説明

ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法

吐出量が多く、また長時間運転が可能で生産性に優れたポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法を提供することである。(a)ポリオレフィン、(b)ポリアミド、(c)シランカップリング剤、(d)融点が70〜170℃の範囲内である第1酸化防止剤及び(e)融点が180〜300℃の範囲内である第2酸化防止剤を溶融・混練して押出し、ドラフトを掛けて引取り延伸又は圧延することにより(a)ポリオレフィン中に(b)ポリアミドを平均繊維径1μm以下の繊維状に分散させてペレット状に仕上げることを特徴とするポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムや樹脂の強化材料として好適に使用できるポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムや樹脂などの弾性率や機械的強度を向上させるためには、ガラス繊維や無機充填剤を配合していた。しかし、これらを配合すると剛性、弾性率、強度、耐クリープ性が向上するが、成形品の外観が悪くなったり、成形品が重くなっていた。
【0003】
特許文献1及び特許文献2には、ポリオレフィンとゴム状ポリマーをマトリックスとして熱可塑性ポリアミド繊維を微細な繊維として分散させた組成物が開示されている。これらはゴムと配合すると機械的性質を向上させることが可能である。しかし、配合するゴムは限定され混練中にゲル化する場合もあった。特に高温でゲル化しやすい傾向であり、強度、伸び、弾性率などは本来の性質が発現されない場合もあった。
【0004】
一方、ポリアミド極細繊維の製造法として特許文献3には、皮革用基材構成要素として襞を有する内外層の境界線が特定の範囲を有する多成分繊維が開示されている。特許文献4にはポリアミドを混合高速紡糸して得られる混合高速紡糸繊維をポリスチレンとポリエチレングリコールを溶媒除去して太さ0.1デニールとしたポリアミド極細繊維が開示されている。特許文献5、特許文献6、特許文献7にはポリプロピレンとポリアミドの界面での剥離のない軽量複合繊維が開示されている。芯鞘繊維でポリプロピレンの染色性を改善を目的としている。しかし、これらの方法や繊維は口径の小さな紡糸ノズルから押し出し、高速紡糸したり溶媒処理、その他溶融して太さ0.1〜1デニール(d)の極細繊維を得るのが目的であったので生産性が悪く経済的な製法とは言えない。またこれらの繊維は極細繊維の連続繊維であって光沢や風合の良い織物、合成皮革の素材として優れているがゴムや樹脂に充填して混練する場合には連続繊維であるために混練による分散が困難であった。
【0005】
特許文献8には、ポリオレフィンマトリックス中に平均繊維径が0.2〜0.6μmの微細なポリアミド繊維が均一に分散していると共に、ポリオレフィンと繊維が界面で結合しているポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物が記載されており、このポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物は、ペレット状態で得られるので樹脂やゴムに混練した場合には分散性が容易で補強性を有する。この特許文献8に記載されたポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン、(b)ポリアミド及び(c)シランカップリング剤を溶融・混練して押出し、ドラフトを掛けて引取り延伸又は圧延することにより(a)ポリオレフィン中に(b)ポリアミドを平均繊維径1μm以下の繊維状に分散させてペレット状に仕上げることにより製造されており、その際に酸化防止剤としてペンタエリスリトール テトラキス[3−(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010)を添加している。
【0006】
【特許文献1】特開平7−238189号公報
【特許文献2】特開平9−59431号公報
【特許文献3】特開昭63−75108号公報
【特許文献4】特開昭54−73921号公報
【特許文献5】特開平3−279419号公報
【特許文献6】特開平4−272222号公報
【特許文献7】特開平4−281015号公報
【特許文献8】特開平11−106570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献8に記載されたポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、融点が約110℃の酸化防止剤を用いており、このような融点が低い酸化防止剤は、2軸押出機における混練・反応の際に十分機能しないため、ポリオレフィンのゲル化(ポリプロピレンを用いている場合は分解)が起こり押出機内にヤケが生じる。このため、吐出量が少なく、ストランド切れも多い。またこの押出機内のヤケを除去するなど装置の清掃を頻繁に必要とするため、長時間運転が不可能で生産性が極めて悪いという問題がある。特に、ヤケを除去するための清掃は、押出機などの装置を分解して行う必要があるため、生産性に多大な影響を与えている。
【0008】
そこで、本発明は、吐出量が多く、また長時間運転が可能で生産性に優れたポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するため、本発明は、(a)ポリオレフィン、(b)ポリアミド、(c)シランカップリング剤、(d)融点が70〜170℃の範囲内である第1酸化防止剤及び(e)融点が180〜300℃、好ましくは200〜300℃、さらに好ましくは200〜290℃の範囲内である第2酸化防止剤を溶融・混練して押出し、ドラフトを掛けて引取り延伸又は圧延することにより(a)ポリオレフィン中に(b)ポリアミドを平均繊維径1μm以下の繊維状に分散させてペレット状に仕上げることを特徴とするポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明に係るポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法によれば、(d)成分と(e)成分の二種類の酸化防止剤を組み合わせることことによって、吐出量が多く、また長時間運転が可能で生産性に優れたポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のポリアミド−ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法において、(a)成分はポリオレフィンであって、80〜250℃の範囲の融点のものが好ましい。また50℃以上、特に好ましくは50〜200℃のビカット軟化点を有するものも用いられる。このような好適な例としては、炭素数2〜8のオレフィンの単独重合体や共重合体、及び、炭素数2〜8のオレフィンとスチレンやクロロスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物との共重合体、炭素数2〜8のオレフィンと酢酸ビニルとの共重合体、炭素数2〜8のオレフィンとアクリル酸あるいはそのエステルとの共重合体、炭素数2〜8のオレフィンとメタアクリル酸あるいはそのエステルとの共重合体、及び炭素数2〜8のオレフィンとビニルシラン化合物との共重合体が好ましく用いられるものとして挙げられる。
【0012】
具体例としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリブテン−1、ポリヘキセン−1、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸プロピル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン・アクリル酸ヒドロキシエチル共重合体、エチレン・ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン・ビニルトリエトキシシラン共重合体、エチレン・ビニルシラン共重合体、エチレン・スチレン共重合体、及びプロピレン・スチレン共重合体などがある。又、塩素化ポリエチレンや臭素化ポリエチレン、クロロスルホン化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィンも好ましく用いられる。
【0013】
これら (a)成分のポリオレフィンのなかで特に好ましいものとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、及びエチレン・ビニルアルコール共重合体が挙げられ、中でもメルトフローインデックス(MFI)が0. 2〜50g/10分の範囲のものが最も好ましいものとして挙げられる。これらは1種のみ用いてもよく、2種以上を組合わせてもよい。
【0014】
(b)成分は、主鎖中にアミド基を有する熱可塑性ポリアミド(以下、ポリアミド)であり、融点135〜350℃の範囲のものが用いられ、しかも(a)成分のポリオレフィンの融点より高いものであり、中でも融点160〜265℃の範囲のものが好ましい。かかる(b)成分としては、押出し及び延伸によって強靱な繊維を与えるポリアミドが好ましいものとして挙げられる。
【0015】
ポリアミドの具体例としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6−ナイロン66共重合体、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロンMXD6、キシリレンジアミンとアジピン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとピメリン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとスペリン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとアゼライン酸との重縮合体、キシリレンジアミンとセバシン酸との重縮合体、テトラメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、オクタメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、デカメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、ウンデカメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、ドデカメチレンジアミンとテレフタル酸の重縮合体、テトラメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、オクタメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、トリメチルヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、デカメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、ウンデカメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体、及びドデカメチレンジアミンとイソフタル酸の重縮合体などが挙げられる。
【0016】
これらのポリアミドの内、特に好ましい具体例としては、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン12(PA12)、ナイロン6−ナイロン66共重合体などが挙げられる。これらの1種又は2種以上でもよい。これらのポリアミドは、10、000〜200、000の範囲の分子量を有していることが好ましい。
【0017】
(c)成分のシランカップリング剤の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン.ビニルトリアセチルシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルエチルジメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)アミノプロピルエチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−〔N−(β−メタクリロキシエチル)−N、N−ジメチルアンモニウム(クロライド)〕プロピルメトキシシラン及びスチリルジアミノシランなどが挙げられる。中でも、アルコキシ基などから水素原子を奪って脱離し易い基及び又は極性基とビニル基とを有するものが特に好ましく用いられる。
【0018】
(c)成分のシランカップリング剤は、 (a)成分と (b)成分100重量部に対し0. 1〜5. 5重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0. 2〜3. 0重量部の範囲である。シランカップリング剤の量が0. 1重量部よりも少ないと、強度の高い組成物が得られず、シランカップリング剤の量が5. 5重量部よりも多いと弾性率に優れた組成物が得られない。シランカップリング剤の量が0.1重量%より少ないと、(a)成分及び(b)成分との間に強固な結合が形成されず、強度の低い組成物しか得られない。一方、シランカップリング剤の量が5. 5重量%より多いと、成分(b)は良好な微細繊維にならないので、やはり弾性率に劣る組成物しか得られない。
【0019】
(c)成分のシランカップリング剤を用いる場合は、有機過酸化物を併用することができる。有機過酸化物を併用することにより(a)成分の分子鎖にラジカルが形成されシランカップリング剤と反応することにより(a)成分とシランカップリング剤の反応は促進されるからである。有機過酸化物の使用量は(a)成分100重量部に対して0.01〜1.0重量部である。有機過酸化物としては1分間の半減期温度が、(a)成分の融点或いは(c)成分の融点のいずれか高い方と同じ温度ないし、この温度より30℃程高い温度範囲であるものが好ましく用いられる。具体的には1分間の半減期温度が110〜200℃程度のものが好ましく用いられる。
【0020】
有機過酸化物の具体例としてはジ−α−クミルパーオキサイド、1、1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3、3、5−トリメチルシクロヘキサン、1、1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2、2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、n−ブチル4、4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリネート、2、2−ビス(4、4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン)プロパン、2、2、4−トリメチルペンチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオヘキサネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシアセート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソフタレートなどが挙げられる。中でも1分間の半減期温度が溶融混練温度ないしこの温度より30℃程高い温度の範囲であるもの、具体的には1分半減期温度が80〜260℃程度のものが好ましく用いられる。
【0021】
(d)成分の第1酸化防止剤は、融点が70〜170℃の範囲内であるものであり、例えば、ペンタエリスリトール テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリル、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリルなどがある。(d)成分の第1酸化防止剤は、 (a)成分と (b)成分100重量部に対し0.01〜5重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜2重量部の範囲である。
【0022】
(e)成分の第2酸化防止剤は、融点が180〜300℃、好ましくは200〜300℃、より好ましくは200〜290℃の範囲内であるものであり、例えば4、4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンソイミダゾール、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−t−ブチル−a,a’,a”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、1,3,5−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−t−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンなどがある。(e)成分の第2酸化防止剤は、 (a)成分と (b)成分100重量部に対し0.01〜5重量部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜2重量部の範囲である。
【0023】
本発明に係るポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、このように(d)成分及び(e)成分として二種類の酸化防止剤、特に(e)成分の酸化防止剤を用いることにより、ポリオレフィン−ポリアミドの混練・反応時にポリオレフィンがゲル化したり、分解したりすることは少なく、吐出量を向上させることができる。また、ストランド切れが減少すると共に、押出し機内にヤケがほとんど生じないので、ヤケを取り除く清掃などを極端に少なくすることができ、長時間運転が可能となり、生産性を極めて向上させることができる。特に、ヤケを取り除くための清掃は、押出機を分解して行う必要があるため、その必要性を少なくすることによって、生産性を多大に向上させることができる。
【0024】
本発明に係るポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法は、(a)成分のポリオレフィンと、(c)成分のシランカップリング剤と、(d)成分の第1酸化防止剤と、(e)成分の第2酸化防止剤と、を溶融混練して化学変性する第一工程と、該第一工程によって化学変性した(a)成分に(b)成分のポリアミドを(b)成分の融点以上で溶融混練する第二工程と、前記第一工程によって化学変性した(a)成分に(b)成分のポリアミドを(b)成分の融点以上で溶融混練・化学変性して押出す第三工程と、該第三工程によって溶融混練・化学変性した押出物を(a)成分の融点以上で、かつ(b)成分の融点以下でドラフトをかけつつ延伸又は圧延する第四工程と、該第四工程によって延伸又は圧延した組成物を室温に冷却してペレタイズする工程、を備えていることが好ましい。
【0025】
前記第一工程において、溶融混練温度は(a)成分の融点以上であることが好ましく、特に融点より30℃高い温度であることが好ましい。融点より30℃高い温度で溶融混練すると(c)成分のシランカップリング剤と反応して化学変性される。溶融混練は樹脂やゴムの混練に通常用いられている装置で行うことができる。このような装置としてはバンバリー型ミキサー、ニーダー、ニーダーエキストルーダー、オープンロール、一軸混練機、二軸混練機などが用いられる。これらの装置の中では短時間で且つ連続的に溶融混練が行える点で二軸混練機が最も好ましい。
【0026】
前記第二工程において、溶融混練温度は(b)成分の融点以上であることが好ましく、融点より10℃高い温度であることが好ましい。溶融混練温度が(b)成分の融点より低いと混練できないし、繊維状に分散しないので、融点より高い温度、特に好ましくは20℃高い温度で溶融混練する。
【0027】
前記第三工程においては、その押出しする工程によって得られた混練物を紡糸口金或いはインフレーションダイ又はTダイから押出すことが好ましい。紡糸、押出しのいずれも成分(b)の融点より高い温度で実施する必要がある。具体的には、(b)成分の融点より高い温度、この融点より30℃高い温度の範囲で実施することが好ましい。本工程で成分(b)の融点より低い温度で溶融・混練を行っても、混練物は(a)成分からなるマトリックス中に(b)成分の微細な粒子が分散した構造にはならない。従って、かかる混練物を紡糸・延伸しても、(b)成分は微細な繊維にはなり得ない。
【0028】
前記第四工程において、押出された紐状乃至糸状紡糸は、連続的に冷却、延伸、又は圧延処理して行われることが好ましい。冷却・延伸又は圧延処理は、(b)成分の融点より10℃以下の低い温度で行われる。延伸及び圧延することにより、より強固な繊維が形成されるので繊維強化樹脂組成物としての特性がより発揮できてより好ましい。延伸又は圧延は、例えば混練物を紡糸口金から押し出して紐状ないし糸状に紡糸し、これをドラフトを掛けつつボビンなどに巻き取る。または、切断してペレットにするなどの方法で実施できる。ここでドラフトを掛けるとは、紡糸口金速度より巻取速度を高くとることを言う。巻取速度/紡糸口金速度の比(ドラフト比)は、1.5〜100の範囲とすることが好ましく、更に好ましくは2〜50の範囲、特に好ましくは3〜30である。
【0029】
前記第五工程において、ペレット化することにより樹脂やゴム成分などを追加して均一に混練できるから、ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物としてはペレット状のものを用いることが好ましい。ペレット状の樹脂組成物を用いれば、樹脂組成物はエラストマーと均一に混練でき、微細な繊維が均一に分散した強化エラストマー組成物が容易に得られるからである。
【0030】
前記第一乃至第三工程は、工程毎に分離して説明したが、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分及び(e)成分を供給できる第1供給口乃至第5供給口を有し、且つ各供給口に対応する第1混練帯乃至第5混練帯を有する二軸混練機を用いて一括して連続的なプロセスで処理することも可能である。そうすることにより経済的、安定した、安全な製造方法になる。
【0031】
本発明に係るポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造法においては、このほかカーボンブラック、ホワイトカーボン、活性炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂などの補助剤、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、亜鉛華、珪草土、再生ゴム、粉末ゴム、エボナイト粉など各種の充填剤、アミン・アルデヒド類、アミン・ケトン類、アミン類、フェノール類、イミダゾール類、含硫黄系酸化防止剤、含燐系酸化防止剤などの安定剤及び各種顔料を適宜添加しても良い。
【実施例】
【0032】
以下,実施例及び比較例を示して、本発明についてより具体的に説明するが本発明はこれらの実施例の範囲に限定されるものではない。実施例及び比較例において、ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造法の特性は以下のようにして測定した。
吐出量:
連続運転開始から2時間毎、第4工程に続くペレタイズする工程におけるペレタイザーのホッパーシュート口でペレットを1分間採取し秤量する。この操作を3回行いその平均値を吐出量として計算した。
連続運転時間:
2軸押出機にシラン変性ポリオレフィンとポリアミドを投入した時点(運転開始)からストランドの切断が多発状態となり製品採取が不可能になるまでの時間を連続運転時間とした。
ストランド径の均一性:
運転開始から2時間毎にストランドの1部を採取し、ノギスにて測定した。
ストランドの切断:
押出されたストランドがドラフトを掛けつつ引き取るのに張力により切断するが、その切断本数を時間に対する割合で評価した。
目脂の発生:
運転開始時から0.5時間毎に紡糸口金に発生する目脂の大きさを目視で観察した。
押出機内のヤケ:
連続運転終了後、2軸押出機を分解し、バレル内、及びスクリューのヤケ状態を目視により確認した。
歩留まり:
連続運転開始から終了までに至る(シラン変性ポリオレフィン+ポリアミドの総仕込量)に対する(ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製品量)の百分率を歩留まりとして計算した。
1日の生産量:
1日の連続運転開始から終了までの製品の量を生産量として測定した。
【0033】
実施例1
(a)成分として低密度ポリエチレン〔宇部興産社製、F522、融点110℃、MFR=5.0(g/10min)〕100重量部に(c)成分としてγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン[信越シリコーン製、KBM503]1.0重量部、(d)成分としてペンタエリスリトール テトラキス[3−(3、5−ジーt−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガノックス1010、融点110℃]0.5重量部、(e)成分として4、4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)[住友化学工業(株)製、スミライザーBBMS、融点209℃]0.5重量部及び過酸化物としてジ−α−クミルパーオキサイド[パークミル D40]0.025重量部を加えて、バンバリー型ミキサーによって170℃で混練・反応させて、次いで、1軸押出機によって170℃でペレット化し、シラン変性ポリエチレンを得た。得られたシラン変性ポリエチレンに対して(b)成分としてナイロン6(宇部興産社製、1030B、融点215〜225℃)50重量部を二軸押出機に投入して240℃で混練・反応させて押し出し、空気で冷却して引き取りロールでドラフト比7で引取り5インチロール間で室温で1.5倍延伸してペレタイズした。ペレット化した形状は径1mm、長さ3mmであった。得られたペレットを熱トルエンでポリエチレンを溶出した。不溶分は攪拌羽根にまとわりつかず、懸濁液は均一であった。不溶分はを走査型電子顕微鏡で観察すると径が0.3μmの微細な繊維状であった。この際の吐出量、連続運転時間、ストランド径の均一性、ストランドの切断、目脂の発生、押出機内のヤケ、歩留まり及び1日の生産量を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
実施例2
(e)成分として、4、4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)の代わりに2−メルカプトベンゾイミダゾール[住友化学工業(株)製、スミライザーMB、融点285℃]0.5重量部を用い、(b)成分として、ナイロン6の代わりにナイロン66(宇部興産社製、2020B、融点255〜265℃)50重量部を用い、二軸押出機の混練・反応温度を300℃にした点を除いては、実施例1と同様の方法によりポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物を製造した。この際の吐出量、連続運転時間、ストランド径の均一性、ストランドの切断、目脂の発生、押出機内のヤケ、歩留まり及び1日の生産量を表1に示す。
【0036】
比較例1
酸化防止剤として(e)成分を添加せず、(d)成分の酸化防止剤1.0重量部のみしか添加しなかった点を除いては、実施例1と同様の方法によりポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物を製造した。この際の吐出量、連続運転時間、ストランド径の均一性、ストランドの切断、目脂の発生、押出機内のヤケ、歩留まり及び1日の生産量を表1に示す。
【0037】
表1に示すように、酸化防止剤として(e)成分を添加した場合の実施例1及び2の方が、添加しなかった場合の比較例1に比してストランド切れが少なく、吐出量が多く、また押出機内のヤケがないので、ヤケを除去するなど押出機内の清掃を極端に少なくすることができ、長時間運転が可能となり、歩留まりが多く、1日の生産量が非常に多いことが分る。
【0038】
比較例2
酸化防止剤として(d)成分を添加せず、(e)成分の酸化防止剤1.0重量部のみしか添加しなかった点を除いては、実施例1と同様にバンバリー型ミキサーによって170℃で混練・反応させ、次いで1軸押出機によって170℃でペレット化したが、安定して連続的にペレット化を行なうことができず、ポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物を製造することができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポリオレフィン、(b)ポリアミド、(c)シランカップリング剤、(d)融点が70〜170℃の範囲内である第1酸化防止剤及び(e)融点が180〜300℃の範囲内である第2酸化防止剤を溶融・混練して押出し、ドラフトを掛けて引取り延伸又は圧延することにより(a)ポリオレフィン中に(b)ポリアミドを平均繊維径1μm以下の繊維状に分散させてペレット状に仕上げることを特徴とするポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
(a)成分のポリオレフィンと、(c)成分のシランカップリング剤と、(d)成分の第1酸化防止剤と、(e)成分の第2酸化防止剤と、を溶融混練して化学変性する第一工程と、
該第一工程によって化学変性した(a)成分に(b)成分のポリアミドを(b)成分の融点以上で溶融混練する第二工程と、
前記第一工程によって化学変性した(a)成分に(b)成分のポリアミドを(b)成分の融点以上で溶融混練・化学変性して押出す第三工程と、
該第三工程によって溶融混練・化学変性した押出物を(a)成分の融点以上で、かつ(b)成分の融点以下でドラフトをかけつつ延伸又は圧延する第四工程と、
該第四工程によって延伸又は圧延した組成物を室温に冷却してペレタイズする工程、
を備えていることを特徴とする請求項1記載のポリオレフィン−ポリアミド樹脂組成物の製造方法。


【国際公開番号】WO2005/065908
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【発行日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516802(P2005−516802)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016577
【国際出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】