説明

ポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部

【課題】構造の簡素化、軽量化、現地施工の簡略化および環境の調和を図る。
【解決手段】ポリマー套管は、下端部に導体挿入孔1aを有する導体引出棒1と、導体引出棒1の外周に設けられる硬質の絶縁筒2と、絶縁筒2の外周に設けられるポリマー被覆体3とを備えている。
絶縁筒2は、導体引出棒1の下方部位の外周部に設けられる大径絶縁筒2aと、導体引出棒1の先端部を除く部分の外周部に設けられる小径絶縁筒2bとを備えており、大径絶縁筒2aと小径絶縁筒2bの連設部分には電界緩和用の埋込金具4が埋設されている。また、大径絶縁筒2aの下端部にはケーブル端末部11のストレスコーン13を受容するコーン状の受容口5が設けられており、この受容口5は導体引出棒1の導体挿入孔1aと連通されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部に係わり、特に、構造の簡素化、軽量化および現地施工の簡略化を図ることができ、また、絶縁油や絶縁ガスなどの絶縁コンパウンドの充填を必要としないポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のケーブル終端接続部としては、図5に示すような構成のものが知られている。同図において、従来のケーブル終端接続部は、ケーブル端末部20と、このケーブル端末部20を包被する磁器套管21とを備えており、この磁器套管21内には、絶縁油や絶縁ガスなどの絶縁コンパウンド22が充填されている。
【0003】
ここで、磁器碍管21の底部には、環状の底部金具23が取り付けられ、磁器碍管21内の下方部には、エポキシ座24が磁器碍管21と同心状に配設されている。また、磁器碍管21の頂部には、上部金具24および上部覆25がそれぞれ配設され、磁器碍管21内の上部中心部には導体引出棒26が磁器碍管21と同心状に配設されている。なお、導体引出棒26の下端部は磁器碍管21内に位置し、先端部は上部金具24および上部覆25の中央部から上方に向けて気密に導出されている。
【0004】
また、ケーブル端末部20を構成するケーブル絶縁体27の外周にはストレスコーン28が装着され、また、ケーブル導体(不図示)の先端部には導体端子29が取り付けられている。
【0005】
このような構成のケーブル終端接続部においては、磁器碍管21内に位置する導体引出棒26の下端部に導体端子29が接続され、また、エポキシ座24の内壁面にストレスコーン28の外表面が圧接されている。
【0006】
なお、図中、符号30はストレスコーン28を押圧する押圧装置、31a、31bはシール部、32は締付金具、33は支持碍子、34は支持架台を示している。
【0007】
しかしながら、このような構成のケーブル終端接続部においては、導体端子29と導体引出棒26との接続点が磁器碍管21の内部に存在するため、次のような難点があった。
【0008】
第1に、ストレスコーンを受容するエポキシ座が磁器碍管内に存在するため、これに応じて磁器碍管が太くなり、ひいては、磁器碍管の重量が重くなるという難点があった。
【0009】
第2に、磁器碍管の外径が太くなると、磁器碍管の投影断面積が大きくなり、ひいては磁器碍管の汚損耐電圧特性が低下することから、所定の汚損耐電圧特性を維持するためには、長尺の磁器碍管を使用しなければならないという難点があった。
【0010】
第3に、磁器碍管内に絶縁コンパウンドが充填されていることから、磁器碍管が破損すると、磁器碍管内から絶縁コンパウンドが流出し二次災害を起こす虞があった。
【0011】
第4に、エポキシ座、上部覆、締付金具などの部品が必要となるから、部品点数が多くなり、また、構造が複雑になるという難点があった。
【0012】
このため、図5に示す磁器碍管21に代えて、ポリマー套管を使用し、このポリマー套管内に絶縁油や絶縁ガスを充填して成るケーブル終端接続部も知られているが、かかるケーブル終端接続部においては、套管が高分子材料のポリマーで形成されているため、外部から水分が透過しこの水分がポリマー套管内の絶縁油や絶縁ガスに混入して、当該絶縁油や絶縁ガスの性能を劣化させる虞があった。
【0013】
一方、図6に示すように、ケーブル端末部40をポリマー套管41で包被して成るケーブル終端接続部が開発されている(例えば、特許文献1)。ここで、ポリマー套管41は、中心に配設される導体引出棒42と、導体引出棒42の外周に配設される硬質の絶縁筒43と、絶縁筒43の外周に一体的に設けられるポリマー被覆体44とを備えている。
【0014】
このような構成のポリマー套管41は、磁器碍管と異なり、ポリマー套管41内にストレスコーンを受容するエポキシ座が存在せず、また、ポリマー套管41内に絶縁コンパウンドを充填する必要がないことから、ポリマー套管41の構造の簡素化および軽量化を図ることができ、各部をユニット化して現地に搬入できることから、現地施工時間の短縮化を図ることができる。
【0015】
【特許文献1】特開平11−203970号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、このようなポリマー套管を用いたケーブル終端接続部においては、ケーブル端末部40のケーブル導体45と導体引出棒42との接続点がポリマー套管41内に存在するため、前述の磁器碍管と同様に、ポリマー套管41の外径が太くなり、ポリマー套管の重量が重くなるという難点があった。また、ポリマー套管41が太くなると、ポリマー套管41の投影断面積が大きくなり、ひいては汚損耐電圧特性の向上を図るために、長尺のポリマー套管を使用しなければならないという難点がある。
【0017】
本発明は、上述の難点を解決するためになされたもので、従来のポリマー套管よりも、軽量かつコンパクトで、構造の簡素化を図ることができるポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様であるポリマー套管は、中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル端末の受容口を有する硬質の絶縁筒と、記絶縁筒の外周に一体的に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備えるポリマー套管において、受容口が、ポリマー被覆体よりも下方部位に配設されているものである。
【0019】
本発明の第2の態様は、第1の態様であるポリマー套管において、記導体引出棒の下端部に受容口と連通する導体挿入孔が設けられ、導体挿入孔がポリマー被覆体よりも下方部位に配設されているものである。
【0020】
本発明の第3の態様は、第1の態様または第2の態様であるポリマー套管において、導体引出棒の外周に絶縁筒が一体的に設けられているものである。
【0021】
本発明の第4の態様であるポリマー套管は、導体引出棒の外周にモールドにより一体的に形成され、下端部に、ストレスコーンを備えたケーブル端末の受容口を有する硬質の絶縁筒と、絶縁筒の外周にモールドにより一体的に形成され、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備えるポリマー套管において、絶縁筒には、フランジ部を有しかつ当該絶縁筒に埋設されて固定される電界緩和用の埋込金具が設けられており、ポリマー被覆体は、前記埋込金具よりも上方部位に配設され、受容口は、埋込金具よりも下方部位に配設され、かつ、絶縁筒の埋込金具より下方の部位は埋込金具に連設する金属部により包囲されているものである。
【0022】
本発明の第5の態様であるケーブル終端接続部は、第1の態様乃至第4の態様の何れかの態様であるポリマー套管の受容口にケーブル端末が装着されているものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明のポリマー套管によれば、硬質の絶縁筒の外周にポリマー被覆体が一体的に設けられていることから、従来の磁器碍管よりも、軽量で、破損しにくく、また、取扱いが容易になり、作業性を大幅に向上させることができる。また、絶縁油や絶縁ガスを必要としないことから、環境の調和を図ることができる。さらに、ポリマー被覆体をシリコンポリマーで形成した場合においては、シリコンポリマーの撥水性により、汚損耐電圧特性を向上させることができる。また、絶縁筒の受容口がポリマー被覆体よりも下方部位に配設されていることから、従来のポリマー套管よりも細くすることができ、さらに、ポリマー套管が細くなる結果、ポリマー套管の投影断面積が小さくなり、ひいては短尺のポリマー套管でも所定の汚損耐電圧特性を維持することができる。また、導体引出棒とケーブル導体との接続がポリマー被覆体よりも下方部位で行なわれることから、ケーブル端末部の段剥処理部の長さを短くでき、さらに、ポリマー套管中に埋込金具が埋設され、この埋込金具が底部金具と一体化されていることから、ポリマー套管を機械的に補強することができるとともに、ポリマー套管を底部金具を介して取付架台などに容易にかつ安定して取り付けることができる。従って、本発明のポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部においては、従来のポリマー套管に比べて、より軽量化を図ることができ、また、コンパクトで、構造の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明のポリマー套管およびこれを用いたケーブル終端接続部の好ましい実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、本発明のポリマー套管の縦断面図、図2は、本発明のポリマー套管を用いたケーブルの気中終端接続部の一部断面図を示している。
【0026】
図1において、本発明のポリマー套管は、下端部に導体挿入孔1aを有する導体引出棒1と、導体引出棒1の外周に設けられる硬質の絶縁筒2と、絶縁筒2の外周に設けられるポリマー被覆体3とを備えている。ここで、絶縁筒2は、機械的強度の高い材料、例えばエポキシ樹脂やFRPなどの硬質プラスチック樹脂で形成され、また、ポリマー被覆体3は、電気絶縁性能に優れる材料、例えばシリコンポリマーなどの高分子絶縁材料で形成されており、導体引出棒1、絶縁筒2およびポリマー被覆体3はモールドにより一体的に形成されている。
【0027】
絶縁筒2は、導体引出棒1の下方部位の外周部、すなわち導体挿入孔1aと対応する部分の外周部に設けられる大径絶縁筒2aと、この大径絶縁筒2aに連設され、導体引出棒1の先端部を除く部分の外周部に設けられる小径絶縁筒2bとを備えており、大径絶縁筒2aと小径絶縁筒2bの連設部分には電界緩和用の埋込金具4が埋設されている。また、大径絶縁筒2aの下端部には後述するケーブル端末部のストレスコーンを受容するコーン状の受容口5が設けられており、この受容口5は導体引出棒1の導体挿入孔1aと連通されている。
【0028】
ポリマー被覆体3は、小径絶縁筒2bの外周部に設けられ、その外周部には、多数個の襞部3aがポリマー被覆体3の長手方向に沿って離間して形成されている。
【0029】
埋込金具4は、小径絶縁筒2bの下方部に導体引出棒1と同心状に埋設される筒状部4aと、筒状部4aの下端部に連設され外周縁部が大径絶縁筒2aの上部位置の外周部から延出する如く埋設される環状のフランジ部4bとを備えており、フランジ部4bの外周縁部の下端面には環状の底部金具6が締付ボルト(不図示)を介して固定されている。
【0030】
なお、図中、符号7は、小径絶縁筒2bの頂部に必要によりOリング(不図示)を介して設けられる耐食アルミ合金などから成る保護金具、8は、大径絶縁筒2aの外周部に配設され、上端部が埋込金具4のフランジ部4bの下面に取り付けられる保護金具を示している。
【0031】
次に、本発明のポリマー套管を用いたケーブル終端接続部について説明する。
【0032】
先ず、ポリマー套管を底部金具6の下面に配設した支持碍子9を介して支持架台10に取り付ける。また、従来のケーブル端末部と同様に、ケーブル端末を段剥処理して露出させたケーブル絶縁体11aの外周にストレスコーン12を装着するとともに、ケーブル導体11bの先端部に導体端子13を取り付ける。ここで、ストレスコーン12は、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)等のゴム状弾性を有するプレモールド絶縁体などから成り、このストレスコーン12の先端部には受容口5の内壁面に装着される先細り状のコーン状部が設けられている。
【0033】
そして、このような構成のケーブル端末部11を受容口5に装着し、予めケーブル端末部側に配設した押圧装置14を受容口5側に向けて圧縮する。これにより、導体端子13が導体引出棒1の導体挿入孔1aにプラグイン接続されるとともに、ストレスコーン12のコーン状部が受容口5の内壁面に押し付けられ、ひいては、受容口5の内壁面とコーン状部の外周面間における界面の絶縁性能が確保される。
【0034】
なお、図中、符号15はシール部、16は下部金具、17はアダプタ、18は接地線を示している。
【0035】
以上のように、本発明のポリマー套管においては、受容口がポリマー被覆体よりも下方部位に配設されていることから、ポリマー套管を従来のポリマー套管よりも細くすることができ、また、ポリマー套管が細くなる結果、ポリマー套管の投影断面積が小さくなり、ひいては短尺のポリマー套管でも所定の汚損耐電圧特性を維持することができる。さらに、導体引出棒とケーブル導体との接続がポリマー被覆体よりも下方部位で行なわれることから、ケーブル端末部の段剥処理部の長さを短くできる。また、ポリマー套管中に埋込金具が埋設され、この埋込金具が底部金具と一体化されていることから、ポリマー套管を機械的に補強することができるとともに、ポリマー套管を底部金具を介して取付架台などに容易にかつ安定して取り付けることができる。
【0036】
図3および図4は、本発明のケーブル終端接続部の他の実施例を示している。なお、これらの図において、図1および図2と共通する部分には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0037】
先ず、図3に示す実施例においては、図2に示すポリマー套管3に代えて、このポリマー套管3よりもさらに細径化したポリマー套管3´が使用されている。
【0038】
この実施例においては、前述の実施例よりも、さらにポリマー套管の投影断面積を小さくすることができ、ポリマー套管の重量も軽量化できる。
【0039】
次に、図4に示す実施例においては、ケーブル端末部11のストレスコーン12を受容するコーン状の受容口5´を水平方向に折曲した場合の実施例を示している。
【0040】
この実施例においては、ケーブル端末部11を水平方向から装着することができる。
【0041】
なお、前述の実施例においては、導体引出棒の外周に絶縁筒を一体的に設けているが、この絶縁筒は導体引出棒と別体で設けてもよい。また、ケーブル端末の受容口は下方若しくは水平方向に向けるものに限定されず、例えば斜めに向けて形成してもよい。さらに、ケーブル終端接続部は、気中終端接続部に限定されず、ガス・油中終端接続部などに適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のポリマー套管の断面図。
【図2】本発明のケーブル終端接続部の一部断面図。
【図3】本発明のケーブル終端接続部の他の実施例に係る一部断面図。
【図4】本発明のケーブル終端接続部の他の実施例に係る一部断面図。
【図5】従来のケーブル終端接続部の一部断面図。
【図6】従来のポリマー套管を用いたケーブル終端接続部の一部断面図。
【符号の説明】
【0043】
1・・・導体引出棒
1a・・・導体挿入孔
2・・・絶縁筒
3・・・ポリマー被覆体
3a・・・襞部
5・・・受容口
11・・・ケーブル端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心に導体引出棒を有し、下端部にケーブル端末の受容口を有する硬質の絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周に一体的に設けられ、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備えるポリマー套管において、
前記受容口が、前記ポリマー被覆体よりも下方部位に配設されていることを特徴とするポリマー套管。
【請求項2】
前記導体引出棒の下端部に前記受容口と連通する導体挿入孔が設けられ、
前記導体挿入孔が前記ポリマー被覆体よりも下方部位に配設されていることを特徴とする請求項1記載のポリマー套管。
【請求項3】
前記導体引出棒の外周に前記絶縁筒が一体的に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のポリマー套管。
【請求項4】
導体引出棒の外周にモールドにより一体的に形成され、下端部に、ストレスコーンを備えたケーブル端末の受容口を有する硬質の絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周にモールドにより一体的に形成され、それ自身の外周に多数の襞部が長手方向に離間して形成されたポリマー被覆体とを備えるポリマー套管において、
前記絶縁筒には、フランジ部を有しかつ当該絶縁筒に埋設されて固定される電界緩和用の埋込金具が設けられており、
前記ポリマー被覆体は、前記埋込金具よりも上方部位に配設され、
前記受容口は、前記埋込金具よりも下方部位に配設され、
かつ、前記絶縁筒の前記埋込金具より下方の部位は前記埋込金具に連設する金属部により包囲されていることを特徴とするポリマー套管。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れか1項記載のポリマー套管の受容口にケーブル端末が装着されていることを特徴とするケーブル終端接続部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−25598(P2006−25598A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222723(P2005−222723)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【分割の表示】特願2002−105432(P2002−105432)の分割
【原出願日】平成14年4月8日(2002.4.8)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】