酸をポリイミドに転化し、かつこのフィルムを乾燥することを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項3)。部分的に硬化または部分的に乾燥したポリアミド酸フィルムに有機チタン化合物の溶液を塗布、または浸漬した後にフィルム表面に残存する余分な液滴を取り除くことを特徴とする請求項2乃至請求項3記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項4)。
【0009】フィルムをフィルム厚み以下の隙間を保持して支持される2本のロールの間を通してフィルム表面に残存する余分な液滴を除去することを特徴とする請求項4記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項5)。溶液の塗布、または浸漬の後、フィルム表面に気流を吹き付けてフィルム表面に残存する余分な液滴を除去することを特徴とする請求項4記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項6)。
【0010】部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムの残留揮発分率が100%以下である請求項2乃至請求項6記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項7)。部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムのイミド化率が50%以上である請求項2乃至請求項7記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項8)。
【0011】化1で示される有機チタン化合物を用いることを特徴とする請求項2乃至請求項8記載のポリイミドフィルムの製造方法(請求項9)。
【0012】
【発明の実施の形態】更に詳細には、本発明は、アクリルまたはエポキシなどに代表される接着剤によって銅箔に接合される時の接着性の優れたポリイミドフィルムを提供することである。あるいは蒸着、スパッタ等の乾式、または無電解メッキなどの湿式のメタライズ技術によりポリイミドフィルム上に直接銅を形成する際の接着性を改善したポリイミドフィルムを提供することである。
【0013】本発明によれば、片方の面および/または両方の面の表面にエックス線光電子分光法で測定した原子数濃度が0.01%以上10%以下、好ましくは0.1%以上5%以下、最も好ましくは0.2%以上1%以下の濃度でチタン原子が存在するポリイミドフィルムが提供される。このチタン原子は部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムに有機チタン化合物の溶液を塗布することで付与することができる。
【0014】あるいはこのチタン原子は部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムを有機チタン化合物の溶液に浸漬することで付与することができる。次にこの溶液が付着したフィルムをフィルム厚み以下の隙間を保持して支持される2本のロールの間を通してあるいはフィルム表面に気流を吹き付けてフィルム表面に残存する余分な液滴を除去する。その後、このフィルムを加熱、乾燥してポリアミド酸を完全にポリイミドに転化する。
【0015】本発明において使用されるポリイミドフィルムは公知の方法で製造することができる。即ちポリアミド酸支持体に流延、塗布し、化学的にあるいは熱的にイミド化することで得られる。ポリアミド酸は、実質的に等モル量の少なくとも一種類の芳香族酸二無水物と少なくとも一種類のジアミンを溶媒中に溶解し、これらのこの酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで生成した溶液を攪拌することによって製造することができる。
【0016】本ポリイミドにおける使用のための適当な酸無水物は、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含む。
【0017】本ポリイミドにおける使用のための最も適当な酸二無水物はピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)であり、これらを単独または、任意の割合で混合して用いるのが好ましい。
【0018】本ポリイミドにおける使用のために適当なジアミンは、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニルN−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、及びそれらの類似物を含む。
【0019】本ポリイミドにおける使用のための最も適当なジアミンは4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンであり、これらをモル比で100:0から10:90の割合で混合して用いるのが好ましい。ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒はアミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどである。最も好ましい溶媒はN,N−ジメチルフォルムアミドである。
【0020】これらのポリアミド酸溶液は通常15〜25wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得る。部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルム(以下ゲルフィルムという)は公知の方法で製造することができる。即ち、ポリアミド酸をガラス板などの支持体上に流延または塗布し、熱的にイミド化することによって、または化学的転化剤及び触媒を低温でポリアミド酸溶液中に混合し、引き続いてこのポリアミド酸溶液を支持体上にフィルム状にキャストし温和な条件で加熱することで転化剤及び触媒を活性化することによって製造することができる。
【0021】ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあるものであり、自己支持性を有し、式1から算出される揮発分含量は5〜500%の範囲、好ましくは5〜100%、より好ましくは5〜50%の範囲にあり、赤外線吸光分析法を用いて式2から算出されるイミド化率は50%以上の範囲、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上の範囲にあるものが例示できる。
(A−B)×100/B・・・・式1式1中A、Bは以下のものを表す。
A:ゲルフィルムの重量B:ゲルフィルムを450℃で20分間加熱した後の重量(C/D)×100/(E/F)・・・・式2式2中C、D、E、Fは以下のものを表す。
C:ゲルフィルムの1370cm-1の吸収ピーク高さD:ゲルフィルムの1500cm-1の吸収ピーク高さE:ポリイミドフィルムの1370-1の吸収ピーク高さF:ポリイミドフィルムの1500-1の吸収ピーク高さ引き続きこのゲルフィルムを支持体から剥離し、端部を固定して硬化時の収縮を回避して乾燥し、水、残留溶媒、残存転化剤及び触媒を除去し、そしてポリアミド酸を完全にポリイミドに転化する。
【0022】残留揮発分を完全に除去しかつポリアミド酸を完全にポリイミドに転化しするためには、300℃以上の温度で加熱することにより行うことが出来、好ましくは450℃以上より好ましくは500℃以上加熱することにより行うことが出来る。本発明によれば、有機チタン化合物の溶液をゲルフィルムに塗布するが、この塗布は、刷毛塗り、スプレー、ドクターロールなどの方法により行うことが出来る。
【0023】または、本発明によれば、有機チタン化合物の溶液にゲルフィルムを浸漬することも可能である。また、本発明によれば、塗布または浸漬後ゲルフィルム表面に付着した液滴を除去することでフィルム表面の均一な外観に優れたフィルムを製造することができる。
【0024】ゲルフィルム表面の液滴の除去は、2本のロールでフィルムを挟み液を絞り取る方法や、高速の気流を吹き付けて液を吹き飛ばす方法などを用いることが出来る。本発明において使用される有機チタン化合物は、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基を含有したチタン化合物が好ましく、トリ−n−ブトキシチタンモノステアレート、ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、ブチルチタネートダイマー、テトラノルマルブチルチタネート、テトラ(2ーエチルヘキシル)チタネート、チタンオクチレングリコレートなどが例示される他ジヒドロキシビス(アンモニウムラクテート)チタニウム、ジヒドロキシチタンビスラクテート等も使用可能である。最も好ましいのはトリ−n−ブトキシチタンモノステアレートあるいはジヒドロキシチタンビスラクテートである。
【0025】本発明において使用される溶剤は有機チタン化合物を溶解するものであれば良く、水、トルエン、テトラヒドロフラン、2−プロパノール、1−ブタノール、酢酸エチル、N,N−ジメチルフォルムアミド、アセチルアセトンなどが使用可能である。これらの溶剤を2種類以上混合して使用しても良い。本発明において最も好ましい溶媒はN,N−ジメチルフォルムアミド、2−プロパノール、1−ブタノール、トルエンおよび水を単独あるいは2種以上併用して使用可能である。
【0026】本発明において使用される有機チタン化合物溶液のチタン元素濃度は、1〜10000ppmであり、好ましくは10〜1000ppm、より好ましくは50〜500ppmである。チタン原子の濃度が高すぎるとポリイミドフィルムが着色し、外観が損なわれ、また、低すぎると接着性の改善効果の点で問題があるので好ましくない。
【0027】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明の効果を具体的に説明する。
(比較例1)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/p−フェニレンジアミンをモル比で4/3/1の割合で合成したポリアミド酸の17wt%のDMF溶液90gに無水酢酸17gとイソキノリン2gからなる転化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ700μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を110℃4分間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は30wt%であり、イミド化率は90%であった。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃、500℃で各1分間加熱して厚さ50μmのポリイミドフィルムを製造した。
【0028】このポリイミドフィルム表面のチタン原子数濃度をエックス線光電子分光分析装置(アルバックファイ社製、Model−5400)を用い、エックス線源:MgのKα線、エネルギー71.55電しボルトの条件で分析した。このポリイミドフィルムの片面に電子線加熱方式の真空蒸着装置(日本真空社製、EBH−6)を用いて厚み2000オングストロームの銅を蒸着し、更に硫酸電気銅メッキ(陰極電流密度2A/dm2、メッキ時間40分)により、接着剤を使うことなくポリイミドフィルム上に直接銅を形成して2層銅張積層板を作製した。この2層銅張積層板を120℃100%RHの環境に24時間曝露した後の銅とポリイミドフィルムの接着強度をJIS、C−6481に従って銅パターン幅3mmで90度ピールで評価した。
【0029】このポリイミドフィルムにナイロン・エポキシ系接着剤を用いて電解銅箔(三井金属鉱業社製、商品名3ECVLP、厚み35μm)と張り合わせ3層銅張積層板を作製し、150℃で240時間放置した後の接着強度をJISC−6481に従って銅パターン幅3mmで90度ピールで測定した。これらの分析、測定の結果を表1に示す。
(実施例1)比較例1と同様の方法で得たゲルフィルムを、チタン元素濃度100ppmのジヒドロキシチタンビスラクテート/イソプロピルアルコール溶液に10秒間浸漬し、圧縮空気を吹き付けて余分な液滴を除去した後、比較例1と同じ条件で加熱し、表面にチタン原子が存在するポリイミドフィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムは比較例1と同様の色合いであった。このポリイミドフィルムを用いて比較例1と同様の方法で2層、及び3層の銅張積層板を作製した。
【0030】これらについて比較例1と同様の方法でフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を分析、測定した結果を表1に示す。
(実施例2)比較例1と同様の方法で得たゲルフィルムに、チタン元素濃度100ppmのジヒドロキシチタンビスラクテート/イソプロピルアルコール溶液をスプレーコート方式で余分な液がフィルムに付着しないように塗布した後、比較例1と同じ条件で加熱し、表面にチタン原子が存在するポリイミドフィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムは比較例1と同様の色合いであった。このポリイミドフィルムを用いて比較例1と同様の方法で2層、及び3層の銅張積層板を作製した。
【0031】これらについて比較例1と同様の方法でフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を分析、測定した結果を表1に示す。
(実施例3)比較例1と同様の方法で得たゲルフィルムを、チタン元素濃度100ppmのトリ−N−ブトキシチタンモノステアレート/トルエン溶液に10秒間浸漬し、圧縮空気を吹き付けて余分な液滴を除去した後、比較例1と同じ条件で加熱し、表面にチタン原子が存在するポリイミドフィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムは比較例1と同様の色合いであった。このポリイミドフィルムを用いて比較例1と同様の方法で2層、及び3層の銅張積層板を作製した。
【0032】これらについて比較例1と同様の方法でフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を分析、測定した結果を表1に示す。
(比較例2)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成する以外は比較例1と同様の方法で銅張積層板を作製し、接着強度を測定した。その結果を表2に示す。
(実施例4〜6)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で合成する以外は実施例1〜3と同様の方法で作製したポリイミドフィルム及び銅張積層板について、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表2に示す。
(比較例3)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/p−フェニレンジアミン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で4/5/7/2の割合で合成したポリアミド酸の17wt%のDMAc溶液を用い、これに転化剤を混合しないでアルミ箔上に厚さ700μmで流延塗布した。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を110℃10分間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は30wt%であり、イミド化率は50%であった。このゲルフィルムを用い比較例1と同様の方法で銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表3に示す。
(実施例7〜9)比較例3と同様の方法で得られたゲルフィルムを用いること以外は実施例1〜3と同様の方法で作製したポリイミドフィルム及び銅張積層板について、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表3に示す。
(比較例4)ピロメリット酸二無水物/p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)/p−フェニレンジアミン/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で5/5/4/6の割合で合成する以外は比較例1と同様の方法で銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表4に示す。
(実施例10〜12)比較例4と同様の方法で得られたゲルフィルムを用いること以外は実施例1〜3と同様の方法で作製したポリイミドフィルム及び銅張積層板について、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表4に示す。
(比較例5)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ350μmで流延塗布する以外は比較例1と同様の方法で厚さ25μmのポリイミドフィルム、および2層及び3層の銅張積層板を作製した。比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表5に示す。
(実施例13〜15)比較例5と同様の方法で得られたゲルフィルムを用いる以外は実施例1〜3と同様の方法でポリイミドフィルムを作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表5に示す。
(比較例6、実施例16〜18)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ350μmで流延塗布する以外は比較例2及び実施例4〜6と同様の方法でポリイミドフィルム及び銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表6に示す。
(比較例7、実施例19〜21)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ350μmで流延塗布する以外は比較例3及び実施例7〜9と同様の方法で同様の方法でポリイミドフィルム及び銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表7に示す。
(比較例8、実施例22〜24)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ350μmで流延塗布する以外は比較例4及び実施例10〜12と同様の方法で同様の方法でポリイミドフィルム及び銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表8に示す。
(比較例9)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ1000μmで流延塗布する以外は比較例1と同様の方法で厚さ75μmのポリイミドフィルム、および2層及び3層の銅張積層板を作製した。比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表9に示す。
(実施例25〜27)比較例9と同様の方法で得られたゲルフィルムを用いる以外は実施例1〜3と同様の方法でポリイミドフィルムを作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表9に示す。
(比較例10、実施例28〜30)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ1000μmで流延塗布する以外は比較例2及び実施例4〜6と同様の方法でポリイミドフィルム及び銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表10に示す。
(比較例11、実施例31〜33)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ1000μmで流延塗布する以外は比較例3及び実施例7〜9と同様の方法でポリイミドフィルム及び銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表11に示す。
(比較例12、実施例34〜36)ポリアミド酸と転化剤の混合物をガラス板上に厚さ1000μmで流延塗布する以外は比較例4及び実施例10〜12と同様の方法でポリイミドフィルム及び銅張積層板を作製し、比較例1と同様の方法で分析したフィルム表面のチタン原子数濃度、2層および3層の銅張積層板の接着強度を表12に示す。
【0033】
【表1】


【0034】
【表2】


【0035】
【表3】


【0036】(比較例13)比較例1と同様の方法で作製したゲルフィルムにチタン元素濃度5000ppmのトリ−N−ブトキシチタンモノステアレート/トルエン溶液を刷毛を使って塗布し、余分な液滴を除去せずに、300℃、400℃、500℃で各1分間加熱して、表面に高濃度でチタン原子が存在するポリイミドフィルムを製造した。得られたポリイミドフィルムは著しく着色し、かつ表面は不均一でまだら模様になった。比較例1と同様の方法で測定したフィルム表面のチタン原子数濃度は15%であった。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のポリイミドフィルムは良好な接着性、特に高温高湿環境に暴露された後でも高い接着強度を有する。その製造方法は、接着性および外観に優れたポリイミドフィルムの製造方法を提供する。これによれば、高温高湿の厳しい環境下でも機能を損なうことなく動作するフレキシブルプリント配線板を製造するに当たり有用なベースフィルムを提供することができるという有利性が与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】片方の面および/または両方の面の表面にエックス線光電子分光法で測定した原子数濃度が0.01%以上10%以下の濃度でチタン原子が存在するポリイミドフィルム。
【請求項2】部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムの表面に有機チタン化合物の溶液を塗布しその後ポリアミド酸をポリイミドに転化し、かつこのフィルムを乾燥することを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項3】部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムを有機チタン化合物の溶液に浸漬し、その後ポリアミド酸をポリイミドに転化し、かつこのフィルムを乾燥することを特徴とする請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項4】部分的に硬化または部分的に乾燥したポリアミド酸フィルムに有機チタン化合物の溶液を塗布、または浸漬した後にフィルム表面に残存する余分な液滴を取り除くことを特徴とする請求項2乃至請求項3記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項5】フィルムをフィルム厚み以下の隙間を保持して支持される2本のロールの間を通してフィルム表面に残存する余分な液滴を除去することを特徴とする請求項4記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項6】溶液の塗布、または浸漬の後、フィルム表面に気流を吹き付けてフィルム表面に残存する余分な液滴を除去することを特徴とする請求項4記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項7】部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムの残留揮発分率が100%以下である請求項2乃至請求項6記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項8】部分的に硬化または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムまたはポリイミドフィルムのイミド化率が50%以上である請求項2乃至請求項7記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【請求項9】化1で示される有機チタン化合物を用いることを特徴とする請求項2乃至請求項8記載のポリイミドフィルムの製造方法。
【化1】